(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記OH基の量は、ATR測定用プリズムを用いて前記化学酸化膜のATR−FT−IR測定を行い、3300cm−1付近のOH基の吸光度から算出することを特徴とする請求項2に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法。
前記基板洗浄工程の後、前記熱酸化膜形成工程の前に、前記基板洗浄工程で行った洗浄により前記半導体基板に形成された化学酸化膜中に含まれるOH基の量を測定するOH基の量の測定工程をさらに有することを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれか一項に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法。
前記化学酸化膜の構成元素の化学量論比は、前記化学酸化膜の構成元素のうち、前記半導体基板の基板原子が酸素原子と結合していない状態と前記基板原子が酸素原子と結合してサブオキサイドとなっている状態の結合エネルギーのピーク強度、及び、前記基板原子が酸素原子と完全に結合している状態の結合エネルギーのピーク強度をXPSを用いてそれぞれ測定し、該測定したピーク強度の割合とすることを特徴とする請求項5に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法。
前記半導体基板をシリコンウエーハ、前記熱酸化膜をシリコン酸化膜とすることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法。
前記水素原子の量は、前記化学酸化膜のRBS測定を行い、求めた前記化学酸化膜中の水素原子の割合から算出することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法。
前記水素原子の量は、ATR測定用プリズムを用いて前記化学酸化膜のATR−FT−IR測定を行い、2130cm−1付近のSiH3基の吸光度から算出することを特徴とする請求項9に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法。
前記基板洗浄工程の後、前記熱酸化膜形成工程の前に、前記基板洗浄工程で行った洗浄により前記半導体基板に形成された化学酸化膜中に含まれる水素原子の量を測定する水素原子の量の測定工程をさらに有することを特徴とする請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の半導体基板の熱酸化膜形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
上述のように、熱酸化膜を狙い通りの薄い厚さに、再現性良く形成することができる半導体基板の熱酸化膜形成方法が求められていた。
【0037】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、半導体基板に熱酸化膜を形成する方法であって、予め、洗浄により形成された化学酸化膜を有する半導体基板であって、前記化学酸化膜の構成がそれぞれ異なる複数の半導体基板を準備し、前記複数の半導体基板を同じ熱酸化処理条件で熱酸化処理して熱酸化膜を形成し、前記化学酸化膜の構成と、前記熱酸化膜の厚さとの相関関係を求めておく相関関係取得工程と、熱酸化膜を形成する対象の半導体基板に形成される熱酸化膜の厚さが所定の厚さとなるように、前記相関関係取得工程で得た前記相関関係に基づいて、前記化学酸化膜の構成を決定するとともに、前記決定した化学酸化膜の構成となるような化学酸化膜を形成する洗浄条件を決定する洗浄条件決定工程と、前記洗浄条件決定工程で決定した洗浄条件で前記半導体基板の洗浄を行う基板洗浄工程と、前記基板洗浄工程で洗浄を行った前記半導体基板に対して、前記相関関係取得工程における前記熱酸化処理条件と同じ条件で、前記半導体基板を熱酸化処理し、前記半導体基板表面に熱酸化膜を形成する熱酸化膜形成工程とを有する半導体基板の熱酸化膜形成方法により、熱酸化膜を狙い通りの薄い厚さに、再現性良く形成することができ、その結果、熱酸化工程の管理が容易になることを見出し、本発明を完成した。
【0038】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、半導体基板に熱酸化膜を形成する方法であって、予め、洗浄により形成された化学酸化膜を有する半導体基板であって、前記化学酸化膜中に含まれるOH基の量がそれぞれ異なる複数の半導体基板を準備し、前記複数の半導体基板を同じ熱酸化処理条件で熱酸化処理して熱酸化膜を形成し、前記化学酸化膜中のOH基の量と、前記熱酸化膜の厚さとの相関関係を求めておく相関関係取得工程と、熱酸化膜を形成する対象の半導体基板に形成される熱酸化膜の厚さが所定の厚さとなるように、前記相関関係取得工程で得た前記相関関係に基づいて、前記化学酸化膜中のOH基の量を決定するとともに、前記決定したOH基の量となるような化学酸化膜を形成する洗浄条件を決定する洗浄条件決定工程と、前記洗浄条件決定工程で決定した洗浄条件で前記半導体基板の洗浄を行う基板洗浄工程と、前記基板洗浄工程で洗浄を行った前記半導体基板に対して、前記相関関係取得工程における前記熱酸化処理条件と同じ条件で、前記半導体基板を熱酸化処理し、前記半導体基板表面に熱酸化膜を形成する熱酸化膜形成工程とを有する半導体基板の熱酸化膜形成方法により、再現性良く、一定の厚さの薄い熱酸化膜を形成することができ、その結果、熱酸化工程の管理が容易になることを見出し、本発明を完成した。
【0039】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、半導体基板に熱酸化膜を形成する方法であって、予め、洗浄により形成された化学酸化膜を有する半導体基板であって、前記化学酸化膜の構成元素の化学量論比がそれぞれ異なる複数の半導体基板を準備し、前記複数の半導体基板を同じ熱酸化処理条件で熱酸化処理して熱酸化膜を形成し、前記化学酸化膜の構成元素の化学量論比と、前記熱酸化膜の厚さとの相関関係を求めておく相関関係取得工程と、熱酸化膜を形成する対象の半導体基板に形成される熱酸化膜の厚さが所定の厚さとなるように、前記相関関係取得工程で得た前記相関関係に基づいて、前記化学酸化膜の構成元素の化学量論比を決定するとともに、前記決定した化学量論比となるような化学酸化膜を形成する洗浄条件を決定する洗浄条件決定工程と、前記洗浄条件決定工程で決定した洗浄条件で前記半導体基板の洗浄を行う基板洗浄工程と、前記基板洗浄工程で洗浄を行った前記半導体基板に対して、前記相関関係取得工程における前記熱酸化処理条件と同じ条件で、前記半導体基板を熱酸化処理し、前記半導体基板表面に熱酸化膜を形成する熱酸化膜形成工程とを有する半導体基板の熱酸化膜形成方法により、熱酸化膜を狙い通りの薄い厚さに、再現性良く形成することができ、その結果、熱酸化工程の管理が容易になることを見出し、本発明を完成した。
