(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792391
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】半導体集積回路装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20201116BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20201116BHJP
H03F 1/52 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
H01L27/04 H
H03F1/52 220
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-187159(P2016-187159)
(22)【出願日】2016年9月26日
(65)【公開番号】特開2018-56189(P2018-56189A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】能村 健一
【審査官】
岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−283182(JP,A)
【文献】
特開平10−200051(JP,A)
【文献】
特開平05−028759(JP,A)
【文献】
特開2016−115724(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0309594(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0172846(US,A1)
【文献】
米国特許第06353353(US,B1)
【文献】
米国特許第05383080(US,A)
【文献】
韓国公開特許第10−1998−0070469(KR,A)
【文献】
韓国公開特許第10−1993−0003381(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/04
H01L 21/822
H03F 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続された電源端子と、
接地に接続された接地端子と、
前記電源端子と前記接地端子の間に接続された内部回路と、
前記内部回路を前記電源端子に印加されるサージ電圧から保護するためのESD保護回路と、を備えた半導体集積回路装置であって、
前記ESD保護回路は、
前記電源端子と前記接地端子の間に接続されたESD保護素子と、
前記電源端子と前記接地端子の間に接続され、直列接続された抵抗及びキャパシタと、を有し、
前記電源端子から前記ESD保護回路を介して前記接地端子へ続く経路のインダクタンスと、前記ESD保護回路の両端子間の合成容量からなる共振回路の共振周波数が使用周波数帯域外となるように前記キャパシタの容量を選択し、
かつ、使用周波数における前記ESD保護素子のインピーダンスに対して、前記抵抗と前記キャパシタからなる直列回路のインピーダンスが大きくなり過ぎないように前記抵抗の値を選択したことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体集積回路装置であって、
前記内部回路は、高周波回路を含むことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の半導体集積回路装置であって、
前記ESD保護素子は、2つのPN接合ダイオードが向かい合わせに接続されたものであることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項4】
電源に接続された電源端子と、
接地に接続された接地端子と、
前記電源端子と前記接地端子の間に接続された内部回路と、
前記内部回路を前記電源端子に印加されるサージ電圧から保護するためのESD保護回路と、を備えた半導体集積回路装置であって、
前記ESD保護回路は、
前記電源端子に接続された第1のESD保護素子と、
前記第1のESD保護素子と前記接地端子の間に接続された第2のESD保護素子と、
前記第1のESD保護素子と前記第2のESD保護素子の接続点と前記接地端子の間に接続された抵抗と、を有し、
前記電源端子から前記ESD保護回路を介して前記接地端子へ続く経路のインダクタンスと、前記ESD保護回路の両端子間の合成容量からなる共振回路の共振周波数が使用周波数帯域外となるように前記第2のESD保護素子の寄生容量を選択したことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体集積回路装置であって、
