特許第6791366号(P6791366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791366
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】可塑剤組成物及びこれを含む樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08K 5/12 20060101AFI20201116BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   C08K5/12
   C08L101/00
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-510639(P2019-510639)
(86)(22)【出願日】2017年12月11日
(65)【公表番号】特表2019-529605(P2019-529605A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】KR2017014486
(87)【国際公開番号】WO2018110922
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2019年3月22日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0168320
(32)【優先日】2016年12月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン キュ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ユン キ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ソク ホ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ミ イェオン
(72)【発明者】
【氏名】ムーン、ジョン ジュ
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/055572(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/195055(WO,A1)
【文献】 特表2016−513081(JP,A)
【文献】 特開2015−083690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 5/00 − 13/08
C08L 1/00 − 101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエステル基に結合されたアルキル基の重量平均炭素数が7.1から8.9のものであるテレフタレート系物質と、下記化学式1で表される化合物を1種以上含むモノベンゾエート系物質と、を含んでなり、
前記テレフタレート系物質及びモノベンゾエート系物質の重量比は、99:1から1:99のものである可塑剤組成物:
[化学式1]
【化1】
前記化学式1において、
R1は、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、またはオクチル基でなる群から選択されるものである
【請求項2】
前記テレフタレート系物質及びモノベンゾエート系物質の重量比は、95:5から30:70のものである請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項3】
前記テレフタレート系物質は、ジエステル基に結合されたアルキル基の重量平均炭素数が7.1から8.5のものである請求項1または2に記載の可塑剤組成物。
【請求項4】
樹脂100重量部と、請求項1からのいずれか一項に記載の可塑剤組成物5から150重量部と、を含む樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂は、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリケトン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン及び熱可塑性エラストマーでなる群から選択される1種以上のものである請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物は、電線、床材、自動車内装材、フィルム、シート、壁紙及びチューブでなる群から選択される1種以上の製造に適用されるものである請求項またはに記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2016年12月12日付韓国特許出願第10−2016−0168320号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、可塑剤組成物及びこれを含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
