(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第4ステップにおいては、前記清掃具本体が固定された前記線材を、当該線材の延びる方向に移動させた後、次の成形用に、前記成形型に新たな線材を配置する、請求項1に記載の歯間清掃具の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような製造方法では、コールドランナー方式が採用されており、清掃具本体の成形に加え、線材を固定した状態で、多量のランナー部が清掃具本体の周囲に成形されている。そのため、成形後に、線材を切断すると、線材とともに、線材に固定されたランナー部も、清掃具本体から切り離される。そして、ランナー部は清掃具本体と同じ樹脂材料で成形されているため、コスト低減のためには、これを再利用することも考えられる。しかしながら、このように多量のランナー部が生じるにも関わらず、ランナー部に線材が固定されていることから、ランナー部を樹脂材料として再利用するためには、線材をランナー部から分離しなければならず、再利用が困難であった。
【0005】
本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、コスト低減が可能な歯間清掃具の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歯間清掃具の製造方法は、所定間隔をおいて配置される一対の支持片、及び前記一対の支持片を連結し、手で把持可能なハンドル部、を有する清掃具本体を成形する少なくとも1つの第1キャビティを有し、前記一対の支持片の間に延びる少なくとも1つの線材を配置可能である、成形型を準備する第1ステップと、前記成形型に、前記線材を配置する第2ステップと、前記成形型に設けられたゲートから前記第1キャビティに、ホットランナー方式により樹脂材料を充填する第3ステップと、前記線材及び当該線材に固定された前記各清掃具本体を、前記成形型から離型する第4ステップと、を備えている。
【0007】
この構成によれば、ホットランナー方式により、樹脂材料をキャビティに充填するため、例えば、一般的なコールドランナー方式のように多量のランナー部が形成されないため、線材が固定されたことにより線材の除去が難しいため廃棄されていた樹脂材料の量を顕著に減少することができる。その結果、製造コストを大幅に低減することができる。また、コールドランナー方式では、ランナー部を冷却する時間が余分に生じるが、本発明においては、この時間を低減できるため、製造サイクルを向上することができる。
【0008】
上記歯間清掃具の製造方法においては、種々の方法で線材及び清掃具本体を成形型から離型させることができる。例えば、前記第4ステップでは、少なくとも前記線材を前記成形型から移動させることで、前記線材とともに当該線材に固定された前記各清掃具本体を、前記成形型から離型することができる。
【0009】
この構成によれば、1つの線材に少なくとも1つの清掃具本体が取り付けられているため、少なくとも線材を成形型から移動させることで、線材とともに、線材に固定された清掃具本体を容易に成形型から離型させることができる。したがって、上述したホットランナー方式と合わせると、廃棄される樹脂材料がほとんどなく、コストセービングを図ることが可能となる。
【0010】
あるいは、前記第4ステップに先立って、前記成形型の内部で、前記清掃具本体の各支持片の外側において、前記線材を切断するステップをさらに備えることができる。
【0011】
この構成によれば、成形型の内部で線材を切断することができるため、後に線材を切断する工程が不要になる。
【0012】
あるいは、前記成形型が、前記線材の少なくとも一方の端部側において取出部材を成形する第2キャビティをさらに備えるようにし、前記第3ステップでは、前記第1キャビティ及び前記第2キャビティに、ホットランナー方式により樹脂材料が充填され、前記第4ステップでは、前記取出部材を前記成形型から移動させることで、当該取出部材とともに、前記線材及び当該線材に固定された前記各清掃具本体を、前記成形型から離型することができる。
【0013】
この構成によれば、1つの線材に少なくとも1つの清掃具本体が取り付けられており、当該線材の少なくとも一方の端部に取出部材が成形されるため、取出部材を成形型から移動させることで、この取出部材とともに、線材、及び線材に固定された清掃具本体を容易に成形型から離型させることができる。このような取出部材は、少なくとも線材を固定できる程度の大きさであればよいため、従来例のランナー部のような大きさにする必要はない。そして、この取出部材には線材が固定されているため、再利用することは困難であるが、取出部材は必要最小限の大きさに小型化することができるため、これを廃棄したとしても、廃棄される樹脂材料を最小限に抑えることができる。したがって、結果的にコストセービングを図ることが可能となる。
