特許第6791256号(P6791256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791256
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】有機太陽電池およびこの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/48 20060101AFI20201116BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H01L31/04 182A
   H01L31/04 186
   H01L31/04 152B
   H01L31/04 152G
   H01L31/04 166
   H01L31/04 168
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-544341(P2018-544341)
(86)(22)【出願日】2017年3月13日
(65)【公表番号】特表2019-506752(P2019-506752A)
(43)【公表日】2019年3月7日
(86)【国際出願番号】KR2017002658
(87)【国際公開番号】WO2017155362
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2018年8月29日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0029651
(32)【優先日】2016年3月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ドゥーワン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジャエチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジンソク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ソンリム
(72)【発明者】
【氏名】リー、ドング
【審査官】 原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0179965(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/122722(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/167284(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0125598(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42−51/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極を備える段階;
溶媒、バッファー物質および光活性物質を含む溶液を備える段階;
前記第1電極の温度と前記溶液の温度とを同一に維持するよう加熱しながら前記第1電極上に前記溶液を塗布するコーティング段階を通じてバッファー層および光活性層を形成する段階;および
前記光活性層上に第2電極を形成する段階を含み、
前記溶媒は前記バッファー層および前記光活性層の自家相分離のための相分離溶媒を含み、
前記相分離溶媒は1,2,4-卜リクロロベンゼン(1,2,4-Trichlorobenzene、TCB)であり、
前記相分離溶媒は前記溶液100重量%に対して2から8重量%で含まれる
有機太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記バッファー物質は金属塩、金属酸化物および非共役高分子電解質(Non-conjugated polyelectrolyte, NPE)からなる群から選択される1種以上を含む請求項1に記載の有機太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記金属塩は、Ag金属塩、Au金属塩、Al金属塩、Cu金属塩、W金属塩およびPt金属塩からなる群から選択される1種以上を含む請求項2に記載の有機太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記金属酸化物は、モリブデン酸化物(MoO3)、バナジウム酸化物(VOx)、ニッケル酸化物(NiO)、亜鉛酸化物(ZnO)、チタン酸化物(TiO2)、ジルコニウム酸化物(ZrO2)、タンタル酸化物(Ta2O3)、セシウム酸化物(Cs2CO3)、マグネシウム酸化物(MgO)、ハフニウム酸化物(HfO2)、タングステン酸化物(WO3)、およびアルミニウム(Al)またはガリウム(Ga)でドーピングされた亜鉛酸化物(ZnO)からなる群から選択される1種以上である請求項2に記載の有機太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記非共役高分子電解質はポリエチレンイミン(Polyethyleneimine、PEI)、ポリエチレンイミンエトキシレート(Polyethyleneimine