特許第6792735号(P6792735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6792735
(24)【登録日】2020年11月10日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】光学積層体及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20201116BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20201116BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20201116BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G09F9/00 313
   B32B7/023
   C09J201/00
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-98838(P2020-98838)
(22)【出願日】2020年6月5日
【審査請求日】2020年7月9日
(31)【優先権主張番号】特願2019-209801(P2019-209801)
(32)【優先日】2019年11月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 昇祐
(72)【発明者】
【氏名】金 正熙
【審査官】 植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−126061(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/155940(WO,A1)
【文献】 特開2018−28573(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/026760(WO,A1)
【文献】 特開2018−111754(JP,A)
【文献】 特開2019−65254(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0375043(US,A1)
【文献】 特開2020−138379(JP,A)
【文献】 特開2020−140008(JP,A)
【文献】 特開2020−138378(JP,A)
【文献】 特開2020−138376(JP,A)
【文献】 特開2020−138543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00−43/00
C09J 7/38
C09J201/00
G02F 1/1333
G09F 9/00
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面板と、第1粘着剤層と、偏光板と、第2粘着剤層と、背面板と、をこの順に備え、
前記第1粘着剤層及び前記第2粘着剤層の応力〔Pa〕−ひずみ〔%〕曲線において原点から最大応力値までの傾きをそれぞれGL1’及びGL2’としたとき、下記式(1)及び式(2):
20≦GL1’≦150 (1)
20≦GL2’≦150 (2)
を満たす、光学積層体。
【請求項2】
さらに下記式(3):
L1’<GL2’ (3)
を満たす、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記第1粘着剤層の応力緩和率をσ1としたとき、下記式(4):
0.20≦σ1≦0.70 (4)
を満たす、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記第2粘着剤層の応力緩和率をσ2としたとき、下記式(5):
σ1<σ2 (5)
を満たす、請求項3に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記第1粘着剤層のクリープ率をε1〔%〕としたとき、下記式(6):
1.5≦ε1≦20 (6)
を満たす、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記第2粘着剤層のクリープ率をε2〔%〕としたとき、下記式(7):
ε1>ε2 (7)
を満たす、請求項5に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記第1粘着剤層の変形復元率をR1〔%〕としたとき、下記式(8):
2.5≦R1≦20 (8)
を満たす、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記第2粘着剤層の変形復元率をR2〔%〕としたとき、下記式(9):
R1<R2 (9)
を満たす、請求項7に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記第1粘着剤層及び前記第2粘着剤層のガラス転移温度は、それぞれ−70℃以上−40℃以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の光学積層体を含む表示装置。
【請求項11】
前記前面板側を内側にして屈曲可能である、請求項10に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018−027995号公報(特許文献1)には、応力緩和特性に優れた粘着剤層を備えたフレキシブル画像表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−027995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粘着剤層を介して複数の層が積層された光学積層体は、屈曲すると粘着剤層内、又は粘着剤層と粘着剤層に接する層との間に気泡が発生しやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、屈曲したときに気泡の発生が抑制された光学積層体、及び該光学積層体を含む表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に例示する光学積層体及び表示装置を提供する。
[1] 前面板と、第1粘着剤層と、偏光板と、第2粘着剤層と、背面板と、をこの順に備え、
前記第1粘着剤層及び前記第2粘着剤層の応力〔Pa〕−ひずみ〔%〕曲線において原点から最大応力値までの傾きをそれぞれGL1’及びGL2’としたとき、下記式(1)及び式(2):
20≦GL1’≦150 (1)
20≦GL2’≦150 (2)
を満たす、光学積層体。
[2] さらに下記式(3):
L1’<GL2’ (3)
を満たす、[1]に記載の光学積層体。
[3] 前記第1粘着剤層の応力緩和率をσ1としたとき、下記式(4):
0.20≦σ1≦0.70 (4)
を満たす、[1]又は[2]に記載の光学積層体。
[4] 前記第2粘着剤層の応力緩和率をσ2としたとき、下記式(5):
σ1<σ2 (5)
を満たす、[3]に記載の光学積層体。
[5] 前記第1粘着剤層のクリープ率をε1〔%〕としたとき、下記式(6):
1.5≦ε1≦20 (6)
を満たす、[1]〜[4]のいずれかに記載の光学積層体。
[6] 前記第2粘着剤層のクリープ率をε2〔%〕としたとき、下記式(7):
ε1>ε2 (7)
を満たす、[5]に記載の光学積層体。
[7] 前記第1粘着剤層の変形復元率をR1〔%〕としたとき、下記式(8):
2.5≦R1≦20 (8)
を満たす、[1]〜[6]のいずれかに記載の光学積層体。
[8] 前記第2粘着剤層の変形復元率をR2〔%〕としたとき、下記式(9):
R1<R2 (9)
を満たす、[7]に記載の光学積層体。
[9] 前記第1粘着剤層及び前記第2粘着剤層のガラス転移温度は、それぞれ−70℃以上−40℃以下である、[1]〜[8]のいずれかに記載の光学積層体。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の光学積層体を含む表示装置。