【0014】
また、取出部材を移動させることで、線材と清掃具本体を任意の位置に移動させることができるため、製造の効率化を図ることができる。
【0015】
上記歯間清掃具の製造方法において取出部材を用いる場合は、前記取出部材の厚みを、前記清掃具本体の厚み以下とすることができる。これにより、取出部材の冷却時間を、清掃具本体よりも短くすることができ、製造のサイクルタイムが長くなるのを防止することができる。
【0016】
上記歯間清掃具の製造方法において取出部材を用いる場合は、前記取出部材の体積を、前記清掃具本体の体積以下とすることができる。これにより、取出部材の冷却時間を、清掃具本体よりも短くすることができ、製造のサイクルタイムが長くなるのを防止することができる。
【0017】
上記各歯間清掃具の製造方法のうち、線材を前記成形型から移動させることで、前記線材とともに当該線材に固定された前記各清掃具本体を、前記成形型から離型する方法、及び取出部材を用いる方法では、前記第4ステップにおいて、前記清掃具本体が固定された前記線材を、当該線材の延びる方向に移動させた後、次の成形用に、新たな線材を前記成形型に配置することができる。これにより、歯間清掃具の成形を効率的に行うことができる。
【0018】
上記歯間清掃具の製造方法において、取出部材を用いる場合には、前記第2キャビティを前記線材の両端に形成し、前記第3ステップにおいて、前記第1キャビティ及び前記両第2キャビティに樹脂材料を充填し、前記第4ステップにおいては、前記線材の両端に設けられた前記取出部材を、当該両取出部材間の距離を一定とした状態で前記成形型から移動させることにより、前記線材及び当該線材に固定された少なくとも1つの清掃具本体を、前記成形型から移動させ、前記両取出部材、前記線材、及び当該線材に固定された少なくとも1つの前記清掃具本体を、検査台に配置した後、検品を行う第5ステップをさらに備えることができる。
【0019】
これにより、両取出部材の間で、線材が延びた状態のままで、この線材に固定された清掃具本体を移動させることができる。そして、これらを、この状態のまま検査台に配置すれば、線材及び清掃具本体が整列された状態で検査台に配置できるため、検品を容易に且つ効率的に行うことができる。
【0020】
上記各歯間清掃具の製造方法においては、前記ゲートを、バルブによって開閉するバルブゲート方式、またはバルブを有さないオープンゲート方式のいずれであってもよい。但し、バルブゲート方式にすると、樹脂材料がバルブによって遮断されることで清掃具本体がゲートから切断されるため、清掃具本体から樹脂材料が糸引きのように延びるのを防止することができる。特に、本発明に係る歯間清掃具は、口腔内で使用するものであるため、樹脂材料が糸引きのようにならないことが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る歯間清掃具の製造方法によれば、コスト低減が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<A.第1実施形態>
以下、本発明に係る歯間清掃具の製造方法の第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では、まず、歯間清掃具の概要について説明した後、この歯間清掃具の製造方法について説明する。
【0024】
<1.歯間清掃具の概要>
以下、歯間清掃具の概要について、
図1〜
図3を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係る歯間清掃具の正面図、
図2は
図1のA−A線断面図、
図3は
図1のB−B線断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、
図1の図面内での方向を基準に説明を行う。また、ハンドル部については、
図1の左側を先端側、右側を後端側と称することがある。但し、本発明はこの方向の規定により発明が限定されるものではない。
【0025】
図1に示すように、この歯間清掃具は、樹脂製の清掃具本体10と、この清掃具本体10に取付けられ、歯間の歯垢を除去するための線材3と、を備えている。清掃具本体10は、棒状に延びるハンドル部1を備えており、このハンドル部1から一対の支持片21、22が所定間隔をおいて突出している。ここでは、ハンドル部1の端部から突出する支持片を第1支持片21と称し、これと平行に延びる支持片を第2支持片22と称する。そして、両支持片21,22の間には、上述した線材3が配置され、ハンドル部1と平行に配置されている。そして、線材3の両端部は、各支持片21,22にそれぞれ連結されている。以下、各部材について詳細に説明する。
【0026】
<2.清掃具本体>