通常、可塑剤は、アルコールがフタル酸及びアジピン酸のようなポリカルボン酸と反応し、これに相応するエステルを形成する。また、人体に有害なフタレート系可塑剤の国内外の規制を考慮し、テレフタレート系、トリメリテート系、その他の高分子系等のフタレート系可塑剤を代替し得る可塑剤組成物に対する研究が続いている。
【0004】
一般に可塑剤は、ポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂と充填剤、安定剤、顔料、防曇剤等の様々な添加剤を適宜添加して多様な加工物性を付与し、圧出成形、射出成形、カレンダー加工等の加工法により、電線、パイプ、床材、壁紙、シート、人工皮革、ターポリン、テープ及び食品包装材の業種の製品に至るまで、多様な製品の素材として用いられる。
【0005】
現在、可塑剤市場の状況は、フタレート可塑剤に対する環境イシューによって、環境に優しい可塑剤の開発が業界において競争的に進められており、最近は、環境に優しい可塑剤として使用中であるジイソノニルテレフタレート(DINTP)の可塑化効率、移行性等の品質の劣勢を克服するための新規製品の開発が行われている。
【0006】
このため、前記ジイソノニルテレフタレートより優れた製品、あるいは新規組成物の製品を開発することにより、塩化ビニル系樹脂に対する可塑剤として最適に適用可能な技術に対する研究が引き続き必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明者達は、可塑剤に対する研究を続けていた途中、構造的な限界によって発生していた不良な物性等を改善できる可塑剤組成物として、樹脂組成物に混用する時に環境に優しく、かつ、可塑化効率、吸収速度、移行性、加熱減量等の物性が改善された可塑剤組成物を確認し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明の目的は、樹脂組成物の可塑剤として使用する時、吸収速度、可塑化効率、移行性、引張強度、伸び率及び加熱減量等の物性を改善させることができる可塑剤とその製造方法、及び、これらを含む樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の一実施形態によれば、ジエステル基に結合されたアルキル基の重量平均炭素数が7超過9未満のテレフタレート系物質と、下記化学式1で表される化合物を1以上含むモノベンゾエート系物質と、を含み、前記テレフタレート系物質及びベンゾエート系物質の重量比は、99:1から1:99のものである可塑剤組成物が提供される。
[化学式1]
【化1】
前記化学式1において、R1は、炭素数1から12のアルキル基である。
【0010】
前記課題を解決するために、本発明のまた他の一実施形態によれば、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリケトン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン及び熱可塑性エラストマーでなる群から選択される1種以上の樹脂100重量部に対し、前述の可塑剤組成物を5から150重量部で含むものである樹脂組成物が提供される。
【0011】
前記樹脂組成物は、電線、床材、自動車内装材、フィルム、シート、壁紙及びチューブでなる群から選択される1種以上の製造に適用されてよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、樹脂組成物に用いる場合、環境に優しい特性を確保し、かつ、吸収速度、可塑化効率、移行特性及び加熱減量等の物性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に対する理解を深めるために本発明をより詳細に説明する。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法によって説明するために、用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0015】
本明細書において用いられた化合物の名称は、慣用的に用いられる名称であってよく、各化合物に特徴的に結合される置換基に従って命名したものであって、慣用名に該当しない化合物の名称であっても、化学式の構造で表現される置換基に従って命名されたものと理解されてよい。
【0016】
本明細書において用いられた『アルキル基』は、特別な言及がない限り炭素数の制限以外に他の制限はせず、線形又は分枝状であるものと理解されてよい。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、テレフタレート系物質とモノベンゾエート系物質が含まれた可塑剤組成物を提供する。
