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特許6792682金属酸化物粉末の薬剤処理方法及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6792682
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】金属酸化物粉末の薬剤処理方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   C01B33/18 C
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-159731(P2019-159731)
(22)【出願日】2019年9月2日
【審査請求日】2020年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小松原 胆治
【審査官】 宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−359476(JP,A)
【文献】 特開平10−130624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/00−33/193
C09C1/00−3/12
C09D15/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積が20m/g以上40m/g以下の金属酸化物粉末を、220℃以上に予熱された撹拌容器の内部に投入し、撹拌翼で撹拌しながら、前記金属酸化物粉末の投入により低下した前記撹拌容器の内部の温度が再度220℃以上となるように加熱する加熱工程と、
前記加熱工程において前記撹拌容器の内部の温度が再度220℃以上となった後、前記金属酸化物粉末に薬剤を添加して、前記撹拌翼により撹拌しながら混合する混合工程と、を含み、
前記撹拌翼の回転数は、前記加熱工程よりも前記混合工程の方が低くなるようにする、金属酸化物粉末の薬剤処理方法。
【請求項2】
前記加熱工程における前記撹拌翼の回転数が85rpm以上200rpm以下であり、前記混合工程における前記撹拌翼の回転数が40rpm以上75rpm以下である、請求項1に記載の金属酸化物粉末の薬剤処理方法。
【請求項3】
前記金属酸化物粉末が、シリカ又はシリカを主成分とする複合金属酸化物粉末である、請求項1又は2に記載の金属酸化物粉末の薬剤処理方法。
【請求項4】
前記薬剤が表面処理剤である、請求項1から3の何れか1項に記載の金属酸化物粉末の薬剤処理方法。
【請求項5】
比表面積が20m/g以上40m/g以下の金属酸化物粉末を、220℃以上に予熱された撹拌容器の内部に投入し、撹拌翼で撹拌しながら、前記金属酸化物粉末の投入により低下した前記撹拌容器の内部の温度が再度220℃以上となるように加熱する加熱工程と、
前記加熱工程において前記撹拌容器の内部の温度が再度220℃以上となった後、前記金属酸化物粉末に薬剤を添加して、前記撹拌翼により撹拌しながら混合する混合工程と、を含み、
前記撹拌翼の回転数は、前記加熱工程よりも前記混合工程の方が低くなるようにする、薬剤処理された金属酸化物粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物粉末の薬剤処理方法及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ粉末等の金属酸化物粉末を薬剤処理し、例えば金属酸化物粉末の表面に疎水性等の機能性を付与する方法が従来技術として知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、平均粒子径1.0μm以下のシリカ粉末にガスを吹き込んで浮遊させた状態で、シリカ粉末にシランカップリング剤を添加することにより、シリカ粉末を薬剤処理する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、乾燥したシリカ粉末を撹拌及び加熱しながら、シリカ粉末にオルガノシランを添加することにより、シリカ粉末の表面を疎水化する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−146233号公報
【特許文献2】特開昭51−120996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示す方法には、ガスによって浮遊したシリカ粉末を回収するための濾過装置が必要であり、シリカ粉末の加工コストが上昇するという問題がある。
【0007】
また、金属酸化物粉末は、比表面積が凝集性に大きく影響することが一般に知られている。特に、凝集性が高くなるような大きさの比表面積を有する金属酸化物粉末について、特許文献2に示すような従来技術によって薬剤処理を行う場合、機械的せん断エネルギーが金属酸化物粉末に加えられ、金属酸化物粉末が凝集して塊状化しまうことがある。
【0008】
本発明の一態様は、金属酸化物粉末の薬剤処理において、金属酸化物粉末の凝集を適切に低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る金属酸化物粉末の薬剤処理方法は、比表面積が20m/g以上40m/g以下の金属酸化物粉末を、220℃以上に予熱された撹拌容器の内部に投入し、撹拌翼で撹拌しながら、前記金属酸化物粉末の投入により低下した前記撹拌容器の内部の温度が再度220℃以上となるように加熱する加熱工程と、前記加熱工程において前記撹拌容器の内部の温度が再度220℃以上となった後、前記金属酸化物粉末に薬剤を添加して、前記撹拌翼により撹拌しながら混合する混合工程と、を含み、前記撹拌翼の回転数は、前記加熱工程よりも前記混合工程の方が低くなるようにする。
