(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多数の露光されたフィールドを備える基板上のフィールドについてのデータであって、フィンガープリント、トポグラフィ、レイアウトおよび構造のデータの少なくとも一つを含むデータを得ることと、
前記得られたデータに基づいて各フィールドに含まれる一以上のサブフィールドを定義することであって、前記基板上の各フィールドの場所に応じて前記一以上のサブフィールドのサイズおよび分布の少なくとも一方が異なることを可能としつつ、製品、製品フィーチャおよび製品領域の少なくとも一つが各サブフィールドに含まれるように前記サブフィールドを定義することと、
前記サブフィールドに関連するフィールドを処理してサブフィールド補正情報を生成することと、
前記サブフィールド補正情報を用いて前記サブフィールドの露光を補正して前記サブフィールド内のオーバレイ、パターン位置またはクリティカルディメンジョン(CD)の誤差を低減することと、を備えることを特徴とするリソグラフィ方法。
前記得られたデータは、測定データおよびシミュレーションのデータの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のリソグラフィ方法。
露光することは、レチクルを用いることを含み、当該方法は、前記レチクルについてのデータを得ることをさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のリソグラフィ方法。
前記ユーザインターフェースは、特定のリソグラフィ装置内の特定のアクチュエータの応答特性にしたがってサブフィールドの選択肢を制限するよう構成されることを特徴とする請求項12または13に記載のコンピュータプログラム製品。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態の詳細を説明する前に、本発明の実施の形態が実施されうる環境例を示すことが役立つであろう。
【0017】
図1は、リソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、放射ビームB(例えばUV放射またはDUV放射)を調整するよう構成される照明システム(イルミネータ)ILと;パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構築され、特定のパラメータにしたがってパターニングデバイスを正確に位置決めするよう構成される第1位置決め装置PMに接続されるサポート構造(例えばマスクテーブル)MTと;基板(例えばレジストコートされたウェハ)Wを保持するよう構築され、特定のパラメータにしたがって基板を正確に位置決めするよう構成される第2位置決め装置PWに接続される基板テーブル(例えばウェハテーブル)WTと;パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されるパターンを基板Wの(例えば一以上のダイを備える)ターゲット部分に投影するよう構成される投影システム(例えば、屈折型投影レンズシステム)PLと;を備える。
【0018】
照明システムは、放射を方向付け、成形または制御するための屈折型、反射型、磁気型、電磁気型、静電型または他の形式の光学素子といった各種光学素子もしくはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0019】
サポート構造は、パターニングデバイスを支持する。つまり、その重さに耐える。サポート構造は、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置のデザイン、および、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されるか否かといった他の条件に応じた方法でパターニングデバイスを保持する。サポート構造は、パターニングデバイスを保持するために機械式、真空式、静電式または他の固定技術を用いることができる。サポート構造は、フレームまたはテーブルであってよく、例えば必要に応じて固定式または可動式であってよい。サポート構造は、例えば投影システムに対して、パターニングデバイスが所望の位置にあることを確実にしてよい。本書での「レチクル」または「マスク」の用語の使用は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義であるとみなされてよい。
【0020】
本書での「パターニングデバイス」の用語は、放射ビームの断面にパターンを付して例えば基板のターゲット部分にパターンを生成するために使用可能な任意のデバイスを参照するものとして広く解釈されるべきである。放射ビームに付されるパターンは、例えばパターン位相シフトフィーチャまたはいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分における所望のパターンに完全に対応しなくてもよいことが留意されよう。たいていの場合、放射ビームに付されるパターンは、ターゲット部分に生成される集積回路などのデバイスの特定の機能層に対応するであろう。
【0021】
パターニングデバイスは、透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、さらに各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例は、マトリックス状に配列される小型のミラーを採用し、各ミラーは入射する放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜できる。傾斜されるミラーは、ミラーマトリックスにより反射される放射ビームにパターンを付与する。
【0022】
本書で用いる「投影システム」の用語は、用いられる露光放射に適切であれば、または、液浸液の仕様や真空の仕様といった他の要素について適切であれば、屈折型、反射型、反射屈折型、磁気型、電磁気型および静電型の光学システムまたはこれらの任意の組み合わせを含む、任意の形式の投影システムを包含するものと解釈されるべきである。本書での「投影レンズ」の用語のいかなる使用も、より一般的な用語である「投影システム」と同義であるとみなされてよい。
【0023】
図示されるように、装置は透過型である(例えば透過型マスクを用いる)。代わりに、装置が反射型であってもよい(例えば上述のような形式のプログラマブルミラーアレイを用いるか、反射型マスクを用いる)。
【0024】
リソグラフィ装置は、二つの基板テーブル(デュアルステージ)またはそれより多い基板テーブル(および/または二以上のマスクテーブル)を有する形式のものであってよい。このような「マルチステージ」の機械において、追加のテーブルが並行して用いられてもよいし、または、一以上のテーブルで準備ステップが実行される一方で、一以上の他のテーブルが露光に用いられてもよい。