【0018】
前記テレフタレート系物質は、一例として、炭素数4から10のアルキル基の中から独立的に選択される末端基を有するものであってよい。
【0019】
前記テレフタレート系物質は、ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート(DEHTP)、ジイソノニルテレフタレート(DINTP)、ジイソデシルテレフタレート(DIDTP)、ジ(2−プロピルヘプチル)テレフタレート、ジアミルテレフタレート(DATP)、ジブチルテレフタレート(DBTP)、ブチルイソノニルテレフタレート(BINTP)、ブチル(2−エチルヘキシル)テレフタレート(BEHTP)、アミルイソノニルテレフタレート(AINTP)、イソノニル(2−プロピルヘプチル)テレフタレート(INPHTP)、アミル(2−プロピルヘプチル)テレフタレート(APHTP)、アミル(2−エチルヘキシル)テレフタレート(AEHTP)、(2−エチルヘキシル)(2−プロピルヘプチル)テレフタレート(EHPHTP)及び(2−エチルヘキシル)イソノニルテレフタレート(EHINTP)でなる群から選択される単一化合物又は2以上の化合物が混合された混合物のものであってよい。
【0020】
より詳細に、前記テレフタレート系物質が単一化合物の場合は、ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート(DEHTP)であってよく、前記テレフタレート系物質が混合物の場合は、3種のテレフタレート系物質が混合されたものであってよく、例えば、ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート、ブチル(2−エチルヘキシル)テレフタレート及びジブチルテレフタレートが混合された第1混合物、ジイソノニルテレフタレート、ブチルイソノニルテレフタレート及びジブチルテレフタレートが混合された第2混合物、ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート、(2−エチルヘキシル)イソノニルテレフタレート及びジイソノニルテレフタレートが混合された第3混合物、ジ(2−プロピルヘプチル)テレフタレート、イソノニル(2−プロピルヘプチル)テレフタレート及びジイソノニルテレフタレートが混合された第4混合物、ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート、(2−エチルヘキシル)(2−プロピルヘプチル)テレフタレート及びジ(2−プロピルヘプチル)テレフタレートが混合された第5混合物、又はジアミルテレフタレート、アミル(イソノニル)テレフタレート及びジイソノニルテレフタレートが混合された第6混合物であってよい。
【0021】
具体的に、前記第1から第6混合物の場合、特定の組成比を有してよく、各混合物の構成成分の記載順にそれぞれの成分が3.0から99.0モル%;0.5から96.5モル%及び0.5から96.5モル%;で混合されたものであってよい。
【0022】
重量基準としては、前記三つの組成の組成比は、それぞれ0.5から50重量%;3.0から70重量%;及び0.5から85重量%であってよく、前記重量比は、反応時に原料の投入量の調節によって制御できる。さらに、より好ましくは、0.5重量%から50重量%、10重量%から50重量%、及び35重量%から80重量%の量で形成されてよい。
【0023】
前記組成比は、エステル化反応で生成される混合組成比であってよく、特定の化合物を付加的にさらに混合して意図された組成比であってよく、所望の物性に合うように混合組成比を適宜調節してよい。
【0024】
特に、前記テレフタレート系物質は、重量平均炭素数が7超過9未満のものから選択されなければならず、好ましくは7.1から8.9、より好ましくは7.14から8.7のものであってよい。
【0025】
本明細書において、前記『重量平均炭素数』は、1以上のテレフタレートが含まれたテレフタレート系物質において、各テレフタレート成分のジエステル基に結合された二つのアルキル基の平均炭素数の重量分率で平均して得られる値である。例えば、下記数式1によって定義されてよい。
[数式1]
【数1】
前記数式1において、Nは重量平均炭素数であり、Cは各テレフタレート成分のジエステル基に結合された二つのアルキル基の平均炭素数であり、wは各テレフタレート成分の重量分率である。
【0026】
具体的に、第1成分から第n成分がテレフタレート系物質に含まれた場合、第1成分の二つのアルキル基の平均炭素数(C)と第1成分の重量分率(w)の積、第2成分の二つのアルキル基の平均炭素数(C)と第2成分の重量分率(w)の積、そして第n成分の二つのアルキル基の平均炭素数(C)と第n成分の重量分率(w)の積を合算した値であってよい。
【0027】