【0010】
上記の構成によれば、金属酸化物粉末が凝集し難い温度まで、撹拌容器の内部が速やかに加熱されるため、金属酸化物粉末が凝集し難くなる。また、撹拌容器の内部が、金属酸化物粉末が凝集し難い温度に加熱されるまでは、撹拌翼の回転数を比較的大きくして金属酸化物粉末を効果的に流動させる。そして、撹拌容器の内部が金属酸化物粉末が凝集し難い温度以上に加熱された後は、撹拌翼の回転数を低くすることで、金属酸化物粉末に必要以上のせん断エネルギーを与えることを防ぐことができる。そのため、金属酸化物粉末の薬剤処理に必要な各工程において、金属酸化物粉末の凝集を適切に低減することができる。
【0011】
本発明の一態様に係る金属酸化物粉末の薬剤処理方法は、前記加熱工程における前記撹拌翼の回転数が85rpm以上200rpm以下であり、前記混合工程における前記撹拌翼の回転数が40rpm以上75rpm以下であってもよい。上記の構成によれば、金属酸化物粉末の薬剤処理に必要な各工程において、金属酸化物粉末の凝集をより適切に低減することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る金属酸化物粉末の薬剤処理方法は、前記金属酸化物粉末が、シリカ又はシリカを主成分とする複合金属酸化物粉末であってもよい。上記の構成によれば、金属酸化物粉末が、凝集性の高いシリカ又はシリカを主成分とする複合金属酸化物粉末であっても、金属酸化物粉末の凝集を適切に低減することができる。
【0013】
本発明の一態様に係る金属酸化物粉末の薬剤処理方法は、前記薬剤が表面処理剤であってもよい。上記の構成によれば、金属酸化物粉末の凝集を適切に低減しながら、金属酸化物粉末を表面処理剤によって表面処理することができる。
【0014】
本発明の一態様に係る薬剤処理された金属酸化物粉末の製造方法は、比表面積が20m/g以上40m/g以下の金属酸化物粉末を、220℃以上に予熱された撹拌容器の内部に投入し、撹拌翼で撹拌しながら、前記金属酸化物粉末の投入により低下した前記撹拌容器の内部の温度が再度220℃以上となるように加熱する加熱工程と、前記加熱工程において前記撹拌容器の内部の温度が再度220℃以上となった後、前記金属酸化物粉末に薬剤を添加して、前記撹拌翼により撹拌しながら混合する混合工程と、を含み、前記撹拌翼の回転数は、前記加熱工程よりも前記混合工程の方が低くなるようにする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、金属酸化物粉末の薬剤処理において、金属酸化物粉末の凝集を適切に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る撹拌装置の側面を模式的に示す図である。
図2図1に示す撹拌装置の撹拌翼が、撹拌軸を中心として90度回転した配置にある状態を示す、撹拌装置の側面を模式的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る金属酸化物粉末の薬剤処理方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施例1に係る、各種温度で金属酸化物粉末を撹拌した際の撹拌時間と金属酸化物粉末の嵩密度との関係を示すグラフである。
図5】本発明の実施例1に係る、金属酸化物粉末の撹拌前後のSEM写真を示す図である。
図6】本発明の実施例2に係る、回転数とせん断エネルギーとの関係を示すグラフである。
図7】本発明の実施例3に係る、各種回転数で金属酸化物粉末を撹拌した際の撹拌時間と撹拌容器の内部の温度との関係を示すグラフである。
図8】本発明の実施例4に係る、工程時間と撹拌動力との関係を示すグラフである。
図9】比較例1に係る、工程時間と撹拌動力との関係を示すグラフである。
図10】比較例2に係る、工程時間と撹拌動力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0018】
〔1.金属酸化物粉末〕
本明細書において、「金属」とは狭義の金属の他に、一般に半金属又は半導体と称される材料も含むものとする。したがって、「金属酸化物」は、金属及び半金属の酸化物、並びに金属及び半金属を含有する複合酸化物を含む。金属酸化物の例としては、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、マグネシア(MgO)、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化錫、酸化タングステン及び酸化バナジウム等の狭義の金属酸化物、シリカ(SiO)等の広義の金属酸化物、並びにシリカ−アルミナ、シリカ−チタニア及びシリカ−チタニア−ジルコニア等の複合金属酸化物が挙げられる。
【0019】
本発明の一実施形態で使用できる金属酸化物粉末は、例えば、シリカ又はシリカを主成分とする複合金属酸化物粉末であってもよい。シリカは、その製造方法が限定されるものではなく、例えば四塩化ケイ素または有機ケイ素化合物の燃焼加水分解によって製造される、乾式シリカであってもよいし、ケイ素アルコキシドを液中で加水分解して製造されるゾルゲルシリカであってもよい。
【0020】
