特許第6792492号(P6792492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792492
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】冷菓用チョコレート
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/36 20060101AFI20201116BHJP
   A23G 9/48 20060101ALI20201116BHJP
   A23D 9/00 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
   A23G1/36
   A23G9/48
   !A23D9/00 500
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-47845(P2017-47845)
(22)【出願日】2017年3月13日
(65)【公開番号】特開2018-148848(P2018-148848A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】397059157
【氏名又は名称】大東カカオ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森山 葉
(72)【発明者】
【氏名】柳川 由佳
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 彬利
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勉
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−049399(JP,A)
【文献】 特開2014−187919(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/190295(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00−1/56
A23D 7/00−9/06
FSTA/CAplus/WPIDS/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョコレートに含まれる油脂が下記油脂組成物Aを0.1〜20質量%、液状油を40〜90質量%含有する冷菓用チョコレート。
油脂組成物A:M2X+MX2を50質量%以上含有する油脂である。
上記において、M、X、M2X、MX2はそれぞれ以下のものを示す。
M:炭素数8〜10の直鎖飽和脂肪酸
X:炭素数16〜18の直鎖飽和脂肪酸
M2X:Mが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド
MX2:Mが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド
【請求項2】
前記冷菓用チョコレートが冷菓被覆用である請求項1に記載の冷菓用チョコレート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の冷菓用チョコレートを使用した冷菓。
【請求項4】
前記冷菓用チョコレートが被覆されている請求項3に記載の冷菓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷菓用チョコレートに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは、チョコレートのみからなる商品以外に、チョコレートと他の食品とを組み合わせた商品にも使用されている。チョコレートと他の食品とを組み合わせた商品には、チョコレートとアイスクリーム等の冷菓とを組み合わせた商品がある。冷菓に使用されるチョコレートとしては、例えば、特許文献1〜5が提案されている。
【0003】
冷菓に使用されるチョコレートは、冷菓と共に食される。そのため、冷菓用チョコレートには、冷菓と共に食した時の口溶け及び食感の良さが求められる。冷菓と共に食した時の口溶け及び食感を良くするために、冷菓用チョコレートには比較的多量の液状油が配合される場合が多い。しかしながら、比較的多量の液状油が配合された冷菓用チョコレートは、冷菓と組み合わされた後の輸送時等の温度変化によって、冷凍温度域でブルームが発生することがあった。
【0004】
以上のような背景から、冷凍温度域でブルームが発生しにくい冷菓用チョコレートの開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−049399号公報
【特許文献2】特開平9−172972号公報
【特許文献3】特開2004−65070号公報
【特許文献4】特開2006−280209号公報
【特許文献5】特開2010−268749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、冷凍温度域でブルームが発生しにくい冷菓用チョコレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、チョコレートに含まれる油脂が特定の油脂を特定量含有すると、冷凍温度域でブルームが発生しにくい冷菓用チョコレートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明は、チョコレートに含まれる油脂が下記油脂組成物Aを0.1〜20質量%、液状油を40〜90質量%含有する冷菓用チョコレートである。
油脂組成物A:M2X+MX2を50質量%以上含有する油脂である。
上記において、M、X、M2X、MX2はそれぞれ以下のものを示す。
M:炭素数8〜10の直鎖飽和脂肪酸
X:炭素数16〜18の直鎖飽和脂肪酸
