特許第6792310号(P6792310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6792310不溶性食物繊維含有固形状組成物及びその製造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6792310
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】不溶性食物繊維含有固形状組成物及びその製造法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20201116BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20201116BHJP
   A23L 11/00 20160101ALI20201116BHJP
   A23L 33/22 20160101ALI20201116BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20201116BHJP
【FI】
   A23L19/00 Z
   A23L19/00 A
   A23L7/10 H
   A23L11/00 Z
   A23L11/00 A
   A23L11/00 F
   A23L33/22
   A21D13/80
【請求項の数】24
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2020-531793(P2020-531793)
(86)(22)【出願日】2020年1月24日
(86)【国際出願番号】JP2020002511
【審査請求日】2020年6月18日
(31)【優先権主張番号】特願2019-95751(P2019-95751)
(32)【優先日】2019年5月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】西岡 大介
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−295440(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/155488(WO,A1)
【文献】 特開2010−284148(JP,A)
【文献】 '野菜不足のあなたに!皮や芯・さやまるごと摂る新・食習慣「ZENB」’,05-12-2018 uploaded, [Retrieved on 13-03-2020], Retrieved from the Internet:<URL: https://www.makuake.com/project/zenb_initiative/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A21D
A23G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(1)から(5)を充足する、乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び/又は不溶性食物繊維局在部位の粉末を含有する固形状組成物。
(1)タンパク質を3質量%以上含有する
(2)不溶性食物繊維を3質量%以上含有する
(3)湿量基準水分が11質量%以下である
(4)乾燥速度(105℃、5分間)が0.02g/s・m2以上0.55g/s・m2以下である
(5)超音波処理を行った状態における固形状組成物水分散液中の粒子の50%積算径が5μm超600μm以下である
【請求項2】
乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び不溶性食物繊維局在部位を含有する、請求項1に記載の固形状組成物。
【請求項3】
超音波処理を行わない状態における固形状組成物水分散液中の粒子の最大粒子径が300μm以上である、請求項1又は2に記載の固形状組成物。
【請求項4】
乾燥豆類の可食部及び/又は不溶性食物繊維局在部位を5質量%以上含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の固形状組成物。
【請求項5】
乾燥豆類の種皮部分の粉末を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の固形状組成物。
【請求項6】
さらに、全油脂分含量が60質量%未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の固形状組成物。
【請求項7】
乾燥野菜類、乾燥穀類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び/又は不溶性食物繊維局在部位の含有量が、乾燥質量換算で10質量%以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の固形状組成物。
【請求項8】
さらに、固形状油脂を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の固形状組成物。
【請求項9】
乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の不溶性食物繊維局在部位の粉末を、固形状組成物全体に対して、乾燥質量換算で1質量%以上90質量%以下含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の固形状組成物。
【請求項10】
乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部と不溶性食物繊維局在部位が同一種類の植物由来である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の固形状組成物。
【請求項11】
乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部と不溶性食物繊維局在部位が同一個体由来である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の固形状組成物。
【請求項12】
乾燥野菜類が、カボチャ、ニンジン、キャベツ及びビーツから選ばれる1種以上である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の固形状組成物。
【請求項13】
グルテンを含有しない、請求項1〜11のいずれか一項に記載の固形状組成物。
【請求項14】
乾燥穀類がコーンである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の固形状組成物。
【請求項15】
乾燥果実類が柑橘類である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の固形状組成物。
【請求項16】
人の摂食用途である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の固形状組成物。
【請求項17】
動物性食材を含まない、請求項1〜16のいずれか一項に記載の固形状組成物。
【請求項18】
糖質を水に溶かした状態で含有する食材の含有量が30質量%未満の生地組成物を加熱処理して得られる焼き菓子類である請求項1〜17のいずれか一項に記載の固形状組成物。
【請求項19】
下記(i)及び(ii)の段階を含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の固形状組成物の製造方法。
(i)乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び/又は不溶性食物繊維局在部位の粉末を含有する生地組成物を、不溶性食物繊維の含有率が5質量%以上、超音波処理を行った状態における生地組成物水分散液中の粒子の50%積算径が5μm超600μm以下、湿量基準水分を15質量%以上となるように調整する段階
(ii)前記(i)の生地組成物を加熱処理することで、湿量基準水分を4質量%以上低下させ、固形化する段階
【請求項20】
(i)において、生地組成物の乾燥速度を0.20g/s・m2(105℃、5分間)以上に調整する、請求項19に記載の固形状組成物の製造方法。
【請求項21】
(i)において、乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び不溶性食物繊維局在部位を含有する、請求項19又は20に記載の固形状組成物の製造方法。
【請求項22】
(i)において、乾燥豆類の種皮部分の粉末を含有する、請求項19〜21のいずれか一項に記載の固形状組成物の製造方法。
【請求項23】
(ii)において、乾燥速度が0.20g/s・m2(105℃、5分間)未満となるまで加熱する、請求項19〜22のいずれか一項に記載の固形状組成物の製造方法。
【請求項24】