金属酸化物粉末は、比表面積が大きくなる程、凝集性が高くなることが一般に知られている。本発明者の鋭意検討によると、比表面積が40m/gを超える金属酸化物粉末は、一次粒子の粒径が例えば10nm程度と非常に小さく、凝集性が非常に高い。しかしながら、この一次粒子同士が凝集して、例えば粒径10μm〜100μm程度の二次粒子を形成しており、二次粒子の粒子同士の凝集性は低くなるため、結果として粉末の見掛けの凝集性は低くなっている。なお、本明細書において、「一次粒子」とは、物質の基本構成粒子を意味し、「二次粒子」とは、一次粒子が凝集することにより構成される粒子を意味する。
【0021】
また、比表面積が20m/g未満の金属酸化物粉末は、一次粒子同士の凝集性が低い。したがって、比表面積が40m/gを超える金属酸化物粉末、及び比表面積が20m/g未満の金属酸化物粉末については、特許文献2に示すような従来技術によって、薬剤処理を行うことができる。
【0022】
しかし、比表面積が20m/g以上40m/g以下の金属酸化物粉末は二次粒子を形成し難く、かつ一次粒子同士の凝集性が高い。このような金属酸化物粉末について、従来技術によって薬剤処理を行おうとすると、機械的せん断エネルギーが金属酸化物粉末に加えられ、金属酸化物粉末が凝集して塊状化してしまうことがある。
【0023】
撹拌中に金属酸化物粉末が凝集して塊状化すると、例えば撹拌容器の内壁面に、凝集した金属酸化物粉末の塊が付着してしまうことがある。この場合、金属酸化物粉末の回収率が低下するだけでなく、凝集した金属酸化物粉末の塊が撹拌容器の内部に残留することにより、次バッチにおける金属酸化物粉末の投入量が制限されるため、加工効率が低下してしまう。
【0024】
また、撹拌容器の内壁面に付着した、凝集した金属酸化物粉末の塊が、撹拌中に剥がれ落ちることがある。剥がれ落ちた金属酸化物粉末の塊が撹拌翼に接触すると、撹拌翼に異常な振動が発生すると共に、撹拌装置のモータに異常な負荷が加わるため、撹拌装置の故障を引き起こす虞がある。また、剥がれ落ちた金属酸化物粉末の塊が、金属酸化物粉末を輸送するための配管を詰まらせることがある。この場合、金属酸化物粉末の塊を取り除くために、多大な労力が必要となる。
【0025】
そこで、本発明の一実施形態で使用される金属酸化物粉末は、比表面積が20m/g以上40m/g以下の金属酸化物粉末であり、比表面積が25m/g以上35m/g以下の金属酸化物粉末であることが特に好ましい。比表面積が20m/g以上40m/g以下、特に25m/g以上35m/g以下の金属酸化物粉末は、凝集性が高いため、従来技術によって薬剤処理することが難しい。しかし、本発明の一態様によれば、このような凝集性の高い金属酸化物粉末を薬剤処理する場合であっても、金属酸化物粉末の凝集を適切に低減することができる。
【0026】
なお、本明細書における比表面積は、窒素吸着BET1点法により測定される比表面積である。当該比表面積は市販の比表面積計により測定することができ、例えば、柴田理化学社製比表面積測定装置SA−1000を用いて測定することができる。
【0027】
本発明の一実施形態で使用される金属酸化物粉末及び薬剤処理された金属酸化物粉末の凝集度は、嵩密度を測定することにより評価することができる。金属酸化物粉末の嵩密度が高い程、金属酸化物粉末の粒子同士が密集しているため、金属酸化物粉末の凝集度が高いことが示唆される。一方、金属酸化物粉末の嵩密度が低い程、金属酸化物粉末の粒子同士が離れているため、金属酸化物粉末の凝集度が低いことが示唆される。なお、本明細書において、「凝集度」とは、金属酸化物粉末が実際にどの程度凝集しているかという尺度を意味するものとし、「凝集性」とは、金属酸化物粉末の凝集し易さを意味するものとする。金属酸化物粉末の嵩密度は、例えば、JIS 5101−12−1 顔料試験方法により測定することができる。
【0028】
〔2.薬剤〕
本発明の一実施形態において、金属酸化物粉末を薬剤処理するために使用される薬剤は、金属酸化物粉末の表面処理等に通常用いられる公知の薬剤を、特に制限なく使用することができる。薬剤の例として、特に限定するものではないが、例えば表面処理剤及び各種の薬効を有する薬理成分等が挙げられる。表面処理剤は、金属酸化物粉末の表面物性を変化させるための薬剤である。上記薬理成分は、生物に薬理作用をもたらすための成分であり、本発明の一態様に係る薬剤処理方法を適用して、当該薬理成分を金属酸化物粉末に担持させることができる。薬剤は、単独で1種類のみを使用してもよく、又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
表面処理剤の例として、例えば、シラン系化合物、シリコーンオイル、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤及びアルミネート系カップリング剤等が挙げられる。また、公知の各種カルボン酸、アミン又はアルコール類を表面処理剤として使用してもよい。
【0030】
上記シラン系化合物の例としては、シラン又はジシラザンの水素原子の一部が、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基又はハロゲン等によって置換されたケイ素系化合物を挙げることができる。反応性が高く、取扱いが容易であるという観点から、上記シラン系化合物は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)であることが好ましい。
【0031】
シラン系化合物の添加量は特に制限はされないが、使用するシリカ粒子100質量部に対して、0.1〜100質量部とすることが好ましく、1〜50質量部とすることがより好ましい。上記添加量が、0.1質量部以上であれば、金属酸化物粉末を十分に表面処理することができる。また、上記添加量が、100質量部以下であれば、後処理が容易である。
