【文献】
SCHANTZ, B., et al.,Influence of lecithin-PGPR blends on the rheological properties of chocolate,LWT-Food Science and Technology,2004年,vol.38, issue 1,p.41-45
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルが、コンチング工程の前半部以前にチョコレート生地に添加される、請求項1に記載の融液状チョコレート生地の製造方法。
請求項4の製造方法で得られたチョコレートを再度加熱融解した融液状チョコレート生地100質量部に対して、0.1〜3質量部の水を添加分散した後、冷却固化する、チョコレートの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、少量の水の添加に起因する生地粘度の上昇が抑制されるチョコレート生地の開発が望まれていた。
【0006】
本発明の課題は、少量の水の添加に起因する生地粘度の上昇が抑制されるチョコレート生地および当該生地の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、チョコレート生地が、チョコレート生地に含まれるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとリン脂質との割合が特定の範囲に維持される段階を経て、調製されることにより、チョコレート生地の粘度が低減されることを見出した。さらに、当該チョコレート生地に少量の水を添加しても生地粘度の上昇が抑制されることを見出した。これにより、本発明が完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を含み得る。
[1]チョコレート生地に含まれる、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量とリン脂質の含有量との質量比が、100:0〜70:30となる状態を少なくとも経由する、融液状チョコレート生地の製造方法。
[2]前記融液状チョコレート生地に含まれる、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量とリン脂質の含有量との質量比が、70:30〜25:75である、[1]の融液状チョコレート生地の製造方法。
[3]前記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルが、コンチング工程の前半部以前にチョコレート生地に添加される、[1]または[2]の融液状チョコレート生地の製造方法。
[4]粒子径(D90)が10〜30μmである、[1]〜[3]の何れか1つの融液状チョコレート生地の製造方法。
[5][1]〜[4]の何れか1つの製造方法により製造された融液状チョコレート生地を冷却固化する、チョコレートの製造方法。
[6]前記冷却固化する前に、前記融液状チョコレート生地の100質量部に対して、0.1〜3質量部の水を添加分散する、[5]のチョコレートの製造方法。
[7]チョコレート生地に含まれる、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量とリン脂質の含有量との質量比が、100:0〜70:30である状態を少なくとも経由させる、融液状チョコレート生地の粘度低減方法。
[8]チョコレート生地に含まれる、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量とリン脂質との質量比が、100:0〜70:30である状態を少なくとも経由させる、水を添加分散させることによる融液状チョコレート生地の粘度上昇を抑制する方法。
[9]チョコレート生地に含まれる、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量とリン脂質の含有量との質量比が、100:0〜70:30である状態を少なくとも経由する、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量とリン脂質の含有量との質量比が、70:30〜25:75である、融液状チョコレート生地。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少量の水の添加に起因する生地粘度の上昇が抑制されるチョコレート生地および当該生地の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明においてチョコレートは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上の規定により限定されない。本発明のチョコレートは、食用油脂および糖類を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダーなど)、乳製品、香料、乳化剤などを含んでもよい。本発明のチョコレートは、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、冷却工程など)の一部乃至全部を経て製造される。また、本発明のチョコレートは、ダークチョコレート、ミルクチョコレートの他に、ホワイトチョコレート、カラーチョコレートも含む。