(ii)において、乾燥速度が0.02g/s・m2(105℃、5分間)以上0.55g/s・m2以下となるまで加熱する、請求項19〜23のいずれか一項に記載の固形状組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不溶性食物繊維含有固形状組成物及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスケット、クッキー、クラッカー、カロリーバーなどの焼き菓子において、しっとりとしてソフトな食感を好む人がいる一方で、これらの食感を湿気た感じと捉え、忌避する人も多く見受けられる。すなわち、後者のような嗜好を有する人には、硬すぎることなく喫食性に優れながらも、乾いた良好なサクサク感を有する食感を提供することが好ましい。
【0003】
しかしながら、これら焼き菓子に、乾いたサクサク感を付与しようとした場合、生地の焼成の程度をより強く、焼成後の水分をより低くするというのが従来の方法であり、このような従来法により調製された焼き菓子は、硬すぎて容易にかじられないばかりか、その原料が本来有する好ましい風味までもが強い焼成により失われてしまうという課題があった。
【0004】
一方で、今般の食品への健康機能の付与の流れの中で、焼き菓子のような食品においても、食物繊維等の健康機能を有する成分を含有させ、健康機能を訴求してその摂取を促すという開発の方向性は例外ではない。
【0005】
しかしながら、特許文献1によれば、不溶性食物繊維が豊富な全粒粉を用いると、食感が固くなり、口溶けも悪くなってしまう。また、焼成による焦げが生じやすくなるため、外観を明るく保つために、焼成条件の綿密な制御を要する等の製造上の制約もあった、と指摘されている。特許文献2によれば、食物繊維には水に不溶性のものが多く、特にビスケットにおいては水に不溶の食物繊維を多く配合するとグルテンの形成が良好に成されず、結果として機械適性や食感の不良な焼き菓子しか得られていないのが現状であった、と指摘されている。そのため、前者では、しっとりとした食感を有し、ソフトな食感を有し、歯切れよく噛み切ることができる焼き菓子を提供する技術の開発にとどまっている。後者では、水溶性の食物繊維を配合することにより、上記の問題点を解決したとされている。特許文献3においても、不溶性食物繊維を豊富に含有しながらも風味に優れ、製造適性にも優れた焼き菓子が提供されると記載されているものの、風味が良好で、焼き菓子の調製の際、焼成前の生地のべとつきが抑えられて作業性に優れ、また生地のつながりも良好で成型性にも優れるものであったとの効果が開示されているものの、乾いた良好なサクサク感を有する食感や好ましい原料由来の風味の付与については、何ら記載、評価されていない。
【0006】
すなわち、不溶性食物繊維を多く含有しているにもかかわらず、硬すぎることなく喫食性に優れながらも、乾いた良好なサクサク感を有する食感や、好ましい原料由来の風味を有する固形状組成物を提供する技術の開発は未だ解決がなされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−140363号公報
【特許文献2】特開平10−14482号公報
【特許文献3】特開2018−153113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明が解決する課題は、不溶性食物繊維を多く含有しているにもかかわらず、良好なサクサクとした食感や、好ましい原料由来の風味をバランスよく有する喫食性に優れた固形状組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の事情に鑑みて鋭意研究した結果、従来の技術にない、不溶性食物繊維を多く含有する食用植物の効果に着目し、上記課題を同時に簡易に解決できることを新規に知見した。そして、本発明者らは上記の知見に基づいてさらに鋭意研究を進めることにより、下記の発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、次の[1]〜[24]を提供するものである。
[1]次の(1)から(5)を充足する、乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び/又は不溶性食物繊維局在部位の粉末を含有する固形状組成物。
(1)タンパク質を3質量%以上含有する
(2)不溶性食物繊維を3質量%以上含有する
(3)湿量基準水分が11質量%以下である
(4)乾燥速度(105℃、5分間)が0.02g/s・m2以上である
(5)超音波処理を行った状態における固形状組成物水分散液中の粒子の50%積算径が5μm超600μm以下である
[2]乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び不溶性食物繊維局在部位の粉末を含有する、[1]に記載の固形状組成物。
[3]超音波処理を行わない状態における固形状組成物水分散液中の粒子の最大粒子径が300μm以上である、[1]又は[2]に記載の固形状組成物。
[4]乾燥豆類の可食部及び/又は不溶性食物繊維局在部位の粉末を5質量%以上含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の固形状組成物。
[5]乾燥豆類の種皮部分の粉末を含有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の固形状組成物。
[6]全油脂分含量が60質量%未満である、[1]〜[5]のいずれかに記載の固形状組成物。
[7]乾燥野菜類、乾燥穀類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び/又は不溶性食物繊維局在部位の粉末の含有量が、乾燥質量換算で10質量%以上である、[1]〜[6]のいずれかに記載の固形状組成物。
[8]さらに、固形状油脂を含有する、[1]〜[7]のいずれかに記載の固形状組成物。
[9]乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の不溶性食物繊維局在部位の粉末を、固形状組成物全体に対して、乾燥質量換算で1質量%以上90質量%以下含有する、[1]〜[8]のいずれかに記載の固形状組成物。
[10]乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる一種以上の可食部と不溶性食物繊維局在部位が同一種類の植物由来である、[1]〜[9]のいずれかに記載の固形状組成物。
[11]乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部と不溶性食物繊維局在部位が同一個体由来である、[1]〜[10]のいずれかに記載の固形状組成物。
[12]乾燥野菜類が、カボチャ、ニンジン、キャベツ及びビーツから選ばれる1種以上である、[1]〜[11]のいずれかに記載の固形状組成物。
[13]グルテンを含有しない、[1]〜[11]のいずれかに記載の固形状組成物。
[14]乾燥穀類がコーンである、[1]〜[11]のいずれかに記載の固形状組成物。
[15]乾燥果実類が柑橘類である、[1]〜[11]のいずれかに記載の固形状組成物。
[16]人の摂食用途である、[1]〜[15]のいずれかに記載の固形状組成物。
[17]動物性食材を含まない、[1]〜[16]のいずれかに記載の固形状組成物。
[18]焼き菓子類である[1]〜[17]のいずれかに記載の固形状組成物。
[19]下記(i)及び(ii)の段階を含む、乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び/又は不溶性食物繊維局在部位の粉末を含有する固形状組成物の製造方法。
(i)乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び/又は不溶性食物繊維局在部位の粉末を含有する生地組成物を、不溶性食物繊維の含有率が5質量%以上、超音波処理を行った状態における生地組成物水分散液中の粒子の50%積算径が5μm超600μm以下、湿量基準水分を15質量%以上となるように調整する段階
(ii)前記(i)の生地組成物を加熱処理することで、湿量基準水分を4質量%以上低下させ、固形化する段階
[20](i)において、生地組成物の乾燥速度を0.20g/s・m2(105℃、5分間)以上に調整する、[19]に記載の固形状組成物の製造方法。
[21](i)において、乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び不溶性食物繊維局在部位の粉末を含有する、[19]又は[20]に記載の固形状組成物の製造方法。
[22](i)において、乾燥豆類の種皮部分の粉末を含有する、[19]〜[21]のいずれかに記載の固形状組成物の製造方法。
[23](ii)において、乾燥速度が0.20g/s・m2(105℃、5分間)未満となるまで加熱する、[19]〜[22]のいずれかに記載の固形状組成物の製造方法。
[24](ii)において、乾燥速度が0.02g/s・m2(105℃、5分間)以上となるまで加熱する、[19]〜[23]のいずれかに記載の固形状組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不溶性食物繊維を多く含有しているにもかかわらず、硬すぎることなく喫食性に優れながらも、乾いた良好なサクサク感を有する食感や、好ましい原料由来の風味を有する固形状組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、次の(1)から(5)を充足する、乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び/又は不溶性食物繊維局在部位の粉末を含有する固形状組成物に関する。