前記内部回路は、高周波回路を含むことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の半導体集積回路装置であって、
前記第1のESD保護素子及び前記第2のESD保護素子は、それぞれ2つのPN接合ダイオードが向かい合わせに接続されたものであることを特徴とする半導体集積回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RF回路(高周波回路)を含む内部回路と、該内部回路をサージ電圧から保護するESD保護回路とを備えた半導体集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体集積回路装置は静電気に対して脆弱であるため、内部回路を電源端子等に印加されるサージ電圧から保護するためのESD(ElectroStatic Discharge)保護素子を設ける場合が多い。ESD保護素子は、電源端子等にサージ電圧が印加されたときに自身に電流を流すことで、保護対象の内部回路に過電流が流れることを防止する機能を有する。
【0003】
図6は、ESD保護素子にPN接合ダイオードを用いた従来の半導体集積回路装置の一例を示す回路図である。同図に示す半導体集積回路装置100は、電源5に接続された電源端子3と、接地に接続された接地端子4と、電源端子3と接地端子4の間に接続された内部回路6と、内部回路6を電源端子3に印加されるサージ電圧から保護するためのESD保護回路200と、を備える。内部回路6は、RF回路61及びRF回路61に対してバイアス設定等を行うDC回路62を含む。ESD保護回路200は、電源端子3と接地端子4の間に接続され、2つのPN接合ダイオードが向かい合わせに接続されたESD保護素子201を有する。
【0004】
図6に示すように、ESD保護素子201にPN接合ダイオードを用いた場合、PN接合ダイオードの両端子間に寄生容量が発生する。この寄生容量が後述するインダクタンスと共に共振回路(即ち、LC共振回路)を構成し、これが半導体集積回路装置100の使用周波数帯で不都合な事態を引き起こしてしまう。
【0005】
一般に、半導体集積回路装置では、各端子からワイヤーボンディングして半導体チップ内の複数の回路(上述したRF回路61やDC回路62等)と接続することが行われる。このため、半導体集積回路装置では、各端子へのワイヤーとともに、半導体チップ内外の配線がインダクタンスを持つことになる。
図6に示す半導体集積回路装置100では、電源端子3からESD保護回路200を介して接地端子4へ続く経路のワイヤー及び配線のインダクタンスをインダクタンス8,9で表している。
【0006】
半導体集積回路装置100のESD保護素子201の両端子間の寄生容量と、半導体集積回路装置100の電源端子3からESD保護回路200を介して接地端子4へ続く経路のワイヤー及び配線のインダクタンス8,9とにより、電源端子3と接地端子4との間に接続されたESD保護素子201は共振回路となる。この共振回路の共振周波数付近では電源端子3と接地端子4との間のインピーダンスが大きく変動する。
【0007】
半導体集積回路装置100では、内部回路6のRF回路61とDC回路62が完全に分離されていれば特に問題にはならないが、電源端子3や接地端子4の配線がRF回路61に接続されている場合や、RF回路61とDC回路62の距離が近く空間結合をする場合などは、前述のインピーダンス変動がRF回路61の特性に影響を与えてしまう。その影響とは、例えばRF回路61内の高周波増幅器(図示略)の接地端子のインピーダンスが高くなって発振を引き起こしたり、使用周波数帯域内でSパラメータが大きく変動する点が発生したりすることである。なお、この対策として、RF回路61とDC回路62を分離するために接地端子4を増やしたり、空間結合を防ぐために距離を広げたりするなどが考えられるが、いずれも回路規模の拡大に繋がるというデメリットがある。
【0008】
一方、特許文献1に記載された集積回路化高周波増幅器では、共振によるインピーダンス変動が発振を引き起こす対策として、共振の経路に抵抗を追加している。それにより抵抗の共振周波数付近での安定係数が高くなって発振を抑制している。特許文献1では、ESD保護素子の寄生容量では無く、半導体集積回路内部の接地容量と配線のインダクタンスによる共振を想定しているが、その解決策は
図6に示す従来の半導体集積回路装置100にも適用することができる。
【0009】
図7は、
