特許第6791726号(P6791726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791726
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】処理方法
(51)【国際特許分類】
   B07B 4/08 20060101AFI20201116BHJP
   C22B 7/02 20060101ALI20201116BHJP
   C22B 21/00 20060101ALI20201116BHJP
   B07B 9/00 20060101ALI20201116BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20201116BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20201116BHJP
   C22B 11/02 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
   B07B4/08 ZZAB
   C22B7/02 A
   C22B21/00
   B07B9/00 A
   B09B3/00 303L
   B09B5/00 N
   !C22B11/02
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-220006(P2016-220006)
(22)【出願日】2016年11月10日
(65)【公開番号】特開2018-75543(P2018-75543A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】青木 勝志
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 英俊
(72)【発明者】
【氏名】横田 拓也
【審査官】 塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−170480(JP,A)
【文献】 特開2016−089196(JP,A)
【文献】 特開平11−253885(JP,A)
【文献】 特開2012−205983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 4/08
B07B 9/00
B09B 1/00−5/00
B09C 1/00−1/10
C22B 7/02
C22B 21/00
C22B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般家庭ごみの焼却灰からセメント原料を除いた残渣を、篩目が8〜12mmの篩で篩分ける篩分け工程と、
前記篩目が8〜12mmの篩の篩下の残渣を篩目が3〜5mmの篩で更に篩分け、前記篩目が3〜5mmの篩の篩上の残渣と篩下の残渣のそれぞれを、表面からエアーを発生し往復振動するエアーテーブルを用いて比重選別と形状選別を行うことで、アルミニウムとその他に分離する分離工程と、を含み、
前記篩目が3〜5mmの篩の篩上の残渣に対する比重選別と形状選別は、前記篩下の残渣に対する比重選別と形状選別よりもエアーの風速が大きい条件で実行される、ことを特徴とする処理方法。
【請求項2】
一般家庭ごみの焼却灰からセメント原料を除いた残渣を、篩目が8〜12mmの篩で篩分ける篩分け工程と、
前記篩目が8〜12mmの篩の篩下の残渣を篩目が3〜5mmの篩で更に篩分け、前記篩目が3〜5mmの篩の篩上の残渣と篩下の残渣のそれぞれを、表面からエアーを発生し往復振動するエアーテーブルを用いて比重選別と形状選別を行うことで、アルミニウムとその他に分離する分離工程と、を含み、
前記篩目が3〜5mmの篩による篩上の残渣に対する比重選別と形状選別は、前記篩下の残渣に対する比重選別と形状選別とエアーの風速が同一であり、前記篩下の残渣に対する比重選別と形状選別よりも往復振動の振動数が小さい条件で実行される、ことを特徴とする処理方法。
【請求項3】