【0032】
上記シリコーンオイルの例として、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル及びフッ素変性シリコーンオイル等が挙げられる。シリコーンオイルは、例えば、金属酸化物粉末の表面を効率的に疎水化するために使用される。表面処理によって、金属酸化物粉末の表面を効率的に疎水化するためには、上記シリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイルであることが好ましい。
【0033】
シリコーンオイルの添加量は特に制限はされないが、使用するシリカ粒子100質量部に対して、0.05〜20質量部とすることが好ましく、0.1〜10質量部とすることがより好ましい。上記添加量が、0.05質量部以上であれば、金属酸化物粉末を十分に薬剤処理することができる。また、上記添加量が、20質量部以下であれば、後処理が容易である。
【0034】
上記シランカップリング剤としては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン及び4−スチリルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
シランカップリング剤は、例えば、金属酸化物粉末の表面を効率的に疎水化するために使用される。表面処理によって、金属酸化物粉末の表面を効率的に疎水化するためには、上記シランカップリング剤は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン又はデシルトリメトキシシランであることが好ましい。
【0036】
シランカップリング剤の添加量は特に制限はされないが、使用するシリカ粒子100質量部に対して、0.05〜70質量部とすることが好ましく、0.1〜35質量部とすることがより好ましい。上記添加量が、0.05質量部以上であれば、金属酸化物粉末を十分に薬剤処理することができる。また、上記添加量が、70質量部以下であれば、後処理が容易である。
【0037】
表面処理剤による薬剤処理方法に用いられる他の詳細な条件は、使用する表面処理剤及び金属酸化物の種類等に応じて、公知の条件を適宜選択して採用してもよい。
【0038】
薬理成分の例としては、ビタミン(例えばビタミンB2及びビタミンC)、カロチノイド(例えばα−カロチン、β−カロチン及びアスタキサンチン)、ポリフェノール(例えばフロロタンニン及びアントシアニン等)、ラクトフェリン、エルゴチオネイン等の抗酸化剤、コラーゲン、エラスチン、酵母エキス、乳酸菌エキス、霊芝エキス等の細胞賦活剤、イチョウエキス、センブリエキス、マロニエエキス等の植物抽出物、塩化カルプロニウム、セファランチン等、ビタミンE及びその誘導体、トウガラシチンキ、デキストラン硫酸ナトリウム、ニンジンエキス及び海藻等のエキス等の血流促進剤、アルブチン、ソウハクヒエキス、シャクヤク根エキス、カンゾウ根エキス、コウジ酸、プラセンタエキス、4−メトキシサリチル酸カリウム等のメラニン生成抑制剤、アスコルビン酸グルコシド、リン酸アスコルビルMg、アスコルビルリン酸Na、アスコルビルエチル、アスコルビン酸硫酸2Na、グリセリルアスコルビン酸、アデノシン1リン酸2ナトリウムOT、プロテオグリカン等のターンオーバー促進剤、パントテン酸及びその誘導体、プラセンタエキス、ビオチン、感光素301、6−ベンジルアミノプリン等の毛包賦活剤、ε−アミノカプロン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、グリチルレチン酸及びその誘導体並びに甘草エキス、カミツレエキス、シコンエキス、シソエキス、ソウハクヒエキス、トウキエキス、モモ葉エキス及びポリフェノール含有植物エキス等の抗炎症剤等が挙げられる。
【0039】
また、本発明の一態様において、金属酸化物粉末に坦持させることのできる薬剤の他の例として、サリチル酸グリコール、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸等の紫外線吸収剤、ビタミンB6群、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、ビオチン及びビタミンC群等のビタミン類が挙げられる。
【0040】
〔3.撹拌容器〕
本発明の一実施形態において、金属酸化物粉末を薬剤処理するために使用される撹拌装置は、金属酸化物粉末の撹拌に通常用いられる公知の撹拌装置を、特に制限なく使用することができる。
【0041】
図1に示すように、本発明の一実施形態において使用できる撹拌装置100は、撹拌容器110と、モータ120と、撹拌軸130と、撹拌翼140と、ジャケット150と、ノズル160と、流出口170と、を備える。図2は、図1に示す撹拌装置100の撹拌翼140が、撹拌軸130を中心として90度回転した配置にある状態を示す、撹拌装置の側面を模式的に示す図である。
【0042】
撹拌容器110は、金属酸化物粉末Mの撹拌に適するように、底部が下方に湾曲している。撹拌容器110は、少なくとも内壁面が、金属酸化物粉末Mと反応しない材料により形成されている。撹拌容器110の内部には、撹拌容器110の内部の温度を測定するための温度センサ(図示せず)が設けられている。
【0043】