[11] 前記前面板側を内側にして屈曲可能である、[10]に記載の表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、屈曲したときに気泡の発生が抑制された光学積層体、及び該光学積層体を含む表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る光学積層体の一例を示す概略断面図である。
図2】動的機械分析装置によるパラメータの測定方法を説明する概略図である。
図3】静的屈曲耐久性試験を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る光学積層体の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0010】
<光学積層体>
図1は、本発明の一実施形態による光学積層体の概略断面図である。図1に示す光学積層体100は、前面板101と、第1粘着剤層102と、偏光板103と、第2粘着剤層104と、背面板105と、をこの順に備える。以下、第1粘着剤層102及び第2粘着剤層104を総称して粘着剤層ということがある。
【0011】
光学積層体100の厚みは、光学積層体に求められる機能及び光学積層体の用途等に応じて異なるため特に限定されないが、例えば30μm以上3000μm以下であり、好ましくは50μm以上2000μm以下であり、より好ましくは70μm以上1000μm以下である。
【0012】
光学積層体100の平面視形状は、例えば方形形状であってよく、好ましくは長辺と短辺とを有する方形形状であり、より好ましくは長方形である。光学積層体100の面方向の形状が長方形である場合、長辺の長さは、例えば10mm以上1400mm以下であってよく、好ましくは50mm以上600mm以下である。短辺の長さは、例えば5mm以上800mm以下であり、好ましくは30mm以上500mm以下であり、より好ましくは50mm以上300mm以下である。光学積層体100を構成する各層は、角部がR加工されたり、端部が切り欠き加工されたり、穴あき加工されたりしていてもよい。
【0013】
光学積層体100は、例えば表示装置等に用いることができる。表示装置は特に限定されず、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等が挙げられる。光学積層体100は、屈曲が可能な表示装置に好適である。
【0014】
[原点から最大応力値までの傾きG’]
第1粘着剤層102及び第2粘着剤層104の応力〔Pa〕−ひずみ〔%〕曲線において原点から最大応力値までの傾きをそれぞれGL1’及びGL2’としたとき、光学積層体100は、下記式(1)及び式(2):
20≦GL1’≦150 (1)
20≦GL2’≦150 (2)
を満たし、好ましくは、下記式(1a)及び(2a):
25≦GL1’≦95 (1a)
25≦GL2’≦95 (2a)
を満たす。
【0015】
粘着剤層を引張試験に供したとき、ひずみを横軸に、応力を縦軸にとった応力−ひずみ曲線を描くことができる。一般に、ひずみが大きくなるにつれて粘着剤層に生じる応力も大きくなり、粘着剤層に凝集破壊が起こる直前に応力は最大となる。粘着剤層の応力−ひずみ曲線において原点から最大応力値までの傾きG’とは、(最大応力値〔Pa〕)/(応力が最大となるときのひずみ量〔%〕)で表される。G’は、粘着剤層が弾性変形したときの応力変化だけでなく塑性変形したときの応力変化までを反映しており、粘着剤層が凝集破壊するまでの耐久性の指標となり得る。G’が大きいとき、粘着剤層のひずみに対して生じる応力は大きく、粘着剤層は凝集力に優れる。G’が小さいとき、粘着剤層のひずみに対して生じる応力は小さく、粘着剤層は変形しやすい。G’は、後述する実施例の欄に記載の方法に従って求めることができる。
【0016】
式(1)及び式(2)を満たす光学積層体100は、屈曲させた状態を維持(以下、「静的屈曲」という。)しても粘着剤層内、及び粘着剤層と粘着剤層に接する層との間の気泡の発生が抑制される。ここで、静的屈曲したときに気泡の発生が抑制されるとは、光学積層体を後述の静的屈曲耐久性試験に供しても24時間以内に気泡が発生しないことをいう。このとき、粘着剤層と粘着剤層に接する層との間の浮き又は剥がれの発生も抑制される。気泡の発生は、光学顕微鏡下の観察によって判断できる。
【0017】
本明細書において、屈曲には、曲げ部分に曲面が形成される折り曲げの形態が含まれ、折り曲げた内面の曲率半径は特に限定されない。また、屈曲には、内面の屈折角が0度より大きく180度未満である屈折、及び、内面の曲率半径がゼロに近似、又は内面の屈折角が0度である折り畳みも含む。
【0018】
’は、粘着剤層に用いられる粘着剤組成物に含まれるベースポリマーを構成するモノマーの種類及び配合量;重合開始剤、架橋剤その他の添加剤の種類及び配合量;活性エネルギー線、熱その他の架橋度を変化させる要因等を調整することにより、所望の数値範囲とすることができる。例えば粘着剤組成物に含まれるベースポリマーが、炭素数10以上の長鎖アルキル(メタ)アクリル系モノマーを多く含むとき、G’は小さくなる傾向にある。例えば粘着剤組成物が重合性化合物を多く含むとき、G’は大きくなる傾向にある。
【0019】
光学積層体100は、好ましくは下記式(3):
L1’<GL2’ (3)
を満たす。式(3)を満たす光学積層体100は、前面板101を内側にして静的屈曲したとき、内径側となる粘着剤層が光学積層体100の内径側に生じる応力をより緩和するため、屈曲が容易であり、粘着剤層内、及び粘着剤層と粘着剤層に接する層との間の気泡の発生が抑制されて、光学積層体100の屈曲耐久性を向上させることができる。
【0020】
[応力緩和率σ]
第1粘着剤層102の応力緩和率をσ1としたとき、光学積層体100は、好ましくは下記式(4):
0.20≦σ1≦0.70 (4)
を満たし、より好ましくは下記式(4a):
0.20≦σ1≦0.55 (4a)
を満たす。
【0021】
第2粘着剤層104の応力緩和率をσ2としたとき、光学積層体100は、好ましくは下記式(4’):
0.20≦σ2≦0.70 (4’)
を満たし、より好ましくは下記式(4’a):
0.20≦σ2≦0.55 (4’a)
を満たす。
【0022】
粘着剤層の応力緩和率は、粘着剤層を引張試験に供したときに、引っ張った直後に生じた応力に対する所定時間経過後の応力の割合で表される。応力緩和率が小さいとき、粘着剤層に生じた応力が緩和しやすい。粘着剤層の応力緩和率が上述の範囲にあるとき、光学積層体100は、静的屈曲しても粘着剤層内に気泡が発生しにくい。また、粘着剤層と粘着剤層に接する層との密着性にも優れるため、粘着剤層間の気泡の発生も抑制される。応力緩和率は、後述する実施例の欄に記載の方法に従って求めることができる。
【0023】
光学積層体100は、好ましくは下記式(5):
σ1<σ2 (5)
を満たす。式(5)を満たす光学積層体100は、前面板101を内側にして静的屈曲したとき、第1粘着剤層102が光学積層体の内径側に生じる応力をより緩和するため、屈曲が容易であり、粘着剤層内、及び粘着剤層と粘着剤層に接する層との間の気泡の発生が抑制されやすい。
【0024】
[クリープ率ε]
第1粘着剤層102のクリープ率をε1〔%〕としたとき、光学積層体100は、好ましくは下記式(6):
1.5≦ε1≦20 (6)
を満たし、より好ましくは下記式(6a):
3.0≦ε1≦10 (6a)
を満たす。
【0025】
第2粘着剤層104のクリープ率をε2〔%〕としたとき、光学積層体100は、好ましくは下記式(6’):
1.5≦ε2≦20 (6’)
を満たし、より好ましくは下記式(6’a):
3.0≦ε2≦10 (6’a)
を満たす。
【0026】
