特許第6791579号(P6791579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791579
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】ウェーハ及びウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20201116BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H01L21/304 631
   B24B7/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-176879(P2016-176879)
(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公開番号】特開2018-41915(P2018-41915A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】西原 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】小出 純
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩平
(72)【発明者】
【氏名】松澤 稔
【審査官】 鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−530159(JP,A)
【文献】 特開2012−238793(JP,A)
【文献】 特開2005−123425(JP,A)
【文献】 特開2013−045998(JP,A)
【文献】 特開2013−004836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲む外周余剰領域とを表面側に備えたウェーハの加工方法であって、
ウェーハよりも直径の小さい研削ホイールでウェーハの該デバイス領域に対応する裏面側を研削し、該デバイス領域に対応する第1部分と該第1部分を囲み該第1部分よりも厚く裏面側に突出する環状の第2部分とを形成する第1研削ステップと、
該第1研削ステップで使用された研削ホイールとは異なる研削ホイールで該第1部分の一部を更に研削し、該第1部分の裏面よりも滑らかな底を持つ凹部を形成する第2研削ステップと、を含み、
該第1研削ステップでは、該第1部分の該裏面と該第2部分の内側の側面とが、45°より大きく75°より小さい角度をなすように該研削ホイールとウェーハとを相対的に移動させることを特徴とするウェーハの加工方法。
【請求項2】
該第2研削ステップでは、該研削ホイールとウェーハとを鉛直方向にのみ相対的に移動させることを特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
該第2研削ステップでは、該研削ホイールとウェーハとを水平方向及び鉛直方向から傾斜した方向に沿って相対的に移動させることを特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項4】
第1研削ステップでは、該第1部分の裏面と該第2部分の内側の側面とが、55°以上70°以下の角度をなすように該研削ホイールとウェーハとを相対的に移動させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ及びウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型軽量なデバイスチップを実現するために、シリコンやガリウムヒ素等の材料でなるウェーハを薄く加工することが求められている。ウェーハは、例えば、表面の分割予定ライン(ストリート)で区画される各領域にIC等のデバイスが形成された後、所望の厚みとなるように裏面側を研削される。
【0003】
一方で、研削等によりウェーハを薄くすると、ウェーハの剛性は大幅に低下して後工程での取り扱いが難しくなる。そのため、デバイスが形成されたウェーハの中央部分のみを研削して外周部分の厚みを維持することで、研削後のウェーハにある程度の剛性を残す加工方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この加工方法では、例えば、ウェーハより径の小さい研削ホイールを用いてウェーハの裏面側を研削し、中央部分を薄くする。ウェーハの剛性は、厚みが維持された外周部分によって保たれる。なお、この外周部分は、後に、中央部分との境界にレーザービームを照射する方法等を用いて分離、除去される(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