例えば、ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレートの場合、重量平均炭素数は、二つのアルキル基の平均炭素数が8であり、ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレートがテレフタレート系物質をなしているため、重量分率は1となるので、重量平均炭素数は8となり、前記第1混合物の場合、三つの成分がそれぞれ5重量%、40重量%及び55重量%の場合、重量平均炭素数は(0.05×4)+(0.4×6)+(0.55×8)=7となる。
【0028】
前記のように重量平均炭素数が前記範囲を満たす場合は、可塑化効率、吸収速度、移行性及びストレス移行性を改善でき、これは、樹脂完成品の使用において、移行によって発生し得る品質の悪化を防ぐか遅延することができるので、製品の寿命を延ばせるだけでなく、人体接触の可能性も減らし得るという長所がある。特に、重量平均炭素数が9以上の場合(例えば、ジイソノニルテレフタレート級以上のテレフタレート系物質)は、可塑化効率と移行性が大きく劣化する恐れがあり、重量平均炭素数が7以下の場合は、加熱減量と引張強度の側面において非常に損する恐れがあるため、前記テレフタレート系物質の場合、重量平均炭素数は7を超過しなければならず、9より小さいことが好ましい。
【0029】
また、本発明の一実施形態によれば、前記テレフタレート系物質に加え、1種以上の化合物を含むモノベンゾエート系物質をさらに含む可塑剤組成物を提供できる。前記モノベンゾエート系化合物は、下記化学式1で表されてよい。
[化学式1]
【化2】
前記化学式1において、R1は、炭素数1から12のアルキル基である。
【0030】
具体的に、前記化学式1で表される化合物は、安息香酸又はベンゾエートと、炭素数が1から12の1次アルキルアルコールとがエステル反応して生成されたモノベンゾエート系物質であってよい。前記モノベンゾエート系物質は、前記化学式1で表される化合物を1以上含むものであってよく、前記化学式1においてR1はアルキル基であって、炭素数1から12の線形アルキル基、又は炭素数3から12の分枝状アルキル基であってよく、炭素数が4から10であることが好ましいといえる。前記分枝状アルキル基の場合、主鎖に結合された分枝鎖は炭素数が1から5であってよく、好ましくは1から3であってよい。
【0031】
具体的に、前記化学式1においてR1は、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、イソノニル基、2−プロピルヘプチル基、デシル基又はイソデシル基が適用されてよく、好ましく、2−エチルヘキシル基、イソノニル基、又は2−プロピルヘプチル基が適用されてよい。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、前記可塑剤組成物内にテレフタレート系物質とジベンゾエート系物質は、99:1から1:99の重量比で含まれるものであってよく、前記重量比の範囲の上限としては、99:1、95:5、90:10、85:15、80:20、70:30、60:40又は50:50が適用されてよく、下限としては、1:99、5:95、10:90、15:85、20:80、30:70又は40:60が適用されてよい。好ましくは95:5から20:80、より好ましくは95:5から30:70であってよく、95:5から40:60、又は95:5から50:50であってよい。
【0033】
本発明でのように、テレフタレート系物質とモノベンゾエート系物質を混合して可塑剤組成物に適用する場合、環境に優しい特性を確保し、かつ、吸収速度、可塑化効率、移行性等の物性を改善できる。
【0034】
本発明において前記可塑剤組成物を製造する方式は、ブランド方式を適用できるものであって、前記ブランド製造方式は一例として次の通りである。
【0035】
テレフタレート系物質とモノベンゾエート系物質を用意し、前記テレフタレート系物質とモノベンゾエート系物質を重量比として1:99から99:1等の特定の比率でブランドして前記可塑剤組成物を製造することができ、前記テレフタレート系物質と前記モノベンゾエート系物質は、単一化合物であってもよく、混合物であってもよい。
【0036】
前記テレフタレート系物質が単一化合物の場合、2−エチルヘキシルアルコールとテレフタル酸が反応する直接エステル化反応を介してテレフタレート系物質を製造することができる。
【0037】
前記直接エステル化反応は、アルコールにテレフタル酸を投入した後、触媒を添加して窒素雰囲気下で反応させるステップと、未反応アルコールを除去して未反応酸を中和させるステップと、減圧蒸留によって脱水及び濾過するステップと、で準備されてよい。
【0038】
また、前記ブランド製造方式に用いられる前記アルコールは、テレフタル酸100モル%を基準に150から500モル%、200から400モル%、200から350モル%、250から400モル%、あるいは270から330モル%の範囲内に用いられてよい。
【0039】