ethoxylate, PEIE) およびポリアリルアミン(Polyallylamine、PAA)からなる群から選択される1種以上を含む請求項2に記載の有機太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記光活性物質は下記共重合体を含む請求項1から5のいずれか一項に記載の有機太陽電池の製造方法:
【化1】
lは、モル分率で0<l<1であり、
mは、モル分率で0<m<1であり、
l+m=1であり、
0<o<1,000である整数である。
【請求項7】
前記バッファー層および光活性層を形成する段階は自家相分離によることである請求項1から6のいずれか一項に記載の有機太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記コーティング段階はバーコーティング、スロットダイコーティングまたはドクターブレードコーティングからなる群から選択されるいずれか一つである請求項1から7のいずれか一項に記載の有機太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記熱処理の温度は20から70℃である請求項1から8のいずれか一項に記載の有機太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記第1電極はカソードであり、前記第2電極はアノードであるインバート構造であり、
前記バッファー層は第1電極および前記光活性層の間に備えられるものである請求項1からのいずれか一項に記載の有機太陽電池の製造方法。
【請求項11】
前記第1電極はアノードであり、前記第2電極はカソードであるノーマル構造であり、
前記バッファー層は第2電極および前記光活性層の間に備えられるものである請求項1からのいずれか一項に記載の有機太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は2016年3月11日に韓国特許庁に出願された韓国特許出願第10-2016-0029651号に基礎した優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本明細書は有機太陽電池の製造方法およびこれによって製造された有機太陽電池に関する。
【背景技術】
【0003】
米国国立研究所であるNRELのエネルギーレビュー資料によると、現在、主に用いられているエネルギー源は石油、石炭、ガスである。これは、全体用いられているエネルギー源の80%に達する。しかしながら、現在、石油および石炭エネルギーの枯渇状態が漸次大きい問題になっており、増加する二酸化炭素と他の温室ガスの空気中への排出は漸次深刻な問題を発生させている。これに対し、無公害グリーンエネルギーである再生エネルギーの利用はまだ全体エネルギー源の約2%しかならない。それで、エネルギー源の問題解決のための悩みはより一層新再生エネルギーの開発研究に拍車をかけるきっかけになっている。風、水、太陽などの新再生エネルギーの中でも最も注目されているものは太陽エネルギーである。太陽エネルギーを用いた太陽電池は公害が少なく、資源が無限であり、半永久的な寿命を有していて未来エネルギー問題を解決することができるエネルギー源として期待されている。
【0004】
太陽電池は光起電力効果(photovoltaic effect)を応用することで太陽エネルギーを直接電気エネルギーに変換することができる素子である。太陽電池は薄膜を構成する物質によって無機太陽電池および有機太陽電池に分けられる。典型的な太陽電池は無機半導体である結晶性シリコン(Si)をドーピング(doping)してp-n接合で作ったものである。光を吸収して生ずる電子および正孔はp-n接合点まで拡散してその電界によって加速されて電極に移動する。この過程の電力変換効率は外部回路に与えられる電力および太陽電池に入り込んだ太陽電力の比と正義され、現在、標準化された仮想太陽照射条件で測定時24%程度まで達成された。しかしながら、従来無機太陽電池は既に経済性および材料上の需給において限界を示しているので、加工が容易かつ安価であり、多様な機能性を有する有機太陽電池が長期的な代替エネルギー源として脚光を浴びている。
【0005】