ところで、中央部分の裏面と外周部分の内側の側面(中央部分側の側面)とが研削によって垂直になると、後のハンドリング等の際に外周部分の内側の縁が欠け易い。外周部分の内側の縁が欠けたウェーハにエッチング等の処理を施すと、欠けた領域から侵食が進んで、外周部分が脆くなってしまう。
【0006】
また、中央部分の裏面に対して外周部分の内側の側面が垂直になっていると、各種工程で使用される薬液(例えば、再配線層の形成に用いられるレジスト液)を外部に排出し難いという問題もある。そこで、近年では、中央部分の裏面に対して外周部分の内側の側面を傾斜させる加工方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−19461号公報
【特許文献2】特開2008−53341号公報
【特許文献3】特開2011−54808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、中央部分の裏面に対して外周部分の内側の側面を単に傾斜させるだけでは、中央部分が狭くなって、デバイスの形成に必要なスペースを十分に確保できない。また、ウェーハを研削する際に、砥石との接触等によって外周部分の内側の縁が欠けてしまうことも多かった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、デバイスが形成される領域を広く確保しながら欠けの発生を抑制できるウェーハの加工方法、及びこのウェーハの加工方法で加工されたウェーハを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、複数のデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲む外周余剰領域とを表面側に備えたウェーハの加工方法であって、ウェーハよりも直径の小さい研削ホイールでウェーハの該デバイス領域に対応する裏面側を研削し、該デバイス領域に対応する第1部分と該第1部分を囲み該第1部分よりも厚く裏面側に突出する環状の第2部分とを形成する第1研削ステップと、該第1研削ステップで使用された研削ホイールとは異なる研削ホイールで該第1部分の一部を更に研削し、該第1部分の裏面よりも滑らかな底を持つ凹部を形成する第2研削ステップと、を含み、該第1研削ステップでは、該第1部分の裏面と該第2部分の内側の側面とが、45°より大きく75°より小さい角度をなすように該研削ホイールとウェーハとを相対的に移動させるウェーハの加工方法が提供される。
【0011】
本発明の一態様において、該第2研削ステップでは、該研削ホイールとウェーハとを鉛直方向にのみ相対的に移動させることが好ましい。
【0012】
また、本発明の一態様において、該第2研削ステップでは、該研削ホイールとウェーハとを水平方向及び鉛直方向から傾斜した方向に沿って相対的に移動させることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様において、該第1研削ステップでは、該第1部分の裏面と該第2部分の内側の側面とが、55°以上70°以下の角度をなすように該研削ホイールとウェーハとを相対的に移動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係るウェーハの加工方法では、第1部分の裏面と第2部分の内側の側面とのなす角度が45°より大きく75°より小さくなるので、第1部分(デバイス領域)を広く確保しながら、欠けの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(A)は、本実施形態に係るウェーハの加工方法で加工されるウェーハの構成例を模式的に示す斜視図であり、図1(B)は、保護部材貼付ステップを模式的に示す斜視図である。
図2図2(A)は、第1研削ステップを模式的に示す一部断面側面図であり、図2(B)は、第1研削ステップの後のウェーハの状態を模式的に示す一部断面側面図である。
図3図3(A)は、第2研削ステップを模式的に示す一部断面側面図であり、図3(B)は、第2研削ステップの後のウェーハの状態を模式的に示す一部断面側面図である。
図4】実験の結果を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態に係るウェーハの加工方法は、保護部材貼付ステップ(図1(B)参照)、第1研削ステップ(図2(A)及び図2(B)参照)、及び第2研削ステップ(図3(A)及び図3(B)参照)を含む。
