(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6791828
(24)【登録日】2020年11月9日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】ヘテロ接合バイポーラトランジスタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/331 20060101AFI20201116BHJP
H01L 29/737 20060101ALI20201116BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
H01L29/72 H
H01L21/20
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-206823(P2017-206823)
(22)【出願日】2017年10月26日
(65)【公開番号】特開2019-79976(P2019-79976A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2019年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 悠太
(72)【発明者】
【氏名】星 拓也
(72)【発明者】
【氏名】井田 実
【審査官】
市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−121464(JP,A)
【文献】
特開平11−260827(JP,A)
【文献】
特開2008−227221(JP,A)
【文献】
特開平05−275444(JP,A)
【文献】
特開2017−191865(JP,A)
【文献】
特開2006−032865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/331
H01L 21/20
H01L 29/737
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に形成された化合物半導体からなるコレクタ層と、
前記コレクタ層の上に形成されて化合物半導体からなるベース層と、
前記ベース層の上に形成された前記ベース層とは異なる化合物半導体からなるエミッタ層と、
前記コレクタ層に接続するコレクタ電極と、
前記エミッタ層の周囲の前記ベース層の上に形成されたベース電極と、
前記エミッタ層の上に形成されたエミッタ電極と
を備え、
前記コレクタ層、前記ベース層、および前記エミッタ層は、平面視で第1方向の長さが前記第1方向と垂直な第2方向の長さより長い平面形状とされ、
前記エミッタ層は、前記ベース層より平面視で小さい面積に形成され、
前記ベース電極は、
前記エミッタ層の全周囲のベースコンタクト領域で前記ベース層の表面に接する第1ベース電極部と、
前記エミッタ層の前記第1方向の一端側において、前記ベースコンタクト領域より外側で前記基板の平面方向に延在する第2ベース電極部と
を備え、
前記第2ベース電極部の前記基板の側の底面は、前記第1ベース電極部の前記基板の側の底面より前記基板から離れて配置され、
前記第2ベース電極部と前記基板との間には、前記ベース層、前記コレクタ層が形成されておらず、
前記基板と前記コレクタ層との間に形成されたサブコレクタ層を備え、
前記サブコレクタ層は、平面視で前記第2方向において前記ベース電極の形成領域の内側に形成され、かつ、平面視で前記第2方向の長さが、前記コレクタ層の平面視で前記第2方向の長さより長く形成されている
ことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
【請求項2】
基板の上に形成された化合物半導体からなるコレクタ層と、
前記コレクタ層の上に形成されて化合物半導体からなるベース層と、
前記ベース層の上に形成された前記ベース層とは異なる化合物半導体からなるエミッタ層と、
前記コレクタ層に接続するコレクタ電極と、
前記エミッタ層の周囲の前記ベース層の上に形成されたベース電極と、
前記エミッタ層の上に形成されたエミッタ電極と
を備え、
前記コレクタ層、前記ベース層、および前記エミッタ層は、平面視で第1方向の長さが前記第1方向と垂直な第2方向の長さより長い平面形状とされ、
前記エミッタ層は、前記ベース層より平面視で小さい面積に形成され、
前記ベース電極は、
前記エミッタ層の全周囲のベースコンタクト領域で前記ベース層の表面に接する第1ベース電極部と、
前記エミッタ層の前記第1方向の一端側において、前記ベースコンタクト領域より外側で前記基板の平面方向に延在する第2ベース電極部と
を備え、
前記第2ベース電極部の前記基板の側の底面は、前記第1ベース電極部の前記基板の側の底面より前記基板から離れて配置され、
前記第2ベース電極部と前記基板との間には、前記ベース層、前記コレクタ層が形成されておらず、
前記ベース電極は、前記エミッタ層の前記第2方向の両端側において、前記ベースコンタクト領域の外側で前記基板の平面方向に延在する第3ベース電極部を更に備え、
前記第3ベース電極部の前記基板の側の底面は、前記第1ベース電極部の前記基板の側の底面より前記基板から離れて配置され、
前記第3ベース電極部と前記基板との間には、前記ベース層、前記コレクタ層が形成されていない
ことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
【請求項3】
請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、
前記ベース電極は、前記エミッタ層の前記第2方向の両端側において、前記ベースコンタクト領域の外側で前記基板の平面方向に延在する第3ベース電極部を更に備え、
前記第3ベース電極部の前記基板の側の底面は、前記第1ベース電極部の前記基板の側の底面より前記基板から離れて配置され、
前記第3ベース電極部と前記基板との間には、前記ベース層、前記コレクタ層が形成されていない
ことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、
前記ベース電極を覆って形成された絶縁体からなる素子保護層を備えることを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
