(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
板状ワークを保持する保持面を有する保持テーブルを備える保持手段と、切削ブレードを先端に装着して回転させるスピンドルユニットを有し該切削ブレードを回転させ該保持手段が保持した板状ワークを切削加工する切削手段と、該切削手段を該保持手段が保持した板状ワークの深さ方向に送るZ送り手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的に切削送り方向に切削送りするX送り手段と、該深さ方向と該切削送り方向とに直交するインデックス送り方向に該保持手段と該切削手段とを相対的にインデックス送りするY送り手段と、該切削ブレードの先端位置を検出して該切削ブレードの先端が該保持面に接触する原点位置を認識する原点位置認識手段と、を備える切削装置であって、
該原点位置認識手段は、該保持テーブルの近くに配設し発光部と該発光部が発光した検出光を受光する受光部とを備える検知部と、該Z送り手段で該切削ブレードを該発光部と該受光部との間に進入させ該受光部が該検出光を受光する受光量が予め設定した受光量以下になったら先端を認識する認識部と、該認識部が該切削ブレードの先端を認識した時の該Z送り手段による該切削手段の高さ位置を記憶する記憶部と、予め測定している該受光部と該保持面との該深さ方向での差を該記憶部が記憶する該高さ位置に加え該切削ブレードの先端が該保持面に接触する該原点位置を算出する算出手段とを備え、
該保持手段の温度を測定する第1の温度測定手段と、
該切削手段の温度を測定する第2の温度測定手段と、
制御手段と、をさらに備え、
該制御手段は、
該原点位置認識手段により該原点位置を算出する直前に該認識部が該切削ブレードの先端を認識した時の該第1の温度測定手段が測定した温度と板状ワークを切削加工中に該第1の温度測定手段が測定した温度との第1の温度差と、
該原点位置認識手段により該原点位置を算出する直前に該認識部が該切削ブレードの先端を認識した時の該第2の温度測定手段が測定した温度と板状ワークを切削加工中に該第2の温度測定手段が測定した温度との第2の温度差と、のどちらかが予め設定した許容範囲より大きかったら該原点位置認識手段により該切削ブレードの先端位置を検出して該原点位置を算出し直し、該第1の温度差と該第2の温度差とが予め設定した許容範囲以内であったら切削加工を継続する判断部とを備えた切削装置。
板状ワークを保持する保持面を有する保持テーブルを備える保持手段と、切削ブレードを先端に装着して回転させるスピンドルユニットを有し該切削ブレードを回転させ該保持手段が保持した板状ワークを切削加工する切削手段と、該切削手段を該保持手段が保持した板状ワークの深さ方向に送るZ送り手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的に切削送り方向に切削送りするX送り手段と、該深さ方向と該切削送り方向とに直交するインデックス送り方向に該保持手段と該切削手段とを相対的にインデックス送りするY送り手段と、該切削ブレードの先端位置を検出して該切削ブレードの先端が該保持面に接触する原点位置を認識する原点位置認識手段と、を備える切削装置であって、
該原点位置認識手段は、該保持テーブルの近くに配設し板状の被加工物を保持するサブテーブルと、該サブテーブルが保持した被加工物に該切削ブレードを切り込ませて形成された溝を撮像する撮像手段と、該撮像手段が撮像した該溝の長さから該切削ブレードの先端が該保持面に接触する該原点位置を算出する算出手段とを備え、
該保持手段の温度を測定する第1の温度測定手段と、
該切削手段の温度を測定する第2の温度測定手段と、
制御手段と、をさらに備え、
該制御手段は、
該原点位置認識手段により該原点位置を算出する直前に該撮像手段が該溝を撮像した時の該第1の温度測定手段が測定した温度と板状ワークを切削加工中に該第1の温度測定手段が測定した温度との第1の温度差と、
該原点位置認識手段により該原点位置を算出する直前に該撮像手段が該溝を撮像した時の該第2の温度測定手段が測定した温度と板状ワークを切削加工中に該第2の温度測定手段が測定した温度との第2の温度差と、のどちらかが予め設定した許容範囲より大きかったら該原点位置認識手段により該溝を撮像して該原点位置を算出し直し、該第1の温度差と該第2の温度差とが予め設定した許容範囲以内であったら切削加工を継続する判断部とを備えた切削装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態の切削装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る切削装置の斜視図である。なお、本実施の形態では、単一の切削ブレードを備えた切削装置を例示するが、この構成に限定されない。切削装置は板状ワークをエッジトリミング可能な構成であればよい。