支持片21、22及びハンドル部1は、種々の材料で形成することができるが、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料で形成することができる。このなかで、一般的に、ポリスチレンは収縮率が小さく、また、剛性が高いため、両支持片21、22の間で線材3を張るのに適している。
【0027】
清掃具本体10において、第2支持片22の基端部付近には、ゲート跡がハンドル部1の表面から突出しないよう円形の凹部25が形成されている。凹部25の径は、ゲートの当接跡の径よりも大きく形成されていれば良い。また、後述するようにバルブゲート式の成形型100を用いた場合には、凹部25内にバルブゲートの当接跡である環状の突部が形成されることがある。当該ゲートの当接跡の径は、通常0.8〜4mmであり、0.8〜2.5mmが好ましい。
【0028】
各支持片21、22は板状に形成されており、各支持片21、22の表面の名称について、以下では、
図1の紙面の手前を前面211,221、紙面の奥側を後面212,222、
図1の右側を右面213,223、左側を左面214,224と称することとする。また、各支持片21,22において、線材3が通過する箇所は、各支持片21,22の先端付近、つまり先端からの距離Lが2.9mm以上4mm以内が好ましく、2.9mm以上3.2mm以内がさらに好ましい。
【0029】
<3.線材>
次に、線材3について説明する。線材3は、1本のマルチフィラメントまたは複数のマルチフィラメント31を束ねたものである。以下では、特に、複数のマルチフィラメント31で線材を構成した場合について説明する。各マルチフィラメント31は、ナイロンにより形成された複数のモノフィラメントを撚ったものである。ナイロンは、摩擦係数がポリエチレンなどと比べて大きいため、歯垢の掻き取り効果が向上するという利点がある。なお、マルチフィラメント31は、モノフィラメントを撚らずに束にしたものであってもよい。
【0030】
各マルチフィラメント31の太さは、特には限定されないが、例えば、100〜250デニールとすることが好ましく、100〜160デニールであることがさらに好ましい。これは、100デニールよりも小さいと、当該マルチフィラメント31が各支持片21,22から離脱するおそれがあり、250デニールよりも大きいと歯間に挿入しにくくなる可能性がある。
【0031】
また、線材3を構成するマルチフィラメント31の数は、特には限定されないが、例えば、3〜7本にすることが好ましい。マルチフィラメント31の数を3本以上にすると、歯垢の掻き取り効果も向上する一方、7本以下にすると、歯間に入りやすくなり、操作性を向上させ、結果として歯垢の掻き取り効果を向上することができる。
【0032】
マルチフィラメント31を構成するモノフィラメントの数は、15〜120本であることが好ましく、30〜100本であることがさらに好ましく、50〜100本であることが特に好ましい。
【0033】
また、マルチフィラメント31の1m当たりの撚り数の上限としては、500回以下であることが好ましい。具体的には、300回以下であることが好ましく、200回以下であることがさらに好ましく、170回以下であることが特に好ましい。これは、次の理由による。すなわち、マルチフィラメント31の撚り数が多すぎると、マルチフィラメントが細くなりすぎるため、清掃効果が得られにくい可能性がある。また、前記マルチフィラメント31の1m当たりの撚り数の下限としては、撚られていなくてもよく特に限定されるものではないが、歯間清掃具の製造時に、モノフィラメントがばらついて広がりにくく製造しやすいという観点から、例えば、50回以上が好ましい。
【0034】
<4.線材と支持片の連結>
続いて、線材3と各支持片21、22との連結方法について説明する。
図1に示すように、線材3の両端部は、各支持片21、22を貫通している。具体的に説明すると、線材3の左端部は、第1支持片21の右面213を通過し、左面214から突出している。同様に、線材3の右端部は、第2支持片22の左面224を通過し、右面223から突出している。
【0035】
<5.歯間清掃具の製造方法>
次に、上記のように構成された歯間清掃具の製造方法について説明する。この歯間清掃具は、射出成形によって製造されるのであるが、まず、成形型について説明する。
【0036】
図4は成形型の固定型の平面図であり、
図5は
図4の成形型のC−C線断面図である。但し、
図5は固定型と可動型の両方を記載している。
図4及び
図5に示すように、成形型100は、いわゆるホットランナー方式のものであり、固定型100aと可動型100bとを備えている。そして、固定型100aと可動型100bとの当接面には、それぞれ、複数の清掃具本体10を成形するための複数の第1キャビティ(本実施形態では2個)101が形成されている。
【0037】
