(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態の説明の前に、基礎となる予備的事項について説明する。予備的事項の記載は、発明者の個人的な検討内容であり、公知技術ではない新規な技術内容を含む。
【0018】
図1及び
図2は予備的事項のキャップ部材の製造方法を説明するための図である。
【0019】
図1(a)に示すように、まず、天板部120の中央に開口部120aが設けられた円筒状の金属キャップ100を用意する。
図1(a)のキャップ本体100が上下反転してキャップ部材が構築されるため、便宜上、
図1(a)の状態の底板を天板部120とする。
【0020】
そして、
図1(b)に示すように、キャップ本体100の天板部120の内面にドーナツ型の低融点ガラス200を配置する。さらに、
図1(c)に示すように、低融点ガラス200の上に透明な窓ガラス300を配置する。
【0021】
次いで、
図2(a)に示すように、
図1(c)の構造体を溶融炉に配置し、加熱処理によって低融点ガラス200を溶融させる。これにより、溶融した低融点ガラス200によってキャップ本体100の天板部120に窓ガラス300が接着される。
【0022】
その結果、キャップ本体100の天板部120の開口部120aが窓ガラス300で閉塞されて気密封止される。
【0023】
このとき、
図2(b)の平面図に示すように、キャップ本体100の天板部120の内面が平坦な水平面となっているため、溶融した低融点ガラス200が天板部120の内面上から内側及び外側に流出する。このため、低融点ガラス200がキャップ本体100の開口部120a内にはみ出した状態となる。
【0024】
低融点ガラス200は透明ではなく、光の透過率も窓ガラス300よりかなり低いため、キャップ本体100の開口部120a内で低融点ガラス200が流出した部分はレーザ光の有効な通過領域として機能しなくなる。
【0025】
このため、キャップ本体100の開口部120aの有効径が設計スペックよりも実質的に小さくなり、半導体レーザ素子に必要とされる有効径が得られなくなる。よって、レーザ光の出力が低下したり、レーザ光のスポット径が小さくなったりするため、所望のレーザ光の特性が得られなくなる。
【0026】
以下に説明する実施形態のキャップ部材では、前述した不具合を解消することができる。
【0027】
(実施形態)
図3は実施形態のキャップ部材のキャップ本体を示す図、
図4は実施形態のキャップ部材を示す図、
図5〜
図12は実施形態のキャップ本体の製造方法を説明するための図である。
【0028】
また、
図13〜
図16は実施形態のキャップ部材の製造方法を説明するための図、
図17は実施形態の発光装置を示す図である。
【0029】
図3には、実施形態のキャップ部材のキャップ本体が示されている。
図3に示すように、実施形態のキャップ本体10は、円筒状の構造を有し、鉄(Fe)系の金属から形成される。鉄(Fe)系の金属としては、好適には、42アロイ(鉄(Fe)/ニッケル(Ni)合金)、又はコバール(鉄(Fe)/ニッケル(Ni)/コバルト(Co)合金)などが使用される。
【0030】
キャップ本体10は、内部が空洞になった筒状部12と、筒状部12の上端から内側に形成され、中央部に開口部14aが設けられた環状の天板部14と、筒状部12の下端から外側に突き出る環状のフランジ部16とから形成される。
【0031】
このように、天板部14は筒状部12の一端を覆い、中央部に開口部14aを備えている。
【0032】
天板部14は、開口部14aの開口端(側壁)が筒状部12の内側に入り込むように窪んでおり、天板部14の内面は、筒状部12と天板部14との繋り部Bから開口端にかけて平坦な傾斜面となっている。
【0033】
図3の断面図において、対向する天板部14の上面の延長線が交わって形成されるV字状形の角度θ1が130°〜160°の範囲に設定される。
【0034】
また、水平面HSからの天板部14の傾斜角度θ2は25°〜10°の範囲に設定される。
【0035】
また、天板部14が曲げ加工されることで生じる天板部14内での高さ方向の距離Aが0.1mm〜0.15mmになるように設定される。天板部14の高さ方向の距離Aは、天板部14の内面の筒状部12との繋り部Bの高さと天板部14の内面の先端の高さとの差分である。