【0040】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、半導体基板に熱酸化膜を形成する方法であって、予め、洗浄により形成された化学酸化膜を有する半導体基板であって、前記化学酸化膜中に含まれる水素原子の量がそれぞれ異なる複数の半導体基板を準備し、前記複数の半導体基板を同じ熱酸化処理条件で熱酸化処理して熱酸化膜を形成し、前記化学酸化膜中の水素原子の量と、前記熱酸化膜の厚さとの相関関係を求めておく相関関係取得工程と、熱酸化膜を形成する対象の半導体基板に形成される熱酸化膜の厚さが所定の厚さとなるように、前記相関関係取得工程で得た前記相関関係に基づいて、前記化学酸化膜中の水素原子の量を決定するとともに、前記決定した水素原子の量となるような化学酸化膜を形成する洗浄条件を決定する洗浄条件決定工程と、前記洗浄条件決定工程で決定した洗浄条件で前記半導体基板の洗浄を行う基板洗浄工程と、前記基板洗浄工程で洗浄を行った前記半導体基板に対して、前記相関関係取得工程における前記熱酸化処理条件と同じ条件で、前記半導体基板を熱酸化処理し、前記半導体基板表面に熱酸化膜を形成する熱酸化膜形成工程とを有する半導体基板の熱酸化膜形成方法により、熱酸化膜を狙い通りの薄い厚さに、再現性良く形成することができ、その結果、熱酸化工程の管理が容易になることを見出し、本発明を完成した。
【0042】
本発明者らは、半導体基板の洗浄方法が異なると形成される熱酸化膜の厚さに違いが生じる点について、鋭意調査を行ったところ、半導体基板の洗浄により形成された化学酸化膜の構成が、熱酸化処理に大きな影響を及ぼすことを見出した。そして、このような現象を利用することで、所定の厚さの薄い熱酸化膜を再現性良く形成することが可能となる熱酸化方法を完成した。
【0043】
例えば、半導体基板がシリコンウエーハであるとき、化学酸化膜はシリコン酸化膜であり、SiO
x(0<x≦2)と表すことができる。化学酸化膜の構成に関係する元素は、各種分析の結果、シリコンと酸素、そして水素である。ここで、化学酸化膜中のSiO
xのxを酸素比率と呼ぶ。化学酸化膜及びシリコン界面の酸素比率(x)によって、形成される熱酸化膜の酸化特性が影響を受け、熱酸化膜の形成速度が変化する。酸素比率が変動するということは、酸素以外の元素が異なった比率で存在するということである。
【0044】
水素はSi−Hあるいは、Si−OHの形で存在する。すなわち、これらHが多くなると酸素の存在比率は影響を受け、少なくなる。Hは、他の構成元素である酸素やシリコンと比べて比率は少ないが、Si−Hとしてシリコンを終端したり、シリコンのバックボンドに存在したりすることで、シリコンの結合状態に影響する。またOH基のように官能基として存在し、反応性を決める重要な役割を担う。
【0045】
また、主な構成元素であるシリコンと酸素は、SiO
2とは結合の比率が異なることでサブオキサイドと呼ばれる。サブオキサイドはシリコン酸化膜の前駆体としての役割があり、形成される熱酸化膜の特性を決める重要な構成である。このように、化学酸化膜の酸素比率に着目して、化学酸化膜の構成と熱酸化膜の厚さとの相関関係を取得することで、熱酸化膜の厚さを制御することが可能になる。
【0046】
本発明においては、相関関係を取得する上で準備する半導体基板は、化学酸化膜の構成が異なってさえいればよいが、その構成は、OH基の量、構成元素の化学量論比、水素原子の量を含む。
【0047】
なお、本明細書では、半導体基板を洗浄することにより形成された酸化膜を、化学酸化膜と定義する。ここで、洗浄の方法、条件は特に限定されない。薬液を使用した洗浄や、純水洗浄等により形成された酸化膜を含む。
【0048】
本発明における具体的な実施形態を説明する。
【0049】
[第一の実施形態]
本発明の第一の実施形態に係る半導体基板の熱酸化膜形成方法では、半導体基板の熱酸化処理前に、予め洗浄後の半導体基板表面に形成された化学酸化膜の構成を測定し、化学酸化膜の構成と、この半導体基板を熱酸化したときの熱酸化膜の厚さとの相関関係を求めておき、半導体基板に形成される熱酸化膜の厚さが所定の厚さとなるように、熱酸化膜を形成する対象の半導体基板表面の化学酸化膜の構成を決定し、決定した化学酸化膜の構成となるように洗浄条件を調整して化学酸化膜を形成する。これにより、所定の厚さの薄い熱酸化膜を再現性良く形成することが可能になる。
【0050】
本発明者らは、半導体基板の洗浄方法が異なると形成される熱酸化膜の厚さに違いが生じる点について、鋭意調査を行ったところ、半導体基板の洗浄により形成された化学酸化膜の構成が、熱酸化処理に大きな影響を及ぼすことを見出した。そして、このような現象を利用することで、所定の厚さの薄い熱酸化膜を再現性良く形成することが可能となる熱酸化方法を完成した。
【0051】
本発明の第一の実施形態に係る半導体基板の熱酸化膜形成方法を説明する。
(相関関係取得工程)
まず、半導体基板を複数枚準備する。この半導体基板として、シリコンウエーハを用いることが好ましい。この場合、形成される熱酸化膜はシリコン酸化膜である。シリコンウエーハは半導体基板として広く使用されているものであり、特に、デバイス作製工程では熱酸化膜が形成されたりするため、熱酸化膜を形成してシリコンウエーハ自体の評価を行うことで、より正確な評価を行うことができる。
【0052】
まず、準備した半導体基板の表面に酸化膜がない状態にするために、HF(フッ酸)で洗浄することが好ましい。HFで洗浄して酸化膜を除去した後に、さらに洗浄する。HF洗浄の後に行う洗浄方法は特に限定されないが、例えば、SC1洗浄、O
3洗浄などの薬液を用いた洗浄を行うことができ、あるいは純水リンスなどの洗浄を行うこともできる。HF洗浄の後に行う洗浄により、準備した複数の半導体基板には化学酸化膜が形成される。このとき、複数の半導体基板の化学酸化膜の構成は、それぞれ異なるものとなるようにする。薬液を用いた方法で洗浄を行う場合、簡便に化学酸化膜の構成が異なる半導体基板とすることができるため好ましい。相関関係を取得するための洗浄処理のため、できるだけ多くの異なる洗浄の種類及び/又は洗浄条件で実施することが好ましい。相関関係を取得する上で、できるだけ多くの異なる洗浄の種類及び/又は洗浄条件で実施して、複数の洗浄条件と化学酸化膜の構成の相関関係を得ておくことが好ましい。
【0053】
次に、洗浄によって形成された化学酸化膜の構成を測定する。このとき、化学酸化膜の構成の違いを明確にできる測定であれば、特に限定されない。
【0054】
次に、化学酸化膜の構成がそれぞれ異なる複数の半導体基板を、同じ熱酸化処理条件で熱酸化処理して熱酸化膜を形成する。熱酸化膜の形成条件は特に限定されず、通常の方法で行うことができる。そして、形成した熱酸化膜の厚さを測定する。測定は、例えば、分光エリプソなどで行うことができる。
【0055】
このようにして求めた化学酸化膜の構成と、形成した熱酸化膜の厚さとの相関関係を求める。
【0056】
なお、化学酸化膜の構成の測定や熱酸化膜の厚さの測定は、熱酸化膜を形成する半導体基板と同じ洗浄処理、熱酸化処理を行ったモニターウエーハなどを用いたり、同一の処理を行った半導体基板の一部を抜き取ったりして行うこともできる。
【0057】
(洗浄条件決定工程)
半導体基板表面に形成される熱酸化膜の厚さが所定の厚さとなるような洗浄条件を決定する。相関関係取得工程で取得した相関関係に基づいて、所定の厚さの熱酸化膜が形成される化学酸化膜の構成を決定するとともに、決定した化学酸化膜の構成となるような化学酸化膜を形成する洗浄条件を決定する。洗浄条件の決定においては、例えば、予め洗浄条件と化学酸化膜の構成の相関関係を取得しておき、この相関関係を利用すればよい。
【0058】
(基板洗浄工程)
次に、実際に熱酸化膜を形成する対象の半導体基板を新たに準備し、洗浄条件決定工程で決定した洗浄条件で洗浄を行う。
【0059】
(熱酸化膜形成工程)
相関関係取得工程で行った熱酸化処理と同じ条件で熱酸化処理し、基板洗浄工程で洗浄した半導体基板表面に熱酸化膜を形成する。
【0060】