粘着剤層のクリープ率は、粘着剤層を一定の力で一定時間引っ張ったときの最大変形率である。クリープ率が大きいとき、粘着剤層は変形しやすい。粘着剤層のクリープ率が上述の範囲にあるとき、光学積層体100は、静的屈曲しても粘着剤層内に気泡が発生しにくい。また、粘着剤層と粘着剤層に接する層との密着性にも優れるため、層間の気泡の発生も抑制される。クリープ率は、後述する実施例の欄に記載の方法に従って求めることができる。
【0027】
光学積層体100は、好ましくは下記式(7):
ε1>ε2 (7)
を満たす。式(7)を満たす光学積層体100は、前面板101を内側にして静的屈曲したとき、第1粘着剤層102が光学積層体の内径側に生じる応力をより緩和するため、屈曲が容易であり、粘着剤層内、及び粘着剤層と粘着剤層に接する層との間の気泡の発生が抑制されやすい。
【0028】
[変形復元率R]
第1粘着剤層102の変形復元率をR1〔%〕としたとき、光学積層体100は、好ましくは下記式(8):
2.5≦R1≦20 (8)
を満たし、より好ましくは下記式(8a):
3.0≦R1≦10 (8a)
を満たす。
【0029】
第2粘着剤層104の変形復元率をR2〔%〕としたとき、光学積層体100は、好ましくは下記式(8’):
2.5≦R2≦20 (8’)
を満たし、より好ましくは下記式(8’a):
3.0≦R2≦10 (8’a)
を満たす。
【0030】
粘着剤層の変形復元率は、粘着剤層の引張試験において、除荷から所定時間経過後に粘着剤層が縮んだ割合を示す。変形復元率が大きいとき、粘着剤層は伸張後の収縮性に優れる。粘着剤層の変形復元率が上述の範囲にあるとき、光学積層体100は、静的屈曲しても粘着剤層内に気泡が発生しにくい。また、粘着剤層と粘着剤層に接する層との密着性にも優れるため、層間の気泡の発生も抑制される。変形復元率は、後述する実施例の欄に記載の方法に従って求めることができる。
【0031】
光学積層体100は、好ましくは下記式(9):
R1<R2 (9)
を満たす。式(9)を満たす光学積層体100は、前面板101を内側にして静的屈曲したとき、第2粘着剤層104が光学積層体100の外径側に生じる応力をより緩和するため、屈曲が容易であり、粘着剤層内、及び粘着剤層と粘着剤層に接する層との間の気泡の発生が抑制されやすい。
【0032】
粘着剤層の応力緩和率、クリープ率、変形復元率は、粘着剤層に用いられる粘着剤組成物に含まれるベースポリマーを構成するモノマーの種類及び配合量;重合開始剤、架橋剤その他の添加剤の種類及び配合量;活性エネルギー線、熱その他の架橋度を変化させる要因等を調整することにより、所望の数値範囲とすることができる。
【0033】
[ガラス転移温度]
光学積層体100において、好ましくは第1粘着剤層及び第2粘着剤層のガラス転移温度は、それぞれ−70℃以上−40℃以下である。粘着剤層のガラス転移温度が−40℃以下であるとき、粘着剤層の柔軟性が良好であるため、光学積層体100は容易に屈曲することができる。粘着剤層のガラス転移温度が−70℃より低いとき、粘着剤層の凝集力が低くなり、耐久条件での粘着力が低下し得る。粘着剤層のガラス転移温度は、後述の実施例の欄に記載の方法に従って測定できる。
【0034】
粘着剤層のガラス転移温度は、粘着剤組成物に含まれるベースポリマーを構成するモノマーの種類及び配合量;重合開始剤、架橋剤その他の添加剤の種類及び配合量;活性エネルギー線、熱その他の架橋度を変化させる要因等を調整することにより、所望の数値範囲とすることができる。粘着剤層のガラス転移温度を−40℃以下とするために、粘着剤組成物に含まれるベースポリマーは、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が−40℃以下、好ましくは−45℃以下、より好ましくは−50℃以下のアクリル酸モノマーを配合することが好ましい。このようなモノマーとしては、例えばアクリル酸n−ブチル(T:−55℃)、アクリル酸n−オクチル(T:−65℃)、アクリル酸イソオクチル(T:−58℃)、アクリル酸2−エチルヘキシル(T:−70℃)、アクリル酸イソノニル(T:−58℃)、アクリル酸イソデシル(T:−60℃)、メタクリル酸イソデシル(T:−41℃)、メタクリル酸n−ラウリル(T:−65℃)、アクリル酸トリデシル(T:−55℃)、メタクリル酸トリデシル(T:−40℃)が挙げられ、アクリル酸n−ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。これらのモノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
粘着剤組成物に含まれるベースポリマーは、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が−40℃以下であるモノマーを好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含有する。また、粘着剤組成物に含まれるベースポリマーは、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が−40℃以下であるモノマーを好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下、さらに好ましくは99質量%以下含有する。ホモポリマーとしてのガラス転移温度が−40℃以下であるモノマーの含有量がこのような範囲であると、粘着剤層のガラス転移温度が上述の範囲に入りやすい。
【0036】
粘着剤層のガラス転移温度を上述した範囲に設定し易くするために、粘着剤組成物に含まれるベースポリマーは、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が0℃を超えるモノマーをなるべく少なく含むことが好ましく、このようなモノマーを上限値として15質量%以下含むことが好ましく、10質量%以下含むことがより好ましく、5質量%以下含むことがさらに好ましい。
【0037】
[前面板]
前面板101は、光を透過可能な板状体であれば、材料及び厚みは限定されることはない。前面板は、1層のみから構成されてよく、2層以上から構成されてもよい。前面板101としては、樹脂製の板状体(例えば樹脂板、樹脂シート、樹脂フィルム等)、ガラス製の板状体(例えばガラス板、ガラスフィルム等)が挙げられる。前面板は、樹脂製の板状体とガラス製の板状体との積層体であってもよい。前面板101は、表示装置の最表面を構成することができる。
【0038】
前面板101の厚みは、例えば10μm以上300μm以下であってよく、好ましくは20μm以上200μm以下であり、より好ましくは30μm以上100μm以下である。本発明において、光学積層体100を構成する各層の厚みは、後述する実施例において説明する厚み測定方法に従って測定することができる。
【0039】
前面板101が樹脂製の板状体である場合、樹脂製の板状体は、光を透過可能なものであれば限定されることはない。樹脂製の板状体を構成する樹脂としては、例えばトリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリ(メタ)アクリル、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアミドイミドなどの高分子が挙げられる。これらの高分子は、単独で又は2種以上混合して用いることができる。強度及び透明性向上の観点から、樹脂製の板状体は、好ましくはポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の高分子で形成される樹脂フィルムである。
【0040】