一般家庭ごみの焼却灰からセメント原料を除いた残渣を、篩目が8〜12mmの篩で篩分ける篩分け工程と、
前記篩目が8〜12mmの篩の篩下の残渣を篩目が3〜5mmの篩で更に篩分け、前記篩目が3〜5mmの篩の篩上の残渣と篩下の残渣のそれぞれを、表面からエアーを発生し往復振動するエアーテーブルを用いて比重選別と形状選別を行うことで、アルミニウムとその他に分離する分離工程と、を含み、
前記エアーテーブルの表面内の第1軸方向と該第1軸方向に直交する前記表面内の第2軸方向とが、水平面に対して傾斜するように配置され、
前記篩目が3〜5mmの篩による篩上の残渣に対する比重選別と形状選別は、前記篩下の残渣に対する比重選別と形状選別とエアーの風速及び往復振動の振動数が同一であり、前記篩下の残渣に対する比重選別と形状選別よりも前記第1軸方向及び前記第2軸方向の少なくとも一方の水平面に対する傾斜角が大きい条件で実行される、ことを特徴とする処理方法。
【請求項4】
一般家庭ごみの焼却灰からセメント原料を除いた残渣を、篩目が8〜12mmの篩で篩分ける篩分け工程と、
前記篩目が8〜12mmの篩の篩下の残渣を篩目が3〜5mmの篩で更に篩分け、前記篩目が3〜5mmの篩の篩上の残渣と篩下の残渣のそれぞれを、表面からエアーを発生し往復振動するエアーテーブルを用いて比重選別と形状選別を行うことで、アルミニウムとその他に分離する分離工程と、を含み、
前記エアーテーブルの表面内の第1軸方向と該第1軸方向に直交する前記表面内の第2軸方向とが、水平面に対して傾斜するように配置され、
前記篩目が3〜5mmの篩による篩上の残渣に対する比重選別と形状選別は、前記篩下の残渣に対する比重選別と形状選別とエアーの風速が同一であり、前記篩下の残渣に対する比重選別と形状選別よりも往復振動の振動数が大きく、前記篩下の残渣に対する比重選別と形状選別よりも前記第1軸方向及び前記第2軸方向の少なくとも一方の水平面に対する傾斜角が大きい条件で実行される、ことを特徴とする処理方法。
【請求項5】
前記エアーテーブルは、該エアーテーブルの表面内の第1軸方向と該第1軸方向に直交する前記表面内の第2軸方向とが、水平面に対して傾斜するように配置されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項6】
前記エアーテーブルの前記第1軸方向の高さが高い側の端部近傍に前記残渣が供給され、前記エアーテーブルが前記第2軸方向に往復振動されるとともに、前記表面から鉛直方向上側に向けて気流が発生され、
前記エアーテーブルの前記第1軸方向の高さが低い側の端部近傍において、前記残渣が前記第2軸方向の高い側と低い側とに分離される、ことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項7】
前記アルミニウムが、前記第2軸方向の低い側に分離されることを特徴とする請求項に記載の処理方法。
【請求項8】
前記エアーテーブルは、該エアーテーブルの表面内の第1軸方向と該第1軸方向に直交する前記表面内の第2軸方向とが、水平面に対して傾斜するように配置され、
前記篩上の残渣に対する比重選別と形状選別は、前記エアーの風速が2.7〜2.9m/s、前記往復振動の振動数が500〜540rpm、前記第1軸方向の傾斜角が9〜11°、前記第2軸方向の傾斜角が8〜10°であり、
前記篩下の残渣に対する比重選別と形状選別は、前記エアーの風速が2.2〜2.4m/s、前記振動数が554〜586rpm、前記第1軸方向の傾斜角が9〜11°、前記第2軸方向の傾斜角が6.5〜8.5°である、ことを特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項9】
前記エアーテーブルを用いた前記比重選別と前記形状選別行っても、アルミニウムとその他に分離できなかった残渣に対して、前記比重選別と前記形状選別を繰り返し行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、一般家庭ごみの焼却灰に対して、乾燥、磁力選別、篩分け、粉砕、渦電流選別等の処理を行い、処理後の焼却灰中からセメント原料や鉄成分などを除き、ローラーミルで粉砕、分級して得られた残渣から、銅、亜鉛、金、銀、パラジウム、白金などの有価金属を回収する技術が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
