(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示される方法により、強力なゲッタリング能力を有するゲッタリング層を形成することができるものの、エピタキシャル層の形成が前提となるため、エピタキシャル層のないバルクのシリコンウェーハには適用できない。
【0010】
そこで本発明者は、近年着目されつつある真空常温接合技術を用いて、活性層用ウェーハおよび支持基板用ウェーハを貼り合わせたシリコン接合ウェーハの接合界面あるいは接合界面を含む接合領域にゲッタリングサイトを導入することを検討した。真空常温接合技術を適用にあたり、活性層用ウェーハおよび支持基板用ウェーハの両貼り合わせ面が活性化処理される。このとき活性化後の両貼り合わせ面はアモルファス領域となり、当該アモルファス領域は貼り合わせ後のシリコン接合ウェーハにおいて、強力なゲッタリングサイトとして機能することを本発明者は知見した。
【0011】
ところで、半導体ウェーハを用いて半導体デバイス形成する際、デバイス形成プロセスではデバイス仕様に応じた熱処理を受ける。本発明者が検討したところ、上述のシリコン接合ウェーハのゲッタリングサイトであるアモルファス領域が、熱処理条件によっては結晶回復して再結晶化してしまい、シリコン接合ウェーハのゲッタリング能力が消失してしまう場合があることが判明した。この場合、シリコン接合ウェーハの製品出荷時においてはゲッタリング能力があっても、デバイス形成プロセスにおける熱処理条件によっては、熱処理を経た後に、シリコン接合ウェーハはゲッタリング能力を維持できなくなってしまう。本発明者はこの点を新たな課題として認識した。
【0012】
そこで、そこで本発明は、上記新たな課題に鑑み、シリコン接合ウェーハ作製後であって、デバイス形成プロセス時などでの熱処理を経た後でもゲッタリング能力を維持することのできるシリコン接合ウェーハの製造方法およびシリコン接合ウェーハの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決すべく本発明者は鋭意検討した。シリコン接合ウェーハの接合領域、すなわちアモルファス領域に適切な熱処理を施した場合、結晶回復に伴って転位が形成され、この転位は熱処理後においてもゲッタリングサイトとして機能することを本発明者は見出した。そして、こうした熱処理を施すことによって転位を形成したシリコン接合ウェーハであれば、デバイス形成プロセスにおける熱処理条件に依存せず、シリコン接合ウェーハ作製後であって、デバイス形成プロセス時などでの熱処理を経た後でもゲッタリング能力を維持し続けることができることを本発明者は知見した。
【0014】
上記知見に基づき完成した本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンからなる活性層とが接合されたシリコン接合ウェーハの製造方法であって、
単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハの片方の面および単結晶シリコンからなる活性層用ウェーハの片方の面に、真空常温下で、イオン化させた中性元素を照射する活性化処理をして、両方の前記片方の面を活性化面とした後に、引き続き真空常温下で両方の前記活性化面を接触させることで、前記支持基板用ウェーハと前記活性層用ウェーハとを貼り合わせる接合工程と、
前記接合工程の後、前記活性層用ウェーハを薄膜化して、薄膜化後の前記活性層用ウェーハを活性層とする薄膜化工程と、を有し、
前記接合工程の後、熱処理を施して、前記支持基板用ウェーハと前記活性層用ウェーハとを貼り合わせた接合領域に転位を形成する熱処理工程を更に有することを特徴とするシリコン接合ウェーハの製造方法。
【0015】
なお、以下、本発明における支持基板用ウェーハと活性層用ウェーハの貼合せ方法を「真空常温接合法」と称する。真空常温接合法において、上述した支持基板用ウェーハの上記片方の面と、活性層用ウェーハの上記片方の面とが、共に貼り合わせ面となる。また、一般に、活性層用ウェーハの他方の面が、シリコン接合ウェーハにおいてデバイス形成面となる主表面となる。
【0016】
(2)前記熱処理工程における熱処理温度が710℃以上850℃以下である、上記(1)に記載のシリコン接合ウェーハの製造方法。
【0017】
(3)前記熱処理工程における熱処理時間が30分以上2時間以下である、上記(2)に記載のシリコン接合ウェーハの製造方法。
【0018】
(4)前記熱処理工程における熱処理雰囲気が、アルゴン、水素、窒素、酸素からなる群から選ばれる少なくとも一種である、上記(2)または(3)に記載のシリコン接合ウェーハの製造方法。
【0019】
(5)前記中性元素が、アルゴン、ネオン、キセノン、水素、ヘリウムおよびシリコンからなる群から選ばれる少なくとも一種である、(1)〜(4)のいずれかに記載のシリコン接合ウェーハの製造方法。
【0020】
(6)前記活性層用ウェーハは、シリコンウェーハ上にシリコンエピタキシャル層が形成されたエピタキシャルシリコンウェーハであり、
