(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792525
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】光通信システム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/44 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
H04L12/44 200
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-141947(P2017-141947)
(22)【出願日】2017年7月21日
(65)【公開番号】特開2019-22183(P2019-22183A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2019年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 由美子
(72)【発明者】
【氏名】氏川 裕隆
【審査官】
野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−246756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加入者線終端装置と、当該加入者線終端装置と通信する加入者線端局装置と、を備える光通信システムであって、
前記加入者線端局装置は、
下り信号に対してデジタル信号処理を行う第1デジタル信号処理部、
を備え、
前記加入者線終端装置は、
前記下り信号に対して前記デジタル信号処理を行う第2デジタル信号処理部、
を備え、
前記第1デジタル信号処理部及び前記第2デジタル信号処理部は、上り信号及び上り制御信号の両方に対して前記デジタル信号処理を行い、下り制御信号に対して前記デジタル信号処理を行わない
光通信システム。
【請求項2】
前記加入者線端局装置は、
下り信号を送信する下り信号送信器と、
前記下り信号と異なる波長に設定された下り制御信号を送信する下り制御信号送信器と、
を備え、
前記加入者線終端装置は、
前記下り信号を受信する下り信号受信器と、
前記下り信号と異なる前記波長に設定された前記下り制御信号を受信する下り制御信号受信器と、
を備える請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
前記加入者線端局装置は、前記下り信号と前記下り制御信号とをそれぞれ異なるネットワークインターフェースにより送信し、
前記加入者線終端装置は、前記下り信号と前記下り制御信号とをそれぞれ異なるネットワークインターフェースにより受信する
請求項2に記載の光通信システム。
【請求項4】
前記加入者線端局装置は、
前記下り制御信号のSNRを適応変調により変更させる送信器、
を備え、
前記加入者線終端装置は、
前記下り制御信号のSNRを適応変調により変更させる受信器、
を備える請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の光通信システム。
【請求項5】
前記下り制御信号は、前記上り信号または前記上り制御信号の少なくともいずれかに対する送信許可を含む
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の光通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アクセスサービスの高速化に対するニーズの高まりにより、FTTH(Fiber To The Home)の普及が世界的に進んでいる。FTTHサービスの大部分はPON(Passive Optical Network)方式により提供されている。
図5に示すように、PON方式は、1台の加入者線端局装置(OLT:Optical Line Terminal)が時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)により複数の加入者線終端装置(ONU:Optical Network Unit)を収容しており、経済性に優れている。日本における現在の主力システムは、伝送速度がギガビット級であるGE−PON(Gigabit Ethernet(登録商標) PON)である。GE−PONは、イーサネット(登録商標)通信をアクセスネットワークに適用することを目的にIEEE(米国電気電子技術者協会)802委員会で標準化された規格IEEE 802.3ah(例えば、非特許文献1参照)の中の一規格である。
【0003】
図6は、IEEE 802.3ahのレイヤ構造を示す図である。ONUは、PHY(PHYsical sublayer)と呼ばれる物理層と、MAC(Media Access Control)と呼ばれるデータリンク副層とを有する構成である。MACは、MAC制御副層(MAC control client)と、MAC副層(MAC sublayer)とを有する。MAC制御副層は、MAC副層のリアルタイム制御及び操作を行うオプションのサブレイヤである。MAC副層は、データのMACフレーム化(フレーム化、MACアドレス付加、エラー検出)及び媒体アクセス(衝突検知、延期処理)を実行する。物理層は、MACと物理層の仲介を担うRS(Reconciliation sublayer)及びGMII(Gigabit media independent interface)を介してMACと接続される。さらに物理層は、PCS(Physical Coding Sublayer)と呼ばれるデータを符号化する部分と、PMD(Physical Medium Dependent)と呼ばれる物理媒体に接続する部分とを有する。PCSとPMDは、PMA(Physical Medium Attachment)により接続される。PMAは、データのシリアル化を行う。