また、特許文献2には、廃リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法として、エアーテーブルを用いた方法が開示されている。リチウムイオン二次電池は、リチウム(Li)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)など、含有物が同定されているため、比較的容易に有価物の選別を行うことができる。
【0004】
また、特許文献3には、廃家電製品の破砕物に対して、篩選別し、篩上を磁力選別して、非磁着物を渦電流選別で金属物と非金属物に選別し、該金属物と非金属物をそれぞれ色彩選別して有価金属を含有する実装基板屑を選別し、さらに、該実装基板屑から有価金属を含有する実装部品を部品剥離装置(パーツセパレーター)を用いて分別し、該実装部品を3種類に分級して比重選別し、該実装部品から有価金属を回収する方法が開示されている。この特許文献3では、比重選別機について、乾式比重選別機(エアーテーブル)、ジグ選別機、湿式薄流選別機、遠心分離機が開示されている。また、エアーテーブルについては一方向傾斜の一軸式と呼ばれる比重選別を実施可能なエアーテーブルが開示されている。比重選別では、風力により浮き上がる軽産物は、テーブルの振動が伝わりにくく、傾斜に沿って下方へ移動するが、風力による浮き上がりがない重産物は、振動によって上方へ移動するため、軽産物と重産物を選別することができる。
【0005】
さらに、特許文献4には、廃家電製品を破砕し、特に、被覆銅線とプラスチックの選別に、二軸式のエアーテーブルを用いた選別処理が開示されており、比重の近い被覆銅線とプラスチックを精度よく選別できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−89196号公報
【特許文献2】特開2015−170480号公報
【特許文献3】特開2013−685号公報
【特許文献4】特開2003−320311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2のように、廃リチウムイオン二次電池のような、ある特定の材料から構成された残渣を、エアーテーブルを用いて選別する場合には、選別の対象となる元素が予め判明しており、特に、アルミニウムを溶解して溶融塊の形状とし、銅を銅箔の形状で維持できる処理温度で加熱処理して、アルミニウムを重産物とし、銅箔を軽産物として篩別している。このため、エアー(風力)による形状選別の効果が大きくなり、比重選別の効果が小さくなる傾向がある。
【0008】
特許文献3の場合には、廃家電製品の破砕物を種々の選別工程を経て、6mm以上の実装部品に分級した破砕物に対して、一軸式のエアーテーブルによる選別を行っており、重産物にはTa,W、Nd、Nb、Bi、Ni、Au、Pd等の重金属、軽産物にはプラスチックが選別されている。このように特許文献3の選別方法は、比重差の大きい場合に有効である。
【0009】
特許文献4の場合、線状の被覆銅線と平たい形状のプラスチックの選別に対して、二軸式のエアーテーブルが使用されており、振動篩による比重選別性および風力による形状選別性を利用して、被覆銅線とプラスチックを選別できるとされているが、平たい形状を有するプラスチックに限定して選別性が有効であって、細かく破砕された破砕物や、整粒されたものを選別するには適していないことが記載されている。
【0010】