初期有機太陽電池は米国UCSBのHeeger教授グループで主導的に技術開発を導いた。有機太陽電池のバッファー層および光活性層をそれぞれ形成するための2段階の製造工程での技術において用いられる単分子有機物質または高分子材料は、容易であり、速く、また安価であり、大面積工程が可能な利点を有している。
【0006】
しかしながら、バッファー層および光活性層を自家相分離を通じて1段階の工程で製造する方法においては、バッファー層の構成成分が非導電体であるため超薄膜を形成しなければならないので、単位素子でなく大面積モジュール太陽電池においては適用できない問題点がある。したがって、バッファー層および光活性層を1段階の工程で製造しながら同時に大面積モジュール太陽電池に適用できる技術の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書は大面積モジュールに適用可能な自家相分離法を通じて高効率の有機太陽電池を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書の一実施形態は第1電極を備える段階;
溶媒、バッファー物質および光活性物質を含む溶液を備える段階;
前記第1電極上に前記溶液を塗布した後、熱処理するコーティング段階を通じてバッファー層および光活性層を形成する段階;および
前記光活性層上に第2電極を形成する段階を含み、
前記溶媒は前記バッファー層および前記光活性層の自家相分離のための相分離溶媒を含む有機太陽電池の製造方法を提供する。
【0009】
また、本明細書の一実施形態は本発明の有機太陽電池の製造方法によって製造された有機太陽電池を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本明細書の一実施形態に係る太陽電池によると、バッファー層および光活性層の自家相分離が円滑に起こることができる。
【0011】
本明細書の一実施形態に係る太陽電池によると、バッファー層および光活性層の円滑な自家相分離を大面積モジュールに適用することができる。
【0012】
本明細書の一実施形態に係る太陽電池によると、バッファー層および光活性層の自家相分離を大面積モジュールに適用しても光活性層へ集光して高い光転換効率を達成することができる。
【0013】
本明細書の一実施形態に係る太陽電池の製造方法によると、バッファー層および光活性層を1段階で大面積モジュールに形成できるため、工程時間の短縮および工程費用の節減を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本明細書の一実施形態に係るインバート構造の有機太陽電池の断面図を示した図である。
図2】本明細書の一実施形態に係るノーマル構造の有機太陽電池の断面図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
【0016】
本明細書において、ある部材が他の部材"上に"位置しているとするとき、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけでなく二つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0017】
本明細書において、ある部分がある構成要素を"含む"とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0018】
本明細書の一実施形態によると、第1電極を備える段階;溶媒、バッファー物質および光活性物質を含む溶液を備える段階;前記第1電極上に前記溶液を塗布した後、熱処理するコーティング段階を通じてバッファー層および光活性層を形成する段階;および前記光活性層上に第2電極を形成する段階を含み、前記溶媒は前記バッファー層および前記光活性層の自家相分離のための相分離溶媒を含む有機太陽電池の製造方法を提供する。
【0019】
本明細書においてバッファー物質はバッファー層を形成するための材料であって、前記バッファー物質は金属塩、金属酸化物および非共役高分子電解質(Non-conjugated polyelectrolyte、NPE)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0020】
本明細書の前記金属塩は熱処理によって還元されて金属粒子を形成する過程を通じて還元剤や界面活性剤などの不純物がないバッファー層を形成することができ、その種類には特に制限があるものではないが、Ag金属塩、Au金属塩、Al金属塩、Cu金属塩、W金属塩およびPt金属塩からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0021】
本明細書の一実施形態によると、前記Ag金属塩はAgCl、AgNO3およびAgIからなる群から選択される1以上を含むことができる。ただし、これに限定されるものではない。