【0025】
リソグラフィ装置は、投影システムと基板の間の隙間を埋めるように、基板の少なくとも一部が比較的高屈折率を有する液体(例えば水)により覆われる形式の装置であってもよい。液浸液は、リソグラフィ装置の他の隙間、例えばパターニングデバイスと投影システムの間に適用されてもよい。液浸技術は、投影システムの開口数を増やすための技術として周知である。本書で用いられる「液浸」の用語は、基板などの構造が流体中に水没しなければならないこと意味するのではなく、むしろ露光中に投影システムと基板の間に流体が配置されることを意味するのみである。
【0026】
図1を参照すると、イルミネータILは、放射源SOからの放射ビームを受ける。ソースおよびリソグラフィ装置は、ソースがエキシマレーザの場合、別体であってもよい。この場合、ソースがリソグラフィ装置の一部を形成するとみなされず、放射ビームがソースSOからイルミネータILに向けて、例えば適切な方向付けミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムBDの助けを借りて通過する。別の場合、例えばソースが水銀ランプの場合、ソースがリソグラフィ装置の一体的部分であってもよい。ソースSOおよびイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに、放射システムと称されてもよい。
【0027】
イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するためのアジャスタADを含んでもよい。一般に、イルミネータの瞳面における強度分布の少なくとも外側半径範囲および/または内側半径範囲(通常それぞれσアウタ、σインナと呼ばれる)を調整できる。また、イルミネータILは、インテグレータINやコンデンサCOなどの様々な他の要素を含んでもよい。イルミネータは、ビーム断面における所望の均一性及び強度分布を有するように放射ビームを調整するために用いられてもよい。
【0028】
放射ビームBは、サポート構造(例えばマスクテーブルMT)に保持されるパターニングデバイス(例えばマスクMA)に入射し、パターニングデバイスによりパターン化される。マスクMAの通過後、放射ビームBはビームを基板Wのターゲット部分Cに合焦させる投影システムPLを通過する。第2位置決め装置PWおよび位置センサIF(例えば干渉計デバイス、リニアエンコーダ、2Dエンコーダまたは静電容量センサ)の助けを借りて、放射ビームBの経路上に異なるターゲット部分Cが位置するように基板テーブルWTが正確に移動されることができる。同様に、第1位置決め装置PMおよび別の位置センサ(
図1には明示されていない)は、例えばマスクライブラリからの機械検索後またはスキャン中に、放射ビームBの経路に対してマスクMAを正確に位置決めするために用いることができる。一般にマスクテーブルMTの動きは、第1位置決め装置PMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)の助けを借りて実現されうる。同様に、基板テーブルWTの動きは、第2位置決め装置PWの一部を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを用いて実現されうる。(スキャナとは対照的に)ステッパの場合、マスクテーブルMTはショートストロークアクチュエータのみに接続されてもよいし、または、固定されてもよい。マスクMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1,M2および基板アライメントマークP1,P2を用いてアライメントされうる。基板アライメントマークは専用のターゲット部分を占めるように図示されているが、これらはターゲット部分の間に位置してもよい(これはスクライブラインアライメントマークとして知られる)。同様に、マスクMA上に二以上のダイが設けられる状況では、マスクアライメントマークがダイの間に位置してもよい。
【0029】
図示される装置は以下のモードのうち少なくとも一つで使用することができる。
1.ステップモードでは、マスクテーブルMTおよび基板テーブルWTが実質的に静止状態とされる間、放射ビームに付与されたパターン全体がターゲット部分Cに一度で投影される(つまり、単一静的露光)。その後、基板テーブルWTがX方向および/またはY方向にシフトされ、その結果、異なるターゲット部分Cが露光されることができる。ステップモードにおいて、露光フィールドの最大サイズは、単一静的露光にて結像されるターゲット部分Cのサイズを制限する。
2.スキャンモードでは、マスクテーブルMTおよび基板テーブルWTが同期してスキャンされる間、放射ビームに付与されるパターンがターゲット部分Cに投影される(つまり、単一動的露光)。マスクテーブルMTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPLの拡大(縮小)特性および像反転特性により決定されうる。スキャンモードにおいて、露光フィールドの最大サイズは、単一動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向の)幅を制限する。一方、スキャン動作の長さは、ターゲット部分の(スキャン方向の)高さを決定する。
3.別のモードでは、マスクテーブルMTがプログラマブルパターニングデバイスを保持して実質的に静止状態を維持し、基板テーブルWTが移動またはスキャンされる間、放射ビームに付与されるパターンがターゲット部分Cに投影される。このモードにおいて、一般にパルス放射源が用いられ、基板テーブルWTの移動後またはスキャン中の一連の放射パルスの間に必要に応じてプログラマブルパターニングデバイスが更新される。この動作モードは、上述のタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に適用可能である。
【0030】
上記の使用モードを組み合わせて動作させてもよいし、使用モードに変更を加えて動作させてもよく、さらに全く別の使用モードを用いてもよい。
【0031】
図2に示されるように、リソグラフィ装置LAは、リソグラフィセルLC(たまにリソセルまたはリソクラスタとも称される)の一部を形成し、これは基板上での露光前および露光後プロセスを実行するための装置も含む。従来、これらは、レジスト層を堆積させるスピンコート装置SC、露光されたレジストを現像する現像装置DE、冷却プレートCHおよびベークプレートBKを含む。基板ハンドラまたはロボットROは、基板を入力/出力ポートI/O1,I/O2から取り出し、異なるプロセス装置間で基板を移動させ、リソグラフィ装置のローディングベイLBに基板を運ぶ。これら装置(しばしば集合的にトラックと称される)は、トラック制御ユニットTCUの制御下にあり、TCU自体は監視制御システムSCSにより制御され、SCSはリソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置も制御する。したがって、異なる装置がスループットおよびプロセス効率を最大化させるように動作できる。