一方、本発明のように、一般家庭ごみの焼却灰を選別処理する場合、焼却灰の形状そのものが多種多様であり、また、焼却灰残渣の含有成分も予め同定されていない。このため、残渣をエアーテーブルにそのまま投入するだけでは、様々な元素、粒径、形状を有する破砕物を選別することは難しく、さらには、複数の元素からなる破砕物同士が絡み合いやすいことからも、特定の金属を効率的に選別することは難しい。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、一般家庭ごみの焼却灰からセメント原料を除いた残渣からアルミニウムを効率的に取り除くことが可能な処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の処理方法は、一般家庭ごみの焼却灰からセメント原料を除いた残渣を、篩目が8〜12mmの篩で篩分ける篩分け工程と、前記篩目が8〜12mmの篩の篩下の残渣を篩目が3〜5mmの篩で更に篩分け、前記篩目が3〜5mmの篩の篩上の残渣と篩下の残渣のそれぞれを、表面からエアーを発生し往復振動するエアーテーブルを用いて比重選別と形状選別を行うことで、アルミニウムとその他に分離する分離工程と、を含み、前記篩目が3〜5mmの篩の篩上の残渣に対する比重選別と形状選別は、前記篩下の残渣に対する比重選別と形状選別よりもエアーの風速が大きい条件で実行される、処理方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の処理方法は、一般家庭ごみの焼却灰からセメント原料を除いた残渣からアルミニウムを効率的に取り除くことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る処理方法を示す工程図である
図2】エアーテーブルを示す斜視図である。
図3図3(a)は、エアーテーブル処理前後の組成(篩目10mmで篩別した篩下を篩目3mmで篩別した篩上;粒径3〜10mm程度)を示す表であり、図3(b)は、エアーテーブル処理前後の組成(篩目3mmで篩別した篩下;粒径0〜3mm程度)を示す表である。
図4】エアーテーブルによる軽比物のアルミニウムと重比物である有価金属類を篩別するにあたり、粒径3〜10mm程度の残渣の処理条件を、粒径0〜3mm程度の残渣の処理条件と比較した場合の、好適な「エアー風速」「振動数」「傾斜角度」の条件の相関を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態について、図1図4に基づいて、詳細に説明する。図1は、一実施形態に係る処理方法を示す工程図である。
【0016】
本実施形態では、一般家庭ごみの焼却灰に対して、乾燥、磁力選別、篩分け、粉砕、渦電流選別等の処理を行い、焼却灰中の鉄成分やアルミニウム成分、セメント原料となる成分の大部分を除き、ローラーミルで粉砕、分級して得られた残渣を処理する。この処理により、残渣に含まれる、銅、金、銀、パラジウム、白金などの有価金属を回収する。
【0017】
残渣は、図1に示すように、まず、3種類の篩を用いて篩別する。ここで、3種類の篩には、篩目の直径が14〜18mm(本実施形態では16mm)の篩と、篩目の直径が8〜12mm(本実施形態では10mm)の篩と、篩目の直径が3〜5mm(本実施形態では3mm)の篩と、が含まれる。これら3種類の篩を用いて残渣を篩別することで、図1に示すように、篩目16mmで篩別した篩上;粒径16mm以上、篩目16mmで篩別した篩下を篩目10mmで篩別した篩上;粒径10〜16mm程度、篩目10mmで篩別した篩下を篩目3mmで篩別した篩上;粒径3〜10mm程度、篩目3mmで篩別した篩下;粒径0〜3mm程度の4種類に分けることができる。なお、本発明において、粒径の記載に「程度」という表記を付しているのは、それぞれの篩目サイズで篩別した場合の篩上、篩下に存在する残渣の粒径サイズを意味する。さらに、「粒径0〜3mm程度」との表記に関して、実際には、0mmサイズの残渣は存在することはないが、0mmより大きく3mm程度までのサイズの篩下の残渣の粒径の範囲を、記載の便宜上、「粒径0〜3mm程度」と表記するものとする。
【0018】
なお、篩目の直径が16mmの篩を用いるのは、粒径が16mm以上の残渣であれば、ステンレス鋼(例えば、線屑、スプーン等)等の分離性を向上できるためである。また、篩目の直径が10mmの篩を用いるのは、後述する比重選別と形状選別機能を有するエアーテーブルにおける処理可能粒径の上限が10mm程度だからである。さらに、篩目の直径が3mmの篩を用いるのは、比重選別と形状選別(エアーテーブル)の処理条件として、3〜10mmと0〜3mmに分けて、異なる処理条件で処理することが好ましいためであり、残渣中において有価金属が粒径0〜3mm程度に濃縮していること等の理由からである。