硬度を向上させる観点から、前面板101は、ハードコート層を備えた樹脂フィルムであってもよい。ハードコート層は、樹脂フィルムの一方の面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。ハードコート層を設けることにより、硬度及び耐スクラッチ性を向上させることができる。ハードコート層は、例えば紫外線硬化型樹脂の硬化層である。紫外線硬化型樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。ハードコート層は、硬度を向上させるために、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は特に限定されることはなく、無機系微粒子、有機系微粒子、又はこれらの混合物が挙げられる。樹脂フィルムの両面にハードコート層を有する場合、各ハードコート層の組成や厚みは、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0041】
前面板101がガラス板である場合、ガラス板は、ディスプレイ用強化ガラスが好ましく用いられる。ガラス板の厚みは、例えば10μm以上1000μm以下であってよいし、20μm以上500μm以下であってもよい。ガラス板を用いることにより、優れた機械的強度及び表面硬度を有する前面板101を構成することができる。
【0042】
光学積層体100が表示装置に用いられる場合、前面板101は、表示装置の前面(画面)を保護する機能(ウィンドウフィルムとしての機能)を有するのみではなく、タッチセンサとしての機能、ブルーライトカット機能、視野角調整機能等を有するものであってもよい。
【0043】
[第1粘着剤層]
第1粘着剤層102は、前面板101と偏光板103の間に介在して、これらを貼合する。第1粘着剤層102は、1層であってもよく、2層以上からなるものであってもよいが、好ましくは1層である。
【0044】
第1粘着剤層102は、(メタ)アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂を主成分(ベースポリマー)とする粘着剤組成物から構成することができる。第1粘着剤層102を構成する粘着剤組成物としては、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型又は熱硬化型であってもよい。
【0045】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル化合物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート化合物、グリシジル(メタ)アクリレート化合物等の、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマーとして、ベンゾイル基を持つ光反応性化合物を用いることもでき、韓国公開特許10−2019−0005427に化学式1として記載された化合物が例示される。このような光反応性化合物は、追加的な光硬化により活性化されて追加架橋が誘導されるため、耐久性を向上させることができる。
【0046】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成する金属イオン、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリアミン化合物、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するポリエポキシ化合物又はポリオール、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリイソシアネート化合物が例示される。架橋剤は、好ましくはポリイソシアネート化合物である。
【0047】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルム等の被着体に密着させることができ、活性エネルギー線の照射によって硬化して密着力の調整ができる性質を有する。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、ベースポリマー、架橋剤に加えて、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含有する。必要に応じて、光重合開始剤、光増感剤等を含有させてもよい。
【0048】
活性エネルギー線重合性化合物としては、例えば分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー;官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー等の(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物等の(メタ)アクリル系化合物が挙げられる。粘着剤組成物は、活性エネルギー線重合性化合物を、粘着剤組成物の固形分100質量部に対して0.1質量部以上含むことができ、10質量部以下、5質量部以下又は2質量部以下含むことができる。
【0049】
光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルケトン等が挙げられる。光重合開始剤は、1種又は2種以上を含むことができる。粘着剤組成物が光重合開始剤を含むとき、その全含有量は、例えば粘着剤組成物の固形分100質量部に対し0.01質量部以上3.0質量部以下であってよい。
【0050】
粘着剤組成物は、光散乱性を付与するための微粒子、ビーズ(樹脂ビーズ、ガラスビーズ等)、ガラス繊維、ベースポリマー以外の樹脂、粘着性付与剤、充填剤(金属粉やその他の無機粉末等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、着色剤、消泡剤、腐食防止剤、光重合開始剤等の添加剤を含むことができる。
【0051】
第1粘着剤層102は、上記粘着剤組成物の有機溶剤希釈液を基材上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。第1粘着剤層102は、粘着剤組成物を用いて形成された粘着シートを用いて形成することもできる。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を用いた場合は、形成された粘着剤層に、活性エネルギー線を照射することにより所望の硬化度を有する粘着剤層とすることができる。
【0052】
第1粘着剤層102の厚みは、特に限定されないが、例えば1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましく、20μm以上であってもよい。
【0053】
第1粘着剤層102の凝集力を向上させる観点から、第1粘着剤層102を厚さ150μmの基準粘着剤層としたときに、温度25℃でのせん断弾性率は、好ましくは0.01MPa以上であり、より好ましくは0.02MPa以上であり、好ましくは0.50MPa以下であり、より好ましくは0.10MPa以下であり、0.08MPa以下であってもよい。第1粘着剤層102のせん断弾性率がこの範囲であるとき、光学積層体100は、屈曲しても凝集破壊を起こしにくく、気泡も発生しにくい。せん断弾性率は、粘着剤組成物に含まれるベースポリマーを構成するモノマーの種類及び含有量、添加剤、架橋度等を変更することによって調整することができる。
【0054】
[偏光板]
偏光板103は、例えば直線偏光板、円偏光板、楕円偏光板等であってもよい。円偏光板は、直線偏光板及び位相差層を備える。円偏光板は、画像表示装置中で反射された外光を吸収することができるため、光学積層体100に反射防止フィルムとしての機能を付与することができる。
【0055】
偏光板103の厚みは、通常5μm以上であり、20μm以上であってもよく、25μm以上であってもよく、30μm以上であってもよい。また、偏光板103の厚みは、80μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。
【0056】
(直線偏光板)