【請求項5】
基板の上に、
サブコレクタ形成層、
化合物半導体からなるコレクタ形成層、
化合物半導体からなるベース形成層、
前記ベース形成層とは異なる化合物半導体からなるエミッタ形成層、
エミッタキャップ形成層
がこれらの順に積層された状態とする第1工程と、
前記エミッタキャップ形成層の上にエミッタ電極形成層を形成する第2工程と、
前記エミッタ電極形成層をパターニングして平面視で第1方向の長さが前記第1方向と垂直な第2方向の長さより長い平面形状のエミッタ電極を形成する第3工程と、
前記エミッタ電極をマスクとして前記エミッタキャップ形成層をパターニングしてエミッタキャップ層を形成する第4工程と、
前記エミッタキャップ層の全周囲の所定の幅のベースコンタクト領域が開口する開口部と、前記開口部より外側の前記エミッタ形成層をマスクするマスク部とを備えるマスクパターンを形成する第5工程と、
前記マスクパターンをマスクとして前記エミッタ形成層をパターニングしてエミッタ層を形成し、前記ベースコンタクト領域における前記ベース形成層の表面を露出させる第6工程と、
前記ベースコンタクト領域における前記ベース形成層の表面に接する第1ベース電極部と、前記エミッタ層の前記第1方向の一端側において、前記マスクパターンの上で前記ベースコンタクト領域より前記基板の平面方向に延在する第2ベース電極部とを備えるベース電極を形成する第7工程と、
前記第2ベース電極部の下部の前記マスクパターンを除去する第8工程と、
前記第2ベース電極部の下部の前記エミッタ形成層を除去する第9工程と、
前記第2ベース電極部の下部の前記ベース形成層を除去することでベース層を形成する第10工程と、
前記コレクタ形成層の上で、前記ベース層、前記ベース電極、前記エミッタ層、前記エミッタキャップ層、前記エミッタ電極を覆うマスク保護層を形成する第11工程と、
前記マスク保護層と前記サブコレクタ形成層との間で前記コレクタ形成層を横方向にエッチングすることでコレクタ層を形成する第12工程と、
前記マスク保護層と前記基板との間で前記サブコレクタ形成層を横方向にエッチングすることでサブコレクタ層を形成する第13工程と
を備え、
前記第2ベース電極部と前記基板との間には、前記ベース層、前記コレクタ層が形成されていない状態とする
ことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法において、
前記第13工程では、前記サブコレクタ層を、平面視で前記第1方向において前記ベース電極の形成領域の内側に形成し、かつ、平面視で前記第1方向の長さを前記コレクタ層の平面視で前記第1方向の長さより長く形成する
ことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法。
【請求項7】
請求項5または6記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法において、
前記第7工程では、前記エミッタ層の前記第2方向の両端側において、前記マスクパターンの上で前記ベースコンタクト領域より前記基板の平面方向に延在する第3ベース電極部を更に形成し、
前記第3ベース電極部と前記基板との間には、前記ベース層、前記コレクタ層が形成されていない状態とする
ことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法において、
前記ベース電極を覆う絶縁体からなる素子保護層を形成する第14工程を更に備えることを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、InPなどの化合物半導体を用いたヘテロ接合バイポーラトランジスタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インジウムリン(InP)系ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)は、InP系材料の高い飽和電子移動度および高い絶縁破壊電界の特性を活かした、高速性および高出力性に優れたトランジスタである。InP系HBTの更なる高速・高出力化を実現するとともに信頼性を得るためには、放熱性の改善による接合温度の低減が重要となる。このために、シリコンカーバイド(SiC)といった熱伝導率が高い放熱基板上にInP系DHBTを形成した構造が提案・技術検討されている(非特許文献1参照)。
【0003】
上述したDHBTについて、
図3A、
図3Bを用いて説明する。このHBTは、放熱性に優れたSiからなる基板301の上に、n型不純物が低濃度に添加された化合物半導体からなるコレクタ層302、p型不純物が高濃度に添加された化合物半導体からなるベース層303、n型不純物が低濃度に添加された化合物半導体からなるエミッタ層304を備える。
【0004】
コレクタ層302の下には、金属から構成されたサブコレクタ層311が形成され、サブコレクタ層311とコレクタ層302との間には、n型不純物が高濃度に添加された化合物半導体からなるコレクタコンタクト層305が形成されている。
【0005】
また、エミッタ層304の周囲のベース層303の上には、ベース電極312が形成されている。また、エミッタ層304の上には、n型不純物が高濃度に添加された化合物半導体からなるエミッタキャップ層306を介し、エミッタ電極313が形成されている。また、素子部を覆って樹脂からなる保護膜(不図示)を形成する。
【0006】
この例では、サブコレクタ層311は、エミッタ層304からコレクタコンタクト層305までの化合物半導体の層と基板301とを接合する際の接着層であるとともに、コレクタ電極としての機能も有する。
【0007】
上述したDHBTでは、コレクタコンタクト層305の基板側が、InP系材料よりも熱伝導率が高い金属からなるサブコレクタ層311およびSiからなる基板301で構成されるため、InP基板上に形成されたDHBTと比較して放熱性が向上する。
【0008】
このようなDHBT構造の更なる高速化に向けては、コレクタ寄生容量の低減によりコレクタ充電時間を短縮することが有効である。ここで、コレクタ容量とは、ベース層303と、コレクタコンタクト層305あるいはサブコレクタ層311との間に生じる容量である。コレクタ寄生容量は、エミッタ層304の基板側の直下を除く領域で生じるコレクタ容量を指しており、本質的にトランジスタ動作には不要な容量である。