【0036】
このようにして、キャップ本体10の天板部14の内面S1及び外面S2は、筒状部12との繋り部Bから先端に向けて上側から下側に傾斜する平坦な傾斜面となっている。天板部14の内面S1は、筒状部12との繋り部Bから先端側になるにつれて高さ位置が徐々に低くなっている。
【0037】
また、キャップ本体10のフランジ部16の下面に抵抗溶接用の環状の突起部16aが形成されている。
【0038】
後述するように、キャップ本体10は金属板が加工されて形成され、天板部14、筒状部12及びフランジ部16は、ほぼ同じ厚みで一体的に繋がって形成される。
【0039】
図4には、実施形態のキャップ部材が示されている。
図4に示すように、実施形態のキャップ部材1では、上記した
図3のキャップ本体10の天板部14の開口部14aの下側に透明な窓ガラス30が配置されている。窓ガラス30は低融点ガラス20によって天板部14の内面S1に接着されている。低融点ガラス20は、接着部材の好適な一例である。
【0040】
このようにして、キャップ本体10の天板部14の開口部14aが窓ガラス30及び低融点ガラス20によって閉塞されて気密封止されている。
【0041】
窓ガラスの30一面が、筒状部12の内側に突出する天板部14の先端に当接しており、
低融点ガラス30が天板部14の内面と窓ガラス30との間に設けられている。
【0042】
後述するキャップ部材の製造方法で説明するように、
図4のキャップ本体10が上下反転した状態で、キャップ本体10の天板部14の内面S1上にドーナツ状の低融点ガラス20を介して窓ガラス30が配置される。
【0043】
そして、加熱処理によって低融点ガラス20を溶融させて、窓ガラス30をキャップ本体10の天板部14の内面S1に接着する。
【0044】
図3のキャップ本体10が上下反転した状態では、キャップ本体10の天板部14の内面S1の先端の高さ位置は、筒状部12との繋り部Bの高さ位置より上側に配置される。
【0045】
このため、キャップ本体10の天板部14の内面S1に配置された低融点ガラス20が溶融する際に、溶融した低融点ガラス20は天板部14の筒状部12との繋り部Bに向けて流出する。
【0046】
また、低融点ガラス20が溶融する際に、窓ガラス30がキャップ本体10の天板部14に先端に当接するため、開口部14a側への低融点ガラス20の流出をせき止めることができる。
【0047】
あるいは、窓ガラス30がキャップ本体10の天板部14の先端に当接しなくても、窓ガラス30がキャップ本体10の先端に接近することで、低融点ガラス20の流動空間が狭められ、流動抵抗が増加し、開口部14a内への低融点ガラス20の流出を抑えることができる。
【0048】
このようにして、キャップ本体10の天板部14の内面S1と窓ガラス30の上面との間の空間から窓ガラス30の側面と筒状部12の内壁との間の空間に低融点ガラス20が流動して溜められる。
【0049】
あるいは、窓ガラス30の側面と筒状部12の内壁との間の空間に低融点ガラス20が流動せずに、空間が残されるようにしてもよい。
【0050】
以上のように、低融点ガラス20がキャップ本体10の天板部14の内面S1から天板部14の開口部14a内へ流出することが防止される。
【0051】
後述するように、
図4のキャップ部材1は発光装置に適用される。半導体レーザ素子からのレーザ光が窓ガラス30を透過して外部に出射されるときに所望の特性を得るためには、各半導体レーザ素子に応じた有効径Dが必要となる。
【0052】
このため、実施形態のキャップ本体10の開口部14aの径が半導体レーザ素子に必要とされる有効径Dになるように設計されている。
【0053】
本実施形態では、有効径Dで開口されたキャップ本体10の開口部14a内に不透明な低融点ガラス20が流出することが防止されるため、キャップ本体10の開口部14a内の全体に透明な窓ガラス30が配置される。
【0054】
このようにして、各半導体レーザ素子に応じて必要とされる有効径Dを確実に確保することができる。また、キャップ本体10の開口部14aを大きくして有効径Dをさらに大きくする要求に対しても、低融点ガラス20が開口部14a内に流出しないため、容易に対応することができる。
【0055】
次に、前述した