直線偏光板は、自然光等の非偏光な光線からなる一方向の直線偏光を選択的に透過させる機能を有する。直線偏光板は、二色性色素を吸着させた延伸フィルム又は延伸層、重合性液晶化合物の硬化物及び二色性色素を含み、二色性色素が重合性液晶化合物の硬化物中に分散し、配向している液晶層等を偏光子層として備えることができる。二色性色素は、分子の長軸方向における吸光度と短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素をいう。液晶層を偏光子層として用いた直線偏光板は、二色性色素を吸着させた延伸フィルム又は延伸層に比べて、屈曲方向に制限がないため好ましい。
【0057】
(二色性色素を吸着させた延伸フィルム又は延伸層である偏光子層)
二色性色素を吸着させた延伸フィルムである偏光子層は、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素等の二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。
【0058】
偏光子層の厚みは、通常30μm以下であり、好ましくは18μm以下、より好ましくは15μm以下である。偏光子層の厚みを薄くすることは、偏光板103の薄膜化に有利である。偏光子層の厚みは、通常1μm以上であり、例えば5μm以上であってよい。
【0059】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸系化合物、オレフィン系化合物、ビニルエーテル系化合物、不飽和スルホン系化合物、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド系化合物が挙げられる。
【0060】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85モル%以上100モル%以下程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等も使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1000以上10000以下であり、好ましくは1500以上5000以下である。
【0061】
二色性色素を吸着させた延伸層である偏光子層は、通常、上記ポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液を基材フィルム上に塗布する工程、得られた積層フィルムを一軸延伸する工程、一軸延伸された積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させて偏光子層とする工程、二色性色素が吸着されたフィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。偏光子層を形成するために用いる基材フィルムは、偏光子層の保護層として用いてもよい。必要に応じて、基材フィルムを偏光子層から剥離除去してもよい。基材フィルムの材料及び厚みは、後述する熱可塑性樹脂フィルムの材料及び厚みと同様であってよい。
【0062】
二色性色素を吸着させた延伸フィルム又は延伸層である偏光子層は、そのまま直線偏光板として用いてよく、その片面又は両面に保護層を形成して直線偏光板として用いてもよい。保護層としては、後述する熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。得られる直線偏光板の厚みは、好ましくは2μm以上40μm以下である。
【0063】
熱可塑性樹脂フィルムは、例えばシクロポリオレフィン系樹脂フィルム;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等の樹脂からなる酢酸セルロース系樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂からなるポリエステル系樹脂フィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム;(メタ)アクリル系樹脂フィルム;ポリプロピレン系樹脂フィルム等、当分野において公知のフィルムを挙げることができる。偏光子層と保護層とは、後述する貼合層を介して積層することができる。
【0064】
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、薄型化の観点から、通常100μm以下であり、好ましくは80μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは40μm以下であり、なおさらに好ましくは30μm以下であり、また、通常5μm以上であり、好ましくは10μm以上である。
【0065】
熱可塑性樹脂フィルム上にハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層は、熱可塑性樹脂フィルムの一方の面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。ハードコート層を設けることにより、硬度及び耐スクラッチ性を向上させた熱可塑性樹脂フィルムとすることができる。ハードコート層は、上述の樹脂フィルムに形成されるハードコート層と同様にして形成することができる。
【0066】
(液晶層である偏光子層)
液晶層を形成するために用いる重合性液晶化合物は、重合性反応基を有し、かつ、液晶性を示す化合物である。重合性反応基は、重合反応に関与する基であり、光重合性反応基であることが好ましい。光重合性反応基は、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基をいう。光重合性官能基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1−クロロビニル基、イソプロペニル基、4−ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶化合物の種類は特に限定されず、棒状液晶化合物、円盤状液晶化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。重合性液晶化合物の液晶性は、サーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよく、相秩序構造としてはネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。
【0067】
液晶層である偏光子層に用いられる二色性色素としては、300〜700nmの範囲に吸収極大波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素、及びアントラキノン色素等が挙げられるが、中でもアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、及びスチルベンアゾ色素等が挙げられ、好ましくはビスアゾ色素、及びトリスアゾ色素である。二色性色素は単独でも、2種以上を組み合わせてもよいが、3種以上を組み合わせることが好ましい。特に、3種以上のアゾ化合物を組み合わせることがより好ましい。二色性色素の一部が反応性基を有していてもよく、また液晶性を有していてもよい。
【0068】
液晶層である偏光子層は、例えば基材フィルム上に形成した配向膜上に、重合性液晶化合物及び二色性色素を含む偏光子層形成用組成物を塗布し、重合性液晶化合物を重合して硬化させることによって形成することができる。基材フィルム上に、偏光子層形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を基材フィルムとともに延伸することによって、偏光子層を形成してもよい。偏光子層を形成するために用いる基材フィルムは、偏光子層の保護層として用いてもよい。基材フィルムの材料及び厚みは、上述した熱可塑性樹脂フィルムの材料及び厚みと同様であってよい。
【0069】