【0009】
ところで、この種のDHBTでは、コレクタ層302,ベース層303,エミッタ層304を含む素子部は、平面視で第1方向の長さが第1方向と垂直な第2方向の長さより長い矩形(平面形状)とされている。
図3Aは、第1方向に垂直な面の断面を示し、
図3Bは、第2方向に垂直な面の断面を示している。第1方向にエミッタ層304を挾む領域を、各々第1領域331,第2領域332とする。また、第2方向にエミッタ層304を挾む領域を、各々第3領域333、第4領域334とする。
【0010】
このように形成されているエミッタ層304の第1方向の一端側(第2領域332)において、ベース電極312を延在させて(延長して)ベースパッド部312aを形成している。なお、エミッタ層304の第1方向の他端側(第1領域331)において、サブコレクタ層311の上面にコレクタパッド部311aを形成している。ベースパッド部312a、コレクタパッド部311aは、図示しない配線層にコンタクトをとるための領域となる。
【0011】
このような構成において、ベースパッド部312aの領域で生じるコレクタ寄生容量は、全てのコレクタ寄生容量の中で大きい割合を占めることになるため、ベースパッド部312aで生じるコレクタ寄生容量の低減は重要な課題である。
【0012】
しかしながら、以下に説明するように、上述したコレクタ寄生容量を、素子間のばらつきなくかつ、充分に低減することは非常に困難である。
【0013】
上述した、コレクタ寄生容量の低減には、ベース電極312およびベースパッド部312aの、ベース層303より基板301の平面方向に延在している部分の直下には、コレクタ層302やコレクタコンタクト層305が形成されていないようにすればよい。このような構成とするためには、よく知られたエッチング処理においてアンダーカットを入れて除去することが考えられる。
【0014】
例えば、第1の製造方法として、ベース層303を形成する際に、ベース層303にアンダーカットを入れた上で、ベース層303をマスクとしてコレクタ層302およびコレクタコンタクト層305をパターニングする方法が考えられる。
【0015】
第2の製造方法として、コレクタコンタクト層305を形成する際に、サイドエッチングによりベースパッド部312a直下並びにベース電極312直下のコレクタコンタクト層305を除去する。続いて、ベースパッド部312a直下並びにベース電極312直下のコレクタ層302を、それぞれウエットエッチングにより除去する。
【0016】
上述した第1の製造方法または第2の製造方法を実施した後に、ベースパッド部312aを機械的に保護するために素子部を樹脂からなる保護膜(不図示)で封止する。
【0017】
上述した製造方法によれば、ベースパッド部312aとサブコレクタ層311との間が、コレクタ層302を構成する半導体(例えばInP)と比較して比誘電率が低い樹脂による保護膜が配置されることから、ベース電極312部およびベースパッド部312aのコレクタ寄生容量が削減できる。
【0018】
一方で、上述した製造方法においては、ベース層303やコレクタコンタクト層305のサイドエッチ量を厳密に制御することが求められる。サイドエッチ量が不十分であれば、充分にコレクタ寄生容量を低減できない。逆にサイドエッチ量が過多の場合、エミッタ層304直下のベース層303やコレクタ層302まで除去してしまい、電気的特性が低下してしまう。従って、歩留まりを考慮すると、ベースパッド部312a直下の半導体層を精密に除去することは困難であり、コレクタ寄生容量の低減は限定的となる。
【0019】
また、ウェハ面内でサイドエッチ量がばらつくため、素子間のコレクタ容量ばらつきが増大する懸念がある。特にこのような素子間ばらつきは素子寸法が微細になる程顕著となるため、将来的にエミッタ層304の微細化による高性能化を図る上で大きな障害となりうる。
【0020】
以上のことから、現状の手段においては製造歩留まり低下や素子間のコレクタ容量ばらつきを抑制しつつ、効果的にコレクタ寄生容量を低減することは困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】A. Thiam et al., "InP HBT Thermal Management by Transferring to High Thermal Conductivity Silicon Substrate", IEEE Electron Device Letters, vol. 35, no. 10, pp. 1010-1012, 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
以上に示したように、InP系HBTにおいて、コレクタ寄生容量の低減に向けては、ベース電極領域、特にベースパッド領域で生じるコレクタ寄生容量を低減することが重要となる。一方で、ベース電極あるいはベースパッド直下のベース層やコレクタ層をサイドエッチングにより除去する製造方法では、サイドエッチ量をウェハ面内で均一性良く制御することが困難であるため、素子間のコレクタ容量ばらつきの増加や歩留まり低下を引き起こす懸念がある。また、歩留まり低下を抑制するためサイドエッチ量を制限すれば、充分なコレクタ寄生容量の低減効果を得ることができない。このように、従来では、製造歩留まり低下や素子間のコレクタ容量ばらつきを抑制しつつ、効果的にコレクタ寄生容量を低減することが容易ではないという問題があった。
【0023】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、より容易に、製造歩留まり低下や素子間のコレクタ容量ばらつきを抑制しつつ、効果的にコレクタ寄生容量が低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタは、基板の上に形成された化合物半導体からなるコレクタ層と、コレクタ層の上に形成されて化合物半導体からなるベース層と、ベース層の上に形成されたベース層とは異なる化合物半導体からなるエミッタ層と、コレクタ層に接続するコレクタ電極と、エミッタ層の周囲のベース層の上に形成されたベース電極と、エミッタ層の上に形成されたエミッタ電極とを備え、コレクタ層、ベース層、およびエミッタ層は、平面視で第1方向の長さが第1方向と垂直な第2方向の長さより長い平面形状とされ、エミッタ層は、ベース層より平面視で小さい面積に形成され、ベース電極は、エミッタ層の全周囲のベースコンタクト領域でベース層の表面に接する第1ベース電極部と、エミッタ層の第1方向の一端側において、ベースコンタクト領域より外側で基板の平面方向に延在する第2ベース電極部とを備え、第2ベース電極部の基板側の底面は、第1ベース電極部の基板側の底面より基板から離れて配置され、第2ベース電極部と基板との間には、ベース層、コレクタ層が形成されていない。