以上のような本発明に係る各工程を経て半導体基板に熱酸化膜を形成することで、再現性良く所定の厚さの薄い熱酸化膜を形成することができる。
【0061】
なお、本発明においては、半導体基板表面に形成される熱酸化膜の厚さが1〜10nmの範囲と薄い場合に、より顕著な効果を奏するため、このような範囲の熱酸化膜を形成するのに好適である。
【0062】
[第二の実施形態]
本発明の第二の実施形態に係る半導体基板の熱酸化膜形成方法では、化学酸化膜中に含まれるOH基の量の違いに着目し、半導体基板の熱酸化処理前に、予め洗浄後の半導体基板表面に形成された化学酸化膜中のOH基の量と、この半導体基板を熱酸化したときの熱酸化膜の厚さとの相関関係を求めておき、半導体基板に形成される熱酸化膜の厚さが所定の厚さとなるように、化学酸化膜中のOH基の量を決定し、決定したOH基の量となるような化学酸化膜を形成する。これにより、所定の厚さの酸化膜を再現性よく形成することが可能になる。
【0063】
本発明者らは、半導体基板の洗浄方法が異なると形成される熱酸化膜の厚さに違いが生じる点について、鋭意調査を行ったところ、半導体基板の洗浄により形成された化学酸化膜中のOH基の量が、熱酸化処理に大きな影響を及ぼすことを見出した。
【0064】
図1は、シリコンウエーハ表面の化学酸化膜中のOH基の量(3300cm
−1の相対吸光度)とシリコン熱酸化膜の厚さの関係を示した図である。3300cm
−1の相対吸光度が大きくなるにしたがって、熱酸化膜が厚くなっていることが分かる。この現象は、酸化性ガスを使用した熱酸化の場合にWet酸化の酸化速度がDry酸化よりも大きくなることと同様であり、シリコンウエーハ表面に形成された化学酸化膜中に含まれるOH基の量の違いによって熱酸化処理後の熱酸化膜の厚さが異なると考えられる。
【0065】
なお、化学酸化膜中に含まれるOH基の量は、例えば、化学酸化膜の赤外線吸収特性を調べることで求めることができる。赤外線吸収特性の測定として、例えば、FT−IR測定を行い、3300cm
−1付近の相対吸光度からOH基の量を算出することができる。この場合、3300cm
−1付近の相対吸光度の値を、OH基の量を表す指標とすることができる。以下の説明では、「3300cm
−1付近の相対吸光度」を「OH基の量」と表現することもある。
【0066】
本発明の第二の実施形態に係る半導体基板の熱酸化膜形成方法を説明する。
(相関関係取得工程)
まず、第一の実施形態と同様に半導体基板を複数枚準備する。この半導体基板として、シリコンウエーハを用いることが好ましい。この場合、形成される熱酸化膜はシリコン酸化膜である。シリコンウエーハは半導体基板として広く使用されているものであり、特に、デバイス作製工程では熱酸化膜が形成されたりするため、熱酸化膜を形成してシリコンウエーハ自体の評価を行うことで、より正確な評価を行うことができる。
【0067】
次に、準備した半導体基板の表面に酸化膜がない状態にするために、HF(フッ酸)で洗浄することが好ましい。HFで洗浄して酸化膜を除去した後に、さらに洗浄する。HF洗浄の後に行う洗浄方法は特に限定されないが、例えば、SC1洗浄、O
3洗浄などの薬液を用いた洗浄を行うことができ、あるいは純水リンスなどの洗浄を行うこともできる。HF洗浄の後に行う洗浄により、準備した複数の半導体基板には化学酸化膜が形成される。このとき、複数の半導体基板の化学酸化膜中に含まれるOH基の量は、それぞれ異なるものとなるようにする。薬液を用いた方法で洗浄を行う場合、OH基の濃度が異なる薬液を用いることで、簡便に化学酸化膜中のOH基の量が異なる半導体基板とすることができるため好ましい。さらに、SC1洗浄であれば、NH
4OH濃度が高くアルカリ性が強いほど、3300cm
−1の吸光度も大きくなり(すなわちOH基が多く含まれ)、NH
4OH濃度を変化させることでより簡便に化学酸化膜中のOH基の量が異なる半導体基板とすることができるため好ましい。洗浄方法によって薬液の濃度とOH基の量の相関が得られる範囲はそれぞれ異なるため、相関関係を取得する上で、できるだけ多くの異なる洗浄の種類及び/又は洗浄条件で実施して、複数の洗浄条件とOH基の量の相関関係を得ておくことが好ましい。
【0068】
次に、各洗浄方法によって形成されたそれぞれの化学酸化膜中に含まれるOH基の量を測定する。このとき、ATR測定用プリズムを用いて化学酸化膜のATR−FT−IR測定を行うことが好ましい。ATR−FT−IR測定は一般的な透過FT−IRに比べて、半導体基板表面に存在するOH基に対して十分な感度で評価することができる。
【0069】
図2は、NH
4OHの濃度と化学酸化膜中のOH基の量(3300cm
−1の相対吸光度)の関係を示した図であり、
図3は、O
3の濃度と化学酸化膜中のOH基の量(3300cm
−1の相対吸光度)の関係を示した図である。NH
4OH濃度とOH基の量(3300cm
−1付近の相対吸光度)には相関があり、一方、O
3濃度とOH基の量(3300cm
−1付近の相対吸光度)には相関が見られない。このように、洗浄方法によっては薬液の濃度とOH基の量に相関がない場合がある。
【0070】
次に、化学酸化膜中に含まれるOH基の量がそれぞれ異なる複数の半導体基板を、同じ熱酸化処理条件で熱酸化処理して熱酸化膜を形成する。熱酸化膜の形成条件は特に限定されず、通常の方法で行うことができる。そして、形成した熱酸化膜の厚さを測定する。測定は、例えば、分光エリプソなどで行うことができる。
【0071】
上記で求めた化学酸化膜中のOH基の量と、形成した熱酸化膜の厚さとの相関関係を求める。熱酸化膜の厚さと化学酸化膜中のOH基の量(3300cm
−1付近の相対吸光度)の間には
図1のような相関が見られ、化学酸化膜中のOH基の量が多いほど熱酸化膜の厚さが厚くなる傾向が見られる。この結果を利用して、半導体基板に形成される熱酸化膜の厚さが所定の厚さとなるように、化学酸化膜中のOH基の量を決定し、決定したOH基の量となるような化学酸化膜を形成することで、一定の厚さの熱酸化膜を形成することが可能になる。
【0072】
なお、化学酸化膜中のOH基の量(3300cm
−1付近の相対吸光度)の測定や熱酸化膜の厚さの測定は、熱酸化膜を形成する半導体基板と同じ洗浄処理、熱酸化処理を行ったモニターウエーハなどを用いたり、同一の処理を行った半導体基板の一部を抜き取ったりして行うこともできる。
【0073】
(洗浄条件決定工程)
第一の実施形態と同様に、半導体基板表面に形成される熱酸化膜の厚さが所定の厚さとなるような洗浄条件を決定する。相関関係取得工程で取得した相関関係に基づいて、所定の厚さの熱酸化膜が形成されるOH基の量を決定するとともに、決定したOH基の量となるような化学酸化膜を形成する洗浄条件を決定する。洗浄条件の決定においては、例えば、予め洗浄条件とOH基の量の相関関係を取得しておき、この相関関係を利用すればよい。例えば、上記の具体例では、形成すべき熱酸化膜の所定の厚さが5.1nmであった場合、相関関係取得工程で取得した
図1のような熱酸化膜厚とOH基の量の相関から、OH基の量が0.145であればよいことが分かる。したがって、
図2に示される関係を利用するなどして、OH基の量が0.145である洗浄条件を選択し、決定すればよく、この具体例ではNH
4OHの濃度が0.001〜0.03%であるSC1洗浄を行うことが決定される。
【0074】
(基板洗浄工程)
次に、第一の実施形態と同様に、実際に熱酸化膜を形成する対象の半導体基板を新たに準備し、洗浄条件決定工程で決定した洗浄条件で洗浄を行う。
【0075】
(OH基の量の測定工程)