【0011】
本発明においてチョコレート生地は、チョコレート原材料の一部または全部が混合された混合物であって、冷却固化されて最終的に固形のチョコレートとなる前のあらゆる段階のチョコレート原材料混合物を指す。チョコレート生地は、例えば、微粒化後のチョコレート原材料混合物やコンチング後のチョコレート原材料混合物であり得る。本発明における融液状のチョコレート生地は、チョコレート生地に含まれる油脂が融解された状態のチョコレート生地を指す。チョコレート生地が融液状であるかどうかは、例えばテンパー型チョコレート生地の場合、該チョコレート生地を冷却固化した後の、チョコレートの型抜けを確認することで判断できる。冷却固化されたチョコレートが成形型から型抜けしない場合(具体的には、成形型からのチョコレートの離型率が70%未満である場合)、チョコレート生地が融液状であると判断する。
【0012】
本発明のチョコレート生地は、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(以下、PGPRとも表す)を含有する。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、縮合リシノレイン酸ポリグリセリン、ポリグリセリンポリリシノレート、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルなどと表記されることがある。製法は公知であり、例えば、主にヒマシ油から得られるリシノレイン酸とポリグリセリンとのエステル化反応により得られる。前記縮合リシノレイン酸の平均重合度は、好ましくは2〜10程度であり、より好ましくは2〜6程度である。また、前記ポリグリセリンの平均重合度は、好ましくは3〜10程度であり、より好ましくは4〜7程度である。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、坂本薬品工業株式会社製のSYグリスターCR−310、CR−500、CR−ED、CRS−75など、太陽化学株式会社製のサンソフトNo.818DG、818R、818SKなど、理研ビタミン株式会社製のポエムPR−300など、が適宜使用できる。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、2種以上を併用してもよい。本発明のチョコレート生地は、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを、好ましくは0.05〜1質量%含有し、より好ましくは0.1〜0.6質量%含有し、さらに好ましくは0.15〜0.5質量%含有し、最も好ましくは0.18〜0.4質量%含有する。
【0013】
本発明のチョコレート生地は、また、リン脂質を含有する。本発明のチョコレート生地に含まれるリン脂質は、特に限定されない。しかし、実用上は、レシチンに含まれるリン脂質が適用できる。レシチンは、動植物界に広く存在する界面活性能を有する数種のリン脂質の混合物である。レシチンは、工業的には、大豆あるいは菜種などの油糧種子、または、卵黄などの動物原料から得られる。例えば、大豆レシチンには、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノ−ルアミン、ホスファチジルイノシト−ル、およびホスファチジルセリンなどのリン脂質が混合状態で含まれている。また、市販のレシチンとしては、一般的な粗製レシチン以外にも、これを脱油して得られる精製粉末レシチン、レシチンの成分を分画して得られる分画レシチン、レシチンに酵素を作用させて得られる酵素処理レシチン、あるいはレシチンを水素添加して得られる水素添加レシチンなども使用できる。本発明のチョコレート生地には、一般にリン脂質含有量が65質量%程度である粗製レシチンが好適に使用できる。
【0014】
本発明のチョコレート生地は、リン脂質を、好ましくは0.03〜1.3質量%、より好ましくは0.06〜0.8質量%、さらに好ましくは0.1〜0.6質量%、最も好ましくは0.12〜0.5質量%含有する。本発明のチョコレート生地に含まれるリン脂質として粗製レシチンを適用する場合、リン脂質の含有量が0.03〜1.3質量%となるように、粗製レシチンの使用量を調整すればよい。例えば、リン脂質含有量が65質量%である粗製大豆レシチンを使用する場合、チョコレート生地に含まれる粗製大豆レシチンの含有量が1質量%であれば、チョコレート生地に含まれるリン脂質の含有量は、0.65質量%である。したがって、一般にリン脂質含有量が65質量%程度である粗製レシチンを使用する場合、本発明のチョコレート生地は、粗製レシチンを、好ましくは0.05〜2質量%含有し、より好ましくは0.1〜1.2質量%含有し、さらに好ましくは0.15〜1質量%含有し、最も好ましくは0.18〜0.8質量%含有する。
【0015】
なお、上記粗製レシチンに含まれるリン脂質含有量は、例えば、アセトン不溶物含有量として求めることができる。レシチンのアセトン不溶物含有量は、例えば、次のようにして求められる。試料2gをビーカーに計りとり、氷冷したアセトン300ミリリットルを加え、十分攪拌して30分間放置する。上澄み液を質量既知のガラス濾過器で吸引ろ過し、さらに氷冷したアセトン30ミリリットルで3回不溶物を洗浄して、不溶物の全量をガラス濾過器に移し入れる。ガラス濾過器に氷冷したアセトンを満たし、吸引した後、ガラス濾過機を減圧下で乾燥させ、質量を測定する。ガラス濾過機の質量の増加分が、アセトン不溶物の質量である。(不溶物の質量/試料採取量)×100がアセトン不溶物(質量%)となる。また、リン脂質含有量の測定は、日本油化学協会の基準油脂分析試験法(2.4.11−1996)の比色法を用いて行ってもよい(リン量からの換算係数25.4)。