清掃具本体10に対応する複数の第1キャビティ101は、各清掃具本体10のハンドル部1と対応する部分(以下、ハンドルキャビティ106という)が、直線状に並ぶように配置されている。そして、この成形型100には、1本の線材3が延びるように配置される。この線材3は、各第1キャビティ101において、支持片21,22と対応する部分(以下、支持片キャビティ105という)の間を延びるように配置される。これにより、1本の線材3が4個の支持片キャビティ105を結ぶように配置される。このような,成形型100において、線材3が配置される位置を線材位置と称することとする。なお、図示を省略するが、可動型100bの第1キャビティ101内における線材位置以外の線材位置には、線材3を配置するための、溝が設けられている。
【0038】
固定型100aには、各キャビティ101に溶融された樹脂材料を供給するためのゲート110が設けられており、各ゲート110には、開閉可能なバルブ120が取り付けられている。より詳細に説明すると、各ゲート110は、断面円形に形成され、キャビティ101に近接するにしたがって径が小さくなる先端領域111を有している。そして、この先端領域111の開口を閉じるように円柱状のバルブ120が設けられている。各バルブ120は、ゲート110の延びる方向に進退可能となっており、バルブ120の先端が、先端領域111の開口と一致したときに、ゲート110が閉じられる。一方、バルブ120が先端領域111の開口から後退したときに、バルブ120の外周面と先端領域111の内壁面との隙間から樹脂材料が各キャビティ101への流れるようになっている。
【0039】
可動型100bは、固定型100aと近接離間するように構成されており、可動型100bが固定型100aに当接しているときに、各キャビティ101に樹脂材料が流され、所定の冷却時間を経た後、可動型100bが固定型100aから離間するようになっている。
【0040】
また、
図6に示すように、固定型100aと可動型100bとの間には、支持具6が配置されるようになっている。この支持具6は、板状に延びる本体部61と、この本体部61の両端、及びその間の第1キャビティ101に対応する位置にそれぞれ設けられた4個の吸着部材621,622と、を有している。ここでは本体部61の両端に設けられた吸着部材を第1吸着部材621、第1キャビティ101に対応する位置に設けられた吸着部材を第2吸着部材622と称することとする。そして、本体部61の中心付近には、図示を省略するロボットアームが取り付けられており、これによって、支持具6が移動可能となっている。また、両第1吸着部材621は、成形型100における第1キャビティ101よりも端部側に配置されており、本体部61が、固定型100aと可動型100bとの間に配置されたときに、各第1吸着部材621が両清掃具本体10よりも外側で線材3を吸着し、各第2吸着部材622が、それぞれ、清掃具本体10に吸着するようになっている。吸着部材62は、線材3及び清掃具本体10に吸着できる限り、その構成は特には限定されないが、例えば、エアを吸引することで、線材3や清掃具本体10に吸着されるようにすることができる。なお、線材3に対しては、第1吸着部材621の代わりに線材3を把持するような手段であってもよく、線材3を確実に固定でき、支持具6とともに移動できるのであれば、特には限定されない。第1吸着部材621の代わりに線材3を把持するような手段とする方が、線材3を把持して各清掃具本体10を可動型100bの第1キャビティ101から離間させやすいため、線材3を吸着するよりも好ましい。
【0041】
次に、歯間清掃具の製造方法について、
図7〜
図11を参照しつつ説明する。まず、
図7に示すように、可動型100bを固定型100aから離間させ、両者100a,100bの間に隙間を形成する。次に、これらの間に、成形型100の下方に配置された繰り出し装置(図示省略)から繰り出された線材3を配置し、線材3の、成形型100の上方側と下方側を、把持部材7により固定し、上述した線材位置に配置されるようにする。
【0042】
続いて、
図8に示すように、可動型100bを固定型100aに当接し、これらの間に線材3を挟む。その後、バルブ120を後退させてゲート110の開口を開き、溶融した樹脂材料を各キャビティ101に注入する。そして、樹脂材料の注入が完了すると、バルブ120を移動させてゲート110の開口を閉じる。その後、所定時間、樹脂材料を冷却すると、清掃具本体10の成形が完了する。
【0043】
これにより、線材3が両支持片21、22に埋め込まれた状態で一体化され、複数の清掃具本体10は、1つの線材3によって連結された状態となる。
【0044】
次に、可動型100bを固定型100aから離間させる。このとき、