M2X:Mが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド
MX2:Mが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド
本発明の第2の発明は、前記冷菓用チョコレートが冷菓被覆用である第1の発明に記載の冷菓用チョコレートである。
本発明の第3の発明は、第1の発明又は第2の発明に記載の冷菓用チョコレートを使用した冷菓である。
本発明の第4の発明は、前記冷菓用チョコレートが被覆されている第3の発明に記載の冷菓である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、冷凍温度域でブルームが発生しにくい菓用チョコレートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が下記油脂組成物Aを0.1〜20質量%、液状油を40〜90質量%含有する。
油脂組成物A:M2X+MX2を50質量%以上含有する油脂である。
【0011】
本発明におけるチョコレートは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上で規定されたチョコレートに限定されない。本発明においてチョコレートとは、食用油脂、糖類を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品、香料、乳化剤等を加え、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、成形工程、冷却工程等の全部乃至一部)を経て製造され、油脂が連続相をなし、実質的に水を含有しない食品(好ましくは水分含量が3質量%以下である。)である。また、本発明におけるチョコレートは、ダークチョコレート、ミルクチョコレートの他に、ホワイトチョコレート、カラーチョコレートも含む。
【0012】
本発明において油脂とは、チョコレートに含まれる全油脂分のことであり、配合される油脂の他に、含油原料(カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳等)に含まれる油脂(ココアバター、乳脂等)も含む。
【0013】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が下記油脂組成物Aを0.1〜20質量%含有する。
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートの製造に使用される油脂組成物Aは、M2X+MX2を50質量%以上含有し、好ましくは60〜100質量%含有し、より好ましくは65〜85質量%含有する。
なお、本発明において、M2X+MX2は、M2XとMX2の合計含有量のことである。また、本発明において、M2Xは、Mが2分子、Xが1分子結合しているトリグリセリド(MMX+MXM+XMM)である(トリグリセリドとは、グリセロールに3分子の脂肪酸が結合したトリアシルグリセロールのことである。)。また、本発明において、MX2はMが1分子、Xが2分子結合しているトリグリセリド(MXX+XMX+XXM)である。また、本発明において、Xは炭素数16〜18の直鎖飽和脂肪酸である。また、本発明において、Mは炭素数8〜10の直鎖飽和脂肪酸である。
【0014】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートの製造に使用される油脂組成物Aは、MX2/M2Xの質量比が好ましくは0.05〜4.5であり、より好ましくは0.2〜3.0であり、さらに好ましくは0.5〜1.5である。
なお、本発明において、MX2/M2Xの質量比は、M2X含有量(質量%)に対するMX2含有量(質量%)の比のことである。
【0015】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートの製造に使用される油脂組成物Aは、構成脂肪酸としてMを好ましくは35〜65質量%含有し、より好ましくは37〜63質量%含有し、更に好ましくは40〜60質量%含有する。
【0016】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートの製造に使用される油脂組成物Aは、構成脂肪酸として、Xを好ましくは35〜65質量%含有し、より好ましくは37〜63質量%含有し、更に好ましくは40〜60質量%含有する。
【0017】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートの製造に使用される油脂組成物Aは、構成脂肪酸中のDe/Mの質量比が好ましくは0.55〜0.85であり、より好ましくは0.58〜0.83であり、更に好ましくは0.60〜0.80である。
なお、本発明において、構成脂肪酸中のDe/Mの質量比は、M含有量(質量%)に対するDe含有量(質量%)の比のことである。また、本発明において、Deはデカン酸(炭素数10の直鎖飽和脂肪酸)である。
【0018】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートの製造に使用される油脂組成物Aは、構成脂肪酸中のSt/Xの質量比が好ましくは0.50以上であり、より好ましくは0.70以上であり、更に好ましくは0.80〜0.98である。
なお、本発明において、構成脂肪酸中のSt/Xの質量比は、X含有量(質量%)に対するSt含有量(質量%)の比のことである。なお、本発明において、Stは、ステアリン酸(炭素数18の直鎖飽和脂肪酸)である。