【0016】
上記の、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびリン脂質(例えば、粗製レシチン)は、融液状のチョコレート生地の減粘剤として使用される。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとリン脂質は、併用するとより効果的である。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとリン脂質とは、チョコレート生地に全てのポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとリン脂質とが添加された段階で、好ましくは質量比70:30〜25:75で併用され、より好ましくは質量比65:35〜30:70で併用される。例えば、リン脂質として粗製レシチン(リン脂質含有量65質量%)が使用される場合、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルと粗製レシチンとは、好ましくは質量比60:40〜15:85で併用され、より好ましくは質量比55:45〜20:80で併用される。
【0017】
本発明のチョコレート生地は、例えば、常法に従い、原材料の混合、ロールリファイニングなどによる微粒化、必要に応じてコンチング処理などの工程を経て、融液状のチョコレート生地に調製され得る。レファイナーコンチェなどにより、リファイニングとコンチングが一つの装置で連続して行われてもよいし、ボールミルなどで湿式粉砕するのみで、コンチング処理が省略されてもよい。本発明のチョコレート生地は、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとリン脂質とが全て添加された状態の融液状のチョコレート生地に調製される過程のどこかにおいて、チョコレート生地に含まれる、上記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量と上記リン脂質の含有量との質量比が、100:0〜70:30(好ましくは100:0〜80:20)となる状態を少なくとも経由する。融液状のチョコレート生地が調製される工程のどこかで、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量とリン脂質の含有量との質量比が、100:0〜70:30となる状態を経由することにより、得られた融液状のチョコレート生地は、このような状態を経由せずに調製された融液状のチョコレート生地と比較して、粘度がさらに低下する。また、融液状のチョコレート生地に少量の水を添加することによる生地粘度の上昇が抑制される。なぜこのような効果が得られるのか、その理由は明らかではない。しかし、チョコレート生地に含まれる固形粒子の表面がポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルで優先的にコーティングされることが重要であると考えられる。
【0018】
上記の、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとリン脂質とが全て添加された状態の融液状のチョコレート生地が調製される過程のどこかにおいて、チョコレート生地に含まれるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量とリン脂質の含有量との質量比が100:0〜70:30となる状態を少なくとも経由する具体例としては、次のような場合が想定される。例えば、微粒化後の原材料混合物に、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルのみを0.2質量%加えた状態(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量:リン脂質の含有量=100:0)でコンチング処理を開始し、コンチング処理の終了時点で粗製レシチン(リン脂質含有量65質量%)を0.2質量%加え、融液状のチョコレート生地(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量:リン脂質の含有量=60.6:39.4)を得てもよい。また、例えば、0.1質量%の粗製レシチン(リン脂質含有量65質量%)を含む原材料混合物を微粒化処理した後に、0.2質量%のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを加えて(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量:リン脂質の含有量=75.5:24.5)コンチング処理を開始し、コンチング処理の終了時点で粗製レシチン(リン脂質含有量65質量%)を0.1質量%加え、融液状のチョコレート生地(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量:リン脂質の含有量=60.6:39.4)を得てもよい。