【0025】
上記ヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、基板とコレクタ層との間に形成されたサブコレクタ層を備え、サブコレクタ層は、平面視で第2方向においてベース電極の形成領域の内側に形成され、かつ、平面視で第2方向の長さが、コレクタ層の平面視で第2方向の長さより長く形成されている。
【0026】
上記ヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、ベース電極は、エミッタ層の第2方向の両端側において、ベースコンタクト領域の外側で基板の平面方向に延在する第3ベース電極部を更に備え、第3ベース電極部の基板側の底面は、第1ベース電極部の基板側の底面より基板から離れて配置され、第3ベース電極部と基板との間には、ベース層、コレクタ層が形成されていないようにしてもよい。
【0027】
上記ヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、ベース電極を覆って形成された絶縁体からなる素子保護層を備えるようにするとよい。
【0028】
本発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法は、基板の上に、サブコレクタ形成層、化合物半導体からなるコレクタ形成層、化合物半導体からなるベース形成層、ベース形成層とは異なる化合物半導体からなるエミッタ形成層、エミッタキャップ形成層がこれらの順に積層された状態とする第1工程と、エミッタキャップ形成層の上にエミッタ電極形成層を形成する第2工程と、エミッタ電極形成層をパターニングして平面視で第1方向の長さが第1方向と垂直な第2方向の長さより長い平面形状のエミッタ電極を形成する第3工程と、エミッタ電極をマスクとしてエミッタキャップ形成層をパターニングしてエミッタキャップ層を形成する第4工程と、エミッタキャップ層の全周囲の所定の幅のベースコンタクト領域が開口する開口部と、開口部より外側のエミッタ形成層をマスクするマスク部とを備えるマスクパターンを形成する第5工程と、マスクパターンをマスクとしてエミッタ形成層をパターニングしてエミッタ層を形成し、ベースコンタクト領域におけるベース形成層の表面を露出させる第6工程と、ベースコンタクト領域におけるベース形成層の表面に接する第1ベース電極部と、エミッタ層の第1方向の一端側において、マスクパターンの上でベースコンタクト領域より基板の平面方向に延在する第2ベース電極部とを備えるベース電極を形成する第7工程と、第2ベース電極部の下部のマスクパターンを除去する第8工程と、第2ベース電極部の下部のエミッタ形成層を除去する第9工程と、第2ベース電極部の下部のベース形成層を除去することでベース層を形成する第10工程と、コレクタ形成層の上で、ベース層、ベース電極、エミッタ層、エミッタキャップ層、エミッタ電極を覆うマスク保護層を形成する第11工程と、マスク保護層とサブコレクタ形成層との間でコレクタ形成層を横方向にエッチングすることでコレクタ層を形成する第12工程と、マスク保護層と基板との間でサブコレクタ形成層を横方向にエッチングすることでサブコレクタ層を形成する第13工程とを備え、第2ベース電極部と基板との間には、ベース層、コレクタ層が形成されていない状態とする。
【0029】
上記ヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法において、第13工程では、サブコレクタ層を、平面視で第1方向においてベース電極の形成領域の内側に形成し、かつ、平面視で第1方向の長さをコレクタ層の平面視で第1方向の長さより長く形成する。
【0030】
上記ヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法において、第7工程では、エミッタ層の第2方向の両端側において、マスクパターンの上でベースコンタクト領域より基板の平面方向に延在する第3ベース電極部を更に形成し、第3ベース電極部と基板との間には、ベース層、コレクタ層が形成されていない状態とするようにしてもよい。
【0031】
上記ヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法において、ベース電極を覆う絶縁体からなる素子保護層を形成する第14工程を更に備える。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したことにより、本発明によれば、より容易に、製造歩留まり低下や素子間のコレクタ容量ばらつきを抑制しつつ、効果的にコレクタ寄生容量が低減できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】
図1Aは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタを示す断面図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタを示す断面図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2C】
図2Cは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2D】
図2Dは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2E】
図2Eは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2F】
図2Fは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2G】
図2Gは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2H】