図3のキャップ本体10の第1の製造方法について説明する。
【0056】
図5(a)に示すように、まず、金属板11を用意する。金属板11は、42アロイやコバールなどの鉄(Fe)系の金属から形成され、その厚みは例えば0.1mm〜0.2mmである。
【0057】
次いで、
図5(b)に示すように、プレス加工により、金属板11を1次成形してへこみ部Cxを形成する。へこみ部Cxは平面視で円形に形成され、その深さは例えば1mm程度に設定される。
【0058】
さらに、
図5(c)に示すように、プレス加工により、金属板11のへこみ部Cxを2次成形して所望の深さのカップ状凹部材Cを得る。カップ状凹部材Cは、筒状部12と底板C2とを備え、底付きの円筒形状で形成される。
【0059】
カップ状凹部材Cの深さは、前述したキャップ本体10の高さに対応するように設定され、例えば、2mm〜3mm程度に設定される。
【0060】
1回の成形工程で形成できる凹部の深さには限界があるため、金属板11を2回に分けて成形してカップ状凹部材Cを形成することにより、金属板11を突き破ることなく、信頼性よくカップ状凹部材Cを形成することができる。
【0061】
続いて、
図6(a)に示すように、プレス加工により、カップ状凹部材Cの底板13の中央部を打ち抜いて開口部14aを形成する。これにより、カップ状凹部材Cから筒状部12とその下端に繋がって中央部に開口部14aが設けられた環状の天板部14とが得られる。
【0062】
図6(a)の状態では、天板部14は底板の一部となっているが、最終的に上下反転して使用されるため、便宜上、天板部14とする。
【0063】
次いで、
図6(b)に示すように、下型40と上型42とを用意する。下型40は
図6(a)の構造体の筒状部12の外形に対応する凹部40aを備えている、下型40の凹部40aの底部が円錐体になっており、円錐体の頂点を中心として下側に傾斜する傾斜面IS1が設けられている。
【0064】
下型40の凹部40aの底部の傾斜面IS1は、前述した
図3のキャップ本体10の傾斜した天板部14を形成するためのものである。水平面HSからの傾斜面IS1の傾斜角度θ3は、前述した
図3のキャップ本体10の天板部14の傾斜角度θ2と同一に設定される。
【0065】
また、上型42の外形は下型40の凹部40aに嵌るように調整されている。上型42の底面は、下型40の底部の円錐体に対応する円錐面となって、下型40の傾斜面IS1に対応する傾斜面IS2が設けている。
【0066】
上型42の下面の傾斜面IS2の水平面HSからの傾斜角度θ4は下型40の底部の傾斜面IS1の傾斜角度θ3と同一に設定される。
【0067】
そして、下型40の凹部40aに
図6(a)の金属板11の筒状部12及び天板部14を配置し、金属板11の筒状部12の内側に上型42を配置する。これにより、金属板11の筒状部12の内側の天板部14の下に下型40の傾斜面IS1が配置され、天板部14の上に上型42の傾斜面IS2が配置される。
【0068】
さらに、
図7に示すように、上型42を下型40側に押圧することにより、金属板11の筒状部12の内側の水平な天板部14が下型40の傾斜面IS1と上型42の傾斜面IS2とにより挟まれて曲げ加工される。
【0069】
これにより、天板部14が筒状部12との繋り部から先端に向かって上側に傾斜した形状に加工される。
【0070】
このようにして、中央部に開口部14aが設けられ、開口部14aの開口端が筒状部12の内側に入り込むように窪んだ環状の天板部14を形成する。これより、天板部14の内面が、筒状部12と天板部14との繋り部から開口端にかけて平坦な傾斜面となる。
【0071】
第1の製造方法では、カップ状凹部材Cの底板13の中央部に開口部14aを形成して天板部14を得た後に、天板部14を、開口部14aの開口端が筒状部12の内側に入り込むように窪ませる。
【0072】
その後に、下型40及び上型42から金属板11の筒状部12及び天板部14を取り外す。
【0073】
これにより、
図8(a)に示すように、金属板11に繋がる筒状部12とその下端に繋がる傾斜した天板部14とが得られる。さらに、プレス加工により、金属板11のフランジ部16になる領域に環状の突起部16aを形成する。
【0074】
その後に、