図9に示すように、成形された各清掃具本体10は可動型100b側に配置される。そして、ロボットアームにより、支持具6を可動型100bと固定型100aとの間に配置し、各吸着部材621,622を、線材3及び各清掃具本体10に当接させる。そして、各吸着部材621,622を、線材3及び各清掃具本体10に吸着させた後、支持具6を可動型100bから離間させると同時に、可動型内部から突出するエジェクターピン(図示省略)により各清掃具本体10が、可動型100bの第1キャビティ101から離間する。これにより、両第1吸着部材621の間において、1本の線材3に複数の清掃具本体10が取り付けられた状態となる。続いて、
図10に示すように、成形型100の上方及び下方の両把持部材7による線材3の固定を解除し、線材3及び各清掃具本体10を吸着した状態で支持具6が成形型100の上方へ移動する。そして、
図11に示すように、両把持部材7により、再度線材3を固定した後、成形型100の上方の把持部材7と清掃具本体10の下方の第1吸着部材621との間で、ハサミなどの切断手段75により線材3を切断する。
【0045】
これに続いて、ロボットアームを移動させ、支持具6の向きを水平に延びるように変えた後、線材3及び両清掃具本体10を検査台8上に配置する。その後、
図12に示すように、吸着部材621,622を線材3及び両清掃具本体10から取り外した後、支持具6を成形型100の近傍まで移動する。一方、成形型100では、上述した
図7〜
図11の手順で次の清掃具本体10の成形が行われる。
【0046】
検査台8では、清掃具本体10や線材3の外観性状が検査される。このとき、検査台8上には、線材3と複数の清掃具本体10が整列した状態で配置されるため、検査を容易に行うことができる。そして、次の工程として、
図13に示すように、各清掃具本体10の第1支持片21の左面214側、及び第2支持片22の右面223側において、線材3をトムソン刃により切る。本実施形態においては、線材3を刃により切断しているが、線材3を切る手段90は、特には限定されず、例えば、火炎や加熱した刃物で焼き切ったり、遠赤外線などの熱光線の照射、あるいは電気放電によって焼き切ったりすることができる。これにより、線材3と清掃具本体10とが一体化された複数の歯間清掃具が形成される。
【0047】
<6.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
(1)1つの線材3に複数の清掃具本体10が取り付けられているため、線材3を成形型100から移動させることで、線材3とともに、これに固定された清掃具本体10を容易に成形型100から離型させることができる。したがって、次に説明するホットランナー方式と合わせると、無駄になる樹脂材料がほとんどなく、コストセービングを図ることが可能となる。
【0048】
(2)本実施形態に係る製造方法では、ホットランナー方式により、樹脂材料をキャビティ101に充填するため、例えば、一般的なコールドランナー方式のように、線材3が固定され、線材3との分離が難しく再利用が困難な状態のランナー部が多量に形成されないため、廃棄する樹脂材料の量を顕著に減少することができる。その結果、製造コストを大幅に低減することができる。また、コールドランナー方式では、ランナー部を冷却する時間が余分に生じるが、ホットランナー方式では、この時間を低減できるため、製造サイクルを向上することができる。
【0049】
(3)上記製造方法においては、バルブゲート方式を採用しているが、これにより樹脂材料の供給がバルブ120によって遮断されることで清掃具本体10がゲートから切断されるため、清掃具本体10から樹脂材料が糸引きのように延びるのを防止することができる。
【0050】
<B.第2実施形態>
次に、本発明に係る歯間清掃具の製造方法の第2実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では、第1実施形態と相違する点のみを説明するため、同一構成については同一符号を付して説明を行い、重複する構成については、説明を省略する。したがって、特に断りのない限り、第1実施形態で示した構成は、第2実施形態においても適用可能である。また、以下の説明では、第1実施形態で用いた図面も参照しつつ説明する。
【0051】
<1.歯間清掃具の製造方法>
図14は、本実施形態に係る成形型の固定型の平面図である。
図14に示すように、本実施形態に係る成形型100の固定型100aには、各支持片キャビティ105の外側(支持片キャビティ105間とは反対側)に、前記固定型100aと一体的に形成され、可動型100b側に突出した押圧部材108がそれぞれ配置されており、さらにその外側にカッタ85がそれぞれ配置されている。各押圧部材108は、固定型100aと可動型100bとが当接したとき、押圧部材108と固定型100aとの間で線材3を押圧するものである。そして、各カッタ85は、固定型100aと可動型100bとが当接したとき、押圧部材108によって押圧された線材3の両端を切断するものである。
【0052】