モータ120は、撹拌軸130を介して、撹拌容器110の内部の撹拌翼140を回転させるための部材である。モータ120は、撹拌容器110の上方に設置されている。モータ120は、金属酸化物粉末の撹拌に通常用いられる公知のモータを、特に制限なく使用することができる。モータ120の例としては、電動モータを挙げることができる。モータ120には、変速機(図示せず)が連結されており、撹拌翼140の回転数を任意に変更できるように構成されている。
【0044】
撹拌軸130は、モータ120からの動力を撹拌翼140に伝えるための部材である。撹拌軸130は、金属酸化物粉末の撹拌に通常用いられる公知の撹拌軸を、特に制限なく使用することができる。撹拌軸130は、少なくとも表面が、金属酸化物粉末Mと反応しない材料により形成されている。
【0045】
撹拌翼140は、撹拌容器110の内部に投入された金属酸化物粉末Mを撹拌するための部材である。撹拌翼140は、金属酸化物粉末の撹拌に通常用いられる公知の撹拌翼を、特に制限なく使用することができる。撹拌翼140は、少なくとも表面が、金属酸化物粉末Mと反応しない材料により形成されている。
【0046】
撹拌翼140の回転は、金属酸化物粉末Mの循環作用及びせん断作用に寄与する。ここで、循環作用とは、撹拌対象物である金属酸化物粉末Mの吸い込みと吐出により循環流を形成する作用であり、撹拌容器内の均一化に寄与する。また、せん断作用とは、撹拌対象物である金属酸化物粉末Mの流体に速度差を与える作用であり、本発明の一実施形態では、金属酸化物粉末Mを凝集させる原因となることがある。したがって、撹拌翼140の形状は、金属酸化物粉末Mの凝集を低減する観点から、循環能力が高く、せん断能力が低いものを使用することが好ましい。
【0047】
循環能力が高く、せん断能力が低い撹拌翼の例としては、限定するものではないが、撹拌容器110の底部に沿う形状のアンカー翼及び細長い板状のパドル翼等を挙げることができ、これらを組み合わせて使用してもよい。図1に示す例では、撹拌軸130の下端に1対のアンカー翼141が設けられている。また、図2に示すように、撹拌軸130におけるアンカー翼141の上部に、1対のパドル翼142が設けられている。
【0048】
1対のアンカー翼141は、撹拌軸130を基準として互いに180度離れており、それぞれ、撹拌軸130の延伸方向に対して若干傾斜している。また、1対のパドル翼142は、撹拌軸130を基準として互いに180度離れており、1対のアンカー翼141と直交する位置に設けられている。1対のパドル翼142は、それぞれ、撹拌軸130の延伸方向に対して45度傾斜している。撹拌翼140全体は、撹拌軸130を中心として、180度回転対称に形成されている。
【0049】
ジャケット150は、撹拌容器110を加熱するための加熱ジャケットであり、撹拌容器110の側面及び底面を、撹拌容器110の外部から覆うように構成されている。ジャケット150は、撹拌容器の加熱に通常用いられる公知のジャケットを、特に制限なく使用することができる。
【0050】
ノズル160は、撹拌容器110の内部に薬剤を添加するための部材である。図1及び図2の例では、ノズル160は、撹拌容器110の内部の上側部分に設けられており、薬剤配管161によって撹拌容器110の外部に連結されている。ノズル160の先端は下方を向いており、金属酸化物粉末Mに対して上方から薬剤を添加できるように構成されている。ノズル160は、後述するように、原液又は溶液の状態の薬剤を噴霧することができる噴霧ノズルであることが好ましい。
【0051】
流出口170は、薬剤処理された金属酸化物粉末Mを撹拌容器110から流出させるための弁であり、流出配管171に接続されている。薬剤処理された金属酸化物粉末Mを、空気又は窒素等のガスの圧力によって、流出配管171から流出させる。
【0052】
撹拌装置100は、上記の各部材の他に、例えば、撹拌容器110の内部に金属酸化物粉末Mの上下循環流を形成するためのバッフル(邪魔板とも称される)及び金属酸化物粉末Mを投入するための投入口等を備えていてもよい(図示せず)。
【0053】
〔4.金属酸化物粉末の薬剤処理方法〕
金属酸化物粉末Mの薬剤処理方法について以下に説明する。図3に示すように、まず、撹拌容器110をジャケット150により加熱し、撹拌容器110の内部が、金属酸化物粉末Mが凝集し難い温度以上に予熱されたことを、撹拌容器110の内部に設けられた温度センサ(図示せず)によって確認する。金属酸化物粉末Mが凝集し難い温度とは、例えば220℃以上であればよい。また、金属酸化物粉末Mが凝集し難い温度としては、230℃以上であることがより好ましく、240℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがより好ましく、260℃以上であることがより好ましく、270℃以上であることがより好ましく、280℃以上であることがより好ましく、290℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがより好ましい。
【0054】
次いで、金属酸化物粉末Mを、予熱された撹拌容器110の内部に投入し、撹拌翼140により撹拌する。撹拌容器110の内部の温度は、金属酸化物粉末Mの投入により低下する。そこで、低下した撹拌容器110の内部の温度が、再度金属酸化物粉末Mが凝集し難い温度である220℃以上となるまで、金属酸化物粉末Mを撹拌翼140により撹拌しながら、撹拌容器110をジャケット150により加熱する(S10:加熱工程)。
【0055】