【0017】
保護部材貼付ステップでは、複数のデバイスが形成されたデバイス領域と、デバイス領域を囲む外周余剰領域とを有するウェーハの表面側に保護部材を貼付する。第1研削ステップでは、ウェーハよりも径の小さい研削ホイールを用いて、デバイス領域に対応するウェーハの裏面側を研削することで、薄い第1部分と、第1部分を囲む厚い第2部分とを形成する。
【0018】
なお、第1研削ステップでは、第1部分の裏面と第2部分の内側の側面とが45°より大きく75°より小さい角度をなすように、研削ホイールをウェーハに対して相対的に移動させる。第2研削ステップでは、第1研削ステップで使用した研削ホイールとは別の研削ホイールを用いて第1部分の裏面側を更に研削する。以下、本実施形態に係るウェーハの加工方法について詳述する。
【0019】
図1(A)は、本実施形態に係るウェーハの加工方法で加工されるウェーハの構成例を模式的に示す斜視図である。図1(A)に示すように、本実施形態で加工されるウェーハ11は、シリコン(Si)やガリウムヒ素(GaAs)等の半導体材料を用いて円盤状に形成されており、その表面1a側は、中央のデバイス領域と、デバイス領域を囲む外周余剰領域とに分けられる。
【0020】
デバイス領域は、格子状に配列された分割予定ライン(ストリート)13で更に複数の領域に区画されており、各領域には、IC、LSI等のデバイス15が形成されている。なお、本実施形態では、半導体材料でなる円盤状のウェーハ11を用いるが、ウェーハ11の材質、形状、構造等に制限はない。例えば、セラミックス、金属、樹脂等の材料でなるウェーハ11を用いることもできる。同様に、デバイス15の種類、数量、配置等にも制限はない。
【0021】
本実施形態に係るウェーハの加工方法では、まず、上述したウェーハ11の表面11a側に保護部材を貼付する保護部材貼付ステップを行う。図1(B)は、保護部材貼付ステップを模式的に示す斜視図である。保護部材21は、例えば、ウェーハ11と同等の径を持つ円形のフィルム(テープ)であり、その表面21a側には、粘着力を有する糊層が設けられている。
【0022】
そのため、この表面21a側を被加工物11の表面11a側に密着させれば、保護部材21を被加工物11に貼付できる。保護部材21を貼付することで、後の第1研削ステップや第2研削ステップの際に加わる衝撃を緩和し、ウェーハ11の表面11a側に形成されたデバイス15等を保護できる。
【0023】
保護部材貼付ステップの後には、デバイス領域に対応するウェーハ11の裏面11b側を研削して、薄い第1部分と、第1部分を囲む厚い第2部分とを形成する第1研削ステップを行う。図2(A)は、第1研削ステップを模式的に示す一部断面側面図であり、図2(B)は、第1研削ステップの後のウェーハ11の状態を模式的に示す一部断面側面図である。
【0024】
第1研削ステップは、例えば、図2(A)等に示す研削装置2を用いて行われる。研削装置2は、ウェーハ11を吸引、保持するためのチャックテーブル4を備えている。チャックテーブル4は、モータ等を含む回転駆動源(不図示)に連結されており、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル4の下方には、移動機構(不図示)が設けられており、チャックテーブル4は、この移動機構で水平方向に移動する。
【0025】
チャックテーブル4の上面は、ウェーハ11に貼付された保護部材21の裏面21b側を吸引、保持する保持面4aとなっている。保持面4aは、チャックテーブル4の内部に形成された吸引路(不図示)等を通じて吸引源(不図示)に接続されている。吸引源の負圧を保持面4aに作用させることで、ウェーハ11は、保護部材21を介してチャックテーブル4に吸引、保持される。
【0026】
チャックテーブル4の上方には、第1研削ユニット6が配置されている。第1研削ユニット6は、移動機構(不図示)に支持されたスピンドルハウジング(不図示)を備えている。このスピンドルハウジングは、移動機構によって水平方向及び鉛直方向に移動する。スピンドルハウジングには、スピンドル8が収容されており、スピンドル8の下端部には、円盤状のマウント10が固定されている。
【0027】
マウント10の下面には、マウント10と概ね同じ径の研削ホイール12が装着されている。研削ホイール12は、ステンレス、アルミニウム等の金属材料で形成されたホイール基台14を備えている。ホイール基台14の下面には、複数の研削砥石16が環状に配列されている。
【0028】