基板洗浄工程で行った洗浄により半導体基板に形成された化学酸化膜中に含まれるOH基の量を測定すれば、熱酸化を行う前に実際のOH基の量を確認できるため、さらに再現性良く熱酸化膜を形成することができる。例えば、目標とするOH基の量からずれていた場合には、HF洗浄を行って一度酸化膜を除去してから、再度、洗浄条件を決定して洗浄し、目標とするOH基の量により近い化学酸化膜の形成を行うことも可能である。なお、この場合も、化学酸化膜中のOH基の量(3300cm
−1付近の相対吸光度)の測定は、熱酸化膜を形成する半導体基板と同じ洗浄処理、熱酸化処理を行ったモニターウエーハなどを用いたり、同一の処理を行った半導体基板の一部を抜き取ったりして行うことができる。但し、この工程は必ずしも行わなくともよい。
【0076】
(熱酸化膜形成工程)
最後に、第一の実施形態と同様に、相関関係取得工程で行った熱酸化処理と同じ条件で熱酸化処理し、半導体基板表面に熱酸化膜を形成する。
【0077】
以上のような本発明に係る各工程を経て半導体基板に熱酸化膜を形成することで、再現性良く所定の厚さの薄い熱酸化膜を形成することができる。
【0078】
なお、本発明においては、半導体基板表面に形成される熱酸化膜の厚さが1〜10nmの範囲と薄い場合に、より顕著な効果を奏するため、このような範囲の熱酸化膜を形成することが好ましい。
【0079】
[第三の実施形態]
また、本発明の第三の実施形態に係る半導体基板の熱酸化膜形成方法では、化学酸化膜の構成元素の化学量論比の違いに着目し、半導体基板の熱酸化処理前に、予め洗浄後の半導体基板表面に形成された化学酸化膜の構成元素の化学量論比と、この半導体基板を熱酸化したときの、熱酸化膜の厚さとの相関関係を求めておき、半導体基板に形成される熱酸化膜の厚さが所定の厚さとなるように、熱酸化膜を形成する対象の半導体基板表面の化学酸化膜の構成元素の化学量論比を決定し、決定した化学量論比となるように洗浄条件を調整して化学酸化膜を形成する。これにより、所定の厚さの薄い熱酸化膜を再現性良く形成することが可能になる。
【0080】
本発明者らは、半導体基板の洗浄方法が異なると形成される熱酸化膜の厚さに違いが生じる点について、鋭意調査を行ったところ、半導体基板の洗浄により形成された化学酸化膜の構成元素の化学量論比が、熱酸化処理に大きな影響を及ぼすことを見出した。そして、このような現象を利用することで、所定の厚さの薄い熱酸化膜を再現性良く形成することが可能となる熱酸化方法を完成した。
【0081】
本発明の第三の実施形態に係る半導体基板の熱酸化膜形成方法を説明する。
(相関関係取得工程)
まず、第一の実施形態と同様に、半導体基板を複数枚準備する。この半導体基板として、シリコン基板を用いることが好ましい。この場合、形成される熱酸化膜はシリコン酸化膜である。シリコン基板は半導体基板として広く使用されているものであり、特に、デバイス作製工程では熱酸化膜が形成されたりするため、熱酸化膜を形成してシリコン基板自体の評価を行うことで、より正確な評価を行うことができる。
【0082】
次に、準備した半導体基板の表面に酸化膜がない状態にするために、HF(フッ酸)で洗浄することが好ましい。HFで洗浄して酸化膜を除去した後に、さらに洗浄する。HF洗浄の後に行う洗浄方法は特に限定されないが、例えば、SC1洗浄、O
3洗浄などの薬液を用いた洗浄を行うことができ、あるいは純水リンスなどの洗浄を行うこともできる。HF洗浄の後に行う洗浄により、準備した複数の半導体基板には化学酸化膜が形成される。このとき、複数の半導体基板の化学酸化膜の構成元素の化学量論比は、それぞれ異なるものとなるようにする。薬液を用いた方法で洗浄を行う場合、濃度が異なる様々な種類の薬液を用いることで、簡便に化学酸化膜の構成元素の化学量論比が異なる半導体基板とすることができるため好ましい。相関関係を取得するための洗浄処理のため、できるだけ多くの異なる洗浄の種類及び/又は洗浄条件で実施することが好ましい。また、洗浄方法によって薬液の濃度と化学量論比の相関が得られる範囲はそれぞれ異なるため、相関関係を取得する上で、できるだけ多くの異なる洗浄の種類及び/又は洗浄条件で実施して、複数の洗浄条件と化学量論比の相関関係を得ておくことが好ましい。
【0083】
次に、洗浄によって形成された化学酸化膜の構成元素の化学量論比を求める。
なお、化学酸化膜の構成元素の化学量論比の求め方、評価方法は特に限定されず、化学酸化膜の構成元素の化学量論比を求めることができる方法であればどのような方法であってもよい。例えば、XPS法は半導体基板の極表層の情報を簡便に精度高く評価できる方法であり、本発明に係る化学量論比の評価に好適に用いることができる。本発明に係る化学量論比は、化学酸化膜の構成元素のうち、半導体基板の基板原子が酸素原子と結合していない状態と基板原子が酸素原子と結合してサブオキサイドとなっている状態の結合エネルギーのピーク強度、及び、基板原子が酸素原子と完全に結合している状態の結合エネルギーのピーク強度を、XPSを用いてそれぞれ測定し、測定したピーク強度の割合とすることができる。この他にも、例えば、半導体基板表面にRBS法によりHeイオンを照射し、その飛程から、衝突した原子のエネルギーを求め、これから半導体基板表面に形成された化学酸化膜の構成元素の化学量論比を求めることもできる。
【0084】
また、半導体基板がシリコン基板、形成される酸化膜がシリコン酸化膜であるとき、化学酸化膜の構成元素はSiとOである。このとき化学量論比は、化学酸化膜中のSi原子とO原子の原子結合状態の割合、すなわち、シリコン原子が酸素原子と結合していない状態のSi−Si結合のものとシリコン原子が酸素原子と結合している状態のSi−O結合(シリコン酸化物)のうちいわゆるサブオキサイドのもの、及び、Si−O結合のうち酸素原子と完全に結合してSiO
2となっているものの割合とすることができる。それぞれの結合の存在する割合は、XPSにより結合エネルギーのピーク強度を測定することで求めることができる。
【0085】
XPS法は、
図8に一例を示すように、試料表面(シリコン4上に形成されたシリコン酸化膜3の表面)にX線源1よりX線を照射して試料表面から放出される光電子(最外殻電子から)を検出器2で検出し、運動エネルギーを計測して、試料表面を構成する元素の組成や化学結合状態を分析する手法である。このとき照射するX線源は特に限定されず、目的とする化学酸化膜の構成元素の化学量論比が測定できるものであれば、どのようなエネルギーのものでも良い。さらに、放出された光電子の運動エネルギーは、原子の価電荷(価数)や原子間の距離などの、原子周囲の電子状態から影響を受ける。エネルギーの変化(化学シフト)を観察することで化学結合状態を比較的容易に識別できる。光電子の平均自由工程はシリコンで2.1nm、シリコン酸化膜で3.3nmと言われており、特に、シリコン基板の最表面の評価に適した手法の一つであると考えられる。
【0086】
図9に、シリコン基板に薄いシリコン酸化膜が存在するサンプルのXPSスペクトルの一例を示す。シリコンの最外殻電子が存在するsp3軌道のエネルギー範囲について図示している。反応に寄与するのは最外殻電子であり、反応に寄与しない内殻電子は割愛した。横軸が結合エネルギーで縦軸が光電子のカウント数である。結合エネルギーはSiとOの結合状態によって変化するため、結合状態や結合原子を評価することが可能になる。また、縦軸は光電子のカウント数であり、それぞれの結合状態ごとの数によって変化する。
【0087】
化学酸化膜がシリコン酸化膜であるとき、99〜100eVのSi−Si結合に起因する結合状態(Si
0)と、101〜105eVのシリコン原子が酸素原子と結合した状態に相当する結合状態(Si
