特許第6792562号(P6792562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6792562人工皮革基材、人工皮革及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792562
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】人工皮革基材、人工皮革及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06N 3/00 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   D06N3/00
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-550345(P2017-550345)
(86)(22)【出願日】2016年11月9日
(86)【国際出願番号】JP2016083176
(87)【国際公開番号】WO2017082273
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2019年6月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-220787(P2015-220787)
(32)【優先日】2015年11月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(73)【特許権者】
【識別番号】000184687
【氏名又は名称】小松マテーレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100133798
【弁理士】
【氏名又は名称】江川 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100189991
【弁理士】
【氏名又は名称】古川 通子
(72)【発明者】
【氏名】吉本 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山田 友
(72)【発明者】
【氏名】中山 公男
(72)【発明者】
【氏名】米澤 和洋
(72)【発明者】
【氏名】西原 正勝
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−204394(JP,A)
【文献】 特開平02−234981(JP,A)
【文献】 特開2002−242077(JP,A)
【文献】 特開2011−021292(JP,A)
【文献】 特開2015−158030(JP,A)
【文献】 特開2005−226213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00− 7/06
D06M 10/00−16/00,
19/00−23/18,
101/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.5dtex以下のナイロン系極細繊維の繊維絡合体と前記繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体とを含み、
見掛け密度0.3〜0.55g/cm3であり、
20%強力のタテ方向/ヨコ方向の比が0.5〜1.25であり、
厚さ1mm当たりの引裂強力が2.5kgf/mm以上であることを特徴とする人工皮革基材。
【請求項2】
タテ方向において、引張速度200mm/分で1.8kgfとなるときの伸長率が6.5%以下である請求項1に記載の人工皮革基材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の人工皮革基材の少なくとも一面に、ダイレクトコート形成された銀面樹脂層を備える請求項1または2に記載の人工皮革基材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工皮革基材の少なくとも1面に銀面樹脂層が積層された銀付調人工皮革。
【請求項5】
下記のように特定される伸長セット率が、20〜50%である請求項4に記載の銀付調人工皮革。
[伸長セット率]
長さ20cm×幅2.54cmの短冊サンプルを作成する。そして、短冊サンプルの長さ方向の両端から各5cmの位置に標線間距離10cmの標線を引く。そして、長さ方向が垂直方向になるように短冊サンプルを吊るし、8kgfの荷重を10分間かけた後、荷重を取り除き10分間放置する。この操作を5回繰り返し、5回目に10分間荷重をかけた後の標線間距離(H1)と、荷重を取り除いて10分放置後の標線間距離(H2)とを測定する。製造工程の進行方向をタテ方向としタテ方向に垂直な方向をヨコ方向とし、各方向の3本ずつの短冊サンプルを測定し、計6本のH1とH2の平均値を求める。そして、H1及びH2の平均値を用いて、下記式により、伸長セット率を算出する。
伸長セット率(%)=((H2-10)/(H1-10)]×100
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工皮革基材の少なくとも1面を起毛処理したスエード調人工皮革。
【請求項7】
1.5dtex以下のナイロン系極細繊維の繊維絡合体と繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体とを含み、見掛け密度0.2〜0.5g/c3である未処理人工皮革基材を準備する工程と