図8(b)に示すように、天板部14、筒状部12及びフランジ部16を含む個々の製品領域を金属板11から抜き落しする。これにより、前述した
図3のキャップ本体10が上下反転した状態で得られる。
【0075】
キャップ本体の第1の製造方法では、カップ状凹部材Cの天板部14の開口部14aを形成した後に、天板部14を上側に曲げ加工している。このため、
図8(b)に示すように、天板部14の開口部14aの側壁は、上端から下端に向かって外側から内側に傾斜する傾斜面となる。
【0076】
図8(b)を上下反転させた前述した
図3のキャップ本体10では、逆に、天板部14の開口部14aの側壁は、上端から下端に向かって内側から外側に傾斜する傾斜面となる。
【0077】
次に、前述した
図3のキャップ本体10の第2の製造方法について説明する。第2の製造方法が前述した第1の製造方法と異なる点は、天板部に開口部を形成する前に、天板部になる領域を曲げ加工して傾斜させることにある。第1の製造方法と同じ工程については、その詳しい説明を省略する。
【0078】
図9(a)に示すように、まず、前述した
図5(a)〜
図5(c)の工程を同様な工程を遂行することにより、金属板11に筒状部12及び底板13を備えたカップ状凹部材Cを形成する。
【0079】
次いで、
図9(b)に示すように、下型40及び上型42を用意する。第2の製造方法では、下型40の凹部40aの底面の中央部が平坦な水平面HS1となっており、底面の周縁部が傾斜面IS1となっている。水平面HS1の平面サイズは、前述した
図3の天板部14の開口部14aの平面サイズに対応している。
【0080】
また、下型40の底面の周縁部の傾斜面IS1の傾斜角度は、前述した
図6(b)の下型40の傾斜面IS1の傾斜角度θ3と同一である。
【0081】
上型42の下面の中央部には、下型40の凹部40aの水平面HS1に対応する水平面HS2が配置されている。また同様に、上型42の下面の周縁部に、下型40の傾斜面IS1と同じ傾斜角度を有する傾斜面IS2が配置されている。
【0082】
そして、下型40の凹部40aに
図9(a)の金属板11のカップ状凹部材Cを配置し、カップ状凹部材Cの内側に上型42を配置する。
【0083】
これにより、カップ状凹部材Cの底板13の中央部に、下型40の水平面HS1と上型42の水平面HS2とが配置される。また、カップ状凹部材Cの底板13の周縁部に、下型40の傾斜面IS1と上型42の傾斜面IS2とが配置される。
【0084】
カップ状凹部材Cの底板13の周縁部が天板部14になる領域であり、カップ状凹部材Cの底板13の中央部が天板部14の開口部14aが配置される領域である。
【0085】
さらに、
図10に示すように、上型42を下型40側に押圧することにより、カップ状凹部材Cの底板13の周縁部が下型40の傾斜面IS1と上型42の傾斜面IS2とにより挟まれて曲げ加工される。
【0086】
これにより、カップ状凹部材Cの底板13の周縁部が筒状部12との繋り部から内側に向かって上側に傾斜した形状に加工される。
【0087】
このとき、カップ状凹部材Cの底板13の中央部は、下型40の水平面HS1と上型42の水平面HS2とで挟まれるため、水平面のままの状態となる。
【0088】
このようにして、天板部14になるカップ状凹部材Cの底板13の周縁部を内側に向けて上側に傾斜するように曲げ加工する。
【0089】
第2の製造方法では、カップ状凹部材Cの底板13に開口部14aを形成する前に、底板13を、底板13の中央部が筒状部12の内側に入り込むように窪ませる。
【0090】
その後に、下型40及び上型42から金属板11のカップ状凹部材Cを取り外す。
【0091】
次いで、
図11に示すように、下型40及び上型42を用意する。下型40には、金属板11のカップ状凹部材Cの外形に対応する凹部40aが設けられている。さらに、下型40には、凹部40aの底部の中央部に開口部40xが設けられている。
【0092】
下型40の凹部40aの底面の周縁部は、上記した
図10で曲げ加工されたカップ状凹部材Cの底板13の周縁部の傾斜に対応する傾斜面IS3となっている。
【0093】
下型40の開口部40xは、天板部14の開口部14aが配置されるカップ状凹部材Cの底板13(
図10)の中央部に対応して配置される。
【0094】