【0019】
次に、粒径ごとの残渣の処理方法について図1に基づいて説明する。
【0020】
(粒径が16mm以上の残渣の処理について)
粒径が16mm以上の残渣(篩目の直径が16mmの篩を用いた篩分けにおいて得られた篩上)については、図1に示すように、ピッキング処理を実行する。この場合、例えば、手選別により、外観形状が特定形状の物体、例えば線屑やスプーンなどのステンレス鋼や塊状の焼却灰を選別し、除外する。なお、手選別に限らず、色彩選別を行うこととしてもよい。色彩選別は、残渣をカメラで撮影し、色や形状などを基準にピッキング対象物を自動的に特定し、特定したピッキング対象物をヘラや空気圧を高めた圧力波等により選別する方法である。なお、残渣から選別されたステンレス鋼や塊状の焼却灰は、鉄屑として外販される。一方、ステンレス鋼や塊状の焼却灰が選別除去された残渣(アルミニウムやその他の金属を含む)に対しては、粒径が10〜16mm程度の残渣と同様の処理が実行される。
【0021】
(粒径が10〜16mm程度の残渣の処理について)
粒径が10〜16mm程度の残渣(篩目の直径が10mmの篩を用いた篩分けにおいて得られた篩上)については、直接、溶融炉に投入する。この場合、アルミニウムを溶融処理して、スラグ化処理して系外に除去することができる。溶融に用いる炉は、特定しないが、残渣を溶融して、メタルとスラグを形成させ、分離処理できる溶融炉が望ましい。具体的には、直接、粗銅(ブラックカッパー等)を製錬する炉、例えば、傾転式反射炉、炉床付きシャフト炉、長円形炉、ドラム炉、上部吹き込み式転炉等の溶融炉があげられる。
【0022】
なお、アルミニウムの含有量(処理量)が多い場合には、アルミニウム含有スラグの処理量が多くなり、溶融炉の操業の負荷が大きくなる。この場合、粒径が10〜16mm程度の残渣の前処理として、アルミニウムとその他の粉砕物とを選別できる公知の処理を行うことができる。例えば、前処理としては、比重選別、形状選別、渦電流選別、ソーター選別(光学、電磁誘導、透過X線、蛍光X線等)、乾式溶解、湿式溶解、外観による手選別などの公知の処理を採用することができる。
【0023】
(粒径が3〜10mm程度の残渣の処理について)
粒径が3〜10mm程度の残渣(篩目の直径が3mmの篩を用いた篩分けにおいて得られた篩上)については、エアーテーブルを用いて比重選別と形状選別とを組み合わせて行い、好ましくは、同時に行うものである。なお、本実施形態において、エアーテーブルとは、乾式比重選別機の一種であり、振動とエアーによる浮力とテーブルの傾斜によって、比重選別と形状選別の機能を用いて、比重の小さい軽産物と比重の大きい重産物を選別する装置をいう。
【0024】
図2には、本実施形態で用いるエアーテーブル10が斜視図にて示されている。
【0025】
エアーテーブル10は、テーブル12を有し、テーブル12の上面には矢印Cで示すように残渣が投入される。テーブル12は、表面内の第1軸方向(図2のY軸方向)と、表面内で第1軸方向(Y軸方向)に直交する第2軸方向(X軸方向)とが、水平面に対して傾斜するように配置されている。なお、X軸方向と水平面との間の角度はθであり、Y軸方向と水平面との間の角度はψであるものとする。
【0026】
また、テーブル12の表面には吹き出し孔が所定間隔で複数形成されており、吹き出し孔からは、鉛直方向上側に向けてエアーが吹き出され、空気流が形成されている。更に、テーブル12は、不図示の駆動装置により、両矢印方向(X軸方向)に往復振動されるようになっている。
【0027】