前記未処理人工皮革基材を、10〜300g/Lのベンジルアルコールを含む90〜110℃の水性の処理液に浸漬した後、ソーピングを行なう工程と、を備える人工皮革基材の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の人工皮革基材の製造方法により得られた人工皮革基材を準備する工程と、
前記人工皮革基材の少なくとも一面に、ダイレクトコート法により銀面樹脂層を形成する工程と、を備える銀付調の人工皮革の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然皮革に近い風合いや外観を有する人工皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天然皮革は、高級感のある素材として、衣料,鞄,靴,インテリア資材,車輌用内装材など様々な分野で用いられている。天然皮革は高価であるために、その代用として人工皮革が広く用いられている。人工皮革は不織布中に高分子弾性体を充填した人工皮革基材を主体とする。このような人工皮革基材の表面に表皮層を設けた銀付調人工皮革や、人工皮革基材の表面の繊維を起毛処理したスエード調人工皮革が知られている。
【0003】
従来知られた一般的な人工皮革基材には、高分子弾性体で充填されていない空隙が多く存在するために天然皮革に比べて緻密さや充実感が低かった。そのために折り曲げたときにはポキ折れとも称されるように座屈して折れ曲がる高級感のない折れ方をする。また、人工皮革基材の表面に表皮層を設けた銀付調人工皮革を製造する方法としては、剥離紙上に表皮層を形成するための皮膜を形成し、表皮層を接着層を介して人工皮革基材の表面に接着する乾式造面法が知られている。また、人工皮革基材の表面に銀面樹脂層を形成するための高分子弾性体の樹脂液をスプレーコートやリバースコート等の方法により塗布し、樹脂液を乾燥させることにより銀面樹脂層の皮膜を形成させるダイレクトコート法も知られている。乾式造面法は、表皮層と人工皮革基材とを接着層を介して接着するために、使用時に表皮層が剥がれることがあった。ダイレクトコート法は乾式造面法のような接着層で表皮層を接着しないために銀面樹脂層と人工皮革基材との一体感に優れ、また、生産性にも優れる。しかしながらダイレクトコート法は、多くの空隙が存在する人工皮革基材に適用した場合には液が内部に沈み込んだり、表面に不織布の形状が浮き出たりするという欠点があった。ダイレクトコート法のこれらの欠点は銀面樹脂層の厚みを厚くすることにより解決できるが、銀面樹脂層の厚みを厚くした場合には、ゴムライクな風合いになるために天然皮革の風合いから離れる傾向があった。
【0004】
上述のような問題を解決するために不織布中の高分子弾性体の含有割合を高めて空隙を低減させる方法もあるが、このような手段を用いた場合には、高分子弾性体により人工皮革基材の反発感が高くなってゴムライクで剛直な風合いが顕著になり、天然皮革の風合いからかけ離れるという問題があった。
【0005】
ところで、従来から、ベンジルアルコールでナイロン繊維を膨潤させて柔軟化する技術が知られていた(下記特許文献1、2参照)。このような方法により、ナイロン繊維をベンジルアルコールで膨潤させることにより、柔らかな風合いの布帛が得られることが知られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−089984号公報
【特許文献2】特開2003−089983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、天然皮革のような充実感としなやかさとを両立させた人工皮革を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面は、1.5dtex以下のナイロン系極細繊維の繊維絡合体と繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体とを含み、見掛け密度0.3〜0.55g/cm3であり、20%強力のタテ方向/ヨコ方向の比が0.5〜1.25であり、厚さ1mm当たりの引裂強力が2.5kgf/mm以上である人工皮革基材である。見掛け密度が比較的高く、20%強力のタテ方向/ヨコ方向の比が0.5〜1.25であるような均質な人工皮革基材によれば高い充実感が得られ、大きな空隙の少ない緻密で平滑性の高い表面も形成することができる。また、厚さ1mm当たりの引裂強力が2.5kgf/mm以上であることにより、充実感が高いにも関わらずしなやかな風合いを維持することができる。また、ダイレクトコート法を用いて銀面樹脂層を形成する場合に、銀面樹脂層を形成するための樹脂液が人工皮革基材に沈み込みにくくなるために、ゴムライクな風合いにすることなく銀面樹脂層を形成することができる。
【0009】
また、人工皮革基材は、タテ方向において、引張速度200mm/分で1.8kgfとなるときの伸長率が6.5%以下であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の他の一局面は、人工皮革基材の少なくとも一面に、銀面樹脂層を備える銀付調の人工皮革、または人工皮革基材の少なくとも一面を起毛したスエード調の人工皮革である。また、後述する銀付調人工皮革の伸長セット率は、20〜50%であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の他の一局面は、1.5dtex以下のナイロン系極細繊維の繊維絡合体と繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体とを含み、見掛け密度0.2〜0.5g/cm3である未処理人工皮革基材を準備する工程と、未処理人工皮革基材を、ベンジルアルコールを含む処理液に浸漬することにより、見掛けの収縮率が5〜40%になるように収縮させる工程と、を備える人工皮革基材の製造方法である。このような製造方法によれば、上述したような人工皮革基材を得ることができる。