上型42は、ポンチ44と中央部に開口部46aが設けられた押え部材46とを備え、押え部材46の開口部46aにポンチ44が挿入されている。押え部材46の下面が下型40の凹部42aの底面の傾斜面IS3に対応する傾斜面IS4となっている。
【0095】
そして、上記した
図10で曲げ加工された金属板11のカップ状凹部材Cを下型40の凹部40xの上に配置する。さらに、カップ状凹部材Cの底板13(
図10)の周縁部を押え部材46で押さえた状態で、ポンチ44でカップ状凹部材Cの底板13の中央部を打ち抜く。
【0096】
その後に、下型40及び上型42から金属板11のカップ状凹部材Cを取り外す。
【0097】
これにより、
図12(a)に示すように、金属板11に繋がる筒状部12とその下端に繋がる天板部14が得られる。天板部14は中央部に開口部14aが設けられ、筒状部12との繋り部Bから先端に向かって上側に傾斜した形状で得られる。
【0098】
さらに、プレス加工により、金属板11のフランジ部16になる領域に環状の突起部16aを形成する。
【0099】
その後に、
図12(b)に示すように、天板部14、筒状部12及びフランジ部16を含む個々の製品領域を金属板11から抜き落しする。これにより、前述した
図3のキャップ本体10が上下反転した状態で得られる。
【0100】
キャップ本体の第2の製造方法では、カップ状凹部材Cの底板13の天板部14になる領域を曲げ加工した後に、底板13の中央部に開口部14aを形成するため、天板部14の開口部14aの側壁が垂直面となって形成される。
【0101】
以上のように、本実施形態のキャップ部材の製造方法では、まず、金属板11を加工して、筒状部12と底板13とを備えたカップ状凹部材Cを形成する。その後に、カップ状凹部材Cの底板13を加工して、中央部に開口部14aが設けられた環状の天板部14を、筒状部12との繋り部から先端に向けて上側に傾斜するように形成する。
【0102】
カップ状凹部材Cの底板13の中央部に開口部14aを形成した後に、天板部14になる底板13の周縁部を曲げ加工して傾斜させてもよい。あるいは、カップ状凹部材Cの底板13の天板部14になる周縁部を曲げ加工して傾斜させた後に、底板13の中央部に開口部14aを形成してもよい。
【0103】
次に、キャップ本体10に低融点ガラスによって窓ガラスを接着する方法について説明する。
図13(a)に示すように、前述した
図8(b)で得られたキャップ本体10を用意する。
【0104】
図13(b)の平面図を加えて参照すると、キャップ本体10は平面視で円形であり、筒状部12の一端に内側に延在する環状の天板部14が繋がって形成されている。天板部14の中央部に開口部14aが設けられている。また、筒状部12の他端に外側に延在する環状のフランジ部16が繋がって形成されている。
【0105】
次いで、
図14(a)に示すように、キャップ本体10の天板部14の内面に低融点ガラス20を配置する。
図14(b)の平面図を加えて参照すると、低融点ガラス20はドーナツ型で形成され、キャップ本体10の天板部14の内面上の外側の位置に配置される。
【0106】
続いて、
図15(a)に示すように、キャップ本体10の天板部14上に配置された低融点ガラス20の上に透明な窓ガラス30を配置する。
【0107】
図15(b)の平面図に示すように、好適には、窓ガラス30は平面視で正六角形状を有する。窓ガラス30は円形などの各種の形状を採用できるが、大型ガラス基板を切断して個々の窓ガラス30を得る際に正六角形状は加工しやすいため好ましい。
【0108】
次いで、
図16(a)に示すように、
図15(a)の構造体を溶融炉(不図示)に配置し、500℃程度の温度で加熱処置を行う。
【0109】
これにより、低融点ガラス20が溶融し、窓ガラス30の重みによって低融点ガラス20が濡れ広がる。このとき、キャップ本体10の天板部14の内面S1は、先端から筒状部12との繋り部Bに向けて下側に傾斜する傾斜面ISとなっている。
【0110】
このため、溶融した低融点ガラス20は天板部14の内面S1上から開口部14a側には流れにくく、天板部14の内面S1上から筒状部12との繋り部B側に流れるようになる。また、低融点ガラス20が溶融する際にキャップ本体10の天板部14の先端に窓ガラス30の下面が当接する。これにより、天板部14の開口部14a側への低融点ガラス20の流出をせき止めることができる。