重合性液晶化合物及び二色性色素を含む偏光子層形成用組成物、及びこの組成物を用いた偏光子層の製造方法としては、特開2013−37353号公報、特開2013−33249号公報、特開2017−83843号公報等に記載のものを例示することができる。偏光子層形成用組成物は、重合性液晶化合物及び二色性色素に加えて、溶媒、重合開始剤、架橋剤、レベリング剤、酸化防止剤、可塑剤、増感剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの成分は、それぞれ1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
偏光子層形成用組成物が含有していてもよい重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温条件下で、重合反応を開始できる点で、光重合性開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の総量100重量部に対して、好ましくは1質量部以上10質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上8質量部以下である。この範囲内であると、重合性基の反応が十分に進行し、かつ、液晶化合物の配向状態を安定化させやすい。
【0071】
液晶層である偏光子層の厚みは、通常10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上8μm以下であり、より好ましくは1μm以上5μm以下である。
【0072】
液晶層である偏光子層は、基材フィルムを剥離除去せずに直線偏光板として用いてもよく、基材フィルムを偏光子層から剥離除去して直線偏光板としてもよい。液晶層である偏光子層は、その片面又は両面に保護層を形成して直線偏光板として用いてもよい。保護層としては、上述する熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。
【0073】
液晶層である偏光子層は、偏光子層の保護等を目的として、偏光子層の片面又は両面にオーバーコート層を有していてもよい。オーバーコート層は、例えば偏光子層上にオーバーコート層を形成するための材料(組成物)を塗布することによって形成することができる。オーバーコート層を構成する材料としては、例えば光硬化性樹脂、水溶性ポリマー等が挙げられる。オーバーコート層を構成する材料としては、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等を用いることができる。
【0074】
偏光板103は、直線偏光板が位相差層に対して第1粘着剤層102側になるよう配置される。偏光板103を構成し、第1粘着剤層102に接する最外層は、好ましくは直線偏光板に含まれる基材フィルム、保護層又はオーバーコート層である。
【0075】
(位相差層)
位相差層は、1層であってもよく2層以上であってもよい。位相差層は、その表面を保護するオーバーコート層、位相差層を支持する基材フィルム等を有していてもよい。位相差層は、λ/4層を含み、さらにλ/2層又はポジティブC層の少なくともいずれかを含んでいてもよい。位相差層がλ/2層を含む場合、直線偏光板側から順にλ/2層及びλ/4層を積層する。位相差層がポジティブC層を含む場合、直線偏光板側から順にλ/4層及びポジティブC層を積層してもよく、直線偏光板側から順にポジティブC層及びλ/4層を積層してもよい。位相差層の厚みは、例えば0.1μm以上10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上8μm以下であり、より好ましくは1μm以上6μm以下である。
【0076】
位相差層は、保護層の材料として例示した樹脂フィルムから形成してもよいし、重合性液晶化合物が硬化した層から形成してもよい。位相差層は、さらに配向膜を含んでもよい。位相差層は、λ/4層と、λ/2層及びポジティブC層とを貼合するための貼合層を有していてもよい。
【0077】
重合性液晶化合物を硬化して位相差層を形成する場合、位相差層は、重合性液晶化合物を含む組成物を基材フィルムに塗布し硬化させることにより形成することができる。基材フィルムと塗布層との間に配向膜を形成してもよい。基材フィルムの材料及び厚みは、上記熱可塑性樹脂フィルムの材料及び厚みと同じであってよい。重合性液晶化合物を硬化してなる層から位相差層を形成する場合、位相差層は、配向膜及び基材フィルムを有する形態で光学積層体に組み込まれてもよい。位相差層は、貼合層を介して直線偏光板と貼合することができる。
【0078】
[第2粘着剤層]
第2粘着剤層104は、偏光板103と背面板105との間に介在して、これらを貼合する。第2粘着剤層104は、1層であってもよく、2層以上からなるものであってもよいが、好ましくは1層である。
【0079】
第2粘着剤層104を構成する粘着剤組成物の組成及び配合成分、粘着剤組成物のタイプ(活性エネルギー線硬化型や熱硬化型であるか否か等)、粘着剤組成物に配合され得る添加剤、第2粘着剤層の作製方法、第2粘着剤層の厚み等については、上述の第1粘着剤層102の説明において示したものと同じである。
第2粘着剤層104は、粘着剤組成物の組成及び配合成分、厚み等において、第1粘着剤層102と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0080】
第2粘着剤層104の凝集力を向上させる観点から、第2粘着剤層104を厚さ150μmの基準粘着剤層としたときに、温度25℃でのせん断弾性率は、好ましくは0.01MPa以上であり、より好ましくは0.02MPa以上であり、好ましくは0.50MPa以下であり、より好ましくは0.10MPa以下であり、0.08MPa以下であってもよい。第2粘着剤層104のせん断弾性率がこの範囲であるとき、光学積層体100は、屈曲しても凝集破壊を起こしにくく、気泡も発生しにくい。せん断弾性率は、粘着剤組成物に含まれるベースポリマーを構成するモノマーの種類及び含有量、添加剤、架橋度等を変更することによって調整することができる。
【0081】
[貼合層]
光学積層体100は、2つの層を接合するための貼合層を含むことができる。貼合層は、粘着剤又は接着剤から構成される層である。貼合層の材料となる粘着剤は、上述の第1粘着剤層102を構成する粘着剤組成物と同一の粘着剤組成物を用いることができる。貼合層は、他の粘着剤、例えば第1粘着剤層102を構成する粘着剤とは異なる(メタ)アクリル系粘着剤、スチレン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、エポキシ系共重合体粘着剤等を用いることもできる。
【0082】
貼合層の材料となる接着剤としては、例えば水系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤等のうち1種又は2種以上を組み合わせて形成することができる。水系接着剤としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤等を挙げることができる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって硬化する接着剤であり、例えば重合性化合物及び光重合性開始剤を含む接着剤、光反応性樹脂を含む接着剤、バインダー樹脂及び光反応性架橋剤を含む接着剤等を挙げることができる。上記重合性化合物としては、光硬化性エポキシ系モノマー、光硬化性アクリル系モノマー、光硬化性ウレタン系モノマー等の光重合性モノマー、及びこれらモノマーに由来するオリゴマー等を挙げることができる。上記光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射して中性ラジカル、アニオンラジカル、カチオンラジカルといった活性種を発生する物質を含む化合物を挙げることができる。
【0083】
貼合層の厚みは、例えば1μm以上であってよく、好ましくは1μm以上25μm以下、より好ましくは2μm以上15μm以下、さらに好ましくは2.5μm以上5μm以下である。