1+〜4+)に分けることができる。ここで、Si
0のSi−Si結合のピークが2つに分離しているのはスピン軌道相互作用によるものである。また、シリコン原子に酸素原子が1個結合するとSi
1+であり、シリコン原子に酸素原子が4個結合しているSiO
2の状態がSi
4+である。ここで、シリコン原子と酸素原子の結合状態が4種存在するのは、酸化膜が薄く、必ずしも化学量論的な組成になっていないためである。
【0088】
Si−O結合でもスピン軌道相互作用は存在するが、通常のXPSではエネルギー分解能の問題で観察されない。また、サブオキサイドに相当するSi
1+からSi
3+の結合エネルギーは強度が低く明確には見られていないが、過去の知見から存在エネルギーが分かっており、各ピークの強度についてスペクトル分離を行い、強度を求めている。
【0089】
シリコン基板上のシリコン酸化膜の構成元素の化学量論比、すなわちSiとOの結合エネルギーのピーク強度の割合を求めるにあたって、SiO
2組成となっているSi
4+のピーク強度と、酸素によって酸化することができるSi
0からSi
3+それぞれのピーク強度を積算した。明確なピークがないSi
1+〜3+についてはスペクトル分離を行った。すなわち、酸化される可能性のあるSi成分であるものをすべて合算してSi
0〜3+とし、酸化が進行し完全な化学量論となっているSi
4+の成分と分離し、
図9のように求めたピーク強度の面積を求めてピーク強度の割合とした。
【0090】
以上のようにして得られたSi
0〜3+のピーク強度とSi
4+のピーク強度の割合を全て合算し、Si
0〜3+とSi
4+それぞれの割合(百分率)をピーク強度の割合として求めることができる。このピーク強度の割合と熱酸化膜の厚さの相関関係を取得する。
【0091】
次に、化学酸化膜の構成元素の化学量論比がそれぞれ異なる複数の半導体基板を、同じ熱酸化処理条件で熱酸化処理して熱酸化膜を形成する。熱酸化膜の形成条件は特に限定されず、通常の方法で行うことができる。そして、形成した熱酸化膜の厚さを測定する。測定は、例えば、分光エリプソ法などで行うことができる。
【0092】
上記で求めた化学酸化膜の構成元素の化学量論比、すなわちピーク強度の割合と、形成した熱酸化膜の厚さとの相関関係を求める。
図6はSi
0〜3+のピーク強度の割合と熱酸化膜の厚さの関係を示した図であり、
図7はSi
4+のピーク強度の割合と熱酸化膜の厚さの関係を示した図である。熱酸化膜の厚さと化学酸化膜の構成元素の化学量論比の間には
図6や
図7のような相関が見られ、Si
0〜3+のピーク強度の割合が大きくなるにしたがって、熱酸化膜の厚さが厚くなっていることが分かる。また、Si
4+のピーク強度の割合が小さくなるにしたがって、熱酸化膜の厚さが厚くなっていることが分かる。この結果を利用して、半導体基板に形成される熱酸化膜の厚さが所定の厚さとなるように、化学酸化膜の構成元素の化学量論比を決定し、決定した化学量論比となるような化学酸化膜を形成することで、一定の厚さの薄い熱酸化膜を形成することが可能になる。
【0093】
なお、化学酸化膜の構成元素の化学量論比の分析や熱酸化膜の厚さの測定は、熱酸化膜を形成する半導体基板と同じ洗浄処理、熱酸化処理を行ったモニターウェーハなどを用いたり、同一の処理を行った半導体基板の一部を抜き取ったりして行うこともできる。
【0094】
(洗浄条件決定工程)
第一の実施形態と同様に、半導体基板表面に形成される熱酸化膜の厚さが所定の厚さとなるような洗浄条件を決定する。相関関係取得工程で取得した相関関係に基づいて、所定の厚さの熱酸化膜が形成されるSi
0〜3+及び/又はSi
4+の結合のピーク強度の割合、すなわち化学酸化膜の構成元素の化学量論比を決定するとともに、決定したピーク強度の割合となるような化学酸化膜を形成する洗浄条件を決定する。洗浄条件の決定においては、例えば、予め洗浄条件とピーク強度の割合の相関関係を取得しておき、この相関関係を利用すればよい。例えば、上記の具体例では、目標とする熱酸化膜の厚さが5.15nmであるとき、相関関係取得工程で取得した
図6のような熱酸化膜の厚さとSi
0〜3+の結合のピーク強度の割合の相関から、Si
0〜3+の結合のピーク強度の割合が84.5%であればよいことが分かる。したがって、
図10に示した関係を利用するなどして、ピーク強度の割合が84.5%となる洗浄条件を選択し、決定すればよく、この具体例ではNH
4OHの濃度が3%としてSC1洗浄を行うことが決定される。
【0095】
(基板洗浄工程)
次に、第一の実施形態と同様に、実際に熱酸化膜を形成する対象の半導体基板を新たに準備し、洗浄条件決定工程で決定した洗浄条件で洗浄を行う。
【0096】
(熱酸化膜形成工程)
最後に、第一の実施形態と同様に、相関関係取得工程で行った熱酸化処理と同じ条件で熱酸化処理し、基板洗浄工程で洗浄した半導体基板表面に熱酸化膜を形成する。
【0097】
以上のような本発明に係る各工程を経て半導体基板に熱酸化膜を形成することで、再現性良く所定の厚さの薄い熱酸化膜を形成することができる。
【0098】
なお、本発明においては、半導体基板表面に形成される熱酸化膜の厚さが1〜10nmの範囲と薄い場合に、より顕著な効果を奏するため、このような範囲の熱酸化膜を形成するのに好適である。
【0099】
[第四の実施形態]
また、本発明の第四の実施形態に係る半導体基板の熱酸化膜形成方法では、化学酸化膜中に含まれる水素原子の量に着目し、半導体基板の熱酸化処理前に、予め洗浄後の半導体基板表面に形成された化学酸化膜中の水素原子の量を測定し、水素原子の量と、この半導体基板を熱酸化したときの熱酸化膜の厚さとの相関関係を求めておき、半導体基板に形成される熱酸化膜の厚さが所定の厚さとなるように、熱酸化膜を形成する対象の半導体基板表面の化学酸化膜中の水素原子の量を決定し、決定した水素原子の量となるように洗浄条件を調整して化学酸化膜を形成する。これにより、所定の厚さの薄い熱酸化膜を再現性良く形成することが可能になる。
【0100】
本発明者らは、半導体基板の洗浄方法が異なると形成される熱酸化膜の厚さに違いが生じる点について、鋭意調査を行ったところ、半導体基板の洗浄により形成された化学酸化膜中の水素原子の量が、熱酸化処理に大きな影響を及ぼすことを見出した。そして、このような現象を利用することで、所定の厚さの薄い熱酸化膜を再現性良く形成することが可能となる熱酸化方法を完成した。
【0101】
本発明の第四の実施形態に係る半導体基板の熱酸化膜形成方法を説明する。
(相関関係取得工程)
まず、第一の実施形態と同様に、半導体基板を複数枚準備する。この半導体基板として、シリコンウエーハを用いることが好ましい。この場合、形成される熱酸化膜はシリコン酸化膜である。シリコンウエーハは半導体基板として広く使用されているものであり、特に、デバイス作製工程では熱酸化膜が形成されたりするため、熱酸化膜を形成してシリコンウエーハ自体の評価を行うことで、より正確な評価を行うことができる。
【0102】
次に、準備した半導体基板の表面に酸化膜がない状態にするために、HF(フッ酸)で洗浄することが好ましい。HFで洗浄して酸化膜を除去した後に、さらに洗浄する。HF洗浄の後に行う洗浄方法は特に限定されないが、例えば、SC1洗浄、O
3洗浄などの薬液を用いた洗浄を行うことができ、あるいは純水リンスなどの洗浄を行うこともできる。HF洗浄の後に行う洗浄により、準備した複数の半導体基板には化学酸化膜が形成される。このとき、複数の半導体基板の化学酸化膜中の水素原子の量は、それぞれ異なるものとなるようにする。薬液を用いた方法で洗浄を行う場合、濃度が異なる様々な種類の薬液を用いることで、簡便に化学酸化膜中の水素原子の量が異なる半導体基板とすることができるため好ましい。さらに、SC1洗浄であれば、NH