図6に示す従来の半導体集積回路装置100に、特許文献1に記載された解決策を適用した半導体集積回路装置100Aを示す回路図である。同図に示すように、電源端子3と接地端子4の間に接続されたESD保護回路200Aは、ESD保護素子201と直列接続された抵抗202を有している。ESD保護素子201とインダクタンス8,9からからなる共振回路に抵抗202を接続することで共振回路のQ値が低下するので、共振周波数付近でのインピーダンスの変動が小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006-339837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述したような共振回路に抵抗202を接続する方法では、インピーダンスの変動は小さくなるが、それでも一定程度の変動が残るため、使用周波数帯域内でSパラメータが大きく変動することがなくなるものの、依然として変動は残ってしまう。また、接続した抵抗202はサージ電流が流れる経路上にあるため、ESD保護素子201により保護されないなどの課題があった。なお、この課題は、特に半導体集積回路装置の材料としてガリウムヒ素(GaAs)を用いた場合で、且つ高周波領域で用いた場合に顕著になる。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、使用周波数帯域でSパラメータの変動を小さくできるとともに、半導体集積回路装置内の保護対象となる全ての回路をサージ電圧から保護することができる半導体集積回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、電源に接続された電源端子と、接地に接続された接地端子と、前記電源端子と前記接地端子の間に接続された内部回路と、前記内部回路を前記電源端子に印加されるサージ電圧から保護するためのESD保護回路と、を備えた半導体集積回路装置であって、前記ESD保護回路は、前記電源端子と前記接地端子の間に接続されたESD保護素子と、前記電源端子と前記接地端子の間に接続され、直列接続された抵抗及びキャパシタと、を有し、前記電源端子から前記ESD保護回路を介して前記接地端子へ続く経路のインダクタンスと、前記ESD保護回路の両端子間の合成容量からなる共振回路の共振周波数が使用周波数帯域外となるように前記キャパシタの容量を選択し、かつ
、使用周波数における前記ESD保護素子のインピーダンスに対して、前記抵抗と前記キャパシタからなる直列回路のインピーダンスが大きくなり過ぎないように前記抵抗の値を選択したことを特徴とする半導体集積回路装置を提供する。
【0014】
また、本発明は、上記の半導体集積回路装置であって、前記内部回路は、高周波回路を含むことを特徴とする半導体集積回路装置を提供する。
【0015】
また、本発明は、上記の半導体集積回路装置であって、前記ESD保護素子は、2つのPN接合ダイオードが向かい合わせに接続されたものであることを特徴とする半導体集積回路装置を提供する。
【0016】
また、本発明は、電源に接続された電源端子と、接地に接続された接地端子と、前記電源端子と前記接地端子の間に接続された内部回路と、前記内部回路を前記電源端子に印加されるサージ電圧から保護するためのESD保護回路と、を備えた半導体集積回路装置であって、前記ESD保護回路は、前記電源端子に接続された第1のESD保護素子と、前記第1のESD保護素子と前記接地端子の間に接続された第2のESD保護素子と、前記第1のESD保護素子と前記第2のESD保護素子の接続点と前記接地端子の間に接続された抵抗と、を有し、前記電源端子から前記ESD保護回路を介して前記接地端子へ続く経路のインダクタンスと、前記ESD保護回路の両端子間の合成容量からなる共振回路の共振周波数が使用周波数帯域外となるように前記第2のESD保護素子の寄生容量を選択したことを特徴とする半導体集積回路装置を提供する。
【0017】
また、本発明は、上記の半導体集積回路装置であって、前記内部回路は、高周波回路を含むことを特徴とする半導体集積回路装置を提供する。
【0018】