(1)タンパク質を3質量%以上含有する
(2)不溶性食物繊維を3質量%以上含有する
(3)湿量基準水分が11質量%以下である
(4)乾燥速度(105℃、5分間)が0.02g/s・m2以上である
(5)超音波処理を行った状態における固形状組成物水分散液中の粒子の50%積算径が5μm超600μm以下である
【0013】
[固形状組成物]
本発明において、固形状組成物とは、固形状食品組成物であり、具体的には、食用植物である乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上(以下、乾燥食材類ということもある)の可食部及び/又は不溶性食物繊維局在部位(特に非可食部)の粉末を含有する生地を、加熱処理によって水分を蒸発させ固形化した組成物である。より具体的には、焼き菓子類を指し、さらに具体的には、ビスケット、クッキー、クラッカー、カロリーバー(スティック、バー)、グラノーラ、乾パン、プレッツェル、パイ、カットパン、ショートブレッド等を指す。その形状や大きさは特に限定されるものではない。
また、これら加熱処理前の生地に細孔を開けたり、凹凸を施したりすることによって、加熱処理時における乾燥性や膨化を抑制してもよい。より具体的には、本発明の固形状組成物は、加圧された生地組成物が急激に減圧することで生地組成物中の水分が膨張することで製造される水蒸気膨化食品を含まない態様であっても良く、膨化前後で体積が4倍以上に増加する膨化食品を含まない態様であっても良く、膨化食品全般を含まない態様であっても良い。
また、加熱処理の条件としては、何ら限定されるものではなく、固形状組成物の生地から水分が蒸発し、湿量基準水分値、乾燥速度が一定値以下となるように調節でき、所望の食感や風味が得られる条件であれば、その加熱方式や加熱条件は問わず、適宜選択すればよい。具体的な加熱条件として例示するとすれば、加熱時間は、通常10分以上であればよいが、20分以上がより好ましい。また、加熱温度は、通常100℃以上であればよいが、105℃以上がより好ましい。さらには、100℃以上の加熱工程中に、200℃以上で加熱する工程を0.5分以上5分以内で含むことが好ましい。
尚、加熱処理して固形化する前の組成物を、生地組成物と呼ぶが、加熱処理前後の生地組成物と固形状組成物の間で、各組成物水分散液中の粒子の50%積算径は変わらない。
【0014】
[乾燥野菜類、乾燥穀類、又は乾燥果実類]
本発明における固形状組成物は、乾燥野菜類、乾燥穀類、及び乾燥果実類から選ばれる1種以上を含有することができる。固形状組成物中における前記乾燥食材類の含有量は、特に限定されるものではないが、乾燥質量換算で10質量%以上、さらには20質量%以上、さらには30質量%以上、さらには40質量%以上、さらには50質量%以上、さらには70質量%以上、さらには90質量%以上、さらには100質量%であることが好ましい。これらを適宜選択したり組み合わせたりすることによって、タンパク質含量や不溶性食物繊維含量を調節できる。
【0015】
野菜類の例としては、これらに限定されるものではないが、ダイコン、ニンジン、ルタバガ、パースニップ、カブ、ブラック・サルシファイ、レンコン、ビート(好適にはビーツ(ビートルート):ビートの根を食用とするために改良された品種)、クワイ、エシャロット、ニンニク、ラッキョウ、ユリネ、ケール、タマネギ、アスパラガス、ウド、キャベツ、レタス、ホウレンソウ、ハクサイ、アブラナ、コマツナ、チンゲンサイ、ニラ、ネギ、ノザワナ、フキ、フダンソウ(不断草、スイスチャード)、ミズナ、トマト、ナス、カボチャ、ピーマン、キュウリ、ミョウガ、カリフラワー、ブロッコリー、食用菊、ニガウリ、オクラ、アーティチョーク、ズッキーニ、てんさい、タイガーナッツ、ショウガ、シソ、ワサビ、パプリカ、ハーブ類(クレソン、コリアンダー、クウシンサイ、セロリ、タラゴン、チャイブ、チャービル、セージ、タイム、ローレル、パセリ、マスタードグリーン(からしな)、ヨモギ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、サボリー、レモングラス、ディル、ワサビ葉、山椒の葉、ステビア)、ワラビ、ゼンマイ、タケノコ等が挙げられる。中でも、ニンジン、カボチャ、トマト、パプリカ、キャベツ、ビート(好適にはビーツ(ビートルート))、タマネギ、ブロッコリー、アスパラガス、ホウレンソウ、ケール等が好ましく、さらには、ニンジン、カボチャ、キャベツ、ビート(好適にはビーツ(ビートルート))が特に好ましい。
【0016】
穀類の例としては、これらに限定されるものではないが、コーン(特にスイートコーンが好ましい)、コメ、コムギ、オオムギ、モロコシ、エンバク、ライコムギ、ライムギ、ソバ、フォニオ、キノア、ひえ、アワ、きび、ジャイアントコーン、サトウキビ、アマランサス等が挙げられる。中でも、コーン(特にスイートコーンが好ましい)、ジャイアントコーン等が好ましい。
【0017】
果実類の例としては、これらに限定されるものではないが、カリン、チュウゴクナシ(白梨、シナナシ)、ナシ、マルメロ、セイヨウカリン、ジューンベリー、シポーバ、リンゴ、アメリカンチェリー(ブラックチェリー、ダークチェリー)、アンズ(杏、杏子、アプリコット)、ウメ(梅)、サクランボ(桜桃、スイートチェリー)、スミミザクラ、スピノサスモモ、スモモ(李、酸桃)、モモ、イチョウ(銀杏)、クリ、アケビ(木通)、イチジク(無花果)、カキ、カシス(クロスグリ)、キイチゴ(木苺)、キウイフルーツ(キウイ)、グミ(頽子、胡頽子、茱萸)、クワの実(マルベリー、どどめ)、クランベリー(オオミツルコケモモ)、コケモモ(苔桃、岩桃、はまなし、おかまりんご)、ザクロ(柘榴、石榴)、サルナシ(猿梨、シラクチズル、コクワ)、シーバックソーン(サジー、ヒッポファエ、シーベリー)、スグリ(酢塊、グーズベリー)、ナツメ(棗)、ニワウメ(庭梅、こうめ、いくり)、ハスカップ(クロミノウグイスカグラ)、ビルベリー、フサスグリ(房酸塊、レッドカラント)、ブドウ(葡萄)、ブラックベリー、ブルーベリー、ポーポー(ポポー、ポウポウ、ポポウ)、マツブサ、ラズベリー、ユスラウメ、ミカン、キンカン、カラタチ、オリーブ、ビワ(枇杷)、ヤマモモ(山桃、楊梅)、羅漢果、トロピカルフルーツ類(マンゴー、マンゴスチン、パパイヤ、チェリモヤ、アテモヤ、バナナ、ドリアン、スターフルーツ、グァバ、パイナップル、アセロラ、パッションフルーツ、ドラゴンフルーツ、ライチ、エッグフルーツ等の熱帯果実)、イチゴ、スイカ、メロン、アボカド、ミラクルフルーツ、オレンジ、レモン、プルーン、ユズ、スダチ、グレープフルーツ、ダイダイ、シークワーサー等が挙げられる。中でも、柑橘類であることが好ましく、具体的には、オレンジ、レモン、ユズ等が挙げられる。
【0018】
[乾燥豆類]
また、本発明の固形状組成物は、乾燥豆類を含有することができる。固形状組成物中における前記乾燥豆類の含有量は、特に限定されるものではないが、乾燥質量換算で5質量%以上、さらには10質量%以上、さらには15質量%以上、さらには20質量%以上、さらには30質量%以上、さらには40質量%以上、さらには50質量%以上、さらには60質量%以上、さらには70質量%以上、さらには80質量%以上であることが好ましい。一方で、乾燥豆類の含有量の上限は、食味の観点から、乾燥質量換算で100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0019】
豆類の例としては、これらに限定されるものではないが、インゲンマメ(隠元豆)、キドニー・ビーン、赤インゲン、白インゲン、ブラック・ビーン、うずら豆、とら豆、ライマメ、ベニバナインゲン、エンドウ(例えば黄色エンドウ豆、白エンドウ豆、緑エンドウ豆、青エンドウ豆、特に種子を未熟な状態で鞘ごと収穫したもので、豆が緑色の外観を呈することを特徴とする、未熟の種子であるグリーンピースなど)、キマメ、緑豆、ササゲ、アズキ、ソラマメ、ダイズ(特にエダマメ)、ヒヨコマメ、レンズマメ、ヒラ豆、レンティル、ラッカセイ、ルピナス豆、グラスピー、イナゴマメ(キャロブ)、ネジレフサマメノキ、ヒロハフサマメノキ、コーヒー豆、カカオ豆、メキシコトビマメ等が挙げられる。尚、一部の可食部(エダマメ、グリーンピースなど)が野菜として取り扱われる食材についても、非可食部(鞘など)と合わさった植物全体の状態(ダイズ、エンドウなど)で豆類かどうかを判断することができる。中でも、エンドウ(特に種子を未熟な状態で鞘ごと収穫したもので、豆が緑色の外観を呈することを特徴とする、未熟の種子であるグリーンピース)、ダイズ(特に大豆を未熟な状態で鞘ごと収穫したもので、豆が緑色の外観を呈することを特徴とする、大豆の未熟種子であるエダマメ)、ソラマメ等が好ましい。