【0019】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートの製造に使用される油脂組成物Aは、好ましくは下記油脂Dと下記油脂Eとの混合油をランダムエステル交換して得られる油脂である。また、本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートの製造に使用される油脂組成物Aは、好ましくは下記油脂Dと下記油脂Fとの混合油をランダムエステル交換した後、極度硬化して得られる油脂である。
【0020】
前記油脂Dは、M3のみからなる。前記油脂Dは、好ましくは中鎖脂肪酸トリグリセリド(以下、MCTとする。)である。なお、本発明において、M3はMが3分子結合しているトリグリセリド(MMM)である。
【0021】
前記油脂Eは、沃素価が5以下であり、構成脂肪酸としてXを90質量%以上含有する。前記油脂Eは、沃素価が5以下であり、好ましくは3以下であり、より好ましくは2以下である。前記油脂Eは、構成脂肪酸としてXを90質量%以上含有し、好ましくは93質量%以上含有し、より好ましくは95質量%以上含有する。前記油脂Eは、好ましくは菜種油の極度硬化油、大豆油の極度硬化油又はパーム油の極度硬化油であり、より好ましくは菜種油の極度硬化油である。
【0022】
前記油脂Dと油脂Eとの混合油の配合比(油脂D:油脂E)は、好ましくは質量比10:90〜65:35であり、より好ましくは質量比20:80〜55:45であり、さらに好ましくは質量比40:60〜55:45である。
【0023】
前記油脂Fは、構成脂肪酸として炭素数16〜18の脂肪酸を90質量%以上含有する。前記油脂Fは、構成脂肪酸として炭素数16〜18の脂肪酸を90質量%以上含有し、好ましくは93質量%以上含有し、より好ましくは95質量%以上含有する。前記油脂Fは、好ましくは菜種油、大豆油又はパーム油であり、より好ましくは菜種油である。
【0024】
前記油脂Dと油脂Fとの混合油の配合比(油脂D:油脂F)は、好ましくは質量比10:90〜65:35であり、より好ましくは質量比20:80〜55:45であり、さらに好ましくは質量比40:60〜55:45である。
【0025】
油脂組成物Aを製造するためのランダムエステル交換は、特に制限はなく、通常の方法で行うことができる。油脂組成物Aを製造するためのランダムエステル交換は、ナトリウムメトキシド等の合成触媒を使用した化学的エステル交換、リパーゼを触媒とした酵素的エステル交換のどちらの方法を用いてもよい。
化学的エステル交換は、例えば、原料油脂を十分に乾燥させ、ナトリウムメトキシドを原料油脂に対して0.1〜1質量%添加した後、減圧下、80〜120℃で0.5〜1時間攪拌しながら反応を行うことができる。化学的エステル交換終了後は、水洗等により触媒を除去した後、通常の食用油脂の精製工程で行われる脱色・脱臭処理を施すことができる。
酵素的エステル交換は、例えば、リパーゼ粉末又は固定化リパーゼを原料油脂に対して0.02〜10質量%(好ましくは0.04〜5質量%)添加した後、40〜80℃、好ましくは40〜70℃で0.5〜48時間(好ましくは0.5〜24時間)攪拌しながら反応を行うことができる。酵素的エステル交換終了後は、濾過等によりリパーゼを除去した後、通常の食用油脂の精製工程で行われる脱色・脱臭処理を施すことができる。ランダムエステル交換を行うことのできるリパーゼは、アルカリゲネス属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼQLM、リパーゼPL等)、キャンディダ属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼOF等)等が挙げられる。
【0026】
油脂組成物Aを製造するための極度硬化(水素添加)は、特に制限はなく、通常の方法で行うことができる。油脂組成物Aを製造するため極度硬化は、例えば、ニッケル触媒の下、水素圧0.02〜0.3Mpa、160〜200℃の条件にて行うことができる。
【0027】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートの製造に使用される油脂組成物Aは、ランダムエステル交換の後又は極度硬化の後に、分別を行うこともできる。
油脂組成物Aを製造するための分別は、特に制限はなく、通常の方法で行うことができる。分別は、好ましくはドライ分別(自然分別)である。ドライ分別は、油脂を槽内で攪拌しながら冷却することで油脂の結晶を析出させた後、圧搾及び/又はろ過することで、高融点部(硬質部又は結晶画分とも言う。)と低融点部(軟質部又は液状画分とも言う。)に分けられる。油脂を分別する時の温度は、対象となる油脂の性状によっても異なるため、特に制限されることはない。ドライ分別する時の温度は、好ましくは33〜45℃であり、より好ましくは35〜43℃、さらに好ましくは37〜43℃である。
【0028】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が油脂組成物Aを0.1〜20質量%含有し、好ましくは0.5〜15質量%含有し、より好ましくは1〜10質量%含有する。チョコレートに含まれる油脂が油脂組成物Aを前記範囲で含有すると、冷凍温度域でブルームが発生しにくい冷菓用チョコレートが得られる。
【0029】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が液状油を40〜90質量%含有する。
なお、本発明において、液状油とは、20℃で液状の油脂のことである。
【0030】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートの製造に使用される液状油の具体例としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ごま油、綿実油、米油、オリーブ油、落花生油、亜麻仁油やこれらの油脂の加工油脂(エステル交換油、分別油、硬化油(水素添加油)等)等が挙げられる。本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートの製造に使用される液状油は、2種以上を併用することもできる。本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートの製造に使用される液状油は、好ましくは、大豆油及び/又は菜種油である。