また、本発明は、上記の半導体集積回路装置であって、前記第1のESD保護素子及び前記第2のESD保護素子は、それぞれ2つのPN接合ダイオードが向かい合わせに接続されたものであることを特徴とする半導体集積回路装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ワイヤー及び装置内外の配線が持つインダクタンスとESD保護素子の寄生容量からなる共振回路の共振周波数を使用周波数外に移動させることができる共に、共振のQ値を低下させることができるので、使用周波数帯域でSパラメータの変動を小さくできるとともに、半導体集積回路装置内の保護対象となる全ての回路をサージ電圧から保護することができる。この効果は、半導体集積回路装置の材料としてガリウムヒ素(GaAs)を用いた場合で、且つ高周波領域で用いた場合に顕著に現れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路装置の構成を示す回路図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路装置の反射特性と従来の半導体集積回路装置の反射特性を比較した図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路装置のESD保護回路と従来の半導体集積回路装置のESD保護回路のそれぞれを、RF回路として高周波増幅器を有する半導体集積回路装置に適用したときの通過特性を比較した図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路装置の構成を示す回路図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路装置の反射特性と従来の半導体集積回路装置の反射特性を比較した図である。
【
図6】ESD保護素子にPN接合ダイオードを用いた従来の半導体集積回路装置の一例を示す回路図である。
【
図7】
図6に示す従来の半導体集積回路装置に特許文献1に記載された解決策を適用した半導体集積回路装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る半導体集積回路装置を具体的に開示した実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路装置1の構成を示す回路図である。なお、
図1において前述した
図6に示した従来の半導体集積回路装置100と共通する素子については同一の符号を付している。また、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0023】
図1において、本実施形態に係る半導体集積回路装置1は、電源5に接続された電源端子3と、接地に接続された接地端子4と、電源端子3と接地端子4の間に接続された内部回路6と、内部回路6を電源端子3に印加されるサージ電圧から保護するためのESD保護回路2と、を備える。内部回路6は、RF回路61及びRF回路61に対してバイアス設定等を行うDC回路62を含む。ESD保護回路2は、電源端子3と接地端子4の間に接続されたESD保護素子10と、電源端子3と接地端子4の間に接続され、直列接続された抵抗11及びキャパシタ12と、を備える。
【0024】
ESD保護素子10は、2つのPN接合ダイオードが向かい合わせに接続されたものである。即ち、2つのPN接合ダイオードのカソード同士が接続されたものである。なお、2つのPN接合ダイオードのアノード同士が接続されたものであってもよく、また、単一のPN接合ダイオード(例えば、
図1における下側のPN接合ダイオードのみ)であってもよい。ESD保護回路2のキャパシタ12は、電源端子3からESD保護回路2を介して接地端子4へ続く経路のワイヤー及び配線のインダクタンス8,9と、ESD保護回路2の両端子間の合成容量(ESD保護素子10の両端子間に発生する寄生容量とキャパシタ12との合成容量)とからなる共振回路(即ち、LC共振回路)の共振周波数が使用周波数帯域外となる容量値を有する。また、ESD保護回路2の抵抗11は、電源端子3からESD保護回路2を介して接地端子4へ続く経路のワイヤー及び配線のインダクタンス8,9とESD保護回路2の両端子間の合成容量とからなる共振回路の共振によるSパラメータの変動が十分小さくなる抵抗値を有する。
【0025】
ESD保護回路2のESD保護素子10を電源端子3と接地端子4の間に接続したことで、電源端子3に印加されたサージ電圧により生じる電流は、ESD保護素子10を介して接地端子4に流れる。これにより、内部回路6と、ESD保護回路2の抵抗11及びキャパシタ12がサージ電圧から保護される。
【0026】
電源端子3から接地端子4を見たインピーダンスは、電源端子3からESD保護回路2を介して接地端子4へ続く経路のワイヤー及び配線のインダクタンス8,9とESD保護回路2の寄生容量とで構成される共振回路のインピーダンスになるため、特に共振周波数付近で大きく変動する。ここで、ESD保護回路2のキャパシタ12の容量を大きくすると、前記共振回路の共振周波数が低周波数に移動するので、使用周波数帯域外になるようにキャパシタ12の容量を選択する。