【0032】
ソグラフィ装置により露光される基板を正確かつ一貫して露光するため、露光された基板を検査して、後続層との間のオーバレイ誤差、ライン幅、クリティカルディメンジョン(CD)などの特性を測定することが望ましい。したがって、リソセルLC内に位置する製造設備は、リソセス内で処理されている基板Wの一部または全てを受け入れる計測システムMETをも含む。計測結果は、直接または間接的に監視制御システムSCSに提供される。もしエラーが検出されれば、特に同一バッチの別基板がまだ露光されている程度に迅速かつ高速に検査が実行できれば、後続基板の露光に対して調整がなされうる。また、すでに露光された基板も歩留まり向上のために剥離および再加工されてよいし、または、廃棄されてもよく、これにより不良であることが分かっている基板上でさらに別の処理が実行されるのを回避できる。基板のいくつかのターゲット部分のみが不良である場合には、良好であるターゲット部分のみにさらなる露光が実行されることができる。
【0033】
計測システムMET内において、検査装置は、基板の特性を決定するため、具体的には、異なる基板または同じ基板の異なる層が層ごとにどのように異なるのかを決定するために用いられる。検査装置は、リソグラフィ装置LAまたはリソセルLC内に一体化されてもよいし、または、独立式の装置であってもよい。最速の測定を可能にするため、検査装置は、露光されたレジスト層における特性を露光直後に測定することが望ましい。しかしながら、レジスト内の潜像は非常に低いコントラストを有し(放射で露光されたレジスト部分とそうでないレジスト部分の間には非常に小さい屈折率差しかない)、全ての検査装置が潜像の有効な測定の実行に十分な感度を有しているわけではない。したがって、測定は露光後のベークステップ(PEB)の後に実行されうる。PEBは通常、露光された基板上で実行される第1ステップであり、レジストの露光された部分と露光されていない部分の間のコントラストを増大させる。この段階において、レジスト内の像は半潜像と称されうる。現像されたレジスト像の測定を実行することも可能であり(この時点でレジストの露光された部分または露光されていない部分のいずれかが除去されている)、または、エッチングなどのパターン転写ステップの後に実行することも可能である。後者の可能性は、基板の不良を再加工する可能性を制限するが、依然として有益な情報を提供しうる。
【0034】
図3は、
図1のデュアルステージ装置で基板Wのターゲット部分(例えばダイ)を露光するステップを模式的に示す。
【0035】
破線の箱内の左手側に測定ステーションMEAにて実行されるステップが示される一方、右手側は露光ステーションEXPにて実行されるステップを示す。上述のように、随時、基板テーブルWTa,WTbの一方が露光ステーションに位置する一方、他方が測定ステーションに位置する。この記載の説明のため、基板Wがすでに露光ステーションに搭載されていることを仮定する。ステップ300にて、新しい基板W’が図示しない機構により装置に搭載される。これら二つの基板W,W’は、リソグラフィ装置のスループットを増大させるために並行して処理される。
【0036】
最初に新しく搭載された基板W’を参照すると、これは事前に処理されていない基板であってよく、装置での初回露光用の新しいフォトレジストが準備されてもよい。しかしながら、たいていの場合、説明するリソグラフィプロセスは、一連の露光および処理ステップのうちの一つのステップにすぎないため、基板W’がこの装置および/または他のリソグラフィ装置をすでに複数回通過しており、同様の後続の処理を受けるかもしれない。特にオーバレイ性能を改善するという問題に対しては、一以上のパターニングおよび処理のサイクルがすでになされた基板上の真に正確な位置に新しいパターンが付与されることを確実にすることが課題である。これら処理ステップは、良好なオーバレイ性能を達成するために測定および補正されるべき歪みを基板に徐々に導入する。
【0037】
事前および/または後続のパターニングステップは、今述べたように他のリソグラフィ装置で実行されてもよいし、異なる形式のリソグラフィ装置でさえ実行されてもよい。例えば、分解能やオーバレイなどのパラメータが非常に厳しく要求されるデバイス製造プロセスのいくつかの層は、要求がそれほど厳しくない他の層よりも高度なリソグラフィツールで実行されうる。したがって、いくつかの層が液浸型のリソグラフィ装置で露光される一方、残りは「ドライ」ツールで露光されてもよい。いくつかの層がDUV波長で動作するツールで露光される一方、残りがEUV波長の放射を用いて露光されてもよい。
【0038】
302にて、基板マークP1等を用いるアライメント測定および画像センサ(不図示)は、基板テーブルWTa/WTbに対する基板のアライメントの測定および記録に用いられる。さらに、基板W’にわたる複数のアライメントマークがアライメントセンサASを用いて測定されるであろう。これらの測定は、一実施の形態において「ウェハグリッド」を確立するために用いられる。ウェハグリッドは、基板にわたるマークの分布をきわめて正確にマップ化し、名目上の矩形グリッドに対する任意の歪みを含む。
【0039】
ステップ304にて、レベルセンサLSを用いてX−Y位置に対するウェハ高さ(Z)のマップも測定される。従来、高さマップは、露光されるパターンの正確な焦点合わせを実現するためにのみ用いられる。詳細は後述されるように、現在の装置は、アライメント測定を補うためにも高さマップデータを用いる。
【0040】
基板W’が搭載されたとき、実行すべき露光を定義するとともに、基板の特性および事前に作られたパターンないしその上に作られるべきパターンを定義するレシピデータ306が受信される。これらレシピデータに対して、302,304にてなされたウェハ位置、ウェハグリッドおよび高さマップの測定結果が追加され、その結果、レシピおよび測定データ308の完全なセットを露光ステーションEXPに送信できる。アライメントデータの測定結果は、例えばリソグラフィプロセスで製造される製品パターンに対して固定または名目上固定された関係性で形成されるアライメントターゲットのXおよびY位置を備える。露光直前に取得されるこれらのアライメントデータは、補正モデルのパラメータを提供するために組み合わされ、内挿される。これらパラメータおよび補正モデルは、現行のリソグラフィステップで付与されるパターンの位置を補正するために露光動作中に用いられるであろう。従来の補正モデルは、「理想」グリッドの並進、回転および拡大縮小を異なる次元で定義する4、5または6のパラメータを備えうる。US2013230797A1にさらに記載されるように、より多くのパラメータを用いる高度なモデルが知られている。