4OH濃度が高くアルカリ性が強いほど、水素原子の割合あるいは2130cm
−1の吸光度は小さく(すなわち水素原子が含まれる量は少なく)なり、NH
4OH濃度を変化させることでより簡便に水素原子の量が異なる半導体基板とすることができるため好ましい。相関関係を取得するための洗浄処理のため、できるだけ多くの異なる洗浄の種類及び/又は洗浄条件で実施することが好ましい。また、洗浄方法によって薬液の濃度と水素原子の量の相関が得られる範囲はそれぞれ異なるため、相関関係を取得する上で、できるだけ多くの異なる洗浄の種類及び/又は洗浄条件で実施して、複数の洗浄条件と水素原子の量の相関関係を得ておくことが好ましい。
【0103】
次に、洗浄によって形成された化学酸化膜中の水素原子の量を求める。
なお、化学酸化膜中の水素原子の量の求め方、評価方法は特に限定されず、化学酸化膜中の水素原子の量を求めることができる方法であればどのような方法であってもよい。例えば、化学酸化膜の赤外線吸収特性を調べることで求めることができる。赤外線吸収特性の測定として、例えば、ATR−FT−IR測定を行い、2130cm
−1付近の吸光度から水素原子の量を算出することができる。この場合、2130cm
−1付近の吸光度は、SiH
3のSi−Hの伸縮振動に該当する相対吸光度の値であり、水素原子の量を表す指標とすることができる。また、別の水素原子の量の求め方として、例えば、ラザフォード後方散乱分析(RBS)を行って化学酸化膜中の水素原子の割合を求め、算出することもできる。この場合、水素原子の割合を水素原子の量を表す指標とすることができる。以下では、「2130cm
−1の吸光度」や「水素原子の割合」を、「水素原子の量」と言うことがある。
【0104】
次に、化学酸化膜中の水素原子の量がそれぞれ異なる複数の半導体基板を、同じ熱酸化処理条件で熱酸化処理して熱酸化膜を形成する。熱酸化膜の形成条件は特に限定されず、通常の方法で行うことができる。そして、形成した熱酸化膜の厚さを測定する。測定は、例えば、分光エリプソ法などで行うことができる。
【0105】
上記で求めた化学酸化膜中の水素原子の量と、形成した熱酸化膜の厚さとの相関関係を求める。
図14は、RBS測定により求めた水素原子の量(化学酸化膜中の水素原子の割合)と熱酸化膜の厚さの関係を示した図であり、
図15は、ATR−FT−IR測定により求めた水素原子の量(2130cm
−1の吸光度)と熱酸化膜の厚さの関係を示した図である。熱酸化膜の厚さと化学酸化膜中の水素原子の量の間には
図14や
図15のような相関が見られ、水素原子の量が多いほど熱酸化膜の厚さが薄くなる傾向が見られた。このような傾向が見られた要因として、例えば非特許文献1に示されているように、水素で終端されたシリコンは表面が安定化して不活性化するということが知られており、このことから洗浄により表面に形成された化学酸化膜中に含まれる水素原子の量の違いによって酸化速度が異なり、同じ条件で熱酸化しても熱酸化後の膜厚が異なると考えられる。この
図14や
図15の結果を利用して、半導体基板に形成される熱酸化膜の厚さが所定の厚さとなるように、化学酸化膜中の水素原子の量を決定し、決定した水素原子の量となるような化学酸化膜を形成することで、一定の厚さの薄い熱酸化膜を形成することが可能になる。
【0106】
なお、化学酸化膜中の水素原子の量の分析や熱酸化膜の厚さの測定は、熱酸化膜を形成する半導体基板と同じ洗浄処理、熱酸化処理を行ったモニターウエーハなどを用いたり、同一の処理を行った半導体基板の一部を抜き取ったりして行うこともできる。
【0107】
(洗浄条件決定工程)
第一の実施形態と同様に、半導体基板表面に形成される熱酸化膜の厚さが所定の厚さとなるような洗浄条件を決定する。相関関係取得工程で取得した相関関係に基づいて、所定の厚さの熱酸化膜が形成される水素原子の量を決定するとともに、決定した水素原子の量となるような化学酸化膜を形成する洗浄条件を決定する。洗浄条件の決定においては、例えば、予め洗浄条件と水素原子の量の相関関係を取得しておき、この相関関係を利用すればよい。
【0108】
例えば、上記の具体例では、目標とする熱酸化膜の厚さが5.10nmであるとき、相関関係取得工程で取得した
図14のような熱酸化膜の厚さと水素原子の割合の相関から、水素原子の割合が20%であればよいことが分かる。したがって、
図16に示した関係を利用するなどして、水素原子の量が20%となる洗浄条件を選択し、決定すればよく、この具体例ではNH
4OHの濃度が0.03%としてSC1洗浄を行うことが決定される。
【0109】
(基板洗浄工程)
次に、第一の実施形態と同様に、実際に熱酸化膜を形成する対象の半導体基板を新たに準備し、洗浄条件決定工程で決定した洗浄条件で洗浄を行う。
【0110】
(水素原子の量の測定工程)
基板洗浄工程で行った洗浄により半導体基板に形成された化学酸化膜中に含まれる水素原子の量を測定すれば、熱酸化を行う前に実際の水素原子の量を確認できるため、さらに再現性良く熱酸化膜を形成することができる。例えば、目標とする水素原子の量からずれていた場合には、HF洗浄を行って一度化学酸化膜を除去してから、再度、洗浄条件を決定して洗浄し、目標とする水素原子の量により近い化学酸化膜の形成を行うことも可能である。なお、この場合も、化学酸化膜中の水素原子の量(ATR−FT−IR測定による2130cm
−1付近の吸光度やRBS測定による水素原子の割合)の測定は、熱酸化膜を形成する半導体基板と同じ洗浄処理を行ったモニターウエーハなどを用いたり、同一の処理を行った半導体基板の一部を抜き取ったりして行うことができる。但し、この工程は必ずしも行わなくともよい。
【0111】
(熱酸化膜形成工程)
最後に、第一の実施形態と同様に、相関関係取得工程で行った熱酸化処理と同じ条件で熱酸化処理し、基板洗浄工程で洗浄した半導体基板表面に熱酸化膜を形成する。
【0112】
以上のような本発明に係る各工程を経て半導体基板に熱酸化膜を形成することで、再現性良く所定の厚さの薄い熱酸化膜を形成することができる。
【0113】
なお、本発明においては、半導体基板表面に形成される熱酸化膜の厚さが1〜10nmの範囲と薄い場合に、より顕著な効果を奏するため、このような範囲の熱酸化膜を形成するのに好適である。
【実施例】
【0114】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0115】
(実施例1)
直径300mmボロンドープの通常抵抗率のシリコン単結晶基板を複数枚準備し、シリコン単結晶基板表面を初期化のために0.5%HFで洗浄後に、70℃でSC1洗浄を行った。このときに、NH
4OH濃度を3、0.3、0.03、0.001%と変化させた。また、別の洗浄としてO
3洗浄(24℃)を、O
3濃度を3、20、40ppmと振って行った。
【0116】
この後、予め各洗浄条件で洗浄したシリコン単結晶基板から試験片を数cm角の大きさに切り出してATR−FT−IR測定(全反射フーリエ変換赤外分光法)を行い、3300cm
−1の相対吸光度を測定し、NH
4OH濃度、O
3濃度と、化学酸化膜中のOH基の量(3300cm
−1付近の相対吸光度)の比較を行った。その結果を、
図2、
図3に示す。
図2に示すように、NH
4OH濃度が高くなるに従い、OH基の量(3300cm
−1付近の相対吸光度)も大きくなり、OH基が多く含まれていることがわかる。一方、