スピンドル8の上端側(基端側)には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。研削ホイール12は、この回転駆動源で発生する回転力によって、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。第1研削ユニット6の内部又は近傍には、ウェーハ11等に対して純水等の研削液を供給するためのノズル(不図示)が設けられている。
【0029】
第1研削ステップでは、まず、ウェーハ11に貼付されている保護部材21の裏面21b側をチャックテーブル4の保持面4aに接触させて、吸引源の負圧を作用させる。これにより、ウェーハ11は、裏面11b側が上方に露出した状態でチャックテーブル4に保持される。
【0030】
次に、チャックテーブル4を第1研削ユニット6の下方に移動させて、研削ホイール12の端部(研削砥石16の外側の側面)を、デバイス領域と外周余剰領域との境界に相当する位置に合わせる。そして、図2(A)に示すように、チャックテーブル4と研削ホイール12とをそれぞれ回転させて、研削液をウェーハ11の裏面11b等に供給しながらスピンドルハウジング(スピンドル8、研削ホイール12)を下降させる。
【0031】
スピンドルハウジングの下降速度(下降量)は、ウェーハ11の裏面11b側に研削砥石16の下面が押し当てられる程度に調整される。併せて、スピンドルハウジング(スピンドル8)をウェーハ11の中央に向かって水平に移動させる。つまり、水平方向及び鉛直方向から傾斜した方向に沿って研削ホイール12とウェーハ11とを相対的に移動させる。
【0032】
これにより、ウェーハ11のデバイス領域に対応する裏面11b側を研削して、図2(B)に示すように、デバイス領域に対応する薄い第1部分11cと、外周余剰領域に対応する厚い第2部分11dとを形成できる。すなわち、第2部分11dは、第1部分11cを囲む環状に形成され、第1部分11cよりもウェーハ11の裏面11b側に突出する。
【0033】
第1部分11cの裏面11eと、第2部分11dの内側(第1部分11c側)の側面11fとは、研削ホイール12とウェーハ11との相対的な移動に応じた所定の角度θをなす。ここで、例えば、角度θが75°以上になると、ウェーハ11を研削する際に第2部分11dの内側の縁が欠け易くなってしまう。
【0034】
一方で、角度θが45°以下になると、ウェーハ11を研削する際の水平方向の移動量が増えて、デバイス領域に対応する第1部分11cを十分に広く確保できなくなる。そこで、本実施形態では、この角度θを、45°より大きく75°より小さい値に設定する。角度θは、55°以上70°以下の値に設定されるとより好ましい。これにより、第1部分を広く確保しながら、欠けの発生を抑制できる。
【0035】
第1研削ステップの後には、研削ホイール12とは別の研削ホイールを用いて第1部分11cの裏面11e側を更に研削する第2研削ステップを行う。図3(A)は、第2研削ステップを模式的に示す一部断面側面図であり、図3(B)は、第2研削ステップの後のウェーハ11の状態を模式的に示す一部断面側面図である。
【0036】
第2研削ステップは、引き続き研削装置2を用いて行われる。図3(A)等に示すように、チャックテーブル4の上方には、第1研削ユニット6とは別の第2研削ユニット26が配置されている。第2研削ユニット26の構成は、第1研削ユニット6と同様である。すなわち、第2研削ユニット26は、移動機構(不図示)に支持されたスピンドルハウジング(不図示)を備えている。スピンドルハウジングには、スピンドル28が収容されており、スピンドル28の下端部には、円盤状のマウント30が固定されている。
【0037】
マウント30の下面には、マウント30と概ね同じ径の研削ホイール32が装着されている。研削ホイール32は、ステンレス、アルミニウム等の金属材料で形成されたホイール基台34を備えている。ホイール基台34の下面には、複数の研削砥石36が環状に配列されている。なお、本実施形態の研削ホイール32には、研削砥石16に含まれる砥粒よりも粒形の小さい砥粒を含む研削砥石36が使用される。
【0038】
スピンドル28の上端側(基端側)には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。研削ホイール32は、この回転駆動源で発生する回転力によって、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。第2研削ユニット26の内部又は近傍には、ウェーハ11等に対して純水等の研削液を供給するためのノズル(不図示)が設けられている。
【0039】