【0041】
310にて、ウェハW’およびWが交換され、測定された基板W’が露光ステーションEXPに入る基板Wとなる。
図1の装置例において、この交換は、装置内のサポートWTaおよびWTbの交換により実行され、その結果、基板W,W’はそれらのサポート上に正確に固定および位置決めされたままとなり、基板テーブルと基板自体の間の相対的なアライメントが維持される。したがって、いったんテーブルが交換されると、投影システムPSと基板テーブルWTb(以前はWTa)の間の相対位置を決定することが、露光ステップの制御にて基板W(以前はW’)についての測定情報302,304を使用するのに必要なことの全てである。ステップ312にて、マスクアライメントマークM1,M2を用いてレチクルアライメントが実行される。ステップ314,316,318にて、多数のパターンの露光を完了するために、基板Wを横切る連続的なターゲット位置にてスキャン動作および放射パルスが適用される。
【0042】
露光ステップの実行時に測定ステーションにて得られるアライメントデータおよび高さマップを用いることにより、これらのパターンが所望の場所に対して、特に同じ基板上に事前に配置されているフィーチャに対して正確にアライメントされる。露光された基板(ここでW”の符号が付される)は、ステップ320にて装置から取り外され、露光されたパターンにしたがってエッチングや他のプロセスを受ける。
【0043】
先進的な補正モデルが用いられる場合であっても、リソグラフィ装置のオーバレイ性能には誤差が必然的に残る。個々のリソグラフィ装置は、同じ基板を処理する他の装置とは異なるように動作するかもしれない。リソグラフィ装置により露光される基板が正確かつ一貫して露光されるために、露光された基板を検査し、後続層との間のオーバレイ誤差、ライン幅、クリティカルディメンジョン(CD)といった性能パラメータを測定することが望ましい。
【0044】
検査装置は、したがって、アライメントセンサASから独立して基板の特性を決定するために用いられ、特に異なる基板または同じ基板の異なる層が層ごとにどのように異なるかを決定するために用いられる。検査装置(
図2に示されない)は、リソグラフィ装置LAまたはリソセルLCに統合されてもよいし、独立形式の装置であってもよい。それは、例えば、公開された米国特許出願US2006033921A1に記載される時間の角度分解散乱計などの散乱計であってもよい。
【0045】
検査装置は、個々のリソグラフィ装置を較正し、異なる機器をより交換可能に使用できるようにするための先進プロセス制御(APC)システムに用いることもできる。装置の焦点合わせおよびオーバレイ(層間のアライメント)の不均一性を改善することは、所与のフィーチャサイズおよびチップ用途に最適化されたプロセスウィンドウをもたらし、より小さくより高度なチップ生成の継続を可能にする安定性モジュールの実装によって近年達成されている。一実施の形態における安定性モジュールは、定期的に(例えば毎日)システムを所定のベースラインに自動的にリセットする。安定性モジュールを含むリソグラフィおよび計測方法のより詳細は、US2012008127A1に見つけることができる。既知の例は、三つの主要なプロセス制御ループを実装する。第1ループは、安定性モジュールおよびモニタウェハを用いるリソグラフィ装置のローカル制御を提供する。第2(APC)ループは、(製品ウェハ上の焦点、ドーズおよびオーバレイを決定する)製品上のローカルスキャナ制御向けである。
【0046】
第3制御ループは、(例えばダブルパターンニング用の)第2(APC)ループへの計測の統合を可能にすることである。これらループの全ては、
図3の実際のパターニング動作中になされる測定に加えて、検査装置によりなされた測定を使用する。
【0047】
上記で説明したように、本書に開示する診断方法および装置は、各製品単位上に空間的に分布する点から測定されるデータであるオブジェクトデータを採用する。製品単位が半導体基板(ウェハ)であるリソグラフィ製造設備の例において、包括的オブジェクトデータの特に関心のある情報源は、各ウェハおよびその上に事前に堆積されたパターンを特徴付けるためにリソグラフィ装置内で実行される測定のセットである。これら測定は、補正モデル用のパラメータを得るために用いられ、既に存在するフィーチャに対して付与されるパターンの位置決めを正確に制御するために新しいパターニングステップにて用いられる。
【0048】
標準のフィールド内およびフィールド間補正モデルは、6つのパラメータ(効果的にはXおよびY方向ごとに3つ)を有し、さらにより高度な補正モデルが存在する。一方で、現在使用中および開発下の最も要求の厳しいプロセス向けでは、所望のオーバレイ性能を達成するためにより詳細な補正が求められる。標準モデルでは10より少ないパラメータが用いられうる一方で、高度な補正モデルでは典型的に15より多いパラメータまたは20より多いパラメータを使用する。
【0049】
図4および5は、補正情報の形態を模式的に示し、これは、ウェハ(基板)Wの以前の層にあるアライメントマーク(ターゲット)400上でアライメントセンサALにより測定されたウェハグリッド歪みの補正に用いることができる。各ターゲットは、XおよびY軸を持つ規則的な矩形グリッド402に対して通常定義される名目上の位置を有する。各ターゲットの実際の位置404の測定が名目上のグリッドからの偏差を明らかにする。アライメントマークは、基板のデバイス領域内に設けられてもよいし、および/または、デバイス領域の間のいわゆる「スクライブライン」領域に設けられてもよい。
【0050】
図5に示されるように、全てのターゲットの測定位置404は、この特定のウェハについてのウェハグリッドのモデルを設定するために数学的に処理されることができる。この補正モデルは、基板に付与されるパターンの位置を制御するためにパターニング動作中に用いられる。
図5(a)は、全てのターゲットの測定位置404を示す。ハイライト領域408も示される。
図5(b)は、6つのパラメータを持つ標準補正モデルがウェハグリッドのモデル化に用いられる例を示す。モデル化されるウェハグリッド406のパラメータは、参照用に示される測定されたターゲット404にモデル化されるウェハグリッドが適合するように修正される。標準補正モデルは6つのパラメータしか有しないため、モデル化されるウェハグリッドをウェハW上のターゲットの測定位置の全てに完全に適合させることは不可能である。