【0019】
本発明の融液状チョコレート生地の調製(製造)において、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、好ましくは、コンチング工程の前半部以前に、チョコレート生地に添加される。コンチング工程の前半部以前には、コンチング工程の中間点およびそれ以前の段階で実施された工程の全てが含まれる。すなわち、一般的には、原材料の混合工程、微粒化工程、コンチング工程の前半が含まれ得る。例えば、ドライコンチングの場合、コンチング工程の中間点は、追い油、追いマスなどを行い、生地が融液状を呈する時点であり、この時点でポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを添加してもよい。また、ウエットコンチングの場合は、コンチング工程にかけるトータル時間の中間点が目安である。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルが、コンチング工程の前半部以前(言い換えれば、後半部より前)にチョコレート生地に添加されることにより、融液状チョコレート生地の粘度を効果的に低減できる。また、融液状のチョコレート生地に少量の水を添加することによる生地粘度の上昇を効果的に抑制できる。本発明の融液状のチョコレート生地は、コンチング工程において融液状に調製される場合、チョコレートの風味を損なわないように、好ましくは40〜60℃、より好ましくは40〜50℃で調製される。
【0020】
本発明の製造方法により得られる融液状のチョコレート生地は、一旦冷却固化して、再度加熱融解したとしても、低い粘度を維持し得る。一旦冷却固化して、再度加熱融解した融液状のチョコレート生地は、さらには、少量の水を添加することによる生地粘度の上昇についても効果的に抑制し得る。また、本発明の製造方法により得られる融液状のチョコレート生地は、融液の状態で1週間程度維持されたとしても、低い粘度を維持し得る。融液の状態で1週間程度維持されたチョコレート生地は、さらには、少量の水を添加することによる生地粘度の上昇についても効果的に抑制し得る。
【0021】
本発明の融液状チョコレート生地に含まれる固形粒子の粒子径(D90)は、好ましくは10〜30μmであり、より好ましくは10〜25μmである。ここで固形粒子は、例えば、糖類、カカオ成分、乳成分の固形粒子であり得る。また、ここで粒子径(D90)は、粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製、装置名:SALD−2300や、日機装株式会社製、装置名:Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201,ISO9276−1)に基づいて、湿式測定により測定した値(D90:粒度分布における積算値90%の粒径の測定値)である。融液状チョコレート生地に含まれる固形粒子の粒子径(D90)が小さいと、粘度は大きくなり、粒子径(D90)が大きいと、粘度は小さくなる。したがって、融液状チョコレート生地の粘度を低減するには、粒子径(D90)は大きい方がよい。しかし、粒子径が大きいと糖骨格が形成され難くなるので、チョコレートの耐熱性を高めるには、粒子径(D90)は小さい方がよい。本発明の融液状チョコレート生地の製造方法は、融液状チョコレート生地に含まれる固形粒子の粒子径(D90)が13〜20μmであっても、融液状チョコレート生地の粘度を効果的に低減し得る。また、融液状のチョコレート生地に少量の水を添加することによる生地粘度の上昇を効果的に抑制し得る。
【0022】
本発明のチョコレートがテンパータイプのチョコレートである場合、融液状チョコレート生地に、テンパリング処理もしくはシーディング処理を行ってもよい。さらに後述の水添加工程が適用される場合、テンパリング処理もしくはシーディング処理は、水添加工程の前後のどちらかで行ってもよい。
【0023】
上記テンパリング処理とは、融液状チョコレート生地に安定結晶の結晶核を生じさせる操作である。具体的には、例えば、40〜50℃で融解しているチョコレートの品温を27〜28℃程度まで下げた後に、再度29〜31℃程度まで加温する操作として知られる。テンパリング処理は、好ましくは後述の水添加工程の後に行われる。
【0024】
上記シーディング処理とは、テンパリング処理の代わりに、安定結晶の結晶核として機能するシーディング剤を使用して、融液状チョコレート生地に安定結晶の結晶核を分散させる処理である。シーディング処理は、テンパリング処理と同様に、チョコレートに含まれる油脂をV型の安定結晶として固化させるために行われる。
【0025】
シーディング処理を行う場合は、シーディング処理と後述の水添加工程の順序はいずれが先であってもよい。また、シーディング剤の添加および水添加工程を同時に行ってもよい。つまり、シーディング剤および水を融液状チョコレート生地に同時に添加してもよい。
【0026】
本発明のチョコレートは、本発明の融液状チョコレート生地を冷却固化することにより得られる。前記冷却固化の方法は、特に限定されない。モールド成形チョコレートや食品への被覆チョコレートといったチョコレート製品に応じて、適宜選択すればよい。融液状チョコレート生地は、例えば、冷却トンネル(クーリングトンネル)での冷風吹付、冷却プレートとの接触、により冷却固化できる。また、前記冷却固化の条件は、融液状チョコレート生地が固化する限り特に限定されない。例えば、冷却温度は、好ましくは0〜20℃、より好ましくは0〜10℃であり得る。冷却時間は、好ましくは5〜90分間、より好ましくは10〜60分間であり得る。