【0012】
前記見掛けの収縮率が5〜40%になるように収縮させる工程は、未処理人工皮革基材を、10〜300g/Lのベンジルアルコールを含む処理液に90〜110℃で浸漬する工程であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の他の一局面は、上述した人工皮革基材の製造方法により得られた人工皮革基材を準備する工程と、人工皮革基材の少なくとも一面に、ダイレクトコート法により銀面樹脂層を形成する工程を備える銀付調人工皮革の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、天然皮革のような高い充実感としなやかな風合いとを兼ね備え、また、大きな空隙の少ない緻密で平滑性の高い表面を形成可能な人工皮革基材が得られる。また、ダイレクトコート法を用いて銀面樹脂層を形成する場合に、銀面樹脂層を形成するための樹脂液を沈み込ませ過ぎない人工皮革基材が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態の人工皮革基材及びそれを用いた人工皮革をそれらの製造方法の一例に沿って詳しく説明する。本実施形態の人工皮革基材の製造においては、はじめに、1.5dtex以下のナイロン系極細繊維(以下単に極細繊維とも称する)の繊維絡合体と繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体とを含む、見掛け密度0.2〜0.5g/cm3である未処理人工皮革基材を製造する。
【0016】
繊維絡合体の製造においては、はじめに、選択的に除去できる海島型複合繊維の海成分を構成する熱可塑性樹脂と、極細繊維を形成する樹脂成分である海島型複合繊維の島成分を構成するナイロン系樹脂とを溶融紡糸し、延伸することにより海島型複合繊維を得る。なお、本実施形態においては、海島型複合繊維を用いる場合について詳しく説明するが、海島型複合繊維以外の極細繊維発生型繊維を用いても、また、極細繊維発生型繊維を用いずに、直接極細繊維を紡糸してもよい。
【0017】
海成分の熱可塑性樹脂としては、島成分の樹脂とは溶剤に対する溶解性または分解剤に対する分解性を異にする熱可塑性樹脂が選ばれる。海成分を構成する熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,エチレンプロピレン樹脂,エチレン酢酸ビニル樹脂,スチレンエチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、などが挙げられる。
【0018】
島成分を形成し極細繊維を形成する樹脂成分である熱可塑性樹脂としては、ナイロン系樹脂が用いられる。ナイロン系樹脂の具体例としては、例えば、6−ナイロン,6,6−ナイロン,10−ナイロン,11−ナイロン,12−ナイロン,6,12−ナイロン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
極細繊維の繊維絡合体の製造方法としては、例えば、海島型複合繊維を溶融紡糸してウェブを製造し、ウェブを絡合処理した後、海島型複合繊維から海成分を選択的に除去して極細繊維を形成するような方法が挙げられる。ウェブを製造する方法としては、スパンボンド法などにより紡糸した長繊維の海島型複合繊維をカットせずにネット上に捕集して長繊維ウェブを形成する方法や、長繊維をステープルにカットして短繊維ウェブを形成する方法等が挙げられる。これらの中では、緻密さ及び充実感に優れている点から長繊維ウェブが特に好ましい。また、形成されたウェブには形態安定性を付与するために融着処理を施してもよい。
【0020】
通常、海島型複合繊維からなるウェブの海成分を除去して極細繊維を形成するまでの何れかの工程において、絡合処理、水蒸気による熱収縮処理等の繊維収縮処理を施すことにより繊維の緻密化処理を施すことが好ましい。絡合処理としては、例えば、得られたウェブを5〜100層程度重ね、ニードルパンチや高圧水流処理等の公知の不織布製造方法を用いてウェブに絡合処理を行うような方法が用いられる。
【0021】
海島型複合繊維の海成分は、ウェブを形成させた後の適当な段階で抽出または分解して除去することができる。このような抽出除去または分解除去により海島型複合繊維が極細繊維化されて繊維束状の極細繊維が形成される。
【0022】
極細繊維の繊度は1.5dtex以下であり、0.001〜1.2dtex、さらには0.002〜1.0dtex、とくには0.005〜0.8dtex、ことには0.005〜0.5dtexであることが好ましい。繊度が高すぎる場合には、緻密感が不充分になり、粗密感のある繊維絡合体が得られる傾向がある。また、繊度が低すぎる繊維は製造しにくく、また、繊維同士が解けないで集束してしまい、得られる繊維絡合体の剛性が高くなる傾向がある。
【0023】
繊維絡合体には何れかの工程で高分子弾性体が含浸付与される。含浸付与される高分子弾性体の割合としては、極細繊維100質量部に対して5〜25質量部,さらには8〜20質量部であることが好ましい。高分子弾性体の量が多すぎる場合には反発感が高くなってゴム感が増すことにより、しなやかさが低下する傾向がある。また、少なすぎる場合には折り曲げた際に折れ皺が残り、品位が低下する傾向がある。
【0024】
高分子弾性体は、極細繊維発生型繊維の繊維絡合体または極細繊維化された繊維絡合体に高分子弾性体の溶液やエマルジョン等の樹脂液を含浸付与した後、高分子弾性体を凝固させることにより含浸付与される。高分子弾性体としては、多孔性の高分子弾性体であっても、非多孔性の高分子弾性体であってもよい。