【0014】
図1に示すように、切削装置1は、保持テーブル30に保持された板状ワークWの外周を切削ブレード52(
図2参照)で除去(エッジトリミング)する。なお、板状ワークWは、外周に面取り部が形成されており、切削装置1の切削対象となる板状部材であればよい。例えば、板状ワークWは、シリコン、ガリウム砒素等の半導体基板に半導体デバイスが形成された半導体ウエーハでもよいし、サファイア、炭化ケイ素等の無機材料基板に光デバイスが形成された光デバイスウエーハでもよい。また、板状ワークWは、電子部品に使用される各種ガラス基板でもよい。
【0015】
切削装置1の基台10上には、保持テーブル30をX軸方向に切削送りするX送り手段20が設けられている。X送り手段20は、基台10上に配置されたX軸方向に平行な一対のガイドレール21と、一対のガイドレール21にスライド可能に設置されたモータ駆動のX軸テーブル32とを有している。X軸テーブル32の背面側には、不図示のナット部が形成され、このナット部にボールネジ23が螺合されている。ボールネジ23の一端部に連結された駆動モータ24が回転駆動されることで、保持テーブル30が一対のガイドレール21に沿ってX軸方向に切削送りされる。
【0016】
X軸テーブル32上には、板状ワークWを保持する保持テーブル30がZ軸回りに回転可能に設けられている。保持テーブル30の保持面30aには、吸引源(不図示)に接続された円形の吸引溝31が形成されており、吸引溝31に生じる負圧によって板状ワークWの外周側が吸引保持される。X軸テーブル32と保持テーブル30とで保持手段3を構成している。保持テーブル30には、保持手段3の温度を測定する第1の温度測定手段71が内蔵されている。また、X軸テーブル32上には、切削ブレード52の先端位置を検出する原点位置認識手段60が立設されており、原点位置認識手段60の先端には検知領域60aが凹状に形成されている。
【0017】
基台10上には門型の立壁部11が立設されている。また、立壁部11には切削手段50を板状ワークWの深さ方向と切削送り方向とに直交するY軸方向にインデックス送りするY送り手段40と、切削手段50を板状ワークWの深さ方向であるZ軸方向に切込み送りするZ送り手段45とが設けられている。Y送り手段40は、立壁部11の前面に配置されたY軸方向に平行な一対のガイドレール41と、一対のガイドレール41にスライド可能に設置されたY軸テーブル42とを有している。Z送り手段45は、Y軸テーブル42上に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール46と、一対のガイドレール46にスライド可能に設置されたZ軸テーブル47とを有している。
【0018】
Z軸テーブル47の下部には、板状ワークWの面取り部を所定の除去領域で除去する切削手段50が設けられている。Y軸テーブル42およびZ軸テーブル47の背面側には、それぞれナット部が形成され、これらナット部にボールネジ43、48が螺合されている。Y軸テーブル42用のボールネジ43、Z軸テーブル47用のボールネジ48の一端部には、それぞれ駆動モータ44、49が連結されている。駆動モータ44、49により、それぞれのボールネジ43、48が回転駆動されることで、切削手段50がガイドレール41に沿ってY軸方向に移動されると共に、ガイドレール46に沿ってZ軸方向に移動される。
【0019】
切削手段50は、ハウジング51から突出したスピンドルユニット53(
図2参照)の先端に切削ブレード52(
図2参照)を回転可能に装着して構成される。切削ブレード52は、ダイヤモンド等の砥粒をボンド剤で結合して円板状に形成されている。また、スピンドルユニット53には、切削手段50の温度を測定する第2の温度測定手段72が配置されている。また、ハウジング51には下方を撮像する撮像手段55が設けられている。
【0020】