エアーテーブル10では、矢印Cで示すように、Y軸方向の一端部(高さが高い側の端部)から残渣が投入されることで、空気流と往復振動により、比重選別と形状選別が実行される。すなわち、一般的には、重量物は、空気流の影響を受けにくく、振動運動により運搬されるため、図2の矢印Aで示す位置に落下する。これに対し、軽量物は、空気流の影響を受けて浮遊するため、テーブル12の表面の摩擦が少なくなり、テーブル12の傾斜に沿って移動しながら、振動運動により運搬されるため、図2の矢印Bで示す位置に落下する。また、テーブル12上に厚さがあるものや球状のものなど、空気流の影響を受けにくいものが投入された場合、比重が小さくても重量物と同様の挙動を示す。したがって、エアーテーブル10を用いることで、軽量物であり、比較的空気流の影響を受けやすい形状を有するアルミニウム(以下、軽比物と呼ぶ)を矢印Bで示す位置に落下させることができる。一方、その他の残渣(以下、重比物と呼ぶ)は、重量物または比較的空気流の影響を受けにくい形状を有しているため、矢印Aで示す位置に落下させることができる。したがって、本実施形態のように形状選別と比重選別を併用することで、アルミニウムと、その他の残渣とを選別することができるようになっている。
【0028】
なお、本実施形態においては、粒径が3〜10mm程度の残渣に対する比重選別と形状選別の際に、エアーの風速を2.7〜2.9m/s、振動数を500〜540rpm、X軸方向の水平面に対する傾斜角θを9〜11°、Y軸方向の水平面に対する傾斜角ψを8〜10°、より好ましくは8.5〜9.5°に設定する。
【0029】
図3(a)には、粒径3〜10mm程度の残渣をエアーテーブル10に投入したときの、処理前後の残渣の組成の一例が示されている。図3(a)においては、粒径3〜10mm程度の残渣をエアーテーブル10に投入し、比重選別と形状選別とを同時に行うことで、アルミニウム(Al)の含有率を25%から2%にできたことが分かる。
【0030】
なお、実際には、エアーテーブル10の残渣は、軽比物(アルミニウム)と、重比物(有価金属)と、いずれにも選別されない残渣(エアーテーブル10の中央付近から落下する残渣;未選別物)と、に分けられる(図1参照)。尚、本発明において、有価金属とは、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)を意味するが、図3(a)及び図3(b)の表中では、銅は他の有価金属とは分けて表記している。
【0031】
この場合、軽比物(アルミニウム)に対しては、図1に示すように、粒径が10〜16mm程度の残渣と同様の処理を実行する。また、いずれにも選別されない残渣(未選別物)に対しては、比重選別と形状選別を繰り返し実行する。重比物(有価金属)に対しては、有価金属を回収できる工程へ移行される。有価金属を回収できる工程として、溶融炉を用いる乾式処理を含む処理工程により有価金属を回収してもよいし、酸性溶液あるいはアルカリ溶液で重比物を直接溶解し、中和沈殿処理や吸着剤処理等による湿式処理により有価金属を回収してもよい。
【0032】
なお、乾式処理において用いる溶融炉の種類は問わないが、溶融したメタル分を鋳造できればよい。たとえば、銅製錬工程に用いられる自溶炉、転炉や、電気炉、その他、上述した前記粒径10〜16mm程度の残渣の処理に用いることができる炉(傾転式反射炉、炉床付きシャフト炉、長円形炉、ドラム炉、上部吹き込み式転炉等)を別途用いて、粒径0〜10mm程度の残渣を溶融し、鋳造してもよい。鋳造されたインゴットは、公知の方法、たとえば電解精製や電解採取、電解澱物の湿式処理等の方法を経て有価金属を回収することができる。
【0033】
有価金属を回収する乾式処理の典型的な例は、銅製錬である。銅製錬は、銅鉱石(銅精鉱)から製錬して銅を得ると、同時に鉱石に含まれる他の有価金属は銅電解精製で発生する電解殿物とし、それぞれの有価金属の回収工程を経て回収される。
【0034】
したがって、銅製錬に用いられる自溶炉、転炉に粒径が0〜10mm程度の残渣を投入すれば、残渣中の有価金属は鉱石中の有価金属と一緒に回収される。
【0035】
また、粒径が0〜10mm程度の残渣を篩目の直径が3mmの篩を用いて篩別すことも有効である。篩別する理由は、比重選別と形状選別(エアーテーブル)の処理条件として、3〜10mmと0〜3mmに分けて、異なる処理条件で処理することが好ましいためであることがあげられる。
【0036】