第2研削ステップでは、まず、チャックテーブル4を第2研削ユニット26の下方に移動させて、研削ホイール32の端部(研削砥石36の外側の側面)を、第2部分11dの内側の側面11fよりも内側に合わせる。そして、図3(A)に示すように、チャックテーブル4と研削ホイール32とをそれぞれ回転させて、研削液をウェーハ11の裏面11b等に供給しながらスピンドルハウジング(スピンドル28、研削ホイール32)を下降させる。
【0040】
スピンドルハウジングの下降速度(下降量)は、第1部分11cの裏面11e側に研削砥石36の下面が押し当てられる程度に調整される。これにより、ウェーハ11の第1部分11cを更に研削して、図3(B)に示すように、裏面11eよりも滑らかな底を持つ凹部11gを形成できる。
【0041】
次に、本実施形態に係るウェーハの研削方法の有効性を確認するために行った実験につて説明する。本実験では、まず、上述した第1研削ステップに従いウェーハを加工し、30°〜90°の範囲で角度θの値が異なる複数のウェーハを用意した。角度θを除く研削の条件は、次の通りである。なお、本実験では、実際にウェーハを研削する際の研削ホイールの下降速度を、第1速度から第3速度の3段階で変化させている。
スピンドルの回転数:4500rpm
チャックテーブルの回転数:300rpm
研削ホイールの下降速度(第1速度):6.0μm/s
研削ホイールの下降速度(第2速度):3.0μm/s
研削ホイールの下降速度(第3速度):1.0μm/s
研削液の供給量(第1ノズル):4.0L/min
研削液の供給量(第2ノズル):3.0L/min
【0042】
その後、各ウェーハに発生した欠け(チッピング)の数を確認した。図4は、本実験の結果を模式的に示すグラフである。なお、図4では、横軸を角度θの値、縦軸をチッピングの数として、角度θと、サイズが100μm以上のチッピングの数との関係を表している。
【0043】
図4に示すように、角度θが70°を超え75°に達すると、チッピング数が大幅に増加してしまう。よって、角度θの値は、75°未満に(75°より小さく)する必要があり、70°以下にするのが好ましいと言える。ただし、角度θの値が小さくなると、デバイス領域に対応する第1部分を十分に広く確保できなくなる。よって、角度θの値は、45°より大きくすると良く、55°以上にするのが好ましい。
【0044】
以上のように、本実施形態に係るウェーハの加工方法、及びこのウェーハの加工方法で加工されたウェーハでは、第1部分11cの裏面11eと第2部分11dの内側の側面11fとのなす角度が45°より大きく75°より小さくなるので、デバイス領域に対応する第1部分11cを広く確保しながら、欠けの発生を抑制できる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態の第1研削ステップでは、研削ホイール12を下降させる際に、研削ホイール12とウェーハ11とを水平方向及び鉛直方向から傾斜した方向に相対的に移動させて、角度θを形成しているが、本発明はこの態様に制限されない。
【0046】
例えば、研削ホイール12を鉛直方向に下降させて、ウェーハ11を研削した後、研削ホイール12を上昇させる際に、研削ホイール12とウェーハ11とを水平方向及び鉛直方向から傾斜した方向に相対的に移動させて、角度θを形成しても良い。
【0047】
また、上記実施形態では、第1研削ステップとともに、保護部材貼付ステップ及び第2研削ステップを行っているが、本発明に係るウェーハの加工方法は、少なくとも第1研削ステップを含んでいれば良い。つまり、保護部材貼付ステップ及び第2研削ステップが不要な場合には、これらを省略できる。
【0048】
また、上記実施形態の第2研削ステップでは、研削ホイール32とウェーハ11とを鉛直方向にのみ相対的に移動させているが、第2研削ステップでも、水平方向及び鉛直方向から傾斜した方向に沿って研削ホイールとウェーハとを相対的に移動させて良い。
【0049】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0050】
11 ウェーハ
11a 表面
11b 裏面
11c 第1部分
11d 第2部分
11e 裏面
11f 側面
11g 凹部
13 分割予定ライン(ストリート)
15 デバイス
21 保護部材
21a 表面
21b 裏面
2 研削装置
4 チャックテーブル
4a 保持面
6 第1研削ユニット
8 スピンドル
10 マウント
12 研削ホイール
14 ホイール基台
16 研削砥石
26 第2研削ユニット
28 スピンドル
30 マウント
32 研削ホイール
34 ホイール基台
36 研削砥石
図1
図2
図3
図4