【0027】
また、ESD保護回路2の抵抗11によってESD保護回路2の寄生容量のQ値が低下し、ひいては前記共振回路のQ値が低下する。このとき抵抗11の値は、使用周波数におけるESD保護素子10のインピーダンスに対して、抵抗11とキャパシタ12からなる直列回路のインピーダンスが大きくなり過ぎないように選択する。即ち、前記共振回路の共振によるSパラメータの変動が十分小さくなるように抵抗11の抵抗値を選択する。
【0028】
図2は、電源端子3から接地端子4を見た反射特性を従来の半導体集積回路装置100と比較した図である。同図において、実線で示す曲線C1は、第1の実施形態に係る半導体集積回路装置1の反射特性であり、点線で示す曲線C2は、
図6に示す従来の半導体集積回路装置100の反射特性である。従来の半導体集積回路装置100の共振周波数(略5000MHz)と比較して、第1の実施形態に係る半導体集積回路装置1の共振周波数(略3000MHz)は低周波数であり、かつ周波数依存による変動が小さくなっている。
【0029】
使用周波数は4900MHz〜5900MHzであり、この使用周波数帯内に従来の半導体集積回路装置100の共振周波数が入っているが、第1の実施形態に係る半導体集積回路装置1の共振周波数は、従来の半導体集積回路装置100の共振周波数よりも低くなる。また、第1の実施形態に係る半導体集積回路装置1では、ESD保護回路2の抵抗11によって、共振回路のQ値が低くなる。
【0030】
なお、
図3は、第1の実施形態に係る半導体集積回路装置1のESD保護回路2と
図6に示す従来の半導体集積回路装置100のESD保護回路200のそれぞれを、RF回路として高周波増幅器を有する半導体集積回路装置に適用したときの通過特性を比較した図である。同図において、実線で示す曲線C3は、第1の実施形態に係る半導体集積回路装置1のESD保護回路2を適用したときの通過特性であり、点線で示す曲線C4は、
図6に示す従来の半導体集積回路装置100のESD保護回路200を適用したときの通過特性である。従来の半導体集積回路装置100のESD保護回路200では、使用周波数(4900MHz〜5900MHz)帯内においてSパラメータの変動が大きくなっているが、第1の実施形態に係る半導体集積回路装置1のESD保護回路2では、使用周波数帯より低周波数側でSパラメータに変動が生じているものの、その変動が小さくなっている。
【0031】
以上説明したように、第1の実施形態に係る半導体集積回路装置1によれば、電源端子3からESD保護回路2を介して接地端子4へ続く経路のワイヤー及び配線のインダクタンス8,9と、ESD保護回路2の両端子間の合成容量からなる共振回路の共振周波数(略3000MHz)を使用周波数帯(4900MHz〜5900MHz)より低周波数へ移動させる共に、共振のQ値を低下させるので、使用周波数帯域でSパラメータの変動を小さくできるとともに、半導体集積回路装置1内の保護対象となる全ての回路(RF回路61、DC回路62、抵抗11、キャパシタ12)をサージ電圧から保護することができる。この効果は、高周波領域で用いた場合で、半導体集積回路装置1の材料としてガリウムヒ素(GaAs)を用いた場合に顕著に現れる。
【0032】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路装置について説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路装置15の構成を示す回路図である。なお、
図4において前述した
図6に示した従来の半導体集積回路装置100及び第1の実施形態に係る半導体集積回路装置1と共通する素子については同一の符号を付している。また、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0033】
図4において、第2の実施形態に係る半導体集積回路装置15は、ESD保護回路16の構成が異なる以外、第1の実施形態に係る半導体集積回路装置1と同一の構成となっている。ESD保護回路16は、一端が電源端子3に接続された第1のESD保護素子10と、第1のESD保護素子10の他端と接地端子4の間に接続された第2のESD保護素子13と、第1のESD保護素子10と第2のESD保護素子13の接続点と接地端子4の間に接続された抵抗14と、を有する。第1のESD保護素子10及び第2のESD保護素子13は、それぞれ2つのPN接合ダイオードが向かい合わせに接続されたものである。即ち、第1のESD保護素子10及び第2のESD保護素子13は、それぞれ2つのPN接合ダイオードのカソード同士が接続されたものである。なお、それぞれ2つのPN接合ダイオードのアノード同士が接続されたものであってもよく、また、単一のPN接合ダイオードであってもよい。