図2Hは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2I】
図2Iは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2J】
図2Jは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2K】
図2Kは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2L】
図2Lは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2M】
図2Mは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2N】
図2Nは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2O】
図2Oは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2P】
図2Pは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2Q】
図2Qは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2R】
図2Rは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2S】
図2Sは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2T】
図2Tは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2U】
図2Uは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図2V】
図2Vは、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法を説明するための途中工程の状態を示す断面図である。
【
図3A】
図3Aは、一般的なヘテロ接合バイポーラトランジスタを示す断面図である。
【
図3B】
図3Bは、一般的なヘテロ接合バイポーラトランジスタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタについて
図1A、
図1Bを参照して説明する。
【0035】
このヘテロ接合バイポーラトランジスタは、基板101の上に形成された化合物半導体からなるコレクタ層102と、コレクタ層102の上に形成されて化合物半導体からなるベース層103と、ベース層103の上に形成されたベース層103とは異なる化合物半導体からなるエミッタ層104とを備える。エミッタ層104は、ベース層103より平面視で小さい面積に形成され、ベース層103の内側に形成されている。
【0036】
また、コレクタ層102に接続する金属サブコレクタ層111とエミッタ層104の周囲のベース層103の上に形成されたベース電極112と、エミッタ層104の上に形成されたエミッタ電極113とを備える。実施の形態において、金属サブコレクタ層111は、コレクタ層102と基板101との間に配置された金属の層から構成され、コレクタ電極となる。実施の形態では、従来、サブコレクタ層が配置される箇所に金属サブコレクタ層111を配置している。なお、コレクタ層102と基板101との間に、高濃度に不純物が導入された化合物半導体からなるサブコレクタ層を設け、サブコレクタ層の延長部にコレクタ電極を設ける構成としてもよい。
【0037】
ここで、コレクタ層102,ベース層103,エミッタ層104を含む素子部は、平面視で第1方向の長さが第1方向と垂直な第2方向の長さより長い矩形(平面形状)とされている。
図1Aは、第1方向に垂直な面の断面を示し、
図1Bは、第2方向に垂直な面の断面を示している。
図1Bに示すように、第1方向にエミッタ層104を挾む領域を、各々第1領域131,第2領域132とする。また、
図1Aに示すように、第2方向にエミッタ層104を挾む領域を、各々第3領域133、第4領域134とする。
【0038】
また、実施の形態では、基板101(金属サブコレクタ層111)とコレクタ層102との間に形成されたコレクタコンタクト層105を備える。また、実施の形態では、エミッタ層104とエミッタ電極113との間に、エミッタキャップ層106を備える。
【0039】
また、エミッタキャップ層106の側面(周面)には、第1絶縁層107が形成されている。この例では、平面視で、エミッタキャップ層106によるメサの周囲に第1絶縁層107を形成することで、この上のエミッタ電極113のメサと同じメサ幅としている。
【0040】
また、この例では、コレクタコンタクト層105、コレクタ層102によるメサの側面(周面)には、第2絶縁層108が形成されている。なお、金属サブコレクタ層111によるメサの上に、このメサより小さい面積のコレクタコンタクト層105、コレクタ層102、ベース層103によるメサが形成されている。
【0041】
上述した実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタは、まず、ベース電極112は、第1ベース電極部112aと第2ベース電極部112bとから構成されている。第1ベース電極部112aと第2ベース電極部112bとは、一体に形成されている。第1ベース電極部112aは、エミッタ層104の全周囲のベースコンタクト領域で、ベース層103の表面に接する。第2ベース電極部112bは、エミッタ層104の第1方向の一端側(第2領域132)において、ベースコンタクト領域より外側で基板101の平面方向に延在する。第2ベース電極部112bは、ベースパッド部となる。なお、第1ベース電極部112aとエミッタ層104とは接触していない。
【0042】
また、第2ベース電極部112bの基板101側の底面は、第1ベース電極部112aの基板101側の底面より基板101から離れて配置されている。加えて、第2ベース電極部112bと基板101との間には、ベース層103、コレクタ層102が形成されていない。
【0043】