【0025】
このような高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリウレタン,アクリル系弾性体,シリコーン系弾性体,ジエン系弾性体,ニトリル系弾性体,フッ素系弾性体,ポリスチレン系弾性体,ポリオレフィン系弾性体,ポリアミド系弾性体,ハロゲン系弾性体等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中ではポリウレタンが耐摩耗性や機械的特性に優れる点から好ましい。
【0026】
ポリウレタンの具体例としては、ポリカーボネート系ポリウレタン,ポリエステル系ポリウレタン,ポリエーテル系ポリウレタン,ポリカーボネート/エーテル系ポリウレタン等が挙げられる。
【0027】
繊維絡合体または含浸付与される高分子弾性体は、顔料を含有したり、染料で染色されていてもよい。顔料は、繊維絡合体にバインダとなる高分子弾性体で固着されたり、繊維絡合体を形成する繊維自身に混練されたりしてもよいが、繊維絡合体に高分子弾性体で固着されることが着色性及び色合わせが容易である点から好ましい。
【0028】
顔料の種類は特に限定されない。その具体例としては、例えば、赤〜橙系としては、ジケトピロロピロール系顔料,キナクリドン系顔料,アントラキノン系顔料等の有機顔料や、酸化鉄等の無機顔料;黄色系としては、イソインドリン系顔料,キノフタロン系顔料,縮合アゾ系顔料,アゾ錯体系顔料等の有機顔料や、ビスマスイエロー,チタンイエロー等の無機顔料;緑〜青系としては、銅フタロシアニン系顔料や、コバルトブルー,紺青,ウルトラマリン等の無機顔料;黒色系としてはカーボンブラック等が挙げられる。このような顔料は、単独でも、目的とする色に調色するために2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
このようにして、1.5dtex以下のポリアミド系極細繊維の繊維絡合体と繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体を含む未処理人工皮革基材を製造する。そして、得られた未処理人工皮革基材は、必要に応じてスライス処理やバフィング処理することにより厚さ調整や平坦化処理される。このようにして、未処理人工皮革基材を準備する。
【0030】
未処理人工皮革基材の厚さは、0.15〜3.0mm、さらには0.3〜2.0mm程度であることが好ましい。また、未処理人工皮革基材の目付は50〜1650g/m2、さらには90〜1100g/m2程度であることが充実感に優れた人工皮革基材が得られる点から好ましい。
【0031】
また、未処理人工皮革基材の見掛け密度は、0.2〜0.5g/cm3、さらには0.25〜0.4g/cm3、とくには0.3〜0.4g/cm3、程度であることが充実感に優れた人工皮革基材が得られる点から好ましい。
【0032】
次に、未処理人工皮革基材をベンジルアルコールを含む処理液で処理する。具体的には、10〜300g/Lのベンジルアルコールを含む処理液に90〜110℃の温度で浸漬する。このような処理により、未処理人工皮革基材を見掛けの収縮率が好ましくは5〜40%になるように収縮させるとともに、ナイロン系極細繊維の機械的強力を低下させてしなやかさを向上させる。
【0033】
本実施形態の人工皮革基材の製造方法においては、処理液中のベンジルアルコールの濃度と処理液の温度とは重要である。すなわち、所定の濃度及び温度条件で未処理人工皮革基材を処理することにより、本実施形態の人工皮革基材が得られる。
【0034】
ベンジルアルコールを含む処理液としては、ベンジルアルコールを含むエマルジョン等の水性液が好ましく用いられる。また、ベンジルアルコールを含む処理液は、消泡剤、浴中柔軟剤、あたり防止剤等を含有してもよい。ベンジルアルコールを含む処理液での処理には、ドラム染色機、常圧ジッカー染色機、高圧ジッカー染色機、液流染色機等が用いられる。
【0035】
処理液中のベンジルアルコールの濃度は、10〜300g/L、さらには30〜150g/L、とくには50〜100g/Lであることが好ましい。また、ベンジルアルコールを含む処理液による処理温度は昇温時の最高温度が80〜110℃、さらには、90〜110℃、とくには、100〜110℃であることが好ましい。ベンジルアルコールの濃度が高すぎるまたは処理温度が高すぎる場合には、未処理人工皮革基材が充分に収縮して引き締まることにより充実感は向上するが、極細繊維が劣化することにより引裂強力等の機械的特性が低下する傾向にある。一方、ベンジルアルコールの濃度が低すぎるまたは処理温度が低すぎる場合には未処理人工皮革基材が充分に収縮せずに引き締まりにくくなり、所望の充実感が得られなくなる傾向がある。
【0036】
処理液による未処理人工皮革基材の処理時間としては、処理温度やベンジルアルコールの濃度にもよるが、最高温度で5〜180分間、さらには20〜60分間維持することが好ましい。最高温度での処理時間が5分間未満である場合には処理の効果が充分に得られず、最高温度での処理時間が180分間を超える場合には生産性が低下する。
【0037】
また、ベンジルアルコールを含む処理液で処理した後は、ソーピングを行なうことが好ましい。ソーピングの条件は特に限定されないが、例えば常温〜100℃程度の水に、苛性ソーダ、ソーダ灰又はトリポリリン酸ソーダなどのアルカリ剤、界面活性剤あるいはキレート剤などを添加したソーピング溶液により処理する条件が挙げられる。また、ソーピングは複数回行うことが好ましく、例えば、1回目のソーピングにはアルカリ剤や界面活性剤を添加したソーピング溶液を用い、2回目のソーピングは、水のみで処理するようなソーピングを行なうことが好ましい。また、ベンジルアルコールを含む処理液による処理及びソーピングに引き続いて、染色等の後加工処理を必要に応じて施してもよい。