該シリコンエピタキシャル層の表面を前記活性層用ウェーハの前記片方の面とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のシリコン接合ウェーハの製造方法。
【0021】
(7)前記薄膜化工程において、前記シリコンエピタキシャル層と反対の面側から前記活性層用ウェーハを薄膜化し、前記シリコンウェーハを研削除去する、上記(6)に記載のシリコン接合ウェーハの製造方法。
【0022】
(8)単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンからなる活性層とが接合されたシリコン接合ウェーハであって、
前記支持基板用ウェーハと、前記活性層とを接合する接合界面を含む領域に、該接合界面を横断する転位を含むゲッタリング層を有し、
前記転位の長さは1nm以上30nm以下であることを特徴とするシリコン接合ウェーハ。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、シリコン接合ウェーハ作製後であって、デバイス形成プロセス時などでの熱処理を経た後でもゲッタリング能力を維持することのできるシリコン接合ウェーハの製造方法およびシリコン接合ウェーハを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、
図1〜
図3を参照しつつ本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、説明を省略する。また、
図1〜3では図面の簡略化のため、各構成の厚さについて、実際の厚さの割合と異なり誇張して示す。
【0026】
(シリコン接合ウェーハの製造方法)
本発明に従う、支持基板用ウェーハと、単結晶シリコンからなる活性層とが接合されたシリコン接合ウェーハの製造方法の実施形態について説明する。まず、第1実施形態として、単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハおよび単結晶シリコンからなる活性層用ウェーハのそれぞれが、表面にシリコンエピタキシャル層を有しないバルクのシリコンウェーハを用いた実施形態を説明する。次いで、第2実施形態として、シリコンウェーハ上にシリコンエピタキシャル層が形成されたエピタキシャルシリコンウェーハを活性層用ウェーハに用いる場合の実施形態を説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に従うシリコン接合ウェーハ100の製造方法のフローチャートを示している。本実施形態に従うシリコン接合ウェーハ100の製造方法では、支持基板用ウェーハ110と、活性層用ウェーハ110とを用いる(
図1(A))。まず、支持基板用ウェーハ110と、活性層用ウェーハとを真空常温接合法により貼り合わせる接合工程を行う(
図1(B)〜(D))。すなわち、接合工程では、支持基板用ウェーハ110の片方の面110Aおよび活性層用ウェーハ120の片方の面120Aに、真空常温下で、イオン化させた中性元素90を照射する活性化処理をして(
図1(B))、両方の片方の面110A,120Aを活性化面141A,142Aとする(
図1(C))。引き続き、真空常温下で両方の活性化面141A,142Aを接触させることで、支持基板用ウェーハ110と活性層用ウェーハ120とを貼り合わせる(
図1(D))。接合工程の後、活性層用ウェーハ120を薄膜化して、薄膜化後の活性層用ウェーハ120を活性層125とする薄膜化工程を行う(
図1(F))。ここで、本実施形態では、接合工程の後、薄膜化工程に先立ち、熱処理を施して、支持基板用ウェーハ110と活性層用ウェーハ120とを貼り合わせた接合領域140に転位を形成する熱処理工程を更に行うものとする(
図1(E))。こうして、単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハ110と、単結晶シリコンからなる活性層125とが接合されたシリコン接合ウェーハ100を製造することができる。以下、各工程の詳細を順次説明する。なお、真空常温接合法において、上述した支持基板用ウェーハの上記片方の面110Aと、活性層用ウェーハの上記片方の面120Aとが共に貼り合わせ面となるため、以下、これらを貼り合わせ面と言う。
【0028】
本実施形態では接合工程に先立ち、まず、単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハ110と、単結晶シリコンからなる活性層用ウェーハ120とをそれぞれ用意する(
図1(A))。第1実施形態において用いる単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハ110と、単結晶シリコンからなる活性層用ウェーハ120とのそれぞれは、表面にエピタキシャル層を有しないバルクの単結晶シリコンウェーハであれば、任意のものを用いることができる。バルクの単結晶シリコンウェーハは、FZシリコンウェーハ、CZシリコンウェーハおよびアニールウェーハなどが知られ、本明細書において、これらバルクの単結晶シリコンウェーハを総称して「シリコンウェーハ」と言う。