金属酸化物粉末Mは一般に、温度が高い程、凝集し難いことが知られている。よって、金属酸化物粉末Mの温度を速やかに上昇させ、金属酸化物粉末Mの凝集を低減するために、加熱工程S10における撹拌翼140の回転数は、高い方が好ましい。加熱工程S10における撹拌翼140の回転数は、限定するものではないが、85rpm以上200rpm以下であることが好ましい。上記回転数が85rpm以上であれば、金属酸化物粉末Mの温度が速やかに上昇し、金属酸化物粉末Mの凝集が低減する。また、上記回転数が200rpm以下であれば、後述する撹拌時のせん断エネルギーが必要以上に大きくなることを防ぐことができる。
【0056】
金属酸化物粉末Mに添加される薬剤又は薬剤溶液の引火性が高い場合には、加熱工程S10の間、又は加熱工程S10の後に、撹拌容器110の内部の気体を窒素等の不活性ガスにより置換することが好ましい。
【0057】
そして、撹拌容器110の内部の温度が再度220℃以上となったことを、温度センサ(図示せず)によって確認した後、ノズル160から金属酸化物粉末Mに薬剤を添加して、撹拌翼140により撹拌しながら混合する(S20:混合工程)。
【0058】
薬剤の添加方法は特に限定されないが、金属酸化物粉末Mをより均一に薬剤処理するために、薬剤を撹拌容器110の内部に噴霧することが好ましい。薬剤が低粘度の液体である場合には、薬剤を原液のまま、撹拌容器110の内部に噴霧してもよい。あるいは、薬剤が固体、又は高粘度の液体である場合には、薬剤を溶媒に溶解させた後で、薬剤の溶液を撹拌容器110の内部に噴霧してもよい。
【0059】
混合工程S20では、金属酸化物粉末Mの温度は220℃以上の凝集し難い温度になっている。このような温度であれば、金属酸化物粉末Mの温度を速やかに上昇させるために、撹拌翼140の回転数を高くする必要はない。よって、撹拌時のせん断エネルギーが金属酸化物粉末Mの凝集の原因となることを防ぐために、混合工程S20における撹拌翼140の回転数は、低い方が好ましい。
【0060】
ただし、撹拌翼140の回転数があまりに低い場合、金属酸化物粉末Mの一部が静置された状態に近くなるため、撹拌容器110の下方に存在する金属酸化物粉末Mが、その上方に存在する金属酸化物粉末Mの重量を受けて、凝集する虞がある。したがって、金属酸化物粉末Mの流動状態を保つために、混合工程S20における撹拌翼140の回転数は、低過ぎないことが好ましい。
【0061】
ここで、撹拌翼140の回転数n及びモータ120の撹拌動力Pが、撹拌装置100のせん断エネルギーに与える影響について考える。まず、モータ120の撹拌動力Pは、下記式(1)のように、撹拌装置100の循環作用を表す質量流量と、撹拌装置100のせん断エネルギーとの積によって表されることが一般に知られている。
【0062】
P=(ρ×Q)×(g×H) ・・・(1)
上記式(1)中、ρは金属酸化物粉末Mの嵩密度[kg/m]であり、Qは吐出流量[m/s]であり、gは重力加速度[m/s]であり、Hは吐出ヘッド[m]である。
【0063】
上記式(1)において、(ρ×Q)は撹拌装置100の循環作用を表す質量流量[kg/s]である。また、(g×H)は、撹拌装置100が単位重量当たりの金属酸化物粉末Mに与えるせん断エネルギー[J/kg]を表す。金属酸化物粉末Mの凝集を低減するためには、凝集の原因となるせん断エネルギー(g×H)を低下させることが好ましい。
【0064】
また、吐出流量Qは、下記式(2)によって表されることが一般に知られている。
【0065】
Q=Nq×Di×n ・・・(2)
上記式(2)中、Nqは撹拌翼の形状によって定まる定数であり、Diは撹拌翼の翼径であり、nは撹拌翼の回転数である。上記式(2)を上記式(1)に代入し、せん断エネルギー(g×H)について上記式(1)を変形すると、下記式(3)が得られる。
【0066】
【数1】
【0067】
上記式(3)において、1/(Nq×Di)は、上述の通り、撹拌翼の形状及び大きさによって定まる定数である。したがって、せん断エネルギーを低下させるためには、P/(ρ・n)を小さくすることが好ましい。
【0068】
本発明者の鋭意検討によると、撹拌翼140の回転数が40rpm以上75rpm以下であれば、P/(ρ・n)が小さくなり、撹拌装置100のせん断エネルギーが低下するため好ましい。
【0069】
そして、金属酸化物粉末Mの薬剤処理完了後、流出口170の弁を開放することにより、空気又は窒素等のガスの流れと共に、薬剤処理された金属酸化物粉末Mを流出配管171から流出させることができる。
【0070】
上記の構成によれば、金属酸化物粉末Mが凝集し難い温度まで、撹拌容器110の内部が速やかに加熱されるため、金属酸化物粉末Mが凝集し難くなる。また、撹拌容器110の内部が、金属酸化物粉末Mが凝集し難い温度に加熱されるまでは、撹拌翼140の回転数を比較的大きくして金属酸化物粉末Mを効果的に流動させる。そして、撹拌容器110の内部が、金属酸化物粉末Mが凝集し難い温度以上に加熱された後は、撹拌翼140の回転数を低くすることで、金属酸化物粉末Mに必要以上のせん断エネルギーを与えることを防ぐことができる。そのため、金属酸化物粉末Mの薬剤処理に必要な各工程において、金属酸化物粉末Mの凝集を適切に低減することができる。
【0071】
〔5.薬剤処理された金属酸化物粉末の製造方法〕
薬剤処理された金属酸化物粉末は、上述の加熱工程S10及び混合工程S20を含み、撹拌翼140の回転数は、加熱工程S10よりも混合工程S20の方が低くなるようにする、薬剤処理された金属酸化物粉末の製造方法により、製造することができる。
【0072】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0073】
本発明の一実施例について以下に説明する。なお各物性値は以下の方法により測定した。