さらに、乾燥豆類のうち、種皮部分を有する豆類(ダイズ類やエンドウ類など)における粉末化した種皮部分(不溶性食物繊維局在部位)を含有することで風味(フレーバーリリース)が良好な固形状組成物となるため好ましい。乾燥豆類の粉末化した種皮部分と、可食部から種皮部分を除去した残分(子葉部分など)とは、それぞれ別の種類の豆類に由来するものであってもよいが、風味の統一性の観点から、同一種類の豆類に由来することが好ましく、さらには、同一個体の豆類に由来することがより好ましい。また、乾燥豆類の粉末化した種皮部分と可食部から種皮部分を除去した残分は、それぞれ別個に破砕したものを使用しても良く、種皮部分を有する乾燥豆類を丸ごと破砕したものを使用しても良く、他の破砕する食材(乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥果実類)と、乾燥豆類の種皮部分及び/又は可食部から種皮部分を除去した残分とを共に破砕したものを使用しても良い。また、特にエンドウ類の種皮を含有することが好ましい。
【0020】
本発明において、乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類、又は乾燥果実類は、上記の各種食用植物を乾燥処理して調製すればよい。乾燥方法としては、一般的に食品の乾燥に用いられる任意の方法を用いることができる。例としては、天日乾燥、陰干し、フリーズドライ、エアドライ(例えば熱風乾燥、流動層乾燥法、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥等)、加圧乾燥、減圧乾燥、マイクロウェーブドライ、油熱乾燥等が挙げられる。中でも、食材が本来有する色調や風味の変化の程度が小さく、食品以外の香り(こげ臭等)を制御できるという点から、エアドライ(例えば熱風乾燥、流動層乾燥法、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥等)又はフリーズドライによる方法が好ましい。また、乾燥食材類は、上記のように最初から乾燥食材類を調製して原料として用いてもよいが、未乾燥の野菜類等の食用植物を原料として用い、生地組成物を調製し、これを乾燥させることで、乾燥食材類としてもよい。尚、操作性の観点から、乾燥食材類を原料として用いることが好ましい。
【0021】
[乾燥食材類の可食部と不溶性食物繊維局在部位]
本発明における固形状組成物は、乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び/又は不溶性食物繊維局在部位(特に非可食部)の粉末を含有することで風味(フレーバーリリース)が良好な固形状組成物となるため好ましく、両者を共に含有することがさらに好ましい。固形状組成物中における前記乾燥食材類の不溶性食物繊維局在部位(特に非可食部)の含有量は、特に限定されるものではないが、固形状組成物全体に対する乾燥質量換算で1質量%以上90質量%以下であることが好ましい。これによって、固形状組成物中の可食部由来のタンパク質やその他風味成分の含量を調節することができ、不溶性食物繊維局在部位(特に非可食部)に多く含有される不溶性食物繊維や風味成分の含量を調節することができる。その効果の観点から、特には、前記乾燥野菜類又は乾燥果実類の含有量は、固形状組成物全体に対する乾燥質量換算で10質量%以上であることが好ましい。尚、本発明の固形状組成物は、食用植物の非可食部を含有する場合、人の摂食用途であることが好ましい。
本発明における不溶性食物繊維局在部位とは、食材全体において不溶性食物繊維が局在する部位、具体的には、食材における可食部よりも、高い不溶性食物繊維含有割合を有する部位を表し、乾燥状態において、より好ましくは可食部の1.1倍以上、さらに好ましくは1.2倍以上、さらに好ましくは1.3倍以上、さらに好ましくは1.4倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは1.6倍以上、さらに好ましくは1.7倍以上、さらに好ましくは1.8倍以上、さらに好ましくは1.9倍以上、最も好ましくは2.0倍以上の不溶性食物繊維含有割合を有する部位を表す。
また、不溶性食物繊維局在部位が乾燥質量換算で不溶性食物繊維含有割合が10質量%超、さらに好ましくは11質量%超、さらに好ましくは12質量%超、さらに好ましくは13質量%超、さらに好ましくは14質量%超、さらに好ましくは15質量%超、さらに好ましくは16質量%超、さらに好ましくは17質量%超、さらに好ましくは18質量%超、さらに好ましくは19質量%超、さらに好ましくは20質量%超であることが好ましい。本発明における不溶性食物繊維局在部位を含む不溶性食物繊維含有食材は、乾燥状態において、食材全体の合計質量に対する不溶性食物繊維局在部位の割合の下限としては、3質量%以上であることが好ましい。より好ましくは5質量%以上、さらには9質量%以上が好ましい。一方、上限は通常限定されないが、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらには50質量%以下としてもよい。また、本発明における不溶性食物繊維局在部位は、後述する食材の「可食部」の一部(例えば野菜類、穀類、豆類又は果実類の種皮部分、特には豆類の種皮部分)であっても「非可食部」であってもよいが、不溶性食物繊維局在部位が「非可食部」であることが好ましい。具体例を表1に示す。
【0022】
本発明において、食用植物(乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類又は乾燥果実類)の「非可食部」とは、食用植物の通常飲食に適さない部分や、通常の食習慣では廃棄される部分を表し、「可食部」とは、食用植物全体から廃棄部位(非可食部)を除いた部分を表す。特に厚い食物繊維層や、毛茸等を含有する食用植物の場合、厚い食物繊維層や、毛茸等を含有する部分は、摂食性や他の食品との相性が悪く、従来は喫食に用いられず廃棄される部分が多かったが、本発明ではこうした厚い食物繊維層や、毛茸等を含有する非可食部を好適に使用することができる。
【0023】
また、本発明に用いる食用植物(乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類又は乾燥果実類)において、これらの可食部及び非可食部はそれぞれ別の種類の食用植物に由来するものであってもよいが、風味の統一性の観点から、同一種類の食用植物に由来する可食部及び非可食部を含むことが好ましい。さらには、同一個体の食用植物に由来する可食部及び非可食部を含むことが好ましい。即ち、同一個体の食用植物に由来する可食部の一部又は全部と、非可食部の一部又は全部とを使用することで、斯かる食用植物を無駄なく利用すること、非可食部は食用植物が本来有する特徴的な香りが強いため非可食部をおいしく食べることが可能となる。
【0024】
食用植物の非可食部の例としては、前述の各種の食用植物の皮、種実、芯、搾り滓等が挙げられる。中でも、これらに限定されるものではないが、コーン(例としてスイートコーン等)、パプリカ、カボチャ、ビーツ、ブロッコリー、ホウレンソウ、ニンジン、ケール、ダイズ(特にエダマメ)、エンドウ、ソラマメ、トマト、米、タマネギ、キャベツ、りんご、ぶどう、さとうきび、柑橘類(例としてウンシュウミカン、ユズ等)等の皮、種実、芯、搾り滓等は、栄養が豊富に残存しているため、本発明に好適に使用することができる。食用植物の非可食部の具体例としては、これらに限定されるものではないが、コーン(例としてスイートコーン等)の包葉、めしべ及び穂軸(芯)、パプリカの種及びへた、カボチャの種及びわた、ビーツの皮、ブロッコリーの茎葉、ホウレンソウの株元、ニンジンの根端及び葉柄基部、ケールの葉柄基部、ダイズ(エダマメ)の鞘(さや)、エンドウの鞘(さや)、ソラマメの種皮及び鞘(さや)、トマトのへた、米(籾)の籾殻、タマネギの皮(保護葉)、底盤部及び頭部、キャベツの芯、りんごの芯、ぶどうの果皮及び種子、さとうきびの搾り滓、柑橘類(例としてウンシュウミカン、ユズ等)の皮、種及びわた等が挙げられる。尚、人体に有害な成分を人体に影響する程度含まないものが好ましい。
【0025】
尚、本発明に使用される食用植物における、非可食部の部位や比率は、その食品や食品の加工品を取り扱う当業者であれば、当然に理解することが可能である。例としては、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載の「廃棄部位」及び「廃棄率」を参照し、これらをそれぞれ非可食部の部位及び比率として扱うことができる。以下の表1に、食用植物の例と、それらについて日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載されている「廃棄部位」及び「廃棄率」(即ち非可食部の部位及び比率)を挙げる。
【0026】
【表1】
【0027】
[タンパク質]
本発明の固形状組成物は、タンパク質を乾燥質量換算で通常3質量%以上、食感付与の観点から好ましくは4質量%以上含有する。タンパク質の測定法としては、一般的なケルダール法を用い、全窒素をたんぱく質に由来するものとみなし、窒素・たんぱく質換算係数を乗じて換算する。詳細は日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアルに準ずればよい。また、タンパク質の含有量の上限は、食味の観点から、乾燥質量換算で60質量%以下、さらには50質量%以下が好ましい。
【0028】
[糖質]