【0084】
貼合層を介して貼合される対向する二つの表面は、予めコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等を行ってもよく、プライマー層等を有していてもよい。
【0085】
[背面板]
背面板105としては、光を透過可能な板状体や通常の表示装置に用いられる構成要素等を用いることができる。
【0086】
背面板105の厚みは、例えば5μm以上2000μm以下であってよく、好ましくは10μm以上1000μm以下であり、より好ましくは15μm以上500μm以下である。
【0087】
背面板105に用いられる板状体としては、1層のみから構成されてよく、2層以上から構成されたものであってよく、前面板101において述べた板状体について例示したものを用いることができる。
【0088】
背面板105に用いる通常の表示装置に用いられる構成要素としては、例えばタッチセンサパネル、有機EL表示素子等が挙げられる。表示装置における構成要素の積層順としては、例えばウィンドウフィルム/円偏光板/タッチセンサパネル/有機EL表示素子、ウィンドウフィルム/タッチセンサパネル/円偏光板/有機EL表示素子等が挙げられる。
【0089】
(タッチセンサパネル)
タッチセンサパネルは、タッチされた位置を検出可能なセンサ(すなわちタッチセンサ)を有するパネルであれば、限定されない。タッチセンサの検出方式は限定されることはなく、抵抗膜方式、静電容量結合方式、光センサ方式、超音波方式、電磁誘導結合方式、表面弾性波方式等のタッチセンサパネルが例示される。低コストであることから、抵抗膜方式、静電容量結合方式のタッチセンサパネルが好適に用いられる。
【0090】
抵抗膜方式のタッチセンサの一例として、互いに対向配置された一対の基板と、それら一対の基板の間に挟持された絶縁性スペーサーと、各基板の内側の前面に抵抗膜として設けられた透明導電膜と、タッチ位置検知回路とにより構成されている部材が挙げられる。抵抗膜方式のタッチセンサを設けた画像表示装置においては、前面板の表面がタッチされると、対向する抵抗膜が短絡して、抵抗膜に電流が流れる。タッチ位置検知回路が、このときの電圧の変化を検知し、タッチされた位置が検出される。
【0091】
静電容量結合方式のタッチセンサの一例としては、基板と、基板の全面に設けられた位置検出用透明電極と、タッチ位置検知回路とにより構成されている部材が挙げられる。静電容量結合方式のタッチセンサを設けた画像表示装置においては、前面板の表面がタッチされると、タッチされた点で人体の静電容量を介して透明電極が接地される。タッチ位置検知回路が、透明電極の接地を検知し、タッチされた位置が検出される。
【0092】
タッチセンサパネルの厚みは、例えば5μm以上2000μm以下であってよく、好ましくは5μm以上100μm以下、さらに好ましくは5μm以上50μm以下であり、5μm以上20μm以下であってもよい。
【0093】
タッチセンサパネルは、基材フィルム上にタッチセンサのパターンが形成された部材であってよい。基材フィルムの例示は、上述の熱可塑性樹脂フィルムの説明における例示と同じであってよい。また、タッチセンサパネルは、基材フィルムから粘着剤層を介して被着体に転写されたものであってもよい。すなわち、タッチセンサパネルは、基材フィルムを有さなくてもよい。タッチセンサパターンの厚みは、例えば1μm以上20μm以下であってよい。
【0094】
[光学積層体の製造方法]
光学積層体100は、粘着剤層を介して光学積層体100を構成する層同士を貼合する工程を含む方法によって製造することができる。粘着剤層や貼合層を介して層同士を貼合する場合には、密着力を調整する目的で貼合面の一方又は両方に対して、コロナ処理等の表面活性化処理を施すことが好ましい。コロナ処理の条件は適宜設定することができ、貼合面の一方の面と他の面とで条件が異なっていてもよい。
【0095】
<表示装置>
本発明に係る表示装置は、上記光学積層体100を含む。表示装置は特に限定されず、例えば有機EL表示装置、無機EL表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等の画像表示装置が挙げられる。光学積層体には、さらにタッチセンサが積層されていてもよく、表示装置はタッチパネル機能を有していてもよい。本発明の光学積層体を含む表示装置は、静的屈曲に優れた耐久性を示し、屈曲又は巻回等が可能なフレキシブルディスプレイとして用いることができる。
【0096】
表示装置において、光学積層体100は、前面板101を外側(表示素子側とは反対側、すなわち視認側)に向けて表示装置が有する表示素子の視認側に配置される。表示装置は、前面板101側を内側にして屈曲可能である。
【0097】
本発明に係る表示装置は、スマートフォン、タブレット等のモバイル機器、テレビ、デジタルフォトフレーム、電子看板、測定器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器等として用いることができる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0099】
[粘着剤層]
窒素ガスが還流して温度調節が容易になるよう、冷却装置を設置した1Lの反応器に、表1に示すアクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHA)、アクリル酸n−ブチル(n−BA)、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)、アクリル酸イソデシル(IDA)、アクリル酸ベヘニル(BHA)、化合物Iからなるモノマー混合物を投入した。酸素を除去するため、窒素ガスを1時間還流した後、溶液を60℃に維持した。上記モノマー混合物を均一に混合した後、表1に示す配合量で、光重合開始剤ベンジルジメチルケタール(I−651)及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(I−184)を投入した。攪拌しながらUVランプ(10mW)を照射して、アクリル系ポリマーA1〜A6を製造した。
【0100】
【表1】
【0101】
【化1】
【0102】
得られたアクリル系ポリマーA1〜A6と、アクリル酸イソデシル(IDA)、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)と、ベンゾフェノン(BPO)とを表2に示す量で混合し、粘着剤組成物B1〜B9を製造した。
【0103】
【表2】
【0104】
粘着剤組成物B1〜B9をシリコン離型剤がコーティングされた剥離フィルムA(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み38μm)上に厚みが25μmになるように塗布した。その上に剥離フィルムB(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み38μm)を接合し、UV照射を行い、剥離フィルムA/粘着剤層/剥離フィルムBからなる粘着シートを作製した。UV照射の条件は、積算光量400mJ/cm、照度1.8mW/cm(UVV基準)であった。
【0105】
用いた化合物の入手先は以下のとおりである。
2−EHA:東京化成工業株式会社、日本
n−BA:東京化成工業株式会社、日本
HEAA:東京化成工業株式会社、日本
IDA:Miwon specialty chemical、韓国
BHA:東京化成工業株式会社、日本
I−651:BASF、ドイツ
I−184:BASF、ドイツ
BPO:東京化成工業株式会社、日本
【0106】
[前面板]
前面板101として、樹脂フィルムの一方の面にハードコート層が形成されたフィルムを用意した。樹脂フィルムは、厚み40μmのポリイミド系樹脂フィルムであった。ハードコート層は、厚みが10μmであり、末端に多官能アクリル基を有するデンドリマー化合物を含む組成物から形成された層であった。
【0107】