【0074】
粉末の比表面積は柴田理化学社製比表面積測定装置SA−1000を用い、窒素吸着BET1点法により測定した。
【0075】
粒径は画像解析法による体積基準粒度分布のメジアン径として測定した。具体的な体積基準粒度分布の測定方法は、以下の通りである。まず金属酸化物粉末Mとしてのシリカを約0.03g秤量し、30mLのエタノールに添加した後、超音波洗浄器を用いて5分間分散させ、シリカスラリーを得た。このスラリーをシリコンウェハ上に滴下して乾燥させ、日立ハイテクノロジーズ製電界放射型走査電子顕微鏡S−5500を用いて、10万倍画像を撮影した。そして、その画像を旭化成エンジニアリング製の画像解析ソフト「A像くん」を用いて、円相当径を求め、体積基準粒度分布を得た。
【0076】
嵩密度は、目開き2mmの篩いを用いたこと以外はJIS5101−12−1 顔料試験方法に準じて静置法により測定を行った。
【0077】
全ての実施例および比較例において、金属酸化物粉末Mとして、有機ケイ素化合物を燃焼させて製造された比表面積30m/g、粒径125nmのシリカ粉末を用いた。
【0078】
〔実施例1.温度が金属酸化物粉末の凝集度に与える影響〕
温度が金属酸化物粉末Mの凝集度に与える影響を明らかにするため、各種温度に設定された撹拌容器110の内部において、金属酸化物粉末Mを撹拌し、金属酸化物粉末Mの嵩密度の経時的変化を測定した。使用した撹拌容器110の容積は、20Lであった。
【0079】
まず、撹拌容器110の内部が室温(25℃)、150℃、265℃又は300℃に予熱されたことを確認した後で、シリカ1kgを、撹拌容器110の内部に投入し、撹拌翼140により、回転数100rpmで撹拌した。各温度でそれぞれ、約20分経過ごとに撹拌容器110の内部からシリカのサンプルを取り出し、嵩密度を測定した。嵩密度の測定結果を図4に示す。
【0080】
図4に示すように、撹拌容器110の内部の温度が室温又は150℃の場合、撹拌時間が長くなる程、シリカの嵩密度が増加することが示された。このことは、撹拌時間が長くなる程、シリカが凝集することを示唆する。一方、撹拌容器110の内部の温度が265℃及び300℃の場合、撹拌時間が長くなっても、シリカの嵩密度はほとんど増加しなかった。このことは、シリカの凝集度が低く、微細なシリカの粒子同士が離れていることを示唆する。
【0081】
図5に、撹拌前並びに150℃、265℃及び300℃で120分撹拌した後のシリカのSEM(Scanning Electron Microscope)写真を示す。図5の1000に示すように、撹拌前のシリカには、凝集していない微細な粒子が多く含まれていた。図5の写真1100に示すように、150℃で120分撹拌した後のシリカには、粒径約10μm以上の密に凝集した大きな粒子が多く含まれていた。図5の写真1200及び1300にそれぞれ示すように、265℃及び300℃で120分撹拌した後のシリカには、図5の写真1100に示す撹拌前のシリカと同様に、凝集していない微細な粒子が多く含まれていた。
【0082】
したがって、265℃以上の加熱により、シリカの凝集が低減されることが示された。
【0083】
〔実施例2.撹拌翼の回転数が撹拌装置のせん断エネルギーに与える影響〕
上述の通り、撹拌装置100のせん断エネルギーを低下させるためには、撹拌動力Pを金属酸化物粉末Mの嵩密度ρ及び撹拌翼の回転数nの積で除した値であるP/(ρ・n)を小さくすることが好ましい。そこで、回転数nを変化させたときの撹拌動力P及び嵩密度ρを測定し、回転数nがP/(ρ・n)及び嵩密度ρに与える影響を調べた。
【0084】
使用した撹拌容器110の容積は、2mであった。撹拌容器110の内部へのシリカの投入量は、200kgとした。撹拌容器110の内部の温度は250℃とし、撹拌時間は各回転数でそれぞれ5分とした。結果を図6に示す。
【0085】
図6の丸のマーカで示すように、撹拌翼140の回転数が高い程、嵩密度が減少することが示された。この理由は、撹拌により、緩く凝集していた金属酸化物粉末Mが解砕され、金属酸化物粉末Mの粒子同士の間に空気を巻き込むためであると考えられる。
【0086】
また、図6の四角のマーカで示すように、撹拌翼140の回転数が40rpm以上75rpm以下の場合に、P/(ρ・n)が特に小さくなることが示された。したがって、撹拌翼140の回転数を40rpm以上75rpm以下として撹拌することにより、撹拌装置100のせん断エネルギーが効果的に低下し、金属酸化物粉末Mの凝集が低減されることが示唆された。
【0087】
〔実施例3.撹拌翼の回転数が金属酸化物粉末の温度上昇に与える影響〕
撹拌容器110の内部に金属酸化物粉末Mを投入する際に、撹拌翼140の回転数が高い程、金属酸化物粉末Mが速やかに均一に温度上昇すると予想される。そこで、撹拌翼140の回転数が金属酸化物粉末Mの温度上昇に与える影響を調べた。
【0088】
使用した撹拌容器110の容積は、2mであり、撹拌翼140の回転数は、30rpm、50rpm又は100rpmとした。撹拌容器110の内部へのシリカの投入量は、200kgとした。金属酸化物粉末Mを投入する前の、撹拌容器110の内部の温度は、250℃とした。結果を図7に示す。
【0089】
いずれの回転数でも、撹拌時間0分は、金属酸化物粉末Mの投入完了時点を示す。撹拌翼140の回転数が30rpmの場合、金属酸化物粉末Mの投入完了後、40分が経過しても、撹拌容器110の内部の温度は220℃に達しなかった。一方、撹拌翼140の回転数が高い程、撹拌容器110の内部の温度は速やかに上昇し、撹拌翼140の回転数が100rpmの場合、金属酸化物粉末Mの投入完了後すぐに、撹拌容器の内部の温度が220℃に達した。