図5(b)に示すように、モデル化されるウェハグリッド406は、ハイライト領域408の領域内で測定されたターゲットにぴったりと適合する。しかしながら、ハイライト領域外では、モデル化されるウェハグリッドは測定されたグリッドから逸脱する。別の言い方をすれば、モデル化されるウェハグリッド406はハイライト領域408向けに最適化され、その領域内で偏差が小さくなることが確実となる。したがって、モデル化されるウェハグリッドは、小さいオーバレイが求められる重要な要素または製品を有する領域向けに最適化されるのが通常である。それほど重要でない製品または要素は、ハイライト領域外に配置されることができる。もちろん、この例におけるハイライト領域の位置は例示にすぎず、モデル化されるウェハグリッドがウェハ上の任意の適切な位置向けに最適化できることが留意されよう。もちろん、特定のプロセスについて特定の領域形状は不可である。このような場合には、特定の形状を有する領域内に重要な要素を位置させるのが容易となるように基板のデザインレイアウトを調整することができる。
【0051】
図5(c)は、
図5(a)と同様に全てのターゲットの測定位置を示すが、ハイライト領域がない。
図5(d)に示される例示的なモデル化されたウェハグリッド410は、名目上グリッドの直線が曲線になっており、高次の(高度な)補正モデルの使用を示す。高次補正モデルの使用は、標準補正モデルに比べて、モデル化されるウェハグリッドを測定されたグリッドによりぴったりと適合させることを可能にする。しかしながら、このような場合であっても(図示しない)残留偏差が実際上残るであろう。高次モデルを用いる場合であっても、特定領域をクリティカル領域として定義し、それらの領域内での偏差を最小化するようモデルを最適化する余地が依然として存在しうる。より高度な補正モデルはより多くのパラメータを有するため、ウェハ上でのより多くの測定を実行する必要があり、これらの測定を実行するためにより多くの時間を必要とすることになる。これは、製造状況下でのウェハのスループットを低下させるため、望ましくない。
【0052】
言うまでもなく、図示される歪みは実際の状況と比べて誇張されている。アライメントは、リソグラフィプロセスの特有な部分である。なぜなら、それは、露光される各ウェハの偏差(歪み)の補正が可能な補正メカニズムであるからである。
【0053】
各基板上でのオーバレイの特定の要素は、本質的にランダムであろう。しかしながら、他の要素は、その原因が分かっているかどうかに拘わらず、本質的に系統的であろう。同様の基板が同様のパターンのオーバレイ誤差を受ける場合、そのパターンの誤差はリソグラフィプロセスの「フィンガープリント」と称されうる。オーバレイ誤差は、おおまかに以下の二つの別のグループに分類することができる。1)基板またはウェハ全体にわたって異なる寄与であり、当技術分野においてフィールド間フィンガープリントとして知られている。2)基板またはウェハの各ターゲット部分(フィールド)にわたって同じように変化する寄与であり、当技術分野においてフィールド内フィンガープリントとして知られる。
【0054】
高度補正モデルは、フィールド間フィンガープリントとフィールド内フィンガープリントの双方を補正するために適用できる。各フィンガープリントは、異なる原因に起因する要素を有することがあり、例えば、スキャナはそれ自体に特有のフィンガープリントを有することがあり、または、エッチングプロセスは特定のフィンガープリントを有することがある。フィールド間フィンガープリントおよびフィールド内フィンガープリントのこれら全ての要素は、ある基板上に実際に存在する誤差に組み合わされる。
【0055】
しかしながら、高度補正モデルが例えば20−30のパラメータを含みうる一方で、現行使用されているスキャナは、それらのパラメータの一以上に対応するアクチュエータを有しないかもしれない。したがって、任意の所与の時間において、そのモデルのパラメータセット全体の一部のみが使用できる。また、高度モデルがより多くの測定を必要とし、必要な測定の実行に要する時間がスループットを低減させることから、このモデルを全ての状況下で用いることは望ましくない。
【0056】
(オーバレイ誤差の原因と低減)
オーバレイ誤差の主要な寄与のいくつかは、以下を含むが、これに限られない。
スキャナ特有の誤差:これは、基板の露光中に用いるスキャナの様々なサブシステムから生じることがあり、実際にスキャナ特有のフィンガープリントを生じさせる。
プロセス起因のウェハ変形:基板上で実行される様々なプロセスは、基板またはウェハを変形させることがある。
照明設定の差異:アパチャ形状やレンズアクチュエータの位置決めなどの照明システムの設定により生じる。
熱影響:熱に起因する影響は、特に様々なサブフィールドが異なる形式の要素または構造を含む基板において、基板の様々なサブフィールド間で異なるであろう。
レチクル描画誤差:製造時の制約に起因してパターニングデバイスにすでに誤差が存在することがある。
【0057】
トポグラフィのばらつき:基板は、特にウェハのエッジ周辺において、トポグラフィ(高さ)のばらつきを有することがある。
【0058】
発明者らは、高次補正モデルを用いることなくオーバレイ誤差を低減できることを認識している。特定のフィールドの全体にではなく、特定のフィールドの一以上の特定部分に補正モデルを適用することにより、オーバレイ誤差を低減できる。これらの特定部分は、以下においてサブフィールドと称するであろう(しかしながら、当技術分野において、例えばサブゾーンとも称されることがある)。
【0059】
サブフィールドのモデル化のため、例えば標準補正モデルのみを用いてもよい。効果的には、モデルのパラメータが各走査動作内で一回以上変化し、その結果、補正がフィールドの各部分のフィンガープリントに対してカスタマイズされる。したがって、オーバレイ誤差は、より高度な補正モデルの使用を必要とすることなく低減されることができる。また、本発明の方法にしたがって標準補正モデルを用いることにより、ウェハのスループットが悪影響を受けることはない。
図1の装置内の投影システムPSおよび関連する位置決めシステムにより形成されるパターニング装置が各フィールドの異なる部分においてモデルパラメータを変化させるよう制御されることができれば、単にアライメントおよび制御ソフトウェアを適切に変化させることで、新しい形式の補正を実現できる。
【0060】
フィールドの個々のサブフィールドのオーバレイ誤差のモデル化は、フィールドのその全体におけるオーバレイ誤差のモデル化の代わりに実行することができ、または、フィールドのその全体におけるモデル化に追加してモデル化することができる。後者はより多くの処理時間を必要とする一方で、フィールド内でフィールドおよびサブフィールドの双方がモデル化されるため、特定のサブフィールドのみに関連する誤差原因に加えてフィールド全体に関連する誤差原因を補正することが可能となる。全フィールドおよび特定のサブフィールドのみのモデル化といった他の組み合わせも、もちろん可能である。
【0061】