【0031】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が液状油を40〜90質量%含有し、好ましくは55〜88質量%含有し、より好ましくは65〜85質量%含有する。
【0032】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が好ましくはココアバターを含有する。本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、チョコレートに含まれる油脂がココアバターを好ましくは1〜30質量%含有し、より好ましくは5〜25質量%含有し、更に好ましくは10〜20質量%含有する。
【0033】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、チョコレートに含まれる油脂が好ましくはラウリン系油脂を含有する。本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、チョコレートに含まれる油脂がラウリン系油脂を好ましくは1〜20質量%含有し、より好ましくは2〜15質量%含有し、更に好ましくは3〜10質量%で含有する。
なお、本発明において、ラウリン系油脂とは、構成脂肪酸としてラウリン酸を35質量%以上含有する油脂のことである。
【0034】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートの製造に使用されるラウリン系油脂は、構成脂肪酸としてラウリン酸を好ましくは40質量%以上含有し、より好ましくは40〜60質量%含有する。本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートの製造に使用されるラウリン系油脂の具体例としては、パーム核油、ヤシ油やこれらを原料油脂として含む加工油脂(分別油、硬化油(水素添加油)、エステル交換油)等が挙げられる。本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートの製造に使用されるラウリン系油脂は、好ましくはヤシ油である。なお、本発明において、ラウリン酸はLaと記載することもある。
【0035】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートには、前記油脂組成物A、液状油、ココアバター、ラウリン系油脂以外にも通常冷菓用チョコレートの製造に使用される食用油脂(パーム油、パーム分別油(パーム中融点部、パーム分別軟質油、パーム分別硬質油(パームステアリン等)等)、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、乳脂等)を使用することもできる。
【0036】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、チョコレートに含まれる油脂がU3を好ましくは50質量%以上含有し、より好ましくは50〜70質量%含有し、さらに好ましくは50〜60質量%含有する。
なお、本発明において、U3はUが3分子結合しているトリグリセリド(UUU)である。また、本発明において、Uは炭素数16〜24の不飽和脂肪酸である。
【0037】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、油脂を好ましくは30〜70質量%含有し、より好ましくは35〜65質量%含有し、更に好ましくは40〜60質量%含有する。
【0038】
トリグリセリド組成の分析は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111−1114(1993)準拠)を用いて行うことができる。
油脂の構成脂肪酸の分析は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f−96準拠)を用いて行うことができる。
油脂のヨウ素価は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.3.4.1−1996 ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」に準じて測定することができる。
【0039】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、好ましくは糖類を含有する。糖類としては、例えば、ショ糖(砂糖、粉糖)、乳糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、オリゴ糖、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトース、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラフィノース等を使用することができる。本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートの製造に使用される糖類は、好ましくはショ糖(砂糖)、乳糖である。
【0040】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、糖類を好ましくは10〜60質量%含有し、より好ましくは20〜50質量%含有し、更に好ましくは25〜45質量%含有する。