【0090】
〔実施例4.金属酸化物粉末の薬剤処理〕
本発明の一実施形態に係る撹拌装置100を使用して、金属酸化物粉末Mを薬剤処理した。使用した撹拌容器110の容積は、2mであった。使用した薬剤は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)であった。
【0091】
まず、撹拌容器110をジャケット150によって加熱した。撹拌容器110の内部が250℃に予熱されたことを確認した後で、シリカ200kgを撹拌容器110の内部に投入し、撹拌翼140により回転数100rpmで撹拌した。この時、撹拌容器110の内部の温度は、シリカの投入により220℃に低下した。撹拌容器110の内部の気体を窒素により置換しながら、低下した撹拌容器110の内部の温度が再度250℃となるまで、シリカを撹拌翼140により撹拌しながら、撹拌容器110を40分間加熱した(S10:加熱工程)。
【0092】
撹拌容器110の内部の温度が再度250℃となったことを確認した後で、撹拌翼140の回転数を50rpmに設定した。そして、撹拌容器110を密閉状態とし、0.9kgの水蒸気を10分間掛けて導入した後、8kgのHMDSを原液のまま、撹拌容器110の内部に噴霧することにより添加した。HMDSの添加後、この状態を30分間保持し、シリカの薬剤処理を行った(S20:混合工程)。加熱工程S10及び混合工程S20におけるモータ120の撹拌動力の経時的変化を、図8に示す。
【0093】
なお混合工程S20の後は、撹拌容器110の内部の圧力を開放し、内部の気体を窒素で置換することにより、未反応のHMDSと反応副生物を取り除いた。
【0094】
実施例4では、モータ120の撹拌動力が経時的にほとんど変化しなかった。このことは、シリカの流動状態が、加熱工程S10及び混合工程S20を通じてほとんど変化せず、シリカの凝集が極めて少なかったことを示唆する。
【0095】
また、薬剤処理されたシリカの空送による回収率は、1バッチ目で96%、2バッチ目で100%と非常に高かった。このことは、実施例4の方法により、シリカの凝集による撹拌容器110の内部への付着が極めて少なかったことを示す。
【0096】
<比較例1>
実施例4において、加熱工程S10及び混合工程S20を通じて、撹拌翼140の回転数を50rpmに設定したことを除き、実施例4と実質的に同様にして、比較例1に係る金属酸化物粉末Mの薬剤処理を行った。なお、比較例1では、撹拌容器110の内部の温度が再度250℃となるまでに、実施例4よりも長時間を要したため、シリカの投入完了から60分後に水蒸気を導入した後、HMDSを添加した。加熱工程S10及び混合工程S20におけるモータ120の撹拌動力の経時的変化を、図9に示す。
【0097】
比較例1では、シリカの投入完了から約40分後に、モータ120の撹拌動力が大きく増加した。このことは、撹拌翼140の回転数50rpmでの撹拌下ではシリカが凝集し、モータ120に大きな負荷が掛かったことを示唆する。シリカが凝集した理由は、撹拌翼140の回転数を実施例4よりも低く設定したことにより、シリカの昇温速度が遅くなったため、シリカが凝集し易い220℃以下の温度で長時間撹拌されたためと考えられる。
【0098】
薬剤処理されたシリカの回収率は、68%と低かった。また、薬剤処理されたシリカを撹拌容器110から取り出した後に、撹拌容器110の内部に凝集したシリカの付着が観察された。
【0099】
<比較例2>
実施例4において、加熱工程S10及び混合工程S20を通じて、撹拌翼140の回転数を100rpmに設定したことを除き、実施例4と同様にして、比較例2に係る金属酸化物粉末Mの薬剤処理を行った。加熱工程S10及び混合工程S20におけるモータ120の撹拌動力の経時的変化を、図10に示す。
【0100】
比較例2では、シリカの投入完了から約50分後に、モータ120の撹拌動力が大きく増加した。このことは、撹拌翼140の回転数100rpmでの連続撹拌により、シリカが凝集し、モータ120に大きな負荷が掛かったことを示唆する。シリカが凝集した理由は、撹拌翼140を高い回転数に設定し続けたため、撹拌によるせん断エネルギーがシリカに加えられたためと考えられる。
【0101】
薬剤処理されたシリカの回収率は、66%と低かった。また、薬剤処理されたシリカを撹拌容器110から取り出した後に、撹拌容器110の内部に凝集したシリカの付着が観察された。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、例えば、トナー粒子の外添剤等の分野において、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0103】
100 撹拌装置
110 撹拌容器
140 撹拌翼
141 アンカー翼
142 パドル翼
150 ジャケット
160 ノズル
S10 加熱工程
S20 混合工程
【要約】
【課題】金属酸化物粉末の凝集を適切に低減する。
【解決手段】金属酸化物粉末(M)の薬剤処理方法は、金属酸化物粉末(M)を、予熱された撹拌容器(110)の内部に投入し、撹拌翼(140)で撹拌しながら加熱する加熱工程(S10)と、金属酸化物粉末(M)に薬剤を添加して、撹拌翼(140)により撹拌しながら混合する混合工程(S20)と、を含み、撹拌翼(140)の回転数は、加熱工程(S10)よりも混合工程(S20)の方が低くなるようにする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10