また、切削装置1には、装置各部を統括制御する制御手段90が設けられている。また、制御手段90には判断部91が備えられている。制御手段90は、各種処理を実行するプロセッサやメモリ等によって構成されている。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成されている。メモリには、装置各部を制御するプログラムの他、後述する切削ブレード52の先端が保持面30aに接触する原点位置を算出し直す動作を制御するプログラムが記憶されている。
【0021】
このように構成された切削装置1では、板状ワークWの外周の面取り部に切削ブレード52が位置合わせされ、切削ブレード52によって板状ワークWの表面側が切込まれる。そして、保持テーブル30が1回転することで、板状ワークWの面取り部に段状の除去領域が全周に亘って形成される。この時、後段の研削工程での板状ワークWの仕上げ厚みよりも深く切削ブレード52で切り込まれているため、研削工程で板状ワークWが仕上げ厚みまで薄化されても、板状ワークWの面取り部がシャープエッジ状に残ることがない。よって、クラック等による板状ワークWの破損が防止される。
【0022】
ところで、切削装置では、アイドリング動作後に、切削ブレードの先端位置を認識するために先端位置認識動作を行う。先端位置認識動作では、原点位置認識手段により切削ブレードの先端位置を検出し、先端位置を検出した時の切削手段のZ軸方向の高さ位置を基準として、板状ワークに切込む際に切削ブレードの先端が保持面に接触する原点位置が制御される。
【0023】
しかしながら、アイドリング後に切削ブレードの先端位置認識動作を行う時の温度は切削加工時の温度状態とは異なるため、その後実際に加工が行われて温度上昇すると原点位置が予定の位置とならず、切削ブレードの切込み深さが変化する問題がある。また、従来アイドリングは時間で制御されているため、所定時間を経過しないと先端位置認識動作を行うことができず、先端位置認識動作に時間が掛かっていた。そこで、本実施の形態に係る切削装置1は、切削加工中の保持手段3及び切削手段50の温度と、前回切削手段50の高さ位置を測定した時の保持手段3及び切削手段50の温度の温度差に応じて原点位置を算出し直している。
【0024】
以下、
図2を参照して、原点位置算出のための制御構成について説明する。
図2は、本実施の形態に係る原点位置算出の制御構成を示す模式図である。なお、
図2においては、説明の便宜上、原点位置算出の制御に関係のない構成については省略して記載している。
【0025】
図2に示すように、保持テーブル30の周囲には原点位置認識手段60が設けられている。原点位置認識手段60の先端には検知領域60aが凹状に形成されており、一対のミラー60b、60cが対向して備えられている。また、原点位置認識手段60には検知部61が設けられ、検知部61には検出光を発光する発光部62と、発光部62から発光された検出光を受光する受光部63とが備えられている。切削ブレード52の先端位置Pを検出する際には、切削手段50は検知領域60aまで移動され、切削ブレード52が検知領域60aに位置付けられる。
【0026】
発光部62から発光された検出光は、ミラー60bで反射されミラー60cに向かい、ミラー60cで反射され受光部63で受光される。切削ブレード52が検知領域60aに位置付けられていない時は、切削ブレード52により検出光が遮られないため、受光部63で受光される受光量は一定となる。切削ブレード52が発光部62と受光部63との間に進入されると、切削ブレード52により検出光が遮られるため、受光部63で受光される受光量は低下する。
【0027】
受光部63で受光された受光量は認識部64に出力され、認識部64では受光部63の受光量が閾値となる受光量以下になったら切削ブレード52の先端位置Pが認識される。先端位置Pは記憶部65に出力され、記憶部65では認識部64が先端位置Pを認識した時のZ送り手段45による切削手段50の高さ位置Z
1が記憶される。切削手段50の高さ位置Z
1は算出手段66に出力される。ところで、算出手段66では予め温度ごとに測定された受光部63と保持面30aとの深さ方向での差ΔZ
1、すなわち切削ブレード52の先端位置Pを受光部63が検知する高さΔZ
1が記憶されている。熱によって保持テーブル30の保持面30aの高さが変わると、受光部63と保持面30aとの間の距離も可変する。このため、算出手段66では、保持テーブル30の温度ごとに高さΔZ
1の値を可変可能に記憶している。算出手段66で、記憶部65から出力された切削手段50の高さ位置Z
1に高さΔZ
1が加えられ、切削ブレード52の先端位置Pが保持面30aに接触する原点位置Z