一方、前記ブランド製造方式で用いる触媒は、一例として、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、アルキル硫酸等の酸触媒、乳酸アルミニウム、フッ化リチウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化カルシウム、塩化鉄、リン酸アルミニウム等の金属塩、ヘテロポリ酸等の金属酸化物、天然/合成ゼオライト、陽イオン及び陰イオン交換樹脂、テトラアルキルチタネート(tetraalkyl titanate)及びそのポリマー等の有機金属の中から選択される1種以上であってよい。具体的な例として、前記触媒はテトラアルキルチタネートを用いてよい。
【0040】
触媒の使用量は種類によって異なってよく、一例として、均一触媒の場合は、反応物全体100重量%に対して0.01から5重量%、0.01から3重量%、1から5重量%、あるいは2から4重量%の範囲内、そして不均一触媒の場合は、反応物全体重量の5から200重量%、5から100重量%、20から200重量%、あるいは20から150重量%の範囲内であってよい。
【0041】
この際、前記反応温度は180から280℃、200から250℃、あるいは210から230℃の範囲内であってよい。
【0042】
前記テレフタレート系物質が混合物の場合、前述の直接エステル化反応を介してテレフタレート化合物が製造された後に混合されるものであってよく、前記直接エステル化反応でアルコールを2種以上投入して反応させることによって製造されるものであってよい。
【0043】
また、前記テレフタレート系物質が混合物の場合、ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート又はジイソノニルテレフタレートの中から選択される何れか一つのテレフタレート化合物と、ブチルアルコール又はイソブチルアルコールの中から選択される何れか一つのアルコールが反応するトランスエステル化反応を介してテレフタレート化合物を製造することができる。
【0044】
本発明で用いられる『トランス−エステル化反応』は、下記反応式1のようにアルコールとエステルが反応し、下記反応式1で表れるところのようにエステルのR''がアルコールのR'と相互交換される反応を意味する:
[反応式1]
【化3】
【0045】
本発明の一実施形態によれば、前記トランス−エステル化反応が行われれば、アルコールのアルコキシドがエステル系化合物に存在する二つのエステル(RCOOR'')基の炭素を攻撃する場合と、エステル系化合物に存在する一つのエステル(RCOOR'')基の炭素を攻撃する場合と、反応が行われていない未反応の場合と、のように、三つの場合の数によって3種のエステル組成物が生成されてよい。
【0046】
また、前記トランス−エステル化反応は、酸−アルコール間のエステル化反応に比べて廃水の問題を起こさないという長所があり、無触媒下で進められ得るため、酸触媒の使用時の問題点を解決できる。
【0047】
例えば、ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレートとブチルアルコールは、前記トランス−エステル化反応によって、ジブチルテレフタレート、ブチル(2−エチルヘキシル)テレフタレート及びジ(2−エチルヘキシル)テレフタレートの混合物が生成されてよく、前記3種のテレフタレートは、混合物全体重量に対して、それぞれ0.5重量%から50重量%、3.0重量%から70重量%、及び0.5重量%から85重量%の量で形成されてよく、具体的に、0.5重量%から50重量%、10重量%から50重量%、及び35重量%から80重量%の量で形成されてよい。前記範囲内では、工程効率が高くて加工性及び吸収速度に優れたテレフタレート系物質(混合物)を収得するという効果がある。
【0048】
また、前記トランス−エステル化反応によって製造された混合物は、アルコールの添加量によって前記混合物の組成比を制御できる。
【0049】
前記アルコールの添加量は、テレフタレート化合物100重量部に対して、0.1から89.9重量部、具体的には3から50重量部、より具体的には5から40重量部であってよい。
【0050】
前記テレフタレート化合物は、アルコールの添加量が多いほど、トランス−エステル化反応に参加するテレフタレート化合物のモル分率(mole fraction)が大きくなるはずなので、前記混合物において生成物である二つのテレフタレート化合物の含量が増加することがあり、これに相応して未反応で存在するテレフタレート化合物の含量は減少する傾向が見られる。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、反応物であるテレフタレート化合物とアルコールのモル比は、一例として1:0.005から5.0、1:0.05から2.5、あるいは1:0.1から1.0であり、この範囲内で工程効率が高くて加工性改善の効果に優れたエステル系可塑剤組成物を収得するという効果がある。
【0052】