また、金属サブコレクタ層111は、平面視で第2方向においてベース電極112の形成領域の内側に形成され、かつ、平面視で第2方向の長さが、コレクタ層102の平面視で第2方向の長さより長く形成されている。
【0044】
なお、実施の形態では、上述した構成に加え、ベース電極112が、更に第3ベース電極部112dを備える。第3ベース電極部112dは、エミッタ層104の第2方向の両端側において、ベースコンタクト領域の外側で基板101の平面方向に延在する。また、第3ベース電極部112dの基板101側の底面は、第1ベース電極部112aの基板101側の底面より基板101から離れて配置されている。第1ベース電極部112aと第3ベース電極部112dとは、一体に形成されている。また、第3ベース電極部112dと基板101との間には、ベース層103、コレクタ層102が形成されていない。また、第3ベース電極部112dと基板101との間のほとんどの領域においては、金属サブコレクタ層111も形成されていない。
【0045】
なお、実施の形態において、ベース電極112を覆って形成された絶縁体からなる素子保護層109を備える。素子保護層109は、例えば、ベンゾシクロブテン、ポリベンゾオキサゾール(PBO)などの樹脂から構成されている。また、実施の形態では、エミッタ層104の第1方向の他端側(第1領域131)において、微小な延在部112cを備える。第1領域131においては、素子保護層109がない状態で素子を上方から見ると、金属サブコレクタ層111のコレクタパッド部111aが見える。
【0046】
上述したように、実施の形態によれば、第2ベース電極部112bと基板101との間にコレクタ層102,ベース層103が形成されていない。また、第3ベース電極部112dと基板101との間にコレクタ層102,ベース層103が形成されていない。この構成により、実施の形態によれば、ベース電極112の基板平面方向に延在している部分におけるコレクタ寄生抵抗が大幅に低減できる。
【0047】
また、実施の形態によれば、第3ベース電極部112dを基板平面方向により拡張することで、ベース電極抵抗が低減できることから、最大発振周波数を向上させることができる。また、ベース幅やコレクタ幅は、第1ベース電極部112aの領域で決定されるため、異なるチップ間でコレクタ容量ばらつきや歩留まり低下を抑制することが可能となる。このように、実施の形態によれば、ウェハ面内に形成されたInP系HBTにおいて、コレクタ容量ばらつきの増加や素子歩留まり低下を抑制しつつ、コレクタ寄生容量を低減することができ、高周波特性を向上させることができる。
【0048】
次に、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法について、
図2A〜
図2Vを参照して説明する。
【0049】
まず、
図2Aに示すように、基板101の上に、金属からなるサブコレクタ形成層201、化合物半導体からなるコレクタコンタクト形成層202、化合物半導体からなるコレクタ形成層203、化合物半導体からなるベース形成層204、ベース形成層204とは異なる化合物半導体からなるエミッタ形成層205、エミッタキャップ形成層206がこれらの順に積層された状態とする(第1工程)。
【0050】
例えば、基板101は、放熱性に優れた単結晶SiやSiCから構成すればよい。コレクタコンタクト形成層202は、Siを高濃度にドーピングしたn
+−InGaAsから構成すればよい。コレクタ形成層203は、Siを低濃度にドーピングしたn−InPから構成すればよい。ベース形成層204は、Cを高濃度にドーピングしたp
+−GaAsSbから構成すればよい。エミッタ形成層205は、Siを低濃度にドーピングしたn−InPから構成すればよい。エミッタキャップ形成層206は、Siを高濃度にドーピングしたn
+−InGaAsから構成すればよい。
【0051】
例えば、InGaAsに格子整合するInPからなる成長基板上を用意し、この成長基板の上に、エミッタキャップ形成層206、エミッタ形成層205、ベース形成層204、コレクタ形成層203、コレクタコンタクト形成層202を既知のエピタキシャル成長技術を用いて結晶成長して形成する。次に、成長基板の上に成長させたコレクタコンタクト形成層202と基板101とを、金属からなるサブコレクタ形成層201を接着層とし、既知の基板接合技術を用いて接合する。この後、成長基板をエッチングなどにより除去すればよい。
【0052】
次に、
図2Bに示すように、エミッタキャップ形成層206の上に、エミッタ電極形成層207を形成する(第2工程)。例えば、真空蒸着法やスパッタ法といった既知の堆積法により所定の金属を堆積することで、エミッタ電極形成層207を形成する。
【0053】
次に、エミッタ電極形成層207を、公知のリソグラフィ技術とドライエッチング技術を用いてパターニングすることで、
図2Cに示すように、エミッタ電極113を形成する(第3工程)。エミッタ電極113は、平面視で第1方向の長さが第1方向と垂直な第2方向の長さより長い平面形状(矩形)に形成する。
【0054】
次に、エミッタ電極113をマスクとしてエミッタキャップ形成層206を、公知のドライエッチングあるいはウエットエッチングなどによりパターニングすることで、
図2Dに示すように、エミッタキャップ層106を形成する(第4工程)。この例では、エミッタキャップ層106を、エミッタ電極113より平面視で小さい面積に形成している。
【0055】
次に、
図2Eに示すように、エミッタ形成層205の上に、エミッタキャップ層106およびエミッタ電極113を覆って絶縁層209を形成する。絶縁層209は、例えばSiO
2やSiNなどの絶縁材料から構成すればよい。これらは、公知のスパッタ法や化学気相堆積(CVD)法などの堆積法により形成することができる。
【0056】
なお、基板101から離れる方向の絶縁層209の厚さは、後述する第1ベース電極部112aと第2ベース電極部112b,延在部112c、第3ベース電極部112dとが分離しないよう注意を要する。具体的には、絶縁層209の厚さは、第1ベース電極部112aの厚さからエミッタ形成層205の厚さを差し引いた値よりも薄くすればよい。これにより、第1ベース電極部112aと第2ベース電極部112b,延在部112c、第3ベース電極部112dが切断されることはない。絶縁層209は、素子寸法によって変わるが、厚さ10〜100nm程度とすればよい。