0(
図4参照)が算出される。このように原点位置認識手段60で算出された原点位置Z
0は制御手段90に出力され、記憶される。そして、制御手段90は板状ワークWへの切込み時にZ送り手段45を制御する。このように原点位置を調整することにより、保持面30aに保持される板状ワークWに切削ブレード52が切込まれる。
【0028】
保持テーブル30には第1の温度測定手段71が備えられており、スピンドルユニット53には第2の温度測定手段72が備えられている。認識部64で切削ブレード52の先端位置Pが認識された時、第1の温度測定手段71により保持テーブル30の温度Ta
0が測定され、第2の温度測定手段72によりスピンドルユニット53の温度Tb
0が測定される。また、板状ワークWを切削加工中において、第1の温度測定手段71により保持テーブル30の温度Ta
1が測定され、第2の温度測定手段72によりスピンドルユニット53の温度Tb
1が測定される。各温度Ta
0、Tb
0、Ta
1、Tb
1は制御手段90に出力される。
【0029】
原点位置Z
0が算出される直前に認識部64で切削ブレード52の先端位置Pが認識される時に、第1の温度測定手段71で温度Ta
0が測定される。判断部91は、この温度Ta
0と、切削加工中に第1の温度測定手段71で測定される温度Ta
1との第1の温度差ΔTa
01(Ta
1−Ta
0)を算出し、ΔTa
01が予め設定される許容範囲と比較される。また、認識部64で切削ブレード52の先端位置Pが認識される時に、第2の温度測定手段72で、温度Tb
0が測定される。判断部91は、この温度Tb
0と、切削加工中に測定される第2の温度測定手段72で測定される温度Tb
1との第2の温度差ΔTb
01(Tb
1−Tb
0)を算出し、ΔTb
01が予め設定される許容範囲と比較される。なお、許容範囲は板状ワークWの加工条件により設定することができる。
【0030】
判断部91は、第1の温度差ΔTa
01と第2の温度差ΔTb
01のどちらかが許容範囲より大きかった場合、原点位置認識手段60により切削ブレード52の先端位置Pを検出して原点位置を算出し直す。また、第1の温度差ΔTa
01と第2の温度差ΔTb
01とが許容範囲以内であった場合、切削加工を継続する。
【0031】
このように、切削加工中にスピンドルユニット53の温度ΔTb
1を測定し、前回切削手段50の高さ位置Z
1が測定された時の温度Tb
0と比較する。温度差ΔTb
01が許容範囲よりも大きくなった場合、切削加工中の温度変化により切削手段50の高さ位置Z
1が変化したものとして、切削ブレード52の先端位置Pを検出し直して高さ位置Z
1を測定し直す。また、切削加工中に保持テーブル30の温度Ta
1を測定し、前回切削手段50の高さ位置Z
1が測定された時の温度Ta
0と比較して、温度差ΔTa
01が許容範囲よりも大きくなった場合、切削ブレード52の先端位置Pを検出し直して高さ位置Z
1を測定し直す。また、算出手段66において、切削ブレード52の先端位置Pを受光部63が検知する高さΔZ
1は温度ごとに設定されているため、切削加工中の保持テーブル30の温度変化により変化した高さΔZ
1を正確に設定することができる。
【0032】
これらにより、切削加工中に温度変化により原点位置が変化した場合であっても、変化した高さ位置Z
1及び高さΔZ
1をともに測定し直すことができるため、原点位置を正確に算出し直すことができる。このため、温度変化により板状ワークWへの切削ブレード52の切込み深さが変化することを防止でき、板状ワークWを良好に加工することができる。
【0033】
次に、
図3から
図6を参照して、原点位置の算出動作について詳細に説明する。
図3は、本実施の形態に係る認識部が切削ブレードの先端を認識した時の第1及び第2の温度測定手段による温度測定動作の一例を示す図である。
図4は、本実施の形態に係る第2の温度差が許容範囲よりも大きい場合の原点位置の算出動作の一例を示す図である。
図5は、本実施の形態に係る第1の温度差が許容範囲よりも大きい場合の原点位置の算出動作の一例を示す図である。
図6は、本実施の形態に係る第1の温度差及び第2の温度差が許容範囲よりも大きい場合の原点位置の算出動作の一例を示す図である。
【0034】
図3に示すように、保持テーブル30には第1の温度測定手段71が備えられており、スピンドルユニット53には第2の温度測定手段72が備えられている。切削ブレード52はZ送り手段45(