【0038】
未処理人工皮革基材をベンジルアルコールを含む処理液により処理することにより、未処理人工皮革基材が収縮することにより繊維間の空隙が減少する。また、ナイロン系極細繊維の機械的強力を低下させる。このようにして未処理人工皮革基材が人工皮革基材に変化する。このときの処理による未処理人工皮革基材の見掛けの収縮率としては、5〜40%、さらには10〜25%、とくには10〜20%であることが好ましい。なお、収縮率は、タテ方向とヨコ方向の収縮率の平均値である。見掛けの収縮率が低すぎる場合には未処理人工皮革基材に含まれる極細繊維の繊維密度が充分に緻密化しない傾向がある。また、見掛けの収縮率が高すぎる場合には未処理人工皮革基材に含まれる極細繊維の機械的強力が低下しすぎて、引裂強力等の機械的特性が低下しすぎる傾向がある。
【0039】
このようにして得られる人工皮革基材は、1.5dtex以下のナイロン系極細繊維の繊維絡合体と繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体とを含み、見掛け密度0.3〜0.55g/cm3であり、20%強力のタテ方向/ヨコ方向の比が0.5〜1.25であり、厚さ1mm当たりの引裂強力が2.5kgf/mm以上である。このような人工皮革基材は、天然皮革のような充実感としなやかな風合いを兼ね備えるとともに、極めて平滑な表面を形成させることができる。
【0040】
人工皮革基材の厚さは特に限定されないが、0.1〜3mm、さらには0.3〜2mm程度であることが好ましい。また、人工皮革基材の目付は50〜1650g/m2、さらには90〜1100g/m2程度であることが充実感に優れた人工皮革が得られる点から好ましい。
【0041】
また、人工皮革基材の見掛け密度は、0.3〜0.55g/cm3、さらには0.35〜0.5g/cm3、とくには0.4〜0.5g/cm3であることが充実感に優れた人工皮革基材が得られる点から好ましい。人工皮革基材の見掛け密度が低すぎる場合には充実感が不足し、高すぎる場合にはしなやかさが低下する傾向がある。
【0042】
また、人工皮革基材の20%強力のタテ方向/ヨコ方向の比は0.5〜1.25であり、0.6〜1.2、さらには0.8〜1.2であることが好ましい。ここで、20%強力のタテ方向/ヨコ方向の比とは、通常、20%強力が最も高くなる製造工程における進行方向をタテ方向、タテ方向に直交する方向をヨコ方向とし、それぞれ測定された20%強力の比である。このような20%強力のタテ方向/ヨコ方向の比を有する人工皮革基材は均質な基材であるために、表面に大きな空隙を存在させにくくなる。
【0043】
また、人工皮革基材の厚さ1mm当たりの引裂強力は2.5kgf/mm以上であり、好ましくは3.0〜8.0kgf/mm、さらに好ましくは3.0〜6.0kgf/mmである。このような範囲である場合には、実用上の充分な機械的特性を維持することができる。なお、試験片は各人工皮革基材について、任意の1方向、その方向に対して45度回転させた方向、その方向に対して90度回転させた方向のそれぞれの方向について作成し、それらで測定した引裂強力のうちの最大値を厚みで除した値を1mm当たりの引裂強力とする。
【0044】
また、タテ方向において、引張速度200mm/分で1.8kgfとなるときの伸長率が6.5%以下、さらには6.0%、とくには5.0%以下であることが好ましい。ここで、タテ方向の伸長率とは、製造工程における進行方向をタテ方向とし、そのタテ方向で引張速度200mm/分で引張ったときに1.8kgfになったときの伸長率である。
【0045】
人工皮革基材は、必要に応じてスライス処理またはバフィング処理により厚さ調整及び平坦化処理されたり、揉み柔軟化処理、空打ち柔軟化処理、逆シールのブラッシング処理、防汚処理、親水化処理、滑剤処理、柔軟剤処理、酸化防止剤処理、紫外線吸収剤処理、蛍光剤処理、難燃剤処理等の仕上げ処理が施されたりしてもよい。
【0046】
また、このような人工皮革基材は、表面に銀面樹脂層を付与することにより銀付調人工皮革に仕上げられる。また、繊維絡合体の表層の繊維に対して起毛処理することによりスエード調人工皮革に仕上げられる。
【0047】
なお、人工皮革基材に銀面樹脂層を形成させる方法としては、剥離紙上に表皮層を形成するための皮膜を形成し、樹脂層を接着層を介して人工皮革基材の表面に接着する乾式造面法や、人工皮革基材の表面に銀面樹脂層を形成するための高分子弾性体の樹脂液をスプレーコートやリバースコート等の方法により塗布し、樹脂液を乾燥させることにより銀面樹脂層の皮膜を形成させるダイレクトコート法が知られている。これらの中では、ダイレクトコート法は生産性に優れる点では好ましいが、多くの空隙が存在する人工皮革基材に適用した場合には液が内部に沈み込んだり、表面に不織布の形状が浮き出たりするという欠点があった。ダイレクトコート法のこれらの欠点は銀面樹脂層の厚みを厚くすることにより解決できるが、銀面樹脂層の厚みを厚くした場合には、ゴムライクな風合いになるために天然皮革の風合いから離れる傾向がある。
【0048】
本実施形態の人工皮革基材は、ベンジルアルコールを含む処理液で処理されることにより、収縮させられて空隙を減少させている。そのために、繊維密度が緻密で高い平滑性を有する表面を形成させることができる。そして、このような表面に対しては、ダイレクトコート法を用いても樹脂液が沈み込みにくいために、厚すぎない銀面樹脂層を形成することができる。
【0049】