図6を参照すると、本発明のある実施の形態に係るオーバレイ誤差を補正するためのリソグラフィ方法が模式的に示される。この図の参照符号は、以下のステップを示し、各ステップは以下でより詳細に説明されるであろう。
601:基板上の少なくとも一つのフィールドを露光;
602:フィールド上で測定を実行;
603:サブフィールドを決定;
604:サブフィールドに関連するデータを処理してサブフィールド補正情報を生成;
605:サブフィールド補正情報を用いてサブフィールドの露光を補正。
【0062】
上述のステップは
図6に示され、かつ、以下に特定の順序で説明されるが、これらステップのいくつかが異なる順序で実行されてもよいし、または、同時に実行されてもよいことが留意されよう。
【0063】
ステップ601にて、リソグラフィ露光プロセスが一以上の基板上でスキャナを用いて実行される。その結果、露光された基板は、既に説明した一つまたはいくつかの原因に起因するオーバレイ誤差を含むであろう。基板は、製品基板であることができ、または、製造開始前に作られる初期の「プロトタイプ」基板であることができる。ステップ602にて、基板上の特定点において測定が実行される。測定点の数および分布は、任意の適切な態様で異なることができる。例えば、測定点は、関心のある特定領域に密集するよう配置されることができ、または、グリッドパターンで配置されることができる。別の実施の形態では、測定点がランダムに分布してもよい。測定は、フィールド間フィンガープリントおよびフィールド内フィンガープリントの双方を明らかにするであろう。ステップ603にて、少なくとも一つのサブフィールドが定義される。サブフィールドは、詳細が後述されるように、多数の方法で定義することができる。ステップ604にて、任意のオーバレイ誤差の補正に必要となる任意の補正を決定するために、取得した測定結果がフィールドの各サブフィールドにて処理される。これは、上述したような補正モデルを用いてなされる。ステップ605にて、別基板の露光中に、フィールド全体についてモデル化されたフィールド間フィンガープリントに基づく補正に加えて(または代えて)、あるサブフィールドの露光がそのサブフィールドについて取得した補正情報に基づいて補正される。露光情報は、
図3を参照して上述したレシピデータ306に通常含まれる。その結果、スキャナは、従来よりも優れた精度で製品基板の露光を制御できる。
【0064】
個々のサブフィールドは、多数の異なる方法で定義されることができる。例えば、サブフィールドは、全て手動または測定データによる補助のいずれかでユーザにより定義されることができる。ユーザは、例えば、リソグラフィ装置上または監視制御装置上または適切な遠隔装置上のユーザインターフェースを用いてサブフィールドを定義できる。
【0065】
図7は、多数の同サイズのサブフィールド702に分割される例示的なフィールド701を示す。このようなフィールドの分割は、例えば、フィールドが多数の同サイズおよび等間隔の製品、製品フィーチャまたは製品領域を含むような場合に有用である。しかしながら、サブフィールドは、サイズが同じではないかフィールドにわたって均等に分布していない個々の要素または製品を含むように、十分に等しく定義されることができる。
図7は、異なる製品領域を専有する多数の異なる要素を持つ製品が形成されるフィールド703を示す。一例として、基板上の各フィールドは、サブフィールド704にグラフィックプロセッサを有し、各サブフィールド705にプロセッサコアを有し、サブフィールド706にキャッシュを有し、サブフィールド707にシステムメモリコントローラを有しうる。それぞれが一つの製品を保持するようにサブフィールドを定義することにより、製品が均等に分布しておらず、または、サイズが同じでない場合であっても、各製品について個別にオーバレイ誤差を補正することができる。これは、
図5を参照して上述したように、製品が位置するサブフィールドの一部に補正モデルを最適化できるため、標準補正モデルにより生じる偏差を最小化する。
【0066】
本手法をさらに最適化するため、サブフィールドの定義は、個々の基板上の特定のフィールドの場所といった追加要因を考慮してもよい。
図8は、多数のフィールド802に分割される例示的なウェハ800を模式的に示す。異なるフィールドは、本開示の範囲内で適用可能な異なる技術を説明するために用いられるであろう。第1フィールド804にて、サブフィールドは、上述のように、重要な製品または製品領域を含むように定義されている。第1フィールドのサブフィールドの外側の一部は、より大きなオーバレイに寛容な領域である重要度の低い製品または製品領域のみを含む。この手法は、上述のような標準補正モデルを使用しており、フィールドの単一領域のみがオーバレイ誤差に不寛容であれば、測定および計算時間を最小化するため、有利である。
【0067】
第2フィールド806は、等間隔である多数のサブフィールド808に分割されているが、
図7を参照して上述したようにも定義することができる。この実施は、第1フィールド804の実施に比べてより多くの計算したがって実行により多くの時間を必要とする一方で、標準補正モデルのみを用いる場合であっても、フィールド全体のオーバレイ誤差を低減しうる。したがって、このような手法は、フィールド全体がオーバレイ誤差に不寛容である場合、または、それぞれがオーバレイ誤差に不寛容でありうる多数の製品または製品領域をフィールドが含む場合に有利である。
【0068】
ウェハ800の第3フィールド810は、ウェハのエッジに位置する。このフィールドは、第2フィールドと同様の手法で多数のサブフィールドに分割される。しかしながら、このフィールドはウェハのエッジに位置するため、多数の完全なサブフィールド812と多数の不完全なサブフィールド814とを含む。ウェハのエッジとの近接性に起因して、このようなフィールド内の基板に関連する偏差、したがってフィールド内の任意のサブフィールドの基板に関連する偏差は、ウェハの中心の近くの偏差とは異なる。従来、このようなフィールドは、より中心のフィールドとの偏差のばらつきが原因で、製品として使用されていなかった。しかしながら、生産性向上には、このようなスペースも用いれば有利であろう。第3フィールドを多数のサブフィールドに分割し、個々のサブフィールドに基づいてオーバレイ誤差を決定することにより、ウェハエッジに近い少なくとも一部のサブフィールドを製品に利用することが可能となる。
【0069】
図9は、
図6を参照しながら上述した特定の実施例に係る方法のサブフィールドに関連するデータを処理するステップをより詳細に示す。この実施例において、フィールドのサブフィールドは、スキャン方向を横切る行として定義される。この図の参照符号は、以下のステップを示し、各ステップは以下で詳細に説明されるであろう。
901:フィールド内フィンガープリントを取得;
902:フィンガープリント全体で単純なフィールド内モデルを実行;