【0029】
<接合工程>
次に、接合工程において、支持基板用ウェーハ110と、活性層用ウェーハ120とを真空常温接合法により貼り合わせる(
図1(B)〜(D))。具体的には、真空下で支持基板用ウェーハ110および活性層用ウェーハ120の貼り合わせ面110A,120Aにイオン化させた中性元素90を照射して、両方の貼り合わせ面110A,120Aを活性化し、活性化面とする。これにより各貼り合わせ面110A,120A(活性化面141A,142A)にはアモルファス層141,142が形成され、その表面にはシリコンが本来持っているダングリングボンド(結合の手)が現れる。このダングリングボンドはエネルギー的に不安定であるため、引き続き真空常温下で両方の活性化面141A,142Aを接触させると、両活性化面141A,142Aのダングリングボンドを消滅させるようにウェーハ間で瞬時に接合力が働き、熱処理等を施すことなく、非結合領域(ボイド)なしに2つのウェーハが強固に接合される。
【0030】
真空常温接合法における活性化処理の方法としては、イオンビーム装置により加速したイオン化した中性元素を両貼り合わせ面に衝突させて両貼り合わせ面をスパッタリングしたり、プラズマ雰囲気でイオン化した中性元素を両貼り合わせ面へ加速させてエッチングするプラズマエッチング処理を施したりすることにより行うことができる。
【0031】
図2は、プラズマエッチング法により支持基板用ウェーハ110および活性層用ウェーハ120の両貼り合わせ面を活性化した後、2枚のウェーハを貼り合わせる真空常温接合装置の一例を示している。この真空常温接合装置50は、プラズマチャンバ51と、ガス導入口52と、真空ポンプ53と、パルス電圧印加装置54と、ウェーハ固定台55A,55Bと、を有する。
【0032】
まず、プラズマチャンバ51内のウェーハ固定台55A,55Bにそれぞれ支持基板用ウェーハ110および活性層用ウェーハ120を載置、固定する。次に、真空ポンプ53によりプラズマチャンバ51内を減圧し、ついで、ガス導入口52からプラズマチャンバ51内に原料ガスを導入する。続いて、パルス電圧印加装置54によりウェーハ固定台55A,55B(ならびに支持基板用ウェーハ110および活性層用ウェーハ120)に負電圧をパルス状に印加する。これにより、原料ガスのプラズマを生成するとともに、生成したプラズマに含まれる原料ガスのイオンを両ウェーハ110,120に向けて加速、照射することができる。
【0033】
照射する中性元素は、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、キセノン(Xe)、水素(H)、ヘリウム(He)およびシリコン(Si)から選択される少なくとも一種とすることが好ましい。
【0034】
プラズマチャンバ51内のチャンバ圧力(真空度)は1×10
-5Pa以下とすることが好ましい。これにより、各ウェーハ表面へスパッタされた元素が再付着するのを抑制して、ダングリングボンドの形成率が低下させることなく、活性化処理を行うことができる。
【0035】
支持基板用ウェーハ110および活性層用ウェーハ120に印加するパルス電圧は、ウェーハ表面に対する照射元素の加速エネルギーが100eV以上10keV以下となるように設定する。当該加速エネルギーが100eV未満の場合には、照射した中性元素がウェーハ表面へ堆積し、ウェーハ表面にダングリングボンドを形成することができない。一方、当該加速エネルギーが10keVを超えると、照射した元素がウェーハ内部へ注入していき、この場合にもウェーハ表面にダングリングボンドを形成することができない。
【0036】
パルス電圧の周波数は、支持基板用ウェーハ110および活性層用ウェーハ120のそれぞれにイオンが照射される回数を決定する。パルス電圧の周波数は、10Hz以上10kHz以下とすることが好ましい。ここで、パルス電圧の周波数を10Hz以上とすることにより、イオン照射のばらつきを吸収でき、イオン照射量が安定する。また、10kHz以下とすることにより、グロー放電によるプラズマ形成が安定する。
【0037】
パルス電圧のパルス幅は、支持基板用ウェーハ110および活性層用ウェーハ120のそれぞれにイオンが照射される時間を決定する。パルス幅は、1μ秒以上10m秒以下とすることが好ましい。1μ秒以上とすることにより、安定してイオンをウェーハ110,120に照射できる。また、10m秒以下とすることにより、グロー放電によるプラズマ形成が安定する。
【0038】
上記処理において、支持基板用ウェーハ110および活性層用ウェーハ120のそれぞれを加熱することはないため、その温度は常温(通常、30℃〜90℃)となる。
【0039】