銀面樹脂層を形成するための樹脂成分としては、例えば、ポリウレタン、アクリル系弾性体、シリコーン系弾性体、ジエン系弾性体、ニトリル系弾性体、フッ素系弾性体、ポリスチレン系弾性体、ポリオレフィン系弾性体、ポリアミド系弾性体、ハロゲン系弾性体等が挙げられる。これらの中ではポリウレタンが耐摩耗性や機械的特性に優れる点から好ましい。また、銀面樹脂層を形成するための樹脂成分には、必要に応じて、着色剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等を含有してもよい。
【0050】
銀面樹脂層の厚さは10〜1000μm、さらには50〜300μmであることが好ましい。また、銀面樹脂層は、ベースコート層、着色層、トップコート層のような複数層が適宜積層された積層構造を有していてもよい。また、銀面樹脂層はエンボス加工等により形成されたシボを有していてもよい。
【0051】
さらに、得られた銀付調人工皮革は、次のように定義される伸長セット率が20〜50%、さらには30〜40%であることが充実感に優れる点から好ましい。
[伸長セット率]
得られた銀付調人工皮革から、長さ20cm×幅2.54cmの短冊サンプルを作成する。そして、短冊サンプルの長さ方向の両端から各5cmの位置に標線間距離10cmの標線を引く。そして、長さ方向が垂直方向になるように短冊サンプルを吊るし、8kgfの荷重を10分間かけた後、荷重を取り除き10分間放置する。この操作を5回繰り返し、5回目に10分間荷重をかけた状態の標線間距離(H1)と、荷重を取り除いて10分放置後の標線間距離(H2)とを測定する。製造工程の進行方向をタテ方向としタテ方向に垂直な方向をヨコ方向とし、各方向の3本ずつの短冊サンプルを測定し、計6本のH1とH2の平均値を求めた。そして、H1及びH2の平均値を用いて、下記式により、伸長セット率を算出する。
伸長セット率(%)=[(H2-10)/(H1-10)]×100
また、このような伸長セット率である場合には、特に銀付調人工皮革を靴として使用したときに、天然皮革のように、足に馴染みやすい靴が得られる点から好ましい。伸長セット率が低すぎる場合には、製造された靴を履いた場合に足の形状に馴染みにくくなり、着用感が低下する傾向がある。また、伸長セット率が20%を超える場合には、製造された靴を履いた場合に銀付調人工皮革が足の形状に沿った状態に変形しやすくなる。なお、50%を超える場合には、銀付調人工皮革が継時的に伸びやすくなる傾向があり、靴と足の間に隙間ができやすくなる傾向がある。
【0052】
なお、未処理人工皮革基材をベンジルアルコールを含む処理液で処理する場合に、80〜110℃の条件であっても、ベンジルアルコールの濃度が10g/L未満であれば伸長セット率が20%よりも低下する傾向があり、ベンジルアルコールの濃度が300g/Lを超える場合には伸長セット率が50%を超える傾向がある。
【0053】
このようにして得られる人工皮革は、靴、衣料、手袋、鞄、ボール、インテリア、車輌内装用途などの皮革調素材として好ましく用いられる。
【実施例】
【0054】
実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。また、以下の説明において、「部」または「%」は特記のない限り質量基準とする。
【0055】
[実施例1]
6−ナイロンとポリエチレンをそれぞれ1軸押出機で溶融させ、島成分が6−ナイロン、海成分が高流動性低密度ポリエチレンで、海成分/島成分比率=50/50である300島の海島型複合繊維を複合紡糸ノズルで溶融紡糸した。そして、得られた糸を延伸、クリンプ、カットして、3.5dtex、カット長51mmのステープルを得た。得られたステープルをカードに通し、クロスラッパー方式によりウェブとし、積層した。次に980パンチ/cm2の針刺し密度でニードルパンチすることにより、目付530g/m2の不織布を得た。
【0056】
そして、得られた不織布を加熱した後、プレスすることによりポリエチレン成分を溶融固着させて不織布表面を平滑にした。そして、表面を平滑にされた不織布にポリエステル系ポリウレタンの13%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を含浸させた後、DMF水溶液中に浸漬してポリウレタンをスポンジ状に凝固させた。そして、海島型複合繊維の海成分のポリエチレンを95℃のトルエンで抽出除去した後、乾燥することにより人工皮革基材の中間体を得た。そして、中間体の両面を400番手のサンドペーパーを用いてバフィング処理して表面を平滑化することにより未処理人工皮革基材(a1)を得た。未処理人工皮革基材(a1)は、0.006dtexの極細繊維の繊維絡合体と繊維絡合体に含浸付与されたポリウレタンからなる、見掛け密度0.353g/cm3、目付476g/m2、厚さ1.35mmの人工皮革基材であった。
【0057】
一方、水にベンジルアルコールの乳化分散液を投入することにより、60g/Lのベンジルアルコールを含む処理液を調整し、処理液をドラム染色機に移送した。そして、未処理人工皮革基材(a1)を洗浄リラックス処理した後、ドラム染色機の槽内の処理液に浸漬させ、20℃から110℃まで約40分間で昇温し、110℃で40分間浸漬を続けた。そして、ソーピングをし、さらに80℃のお湯で2回湯洗いした。
【0058】