【0004】
PON方式ではディスカバリプロセス中に、OLTがそれぞれのONUとの間のRTT(Round Trip Time:フレーム往復時間)測定を行う。RTT測定は定期的に行われ、線路条件の変化などによりズレが生じた場合には随時補正される。RTTは、
図7に示すように測定される。OLTがDiscovery GATE信号を送信してからRegister REQ信号を受信するまでの経過時間をT
response、ONUがDiscovery GATE信号を受信してからRegister REQ信号を送信するまでの時間をT
wait、OLTからONUへの下りの伝搬遅延をT
Downstream、そして、ONUからOLTへの上りの伝搬遅延をT
Upstreamとすると、RTTは以下の式(1)によって算出される。
【0005】
RTT=T
response−T
wait=T
Downstream+T
Upstream …(1)
【0006】
また、PON方式は、MPCP(Multi Point Control Protocol)というプロトコルを使用して上り信号制御を実現する。OLTは、GATEフレームを用いて、それぞれのONUが時間的に衝突することなく上り信号を送信できるように、送信開始時刻、送信量を各ONUに指示する。一方、ONUは、REPORTフレームを用いて自装置のバッファに蓄積されている送信待ちのデータ量をOLTに伝える。ここで、ONUからOLTへの上り帯域を、トラフィック量に応じて動的に割り当てる機能を動的帯域割当て(DBA:Dynamic Bandwidth Allocation)機能と呼ぶ。OLTが、短いDBA周期で複数ONUの帯域要求を収集して割当帯域を切替えることで、多くのONUに無駄なく帯域を割り当てることができ、上りデータの送信待ち時間を短くすることができる。
ここで、OLTとONUとの間の距離が長い場合にはRTTが大きくなるため、DBA応答時間が増加し、その結果、上り平均遅延が増加する(例えば、非特許文献2参照)。
【0007】
一方で、ユーザトラフィック要求の増大から、光アクセスネットワークの益々の大容量化・経済化が求められている。その実現に向け、デジタル信号処理(DSP:Digital Signal Processing)技術をPON方式に適用したDSP−PON方式が注目され、研究開発・実用化が活発化している。
【0008】
図8は、DSP−PON方式を用いる場合に容易に考えられるレイヤ構造を示す。
OLTの物理層(PHY)は、PMDにDSP処理部及びADC(Digital to Analog Converter)/DAC(Analog to Digital Converter)を設けている点を除き、
図6に示したOLTの物理層と同様の構成である。同様に、ONUの物理層(PHY)は、PMDにDSP処理部及びADC/DACを設けている点を除き、
図6に示したONUの物理層と同様の構成である。
【0009】
OLTからONUへ信号が送信される場合、OLTの物理層内のPMDでは、DSP処理部がデジタル信号処理した送信信号を、ADC/DACのDACがアナログ信号に変換し、送信器(Tx:Transmitter)に入力する。ONUの物理層内のPMDでは、受信器(Rx:Receiver)がOLTから受信したアナログ信号を、ADC/DACのADCがデジタル信号に変換し、DSP処理部がデジタル信号処理を行う。
【0010】
ONUからOLTへ信号が送信される場合、ONUの物理層内のPMDでは、DSP処理部がデジタル信号処理した送信信号を、ADC/DACのDACがアナログ信号に変換し、送信器(Tx)に入力する。OLTの物理層内のPMDでは、受信器(Rx)がONUから受信したアナログ信号を、ADC/DACのADCがデジタル信号に変換し、DSP処理部がデジタル信号処理を行う。
【0011】
OLTのMAC、及びONUのMACは、それぞれ
図6に示したOLTのMAC、及びONUのMACと同様の構成である。
【0012】
図8に示したレイヤ構造を有するDSP−PON方式を用いたシステム(以下、「DSP−PONシステム」と称する)におけるRTTは、OLT及びONU内のDSP処理にかかる時間が追加されるため、
図9のように測定され、式(2)のように表される。ここで、OLT内の送信器のDSP処理遅延をT
OLT−Tx−DSP、下りの伝搬遅延をT
Downstream、ONU内の受信器のDSP処理遅延をT
ONU−Rx−DSP、ONU内の送信器のDSP処理遅延をT
ONU−Tx−DSP、上りの伝搬遅延をT
Upstream、そしてOLT内の受信器のDSP処理遅延をT
OLT−Rx−DSPとする。
【0013】
RTT=T
response−T
wait
=T
OLT−Tx−DSP+T
Downstream+T
ONU−Rx−DSP+T
ONU−Tx−DSP+T
Upstream+T