なお、アモルファス層141,142を貼り合わせた後のアモルファスの状態にある接合領域140は、重金属を捕獲するゲッタリングサイトとして機能することを本発明者は見出した。さらに本発明者は、この接合領域140は、支持基板用ウェーハ110からの活性層用ウェーハ120への酸素拡散を抑制する機能を有することも見出した。この接合領域140は、活性層125の直下にあることにより、高いゲッタリング能力を発揮し、活性層125の重金属汚染を十分に抑制することができる。しかしながら、後述するように、接合領域140が熱処理を受けると、その熱処理条件によっては転位を形成することなく、結晶回復してゲッタリング能力が消失してしまうことも、本発明者は知見した。デバイス形成プロセスにおいてシリコン接合ウェーハ100が受け得る熱処理が、接合領域140のアモルファス状態を維持できる熱処理条件であれば、シリコン接合ウェーハ100はゲッタリング能力を維持することができる。しかしながら、デバイス形成プロセスでの熱処理条件によっては、接合領域140が結晶回復してしまい、シリコン接合ウェーハ100はゲッタリング能力を消失してしまう。そこで、後続工程として、転位を形成するための熱処理工程を本実施形態では行うのである。
【0040】
なお、活性化処理は、アモルファス層141,142の厚みがともに2nm以上となるように行うことが好ましい。これにより、後続工程での熱処理工程により、ゲッタリング層150の形成をより確実に行うことができる。さらに、アモルファス層141,142を貼り合わせた後の接合領域140は、支持基板用ウェーハ110中の不純物が活性層125に熱拡散するのをブロックするブロック層としても十分に機能することができ、さらに、アモルファスによるゲッタリング能力をより高めることもできる。アモルファス層141,142の厚みの調整は、イオンの加速電圧を調整することにより行うことができる。
【0041】
また、上述のアモルファス層141,142の厚みに伴う効果をより確実に得るため、活性化処理は、アモルファス層141,142の厚みがともに10nm以上となるように行うことが好ましい。
【0042】
<熱処理工程>
本実施形態では、空常温接合法により貼り合わせを行う接合工程の後、薄膜化工程に先立ち、熱処理を施して、支持基板用ウェーハ110と活性層用ウェーハ120とを貼り合わせた接合領域140に転位を形成する熱処理工程を行う。接合領域140は、熱処理によりアモルファス状態から結晶回復しつつ、転位を形成し、ゲッタリング層150となる。なお、一旦転位が形成されれば、更なる熱処理を受けたとしても、ゲッタリング層150における転位は残留する。そして、この転位がシリコン接合ウェーハ100におけるゲッタリングサイトとなり、シリコン接合ウェーハ100は金属不純物などを捕獲するゲッタリング能力を有し、かつ、シリコン接合ウェーハ作製後、デバイス形成プロセス時などの更なる熱処理を経た後でもゲッタリング能力を維持することができる。
【0043】
本実施形態に従い形成される転位について、より詳細に説明する。ゲッタリング層150に形成される転位は、支持基板用ウェーハ110と、活性層用ウェーハ120とを接合する接合界面を含む接合領域に形成され、この転位は当該接合界面を横断する。また、こうして形成される転位は、真空常温接合法により形成したアモルファス由来であるため、転位の長さは1nm以上30nm以下となる。接合工程における活性化処理条件および本工程による熱処理条件によっては、形成される転位の密度は異なる。なお、ゲッタリング層150では、アモルファスが再結晶化して単結晶となっている。
【0044】
なお、本発明者の実験により、接合領域140を結晶回復させつつ、転位を形成してゲッタリング層150を形成するためには、熱処理条件として熱処理温度が特に重要な指標となることが確認された。熱処理温度が低すぎると、接合領域140の結晶回復が始まらず、接合領域140はアモルファスのままとなる。一方、熱処理温度が高すぎると、接合領域140が急速に結晶回復し、結晶回復した接合領域140に転位が形成されない。再結晶化が始まり、かつ、急速には再結晶化しない適切な温度条件の下で熱処理を行う場合、アモルファス領域において再結晶化が部分的に進み、残存したアモルファス領域が転位形成の基点となる。そこで、このような転位をより確実に形成するためには、熱処理工程における熱処理温度を710℃以上850℃以下とすることが好ましい。
【0045】
上述した結晶回復および転位形成をより確実に行うため、熱処理工程における熱処理時間が30分以上2時間以下とすることが好ましい。また、熱処理工程における熱処理雰囲気が、アルゴン、水素、窒素、酸素からなる群から選ばれる少なくとも一種であることも好ましい。
【0046】
なお、本工程による熱処理は、一般的な加熱装置を適用することができ、RTA(Rapid Thermal Annealing)およびRTO(Rapid Thermal Oxidation)などの急速昇降温熱処理装置や、バッチ式熱処理装置(縦型熱処理装置、横型熱処理装置)などを用いて回復熱処理を行うことができる。また、市販のマイクロ波アニール装置を用いたマイクロ波アニール処理によって熱処理を行ってもよい。マイクロ波アニール処理を行う場合、周波数300MHz以上3THz以下の電磁波をシリコン接合ウェーハに照射すればよい。
【0047】
<薄膜化工程>