また、成形型100において、支持片キャビティ105間以外において線材3が配置されている部分107には、吸引口(図示省略)が形成されており、線材3が切断された後に、清掃具本体10から分離された線材3を吸引できるようになっている。
【0053】
さらに、支持具6については、
図15に示すように、第1実施形態と異なり、第1吸着部材621が設けられておらず、第2吸着部材622のみが設けられている。
【0054】
以上のような成形型100を用いると、次のように成形が行われる。すなわち、
図7に示すように、可動型100bを固定型100aから離間させ、両者100a,100bの間に隙間を形成する。次に、これらの間に、成形型100の下方に配置された繰り出し装置(図示省略)から繰り出された線材3を配置し、線材3の、成形型100の上方側と下方側を、把持部材7により固定し、上述した線材位置に配置されるようにする。
【0055】
続いて、
図8に示すように、可動型100bを固定型100aに当接し、これらの間に線材3を挟む。このとき、両支持片キャビティ105の外側で、線材3が押圧部材108によって押圧される。このとき、両支持片キャビティ105の外側では、切断された線材3の両端が、押圧部材108によって押圧されているため、線材3は緩まずに所定の張力が維持される。この状態で、上記と同様に樹脂材料を注入し、所定時間、樹脂材料を冷却すると、押圧部材108の外側でカッタ85により線材3の切断が行われ、清掃具本体10の成形が完了する。こうして、線材3が両支持片21、22に埋め込まれた状態で一体化され、成形型100の内部で清掃具本体10が完成する。なお、本実施形態においては、押圧部材108を設けているが、設けていなくてもよく、例えば、カッタ85のみでもよい。また、当該押圧部材108は、金型から出没自在に設けられていてもよい。
【0056】
次に、可動型100bを固定型100aから離間させるとともに、清掃具本体10から分離された線材3を吸引口から吸引する。これに続いて、
図15に示すように、ロボットアームにより、支持具6を可動型100bと固定型100aとの間に配置する。そして、各第2吸着部材622で清掃具本体10を吸着した後、支持具6を可動型100bから離間させると同時に、可動型100b内部から突出するエジェクターピン(図示省略)により清掃具本体10が、可動型100bの第1キャビティ101から離間する。その後、ロボットアームを移動させ、清掃具本体10を検査台8に配置し、第1実施形態と同様に、外観性状の検査を行う。
【0057】
<2.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、成形型100内で線材3を切断するため、後の工程で線材3を切断する工程が不要となる。また、清掃具本体10の離型時には、線材3を吸着する必要がなく、清掃具本体10のみを吸着すればよいため、支持具6の構成を簡易にすることができる。さらに、切断された線材3を成形型100において吸引できるため、後の工程で、切断された線材3を廃棄する工程が不要になる。また、本実施形態に係る製造方法では、ホットランナー方式により、樹脂材料をキャビティ101に充填するため、例えば、一般的なコールドランナー方式のように、線材3が固定され、線材3との分離が難しく再利用が困難な状態のランナー部が多量に形成されないため、廃棄する樹脂材料の量を顕著に減少することができる。その結果、製造コストを低減することができる。また、コールドランナー方式では、ランナー部を冷却する時間が余分に生じるが、ホットランナー方式では、この時間を低減できるため、製造サイクルを向上することができる。
【0058】
なお、本実施形態においては、成形型100で線材3を吸引して廃棄しているが、次のようにすることもできる。すなわち、
図16に示すように、第1キャビティ101の間に、線材3を廃棄するための廃棄部材を成形するための廃棄部材用キャビティ109が形成されている。この廃棄部材用キャビティ109は、不要な線材3が配置される箇所に形成されている。これにより、廃棄部材用キャビティ109に樹脂材料が充填されることで、線材3と一体化された廃棄部材が形成される。
【0059】
したがって、線材3が切断された後、可動型100bを固定型100aから離間し、エジェクターピン(図示省略)により廃棄部材を押圧すると、廃棄部材は線材3とともに、可動型100bから離間する。そして、廃棄部材及び線材3は、成形型100から落下し廃棄される。したがって、上述したような切断された線材3を吸引するための吸引口が不要になる。その後の工程は、上述したのと同じである。
【0060】
廃棄部材の大きさ、形状、厚みは特には限定されず、線材3と一体化して、成形型100から離型できるものであれば、特には限定されない。但し、廃棄する樹脂の量を減らし、且つ冷却時間を短縮するという観点から、当該廃棄部材の厚み及び体積は、清掃具本体10よりも小さいことが好ましく、例えば、当該廃棄部材の厚みは、0.1〜2mmとすることができ、0.1〜1mmであることが好ましい。また、当該廃棄部材の体積は、例えば、0.1〜1cm