【0057】
次に、絶縁層209をパターニングすることで、
図2Fに示すように、マスクパターン210を形成する(第5工程)。マスクパターン210は、エミッタキャップ層106の全周囲の所定の幅のベースコンタクト領域が開口する開口部210aと、開口部210aより外側のエミッタ形成層205をマスクするマスク部210bとを備える。また、マスクパターン210の形成とともに、エミッタキャップ層106の側面を覆う第1絶縁層107が形成される。
【0058】
SiO
2またはSiNからなる絶縁層209は、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより容易にパターニングできる。このフッ素系ガスのエッチング処理では、InPからなるエミッタ形成層205はエッチングされない。従って、マスクパターン210および第1絶縁層107の形成では、容易に開口部210aを開口し、ベースコンタクト領域のエミッタ形成層205を露出させることができる。
【0059】
次に、マスクパターン210をマスクとしてエミッタ形成層205をパターニングすることで、
図2Gに示すように、エミッタ層104を形成し、開口部210aのベースコンタクト領域におけるベース形成層204の表面を露出させる(第6工程)。例えば、InPから構成されたエミッタ形成層205は、塩酸系のエッチング液(エッチャント)を用いてウエットエッチングすればよい。塩酸系のエッチング液は、下地となるAs系半導体のGaAsSbからなるベース形成層204をほとんどエッチングしないので、ベースコンタクト領域のエミッタ形成層205を選択的にエッチング除去できる。
【0060】
次に、
図2H,
図2Iに示すように、第1ベース電極部112a,第2ベース電極部112b,延在部112c,第3ベース電極部112dから構成されたベース電極112を形成する(第7工程)。第1ベース電極部112aは、ベースコンタクト領域におけるベース形成層204の表面に接している。また、第2ベース電極部112bは、エミッタ層104の第1方向の一端側において、マスクパターン210の上でベースコンタクト領域より基板101の平面方向に延在している。また、第3ベース電極部112dは、エミッタ層104の第2方向の両端側において、ベースコンタクト領域の外側で基板101の平面方向に延在する。第1ベース電極部112a,第2ベース電極部112b,延在部112c,第3ベース電極部112dは、一体に形成する。
【0061】
ベース電極112は、例えば、公知の真空蒸着法およびリフトオフ法により形成すれば良い。ここで、第2領域132に配置される第2ベース電極部112bは、ベースパッドとする部分であり、第3領域133、第4領域134における第3ベース電極部112dより幅広く形成する。第2ベース電極部112bは、例えば、第1方向の長さ(幅)を1μm程度に形成すればよい。なお、第1領域131に配置される延在部112cは、この下方にコレクタパッド部を設けるので、他より狭く(短く)形成する。
【0062】
また、第1ベース電極部112aの平面方向の幅は、素子特性上必要となるベースコンタクト抵抗が得られる幅とすればよく、50〜500nm程度とすればよい。また、第3ベース電極部112dの幅を広くとることで、ベース電極抵抗を低減することができ、最大発振周波数を向上させることも可能である。
【0063】
次に、第2領域132、第3領域133、第4領域134における第2ベース電極部112bの下部のマスクパターン210を除去し、
図2J,
図2Kに示すように、第2領域132、第3領域133、第4領域134において、第2ベース電極部112b、第3ベース電極部112dの下側を、下層より離間させる(第8工程)。これにより、第2ベース電極部112b、第3ベース電極部112dの下側は、空間となる。
【0064】
例えば、第2領域132、第3領域133、第4領域134においては、エミッタ電極113およびベース電極112の上をレジストで保護し、第1領域131は全域をレジストで保護した状態で、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、マスクパターン210を除去すれば良い。前述の通り、フッ素系ガスは、InPからなるエミッタ形成層205をエッチングすることがないため、SiO
2やSiNなどの絶縁材料から構成したマスクパターン210を選択的に除去できる。このため、上述したマスクパターン210のエッチングは、第2ベース電極部112b,第3ベース電極部112dの先端側の側部から進行し、第1ベース電極部112aに達したところで自動的に停止する。従って、上述したエッチング処理では、エッチング速度がばらついたとしても、所謂オーバーエッチングとすることで、マスクパターン210を確実に除去することができる。
【0065】
次に、第2ベース電極部112bの下部に残っているエミッタ形成層205を除去(第9工程)する。引き続き、第2ベース電極部112bの下部のベース形成層204を除去する(第10工程)。これらにより、
図2L,
図2Mに示すように、ベース層103を形成し、また、第1ベース電極部112aの周囲のコレクタ形成層203表面を露出させる。
【0066】
例えば、前述同様に、塩酸系のエッチング液を用いたウエットエッチングにより、残っているエミッタ形成層205を除去すれば良い。
【0067】
また、クエン酸が含有されたエッチング液を用いたウエットエッチングにより、第2ベース電極部112bの下部のベース形成層204を除去してベース層103を形成すればよい。クエン酸系のエッチング液は、InPからなるコレクタ形成層203をエッチングしないため、不要なベース形成層204を選択的に除去できる。また、クエン酸系エッチング液を用いた場合、GaAsSbはほとんどサイドエッチングされることはない。従って、第1ベース電極部112aと、GaAsSbからなるベース層103との接触幅は、おおよそ第1ベース電極部112aの幅と同等に精密に制御可能である。
【0068】
なお、上述したエミッタ形成層205の除去、ベース層103の形成においては、第1領域131の全域をレジストで保護した状態で実施する。
【0069】
次に、
図2N,