本発明の固形状組成物は、糖質の含有量が一定割合以下であることがサクサク感向上の観点から好ましい。糖質の含有方法としては、食材等の原材料に由来するものでもよいが、別途1種又は2種以上の糖質を固形状組成物に添加してもよい。糖質を固形状組成物に添加する場合、糖質の種類としては、これらに限定されるものではないが、糖類(ブドウ糖、ショ糖(スクロース)、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖)、糖アルコール(キシリトール、エリスリトール、マルチトール)、澱粉、澱粉分解物が挙げられる。本発明の固形状組成物における糖質の含有量は、固形状組成物全体の単糖換算の合計含量として、40質量%未満であることで、サクサク感が感じられやすいため好ましい。中でも35質量%未満、さらには30質量%未満、とりわけ25%未満が最も好ましい。また、下限は特に限定されないが、1質量%以上である。
また、これらの糖類を含む植物由来の搾汁(果汁を含む)や樹液等の糖質含有食材、これらの精製物又はそれらの濃縮物も挙げられる。中でも、サクサク感が失われやすいため、糖質を水に溶解した状態で含有する食材(例えばデーツ果汁など)の含有量が30質量%未満、さらには25質量%未満、さらには20質量%未満、さらには15質量%未満であることが好ましい。
【0029】
[不溶性食物繊維]
本発明の固形状組成物は、不溶性食物繊維を乾燥質量換算で3質量%以上含有する。不溶性食物繊維を多く摂取する観点から、さらには6質量%以上、さらには7質量%以上、さらには8質量%以上、さらには10質量%以上であることが好ましい。その態様としては、特に不溶性食物繊維量が固形状組成物中に均質に分布していることが好ましい。すなわち、その由来となる前記乾燥食材があらかじめ粉砕されていればよいが、乾燥食材類を破砕せず使用する場合においては、不溶性食物繊維が固形状組成物内で局所的にしか効果を奏しないため、前記乾燥食材の5質量%水溶液の状態で4メッシュパス画分中に不溶性食物繊維が50質量%以上流出する程度に微細化されて固形状組成物中に均質化されていることが好ましい。不溶性食物繊維の測定法としては、一般的なプロスキー変法を用いる。詳細は日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアルに準ずればよい。また、不溶性食物繊維の含有量の上限は、食味の観点から、乾燥質量換算で70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0030】
尚、前記乾燥食材の粉砕の手段は特に限定されず、処理時の温度や圧力も何れであってもよい。粉砕処理の装置の例としては、ブレンダー、ミキサー、ミル機、混練機、粉砕機、解砕機、磨砕機等の機器類が挙げられるが、これらの何れであってもよく、乾式粉砕又は湿式粉砕の何れであってもよい。湿式粉砕の場合にあっては、これを乾燥させ原料として用いてもよいが、未乾燥の微細化した食用植物を原料として用い、固形状組成物を調製し、これを乾燥させることで、粉末状の食材類としてもよい。これら粉砕装置の例としては、例えば乾式ビーズミル、湿式ビーズミル、ボールミル(転動式、振動式等)等の媒体攪拌ミル、ジェットミル、高速回転型衝撃式ミル(ピンミル等)、ロールミル、ハンマーミル等を用いることができる。
【0031】
[湿量基準水分]
本発明の固形状組成物は、湿量基準水分が通常11質量%以下、好ましくは10.5質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。これによって、固形状組成物を乾いた状態に調節することができる。尚、固形状組成物中の湿量基準水分の由来は、固形状組成物の各種成分に由来するものであってもよいが、さらに水として添加するものであってもよい。本発明において、固形状又は生地組成物の湿量基準水分とは、固形状又は生地組成物の各種成分に由来する水分量と別途添加した水分量の合計量を意味し、日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアルに準じ、常圧加熱乾燥法で測定することができ、例えば一般的な赤外線水分計(例えばケット株式会社製の赤外線水分計FD660)を用いて乾燥温度105℃(WETモード)で、蒸発した水分質量の乾燥前の質量に対する割合を測定する。また、湿量基準水分の下限は、摂食しやすさの観点から0質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がより好ましい。
【0032】
[乾燥速度(105℃、5分間)]
本発明の固形状組成物は、乾燥速度(105℃、5分間)が0.02g/s・m2以上である。本発明の固形状組成物は、乾燥食材類(乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類又は乾燥果実類)の可食部と不溶性食物繊維局在部位(例えば乾燥豆類の粉末化した種皮部分、さらには非可食部)の粉末を含有する固形状組成物に対して加水処理を行った後に再度所定の乾燥処理を行うことで、可食部に多く含まれるタンパク質及び不溶性食物繊維局在部位に多く含まれる不溶性食物繊維の組み合わせが有する未知の属性による作用によって、低湿量基準水分下でも一定の乾燥速度を有する固形状組成物となり、これによって、フレーバーリリースが良好な風味特性を有するものとなる。従って、単なる乾燥食材類を含有する固形状組成物は、乾燥速度が本発明の規定を下回ると考えられる。
乾燥速度とは、単位時間・単位表面積当たりに蒸発する水の質量であり、本発明の乾燥速度は固形状又は生地組成物を乳鉢で破砕した後均一混合し、一定面積に厚さ5mmとなるようにまんべんなく積層し、加熱乾燥質量測定方式の乾燥減量法で105℃で5分間加熱処理した際の乾燥前後の重量差分から算出する。具体的には、加熱乾燥質量測定方式の乾燥減量法で測定可能な赤外線水分計(例えばケット株式会社製の赤外線水分計FD660)を用いて、半径5cmの試料皿を予備加熱した後、均一混合した固形状又は生地組成物を厚さ5mmとなるようにまんべんなく積層し、常圧下、105℃で5分間乾燥処理することで測定する。例えば、5分間で半径5cmの試料皿に円状に配置した固形状又は生地組成物から0.1gの水分が蒸発した場合、単位時間(5分間×60秒=300[s])、単位表面積(0.05m×0.05m×3.14=0.00785[m2])当たりに蒸発する水の質量(0.1g)から、乾燥速度(105℃、5分間)は0.042g/s・m2と算出できる。
乾燥速度(105℃、5分間)の上限は特に制限されるものではないが、通常0.55g/s・m2以下であればよく、さらには0.50g/s・m2以下、さらには0.45g/s・m2以下、中でも0.40g/s・m2以下、さらには0.35g/s・m2以下、さらには0.30g/s・m2以下、さらには0.25g/s・m2以下、さらには0.20g/s・m2以下、さらには0.15g/s・m2以下、さらには0.10g/s・m2以下であることが好ましい。また、乾燥速度(105℃、5分間)の下限は特に制限されるものではないが、好ましくは0.03g/s・m2以上、より好ましくは0.04g/s・m2以上であればよい。
【0033】
[粒子径(50%積算径、最大粒子径)]
本発明の固形状組成物、生地組成物の水分散液中の粒子の粒子径(擾乱後の50%積算径、擾乱前の最大粒子径など)測定時のサンプルは、特に指定がない限り、固形状組成物試料又は生地組成物1gを約80℃の蒸留水50gに浸漬し、5分程度静置し、その後、スパーテルでよく攪拌し、湯中に懸濁させ、目開き2.36mm、線形(Wire Dia.)1.0mm新JIS7.5メッシュの篩を通過した懸濁液(2質量%組成物水分散液)を用いる。
本発明の固形状組成物において、上記2質量%固形状又は生地組成物水分散液の擾乱後、即ち超音波処理を行った状態における固形状又は生地組成物水分散液中の粒子の粒子径の50%積算径は、5μm超600μm以下である。これによって、固形状組成物を、乾いた状態でありながら、硬すぎることなくサクサクとした食感とすることがより向上できる。さらに、本発明の2質量%固形状又は生地組成物水分散液の超音波処理を行った状態における50%積算径は、8μm以上、さらには10μm以上、さらには15μm以上、さらには20μm以上であることが好ましい。また、上限としては、500μm以下、さらには400μm以下、さらには300μm以下、さらには250μm以下、さらには200μm以下、さらには150μm以下、さらには100μm以下、さらには75μm以下であることがより好ましい。尚、50%積算径は、固形状又は生地組成物の粒子径分布をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側の粒子頻度%の累積値の割合と、小さい側の粒子頻度%の累積値の割合との比が、50:50となる粒子径として定義される。最大粒子径については、表2の132チャンネルのそれぞれにおける粒子頻度%を測定して得られた結果について、粒子頻度%が認められたチャンネルのうち、最も粒子径が大きいチャンネルの粒子径を最大粒子径として求めることができる。超音波処理を行った状態における50%積算径及び超音波処理を行わない状態における最大粒子径は、後述するレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。ここでいう「粒子径」とは、特に指定が無い限り全て体積基準で測定されたものを表す。
【0034】