本実施形態では、真空常温接合法により貼り合わせを行う接合工程を行い、さらに熱処理工程を行った後、薄膜化工程を行う。本工程では、活性層用ウェーハ120を薄膜化して、薄膜化後の活性層用ウェーハを活性層125とする(
図1(F))。活性層用ウェーハ120の薄膜化は、周知の平面研削および鏡面研磨法を好適に用いることができる。また、この薄膜化にあたり、周知のスマートカット法等の他の技術を用いて行ってもよい。
【0048】
こうして作製されたシリコン接合ウェーハ100では、真空常温接合法により形成した支持基板用ウェーハ110と活性層用ウェーハ120とのアモルファスであった接合領域140が結晶回復して再結晶化し、かつ、転位が形成され、ゲッタリング層150が形成されている。そのため、シリコン接合ウェーハ100が、デバイス形成プロセス時などでの更なる熱処理を経た場合であっても、当該更なる熱処理条件に依らず、ゲッタリング能力を維持することができる。
【0049】
なお、上述の第1実施形態では、熱処理工程を接合工程と、薄膜化工程との間に行う実施形態を説明したものの、転位を形成できる限りは、熱処理工程は接合工程と、薄膜化工程の間でもよいし、熱処理工程および薄膜化工程の後に行ってもよい。このことは、後述する第2実施形態においても同様である。ただし、薄膜化時の不純物汚染の影響を考慮すると、接合工程と、薄膜化工程との間に熱処理工程を行うことが好ましい。
【0050】
なお、接合工程において既述したように、真空常温接合法により形成される接合領域140は、支持基板用ウェーハ110からの活性層用ウェーハ120への酸素拡散を抑制する機能を有する。そこで、活性層125の酸素濃度を低酸素濃度のまま維持する観点では、支持基板用ウェーハ110は、酸素濃度3×10
17atoms/cm
3(ASTM F121−1979による測定準拠、以下、酸素濃度に関して同様とする。)以下の低酸素領域を含む単結晶シリコンウェーハであることが好ましく、当該低酸素領域が支持基板用ウェーハ110の貼り合わせ面110A側の表層部に位置することがより好ましい。そして、活性層用ウェーハ120も、酸素濃度3×10
17atoms/cm
3以下の低酸素領域を含む単結晶シリコンウェーハであることが好ましく、当該低酸素領域が活性層用ウェーハ120の貼り合わせ面120A側の表層部に位置することがより好ましい。
【0051】
また、活性層用ウェーハ120の貼り合わせ面120A側の表層部は、シリコン接合ウェーハ100の活性層125となる部分であるため、酸素濃度3×10
17atoms/cm
3以下の低酸素領域とすることによって、低酸素濃度の活性層125を得ることができる。しかも、真空常温接合法で貼り合わせることから、貼り合わせ時に、当該表層部に、活性層用ウェーハ120の表層部以外の部分や、支持基板用ウェーハ110から酸素が拡散してくることを十分に抑制できる。
【0052】
さらに、支持基板用ウェーハ110の貼り合わせ面110A側の表層部を、酸素濃度3×10
17atoms/cm
3以下の低酸素領域とすることによって、デバイス作製プロセス時に支持基板からの酸素の拡散を抑制して活性層125を低酸素濃度に維持することもできる。しかも、真空常温接合法で貼り合わせることから、この低酸素領域は、貼り合わせ後も低酸素濃度を維持することができる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、
図3を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。なお、前述の第1実施形態と同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、説明を省略する。以降も、同様に、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、説明を省略する。
【0054】
第2実施形態では、
図3(A)に示すように、活性層用ウェーハ120として、シリコンウェーハ121上に、シリコンエピタキシャル層122が形成されたエピタキシャルシリコンウェーハを用いる。そして、シリコンエピタキシャル層122の表面122Aを活性層用ウェーハ120の貼り合わせ面120Aとする。その他の工程は、第1実施形態と同様にして、活性層125がシリコンエピタキシャル層122からなるシリコン接合ウェーハ200を製造することができる。シリコンエピタキシャル層122の酸素濃度は、一般的に、その基板となるバルクのシリコンウェーハ121の酸素濃度よりも2桁ほど低く、3×10
16atoms/cm
3以下という検出限界以下の酸素濃度を有するエピタキシャル層を形成することができる。本実施形態により、シリコンエピタキシャル層122をシリコン接合ウェーハ200の活性層125として用いることができる。
【0055】
また、第2実施形態では、薄膜化工程において、シリコンエピタキシャル層122と反対の面側から活性層用ウェーハ120を薄膜化し、シリコンウェーハ121を研削除去することが好ましい。この場合、シリコンウェーハ121の研削除去に加えて、シリコンエピタキシャル層122を一部研削除去することも好ましい。シリコンエピタキシャル層122のシリコンウェーハ121側の部分には、エピタキシャル成長時にシリコンウェーハ121から不純物が拡散する場合があるものの、こうすることで不純物拡散の影響を抑止することができる。