903:フィンガープリントの各行で単純なフィールド内を実行;
904:アクチュエータのパラメータを調整。
【0070】
上述のステップは
図9に示され、かつ、以下に特定の順序で説明されるが、これらステップのいくつかが異なる順序で実行されてもよいし、または、同時に実行されてもよいことが留意されよう。
【0071】
ステップ901にて、基板上の特定のフィールドに関連する測定データが取得される。測定データは典型的に多数のデータソースからのデータを含み、例えば、スキャナ自体に関連するデータ、以前の(例えば別の基板から得られた)測定データ、またはシミュレーションデータを含むことができる(これらに限定されない)。トポグラフィデータまたはレチクルデータを含む他のデータ種類が用いられてもよい。ステップ902にて、線形フィールド内補正モデルがフィールド全体のフィンガープリントに適用される。上述のように、線形補正モデルは、多数の異なるパラメータを定義する多数のパラメータを備えることができる。この例では、6つのパラメータを使用し、二つの異なる次元(つまり、平面のxおよびy方向)のそれぞれについて「理想」グリッドの並進、回転および拡大縮小をともに定義する補正モデルが記述されるであろう。オーバレイ誤差を減少させるため、ステップ902に加えて及びその後に、6パラメータ補正モデルがステップ903にてフィールドフィンガープリントの少なくとも一つのサブフィールドに適用されるであろう。サブフィールドは、任意の有利な態様または適切な態様で定義できることに留意されよう。好ましくは、オーバレイ誤差に特に敏感である重要な要素または製品が形成されるフィールドの一部を含むようにサブフィールドを定義することができる。代替的または追加的に、ステップ903にて実行される補正の実行にリソグラフィ装置の特定のパラメータおよび/またはアクチュエータを使用できることを確実にするようにして、サブフィールドが定義される。上述のように、この例では、フィールドのサブフィールドがスキャン方向(つまりy方向)を横切る行として定義される。ステップ903の最後に補正情報のセットが取得されており、これは、基板の露光の制御のためにリソグラフィ装置の一以上のアクチュエータでなされる調整を決定するために用いることができる。ステップ904にて、フィールド上でスキャン動作が実行されるときにアクチュエータに対する実際の調整が決定される。この実施例において、スキャン方向の調整は、ウェハステージに対するレチクルステージの速度調整により実現される。スキャン方向を横切る調整は、装置内のレンズシステムの一以上のレンズアクチュエータの調整により実現できる。したがって、基本的な補正モデルを複雑化することなく、モデル内のフィールドの異なる部分に異なるパラメータを適用できる。
【0072】
上記実施例において、アクチュエータの調整は、特定の二つのアクチュエータパラメータを調整することにより実現される。用いる装置の特定の形式に応じて、特定のパラメータ調整の実行に用いるアクチュエータの数および種類は異なりうる。
【0073】
また、補正情報が取得され、かつ、必要なアクチュエータ調整が決定されているとき、個々のアクチュエータの応答関数を考慮すべきである。仮に測定された偏差の補正に必要な帯域が関連するアクチュエータの帯域を超えていれば、アクチュエータはオーバレイ誤差を(十分に)低減させることはできないであろう。調整および補正の一以上の態様の見直しは、最適なレシピが見つかるまで実行されてもよい。
【0074】
図10は、本発明に係る方法の原理を概略的に示す図である。
図10(a)は、フィールドの人工的なフィールド内フィンガープリント1001を示す。多数の測定された位置偏差1002はベクトルで示される。説明を分かりやすくすることのみを目的として、フィールドフィンガープリントは、y方向の位置偏差のみを含む。現実には、偏差はもちろん単一方向の偏差に限られない。この例では、フィールドの上半分はy方向に−5nmずれており、フィールドの下半分はy方向に5nmずれている。現実にはもちろん、残留偏差はこのようにちょうどに丸められた数字であるとは限らないであろう。
【0075】
図10(b)は、6つのパラメータを持つ標準のフィールド内補正モデルが完全なサブフィールドフィンガープリント1001に適用されるときに得られる結果を示す。パラメータは、tx、ty、mx、my、rx、ryの符号が付されており、それぞれがxおよびy方向の並進、拡大および回転を示す。残留偏差1003の大きさは、5.0nmから2.9nmに低減される。この例において、モデルはy方向の倍率を減少させることで機能する。倍率を百万分率(ppm)で表すと、この例ではパラメータmy=−0.4ppmが補正を実現する。モデルの残りのパラメータは中立のままである。つまりtx、ty、rx、ry、mx=0である。これにより、残留偏差1003は、補正されていない偏差1002に対して低減されるが、ゼロには低減されない。
【0076】
図10(c)は、
図10(a)と同じ人工的なフィールドフィンガープリント1001を示す。しかしながら、サブフィールドは、この図においてそれぞれ破線で示されるように二つのサブフィールド1011aおよび1011bに分割されており、それぞれフィールドの上半分および下半分をカバーする。
【0077】
図10(d)は、標準の6パラメータのフィールド補正モデルがサブフィールド1011aおよび1011bのそれぞれに別々に適用されるときに得られる結果を示す。サブフィールド1011aについて、補正モデルを測定データに適合させると以下の結果となる:tx、mx、my、rx、ry=0およびty=5nm、つまりy方向に5nmの並進である。同様に、サブフィールド1011bにモデルを適合させると次の結果となる:tx、mx、my、rx、ry=0およびty=−5nm、つまりy方向に−5nmの並進である。
図10(d)に示されるように、双方のサブフィールドについての残留偏差は、低減されるのではなく、完全に相殺されることができる。したがって、フィールドを二つのサブフィールドに分割することにより、6パラメータのフィールド補正モデルよりも複雑なモデルを用いることなく、特定の状況下ではより複雑なモデルよりも良好な精度で、全フィールドの6パラメータ補正モデルよりもオーバレイ誤差補正が改善される。
【0078】
図11を参照して、
図7の処理方法の実施例を説明する。
図11(a)は、例示的に測定されたフィールド内フィンガープリント1101を示す。特にこれは、レチクル描画誤差を含む例を示し、y方向に高い空間周波数を持つストライプ状のパターンになる。すでに述べたように、測定された偏差のそれぞれは、ベクトル1102により模式的に示される。これらの測定された偏差から、従来の方法で6パラメータ補正モデルを導出することが可能である。
【0079】
図11(b)は、