図3に示すように、O
3の場合は、O
3濃度のOH基の量(3300cm
−1付近の相対吸光度)に対する依存性は見られなかった。
【0117】
OH基の量(3300cm
−1付近の相対吸光度)が洗浄条件により異なるのは、SC1洗浄の場合、NH
4OH濃度が高くアルカリ性が強いほどOH基が多く含まれるが、O
3洗浄の場合、薬液がほぼ中性でありOH基の量が少ないためと考えられる。
【0118】
次に、ATR−FT−IR評価のために試験片を切り出したウエーハと同一の洗浄条件での洗浄を行った別のウエーハを、熱酸化膜の厚さが5.1nmとなるよう狙って熱酸化(900℃、酸素5%、60min)した後に、熱酸化膜の厚さを分光エリプソにて測定した。その結果を
図4、
図5に示す。
図4は、NH
4OHの濃度と熱酸化膜の厚さの関係を示した図である。
図5は、O
3の濃度と熱酸化膜の厚さの関係を示した図である。
【0119】
以上の結果から、
図1に示すような、熱酸化膜の厚さと3300cm
−1付近の相対吸光度の相関関係が得られた。
図1に示すように、熱酸化膜の厚さと3300cm
−1付近の相対吸光度には相関が見られ、洗浄後に形成された化学酸化膜中のOH基の量が多いほど熱酸化膜が厚くなる傾向が見られた。
図1に示す熱酸化膜の厚さとOH基の量(3300cm
−1付近の相対吸光度)の相関関係を利用し、実際に熱酸化膜を形成するときの洗浄条件を決定すると、狙った熱酸化膜の厚さに近い熱酸化膜を形成することができることがわかった。
【0120】
次に、熱酸化膜の厚さが5.1nmとなるようなSC1洗浄の洗浄条件を検討した。この熱酸化膜の厚さを実現するためには、
図1から、3300cm
−1の吸光度を0.145とする必要があり、この吸光度を得るためには、
図2よりNH
4OHの濃度を0.001〜0.03%とすればよいことがわかった。そこで、SC1洗浄のNH
4OHが0.03%になるように調整してシリコン単結晶基板の洗浄を行った後、上記の熱酸化処理を行ったところ、熱酸化膜の厚さは5.1nmとなり、目標とする厚さと同じ厚さにすることができた。
【0121】
このように、予め求めた相関関係を利用して、熱酸化処理条件を前記相関関係取得工程と同じ条件とし、目標とする熱酸化膜の厚さが得られるOH基の量になるように洗浄条件を調整することで、再現性良くばらつきのない一定の厚さの熱酸化膜を形成することが可能になる。その結果、熱酸化工程の管理が容易になることがわかった。
【0122】
(実施例2)
直径300mmボロンドープの通常抵抗率のシリコン単結晶基板を準備し、シリコン基板表面を初期化のために0.5%HFで洗浄後に、70℃でSC1洗浄を行った。このときに、NH
4OH濃度を3、0.3、0.03、0.01%と変化させた。また、別の洗浄としてO
3洗浄(24℃)を、O
3濃度を3、20、40ppmと振って行った。
【0123】
この後、予めシリコン単結晶基板から試験片を切り出してXPS測定を行い、Si
0〜3+と、Si
4+のピーク強度を測定し、NH
4OH濃度と、Si
0〜3+と、Si
4+のピーク強度の割合の比較を行った。その結果を、
図10、
図11に示す。
図10は、NH
4OHの濃度とSi
0〜3+のピーク強度の割合の関係を示した図である。
図11は、NH
4OHの濃度とSi
4+のピーク強度の割合の関係を示した図である。また、同様にピーク強度を測定し、O
3濃度と、Si
0〜3+と、Si
4+のピーク強度の割合の比較を行った。その結果を、
図12、
図13に示す。
図12は、O
3の濃度とSi
0〜3+のピーク強度の割合の関係を示した図である。
図13は、O
3の濃度とSi
4+のピーク強度の割合の関係を示した図である。その結果、NH
4OH濃度が高くなるに従い、Si
0〜3+のピーク強度の割合が大きくなるが、Si
4+のピーク強度の割合は逆に小さくなる傾向がある。一方で、O
3の場合は、O
3濃度のピーク強度の割合に対する依存性は見られなかった。このように、洗浄方法によっては薬液の濃度と化学酸化膜の構成元素のピーク強度の割合に相関がない場合がある。
【0124】
このような基板をすべて、熱酸化膜の厚さが5.1nm付近となるように狙って熱酸化(900℃、酸素5%、60min)した後に、熱酸化膜の厚さを分光エリプソ法にて測定した。
【0125】
上述のようにして行った実験の結果から、
図6、
図7に示すような相関関係が得られた。
図6、
図7に示すように、熱酸化膜の厚さとSi
0〜3+、Si
4+のピーク強度の割合には相関が見られ、Si
0〜3+のピーク強度の割合が大きいほど熱酸化膜の厚さが厚くなる傾向があること、Si
4+のピーク強度の割合が小さいほど熱酸化膜の厚さが厚くなる傾向があることがわかった。O
3濃度の化学量論比に対する依存性は見られなかったが、化学量論比とO
3洗浄後に形成した熱酸化膜の厚さの間には良い相関が見られた。また、
図6、
図7に示すような熱酸化膜の厚さと化学酸化膜の構成元素のピーク強度の割合の相関関係から、例えば、
図6、
図7の点線のような検量線を引いて、実際に熱酸化膜を形成するときの条件を決定すると、狙った熱酸化膜の厚さに近い熱酸化膜を形成することができることがわかった。
図6、
図7中の点線が検量線である。それぞれの検量線の式は下記の通りである。
(酸化膜厚nm)=0.0342×(Si
0〜3+のピーク強度の割合)+2.26
(酸化膜厚nm)=−0.0342×(Si
4+のピーク強度の割合)+5.68
【0126】
次に、熱酸化膜の厚さが5.15nmとなるようなSC1洗浄の洗浄条件を検討した。この熱酸化膜の厚さを実現するためには、
図6から、Si
0〜3+は84.5%、
図7から、Si
4+は15.5%のピーク強度の割合にする必要がある。この値を得るためには、
図10に示すNH
4OH濃度とSi
0〜3+のピーク強度の割合ないしは、
図11に示すNH
4OH濃度とSi
4+のピーク強度の割合のグラフから、NH
4OH濃度を3%とすればよいことがわかった。そこで、SC1洗浄のNH
4OH濃度を3%になるように調整してシリコン単結晶基板の洗浄を行った後、相関関係を取得したときと同じ条件で熱酸化処理を行ったところ、熱酸化膜の厚さは5.16nmとなり、目標とする厚さにすることができた。
【0127】
このように、予め求めた相関関係を利用して、熱酸化処理条件を相関関係取得工程と同じ条件とし、目標とする熱酸化膜の厚さが得られる化学酸化膜の構成元素の化学量論比になるように洗浄条件を調整することで、再現性良くばらつきのない一定の厚さの薄い熱酸化膜を形成することが可能になる。その結果、熱酸化工程の管理が容易になることがわかった。
【0128】
(実験例1)
RBS測定により熱酸化膜の厚さを目標の厚さになるように熱酸化処理条件を調整する方法を説明する。
【0129】
まず、直径300mmボロンドープの通常抵抗率のシリコンウエーハを準備し、シリコンウエーハ表面を初期化のために0.5%HFで洗浄後に、70℃でSC1洗浄を行った。このときに、NH
4OH濃度を3、0.3、0.03、0.001%と変化させた。
【0130】
この後、予めシリコンウエーハから試験片を切り出してRBS測定を行い、水素原子の割合を測定し、NH
4OH濃度と、水素原子の割合の比較を行った。その結果を、
図16に示した。
図16は、NH
4OH濃度とRBS測定により求めた化学酸化膜中の水素原子の割合の関係を示した図である。その結果、
図16に示したように、NH
4OH濃度が高くなるに従い、水素原子の割合が小さくなることが分かった。水素原子の割合が洗浄条件により異なるのは、SC1洗浄の場合、NH