【0056】
<エピタキシャルシリコンウェーハ>
なお、エピタキシャルシリコンウェーハを活性層用ウェーハ120として用いる場合、エピタキシャル層の厚さは、活性層125の目標厚みを考慮して適宜決定することができるが、活性層の目標厚みよりも厚くすることが好ましい。つまり、エピタキシャル層のシリコンウェーハ界面から所定厚み部分は、エピタキシャル層の形成プロセスにおいてシリコンウェーハからの酸素の拡散の影響が及んでいるが、当該部分を薄膜化工程で除去することで、活性層となるエピタキシャル層を低酸素濃度とすることができるためである。
【0057】
また、エピタキシャル層は、一般的な条件により形成することができる。例えば、水素(H)をキャリアガスとして、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)、トリクロロシラン(SiHCl
3)等のソースガスをチャンバ内に導入し、使用するソースガスによっても成長温度は異なるが、概ね1000〜1200℃の温度範囲の温度でCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、シリコンエピタキシャル層をエピタキシャル成長させることができる。
【0058】
以下、上述した第1実施形態および第2実施形態に用いることのできる種々のシリコンウェーハの具体的態様について、より詳細に説明する。
【0059】
支持基板用ウェーハ110および活性層用ウェーハ120に用いるバルクの単結晶シリコンウェーハとしては、FZシリコンウェーハ、CZシリコンウェーハ、およびアニールウェーハ等を挙げることができる。CZシリコンウェーハについては、表層部が低酸素濃度であることがより好ましい。
【0060】
<FZシリコンウェーハ>
FZシリコンウェーハは、浮遊帯域溶融(Floating Zone:FZ)法で育成された単結晶シリコンインゴットをワイヤーソー等でスライスして得られるウェーハであり、その製造プロセスに酸素供給源がないことから、厚み方向全域にわたる酸素濃度が3×10
16atoms/cm
3以下という検出限界以下のウェーハとなる。そのため、本発明において支持基板用ウェーハ110および活性層用ウェーハ120として用いて好適である。
【0061】
<CZシリコンウェーハ>
また、CZシリコンウェーハは、チョクラルスキー(Czochralski:CZ)法で育成された単結晶シリコンインゴットをワイヤーソー等でスライスして得られるウェーハであり、酸素濃度は1×10
17atoms/cm
3〜18×10
17atoms/cm
3(ASTM F121-1979)のシリコンウェーハとなる。本発明では、例えば、MCZ(Magnetic field applied Czochralski)法を用いるなどして製造した、厚み方向全域にわたる酸素濃度が3×10
17atoms/cm
3以下のCZシリコンウェーハを、支持基板用ウェーハ110および活性層用ウェーハ120として用いることがより好ましい。
【0062】
<アニールウェーハ>
シリコンウェーハに対して非酸化性雰囲気または還元性雰囲気で熱処理を施して、該シリコンウェーハの表層部の酸素を外方拡散させて当該表層部の酸素濃度を低減させたアニールウェーハを、支持基板用ウェーハ110および活性層用ウェーハ120として用いることも好ましい。
【0063】
支持基板用ウェーハ110および活性層用ウェーハ120としては、上記した各種ウェーハの任意の組み合わせで用いることができる。活性層用ウェーハ120として、エピタキシャルシリコンウェーハを用いる場合、ベース基板となるバルクのシリコンウェーハ121を上記した各種ウェーハとすることも好ましい。
【0064】
なお、各ウェーハは、任意の不純物を添加して、n型またはp型とすることができ、不純物の濃度を調整して、抵抗率を調整することができる。
【0065】
<転位クラスターおよびCOPを含まないシリコンウェーハ>
また、シリコンウェーハの素材であるCZ法による単結晶シリコンインゴットの製造にあっては、育成中の単結晶インゴットが受ける熱履歴によって単結晶内に形成される欠陥分布が異なり、単結晶インゴット内には格子間シリコン起因の転位クラスター、空孔起因の空孔凝集欠陥(COP:Crystal Originated Particle)、転位クラスターやCOPが存在しない無欠陥領域などの結晶領域が形成されることが知られている。本実施形態では、支持基板用ウェーハ110および活性層用ウェーハ120として、転位クラスターおよび空孔凝集欠陥(COP:Crystal Originated Particle)を含まないシリコンウェーハを用いることも好ましい。特に、薄膜化後に活性層125となる活性層用ウェーハ120に、転位クラスターおよびCOPを含まないシリコンウェーハを用いることがより好ましい。これにより、転位クラスターおよびCOPを含まない活性層125を得ることができ、フォトダイオード形成領域(空間電荷領域)内における暗電流の発生を抑制できる。