本発明の固形状又は生地組成物の2質量%固形状又は生地組成物水分散液の擾乱後、即ち超音波処理を行った状態における50%積算径の測定条件は以下の条件で測定する。まず、測定時の溶媒は、後述する固形状又は生地組成物の測定時のサンプルの構造に影響を与え難い蒸留水を用いる。測定に使用されるレーザー回折式粒度分布測定装置としては、レーザー回折散乱法によって少なくとも0.02μmから2000μmの測定範囲を有するレーザー回折式粒度分布測定装置を用いる。例えばマイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3300 EX2システムを使用し、測定アプリケーションソフトウェアとしては、例えばDMSII(Data Management System version 2、マイクロトラック・ベル株式会社)を使用することができる。前記の測定装置及びソフトウェアを使用する場合、測定に際しては、同ソフトウェアの洗浄ボタンを押下して洗浄を実施したのち、同ソフトウェアのSetzeroボタンを押下してゼロ合わせを実施し、サンプルローディングでサンプルの濃度が適正範囲内に入るまでサンプルを直接投入すればよい。擾乱後のサンプル、即ち超音波処理を行ったサンプルを測定する場合、予め超音波処理を行ったサンプルを投入してもよく、サンプル投入後に前記の測定装置を用いて超音波処理を行い、続いて測定を行ってもよい。後者の場合、超音波処理を行っていないサンプルを投入し、サンプルローディングにて濃度を適正範囲内に調整した後、同ソフトの超音波処理ボタンを押下して超音波処理を行う。その後、3回の脱泡処理を行った上で、再度サンプルローディング処理を行い、濃度が依然として適正範囲であることを確認した後、速やかに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折した結果を測定値とする。本発明において「超音波処理」とは、特に指定が無い限り、測定サンプルに対して周波数40kHzの超音波を出力40Wにて3分間印加する処理を表す。測定時のパラメータとしては、例えば分布表示:体積、粒子屈折率:1.60、溶媒屈折率:1.333、測定上限(μm)=2000.00μm、測定下限(μm)=0.021μmとする。
【0035】
また、本発明の固形状又は生地組成物の超音波処理を行わない状態における固形状又は生地組成物水分散液中の粒子の最大粒子径は、上述した50%積算径と同様の測定条件において、2質量%固形状又は生地組成物水分散液への擾乱、すなわち超音波処理を行わないことで試料のチャンネル毎の粒子径分布を測定する。具体的には、後述の表2に記載した測定チャンネル毎の粒子径を規格として用いて測定し、各チャンネルに規定された粒子径以下で、且つ数字が一つ大きいチャンネルに規定された粒子径(測定範囲の最大チャンネルにおいては、測定下限粒子径)よりも大きい粒子の頻度を各チャンネル毎に測定し、測定範囲内の全チャンネルの合計頻度を分母として、各チャンネルの粒子頻度%を求め、測定して得られた結果から、最も粒子径が大きいチャンネルの粒子径を最大粒子径として測定する。尚、本発明の固形状又は生地組成物を構成する食品粉末同士が十分強固に結着している場合、超音波処理を行わない状態における最大粒子径が一定以上の粒子径となり、結着した食材粉末によって固形状又は生地組成物製造の過程で食用植物が本来有する好ましい風味が保持されることでフレーバーリリースが向上するため、超音波処理を行わない状態における最大粒子径は300μm以上であることが好ましく、350μm以上がより好ましく、400μm以上がさらに好ましく、450μm以上がさらに好ましく、500μm以上がさらに好ましく、600μm以上がさらに好ましい。
【0036】
また、本発明における固形状又は生地組成物の2質量%固形状又は生地組成物水分散液の超音波処理を行った状態における固形状又は生地組成物水分散液中の粒子の50%積算径を求める際には、チャンネル(CH)毎の粒子径分布を測定した上で、後述の表2に記載した測定チャンネル毎の粒子径を規格として用いて求める。具体的には、後記の表2の各チャンネルに規定された粒子径以下で、且つ数字が一つ大きいチャンネルに規定された粒子径(測定範囲の最大チャンネルにおいては、測定下限粒子径)よりも大きい粒子の頻度を、後記の表2のチャンネル毎に測定し、測定範囲内の全チャンネルの合計頻度を分母として、各チャンネルの粒子頻度%を求めることができる(これを「○○チャンネルの粒子頻度%」とも称する)。例えば、1チャンネルの粒子頻度%は、2000.00μm以下かつ1826.00μmより大きい粒子の頻度%を表す。
【0037】
【表2】
【0038】
[各歪率%における応力値の最小微分値]
本発明における微分値とは、テクスチャーアナライザーを使用して応力を測定する際に、下降する板状プランジャに加わる応力値差分(kN/m2)を歪率差分(%)で除することでの割合を表す。したがって微分値がマイナスの状態とは、プランジャの下降に伴って、プランジャに加わる応力が(一時的にでも)減少する傾向であることを表す。この特徴は、固形状組成物の表面付近から固形状組成物の内部にかけて非連続的な構造を有する固形状組成物に認められる。
すなわち、歪率30%以下における最小微分値の平均値が−900kN/m2%未満の固形状組成物は、固形状組成物の表面付近と固形状組成物の内部が非連続的な強度を有する固形状組成物であり、サクサクとした食感を有するため、好ましく、中でも−800kN/m2%未満、さらには−700kN/m2%未満、さらには−600kN/m2%未満、さらには−500kN/m2%未満、さらには−400kN/m2%未満、さらには−300kN/m2%未満、特には−200kN/m2%未満であることが好ましい。さらに、歪率30%以下における最小微分値が前記規定数値未満(具体的には−900kN/m2%未満、より好ましくは−800kN/m2%未満、さらには−700kN/m2%未満、さらには−600kN/m2%未満、さらには−500kN/m2%未満、さらには−400kN/m2%未満、中でも−300kN/m2%未満、特には−200kN/m2%未満)である領域が、固形状組成物表面全体の20%以上を占めることが好ましい。中でも30%以上、さらには40%以上、さらには50%以上、さらには60%以上、さらには70%以上、さらには80%以上、さらには90%以上、特には100%以上を占めることが好ましい。
歪率30%以下における最小微分値とは、測定時の固形状組成物の鉛直方向下部表面(底面)を100%、上部表面(天面)を0%とした場合に、固形状組成物上部から固形状組成物下部(内部)に向けて鉛直方向に30%の距離(歪率30%)までプランジャを侵入させながら連続的に微分値を測定した場合に得られる最小の微分値を表す。
また、固形状組成物表面に当該領域が占める割合を測定するためには、固形状組成物の表面を適当なサイズごと(測定中に組成物が崩壊しなければどのようなサイズでも良いが、より具体的には1cm2ごと)に区画して、各区画を測定し、それらの測定値を平均することで平均値を得る。また、均質な表面組成を有する固形状組成物においては、その表面構造を代表する部位を測定することでその領域全体の微分値とすることができる。
尚、本発明における固形状組成物の表面とは、固形状組成物が外気と直接接触する領域を表し、固形状組成物の鉛直下面を含む。
本発明における、歪率30%以下における最小微分値、及び歪率30%以下における最小微分値が−900kN/m2%未満である領域の測定方法としては、[方法1]テクスチャーアナライザー(株式会社山電社製、RE2−3305C)を使用して、断面積5mm2(縦1mm×横5mm)の板状プランジャにより、下降速度1mm/秒で品温20℃の固形状組成物の表面を鉛直方向に歪率30%まで押圧し、0.1秒間隔で応力(kN/m2)を連続的に測定し、歪率間における応力値差分(kN/m2)を歪率差分(%)で除することでから各歪率(%)における微分値(kN/m2%)を求める。微分値は0.1秒間隔で応力値を測定することで算出する。例えば、任意の測定時間T1秒における測定値(歪率Xi%、応力P1(kN/m2))とT1+0.1秒における測定値(歪率Xii%、応力P2(kN/m2))の場合、その応力差分P2−P1(kN/m2)を歪率差分Xii−Xi%で除することで、歪率Xi%(測定時間T1秒)における微分値を算出することができる。
【0039】
[油脂]
本発明の固形状組成物は、1種又は2種以上の油脂を含有していてもよい。2種以上の油脂を含有する場合は、2種以上の油脂の組合せやその比率は任意である。
油脂の種類としては、食用油脂、各種脂肪酸やそれらを原料とする食品などが挙げられるが、食用油脂を用いることが好ましい。食用油脂は、食材中に含まれる油脂でもよいが、食材とは別の食用油脂を添加する方が、食材とのなじみが良いため好ましい。尚、食材とは別の食用油脂を添加する場合は、斯かる食材とは別の食用油脂が、固形状組成物の全油脂分含量は、通常60質量%未満であればよいが、さらには50質量%未満、さらには40質量%未満、さらには35質量%未満、さらには30質量%未満、さらには25質量%未満、さらには20質量%未満、さらには15質量%未満、さらには10質量%未満であることが好ましい。
また、本発明の固形状組成物は固形状油脂を含有してもよく、その含有量の下限としては、前記全油脂分含量中の30質量%以上、さらには50質量%以上、さらには70質量%以上、さらには90質量%以上、さらには100質量%が好ましい。