図2Oに示すように、コレクタ形成層203の上で、ベース層103、ベース電極112、エミッタ層104、エミッタキャップ層106、エミッタ電極113などの素子部を覆うマスク保護層208を形成する(第11工程)。例えば、マスク保護層208は、ベンゾシクロブテン(BCB)から構成すればよい。例えば、ベンゾシクロブテンをスピンコート法などにより塗布した後、熱処理して硬化させる。しかる後に、フォトリソグラフィやフッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、素子部を被覆するマスク保護層208を形成すれば良い。
【0070】
マスク保護層208を形成することで、第2ベース電極部112bおよび第3ベース電極部112dが、後工程の超音波洗浄工程などにおいて破壊されることを防ぐことができる。加えて、マスク保護層208は、後述する、コレクタ層102から金属サブコレクタ層111を形成する際のマスクとして機能し、エミッタ層104やベース層103が、種々のエッチング液に暴露されダメージが入ることを防止する。
【0071】
次に、マスク保護層208とサブコレクタ形成層201との間で、コレクタコンタクト形成層202およびコレクタ形成層203を横方向にエッチングすることで、
図2P,
図2Qに示すように、コレクタコンタクト層105およびコレクタ層102を形成する(第12工程)。
【0072】
例えば、マスク保護層208をマスクとし、前述同様に、塩酸系エッチング液を用いてInPからなるコレクタ形成層203をウエットエッチングすれば、コレクタ層102が形成できる。ベンゾシクロブテンから構成されたマスク保護層208と、InPからなるコレクタ形成層203との間の密着性はそれほど高くない。このため、上述したコレクタ形成層203のウエットエッチングにおいては、マスク保護層208の直下ではエッチング液が浸透しやすく、急速にサイドエッチングが進行する。これに対し、GaAsSbからなるベース層103の直下では、エッチング液が浸透しにくいため、サイドエッチングの進行が極めて遅くなる。このため、適宜に適切なエッチング時間を設定することで、ベース層103とほぼ同様の幅のコレクタ層102が形成できる。
【0073】
以上のようにしてコレクタ層102を形成した後、コレクタ層102をマスクとし、InGaAsからなるコレクタコンタクト形成層202をエッチングすれば、コレクタコンタクト層105が形成できる。例えばベース層103の形成と同様に、クエン酸系のエッチング液を用いたエッチング処理により、コレクタコンタクト層105を形成すればよい。
【0074】
次に、
図2R,
図2Sに示すように、コレクタコンタクト層105、コレクタ層102によるメサの側面(側壁)に、第2絶縁層108を形成する。例えば、第1絶縁層107の形成と同様に、スパッタ法やCVD法によりSiO
2やSiNなどの絶縁材料を堆積して絶縁膜を形成した後に、フッ素系ドライエッチングにより側壁以外の絶縁膜を除去すれば良い。コレクタ層102やコレクタコンタクト層105の側壁を第2絶縁層108で保護することで、後述する金属サブコレクタ層111の形成の際に、コレクタ層102やコレクタコンタクト層105にダメージが入ることを防止できる。
【0075】
次に、マスク保護層208と基板101との間でサブコレクタ形成層201を横方向にエッチングすることで、
図2T,
図2Uに示すように、金属サブコレクタ層111を形成する(第13工程)。例えば、サブコレクタ形成層201を構成する金属に合わせて適切なエッチング液を用いたウエットエッチング処理により、金属サブコレクタ層111を形成すればよい。例えば、金属サブコレクタ層111をAuから構成した場合、ヨウ化カリウム系のエッチング液を用いればよい。
【0076】
上述したことにより、第2ベース電極部112b,第3ベース電極部112dの直下には、コレクタ層102,コレクタコンタクト層105が無く、金属サブコレクタ層111がほとんどない状態となるため、第2ベース電極部112b,第3ベース電極部112dに起因したコレクタ寄生容量は無視できるほど小さくなる。
【0077】
次に、第1領域131における一部のマスク保護層208を除去する。この状態で、マスク保護層208および第1領域131における第1ベース電極部112aをマスクとし、第1領域131における、第1ベース電極部112aより外周側のコレクタ層102、ベース層103、コレクタコンタクト層105を除去し、
図2Vに示すように、第1領域131における金属サブコレクタ層111の上面を露出させる。この露出させた領域の延在部112cより外周側が、コレクタパッド部111aとなる。また、所定のマスクパターンを用いたパターニングにより、第1領域131における金属サブコレクタ層111の形状を形成する。
【0078】
この後、ベース電極112を覆う状態に絶縁体を堆積することで、
図1A,
図1Bに示すように、素子保護層109を形成する(第14工程)。
【0079】
以上に説明したように、本発明では、ベース電極が、エミッタ層の全周囲のベースコンタクト領域でベース層の表面に接する第1ベース電極部と、エミッタ層の第1方向の一端側において、ベースコンタクト領域より外側で基板の平面方向に延在する第2ベース電極部とを備え、第2ベース電極部の基板側の底面は、第1ベース電極部の基板側の底面より基板から離れて配置され、第2ベース電極部と基板との間には、ベース層、コレクタ層が形成されていないようにした。この結果、本発明によれば、より容易に、製造歩留まり低下や素子間のコレクタ容量ばらつきを抑制しつつ、効果的にコレクタ寄生容量が低減できるようになる。
【0080】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、上述では、超高速集積回路を実現する上で有望なSiC放熱基板上のnpn型InP/GaAsSb系HBTを例に説明したが、これに限るものではなく、他のHBT、具体的にはInP基板上に形成されたHBTに対しても有効である。
【符号の説明】
【0081】
101…基板、102…コレクタ層、103…ベース層、104…エミッタ層、105…コレクタコンタクト層、106…エミッタキャップ層、107…第1絶縁層、108…第2絶縁層、109…素子保護層、111…金属サブコレクタ層、112…ベース電極、112a…第1ベース電極部、112b…第2ベース電極部、112c…延在部、112d…第3ベース電極部、113…エミッタ電極、131…第1領域、132…第2領域、133…第3領域、134…第4領域。