そして、ソーピング後の未処理人工皮革基材(a1)を染色した。染色は、ドラム染色機を用いて、黒色の酸性染料を含む染料液で95℃で60分間染色処理を行った後、ソーピングの後、合成タンニンを用いたフィックス処理をおこなった。そして、100℃で乾燥した後、仕上げセットを行うことにより染色された人工皮革基材(A)を得た。このようにして得られた人工皮革基材(A)は、0.006dtexの極細繊維の繊維絡合体と繊維絡合体に含浸付与されたポリウレタンからなる、見掛け密度0.43g/cm3、目付636g/m2、厚さ1.48mmの人工皮革基材であった。また、20%強力のタテ方向/ヨコ方向の比は1.15であり、タテ方向の厚さ1mm当たりの引裂強力は3.8Kgf/mmであり、タテ方向の伸長率は5.0%であった。また、ベンジルアルコールを含む処理液の処理による見掛けの収縮率はタテ方向16%、ヨコ方向11%、平均13.5%であった。
【0059】
なお、人工皮革基材の各種特性は次のように測定された。
【0060】
(目付(g/m2))
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
【0061】
(厚さ(mm)及び見掛け密度(g/cm3))
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて厚さを測定し、この値と目付の値とから見掛け密度を算出した。
【0062】
(20%強力)
JIS L1096の8.12.1「引張強度試験」に準じて、人工皮革基材から切り出した2.5cm×16cmの試験片を用いて引張速度100mm/分で測定した、製造工程における進行方向であるタテ方向及びヨコ方向のそれぞれの応力−歪み曲線を得た。そして、応力−歪み曲線から20%伸びたときの応力を読み取り、20%強力を求めた。
【0063】
(引裂強力)
得られた人工皮革基材から切り出した4cm×10cmの試験片を用いて、JISL1096の8.15.1 A−1法(シングルタング)「引裂強力試験」に準じて、人工皮革基材を引張速度100mm/分で引裂く時の荷重を測定し引裂強力を求めた。なお、試験片は、製造工程における進行方向であるタテ方向及びヨコ方向のそれぞれの方向について作成し、それらで測定した。そして、タテ方向の引裂強力のうちの最大値を厚みで除した値を1mm当たりの引裂強力とした。
【0064】
(タテ方向伸長率)
JIS L1096に準じて、人工皮革基材の製造工程の進行方向(タテ方向)を長手方向とする試験片を作成し、200mmのつかみ間隔、50mmのつかみ幅で、引張速度200mm/分で1.8kgfとなったときの伸度を3つのサンプルで測定した。そして、それらの平均値を、タテ方向において、引張速度200mm/分で1.8kgfとなるときの伸度を伸長率(%)とした。
【0065】
(見掛けの収縮率)
得られた人工皮革基材から300cm×140cmの試験片を切り出し、中央部に50cm×50cm(タテ×ヨコ)のマーキングをして、処理液による処理前後のタテ方向とヨコ方向の寸法変化を測定した。そして、タテ方向とヨコ方向の収縮率の平均値を算出した。
【0066】
そして、人工皮革基材(A)にダイレクトコート法を用いて銀面樹脂層を形成することにより銀付調人工皮革を製造した。具体的には、人工皮革基材(A)の表面にリバースコーターを用いてポリウレタン溶液を塗布することにより、水滴3ccを滴下したときの吸水時間が3分間以上になる程度に平坦化した。その表面に、顔料及びポリウレタンを含む表皮層形成用の樹脂液を塗布することにより膜厚14μmのポリウレタン層を形成した。そしてポリウレタン層の表面に、岩田カップ(IWATA NK-2 12s)で30cpに調整したトップコート(ラッカー)を塗布し、表皮層の一部として、膜厚5μmのトップコートを形成して銀付調人工皮革を得た。そして、得られた銀付調人工皮革を以下のようにして評価した。
【0067】
(伸長セット率)
銀付調人工皮革から、長さ20cm×幅2.54cmの短冊サンプルを作成した。そして、短冊サンプルの長さ方向の両端から各5cmの位置に標線間距離10cmの標線を引いた。そして、長さ方向が垂直方向になるように短冊サンプルを吊るし、8kgfの荷重を10分間かけた後、荷重を取り除き10分間放置した。この操作を5回繰り返し、5回目に10分間荷重をかけた後の標線間距離(H1:cm)と、荷重を取り除いて10分放置後の標線間距離(H2:cm)とを測定した。製造工程の進行方向をタテ方向としタテ方向に垂直な方向をヨコ方向とし、各方向の3本ずつの短冊サンプルを測定し、計6本のH1とH2の平均値を求めた。そして、H1及びH2の平均値を用いて、下記式により、伸長セット率を算出した。
伸長セット率(%)=[(H2-10)/(H1-10)]×100
【0068】
(折れシボ)
得られた銀付調人工皮革を20×20cmに切りだしてサンプルを調整した。そして、中央部を境にして内側に折り曲げる等して外観を以下の基準で判定した。
A:折りまげたときに緻密で細かな折れシボ及び丸みを帯びたような充実感のある折れしわが発生した。また、ドレープ性にも優れていた。
B:折れシボは座屈の大きな粗いシボや深いシワが発生して緻密な折れシボが得られず充実感に乏しい風合いであった。また、ドレープ性にも劣っていた。
C:充実感が著しく低かった。
【0069】
(反発感)
得られた人工皮革を20×20cmに切りだしてサンプルを調整した。そして、人工皮革を丸めるように手で握った後、手を開いて解放したときの様子を以下のように判定した。
A:天然皮革のように、丸めたときの形状を留めた。
B:丸めたときの形状をしばらく留め、その後徐々に元の形状に回復した。
C:反発力により丸めたときの形状からすぐに元の形状に回復した。
【0070】
以上の評価結果を下記表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
[実施例2〜9、及び比較例1〜4]