OLT−Rx−DSP …(2)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】IEEE Standards 802.3ah,September 2004
【非特許文献2】Bjorn Skubic, Jiajia Chen, Jawwad Ahmed, Biao Chen, Lena Wosinska and Biswanath Mukherjee, “Dynamic Bandwidth Allocation for Long-Reach PON: Overcoming Performance Degradation,” IEEE Communications Magazine, Vol.48, Issue 11, pp.100-108, November 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
DSP−PONシステムでは、ファイバ伝搬遅延だけでなく、DSPの処理時間がRTTに追加されるため、RTTは、実際のファイバ伝搬距離に対して長い時間となる。これにより、DBA応答時間が増加し、上り平均遅延が増加するといった課題がある。
【0016】
上記事情に鑑み、本発明は、DBA応答時間を短縮することにより上り平均遅延を短縮することができる光通信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様は、複数の加入者線終端装置と、当該加入者線終端装置と通信する加入者線端局装置と、を備える光通信システムであって、前記加入者線端局装置は、下り信号に対してデジタル信号処理を行う第1デジタル信号処理部、を備え、前記加入者線終端装置は、前記下り信号に対して前記デジタル信号処理を行う第2デジタル信号処理部、を備え、前記第1デジタル信号処理部及び前記第2デジタル信号処理部は、上り信号及び上り制御信号の両方に対して前記デジタル信号処理を行い、下り制御信号に対して前記デジタル信号処理を行わない。
【0018】
本発明の一態様は、上述の光通信システムであって、前記加入者線端局装置は、下り信号を送信する下り信号送信器と、前記下り信号と異なる波長に設定された下り制御信号を送信する下り制御信号送信器と、を備え、前記加入者線終端装置は、前記下り信号を受信する下り信号受信器と、前記下り信号と異なる前記波長に設定された前記下り制御信号を受信する下り制御信号受信器と、を備える。
【0019】
本発明の一態様は、上述の光通信システムであって、前記加入者線端局装置は、前記下り信号と前記下り制御信号とをそれぞれ異なるネットワークインターフェースにより送信し、前記加入者線終端装置は、前記下り信号と前記下り制御信号とをそれぞれ異なるネットワークインターフェースにより受信する。
【0020】
本発明の一態様は、上述の光通信システムであって、前記加入者線端局装置は、前記下り制御信号のSNRを適応変調により変更させる送信器、を備え、前記加入者線終端装置は、前記下り制御信号のSNRを適応変調により変更させる受信器、を備える。
【0021】
本発明の一態様は、上述の光通信システムであって、前記下り制御信号は、前記上り信号または前記上り制御信号の少なくともいずれかに対する送信許可を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、DBA応答時間を短縮することにより上り平均遅延を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるDSP−PONシステムの構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態によるDSP−PONシステムの下りのレイヤ構造を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態によるDSP−PONシステムにおけるラウンドトリップタイムを示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態によるDSP−PONシステムの下りのレイヤ構造を示す図である。
【
図5】従来のPON方式のシステムの構成図である。
【
図6】従来のGE−PON方式のシステムのレイヤ構造を示す図である。
【
図7】従来のGE−PON方式のシステムのシステムにおけるラウンドトリップタイムを示す図である。
【
図8】DSP−PON方式を用いる場合に容易に考えられるシステムのレイヤ構造を示す図である。
【
図9】DSP−PON方式を用いる場合に容易に考えられるシステムのラウンドトリップタイムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照しながら本発明の第1の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態によるDSP−PONシステム1の構成図である。DSP−PONシステム1(光通信システム)は、1台のOLT(加入者線端局装置)3が、時分割多重(TDM)により複数台のONU(加入者線終端装置)5を収容する構成である。OLT3から1本の光ファイバにより送信される下り光信号は、光スプリッタにより複数のONU5それぞれと接続される光ファイバに分配される。また、時分割で複数のONU5それぞれから光ファイバにより送信される上り光信号は、光スプリッタにより合波されて1本の光ファイバによりOLT3に送信される。