【0066】
ここで、本発明における「COPを含まないシリコンウェーハ」とは、以下に説明する観察評価により、COPが検出されないシリコンウェーハを意味するものとする。すなわち、まず、CZ法により育成された単結晶シリコンインゴットから切り出し加工されたシリコンウェーハに対して、SC−1洗浄(すなわち、アンモニア水と過酸化水素水と超純水とを1:1:15で混合した混合液による洗浄)を行い、洗浄後のシリコンウェーハ表面を、表面欠陥検査装置としてKLA-Tencor社製:Surfscan SP-2を用いて観察評価し、表面ピットと推定される輝点欠陥(LPD:Light Point Defect)を特定する。その際、観察モードはObliqueモード(斜め入射モード)とし、表面ピットの推定は、Wide Narrowチャンネルの検出サイズ比に基づいて行うものとする。こうして特定されたLPDに対して、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて、COPか否かを評価する。この観察評価により、COPが観察されないシリコンウェーハを「COPを含まないシリコンウェーハ」とする。
【0067】
一方、転位クラスターは、過剰な格子間シリコンの凝集体として形成されるサイズの大きな(10μm程度)の欠陥(転位ループ)であり、セコエッチングなどのエッチング処理を施したり、Cuデコレーションして顕在化させることにより、目視レベルで転位クラスターの有無を簡単に確認することができる。
【0068】
なお、より強力なゲッタリング能力をシリコン接合ウェーハ100,200に付与するため、接合工程に先立ち、支持基板用ウェーハ110に、イオン注入法、透過性レーザ照射法、酸素析出物形成法などの、公知のゲッタリングサイト形成技術を適用することも好ましい。
【0069】
(シリコン接合ウェーハ)
本発明の一実施形態に従うシリコン接合ウェーハ100は、前述の第1実施形態により作製することができる。すなわち、このシリコン接合ウェーハ100は、
図1(F)に示すように、単結晶シリコンからなる支持基板用ウェーハ110と、単結晶シリコンからなる活性層125とが接合されてなる。そして、支持基板用ウェーハ110と、活性層125とを接合する接合界面を含む領域に、該接合界面を横断する転位を含むゲッタリング層150を有し、転位の長さは1nm以上30nm以下である。このシリコン接合ウェーハ100は、デバイス形成プロセス時などでの更なる熱処理を経た後でもゲッタリング能力を維持するを維持することができる。
【0070】
また、
図3(F)に示すように、シリコン接合ウェーハ200において、活性層125は、シリコンエピタキシャル層からなることが好ましい。シリコン接合ウェーハ200は、前述の第2実施形態により作製することができる。
【実施例】
【0071】
(発明例1)
図3に示した手順に従って、発明例1に係るシリコン接合ウェーハを製造した。まず、支持基板用ウェーハとして、直径:200mm、厚み:725μmのn型CZシリコンウェーハ(酸素濃度:0.5×10
18atoms/cm
3、ドーパント:リン、ドーパント濃度:4.4×10
14atoms/cm
3、目標抵抗率:10Ω・cm)を用意した。また、活性層用ウェーハとして、直径:200mm、厚み:725μmのn型CZシリコンウェーハ(酸素濃度:0.7×10
18atoms/cm
3、ドーパント:リン、ドーパント濃度:1.4×10
14atoms/cm
3、目標抵抗率:30Ω・cm)上に、厚み8μmのシリコンエピタキシャル層(ドーパント:リン、ドーパント濃度:4.4×10
14atoms/cm
3、目標抵抗率:10Ω・cm)をエピタキシャル成長させたエピタキシャルシリコンウェーハを用意した。
【0072】
続いて、支持基板用ウェーハと活性層用ウェーハとを真空常温接合法で貼り合わせた。具体的には、支持基板用ウェーハおよび活性層用ウェーハを、
図2に示した真空常温接合装置に導入し、チャンバ内の温度を25℃、チャンバ内の圧力を1.0×10
-5Pa未満とした後、Arイオンを加速電圧:600eV、周波数:150Hz、パルス幅:50×10
-6秒の条件で、各ウェーハの表層部であるエピタキシャル層表面に照射する活性化処理を施して、両表面に各々厚み5nmのアモルファス層を形成した。その後、支持基板用ウェーハと活性層用ウェーハとを、両表面のアモルファス層を介して貼り合わせた。
【0073】
真空常温接合法により張り合わせを行った後、ULVAC社製の横型炉装置を用い、窒素雰囲気下にて、熱処理温度:710℃、熱処理時間:1時間の熱処理を行った。
【0074】
最後に、活性層用ウェーハの、シリコンエピタキシャル層と反対の面側から研削処理および研磨処理を施して、活性層用ウェーハのうちシリコンウェーハとエピタキシャル層の厚み方向の一部を除去し、活性層としてエピタキシャル層を厚み4μm残すように薄膜化し、発明例1に係るシリコン接合ウェーハを作製した。
【0075】
(発明例2)