なお、重比物(有価金属)は、粒径が10〜16mm程度の残渣を処理する際に用いる炉と同様の溶融炉に、別途、投入することとしてもよい。ここで、溶融炉とは、例えば、傾転式反射炉、炉床付きシャフト炉、長円形炉、ドラム炉、上部吹き込み式転炉等をいう。
【0037】
以上により、重比物から有価金属を回収することができる。
【0038】
(粒径が0〜3mm程度の残渣の処理について)
粒径が0〜3mm程度の残渣(篩目の直径が3mmの篩を用いた篩分けにおいて得られた篩下)については、上述した粒径が3〜10mm程度の残渣と同様の処理が実行される。
【0039】
なお、粒径が0〜3mm程度の残渣の比重選別と形状選別においては、粒径が3〜10mm程度の残渣の比重選別と形状選別の場合よりも、エアーテーブルからのエアーの風速を小さくし、振動数を大きくし、傾斜角を小さくする。例えば、粒径が0〜3mm程度の残渣に対する比重選別と形状選別の際には、エアーの風速を2.2〜2.4m/s、振動数を554〜586rpm、X軸方向の水平面に対する傾斜角θを9〜11°、Y軸方向の水平面に対する傾斜角ψを6.5〜8.5°、より好ましくは7.0〜8.0°に設定する(図4の実施例7を参照)。
【0040】
図3(b)には、粒径0〜3mm程度の残渣をエアーテーブル10に投入したときの、処理前後の残渣の組成の一例が示されている。図3(b)においては、粒径0〜3mm程度の残渣をエアーテーブル10に投入し、比重選別と形状選別とを同時に行うことで、アルミニウム(Al)の含有率を18%から3%にできたことが分かる。
【0041】
なお、粒径が0〜3mm程度の残渣は、上述したエアーテーブル10を用いた処理により、軽比物(アルミニウム)と、重比物(有価金属)と、いずれにも選別されない残渣と、に分けられる。軽比物(アルミニウム)に対しては、粒径が10〜16mm程度の残渣と同様の処理を実行する。また、いずれにも選別されない残渣(未選別物)に対しては、比重選別と形状選別を繰り返し実行する。また、重比物(有価金属)は、粒径が3〜10mm程度の残渣を処理して得られた重比物(有価金属)と同様、有価金属を回収できる工程へ移行される。有価金属を回収できる工程として、溶融炉を用いる乾式処理を含む処理工程により有価金属を回収してもよいし、酸性溶液あるいはアルカリ溶液で重比物を直接溶解し、中和沈殿処理や吸着剤処理等による湿式処理により有価金属を回収してもよい。
【0042】
なお、本実施形態では、粒径が3〜10mm程度の残渣、及び0〜3mm程度の残渣からアルミニウムを除外して、アルミニウムが除外された後の残渣を溶融炉(銅製錬の自溶炉や転炉や、電気炉、傾転式反射炉等)に投入するので、溶融炉内で発生するアルミニウム含有スラグの処理量の増大を抑制でき、溶融炉の操業負荷の増大を防止できる。また、残渣中のアルミニウム含有量(処理量)が多いと、アルミニウムがスラグの粘度を高め、スラグの流動性悪化に繋がり、溶融炉におけるスラグの連続的なタップが困難になることから、好ましくないので、残渣中のアルミニウム選別除去が重要である。
【0043】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、一般家庭ごみの焼却灰からセメント原料を除いた残渣を、篩目が10mmの篩で篩分け、気流と振動を用いて、篩の篩下の残渣に対して比重選別と形状選別を組み合わせて(同時に)行うことで、アルミニウムとその他に分離する。このように、粒径が10mm程度以下の残渣に対して比重選別と形状選別とを組み合わせて(同時に)行うことで、残渣から軽比物であるアルミニウムを効果的に選別することができる。例えば、本実施形態の条件で選別を行った結果、アルミニウムの分配率は85〜93%となった。なお、本実施形態において、分配率とは、軽比物側に含まれる各元素毎の重量の選別前の原料に含まれる各元素の重量に対する比率をいう。
【0044】