【0027】
本発明のチョコレートの製造に係る好ましい態様としては、チョコレートに糖骨格を形成させるために、融液状チョコレート生地に予め少量の水を添加および分散させる工程(水添加工程)を有する。水添加工程での融液状チョコレート生地の温度は、好ましくは30〜60℃、より好ましくは33〜50℃、さらに好ましくは35〜45℃である。水添加工程での融液状チョコレート生地の温度が上記範囲内にあると、チョコレートの風味を損なわずに、水を添加および分散できる。添加される水の量は、チョコレート生地の水の含有量が、好ましくは0.8〜3質量%となるように適宜設定されればよい。目安としては、100質量部の融液状チョコレート生地に対して、好ましくは0.1〜3質量部であり、より好ましくは0.5〜2質量部であり、さらに好ましくは0.5〜1.5質量部である。
【0028】
上記の水添加工程で添加される水は、水のみであってもよいが、水と共に水以外の成分を含む組成物(以下、このような組成物を「含水材」という)であってもよい。水添加工程で添加される水は、添加量が同じであっても、水と共に添加される成分によって、融液状チョコレート生地の粘度上昇速度が変化し得る。具体的には、水のみ、または、水の含有量の高い含水材(果汁、牛乳など)を添加すると、融液状チョコレート生地の粘度は急激に上昇する。他方、糖液やタンパク液などの含水材を添加すると、融液状チョコレート生地の粘度は比較的緩やかに上昇する。急激に粘度が上昇すると、融液状チョコレート生地全体に水が十分に分散できない。そのため、水添加工程で添加される水は、好ましくは糖液やタンパク液などの含水材である。
【0029】
上記の糖液としては、果糖、ブドウ糖、蔗糖、麦芽糖、オリゴ糖などの糖と水とを含む、還元水飴や果糖ブドウ糖液糖、ソルビトール液などの溶液が挙げられる。タンパク液としては、タンパク質と水とを含む、卵白メレンゲ、濃縮乳、生クリームなどが挙げられる。糖液やタンパク液に含まれる水の含有量は、溶液全体に対して、好ましくは10〜90質量%であり、より好ましくは10〜50質量%である。水添加工程で、水を含水材の形態で添加する場合、その添加量は融液状態のチョコレートに対する水の量が上記の範囲内となるように添加すればよい。
【0030】
上記水添加工程で使用する水や含水材の温度は、水や含水材を添加する融液状チョコレート生地の温度と同程度であることが好ましい。そうすることで、融液状チョコレート生地の温度は一定に保たれ、水や含水材は均一に分散しやすい。水を融液状チョコレート生地に添加した後は、撹拌などにより水をチョコレート中に均一に分散させてもよい。
【0031】
上記水添加工程において、水を添加する融液状チョコレート生地の温度は、好ましくは32〜40℃、より好ましくは33〜38℃、さらに好ましくは34〜37℃である。水を添加後の融液状チョコレート生地は、10分以上、好ましくは32〜40℃、より好ましくは33〜38℃、さらに好ましくは34〜37℃、で保持されてもよい(保持工程)。この保持工程により、融液状チョコレート生地への水の分散が促進されるとともに、融液状チョコレート生地の粘度が上昇する。
【0032】
上記保持工程における、32〜40℃に保持する時間は、好ましくは0.25〜12時間であり、より好ましくは0.5〜8時間であり、さらに好ましくは1〜5時間である。保持時間が上記の範囲内にあると、融液状チョコレート生地の粘度上昇が比較的緩やかであるため、チョコレート生地の取り扱いが容易となる。なお、本発明の融液状チョコレート生地の粘度は、回転型粘度計であるBH型粘度計を用いて測定できる。例えば、測定温度にてNo.6のローターを4rpmで回転させ、3回転後の読み取り数値に装置係数を乗じて求める塑性粘度として計測できる。
【0033】
上記水添加工程を経た融液状チョコレート生地は、冷却固化されてもよい。この工程により、融液状態から固形のチョコレートを効率的に製造できる。本発明のチョコレートは、上記の水添加工程の適用や、含水素材や吸湿性の高い素材を原材料に使用することなどより、少量の水を含むことで、糖骨格を形成しやすくなる。本発明のチョコレートの水の含有量は、好ましくは0.8〜3質量%であり、より好ましくは0.9〜2.5質量%であり、さらに好ましくは1.0〜2.0質量%である。なお、チョコレートの水含有量は、常法に従って、常圧乾燥減量法や、カールフィッシャー水分計を用いて測定できる。
【0034】
冷却固化後のチョコレートは、さらに保温処理されてもよい。保温処理とは、冷却固化後のチョコレートを、好ましくは24〜36℃、より好ましくは26〜34℃、さらに好ましくは28〜32℃において、好ましくは1時間〜14日間、より好ましくは6時間〜10日間、さらに好ましくは6時間〜8日間、最も好ましくは12時間〜4日間、保温する処理である。保温処理により、チョコレートに形成された糖骨格をより強固にできる。また、保温処理の対象である冷却固化後のチョコレートは、冷却固化後、保温処理前に、好ましくは16〜24℃、より好ましくは18〜22℃において、好ましくは6時間〜14日間、より好ましくは6時間〜10日間、さらに好ましくは12時間〜4日間、プレエージング処理されてもよい。また、保温処理後のチョコレートは、好ましくは16〜24℃、より好ましくは18〜22℃において、好ましくは2日間〜20日間、より好ましくは4日間〜14日間、エージング処理されてもよい。