図1参照)により、原点位置認識手段60の発光部62と受光部63との間に位置付けられる。受光量が設定される受光量以下になったら切削ブレード52の先端位置Pが認識され、この時の切削手段50の高さ位置Z
1が記憶される。この時、第1の温度測定手段71により保持テーブル30の温度Ta
0が測定され、第2の温度測定手段72によりスピンドルユニット53の温度Tb
0が測定される。
【0035】
切削手段50の高さ位置Z
1に、温度ごとに設定されている受光部63と保持面30aとの深さ方向での差ΔZ
1が加えられて、切削ブレード52の先端位置Pが保持面30aに接触する原点位置が算出される。算出された原点位置に基づいてZ送り手段45が制御され、この条件で板状ワークWは切削ブレード52により切込まれる。
【0036】
板状ワークWを切削加工中、第1の温度測定手段71により保持テーブル30の温度Ta
1が測定され、第2の温度測定手段72によりスピンドルユニット53の温度Tb
1が測定される。第1の温度差ΔTa
01、第2の温度差ΔTb
01が共に許容範囲以内となる時、スピンドルユニット53及び保持テーブル30は熱により変形されない。この場合、判断部91は、切削加工を継続する。
【0037】
切削加工が継続され、
図4に示すように、第2の温度差ΔTb
01が許容範囲より大きくなる。この時、回転による熱でスピンドルユニット53が変形されて切削ブレード52の刃先の高さが変わり、切削手段50の高さ位置がZ
1からZ
2に変化する。一方、第1の温度差ΔTa
01は許容範囲以内となる時、保持テーブル30は変形されていない。この場合、判断部91(
図1参照)は、原点位置認識手段60により原点位置Z
0を算出し直す。
【0038】
発光部62及び受光部63で切削ブレード52の先端位置Pが検出され、この時の切削手段50の高さ位置Z
2が改めて記憶される。変化した切削手段50の高さ位置Z
2に、受光部63と保持面30aとの深さ方向での差ΔZ
1が加えられて、原点位置Z
0が算出し直される。
【0039】
切削加工が継続され、
図5に示すように、第1の温度差ΔTa
01が許容範囲より大きくなる。この時、X送り手段からの熱伝達により保持テーブル30が変形され、受光部63と保持面30aとの深さ方向での差がΔZ
1からΔZ
2に変化する。一方、第2の温度差ΔTb
01は許容範囲以内となる時、スピンドルユニット53は変形されていない。この場合、判断部91は、原点位置認識手段60により原点位置Z
0を算出し直す。
【0040】
発光部62及び受光部63で切削ブレード52の先端位置Pが検出され、この時の切削手段50の高さ位置Z
1が記憶される。温度ごとに記憶されている受光部63と保持面30aとの深さ方向での差がΔZ
2に設定し直され、これに切削手段50の高さ位置Z
1に加えられ、原点位置Z
0が算出し直される。
【0041】
切削加工が継続され、
図6に示すように、第2の温度差ΔTb
01と第1の温度差ΔTa
01がともに許容範囲より大きくなる。この時、回転による熱でスピンドルユニット53が変形され、切削手段50の高さ位置がZ
1からZ
2に変化する。また、X送り手段からの熱伝達により保持テーブル30が変形され、受光部63と保持面30aとの深さ方向での差がΔZ
1からΔZ
2に変化する。この場合、判断部91は、原点位置認識手段60により原点位置Z
0を算出し直す。
【0042】
発光部62及び受光部63で切削ブレード52の先端位置Pが検出され、切削手段50の高さ位置Z
2が改めて記憶される。変化した切削手段50の高さ位置Z
2に、設定し直された受光部63と保持面30aとの深さ方向での差がΔZ
2に加えられ、切削ブレード52の先端位置Pが保持面30aに接触する原点位置Z
0が算出し直される。このように、切削加工中に温度変化により原点位置Z
0が変化した場合であっても、変化した高さ位置Z
2を測定し直すことができる。また、切削加工中に温度変化した差ΔZ
2を設定し直すことができる。これらにより、原点位置Z
0を正確に算出し直すことができる。
【0043】
以上のように、本実施の形態に係る切削装置1では、切削加工中の保持手段3の温度Ta
0と、前回切削手段50の高さ位置Z
1を測定した時の保持手段3の温度Ta
1とを測定する。また、切削加工中の切削手段50の温度Tb
0と、前回切削手段50の高さ位置を測定した時の切削手段50の温度Tb
1とを測定する。そして、保持手段3の温度差ΔTa
01又は切削手段50の温度差ΔTb