但し、前記3種のテレフタレート系物質の混合物の組成比が前記範囲に制限されるものではなく、3種のテレフタレートのうち何れか一つをさらに投入することでその組成比を変更してよく、可能な混合組成比は前述のとおりである。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、前記トランス−エステル化反応は、120から190℃、好ましくは135から180℃、より好ましくは141から179℃の反応温度下で10分から10時間、好ましくは30分から8時間、より好ましくは1から6時間で行われてよい。前記温度及び時間の範囲内で所望の組成比のテレフタレート系物質である混合物が効果的に得られる。この際、前記反応時間は、反応物を昇温した後、反応温度に到達した時点から計算されてよい。
【0054】
前記トランス−エステル化反応は酸触媒又は金属触媒下で実施されてよく、この場合、反応時間が短縮されるという効果がある。
【0055】
前記酸触媒は、一例として、硫酸、メタンスルホン酸又はp−トルエンスルホン酸等であってよく、前記金属触媒は、一例として、有機金属触媒、金属酸化物触媒、金属塩触媒又は金属自体であってよい。
【0056】
前記金属成分は、一例として、錫、チタン及びジルコニウムでなる群から選択される何れか一つ、又はこれらのうち2種以上の混合物であってよい。
【0057】
前記直接エステル化反応とトランスエステル化反応は、前述のモノベンゾエート系物質の製造にも適用されてよい。このように、モノベンゾエート系物質を直接エステル化反応又はトランスエステル化反応を介して製造する場合は、前記テレフタレート系物質の製造に適用された内容と同様にその内容等が適用されてよい。
【0058】
本発明の他の一実施形態によれば、樹脂100重量部と、前述の可塑剤組成物5から150重量部と、を含む樹脂組成物が提供される。
【0059】
前記樹脂は、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリケトン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン及び熱可塑性エラストマーでなる群から選択される1種以上のものであってよい。
【0060】
前記可塑剤組成物は、樹脂100重量部に対して、好ましく5から100重量部が含まれてよく、場合によって5から50重量部、又は50から150重量部が含まれてよく、好ましく30から60重量部が含まれてよく、コンパウンド処方、シート処方及びプラスチゾル処方に全て効果的な樹脂組成物を提供できる。
【0061】
一例として、前記可塑剤組成物は、電線、床材、自動車内装材、フィルム、シート、壁紙あるいはチューブの製造に適用できる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、色々と異なる形態に変形されてよく、本発明の範囲が以下で詳述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0063】
製造例1:ジ(2−エチルヘキシル)テレフタレートの製造
冷却器、コンデンサー、デカンター、還流ポンプ、温度コントローラー、攪拌器等を備えた4口の3リットル反応器に精製テレフタル酸(purified terephthalic acid; TPA)498.0g、2−エチルヘキシルアルコール(2−EH)1170g(TPA:2−EHのモル比(1.0):(3.0))、触媒としてチタン系触媒(TIPT、tetraisopropyl titanate)を1.54g(TPA 100重量部に対して0.31重量部)を投入し、約170℃まで徐々に昇温させた。約170℃近くで生成水の発生が始まり、反応温度は約220℃、大気圧の条件で窒素ガスを引き続き投入しつつ約4.5時間エステル反応を行い、酸価が0.01に到達すれば反応を終了する。
【0064】
反応完了後、未反応原料を除去するために減圧下で蒸留抽出を0.5から4時間実施する。一定の含量水準以下に未反応原料を除去するため、スチームを用いて減圧下で0.5から3時間スチーム抽出を施行し、反応液の温度を約90℃に冷却し、アルカリ溶液を利用して中和処理を実施する。さらに、水洗を実施してもよく、以後、反応液を脱水して水分を除去する。水分が除去された反応液に濾材を投入して一定時間撹拌した後、濾過して最終的にジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート1326.7g(収率:99.0%)を得た。
【0065】
製造例2:DEHTP/BEHTP/DBTPのTP混合物の製造