【0022】
本明細書の一実施形態によると、前記Au金属塩はHAuCl4、AuClおよびAuCl3からなる群から選択される1以上を含むことができる。ただし、これに限定されるものではない。
【0023】
本明細書の一実施形態によると、前記Cu金属塩はCuI、CuF3およびCuNO3からなる群から選択される1以上を含むことができる。ただし、これに限定されるものではない。
【0024】
本明細書の一実施形態によると、前記Pt金属塩はPtCl2、PtCl4、PtBr2およびPt(C5H7O2)2からなる群から選択される1以上を含むことができる。ただし、これに限定されるものではない。
【0025】
本明細書の前記金属酸化物は、前記バッファー層において導電性酸化物としての役割を果たすことができ、その種類には特に限定があるものではないが、モリブデン酸化物(MoO3)、バナジウム酸化物(VOx)、ニッケル酸化物(NiO)、亜鉛酸化物(ZnO);チタン酸化物(TiO2);ジルコニウム酸化物(ZrO2);タンタル酸化物(Ta2O3);セシウム酸化物(Cs2CO3);マグネシウム酸化物(MgO);ハフニウム酸化物(HfO2);タングステン酸化物(WO3);およびアルミニウム(Al)またはガリウム(Ga)でドーピングされた亜鉛酸化物(ZnO)からなる群から選択される1種以上であることができる。
【0026】
本明細書の一実施形態によると、前記非共役高分子電解質は、前記バッファー層で電子を輸送できる役割を果たすことができ、電子を輸送できるものであれば特に制限があるものではないが、ポリエチレンイミン(Polyethyleneimine、PEI)、ポリエチレンイミンエトキシレート(Polyethyleneimine ethoxylate、PEIE)およびポリアリルアミン(Polyallylamine、PAA)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0027】
本明細書の一実施形態によると、光活性物質は光活性層を形成するためのものであって、前記光活性物質は電子ドナー物質および電子アクセプター物質を含むことができる。本明細書において前記光活性物質は前記電子ドナー物質および前記電子アクセプター物質を意味することがある。
【0028】
本明細書の一実施形態において、前記電子ドナー物質と電子アクセプター物質との質量比は1:10から10:1であることができる。具体的に本明細書の前記電子アクセプター物質と電子ドナー物質との質量比は1:0.5から1:5であることができる。
【0029】
本明細書の一実施形態によると、前記電子ドナー物質は少なくとも1種の電子供与体;または少なくとも1種の電子受容体と少なくとも1種の電子供与体の重合体を含むことができる。前記電子供与物質は少なくとも1種の電子供与体を含むことができる。また、前記電子供与物質は少なくとも1種の電子受容体と少なくとも1種の電子供与体の重合体を含む。
【0030】
具体的に、前記電子ドナー物質は、MEH-PPV(poly[2-methoxy-5-(2'-ethyl-hexyloxy)-1,4-phenylene vinylene])を始めとしてチオフェン系、フルオレン系、カルバゾール系などの多様な高分子物質および単分子物質であることができる。
【0031】
具体的に、前記単分子物質は、銅(II)フタロシアニン(Copper(II) phthalocyanine)、亜鉛フタロシアニン(zinc phthalocyanine)、トリス[4-(5-ジシアノメチリデンメチル-2-チエニル)ペニル]アミン(tris[4-(5-dicyanomethylidenemethyl-2-thienyl)phenyl]amine)、2,4-ビス[4-(N,N-ジベンジルアミノ)-2,6-ジヒドロキシフェニル] スクアライン(2,4-bis[4-(N,N-dibenzylamino)-2,6-dihydroxyphenyl]squaraine)、ベンゾ[b]アントラセン(benz[b]anthracene)、 およびペンタセン(pentacene)からなる群から選択される1種以上の物質を含むことができる。
【0032】