【0025】
OLT3は、PHY(PHYsical sublayer)と呼ばれる物理層31と、データリンク副層のMAC(Media Access Control)32とを備える。OLT3の物理層31は、DSP処理部311(第1デジタル信号処理部)を備える。同様に、ONU5は、PHYと呼ばれる物理層51と、データリンク副層のMAC52とを備える。ONU5の物理層51は、DSP処理部511(第2デジタル信号処理部)を備える。DSP処理部311及びDSP処理部511は、DSPによる信号処理を行う。なお、同図では、OLT3とONU5の両方にDSP処理部を備えているが、いずれか一方のみにDSP処理部を備える構成でもよい。
【0026】
図2は、本発明の第1の実施形態によるDSP−PONシステム1の下りのレイヤ構造を示す図である。
本実施形態に係るDSP−PONシステム1は、下り信号に対してDSP処理を行う一方で、下り制御信号に対してはDSP処理を行わない。
下り信号に対しては、OLT3の物理層31内のPMDのDSP処理部311及びDAC処理部312においてDSP処理がなされる。一方、下り制御信号に対しては、OLT3の物理層31内のPMDにおいてDSP処理がなされない。
【0027】
OLT3の物理層31内のPMDの多重処理部313(Multiplexer)は、DSP処理がなされた下り信号と、DSP処理がなされていない下り制御信号とを多重する。
そして、多重処理部313にて多重された下り信号と下り制御信号は、単一の送信器314(Tx)を用いて電気信号から光信号に変換されて、送信される。
【0028】
なお、多重処理部313は、例えば、下り信号と下り制御信号とを時分割多重によって多重する。多重する方法は、それ以外の方法でもよい。
なお、多重処理部313が、下り信号と下り制御信号を時分割多重する場合は、DSP処理部311内にバッファを備え、下り制御信号を優先送信するように多重する方法が考えられる。
【0029】
OLT3の送信器314から送信された下り信号と下り制御信号は、ONU5の単一の受信器514を用いて光信号から電気信号に変換される。
そして、分割処理部513(Demultiplexer)は、電気信号を、下り信号と下り制御信号とに分割する。
【0030】
なお、分割処理部513は、例えば、時分割によって多重された電気信号を下り信号と下り制御信号とに分割する。分割する方法は、それ以外の方法でもよい。
【0031】
下り信号に対しては、ONU5の物理層51内のPMDのDSP処理部511及びADC処理部512においてDSP処理がなされる。一方、下り制御信号に対しては、ONU5の物理層51内のPMDにおいてDSP処理がなされない。
【0032】
なお、上りについては、本実施形態によるDSP−PONシステム1が、上り信号と上り制御信号との両方に対してDSP処理を行うことから、当該DSP−PONシステム1の上りのレイヤ構造は、
図6と同様の構成となる。
【0033】
図3は、本発明の第1の実施形態によるDSP−PONシステム1におけるラウンドトリップタイム(RTT)を示す図である。
下りの伝搬遅延をT
Downstream、ONU5内の送信器のDSP処理遅延をT
ONU−Tx−DSP、上りの伝搬遅延をT
Upstream、そしてOLT3内の受信器のDSP処理遅延をT
OLT−Rx−DSPとすると、RTTは式(3)のように表される。
【0034】
RTT=T
response−T
wait
=T
Downstream+T
ONU−Tx−DSP+T
Upstream+T
OLT−Rx−DSP …(3)
【0035】
従って、本実施形態におけるMPCP制御信号のRTTは、
図9に示したDSP−PONシステムにおけるRTTに比べて、OLT3内の送信器314のDSP処理遅延(T
OLT−Tx−DSP)、及び、ONU5内の受信器514のDSP処理遅延(T
ONU−Rx−DSP)の時間だけ短くすることができる。
【0036】
以上、説明したように、本実施形態によるDSP−PONシステム1は、MPCP制御信号のRTTを短くすることができる。これにより、DSP−PONシステム1は、DBA応答時間を短縮することができるため、上り平均遅延を短縮することができる。
また、これにより、DSPによるデジタル信号処理化によるOLTの大容量化も可能となる。
【0037】
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態によるDSP−PONシステムの下りのレイヤ構造を示す図である。
本実施形態に係るDSP−PONシステムは、下り信号と下り制御信号とを異なる波長を用いて伝送する。OLT7は、下り信号と下り制御信号とを別々のネットワークインターフェースを用いて送信する。なお、本実施形態においては、ネットワークインターフェースはラインカード(LC:Line Card)である。
【0038】
下り制御信号を送信するLC1は、OLT7の物理層71a内のPMDにおいてDSP処理を実行しない。また、下り制御信号を送信するLC1は、送信器714a(Tx)(下り制御信号送信器)の送信波長をλ_d1に設定する。
下り信号を送信するLC2は、OLT7の物理層71b内のPMDのDSP処理部711及びDAC処理部712においてDSP処理を実行する。また、下り信号を送信するLC2は、送信器714b(Tx)(下り信号送信器)の送信波長をλ_d2に設定する。