撹拌器、コンデンサー及びデカンターが設けられた反応器に、製造例1で得たジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート2000g及びn−ブタノール340g(DEHTP 100重量部を基準に17重量部)を投入した後、窒素雰囲気下、160の反応温度で2時間トランス−エステル化反応させ、ジブチルテレフタレート(DBTP)、ブチル(2−エチルヘキシル)テレフタレート(BEHTP)及びジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート(DEHTP)をそれぞれ4.0重量%、35.0重量%及び61.0重量%の範囲で含むエステル系可塑剤組成物を得た。
【0066】
前記反応生成物を混合蒸留することでブタノール及び2−エチルヘキシルアルコールを除去し、最終的に第1混合物を製造した。
【0067】
製造例3:DINTP/INEHTP/DEHTPのTP混合物の製造
前記製造例1において、アルコールとして2−エチルヘキシルアルコール(2−EH)とイソノニルアルコール(INA)を全体モル比の7:3の比率で用いることを除いて同様に製造した。製造された最終の製品は、ジイソノニルテレフタレート(DINTP)、(2−エチルヘキシル)イソノニルテレフタレート(INEHTP)及びジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート(DEHTP)をそれぞれ8.5重量%、37.5重量%及び54.0重量%の範囲で含む組成物を得た。
【0068】
製造例4:DEHTP/EHPHTP/DEHTPのTP混合物の製造
前記製造例3において、イソノニルアルコール(INA)を用いる代わりに2−プロピルヘプタノールを用いて、ジ(2−プロピルヘプチル)テレフタレート(DPHTP)、(2−エチルヘキシル)(2−プロピルヘプチル)テレフタレート(EHPHTP)及びジ(2−エチルヘキシル)テレフタレート(DEHTP)をそれぞれ7.0重量%、35.0重量%及び58.0重量%の範囲で含む組成物を得た。
【0069】
製造例5:DPHTP/INPHTP/DINTPのTP混合物の製造
前記製造例1において、アルコールとしてイソノニルアルコール(INA)と2−プロピルヘプチルアルコールを全体モル比の7:3の比率で用いることを除いて同様に製造した。製造された最終の製品は、ジ(2−プロピルヘプチル)テレフタレート(DPHTP)、イソノニル(2−プロピルヘプチル)テレフタレート(INPHTP)及びジイソノニルテレフタレート(DINTP)をそれぞれ4.0重量%、35.0重量%及び61.0重量%の範囲で含む組成物を得た。
【0070】
製造例6:ジヘプチルテレフタレートの製造
製造例1において、2−エチルヘキシルアルコールの代りにノルマルヘプタノールを用いることを除いては、同様の方法で実施してジヘプチルテレフタレートを得た。
【0071】
製造例7:2−エチルヘキシルモノベンゾエートの製造
冷却器、コンデンサー、デカンター、還流ポンプ、温度コントローラー、撹拌器等を備えた4口の3リットル反応器に安息香酸(benzoic acid)500g、2−エチルヘキシルアルコール(2−EH)1600g(BA:2−EHのモル比1:3)、触媒としてチタン系触媒(TIPT、tetraisopropyl titanate)を1.3g(BA 100重量部に対して0.26重量部)を投入し、約170℃まで徐々に昇温させた。約170℃近くで生成水の発生が始まり、反応温度は約220℃、大気圧条件で窒素ガスを引き続き投入しつつ約4.5時間エステル反応を行い、酸価が0.01に到達すれば反応を終了する。
【0072】
反応完了後、未反応原料を除去するために減圧下で蒸留抽出を0.5から4時間実施する。一定の含量水準以下に未反応原料を除去するため、スチームを用いて減圧下で0.5から3時間スチーム抽出を施行し、反応液の温度を約90℃に冷却し、アルカリ溶液を利用して中和処理を実施する。さらに、水洗を実施してもよく、以後、反応液を脱水して水分を除去する。水分が除去された反応液に濾材を投入して一定時間撹拌した後、濾過して最終的に2−エチルヘキシルベンゾエート689g(収率:98%)を得た。
【0073】
製造例8:イソノニルモノベンゾエートの製造
前記製造例6において、2−エチルヘキシルアルコールの代わりにイソノニルアルコールを適用したことを除いては、製造例6と同様の方法でイソノニルベンゾエート730g(収率:98%)を得た。
【0074】
製造例9:2−プロピルヘプチルモノベンゾエートの製造
前記製造例6において、2−エチルヘキシルアルコールの代わりに2−プロピルヘプチルアルコールを適用したことを除いては、製造例6と同様の方法で2−プロピルヘプチルベンゾエート771g(収率:98%)を得た。
【0075】
前記製造例1から9で製造された物質を用いて、可塑剤組成物を下記表1のように製造した。
【表1】
【0076】
実験例1:試片の製作及び性能評価
実施例及び比較例の可塑剤を実験用試片として用いた。前記試片の製作は、ASTM D638を参照し、PVC(LS100S)100重量部に可塑剤40重量部、安定剤(LOX 912 NP)3重量部をミキサーで配合した後、ロール練りを170℃で4分間作業し、プレス(press)を用いて180℃で2.5分(低圧)及び2分(高圧)で作業し、1T及び3Tシートを製作した。各試片を用いて次のような物性試験を行った。