図11(a)に示すフィールド全体に6パラメータのフィールド内補正モデル1104を適用したときに対応する結果を示す。すでに説明したように、標準補正モデルを用いることで残留偏差を完全に除去できることはありそうにない。実際、この例では、偏差のほとんどが補正されないままとなる。
【0080】
残留偏差をさらに低減するため、フィールドは多数のサブフィールドに分割され、その一つが破線1110により強調表示される。各サブフィールドは、フィールドの幅を横切るy方向(つまり、スキャン方向を横切る方向)に伸びる測定点の単一行として定義される。サブフィールドは、行、対角線または他の幾何学的形状を含む多数の方法で定義することができるが、これに限られないことがもちろん理解されよう。しかしながら、どの形状が適用できるかは制御システムの能力により制限されるかもしれない。y方向のスキャン動作中にモデルのパラメータが変化可能である一例において、行またはストライプ以外の領域についてモデルパラメータを設定することは、後続の露光にて利用可能な能力を制御する観点では無意味となるかもしれない。この例では、オーバレイ補正パラメータは、補正モデルの並進パラメータ(tx、ty)のみを用いて各サブフィールドについて計算される。これは単に説明を分かりやすくすることを目的としており、任意の特定の組み合わせにおいてモデルの任意のパラメータが使用可能であることに留意されよう。
【0081】
図11(c)は、個々のサブフィールドのそれぞれに補正モデルを適用した結果を模式的に示す。各ベクトル1112は、
図11(a)に示されるフィールドの対応するサブフィールド(つまり、行)のオーバレイ補正パラメータ(tx、ty)を表す。
【0082】
図11(c)に示される各サブフィールドについて得られるモデルパラメータは、リソグラフィ装置の対応するアクチュエータの設定を修正するために全フィールド補正モデル1104と一緒に後に用いられる。この例において、オーバレイ補正パラメータは、並進成分のみを含み、これはスキャン動作中のウェハステージとレチクルステージの間の相対移動を調整することで実現できる。
【0083】
図12は、
図11(c)に示される行に対するスキャン位置の関数として、リソグラフィ装置のステージの決定された相対移動を示す。第1プロット1201は、y方向(つまり、スキャン方向)の残留偏差の補正に必要となるレチクルと基板との間のy方向の相対移動を示す。第2プロット1202は、x方向の残留偏差の補正に必要となるレチクルと基板との間のx方向の相対移動を示す。
【0084】
上述の機能の一部または全ては、適切なユーザインターフェース上でまたはその助けを借りて、完全にまたは部分的に実行することができる。ユーザインターフェースは、他のシステムまたは装置内のサブシステムまたは装置の外部のいずれかからの異なる形式の入力を受けることができる。代替的に、ユーザは、ユーザインターフェースに直接入力を与えることができる。
【0085】
ユーザインターフェース上で実行できる動作の例は、少なくとも一つのサブフィールドの定義である。サブフィールドの決定は、用途に依存し、製品ソリューションの部分を形成する。このように、サブフィールドの定義は、製品、製品の部分、マスクまたは層に対して、もしくは、技術群または技術形式の全体に対してさえ特有であることができる。このような定義は、例えばデータベースから自動的に入力されることができ、もしくは、測定データまたは装置により決定される他のデータに基づくことができる。
【0086】
さらに、ユーザは、特定の基板に特有であるかもしれないパラメータまたは他の条件を、例えば開発プロセスの一部として、特定することができる。考慮することは、(クリティカル領域といった)特定領域内のオーバレイ誤差を最小化すること、サブフィールドまたはフィールド全体のオーバレイ誤差を最小化することを含むが、これに限られない。
【0087】
[むすび]
本書に開示される方法および関連する検査装置は、以下の一以上の利益を可能にする。
【0088】
この発明は、高い空間周波数のフィールド内補正の可能性を提供し、より高精度の補正を可能にする。
【0089】
新しいモデル、例えば、より大きな傾きを有するウェハエッジ効果モデルの使用を可能にする。
【0090】
サブゾーンを別個にモデル化することで、モデルパラメータ間の相互干渉の可能性を回避することができ、より高精度のパラメータの見積が可能となる。したがって、根本原因の分析もサポートする。
【0091】
新しいコンセプトは、CD制御にも適用できる。
【0092】
サブフィールド補正は、変化する部分についてAPCで実行でき、静的な部分についてフィードフォワードの方法で実行できる。
【0093】
本開示では、散乱計といった検査装置における焦点監視および制御の構成の使用に対して特定の参照がなされたが、開示される構成がすでに上述したような他の形式の機能的装置における応用を有してもよいことが理解されよう。
【0094】
本書ではICの製造における検査装置の使用を例として説明しているが、本書に記載する検査装置は、例えば集積光学システム、磁気ドメインメモリ用案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドの製造といった他の用途も有しうることが理解されよう。当業者であれば、このような代替的な用途において、本書における「ウェハ」または「ダイ」の用語の任意の使用がより一般的な用語である「基板」または「ターゲット部分」のそれぞれと同義とみなされうることが理解されよう。
【0095】
本書で用いられる「放射」および「ビーム」の用語は、いかなる種類の電磁的な放射を包含し、紫外(UV)放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nmもしくは126nm、または、その近傍の波長を有する)および極端紫外(EUV)放射(例えば、5−20nmの範囲の波長を有する)を含むとともに、イオンビームや電子ビームといった粒子ビームをも含む。
【0096】
「レンズ」の用語は、文脈上許されれば、屈折型、反射型、磁気型、電磁気型、静電型の光学要素を含む様々な形式の光学要素のいずれか一つまたは組み合わせを示してもよい。
【0097】
本発明の特定の実施の形態が上述されたが、本発明は上記以外の態様で実施されてもよい。さらに、装置の部分は、上述される方法を記述する機械可読指令の一以上のシーケンスを含むコンピュータプログラムまたはこのようなコンピュータプログラムが記憶されるデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気または光学ディスク)の形態で実現されてもよい。
【0098】
上記の説明は例示的なものであり、限定するものではない。したがって、以下に規定される請求項の範囲から逸脱することなく、記載された本発明に対して変更がなされうることは、当業者には明らかであろう。