01が許容範囲よりも大きくなった場合、切削手段50の高さ位置Z
1を測定し直すとともに、受光部63と保持面30aとの深さ方向での差ΔZ
1を設定し直すことで原点位置Z
0を算出し直す。これにより、切削加工中と前回切削手段50の高さ位置Z
1を測定した時の温度変化により変化した原点位置Z
0を算出し直すことができるため、切削加工中の保持手段3及び切削手段50の温度変化により切込み深さが変化することを防止できる。このため、板状ワークWを良好に加工することができる。
【0044】
上記実施の形態においては、X送り手段20によって切削手段50に対して保持テーブル30がX方向に切削送りされ、Y送り送り手段40によって保持テーブル30に対して切削手段50がY方向にインデックス送りされる構成にしたが、この構成に限定されない。X送り手段20、Y送り手段40は、保持テーブル30と切削手段50とを相対的にX方向、Y方向に移動させる構成であればよい。例えば、X送り手段20によって保持テーブル30に対して切削手段50がX方向に切削送りされ、Y送り手段40によって切削手段50に対して保持テーブル30がY方向にインデックス送りされてもよい。
【0045】
また、上記実施の形態においては、発光部62及び受光部63により検出された切削ブレード52の先端位置Pを検出して原点位置Z
0が算出されるが、この構成に限定されない。原点位置Z
0は、切削ブレード52を被加工物Sに切り込ませた切削痕から求めてもよい。
図7は、変形例に係る原点位置の算出動作の一例を示す図である。
図7に示すように、原点位置認識手段として、保持テーブル30の近くに配設されるサブテーブル18に板状の被加工物Sを保持させ、被加工物Sに切削ブレード52を切込ませて形成された溝Mの長さLから原点位置Z
0を算出する。被加工物Sに形成された溝Mは撮像手段55で撮像される。算出手段(不図示)では、撮像手段55が撮像した溝の長さLと、切削ブレード52の軸心高さh1と、被加工物Sの上面高さh2とを用いて、切削ブレード52の外径rを算出する。切削ブレード52の外径rは、例えば次式(1)によって算出される。なお、被加工物Sの上面高さh2は、被加工物Sの厚みとサブテーブル18の高さから求められる既知の値として予め算出手段に記憶されている。
r
2=(h1−h2)
2+(L/2)
2 (1)
【0046】
算出手段では、切削ブレード52の外径rと、被加工物Sの上面から切削ブレード52の軸心Oまでの高さh1−h2とに基づいて、次式(2)によって被加工物Sに対する切削ブレード52の切込み深さdが求められる。
d=r−(h1−h2) (2)
【0047】
この切込み深さdに、保持テーブル30の保持面30aと被加工物Sの上面の高さ差xが加えられて補正値(d+x)が算出される。そして、被加工物Sに切削ブレード52を切込ませた時の切削ブレード52の軸心高さh1に、この補正値を加えることで、切削ブレード52の先端位置Pが保持テーブル30の保持面30aに接触する原点位置Z
0が求められる。
【0048】
変形例においては、撮像手段55で溝Mが撮像された時、第1の温度測定手段71(
図2参照)により保持テーブル30の温度Ta
0が測定され、第2の温度測定手段72によりスピンドルユニット53(
図2参照)の温度Tb
0が測定される。また、板状ワークWを切削加工中において、第1の温度測定手段71により保持テーブル30の温度Ta
1が測定され、第2の温度測定手段72によりスピンドルユニット53の温度Tb
1が測定される。
【0049】
判断部91は、撮像手段55で溝Mが撮像される時に測定される温度Ta
0と、温度Ta
1との第1の温度差ΔTa
01を算出する。また、判断部91は、撮像手段55で溝Mが撮像される時に測定されるTb
0と、温度Tb
1との第2の温度差ΔTb
01を算出する。第1の温度差ΔTba
01と第2の温度差ΔTb
01のどちらかが許容範囲より大きかった場合、判断部91は原点位置を算出し直す。
【0050】
なお、算出手段では、本実施の形態おいては保持テーブル30の温度ごとに測定された受光部63と保持面30aとの深さ方向での差ΔZ
1の値が記憶されているが、変形例においては温度ごとの保持面30aの変化量ΔDが記憶されている、温度による保持面30aの変化に応じて補正値(d+x)に変化量ΔDが加えられ、原点位置Z
0が算出される。
【0051】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。