【0041】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、油脂、糖類以外にも、冷菓用チョコレートに一般的に配合される原料を使用することができる。具体的には、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳等の乳製品、カカオマス、ココアパウダー等のカカオ成分、大豆粉、大豆蛋白、果実加工品、野菜加工品、抹茶粉末、コーヒー粉末等の各種粉末、ガム類、澱粉類、レシチン、リゾレシチン、酵素分解レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、酸化防止剤、着色料、香料等を使用することができる。
【0042】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、従来公知の冷菓用チョコレートの製造方法を用いることによって製造することができる。本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、例えば、油脂、カカオ成分、糖類、乳化剤等を原料として、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)、冷却工程等を経て製造することができる。本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、好ましくは微粒化工程を経て製造する。
【0043】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、液状油を多く含有するが、冷凍温度域でブルームが発生しにくい。
なお、本発明において冷凍温度域とは、0℃以下であり、好ましくは−5℃以下であり、より好ましくは−5℃〜−30℃であり、さらに好ましくは−5℃〜−20℃である。
【0044】
本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、好ましくは冷菓被覆用チョコレート又は冷菓センター用チョコレートであり、より好ましくは冷菓被覆用チョコレートである。また、本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートは、チョコレートをそのまま冷凍して食することもできる。
【0045】
本発明の実施の形態に係る冷菓は、本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートを使用して得られる。本発明の実施の形態に係る冷菓は、好ましくは本発明の実施の形態に係る冷菓用チョコレートが被覆されている。
【0046】
本発明の実施の形態に係る冷菓としては、例えば、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等が挙げられる。
【0047】
本発明の実施の形態に係る冷菓は、従来公知の食品の製造方法を用いることによって、冷菓とチョコレートを組み合わせることで製造することができる。例えば、本発明の実施の形態に係るチョコレートを冷菓と組み合わせる方法としては、被覆、注入、挟む等が挙げられる。
【実施例】
【0048】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
〔分析方法〕
トリグリセリド組成の分析は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111−1114(1993)準拠)を用いて行った。また、油脂の構成脂肪酸の分析は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f−96準拠)を用いて行った。
【0049】
〔油脂組成物A1の製造〕
51質量部の菜種油の極度硬化油(沃素価:1、X含有量:96.8質量%)と49質量部のMCT(M3含有量:100質量%)とを混合した。得られた混合油を、ランダムエステル交換することにより、油脂組成物A1(M2X含有量:43.4質量%、MX2含有量:32.3質量%、M2XとMX2の合計含有量:75.7質量%、MX2/M2X質量比:0.74、M含有量:48.4質量%、X含有量:50.1質量%、De/M質量比:0.71、St/X質量比:0.95)を得た。
ランダムエステル交換は、常法に従い、原料油脂を十分に乾燥させ、ナトリウムメトキシドを原料油脂に対して0.2質量%添加した後、減圧下、120℃で0.5時間攪拌しながら反応を行った。
【0050】
〔チョコレートの製造及び評価〕
表1に示された配合のチョコレートを、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)を用いることにより製造した(チョコレート中の水分含有量は全てのチョコレートが3質量%以下であった。)。なお、配合の単位は質量部であり、含有量の単位は質量%である。
【0051】
〔冷菓の製造及び評価〕
容器にアイスクリームを充填した後、アイスクリームの上に35℃で調温された各チョコレートで充填し、−30℃で固化させることで、チョコレートが被覆されているアイスクリームを製造した。チョコレートが被覆されているアイスクリームを−20℃〜−5℃サイクル(−20℃で6時間保存後、−5℃で6時間保存することを1サイクルとし、このサイクルでの保存を繰り返した。)で5週間保存した。2週間保存後、3週間保存後、4週間保存後、5週間保存後の各チョコレートを目視で確認することでブルームの発生の有無を評価した。評価は、○(ブルーム無し)、△(ブルーム少し有り)、×(ブルーム有り)の3段階で評価した。○の場合をブルームが発生しにくいとした。結果を表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1から分かるように、実施例のチョコレートは、液状油を多く含有するが、冷凍温度域でブルームが発生しなかった。
一方、表1から分かるように、比較例のチョコレートは、冷凍温度域でブルームが発生した。