【0035】
本発明のチョコレートは、好ましくは28〜46質量%、より好ましくは30〜42質量%、さらに好ましくは32〜38質量%の油脂を含有する。ここで「油脂」には、原材料として配合されるココアバターなどの油脂そのものだけではなく、カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳などの原材料に含まれる油脂(ココアバター、乳脂など)も含まれる。例えば、カカオマスの油脂(ココアバター)含有量は約55質量%(含油率0.55)であり、ココアパウダーの油脂(ココアバター)含有量は約11質量%(含油率0.11)であり、全脂粉乳の油脂(乳脂)含有量は約25質量%(含油率0.25)である。チョコレートに含まれる油脂の含有量は、チョコレートに含まれる各原材料の配合量(質量%)に含油率を掛け合わせた値を合計した値となる。本発明のチョコレートの油脂含有量が上記範囲内にあると、チョコレートの糖骨格が形成されやすい。
【0036】
本発明のチョコレートは、また、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは30〜65質量%、さらに好ましくは35〜60質量%の糖類を含有する。チョコレートに含まれる糖類は、チョコレート中の糖骨格形成に寄与する。糖類は、例として、砂糖(ショ糖)、乳糖、ブドウ糖、麦芽糖、オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、パラチノースオリゴ糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、はちみつ、還元糖ポリデキストロース、ラフィノース、ラクチュロース、還元乳糖、ソルビトール、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、トレハロースなどが挙げられる。糖類は、糖アルコールであってもよく、1種または2種以上が含まれてもよい。
【0037】
本発明のチョコレートは、好ましくは、糖類の1つとしてショ糖を30〜58質量%含有する。本発明のチョコレートに含まれるショ糖は、糖骨格を形成する重要な成分の1つである。ショ糖は、ショ糖の結晶であるグラニュー糖を粉にした粉糖を使用するのが適当である。本発明のチョコレートに含まれるショ糖の含有量は、好ましくは32〜54質量%、より好ましくは34〜50質量%である。本発明のチョコレートに含まれるショ糖の含有量が上記範囲内にあると、チョコレート中に糖骨格が形成され易い。
【0038】
本発明のチョコレートは、好ましくは、糖類の1つとして乳糖を1〜20質量%含有する。乳糖を含有することで、チョコレートの糖骨格の強度を高めることができる。乳糖は、好ましくは結晶質であり、好ましくは結晶として配合される。市販の乳糖のほとんどは、結晶質である。乳糖の結晶は、α−乳糖であってもβ−乳糖であってもよい。α−乳糖は、無水物でも一水和物であってもよい。本発明のチョコレートに含まれる乳糖の含有量は、より好ましくは2〜18質量%であり、さらに好ましくは3〜16質量%である。なお、乳糖が結晶質であるかどうかは、粉末X線回折により確認できる。
【0039】
本発明のチョコレートは、油脂と糖類以外に、一般にチョコレートに使用される原材料を含有してもよい。そのような原材料としては、例えば、カカオマス、ココアパウダー、乳製品(乳固形類等)、乳化剤、香料、色素等のほか、澱粉類、ガム類、熱凝固性タンパク、いちご粉末や抹茶粉末のような各種粉末類などの、各種食材や各種食品添加物が挙げられる。本発明のチョコレートは、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびリン脂質を含有するレシチンを除く乳化剤を含有し得る。しかし、本発明のチョコレートに占める、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびリン脂質を含有するレシチンを除く乳化剤の含有量は、好ましくは0〜2質量%であり、より好ましくは0〜1質量%であり、さらに好ましくは0〜0.5質量%であり、最も好ましくは0質量%である。
【0040】
本発明のチョコレートは、好ましくは粉乳を含有する。本発明に使用される粉乳は、乳由来の粉末であれば特に制限はない。例として、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、クリームパウダー、バターミルクパウダーが挙げられる。粉乳は1種または2種以上を選択して使用できる。特に、好ましくは全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダーが含まれ、より好ましくは全脂粉乳、脱脂粉乳が含まれる。本発明のチョコレートに使用される粉乳は、また、好ましくは上記例示した粉乳のように、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥により製造される。本発明のチョコレートの粉乳含有量は、好ましくは4〜32質量%であり、より好ましくは8〜28質量%であり、さらに好ましくは12〜24質量%である。本発明のチョコレートに含まれる粉乳の含有量が上記範囲内にあると、チョコレートは、良好な風味と保形性を有する。