[円偏光板]
偏光板103として、円偏光板を準備した。トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(KC2UA、コニカミノルタ株式会社製、厚み25μm)、配向膜、直線偏光子層、及びオーバーコート層をこの順に有する直線偏光板を準備した。直線偏光子層は、重合性液晶化合物及び二色性色素を含む組成物を用いて形成され、厚みが2μmであった。オーバーコート層は、ポリビニルアルコール樹脂層であり、厚みが1.0μmであった。
【0108】
直線偏光板のオーバーコート層側に、粘着剤層を介して位相差積層体を積層し、円偏光板を得た。位相差積層体は、直線偏光板側から順に、λ/4位相差層、粘着剤層、ポジティブC層を有していた。λ/4位相差層は、重合性液晶化合物の硬化層であり、厚みが3μmであった。粘着剤層の厚みは5μmであった。ポジティブC層は、重合性液晶化合物の硬化層であり、厚みが3μmであった。
【0109】
[背面板]
背面板105として、タッチセンサパターン層、接着剤層、及び基材層がこの順に積層されたタッチセンサを準備した。タッチセンサパターン層は、透明導電層としてのITO層と、分離層としてのアクリル系樹脂組成物の硬化層とを含み、厚みが7μmであった。接着剤層は、タッチセンサパターン層の分離層側に設けられ、厚みが3μmであった。基材層には、環状オレフィン樹脂(COP)フィルム(ZF−14、日本ゼオン株式会社製、厚み23μm)を使用した。
【0110】
[光学積層体の作製]
表2に示す粘着剤組成物からなる粘着シートを表3に示すように第1粘着剤層102として用いて、前面板101のハードコート層を有さない側と偏光板103のTACフィルム側とを貼合した。また、表2に示す粘着剤組成物からなる粘着シートを表3に示すように第2粘着剤層104として用いて、円偏光板の位相差層側とタッチセンサのタッチセンサパターン層側とを貼合し、図1に示す層構造の光学積層体100(実施例1〜4及び比較例1、2)を作製した。前面板、円偏光板、タッチセンサ及び粘着剤層の貼合面には、貼合前に両面コロナ処理を行った。コロナ処理には、TEC−4AX(ウシオ電機株式会社製)を使用した。粘着剤層について原点から最大応力までの傾きG’、応力緩和率σ、クリープ率ε、変形復元率R、ガラス転移温度T、せん断弾性率、及び光学積層体100の静的屈曲耐久性を下記の方法に従って測定した。結果を表3に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
<層の厚み>
接触式膜厚測定装置(株式会社ニコン製「MS−5C」)を用いて測定した。偏光子層及び配向膜については、レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製「OLS3000」)を用いて測定した。
【0113】
<原点から最大応力値までの傾きG’>
原点から最大応力値までの傾きは、動的機械分析装置(DMA、Q−800、TA Instruments社製)を使用して測定した。まず、図2に示すように、粘着剤層を介して2つのポリカーボネート(PC)バー501の端部同士を接合した試験片を準備した。粘着剤層502の形状は、幅×長さ×厚さが6mm×10mm×25μmであり、PCバー501の形状は、幅×長さ×厚さが6mm×20mm×1mmであった。粘着剤層502とPCバー501との接着面積は、幅×長さが6mm×10mmであった。試験片のPCバー501の両端部の長さ5mmの領域にジグを取り付け、片方のジグを固定した。もう片方のジグを温度25℃の環境下で、100μm/min.の速度で引っ張り、応力〔Pa〕−ひずみ〔%〕曲線を作成した。得られた応力−ひずみ曲線において、原点から応力が最大に至るまでの傾きを計算した。
【0114】
<応力緩和率σ>
動的機械分析装置(DMA、Q−800、TA Instruments社製)を使用して、粘着剤層の応力緩和率(Stress Relaxation)を測定した。試験片は、原点から最大応力値までの傾きの測定に用いた試験片と同様である。試験片のPCバー501の両端部の長さ5mmの領域にジグを取り付け、片方のジグを固定した。もう片方のジグを、温度25℃の環境下で25%のひずみを維持するように300秒間引き続け、応力を測定した。
応力緩和率=300秒後の応力〔MPa〕/7.0秒後の応力〔MPa〕
【0115】
<クリープ率ε>
動的機械分析装置(DMA、Q−800、TA Instruments社製)を使用して、粘着剤層のクリープ率(Creep)を測定した。試験片は、原点から最大応力値までの傾きの測定に用いた試験片と同様である。試験片のPCバー501の両端部の長さ5mmの領域にジグを取り付け、片方のジグを固定した。応力が1MPaとなるようにもう一方のジグを引き続け、1200秒後のひずみ〔%〕値を測定した。
クリープ率〔%〕=1200秒後のひずみ〔%〕
【0116】
<変形復元率R>
動的機械分析装置(DMA、Q−800、TA Instruments社製)を使用して、粘着剤層の変形復元率(Recovery)を測定した。試験片は、原点から最大応力値までの傾きの測定に用いた試験片と同様である。試験片のPCバー501の両端部の長さ5mmの領域にジグを取り付け、片方のジグを固定した。もう一方のジグを引っ張って25%のひずみを300秒間維持した。300秒経過後に除荷し、さらに5秒経過したとき(305秒経過時)のひずみを測定した。
変形復元率〔%〕=300秒後のひずみ(=25%)−305秒後のひずみ〔%〕
【0117】
<ガラス転移温度T
粘着剤を100℃で1時間乾燥した後、示差走査熱量計(DSC、Q−1000、TA Instruments社製)を使用して、ガラス転移温度(T)を測定した。
【0118】
<せん断弾性率>
せん断弾性率は、粘弾性測定装置(MCR−301、Anton Paar社)を使用して測定した。粘着シートを幅20mm×長さ20mmにして、剥離フィルムを剥がし、厚みが150μmとなるように複数枚積層した。積層された粘着剤層をガラス板に接合後、測定チップと接着した状態で−20℃から100℃の温度領域で周波数1.0Hz、変形量1%、昇温速度5℃/分の条件下にて測定を行い、25℃におけるせん断弾性率値を確認した。
【0119】
<静的屈曲耐久性試験>
図3に静的屈曲耐久性試験(マンドレル屈曲試験)の方法を示す。まず、光学積層体100を1cm×10cmの試験片に裁断した。試験板504上に光学積層体100の前面板101側が上になるように置き、その上に直径5mmの鉄製棒503を置いた(図3(A))。鉄製棒503に巻き付けるように前面板101が内側になるように手で折り、固定した(図3(B))。
【0120】
偏光板103と第1粘着剤層102及び第2粘着剤層104との間、又は第1粘着剤層102及び第2粘着剤層104内に気泡が生じない期間に基づいて、静的屈曲耐久性を次のように評価した。気泡の発生は、光学顕微鏡下での観察によって判断した。
A:72時間経過時点で気泡が発生していなかった。
B:48時間超、72時間内に気泡が発生した。
C:24時間超、48時間内に気泡が発生した。
D:24時間内に気泡が発生した。
【符号の説明】
【0121】
100 光学積層体、101 前面板、102 第1粘着剤層、103 偏光板、104 第2粘着剤層、105 背面板、501 ポリカーボネートバー、502 粘着剤層、503 鉄製棒、504 試験板。
【要約】      (修正有)
【課題】屈曲したときに気泡の発生が抑制された光学積層体、及び該光学積層体を含む表示装置を提供する。
【解決手段】前面板101と、第1粘着剤層102と、偏光板103と、第2粘着剤層104と、背面板105と、をこの順に備え、第1粘着剤層及び第2粘着剤層の応力〔Pa〕−ひずみ〔%〕曲線において原点から最大応力値までの傾きをそれぞれGL1’及びGL2’としたとき、下記式(1)及び式(2):
20≦GL1’≦150(1)
20≦GL2’≦150(2)
を満たす、光学積層体100。
【選択図】図1
図1
図2
図3