具体的に、前記高分子物質はポリ3-ヘキシルチオフェン(P3HT:poly 3-hexyl thiophene)、PCDTBT(poly[N-9'-heptadecanyl-2,7-carbazole-alt-5,5-(4'-7'-di-2-thienyl-2',1',3'-benzothiadiazole)])、PCPDTBT(poly[2,6-(4,4-bis-(2,ethylhexyl)-4H-cyclopenta[2,1-b;3,4-b']dithiophene)-alt-4,7-(2,1,3-benxothiadiazole)])、PFO-DBT(poly[2,7-(9,9-dioctyl-fluorene)-alt-5,5-(4,7-di 2-thienyl-2,1,3-benzothiadiazole)])、PTB7(Poly[[4,8-bis[(2-ethylhexyl)oxy]benzo[1,2-b:4,5-b']dithiophene-2,6-diyl][3-fluoro-2-[(2-ethylhexyl)carbonyl]thieno[3,4-b]thiophenediyl]])、PSiF-DBT(Poly[2,7-(9,9-dioctyl-dibenzosilole)-alt-4,7-bis(thiophen-2-yl)benzo-2,1,3-thiadiazole])からなる群から選択される1種以上の物質を含むことができる。
【0033】
本明細書の一実施形態によると、前記光活性物質は下記共重合体を含むことができる。
【化1】
lは、モル分率で0<l<1であり、
mは、モル分率で0<m<1であり、
l+m=1であり、
0<o<1,000である整数である。
【0034】
本明細書の一実施形態において、lは0.5である。
【0035】
さらに一つの実施形態において、mは0.5である。
【0036】
本明細書の一実施形態において、前記共重合体は後述する実施例によって合成されることができる。
【0037】
本明細書の一実施形態において、前記共重合体の末端基はヘテロ環基またはアリール基であることができる。
【0038】
本明細書の一実施形態において、前記共重合体の末端基は4-(トリフルオロメチル)ペニル基(4-(trifluoromethyl)phenyl)であることができる。
【0039】
本明細書の一実施形態によると、前記共重合体の数平均分子量は500g/molから1,000,000g/molであることができる。具体的に、前記共重合体の数平均分子量は10,000g/molから100,000g/molであることができる。また、本明細書の一実施形態において、前記共重合体の数平均分子量は30,000g/molから70,000g/molである。
【0040】
本明細書の一実施形態によると、前記共重合体は1g/molから100g/molの分子量分布を有することができる。具体的には、前記共重合体は1から3の分子量分布を有することができる。
【0041】
分子量分布は低いほど、数平均分子量が大きくなるほど電気的特性および機械的特性がより好ましくなる。
【0042】
また、一定以上の溶解度を有して、溶液塗布が容易になるようにするため数平均分子量は100,000g/mol以下であることができる。
【0043】
本明細書の一実施形態によると、前記化合物は光活性物質のうち、電子ドナーとして含まれることができる。
【0044】
本明細書の一実施形態によると、前記バッファー層および光活性層を形成する段階は自家相分離によるものであることができる。
【0045】
前記バッファー層は "正孔"または"電子"を輸送する層を意味することができる。また、バッファー層は電子輸送層、電荷輸送層または正孔輸送層であることができる。
【0046】
前記光活性層は光励起によって前記電子ドナー物質が電子および正孔が対を成したエキシトン(exciton)を形成し、 前記エキシトンが電子ドナー/電子アクセプターの界面で電子および正孔に分離される。分離された電子および正孔は電子ドナー物質および電子アクセプター物質にそれぞれ移動し、これらがそれぞれ第1電極および第2電極に収集されることで外部において電気エネルギーで用いることができる。
【0047】
また、本明細書の一実施形態において、前記光活性層はバルク異種接合構造または二重層接合構造であることができる。前記バルク異種接合構造はバルクヘテロジャンクション(BHJ:bulk heterojunction)接合型であることができ、前記二重層接合構造はバイレイヤー(bi-layer)接合型であることができる。
【0048】
自家相分離は一定の条件下で異なる性質を有する二つ以上の群がそれぞれの群に分離されることを意味し、本明細書においては溶媒、バッファー物質および光活性物質を含む溶液に熱処理段階を通じて自家相分離を誘導することができる。
【0049】
本明細書の一実施形態によると、前記コーティング段階はバーコーティング、スロットダイコーティング、ドクターブレードコーティング、スクリーンコーティングおよびスピンコーティングからなる群から選択されるいずれか一つによるものであることができる。具体的には、前記コーティング段階はバーコーティングによるものであることができる。
【0050】