4OH濃度が高くアルカリ性が強いほど水素原子が少ないためと考えられる。
【0131】
このようなウエーハをすべて、熱酸化膜の厚さが5.10nmとなるように狙って熱酸化(900℃、酸素5%、60min)した後に、熱酸化膜の厚さを分光エリプソ法にて測定した。
【0132】
上述のようにして行った実験の結果から、
図14に示したような相関関係が得られた。
図14に示したように、熱酸化膜の厚さと洗浄後の化学酸化膜中の水素原子の割合には相関が見られ、洗浄後の化学酸化膜中の水素原子の割合が大きいほど膜厚が薄くなる傾向が見られた。
図14に示した熱酸化膜の厚さと水素原子の量(RBS測定により求めた化学酸化膜中の水素原子の割合)の相関関係を利用し、実際に熱酸化膜を形成するときの洗浄条件を決定すると、狙った熱酸化膜の厚さに近い熱酸化膜を形成することができることがわかった。
【0133】
(実験例2)
さらに、別の方法として、ATR−FT−IR測定により熱酸化膜の厚さを目標の厚さになるように熱酸化処理条件を調整する方法を説明する。
【0134】
まず、実験例1で準備したシリコンウエーハと同じシリコンウエーハを準備した後、シリコンウエーハから試験片を切り出してATR−FT−IR測定を行い、2130cm
−1付近の吸光度を測定し、NH
4OH濃度と、2130cm
−1付近の吸光度との比較を行った。その結果を、
図17に示した。
図17は、NH
4OH濃度とATR−FT−IR測定により求めた2130cm
−1の吸光度の関係を示した図である。その結果、NH
4OH濃度が高くなるに従い、2130cm
−1付近の吸光度は小さくなり、洗浄後の化学酸化膜中の水素原子の量が少なくなることがわかった。
【0135】
このようなウエーハをすべて、実験例1と同じように熱酸化処理したところ、
図15に示したような相関関係が得られた。
図15に示したように、熱酸化膜の厚さと洗浄後の化学酸化膜中の2130cm
−1付近の吸光度には相関が見られ、洗浄後の化学酸化膜の2130cm
−1付近の吸光度が大きいほど膜厚が薄くなる傾向が見られた。
図15に示した熱酸化膜の厚さと水素原子の量(2130cm
−1付近の吸光度)の相関関係を利用し、実際に熱酸化膜を形成するときの洗浄条件を決定すると、狙った熱酸化膜の厚さに近い熱酸化膜を形成することができることがわかった。
【0136】
(実施例3)
上記実験例1と同様にして、RBS測定による水素原子の割合と熱酸化膜の厚さの相関関係を求めた。まず、直径300mmボロンドープの通常抵抗率のシリコンウエーハを複数枚準備し、シリコンウエーハ表面を初期化のために0.5%HFで洗浄した後に、それぞれ、SC1洗浄(70℃、NH
4OH濃度:3、0.3、0.03、0.001%)を行って、水素原子の割合が異なる基板を作製した。次に、それぞれのシリコンウエーハから試験片を切り出してRBS測定を行い、水素原子の割合を測定しておいた。その後、所定の熱酸化処理(900℃、酸素5%、60min)を各洗浄条件の基板ごとに行い、熱酸化膜の厚さを測定して、水素原子の割合と熱酸化膜の厚さの相関関係を求めた。このとき、相関関係を取得する熱酸化膜の厚さは、5.10nm付近とした。これにより、
図14に示した相関関係が得られた。
【0137】
相関関係を取得する過程で得たデータから、NH
4OH濃度と水素原子の割合の比較を行った。その結果を、
図16に示した。
図16は、NH
4OH濃度と水素原子の割合の関係を示した図である。その結果、NH
4OH濃度が高くなるに従い、水素原子の割合が小さくなる傾向があることが分かった。
【0138】
次に、熱酸化膜の厚さが5.10nmとなるようなSC1洗浄の洗浄条件を検討した。この熱酸化膜の厚さを実現するためには、
図14から、水素原子の割合は20%にする必要がある。この値を得るためには、
図16に示したNH
4OH濃度と水素原子の割合の関係のグラフから、NH
4OH濃度を0.03%とすればよいことがわかった。そこで、SC1洗浄のNH
4OH濃度を0.03%になるように調整してシリコン基板の洗浄を行った後、相関関係を取得したときと同じ条件で熱酸化処理を行ったところ、熱酸化膜の厚さは5.10nmとなり、目標とする厚さにすることができた。
【0139】
(実施例4)
上記実験例2と同様にして、ATR−FT−IR測定による2130cm
−1付近の吸光度と熱酸化膜の厚さの相関関係を求めた。まず、直径300mmボロンドープの通常抵抗率のシリコンウエーハを複数枚準備し、シリコンウエーハ表面を初期化のために0.5%HFで洗浄した後に、それぞれ、SC1洗浄(70℃、NH
4OH濃度:3、0.3、0.03、0.001%)を行って、2130cm
−1付近の吸光度が異なる基板を作製した。次に、それぞれのシリコンウエーハから試験片を切り出してATR−FT−IR測定を行い、2130cm
−1付近の吸光度を測定しておいた。その後、所定の熱酸化処理(900℃、酸素5%、60min)を各洗浄条件の基板ごとに行い、熱酸化膜の厚さを測定して、2130cm
−1付近の吸光度と熱酸化膜の厚さの相関関係を求めた。このとき、相関関係を取得する熱酸化膜の厚さは、5.10nm付近とした。これにより、
図15に示した相関関係が得られた。
【0140】
相関関係を取得する過程で得たデータから、NH
4OH濃度と2130cm
−1付近の吸光度の比較を行った。その結果を、
図17に示した。
図17は、NH
4OH濃度と2130cm
−1付近の吸光度の関係を示した図である。その結果、NH
4OH濃度が高くなるに従い、2130cm
−1付近の吸光度が小さくなる傾向があることが分かった。
【0141】
次に、熱酸化膜の厚さが5.10nmとなるようなSC1洗浄の洗浄条件を検討した。この熱酸化膜の厚さを実現するためには、
図15から、2130cm
−1付近の吸光度は1.0にする必要がある。この値を得るためには、
図17に示したNH
4OH濃度と2130cm
−1付近の吸光度の関係のグラフから、NH
4OH濃度を0.03%とすればよいことがわかった。そこで、SC1洗浄のNH
4OH濃度を0.03%になるように調整してシリコン基板の洗浄を行った後、相関関係を取得したときと同じ条件で熱酸化処理を行ったところ、熱酸化膜の厚さは5.10nmとなり、目標とする厚さにすることができた。
【0142】
実施例3、4に示すように、予め求めた相関関係を利用して、熱酸化処理条件を相関関係取得工程と同じ条件とし、目標とする熱酸化膜の厚さが得られる水素原子の量になるように洗浄条件を調整することで、再現性良くばらつきのない一定の厚さの薄い熱酸化膜を形成することが可能になる。その結果、熱酸化工程の管理が容易になることがわかった。
【0143】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
予め、洗浄により形成された化学酸化膜の構成が異なる複数の半導体基板を準備し、同じ熱酸化処理条件で熱酸化処理して熱酸化膜を形成し、化学酸化膜の構成と熱酸化膜の厚さとの相関関係を求めておく相関関係取得工程と、半導体基板に形成される熱酸化膜の厚さが所定の厚さとなるように、相関関係取得工程で得た相関関係に基づいて、化学酸化膜の構成を決定するとともに、決定した化学酸化膜の構成となるような化学酸化膜を形成する洗浄条件を決定する洗浄条件決定工程と、決定した洗浄条件で半導体基板の洗浄を行う基板洗浄工程と、洗浄を行った半導体基板に対して相関関係取得工程における熱酸化処理条件と同じ条件で半導体基板を熱酸化処理し、半導体基板表面に熱酸化膜を形成する熱酸化膜形成工程とを有する半導体基板の熱酸化膜形成方法。