【0034】
第2の実施形態に係る半導体集積回路装置15では、電源端子3からESD保護回路16を介して接地端子4へ続く経路のワイヤー及び配線のインダクタンス8,9とESD保護回路16の両端子間の寄生容量とからなる共振回路の共振周波数が使用周波数帯域外となるように、第2のESD保護素子13の寄生容量が選択されている。また、前記共振回路の共振によるSパラメータの変動が十分小さくなるように抵抗14の抵抗値が選択されている。
【0035】
ESD保護回路16の第1のESD保護素子10と第2のESD保護素子13を電源端子3と接地端子4の間に接続したことで、電源端子3に印加されたサージ電圧により生じる電流は、第1,第2のESD保護素子10,13を介して接地端子4に流れる。これにより、内部回路6と、ESD保護回路16の抵抗14がサージ電圧から保護される。
【0036】
電源端子3からESD保護回路16を介して接地端子4へ続く経路のワイヤー及び配線のインダクタンス8,9とESD保護回路16の寄生容量とが共振回路を構成するため、電源端子3から接地端子4を見たインピーダンスは、特にその共振周波数付近で大きく変動する。ここで、第2のESD保護素子13の寄生容量を小さくすると前記共振回路の共振周波数が高周波数に移動するため、使用周波数帯域外になるように第2のESD保護素子13の寄生容量を選択する。寄生容量を小さくする調整方法としては、ESD保護素子13のアノード幅を小さくする、あるいはESD保護素子の段数を増やすなどが考えられる。また、抵抗14によってESD保護回路16の寄生容量のQ値が低下し、ひいては前記共振回路のQ値が低下する。このとき抵抗14の値は、使用周波数における第2のESD保護素子13のインピーダンスに対して、小さくなり過ぎないように選択する。
【0037】
このように第2の実施形態に係る半導体集積回路装置15の共振周波数は、
図6に示す従来の半導体集積回路装置100の共振周波数よりも高くなる。また、第2の実施形態に係る半導体集積回路装置15では、ESD保護回路16の抵抗14によって、共振回路のQ値が低くなる。
【0038】
図5は、電源端子3から接地端子4を見た反射特性を従来の半導体集積回路装置100と比較した図である。同図において、実線で示す曲線C5は、第2の実施形態に係る半導体集積回路装置15の反射特性であり、点線で示す曲線C2は、
図6に示す従来の半導体集積回路装置100の反射特性である。従来の半導体集積回路装置100の共振周波数(略5000MHz)と比較して、第2の実施形態に係る半導体集積回路装置15の共振周波数(略6500MHz)は高周波数であり、かつ周波数依存による変動が小さくなっている。
【0039】
使用周波数は、4900MHz〜5900MHzであり、この使用周波数帯内に従来の半導体集積回路装置100の共振周波数が入っているが、第2の実施形態に係る半導体集積回路装置15の共振周波数は、従来の半導体集積回路装置100の共振周波数よりも高くなる。また、第2の実施形態に係る半導体集積回路装置15では、ESD保護回路16の抵抗14によって、共振回路のQ値が低くなる。
【0040】
以上説明したように、第2の実施形態に係る半導体集積回路装置15によれば、電源端子3からESD保護回路16を介して接地端子4へ続く経路のワイヤー及び配線のインダクタンス8,9と、ESD保護回路16の両端子間の寄生容量とからなる共振回路の共振周波数(略6500MHz)を使用周波数帯(4900MHz〜5900MHz)より高周波数へ移動させる共に、共振のQ値を低下させるので、使用周波数帯域でSパラメータの変動を小さくできるとともに、半導体集積回路装置15内の保護対象となる全ての回路(RF回路61、DC回路62、抵抗14)をサージ電圧から保護することができる。この効果は、高周波領域で用いた場合で、半導体集積回路装置15の材料としてガリウムヒ素(GaAs)を用いた場合に顕著に現れる。
【0041】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、高周波回路を含む内部回路と、該内部回路をサージ電圧から保護するESD保護回路とを備えた半導体集積回路装置に有用である。
【符号の説明】
【0043】
1,15:半導体集積回路装置
2,16:ESD保護回路
3:電源端子
4:接地端子
5:電源
6:内部回路
8,9:ワイヤー及び配線のインダクタンス
10:ESD保護素子(第1のESD保護素子)
11,14:抵抗
12:キャパシタ
13:第2のESD保護素子
61:RF回路
62:DC回路