【0039】
なお、LC1及びLC2から送信された光信号は、多重処理部713(Multiplexer)を用いて合波される。なお、多重処理部713(Multiplexer)は、例えば、光カプラやアレイ導波路グレーティング(AWG:Arrayed Waveguide Grating)によって合波する。合波の方法は、それ以外の方法でもよい。
【0040】
ONU9は、下り信号と下り制御信号とを別々のネットワークインターフェースを用いて受信する。なお、本実施形態においては、ネットワークインターフェースはラインカード(LC)である。
下り制御信号を受信するLC1は、ONU9の物理層91a内のPMDにおいてDSP処理を実行しない。また、下り制御信号を受信するLC1は、受信器914a(Rx)(下り制御信号受信器)の受信波長をλ_d1に設定する。
下り信号を受信するLC2は、ONU9の物理層91b内のPMDのDSP処理部911及びADC処理部912においてDSP処理を実行する。また、下り信号を受信するLC2は、受信器914b(Rx)(下り信号受信器)の受信波長はλ_d2に設定する。
【0041】
なお、LC1及びLC2によって受信された光信号は、分割処理部913(Demultiplexer)によって分波される。なお、分割処理部913(Demultiplexer)は、例えば、AWG等によって分波する。分波の方法は、それ以外の方法でもよい。
【0042】
なお、上りについては、本実施形態によるDSP−PONシステムが、上り信号と上り制御信号の両方に対して、同一波長で送信し、且つ、DSP処理を行うことから、当該DSP−PONシステムの上りのレイヤ構造は、
図6と同様の構成となる。
【0043】
本実施形態におけるMPCP制御信号のRTTは、
図3に示したRTTと等しく、下りの伝搬遅延(T
Downstream)、ONU9内の送信器のDSP処理遅延(T
ONU−Tx−DSP)、上りの伝搬遅延(T
Upstream)、そしてOLT7内の受信器のDSP処理遅延(T
OLT−Rx−DSP)の和で表される。
従って、本実施形態におけるMPCP制御信号のRTTは、
図9に示したDSP−PONにおけるRTTに比べて、OLT7内の送信器714のDSP処理遅延(T
OLT−Tx−DSP)、及び、ONU9内の受信器914のDSP処理遅延(T
ONU−Rx−DSP)の時間だけ短くすることができる。
【0044】
以上、説明したように、本実施形態によるDSP−PONシステムは、MPCP制御信号のRTTを短くすることができる。これにより、DSP−PONシステムは、DBA応答時間を短縮することができるため、上り平均遅延を短縮することができる。
【0045】
<第3の実施形態>
第1の実施形態及び第2の実施形態によるDSP−PONシステムは、下り信号にデジタル信号処理を行う一方で、下り制御信号にはデジタル信号処理を行わない構成である。これにより、第1の実施形態及び第2の実施形態によるDSP−PONシステムは、MPCP制御信号のRTTを短くすることができるため、DBA応答時間を短縮することができ、その結果、上り平均遅延を削減することができる。
【0046】
ところで、デジタル信号処理を、多値変調等を用いた下り信号の通信速度向上のために用いる場合は、第1の実施形態及び第2の実施形態において説明したような構成とすることが可能である。しかしながら、デジタル信号処理を、分散補償等の長延化・多分岐化を目的とした信号対雑音比(SNR:Signal to Noise Ratio)向上のために用いる場合は、第1の実施形態及び第2の実施形態において説明したような構成とする場合、下り制御信号のSNRが不足するという課題が生じる。
【0047】
そこで、下り制御信号の送受信器に適応変調を用いることにより、必要なSNRに従って、変調方式、送信電力、符号化方式などを柔軟に変更する構成が考えられる。このように、下り制御信号の送受信器に適応変調が用いられることで、下り信号と下り制御信号に対して、同等のSNRを達成することができる。なお、下り信号の送受信器に適応変調が用いられる構成でもよい。
【0048】
なお、本発明の第1乃至第3の実施形態によるDSP−PONシステムは、下り制御信号と下り信号の変調方式、送信電力、符号化方式が異なるPONにも適用可能である。
なお、本発明の第1乃至第3の実施形態において、下り制御信号は、上り信号または上り制御信号の少なくともいずれかに対する送信許可を含む制御信号であってもよい。
【0049】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
TDMA(時分割多重アクセス)により通信する装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…DSP−PONシステム, 3…OLT, 5…ONU, 7…OLT, 9…ONU, 31…物理層, 32…MAC, 51…物理層, 52…MAC, 71…物理層, 91…物理層, 311…DSP処理部, 312…DAC処理部, 313…多重処理部, 14…送信器, 511…DSP処理部, 512…ADC処理部,; 513…分割処理部, 514…受信器, 711…DSP処理部, 712…DAC処理部, 713…多重処理部, 714…送信器, 911…DSP処理部, 912…ADC処理部, 913…分割処理部, 914…受信器