3とすることができ、0.1〜0.5cm
3であることが好ましい。
【0061】
<C.第3実施形態>
次に、本発明に係る歯間清掃具の製造方法の第3実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では、第1実施形態と相違する点のみを説明するため、同一構成については同一符号を付して説明を行い、重複する構成については、説明を省略する。したがって、特に断りのない限り、第1実施形態で示した構成は、第3実施形態においても適用可能である。
【0062】
<1.歯間清掃具の製造方法>
まず、成形型について説明する。
図17は成形型の固定型の平面図であり、
図18は
図17の成形型のD−D線断面図である。但し、
図18は固定型と可動型の両方を記載している。
図17及び
図18に示すように、固定型100aと可動型100bとの当接面には、それぞれ、第1実施形態と同様の複数の第1キャビティ(本実施形態では2個)101と、後述する取出部材50を成形するための2個の第2キャビティ102とが形成されている。
【0063】
清掃具本体10に対応する複数の第1キャビティ101は、第1実施形態と同一構成であるが、線材3の両端に、取出部材50が成形される点が相違する。すなわち、この成形型100において、線材位置に配置される線材3の両端部には、上述したように、取出部材50を成形するための第2キャビティ102が形成されている。
【0064】
各取出部材50は、平面視矩形状の薄板状に形成されており、各取出部材50の内部を線材3が通過するように成形される。各取出部材50の表面には、円形状の凹部(図示省略)が形成されており、この凹部が成形型100のゲート110に対応している。また、各取出部材50の厚み(例えば、
図21における、取出部材50の左右方向の厚み)は、清掃具本体10の厚みよりも小さく、例えば、0.1〜2mmとすることができ、0.1〜1mmであることが好ましい。さらに、各取出部材50の体積は、清掃具本体10の体積よりも小さく、例えば、0.1〜1cm
3とすることができ、0.1〜0.5cm
3であることが好ましい。
【0065】
また、
図19に示すように、本実施形態で用いられる支持具6は、第1実施形態と同様の構成であるが、第1吸着部材621が、取出部材50を吸引する点が相違する。なお、本実施形態においては、清掃具本体10を安定的に可動型100bの第1キャビティ101から離間させるために、吸着部材621,622が取出部材50及び清掃具本体10の両方を吸着しているが、取出部材50のみを吸着できるように、第1吸着部材621のみを設けてもよい。
【0066】
次に、歯間清掃具の製造方法について、
図20〜
図24を参照しつつ説明する。まず、
図21に示すように、第1実施形態と同様に、可動型100bと固定型100aとの間に線材3を配置し、線材3の、成形型100の上方側と下方側を、把持部材7により固定する。
【0067】
続いて、
図21に示すように、可動型100bを固定型100aに当接し、これらの間に線材3を挟む。その後、第1実施形態と同様に、溶融した樹脂材料を各キャビティ101,102に注入し、所定時間、樹脂材料を冷却すると、取出部材50及び清掃具本体10の成形が完了する。
【0068】
これにより、線材3が両支持片21、22と一体化され、複数の清掃具本体10は、1つの線材3によって連結された状態となる。また、線材3の両端には、取出部材50が固定され、線材3と一体化されている。
【0069】
次に、可動型100bを固定型100aから離間させる。このとき、
図22に示すように、成形された各取出部材50及び清掃具本体10は可動型100b側に配置される。そして、ロボットアームにより、支持具6を可動型100bと固定型100aとの間に配置した後、各吸着部材621,622を、各取出部材50及び清掃具本体10に吸着させた後、支持具6を可動型100bから離間させると同時に、可動型内部から突出するエジェクターピン(図示省略)により各取出部材50及び清掃具本体10が、可動型100bの第1キャビティ101及び第2キャビティ102から離間する。続いて、
図23に示すように、成形型100の上方及び下方の両把持部材7による線材3の固定を解除し、両取出部材50及び清掃具本体10を吸着した状態で支持具6が成形型100の上方へ移動する。そして、
図24に示すように、両把持部材7により、再度線材3を固定した後、成形型100の上方の把持部材7と清掃具本体10の下方の取出部材50との間で、ハサミなどの切断手段75により線材3を切断する。
【0070】
これに続いて、第1実施形態と同様に、ロボットアームを移動させ、両取出部材50及び清掃具本体10を検査台8上に配置する。その後、第1実施形態と同様、