これによって、固形状組成物を、乾いた状態でありながら、硬すぎることなくよりサクサクとした食感とすることができ、好ましい。
【0040】
食用油脂の具体例としては、ごま油、菜種油、高オレイン酸菜種油、大豆油、パーム油、綿実油、コーン油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、サフラワー油、オリーブ油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、香味油、ココナッツオイル、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、カカオバター、サラダ油、キャノーラ油、又はMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油、乳脂、牛脂などの動物性油脂などが挙げられるが、特に、ごま油、オリーブ油、菜種油、大豆油、ひまわり油、米油、ココナッツオイル、パーム油などの液体状の食用油脂が好ましく、風味の観点から、オリーブ油、ココナッツオイル、菜種油がより好ましい。
各種脂肪酸を原料とする食品の具体例としては、バター、マーガリン、ショートニング、生クリーム、豆乳クリーム(例えば不二製油株式会社の「濃久里夢(こくりーむ)」(登録商標))などが挙げられる。
尚、本発明において、全油脂分含量の測定方法としては、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)及び日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアルに記載の方法に準じた方法に準じ、クロロホルム・メタノール混液抽出法を用いる。
【0041】
[その他食材]
尚、本発明の固形状組成物には、本発明の作用効果を妨げない限りにおいて、前記の不溶性食物繊維含有食材に加えて、その他の食材を含有していてもよい。具体的には、レーザー回折式粒子径分布測定の測定対象とならない2000μm(2mm)より大きい食材や具材をいう。斯かるその他の食材としては、穀類のパフや乾燥種実類や乾燥果実類等が挙げられるが、いずれを用いてもよい。これらの食材は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。
尚、この場合、超音波処理を行った状態における50%積算径の測定に際しては、これら具材のうち、測定上限2000.00μm以上のものを除いてから測定する。
また、これらの食材はそのまま用いてもよく、各種の処理(例えば乾燥、加熱、灰汁抜き、皮むき、種実抜き、追熟、塩蔵、果皮加工等)を加えてから使用してもよい。
【0042】
さらに、本発明の固形状組成物は、上述の各種成分に加えて、1種又は2種以上のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例としては、調味料、食品添加物、栄養成分、結着剤等が挙げられる。
調味料、食品添加物等の例としては、醤油、味噌、アルコール類、食塩、糖類(例えばブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等)、糖アルコール(例えばキシリトール、エリスリトール、マルチトール等)、人工甘味料(例えばスクラロース、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK等)、ミネラル(例えば亜鉛、カリウム、カルシウム、クロム、セレン、鉄、銅、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、ヨウ素及びリン等)、香料、香辛料、pH調整剤(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸及び酢酸等)、デキストリン、シクロデキストリン、酸化防止剤(例えば茶抽出物、生コーヒー豆抽出物、クロロゲン酸、香辛料抽出物、カフェ酸、ローズマリー抽出物、ルチン、ケルセチン、ヤマモモ抽出物、ゴマ抽出物等)等、乳化剤(例えばグリセリン脂肪酸エステル、サポニン、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等)、着色料、増粘安定剤等が挙げられる。
栄養成分の例としては、ビタミン類(ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK及び葉酸等)、畜肉や乳、卵などが由来の動物性タンパク質、大豆や穀類などが由来の植物性タンパク質、脂質(α−リノレン酸、EPA、DHAなどのn−3系脂肪酸や、リノール酸やアラキドン酸などのn−6系脂肪酸等)、食物繊維、ポリフェノールなどの機能性成分等が挙げられる。
【0043】
ただし、本発明の固形状組成物は、前記食用植物が本来有する好ましい風味への影響及びアレルギーの虞の観点から、卵及び/又は乳を含有しないことが好ましく、グルテンを含有しないことがより好ましく、動物性食材を含まないことがさらに好ましい。
【0044】
さらに本発明には、下記(i)及び(ii)の段階を含む、乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び/又は不溶性食物繊維局在部位の粉末を含有する固形状組成物の製造方法も含まれる。
(i)乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の粉末を含有する生地組成物を、不溶性食物繊維の含有率が5質量%以上、超音波処理を行った状態における生地組成物水分散液中の粒子の50%積算径が5μm超600μm以下、湿量基準水分を15質量%以上となるように調整する段階。
(ii)前記(i)の生地組成物を加熱処理することで、湿量基準水分を4質量%以上に低下させ、固形化する段階。
(i)及び(ii)の段階の詳細は前述したとおりである。
【0045】
さらに、上記製造方法の(i)の段階において、生地組成物の乾燥速度を0.20g/s・m2(105℃、5分間)以上に調整することが好ましい。また、(i)の段階において、乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び不溶性食物繊維局在部位(例えば乾燥豆類の粉末化した種皮部分、さらには非可食部)の粉末を含有することで、フレーバーリリースが良好な固形状組成物となるためより好ましい。
【0046】
さらに、上記製造方法の(ii)の段階において、生地組成物の乾燥速度が0.20g/s・m2(105℃、5分間)未満となるまで加熱することが好ましい。尚、(ii)の段階における加熱処理時間は、通常10分以上であればよいが、20分以上がより好ましい。また、(ii)の段階における加熱処理温度は、通常100℃以上であればよいが、105℃以上がより好ましい。さらには、(ii)の段階における100℃以上の加熱処理工程中に、200℃以上で加熱する工程を0.5分以上5分以内で含むことがより好ましい。さらに、上記製造方法の(ii)の段階において、生地組成物の乾燥速度が0.02g/s・m2(105℃、5分間)以上となるまで加熱することで、フレーバーリリースが良好な固形状組成物となるためより好ましい。
【0047】
以上、詳述したように、乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び/又は不溶性食物繊維局在部位の粉末を含有する固形状組成物において、次の(1)から(5)を充足するように調整することで、本発明の効果が奏される。
(1)タンパク質を3質量%以上含有する
(2)不溶性食物繊維を3質量%以上含有する
(3)湿量基準水分が11質量%以下である
(4)乾燥速度(105℃、5分間)が0.02g/s・m2以上である
(5)超音波処理を行った状態における固形状組成物水分散液中の粒子の50%積算径が5μm超600μm以下である
【0048】
すなわち、乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び/又は不溶性食物繊維局在部位の粉末を含有させ、タンパク質及び不溶性食物繊維を一定量以上に含有させ、湿量基準水分と乾燥速度を一定範囲内になるように調節することによって、硬すぎることなく喫食性に優れながらも、乾いた良好なサクサク感を有する食感や好ましい原料由来の風味の付与(食用植物が本来有する好ましい風味の付与とフレーバーリリースの向上)した、固形状組成物が調製できる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
[固形状組成物の調製]