1cm2以下の小面積モジュールである単位素子にはスピンコーティングなどのようなコーティング方法が用いられることができるが、これは、大面積コーティングに適用し難く、素子を製作するための必須条件であるパターニングができないという問題がある。しかし、本明細書の一実施形態に係る溶液は大面積モジュールにも適用が可能であるため大面積モジュールに適用可能な前記バーコーティングの方法を用いることができ、これによってコーティングの効率を高めることができる。
【0051】
本明細書の一実施形態によると、前記熱処理温度は20から70℃であることができる。より具体的に、前記熱処理温度は30から40℃であることができる。
【0052】
本明細書の一実施形態によると、前記溶媒はバッファー層および光活性層の自家相分離誘導の効果を高めるために相分離溶媒を含むことができる。
【0053】
前記相分離溶媒の種類としては、自家相分離を誘導する物質であれば特に制限はないが、沸点が200から230℃であり、密度が1から5g/cm3である物質であればよい。相分離溶媒の沸点および密度が前記範囲を外れる場合は相分離誘導ができないことがあり、これにより追加的な工程を要して工程の効率が減少することがある。
【0054】
相分離溶媒の具体的な例としては、特に制限があるものではないが、1,2,4-卜リクロロベンゼン(1,2,4-Trichlorobenzene、TCB)であることができる。
【0055】
また、前記相分離溶媒は前記溶液100重量%に対して2から8重量%で含まれることができる。より具体的に、前記相分離溶媒は前記溶液100重量%に対して2から5重量%で含まれることができる。より具体的に、前記相分離溶媒は前記溶液100重量%に対して3重量%で含まれることができる。
【0056】
本明細書の一実施形態によると、本明細書の有機太陽電池の製造方法によって製造された有機太陽電池を提供することができる。
【0057】
また、本明細書の一実施形態によると、前記第1電極はカソードであり、前記第2電極はアノードであるインバート構造であり、前記バッファー層は第1電極および前記光活性層の間に備えられるものである有機太陽電池を提供することができる。
【0058】
図1は本明細書の一実施形態に係る有機太陽電池の一例であるインバート構造の有機太陽電池を示したものである。図1を参考にすると、第1電極101と光活性層401との間にバッファー層301が形成され、光活性層401の上に第2電極201が備えられることができる。
【0059】
前記インバート構造は基板上にカソードが形成されることを意味することができる。具体的に、本明細書の一実施形態によると、前記有機太陽電池がインバート構造である場合、基板上に形成される第1電極がカソードであることができる。この場合、前記第1電極は透明電極または半透明電極であることができる。
【0060】
前記第1電極が透明電極である場合、透明導電性酸化物であることができ、この場合、前記第1電極は酸化スズインジウム(ITO)または酸化亜鉛インジウム(IZO)などのような導電性酸化物であることができる。さらに、前記第1電極は半透明電極であることもできる。前記第1電極が半透明電極である場合、Ag、Au、Mg、Caまたはこれらの合金のような半透明金属から製造されることができる。半透明金属が第1電極として用いられる場合、前記有機太陽電池は微細空洞構造を有することができる。
【0061】
本明細書の前記第1電極が透明導電性酸化物である場合、前記第1電極は硝子および石英板以外にPET(polyethylene terephthalate)、PEN(polyethylene naphthelate)、PP(polyperopylene)、PI(polyimide)、PC(polycarbornate)、PS(polystylene)、POM(polyoxyethlene)、AS樹脂(acrylonitrile styrene copolymer)、ABS 樹脂 (acrylonitrile butadiene styrene copolymer)およびTAC (Triacetyl cellulose)、PAR(polyarylate)などを含むプラスチックのような柔軟かつ透明な物質の上に導電性を有する物質がドーピングされたものが用いられることができる。具体的に、ITO(indium tin oxide)、フッ素がドーピングされた酸化スズ(fluorine doped tin oxide;FTO)、アルミニウムがドーピングされた酸化亜鉛(aluminium doped zink oxide、AZO)、IZO(indium zink oxide)、ZnO-Ga2O3、ZnO-Al2O3およびATO(antimony tin oxide)などになることができ、より具体的にITOであることがある。
【0062】