図12に示すように、吸着部材621,622を取出部材50及び清掃具本体10から取り外した後、支持具6を成形型100の近傍まで移動する。
【0071】
検査台8では、清掃具本体10や線材3の外観性状が検査される。このとき、検査台8上には、一対の取出部材50の間に線材3と複数の清掃具本体10が整列した状態で配置されるため、検査を容易に行うことができる。そして、第1実施形態と同様、
図13で示したように、線材を切断すると、線材3と清掃具本体10とが一体化された複数の歯間清掃具が形成される。
【0072】
<2.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、上記第1実施形態で得られる効果のほか、次の効果を得ることができる。
(1)1つの線材3に複数の清掃具本体10が取り付けられており、線材3の両端部に取出部材50が成形されるため、取出部材50を成形型100から移動させることで、これら取出部材50とともに、線材3、及び線材3に固定された清掃具本体10を容易に成形型100から離型させることができる。このような取出部材50は、少なくとも線材3を固定できる程度の大きさであればよいため、従来例のランナー部のような大きさにする必要はない。そして、取出部材50には線材3が固定されているため、再利用することはできないが、取出部材50は必要最小限の大きさに小型化することができるため、これを廃棄したとしても、無駄になる樹脂材料を最小限に抑えることができる。したがって、結果的にコストセービングを図ることが可能となる。また、取出部材50を両端部に設けることで、各清掃具本体10の第1支持片21の左面214側、及び第2支持片22の右面223側において線材3を切断する際に、安定的に複数の清掃具本体10を整列させることができるため、容易に線材3を切断することができる。また、取出部材50を設け、当該取出部材50を第1吸着部材621により吸着することで、線材3を直接吸着や把持する場合に比べて、容易に清掃具本体10を、可動型100bの第1キャビティ101から離間させることができる。
【0073】
(2)上記各歯間清掃具の製造方法においては、取出部材50の厚みを、清掃具本体10の厚み以下としたり、あるいは取出部材50の体積を、清掃具本体10の体積以下としている。そのため、取出部材50の冷却時間を、清掃具本体10よりも短くすることができる。その結果、製造のサイクルタイムが長くなるのを防止することができる。
【0074】
<D.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は、適宜組合せ可能である。
【0075】
上記実施形態では、線材3は、複数のマルチフィラメント31を束ねたものであったが、当該マルチフィラメント31は1本でもよい。
【0076】
上記実施形態では、線材3の両端部を各支持片21,22に固定しているが、線材3の抜け止めのために、線材3の両端部において、マルチフィラメント31の両端部を溶融させ、塊を形成してもよい。溶融方法としては、熱による溶着以外に、超音波など、種々の溶着を行うことも可能である。
【0077】
線材3は、複数のマルチフィラメント31を単に束ねただけであってもよいし、線材3を線材位置に配置する際にマルチフィラメント31のばらつきを抑えるという観点から、前記複数のマルチフィラメント31を撚っていてもよい。
【0078】
清掃具本体10の形状は、一対の支持片21,22とハンドル部1が設けられている限り、特には限定されない。例えば、清掃具本体10の各部位の厚みについては、上述したものに限定されず、適宜変更可能である。
【0079】
上記第3実施形態では、線材3の両端に取出部材50を設けているが、線材3の一方の端部にのみ取出部材50を設けることもできる。この場合でも、一の取出部材50及び清掃具本体10を引っ張って成形型100から離型した後、この取出部材50によって線材3及び清掃具本体10を吊り下げて移動させればよい。
【0080】
取出部材50の大きさ、形状は特には限定されない。厚みや体積は、清掃具本体10よりも小さいことが好ましいが、これは厳密ではなく、多少大きいものであっても許容することができる。
【0081】
上記各実施形態において、成形型100は、バルブゲート方式を採用しているが、オープンゲート方式を採用することもできる。
【0082】
上記各実施形態に係る製造方法においては、1つの成形型100において、1つの線材3が配置され、1列の取出部材50及び清掃具本体10が成形されるが、複数の線材3を配置し、複数列の取出部材50及び清掃具本体10が成形することもできる。
【0083】
上記各実施形態に係る製造方法において、成形型100に対する線材3の配置方法、離型方法は特には限定されず、上述したものは一例である。したがって、上記支持具6のような離型用の部材についても、適宜変更可能である。