【0111】
あるいは、窓ガラス30がキャップ本体10の天板部14の先端に当接しなくても、窓ガラス30がキャップ本体10の先端に接近することで、低融点ガラス20の流動空間が狭められ、流動抵抗が増加し、開口部14a内への低融点ガラス20の流出を抑えることができる。
【0112】
このようにして、低融点ガラス20は、天板部14の内面S1と窓ガラス30の下面との空間、及び筒状部12の内壁と窓ガラス30の側面との空間に流動してそれらの空間に溜められる。天板部14の開口部14a内には、不透明な低融点ガラス20が流れ込まないため、天板部14の開口部14aの全体をレーザ光の有効径Dとすることができ、有効径Dを大きく確保することができる。
【0113】
低融点ガラス20は窓ガラス30よりも低い融点を有する。例えば、低融点ガラス20の融点は500℃程度であり、窓ガラス30の融点は730℃程度である。接着部材として低融点ガラス20を使用することにより、窓ガラス30をキャップ本体10の天板部14に気密性よく接着することができる。
【0114】
本願発明者は、本実施形態のキャップ本体10を実際に作成し、上記した方法と同様な方法でキャップ本体10の天板部14に低融点ガラス20によって窓ガラス30を接着した。このとき、前述した
図3の天板部14内の高さ方向の距離Aが0.13mm程度になるように、天板部14を曲げ加工した。
【0115】
その結果によれば、天板部14の開口部14a内への低融点ガラス30の流出は発生せず、有効径Dを確実に確保できることが実際に確認された。
【0116】
次に、
図4のキャップ部材1を備えた発光装置について説明する。
【0117】
図17に示すように、発光装置2はステム50を備えている。ステム50は、円形状のアイレット52とその上に配置された放熱部54から形成される。ステム50はその全体にわたって鉄(Fe)から形成されるか、もしくは、鉄(Fe)/銅(Cu)/鉄(Fe)からなるクラッド材をプレス加工して、アイレット52の上に放熱部54を立設させて形成される。
【0118】
放熱部54は側面に素子搭載部54Sを備え、素子搭載部54Sにサブマウント(不図示)を介して半導体レーザ素子60が搭載されている。半導体レーザ素子60は発光素子の一例であり、各種の発光デバイスを使用することができる。
【0119】
また、アイレット52上の放熱部54の近傍には底面が傾斜した傾斜凹部56が設けられており、傾斜凹部56の底面に受光素子62が傾斜した状態で搭載されている。受光素子62としては、例えば、フォトダイオードが使用される。
【0120】
また、アイレット52には第1貫通孔TH1及び第2貫通孔TH2が設けられている。第1貫通孔TH1の中に第1リード71がガラス74によって封着された状態で挿通されている。また同様に、第2貫通孔TH2の中に第2リード72がガラス74によって封着された状態で挿通されている。
【0121】
さらに、アイレット52の下面には第3リード73が溶接されている。第1リード71及び第2リード72はガラス74によってステム50と電気的に絶縁されており、第3リード73はステム50に電気的に接続されている。
【0122】
半導体レーザ素子60はワイヤ64aを介して第1リード71に電気的に接続されている。また、受光素子62はワイヤ64bを介して第2リード72に電気的に接続されている。
【0123】
そして、ステム50のアイレット52の上面に前述した
図4のキャップ部材1のフランジ部16の突起部16aが抵抗溶接される。
図17では、キャップ部材1が切り欠け斜視図で示されている。
【0124】
このようにして、半導体レーザ素子60及び受光素子62がキャップ部材1の中に収容されて気密封止される。
【0125】
半導体レーザ素子60の光出射面60aから放出されたレーザ光がキャップ部材1の窓ガラス30を透過して外部に放出される。また、半導体レーザ素子60の光出射面と反対面から放出されたモニタ光を受光素子62が受光し、これに基づいて半導体レーザ素子60のレーザ出力が制御される。
【0126】
本実施形態の発光装置2では、前述したように、キャップ部材1は半導体レーザ素子60に必要とされる設計スペックの有効径Dを安定して確保できるため、良好な光学特性が得られ、信頼性を向上させることができる。