本明細書の前記インバート構造の有機太陽電池は一般的な構造の有機太陽電池のアノードおよびカソードが逆方向に構成されたことを意味することができる。一般的な構造の有機太陽電池において用いられるAl層は空気中で酸化反応に非常に脆弱であり、インク化し難くて、これを印刷工程を通じて商業化するのに制約がある。しかし、本明細書の前記逆方向構造の有機太陽電池はAlの代わりにAgを用いることができるので、一般的な構造の有機太陽電池に比べて酸化反応に安定的であり、Agインクの製作が容易であるので、印刷工程を通じる商業化に有利なことがある。
【0063】
さらに一つの実施形態において、前記第1電極はアノードであり、前記第2電極はカソードであるノーマル構造であり、前記バッファー層は第2電極および前記光活性層の間に備えられるものである有機太陽電池を提供することができる。
【0064】
図2は本明細書の一実施形態に係る有機太陽電池の一例であるノーマル構造の有機太陽電池を示したものである。図2を参考にすれば、第2電極201と光活性層401との間にバッファー層301が形成され、光活性層401上に第1電極101が設けることができる。
【0065】
前記ノーマル構造は基板上にアノードが形成されることを意味することができる。具体的に、本明細書の一実施形態によると、前記有機太陽電池がノーマル構造である場合、基板上に形成される第1電極がアノードであることができる。この場合、前記第2電極は金属電極であることができる。
【0066】
本明細書の前記第2電極が金属電極である場合、前記第2電極は銀(Ag)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、タングステン(W)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、金(Au)、ニッケル(Ni)、およびパラジウム(Pd)からなる群から選択される1種または2種以上を含むことができる。より具体的に前記金属電極は銀(Ag)であることができる。
【0067】
本明細書の一実施形態によると、前記有機太陽電池は基板をさらに含むことができる。具体的に、前記基板は第1電極の下部に備えられることができる。
【0068】
本明細書の一実施形態によると、前記基板は透明性、表面平滑性、取り扱い容易性および防水性に優れた基板を用いることができる。具体的に、硝子基板、薄膜硝子基板または透明プラスチック基板を用いることができる。前記プラスチック基板はPET(polyethylene terephthalate)、PEN(Polyethylene naphthalate)、PEEK(Polyether ether ketone)およびPI(Polyimide)などのフィルムが単層または複層の形態で含まれることができる。ただし、前記基板はこれに限定されず、有機太陽電池に通常用いられる基板を用いることができる。
【0069】
本明細書の一実施形態において、前記第1電極および/または第2電極を形成する段階はパターニングされたITO基板を洗浄剤、アセトン、イソプロパノール(IPA)で順次洗浄した後、水分除去のために加熱板で100〜250℃で1〜30分間、具体的に250℃で10分間乾燥し、基板が完全に洗浄されると基板表面を新水性に改質することができる。このための前処理技術としては、a)平行平板型放電を用いた表面酸化法、b)真空状態でUV紫外線を用いて生成されたオゾンを通じて表面を酸化する方法、およびc)プラズマによって生成された酸素ラジカルを用いて酸化する方法などを用いることができる。前記のような表面改質を通じて接合表面電位を正孔注入層の表面電位に適した水準に保持することができ、ITO基板上に高分子薄膜の形成が容易になり、薄膜の品質が向上することができる。基板の状態に応じて前記方法のうち一つを選択することになり、どの方法を用いても共通に基板表面の酸素離脱を防止し、水分および有機物の残留を最大限抑制しなければ前処理の実質的な効果が期待できません。
【0070】
本明細書の一実施形態によると、基板を酸化させる方法としてUVを用いて生成されたオゾンを通じて表面を酸化する方法を用いることができる。この場合、超音波洗浄後にパターンされたITO基板を加熱板(hot plate)でベーキング(baking)して、よく乾燥した後、チャンバに投入し、UVランプを作用させて酸素ガスがUV光と反応して生じるオゾンによってパターニングされたITO基板を洗浄するようになる。しかしながら、本発明におけるパターニングされたITO基板の表面改質方法は特に限定する必要はなく、基板を酸化させる方法であれば如何なる方法であっても構わない。
【0071】
[発明の実施のための形態]
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかしながら、本明細書による実施例は多くの他の形態に変形されることができ、本明細書の範囲が下記で説明する実施例に限定されるものと解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0072】