下記の表3、表4に示す材料を用いて、比較例1〜8及び試験例1〜25の固形状組成物を調製した。具体的に、野菜類の一種であるカボチャ、ニンジン、キャベツ、ビーツ(ビートルート)、果実類の一種であるオレンジの乾燥物については、少なくとも水分活性値が0.95以下になるまで乾燥処理した後粉末化した。穀類の一種であるコーンは、未乾燥の生の状態のままミキサーでペースト状とした。その後、一般的に飲食に供される部分(可食部。非可食部以外の部分)については、少なくとも水分活性値が0.95以下になるまで乾燥処理した後粉末化した。不溶性食物繊維局在部位(非可食部)については、未乾燥のペースト状態で使用した。豆類の一種である黄色エンドウマメ、大豆については、一般的に飲食に供される部分のうち、種皮部分(不溶性食物繊維局在部位)と種皮以外の残分(可食部)とを少なくとも水分活性値が0.95以下になるまでそれぞれ乾燥して粉末化した。尚、各食材の可食部として、一般的に飲食に供される部分(非可食部以外の部分)を用いると共に、一部の食材の不溶性食物繊維局在部位(非可食部)として、カボチャの種及びわた、ニンジンのへた、キャベツの芯、ビーツ(ビートルート)の皮、オレンジの果皮、コーンの芯、大豆の鞘、黄色エンドウマメの鞘をそれぞれ乾燥して粉末化して用いた。得られた乾燥物又は未乾燥ペーストに、その他食材として濃縮デーツ果汁(Brix75)、アーモンドペースト等や、油脂としてナタネ油(液状油)、カカオバター(固体脂)、ココナッツオイル(固体脂)等の材料を表3、表4に示す組成に従って適宜混合した後、厚さ5mm、縦10cm、横3cmの長さに成型し、表4に示す各条件で加熱処理を行った後、放冷して固形状組成物を得た。尚、加工前原料配合割合は、加熱処理後の固形状組成物を100質量%とした場合の各原料の配合割合(質量%)を表す。
【0051】
[各固形状組成物試料の成分含有量の測定]
各固形状組成物試料中の不溶性食物繊維含量はプロスキー変法を、タンパク質含量はケルダール法−窒素・たんぱく質換算法を、全油脂分含量はクロロホルム・メタノール混液抽出法を、湿量基準水分含量は常圧加熱乾燥法を用い、でんぷん含量はAOAC996.11の方法に従い、80%エタノール抽出処理により、測定値に影響する可溶性炭水化物(ぶどう糖、麦芽糖、マルトデキストリン等)を除去した方法を用い、日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアルに準じて測定した。
【0052】
[各固形状組成物試料の食材含有量の計算]
各固形状組成物試料中の食用植物の非可食部含量、野菜類・穀類・果実類の含量、豆類の含量は配合比から、それぞれにおける測定した湿量基準水分を差し引いて求めた。
【0053】
[各固形状又は生地組成物試料の乾燥速度(105℃、5分間)の測定]
各固形状又は生地組成物試料の乾燥速度(105℃、5分間)の測定は、加熱乾燥質量測定方式の乾燥減量法で測定可能な赤外線水分計(ケット株式会社製の赤外線水分計FD660)を用いて、半径5cmの試料皿を予備加熱した後、均一混合した固形状又は生地組成物を厚さ5mmとなるようにまんべんなく積層し、常圧下、105℃5分間乾燥処理することで測定した。
【0054】
[各固形状又は生地組成物試料の固形状又は生地組成物水分散液中の粒子の粒子径の測定]
各固形状又は生地組成物試料1gを約80℃の蒸留水50gに浸漬し、5分程度静置し、その後、スパーテルでよく攪拌し、湯中に懸濁させ、目開き2.36mm、線形(Wire Dia.)1.0mm新JIS7.5メッシュの篩を通過した2質量%固形状又は生地組成物水分散液を粒子径分布測定用サンプルとした。
レーザー回折式粒子径分布測定装置として、マイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3300 EX2システムを用い、各固形状又は生地組成物試料の粒子径分布を測定した。測定アプリケーションソフトウェアとしてはDMSII(Data Management System version 2、マイクロトラック・ベル株式会社)を用いた。測定時の溶媒を蒸留水とし、測定は、測定アプリケーションソフトウェアの洗浄ボタンを押下して洗浄を実施したのち、同ソフトのSetzeroボタンを押下してゼロ合わせを実施し、サンプルローディングで適正濃度範囲に入るまでサンプルを直接投入した。
擾乱を加えない、すなわち超音波処理を行わない状態における試料の測定は、試料投入後にサンプルローディング2回以内に試料濃度を適正範囲内に調整した後、直ちに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折測定を行って得られた結果を測定値とした。一方、擾乱を加えた、すなわち超音波処理を行った状態における試料(2質量%固形状又は生地組成物水分散液)の測定は、試料投入後にサンプルローディングにて試料濃度を適正範囲内に調整した後、同ソフトの超音波処理ボタンを押下して周波数40kHzの超音波を出力40Wにて、3分間印加した。その後、3回の脱泡処理を行った上で、再度サンプルローディング処理を行い、試料濃度が依然として適正範囲であることを確認した後、速やかに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折測定を行って得られた結果を測定値とした。測定条件は、分布表示:体積、粒子屈折率:1.60、溶媒屈折率:1.333、測定上限(μm)=2000.00μm、測定下限(μm)=0.021μmを用いた。
試料のチャンネル毎の粒子径分布を測定する際は、前述の表2に記載した測定チャンネル毎の粒子径を規格として用いて測定した。各チャンネルに規定された粒子径以下で、且つ数字が一つ大きいチャンネルに規定された粒子径(測定範囲の最大チャンネルにおいては、測定下限粒子径)よりも大きい粒子の頻度を各チャンネル毎に測定し、測定範囲内の全チャンネルの合計頻度を分母として、各チャンネルの粒子頻度%を求めた。具体的には以下132チャンネルのそれぞれにおける粒子頻度%を測定した。測定して得られた結果から、最も粒子径が大きいチャンネルの粒子径を最大粒子径とした。
【0055】
[固形状組成物試料の官能評価]
上記手順で得られた比較例1〜8及び試験例1〜25の固形状組成物試料について、以下の手順によりその官能評価を行った。
【0056】
以下に示す手順で選抜された訓練された官能検査員10名が、各試験例及び各比較例の固形状組成物試料について、その品質を評価する官能試験を行った。この官能試験では、「風味(フレーバーリリースの強弱)」、「食感(乾いたサクサクとした食感)」、及び「風味と食感の総合評価」の各項目について、以下の基準に従い、それぞれ5点満点で評価を行った。
【0057】
また、前記の何れの評価項目でも、事前に検査員全員で標準サンプルの評価を行い、評価基準の各スコアについて標準化を行った上で、10名によって客観性のある官能検査を行った。各評価項目の評価は、各項目の5段階の評点の中から、各検査員が自らの評価と最も近い数字をどれか一つ選択する方式で評価した。評価結果の集計は、10名のスコアの算術平均値から算出し、小数点以下は四捨五入した。
【0058】
<評価基準1:風味(フレーバーリリースの強弱)>
5:食用植物本来の好ましいフレーバーリリースが強く、優れる。
4:食用植物本来の好ましいフレーバーリリースがやや強く、やや優れる。
3:食用植物本来の好ましいフレーバーリリースは感じられ、許容範囲。
2:食用植物本来の好ましいフレーバーリリースがあまり感じられず、やや劣る。
1:食用植物本来の好ましいフレーバーリリースが感じられず、劣る。
【0059】
<評価基準2:食感(乾いたサクサクとした食感)>
5:好ましいサクサクとした食感が優れる。
4:好ましいサクサクとした食感がやや優れる。
3:好ましいサクサクとした食感は感じられ、許容範囲。
2:好ましいサクサクとした食感は弱く、やや劣る。
1:好ましいサクサクとした食感に感じられず、劣る。
【0060】
<評価基準3:風味と食感の総合評価>
5:風味と食感のバランスが良好で、喫食性に優れる。
4:風味と食感のバランスがやや良好で、喫食性にやや優れる。
3:風味と食感のバランスは喫食時において許容範囲。
2:風味と食感のバランスがやや悪く、喫食性にやや劣る。
1:風味と食感のバランスが悪く、喫食性に劣る。
【0061】
尚、官能検査員としては、下記A)〜C)の識別訓練を実施した上で、特に成績が優秀で、商品開発経験があり、食品の味や食感といった品質についての知識が豊富で、各官能検査項目に関して絶対評価を行うことが可能な検査員を選抜した。
【0062】
A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
C)メーカーA社醤油2つにメーカーB社醤油1つの計3つのサンプルからB社醤油を正確に識別する3点識別試験。
【0063】
[固形状組成物試料の解析・評価結果]
比較例1〜8及び試験例1〜25の固形状組成物試料の不溶性食物繊維成分含有量等の成分含量等、乾燥速度(105℃、5分間)、粒子径等の物性及び官能試験の評価結果を以下の表3、表4に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の不溶性食物繊維含有固形状組成物及びその製造法は、食品分野で簡便に幅広く使用することができ、極めて高い有用性を有する。
【要約】
不溶性食物繊維を多く含有しているにもかかわらず、硬すぎることなく喫食性に優れながらも、乾いた良好なサクサク感を有する食感や、好ましい原料由来の風味を有する固形状組成物を提供すること。
次の(1)から(5)を充足する、乾燥野菜類、乾燥穀類、乾燥豆類及び乾燥果実類から選ばれる1種以上の可食部及び/又は不溶性食物繊維局在部位の粉末を含有する固形状組成物。
(1)タンパク質を3質量%以上含有する
(2)不溶性食物繊維を3質量%以上含有する
(3)湿量基準水分が11質量%以下である
(4)乾燥速度(105℃、5分間)が0.02g/s・m2以上である
(5)超音波処理を行った状態における固形状組成物水分散液中の粒子の50%積算径が5μm超600μm以下である