実施例1において、処理液中のベンジルアルコールの濃度、及び処理液の温度を表1に記載のように変更して処理した以外は実施例1と同様の工程を経て、人工皮革基材及び銀付調人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0073】
[実施例10〜12]
6−ナイロンとポリエチレンをそれぞれ1軸押出機で溶融させ、島成分が6−ナイロン、海成分が高流動性低密度ポリエチレンで、海成分/島成分比率=50/50である25島の海島型複合繊維を複合紡糸ノズルで溶融紡糸した。そして、複合紡糸ノズルから吐出された海島型複合繊維を3500m/分の空気流で延伸しながら捕集ネット上に吹き付けることにより、海島型複合繊維の長繊維ウェブを得た。得られた長繊維ウェブの目付は36g/m2であり、海島型複合繊維の繊度は2dtexであった。この長繊維ウェブを、ウェブの長さ方向に対して折り返し角度84度で一定間隔で連続的に折り重ねることにより、10層のウェブを積み重ねた、幅210cm,目付が360g/m2の積層ウェブを得た。そして、得られた積層ウェブに、1バーブのフェルト針を用いて1400パンチ/cm2のニードルパンチを施し、さらに、加熱ロール間を通過させて熱プレス処理することにより、目付650g/m2、厚さ1.53mmである海島型複合繊維の絡合不織布を得た。
【0074】
そして、海島型複合繊維の絡合不織布にポリエステル系ポリウレタンの18%DMF溶液を含浸させた後、DMF水溶液中に浸漬してポリウレタンをスポンジ状に凝固させた。そして、海島型複合繊維の海成分のポリエチレンを95℃のトルエンで抽出除去した後、乾燥することにより、極細長繊維の繊維束の繊維絡合体を含む人工皮革基材の中間体を得た。さらに、中間体に対して、極細繊維同士の滑り性を向上させるために、滑剤(シリコン系油剤の水分散液)を得られる人工皮革基材に対して1.8%になるように付与した。絡合処理直前の積層ウェブの形態角を45度としたとき、油剤付与直後の形態角は56度であった。次いで、縦方向(MD)に2%のオーバーフィード、横方向(TD)に3%の拡幅、雰囲気温度120℃の条件にて乾燥を兼ねた加熱処理を実施した。そして、中間体の両面を400番手のサンドペーパーを用いてバフィング処理して表面を平滑処理することにより未処理人工皮革基材(b1)を得た。未処理人工皮革基材(b1)は、0.1dtexの極細繊維の繊維絡合体と繊維絡合体に対して含浸付与されたポリウレタンからなる、見掛け密度0.379g/cm3、目付553g/m2、厚さ1.46mmの人工皮革基材であった。
【0075】
未処理人工皮革基材(a1)に代えて、未処理人工皮革基材(b1)を用い、処理液中のベンジルアルコールの濃度、及び処理液の温度を表2に記載のように処理した以外は、以降の工程は実施例1と同様の工程を経て、人工皮革基材及び銀付調人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
[実施例13]
6−ナイロンとポリエチレンをそれぞれ1軸押出機で溶融させ、島成分が6−ナイロン、海成分が高流動性低密度ポリエチレンで、海成分/島成分比率=50/50である12島の海島型複合繊維を複合紡糸ノズルで溶融紡糸した。そして、複合紡糸ノズルから吐出された海島型複合繊維を3500m/分の空気流で延伸しながら捕集ネット上に吹き付けることにより、海島型複合繊維の長繊維ウェブを得た。得られた長繊維ウェブの目付は36g/m2であり、海島型複合繊維の繊度は2dtexであった。この長繊維ウェブを、ウェブの長さ方向に対して折り返し角度84度で一定間隔で連続的に折り重ねることにより、10層のウェブを積み重ねた、幅210cm,目付が360g/m2の積層ウェブを得た。そして、得られた積層ウェブに、1バーブのフェルト針を用いて1400パンチ/cm2のニードルパンチを施し、さらに、加熱ロール間を通過させて熱プレス処理することにより、目付650g/m2、厚さ1.53mmである海島型複合繊維の絡合不織布を得た。
【0078】
そして、海島型複合繊維の絡合不織布にポリエステル系ポリウレタンの18%DMF溶液を含浸させた後、DMF水溶液中に浸漬してポリウレタンをスポンジ状に凝固させた。そして、海島型複合繊維の海成分のポリエチレンを95℃のトルエンで抽出除去した後、乾燥することにより、極細長繊維の繊維束の繊維絡合体を含む人工皮革基材の中間体を得た。さらに、中間体に対して、極細繊維同士の滑り性を向上させるために、滑剤(シリコン系油剤の水分散液)を得られる人工皮革基材に対して1.8%になるように付与した。絡合処理直前の積層ウェブの形態角を45度としたとき、油剤付与直後の形態角は56度であった。次いで、縦方向(MD)に2%のオーバーフィード、横方向(TD)に3%の拡幅、雰囲気温度120℃の条件にて乾燥を兼ねた加熱処理を実施した。そして、中間体の両面を400番手のサンドペーパーを用いてバフィング処理して表面を平滑処理することにより未処理人工皮革基材(c1)を得た。未処理人工皮革基材(c1)は、0.2dtexの極細繊維の繊維絡合体と繊維絡合体に対して含浸付与されたポリウレタンからなる、見掛け密度0.36g/cm3、目付450g/m2、厚さ1.25mmの人工皮革基材であった。
【0079】
未処理人工皮革基材(a1)に代えて、未処理人工皮革基材(c1)を用い、処理液中のベンジルアルコールの濃度、及び処理液の温度を表3に記載のように処理した以外は、以降の工程は実施例1と同様の工程を経て、人工皮革基材及び銀付調人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0080】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の人工皮革は、靴、衣料、手袋、鞄、ボール、インテリア、車輌用途などの天然皮革の代替素材として用いられる。