【0041】
本発明のチョコレートに糖骨格が形成されているかどうかは、チョコレートをn−ヘキサンに浸漬する試験で確認できる。すなわち、20℃のn−ヘキサンに浸漬されたチョコレートが、浸漬後少なくとも20分間、形状を維持すると、チョコレートに糖骨格が形成されていると判断できる。チョコレートに糖骨格が形成されると、チョコレートの形状が糖骨格によっても維持されるので、チョコレートの耐熱性が向上する。糖骨格が形成されたチョコレートは、n−ヘキサンに浸漬テストされた後、好ましくは2時間以上、より好ましくは12時間以上、さらに好ましくは24時間以上、形状を維持する。
【0042】
本発明のチョコレートは、例えば、型抜きされたチョコレートとして、そのまま食することができる。また、本発明のチョコレートは、製菓製パン製品(例えば、パン、ケーキ、洋菓子、焼き菓子、ドーナツ、シュー菓子など)の、コーティング材料、フィリング材料、または、生地へ混ぜ込むチップ材料として、使用できる。また、本発明のチョコレートは、オーブンなどで焼成されてもよい。本発明の融液状チョコレート生地ないしチョコレートを使用することにより、多彩なチョコレート複合食品(チョコレートを原料の一部に含む食品)が得られる。
【実施例】
【0043】
次に実施例により本発明を説明する。しかし、本発明は、これらの実施例により限定されない。
【0044】
〔分析方法〕
(1)融液状チョコレート生地に含まれる固形粒子の粒子径(D90)
粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製、装置名:SALD−2300)でレーザー回折散乱法(ISO133201,ISO9276−1)に基づいて、湿式測定により測定した値(D90:粒度分布における積算値90%の粒径の測定値)とした。
(2)融液状チョコレート生地の粘度
融液状チョコレート生地の粘度(単位:mPa・s)は、BH型粘度計(東機産業社製)を使用して測定した。つまり、No.6のローターを回転数4rpmに設定した。次いで、測定温度に調温したチョコレートの中で、ローターを3回転させて数値を読み取った。読み取った数値に装置係数(2500)を乗じて粘度を求めた。
(3)チョコレートの水分
チョコレートの水分(水含有量)は、常法に従い、常圧乾燥減量法により測定した。
(4))n−ヘキサン浸漬試験(耐熱保形性)
長間隔16mm、短間隔8mmで60°と120°で交差する菱形のステンレスネット上にチョコレートを載せ、20℃でn−ヘキサン中に浸漬し、経時的にネットの上に残存するチョコレートの抽出残渣の有無、及び、その形状の観察を48時間にわたって下記の基準に基づいて評価した。チョコレートの形状が保持されているほど、糖によるネットワークの形成がより強固になされていることを示す。
◎ 元の形状が完全に残っている
○ 一部崩れているが元の形状が残っている
△ ネット上に残渣が残っているが、形状が崩れている
× ネット上から残渣が完全に落下し、形状が完全に崩れている
【0045】
(融液状チョコレート生地の調製1)
表1に示されたチョコレートの原材料配合を使用して、表2に示された添加順序に従って比較例1および実施例1〜3の融液状チョコレート生地を調製した。乳化剤(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよび大豆粗製レシチン)を全て添加分散し、生地の温度を34℃に調整した段階をスタート(0分)とし、チョコレート生地が十分に攪拌される状態(63rpm)で維持した。10分後に、100質量部の融液状チョコレート生地に対して4質量部の液糖(水含有量25質量%)を添加した。20分後に、100質量部の融液状チョコレート生地に対して0.3質量部のStOSt(1,3−ジステアロイル−2−オレオイルグリセリン)を主成分とするシーディング剤を添加した。その後、攪拌速度12rpmで180分まで攪拌を継続した。融液状チョコレート生地に含まれる固形分の粒子径(D90)を測定するとともに、0分、10分、20分、60分、120分および180分の各時点における融液状チョコレート生地の粘度を測定した。結果を表2に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
(融液状チョコレート生地の調製2)
表3に示されたチョコレートの原材料配合を使用して、表4に示された添加順序に従って比較例2および実施例4の融液状チョコレート生地を調製した。乳化剤(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよび大豆粗製レシチン)を全て添加分散し、生地の温度を34℃に調整した段階をスタート(0分)とし、チョコレート生地が十分に攪拌される状態(63rpm)で維持した。10分後に、100質量部の融液状チョコレート生地に対して4質量部の液糖(水含有量25質量%)を添加した。20分後に、100質量部の融液状チョコレート生地に対して0.3質量部のStOSt(1,3−ジステアロイル−2−オレオイルグリセリン)を主成分とするシーディング剤を添加した。その後、攪拌速度12rpmで180分まで攪拌を継続した。融液状チョコレート生地に含まれる固形分の粒子径(D90)を測定するとともに、0分、10分、20分、60分、120分および180分の各時点における融液状チョコレート生地の粘度を測定した。結果を表4に示した。