[実施例1]
本明細書の一実施形態に係る光活性物質に含まれる共重合体を合成するために下記反応式1によって共重合体を形成した。
[反応式1]
【化2】
【0073】
マイクロウェーブ・リアクター・バイアル(Microwave reactor vial)にコロロベンゼン(Chlorobenzene)15ml、2,6-ビス(トリメチルスズ)-4,8-ビス(2-エチルヘキシル-2-テニル)-ベンゾ[1,2-b:4,5-b']ジチオフェン(2,6-Bis(trimethyltin)-4,8-bis(2-ethylhexyl-2-thenyl)-benzo[1,2-b:4,5-b']dithiophene、0.7g、0.7738mmol)、2,5-ビス(トリメチルスタニル)チオフェン(2,5-bis(trimethylstannyl)thiophene、0.3171g、0.7738mmol)、1,3-ジブロモ-5-ドデシルチエノ[3,4-c]ピロール-4,6-ジオン(1,3-Dibromo-5-dodecylthieno[3,4-c]pyrrole-4,6-dione、0.7418g、1.548mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3(Tris(dibenzylideneacetone)dipalladium(0)、28mg)、トリ-(o-トリル)フォスフィン(Tri-(o-tolyl)phosphine、37mg)を入れて170℃の条件下で1時間の間反応させた。混合物を室温まで冷却してメタノールに注いだ後、固体を取り除いてメタノール、アセトン、ヘキサン、クロロホルムにソックスレー抽出(Soxhlet extraction)した後、クロロホルム部分をまたメタノールに沈澱させて固体を取り除いた。
【0074】
[実施例2]
PEI溶液を製造するためにPEI:1-butanolを1:499の質量比で混合して24時間以上保管する。光活性層溶液はドナーおよびアクセプター(CF、CB、ODCBまたは二つ以上の混合溶液)を1:2の割合にして約3wt%濃度で作る。
【0075】
前記製造した光活性層溶液にPEI溶液を添加して本明細書の一実施形態に係る光活性層溶液を作る。製造された本明細書の一実施形態に係る構造(ITO/125:PC61BM:PEI/MoO3/Ag)で1,2,4-卜リクロロベンゼンを3重量%含ませて基板の温度と光活性層溶液の温度とを同一に40℃に維持しながらコーティングを行ってデバイスを製作した。
【0076】
[比較例1]
温度を同様に40℃に維持しながらコーティングを行う段階を除いて、前記実施例2と同様にしてデバイスを製作した。
【0077】
[比較例2]
1,2,4-卜リクロロベンゼンを10重量%含んだことを除いて、前記実施例2と同様にしてデバイスを製作した。
【0078】
[比較例3]
既存に実施する一般的な構造(ITO/ZnO/125:PC61BM/MoO3/Ag)でデバイスを製作した。
【0079】
[比較例4]
本明細書の一実施形態に係る構造(ITO/125:PC61BM:PEI/MoO3/Ag)で1,2,4-卜リクロロベンゼンおよび基板と溶液を熱処理する過程を除いてデバイスを製作した。
【0080】
前記実施例および比較例による有機太陽電池の物性は下記表1に表した。
【0081】
有機太陽電池モジュールの大きさは9cm×1.5cm=13.5cm2であって、既存の1cm2以下の小面積モジュールでなく大面積モジュールに適用したものである。
【表1】
【0082】
本明細書においてVocは開放電圧を、Jscは短絡電流を、FFは充填率(Fill factor)を、PCEはエネルギー変換効率を意味する。開放電圧および短絡電流はそれぞれ電圧−電流密度曲線の4象限においてX軸およびY軸の切片であり、この二つの値が高いほど有機太陽電池の効率は高くなる。また、充填率(Fill factor)は曲線内部に描くことができる矩形の広さを短絡電流と開放電圧の積で除した値である。この三つの値を照射された光の強さで除するとエネルギー変換効率を求めることができ、高い値であるほど所望する効果を得ることができる。
【0083】
前記表1から分かるように、実施例による有機太陽電池は、相分離溶媒として1,2,4-卜リクロロベンゼンを用いた時および温度条件を一定に合わせた時に、そうではない比較例による有機太陽電池に比べて優れた効率を示す。
【0084】
前記表1から分かるように、実施例による太陽電池は、Agナノ粒子の集光効果によって光活性層の光吸収能力を向上させて電流密度を向上させ、Agナノ粒子によってバッファー層の導電性が向上されて電圧による電流密度の減少が小さいので、充填率が大きいことが確認できる。
図1
図2