発明例1における熱処理温度:710℃を750℃に変えた以外は、発明例1と同様にして発明例2に係るシリコン接合ウェーハを作製した。
【0076】
(発明例3)
発明例1における熱処理温度:710℃を850℃に変えた以外は、発明例1と同様にして発明例3に係るシリコン接合ウェーハを作製した。
【0077】
(比較例1)
発明例1における熱処理温度:710℃を700℃に変えた以外は、発明例1と同様にして比較例1に係るシリコン接合ウェーハを作製した。
【0078】
(比較例2)
発明例1における熱処理温度:710℃を900℃に変えた以外は、発明例1と同様にして比較例2に係るシリコン接合ウェーハを作製した。
【0079】
(従来例1)
発明例1の支持基板用ウェーハと同じく、直径:200mm、厚み:725μmのn型CZシリコンウェーハ(酸素濃度:0.5×10
18atoms/cm
3、ドーパント:リン、ドーパント濃度:4.4×10
14atoms/cm
3、目標抵抗率:10Ω・cm)を用意した。次いで、活性層として、厚み4μmのシリコンエピタキシャル層(ドーパント:リン、ドーパント濃度:4.4×10
14atoms/cm
3、目標抵抗率:10Ω・cm)を形成し、従来例1に係るエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0080】
<転位観察>
発明例1〜3、比較例1〜2および従来例1の各サンプルの、接合領域におけるTEM断面写真を取得した。観察結果を下記の表1に示す。さらに、代表例として、
図4(A)に比較例1の、
図4(B)に発明例1の、
図4(C)に発明例2の、
図5(B)に発明例3の、
図5(C)に比較例2のTEM断面写真を示す。なお、接合領域を対照比較するため、比較例1のTEM断面写真を
図5(A)に再掲している。まず、
図4(A)より、熱処理温度が低い場合には、接合領域はアモルファス状態のままであることが確認された。従来例1においても、
図4(A)と同様に、接合領域がアモルファスであることが確認された。また、
図4(B),(C)および
図5(B)に示されるように、発明例1〜3においては、アモルファスであった接合領域において転位が形成され、かつ、結晶回復したことが確認された。
図4(B),(C)および
図5(B)にて観察される転位の長さは1nm〜10nmの範囲内であった。さらに、
図5(C)より、熱処理温度が高い場合には、接合領域は転位を形成することなく、結晶回復することが確認された。
【0081】
<ゲッタリング能力評価>
発明例1〜3、比較例1〜2および従来例1の各サンプルの活性層の表面を、Ni汚染液(1×10
13atoms/cm
2)を用いてスピンコート法により故意に汚染し、次いで、窒素雰囲気中において900℃で30分の熱処理を施した。次いで、ライト液へ3分間浸した後、活性層の表面を光学顕微鏡にて観察し、活性層表面で観察されるピット(ニッケルシリサイド起因の表面ピット:Niピット)の発生の有無を調査した。観察結果を下記の表1に示す。さらに、
図6に代表例として、発明例1〜3および従来例1の顕微鏡写真を示す。
【0082】
表1および
図6より、発明例1〜3、比較例1では、Niシリサイドが観察されなかった。よって、Niに対するゲッタリング能力を付与できたことが確認された。一方、比較例2および従来例1では、Niシリサイドが観察されたため、Niに対するゲッタリング能力がないことが確認された。
【0083】
【表1】
【0084】
<参考評価:酸素濃度分析>
代表例として、発明例1および従来例1の活性層の深さ方向の酸素濃度分布を二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定した。結果を
図7のグラフに示す。発明例1では、接合界面近傍に酸素が偏析していることが確認される。これは、形成された転位が活性層(エピタキシャル層)への酸素拡散を抑制していることを意味する。一方、従来例1では基板からエピタキシャル層へと、酸素が拡散していることが確認された。ゲッタリング能力評価と併せて考えると、真空常温接合の結果発生したアモルファスの接合領域または結晶回復時に形成された転位が、ゲッタリングシンクとして機能することが示唆される。
【0085】
以上の結果から、発明例1〜3は、デバイス形成プロセスにおいて受け得る熱処理を経た後でもゲッタリング能力を維持することができることが確認された。比較例1では、デバイス形成プロセスにおける熱処理条件によってはゲッタリング能力を維持することはできるが、確実ではない。また、比較例2では、アモルファスの接合領域が完全に結晶回復し、さらに転位もないため、比較例2はゲッタリング能力を有していない。
【0086】
[参考実験]
(比較例3)
比較例1における熱処理時間:1時間を5分間に変えた以外は、比較例1と同様にして比較例3に係るシリコン接合ウェーハを作製した。比較例1と同様に、比較例3のサンプルの、接合領域におけるTEM断面写真を取得した。TEM断面写真から、
図4(A)と同様のアモルファス領域が確認された。したがって、アモルファスの再結晶化には、熱処理温度条件が重要な指標となると考えられる。