また、本実施形態では、比重選別と形状選別にエアーテーブル10を用い、テーブル12は、表面内の第1軸方向(Y軸方向)とY軸方向に直交する表面内の第2軸方向(X軸方向)とが、水平面に対して傾斜するように配置されている。そして、テーブル12のY軸方向の高さが高い側の端部近傍に残渣を供給し、テーブル12をX軸方向に往復振動し、表面から鉛直方向上側に向けて気流を発生させる。これにより、テーブル12のY軸方向の高さが低い側の端部近傍において、残渣がX軸方向の高い側と低い側とに分離される。このように、テーブル12の表面の2軸方向を水平面に対して傾斜させ、振動と気流とを用いて、アルミニウムとその他の残渣を分離することで、簡易かつ効率的にアルミニウムの選別を行うことができる。
【0045】
また、本実施形態では、粒径が10mm程度以下の残渣をさらに篩目が3mmの篩を用いて篩別し、篩別後の篩上と篩下に対して、異なる条件下で比重選別と形状選別とを組み合わせて、好ましくは、同時に行うこととしている。これにより、粒径に応じたエアーテーブルの条件を設定することで、より効率的に選別を行うことができる。ここで、「比重選別と形状選別とを組み合わせて」処理する工程においては、必ずしも比重選別と形状選別とが同時に行われなくてもよい。たとえば、図2におけるテーブル12の上方部付近ではエアーの風速をゼロとして振動と傾斜のみで選別し、テーブル12の中段より下側では振動と傾斜に加えて、エアーを噴出して選別するようにしてもよい。このように、テーブル上方では比重選別のみを行い、テーブル下方では比重選別と形状選別を同時に行うような場合も、「比重選別と形状選別とを組み合わせて」処理する工程に含まれるものとする。
【0046】
なお、上記実施形態では、粒径が3〜10mm程度の残渣と、粒径が0〜3mm程度の残渣とを異なる条件の下、エアーテーブルを用いて処理を行うこととしたが、これに限られるものではない。例えば、粒径が10mm程度以下の残渣を1つのエアーテーブルを用いて処理することとしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、篩目の直径が16mmの篩を用いて篩別した後の残渣を、篩目の直径が10mm、3mmの篩を用いて篩別する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、残渣を篩目の直径が10mm、3mmの篩のみを用いて篩別して、篩別された各残渣に対して異なる処理を行うこととしてもよい。
【0048】
なお、上記実施形態では、粒径が3〜10mm程度の残渣の比重選別と形状選別を、粒径が0〜3mm程度の残渣の比重選別と形状選別の場合よりも、エアーの風速を大きくし、振動数を小さくし、傾斜角を大きくした条件で実施する場合(図4の実施例7参照)について説明したが、これに限られるものではない。例えば、粒径が3〜10mm程度の残渣の比重選別と形状選別の条件は、エアーの風速を粒径0〜3mm程度の場合よりも大きくすれば、振動数及び傾斜角の大小関係は任意であってよい(図4の実施例1〜9参照)。また、粒径が3〜10mm程度の残渣の比重選別と形状選別の条件は、エアーの風速を粒径0〜3mm程度の場合と同一とし、振動数を粒径0〜3mm程度の場合よりも小さくすれば、傾斜角の大小関係は任意であってよい(図4の実施例12〜14参照)。また、粒径が3〜10mm程度の残渣の比重選別と形状選別の条件は、エアーの風速及び振動数を粒径0〜3mm程度の場合と同一にする場合には、傾斜角を粒径0〜3mm程度の場合よりも大きくすればよい(図4の実施例11参照)。さらには、粒径が3〜10mm程度の残渣の比重選別と形状選別の条件は、エアーの風速を粒径0〜3mm程度の場合と同一にする場合には、振動数及び傾斜角を粒径0〜3mm程度の場合よりも大きくすればよい(図4の実施例10参照)。図4は、本発明によって得られた、エアーテーブルによる軽比物のアルミニウムと重比物である有価金属類を選別するための、粒径3〜10mm程度の残渣の処理条件を、粒径0〜3mm程度の残渣の処理条件と比較した場合の、好適な「エアー風速」「振動数」「傾斜角度」の条件の相関を示すものである。図4では、アルミニウムの分配率が、80%以上を◎とし、50%以上80%未満を○として、30%以上50%未満を△とし、30%未満を×として示している。
【0049】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 エアーテーブル
図1
図2
図3
図4