【0077】
<試験項目>
【0078】
硬度(hardness)
ASTM D2240を用いて、25℃でのショア硬度(Shore『A』及びShore『D』)3T 10sを測定した。
【0079】
引張強度(tensile strength)
ASTM D638方法によって、テスト機器であるU.T.M(製造社:Instron、モデル名:4466)を用いてクロスヘッドスピード(cross head speed)を200mm/min(1T)で引っ張った後、試片が切断される地点を測定した。引張強度は、次のように計算した:
引張強度(kgf/mm)=ロード(load)値(kgf)/厚さ(mm)×幅(mm)
【0080】
伸び率(elongation rate)の測定
ASTM D638方法によって、前記U.T.Mを用いてクロスヘッドスピード(cross head speed)を200mm/min(1T)で引っ張った後、試片が切断される地点を測定し、伸び率を次のように計算した:
伸び率(%)=伸張後の長さ/初期の長さ×100
【0081】
移行損失(migration loss)の測定
KSM−3156によって厚さ2mm以上の試片を得て、試片の両面にガラス板(Glass Plate)を貼り付けた後、1kgf/cmの荷重を加えた。試片を熱風循環式オーブン(80℃)で72時間放置した後、取り出して常温で4時間冷却させた。その後、試片の両面に付着されたガラス板を除去した後、ガラス板と試片板(Specimen Plate)をオーブンに放置する前と後の重量を測定し、移行損失量を以下のような式によって計算した。
移行損失量(%)={(常温での試片の初期重量 − オーブン放置後の試片の重量)/常温での試片の初期重量}×100
【0082】
加熱減量(volatile loss)の測定
前記製作された試片を80℃で72時間作業した後、試片の重量を測定した。
加熱減量(重量%)=初期試片の重量 −(80、72時間作業後の試片の重量)/初期試片の重量×100で計算した。
【0083】
ストレス(Stress、loop)移行の測定
前記製作された試片をASTM D3291の試験方法によって、23℃で50%湿度の恒温恒湿槽で168時間放置した後、可塑剤の移行の程度を0(優秀)から3(劣悪)等級の順に評価した。
【0084】
吸収速度の測定
PVC(LS100S、LG化学)400gを80℃で予熱されたプラネタリーミキサー(Planetary mixer)に投入し、60rpmの速度で撹拌する。5分後、準備された可塑剤200gをミキサーの内部に投入してから撹拌時に発生するトルクの変化を確認し、樹脂に可塑剤が配合完了されるまでに費やされた時間を記載した。
【表2】
【0085】
前記表2に示すとおり、実施例1から6の可塑剤は、比較例1から6の可塑剤に比べ、全ての物性の側面での改善がなされていることを確認できる。すなわち、何れか一つの物性が低下されることなく、各物性が総じて優秀に表れているため、本発明に係る可塑剤を樹脂製品に適用する場合、優れた水準の物性を有する樹脂が製造可能であることを確認できる。特に、ストレス移行性において、比較例等に比べて卓越に優れた水準と表れ、移行損失と加熱減量の場合も大幅に改善されたことを確認できる。
【0086】
具体的に、二つの物質を混用していない比較例1及び2の場合、物性間の偏差が非常に甚だしく表れるため、製品として活用しにくい水準であることが分かる。例えば、比較例1の場合、可塑化効率とストレスに対する移行特性が非常に劣悪であり、比較例2は、加熱減量と伸び率、そして引張強度の側面で用いにくい水準で、その水準が非常に低いことを確認できる。
【0087】
また、テレフタレート系物質の選択において、重量平均炭素数を8.9以下に調節せず、炭素数が9であるものを用いた比較例3の場合、実施例1から6に比べて硬度が約5%程度上昇することで、可塑化効率が低下することが分かり、ストレスに対する耐移行性において大きい差があることを確認できる。さらに、重量平均炭素数が10であるもの、そして9.785であるものを用いた比較例4と6の場合、ストレスに対する耐移行性は比較例3に比べて改善されたと見られるが、依然として実施例等に比べて劣悪な水準であり、移行損失特性がさらに不良になったことを確認でき、比較例6は伸び率も劣悪になることを確認できる。
【0088】
重量平均炭素数が7であるものを適用した比較例5の場合、引張強度、伸び率、移行損失及び加熱減量において、全て非常に劣悪な水準を見せていることを確認できる。特に、重量平均炭素数が7.14である実施例4と比べてみれば、その差が画然であることが分かる。
【0089】
これを介し、本発明に係る可塑剤組成物を用いる場合は、ストレスに対する耐移行性が大幅に改善され、移行損失と加熱減量特性に優れ、引張強度及び伸び率特性においても改善があるという点を確認できる。