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
(融液状チョコレート生地の調製3)
表5に示されたチョコレートの原材料配合を使用して、表6に示された添加順序に従って参考例1〜5の融液状チョコレート生地を調製した。乳化剤(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよび大豆粗製レシチン)を全て添加分散し、生地の温度を37℃に調整した段階をスタート(0分)とし、チョコレート生地が十分に攪拌される状態(63rpm)で維持した。10分後に、100質量部の融液状チョコレート生地に対して4質量部の液糖(水含有量25質量%)を添加分散した。0分、10分の各時点における融液状チョコレート生地の粘度を測定した。結果を表6に示した。
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【0054】
(融液状チョコレート生地の調製4)
表7に示されたチョコレートの原材料配合を使用して、表8に示された添加順序に従って比較例3、4および実施例5の融液状チョコレート生地を調製した。なお、比較例3は、ロールによる微粒化を10barの圧力で行い、比較例4および実施例5は、15barの圧力で行った。乳化剤(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよび大豆粗製レシチン)を全て添加分散して、生地の温度を34℃に調整した段階をスタート(0分)とし、融液状チョコレート生地の水含有量および固形分の粒子径(D90)を測定した。そして、チョコレート生地が十分に攪拌される状態(63rpm)で維持した。10分後に、100質量部の融液状チョコレート生地に対して4質量部の液糖(水含有量25質量%)を添加した。20分後に、100質量部の融液状チョコレート生地に対して0.3質量部のStOSt(1,3−ジステアロイル−2−オレオイルグリセリン)を主成分とするシーディング剤を添加した。0分、10分、20分の各時点における融液状チョコレート生地の粘度を測定した。その後、チョコレート生地をモールドに注入し、10℃で冷却固化した。冷却固化後、チョコレートを、30℃で4日間保温処理した。また、保温処理後のチョコレートの水含有量を測定するとともに、n−ヘキサン浸漬試験に供した。結果を表8に示した。
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
(融液状チョコレート生地の調製5)
表9に示されたチョコレートの原材料配合を使用して、表10に示された添加順序に従って比較例5および実施例6の融液状チョコレート生地を調製した。乳化剤(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよび大豆粗製レシチン)を全て添加分散して、生地の温度を34℃に調整した段階をスタート(0分)とし、融液状チョコレート生地の水含有量および固形分の粒子径(D90)を測定した。そして、チョコレート生地が十分に攪拌される状態(63rpm)で維持した。20分後に、100質量部の融液状チョコレート生地に対して4質量部の液糖(水含有量25質量%)を添加した。その後、攪拌速度12rpmで180分まで攪拌を継続した。0分、20分、40分、60分、90分、120分、150分および180分の各時点における融液状チョコレート生地の粘度を測定した。その後、チョコレート生地をモールドに注入し、10℃で冷却固化した。冷却固化後、チョコレートを、30℃で4日間保温処理した。また、保温処理後のチョコレートの水含有量を測定するとともに、n−ヘキサン浸漬試験に供した。結果を表10に示した。
【0058】
【表9】
【0059】
【表10】
【0060】
(融液状チョコレート生地の粘度の安定性評価)
実施例3により得られたコンチング工程終了後の、乳化剤(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよび大豆粗製レシチン)が全て添加分散された融液状のチョコレート生地を使用して、50℃で5日間維持した融液状のチョコレート生地(実施例7)、および、冷却固化し、20℃で5日間維持したチョコレート生地を、再度加熱融解した融液状のチョコレート生地(実施例8)、を準備して、生地温度を34℃に調整した。生地の温度を34℃に調整した段階をスタート(0分)とし、チョコレート生地が十分に攪拌される状態(63rpm)で維持した。10分後に、100質量部の融液状チョコレート生地に対して4質量部の液糖(水含有量25質量%)を添加した。20分後に、100質量部の融液状チョコレート生地に対して0.3質量部のStOSt(1,3−ジステアロイル−2−オレオイルグリセリン)を主成分とするシーディング剤を添加した。その後、攪拌速度12rpmで180分まで攪拌を継続した。0分、10分、20分、40分、60分、90分、120分、150分および180分後の各時点における融液状チョコレート生地の粘度を測定した。その後、チョコレート生地をモールドに注入し、10℃で冷却固化した。冷却固化後、チョコレートを、30℃で4日間保温処理した。保温処理後のチョコレートは、n−ヘキサン浸漬試験に供した。結果を表11に示した。
【0061】
【表11】