(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<非水電解液二次電池用負極活物質>
本実施形態の非水電解液二次電池用負極活物質は、アルミニウム含有金属からなる。「非水電解液二次電池用負極活物質」を「負極活物質」と記載する場合がある。
【0010】
本実施形態の負極活物質は、腐食に対する耐性が高い材料から構成されている。腐食耐性が高い材料は、酸化と還元の作用を受けにくい材料である。このような材料から構成された負極活物質は、充電及び放電を繰り返した場合でも、初期の性質を維持しやすい。このため、放電容量維持率を良好なものとすることができる。
本明細書において、「放電容量維持率」とは、各回充放電時の充電容量(分母)に対する放電容量(分子)の比を意味する。
【0011】
本実施形態は、下記の浸漬条件の浸漬試験により測定される平均腐食速度が0.20mm/年未満である、アルミニウム含有金属からなる非水電解液二次電池用負極活物質である。
また、本実施形態の他の態様は、下記の浸漬条件の浸漬試験により測定される平均腐食速度が0.15mm/年以下である、アルミニウム含有金属からなる。
【0012】
[浸漬条件]
アルミニウム含有金属を、縦40mm、横40mm、厚さ0.5mmのサイズの試験用金属片とする。
試験用金属片を、酢酸をpH調整剤として用い、pH3に調整した3.5%NaCl水溶液に浸漬させ、72時間後に試験用金属片を取り出す。浸漬温度は30℃とする。
腐食度は、試験用金属片の表面積1mm
2に対する1日当たりの腐食減量をmg数で表す。つまり、腐食度は下記の式により算出できる。質量の測定には、精密天秤を用いる。
腐食度=(試験用金属片の浸漬前の質量(mg)−試験用金属片の浸漬後の質量(mg))/(試験用金属片の表面積(mm
2)×試験日数(day))
【0013】
得られた腐食度から、下記の方法により腐食速度を算出する。
腐食速度(mm/年)=[腐食度×365]/試験片の密度(g/cm
3)
【0014】
なお、pH3に調整した3.5%NaCl水溶液に浸漬する前に、試験用金属片をエタノール等で洗浄してもよい。
【0015】
本実施形態の負極活物質は、下記組成式(1)で表されるアルミニウム含有金属からなる。
Al
xM
1yM
2z ・・・(1)
(式(1)中、M
1はMg、Ni、Mn、Zn、Cd、Pbからなる群より選択される1種以上である。M
2は不可避不純物である。0質量%≦y≦8質量%、[x/(x+z)]≧99.9質量%である。)
【0016】
・M
1
式(1)中、M
1はMg、Ni、Mn、Znからなる群より選択される1種以上がより好ましい。
【0017】
・y
式(1)中、0.1質量%≦y≦8.0質量%が好ましく、0.5質量%≦y≦7.0質量%が好ましく、0.7質量%≦y≦6.0質量%が特に好ましい。
yの範囲が上記下限値以上であると、平均腐食速度を本発明の範囲内に制御できる。また、yの範囲が上記上限値以下であると、鋳造時の圧延工程の際に割れが生じることなく圧延できる。
【0018】
・M
2
式(1)中、M
2は高純度アルミニウムの精錬工程において不可避的に混入する製造残渣等の不可避不純物であり、具体的にはアルミニウム及びM
1以外の金属成分である。不可避不純物としては、鉄や銅が挙げられる。
【0019】
式(1)中、zは0.1質量%以下であり、0.05質量%以下が好ましく、0.01質量%以下がさらに好ましい。
【0020】
式(1)中、[x/(x+z)]は99.95%以上が好ましく、99.99%以上がより好ましく、99.995%以上が特に好ましい。本実施形態の負極活物質は、[x/(x+z)]が上記下限値以上である純度の高いアルミニウムを含む。アルミニウムを高純度化する精錬方法は後述する。
【0021】
式(1)で表されるアルミニウム含有金属のうち、y=0のものを高純度アルミニウムと記載することがある。式(1)で表されるアルミニウム含有金属のうち、yが0を超えるものを高純度アルミニウム合金と記載することがある。
本実施形態のある態様の負極活物質は、下記組成式(10)で表されるアルミニウム含有金属からなる。
Al
xM
10yM
2z ・・・(10)
(組成式(10)中、M
10はMg、Ni、Mn、Zn、Cd、Pb、Si、Sr、Gaからなる群より選択される1種以上である。M
2は不可避不純物である。0質量%≦y≦8質量%、[x/(x+z)]≧99質量%である。)
・M
10
組成式(10)中、M
10はMg、Si、Sr、Gaからなる群より選択される1種以上がより好ましい。
組成式(10)中、M
2、x、y、zに関する説明は、前記組成式(1)中のM
2、x、y、zに関する説明と同様である。
【0022】
本実施形態において、組成式(1)又は組成式(10)で表されるアルミニウム含有金属としては、下記の高純度アルミニウム又は高純度アルミニウム合金が好ましい。
(A)高純度アルミニウム−マグネシウム合金1
純度99.999%のアルミニウムと、マグネシウムとの合金。マグネシウムの含有量は、アルミニウム含有金属全量中に0.1質量%以上4.0質量%以下。平均腐食速度は0.04mm/年〜0.06mm/年。
(B)高純度アルミニウム−マグネシウム合金2
純度99.9%のアルミニウムと、マグネシウムとの合金。マグネシウムの含有量は、アルミニウム含有金属全量中に0.1質量%以上1.0質量%以下。平均腐食速度は0.1mm/年〜0.14mm/年。
(C)高純度アルミニウム−ニッケル合金
純度99.999%のアルミニウムと、ニッケルとの合金。ニッケルの含有量は、アルミニウム含有金属全量中に0.1質量%以上1.0質量%以下。平均腐食速度は0.1mm/年〜0.14mm/年。
(D)高純度アルミニウム−マンガン−マグネシウム合金
純度99.99%のアルミニウムと、マンガンと、マグネシウムとの合金。マンガンとマグネシウムの合計含有量は、アルミニウム含有金属全量中に1.0質量%以上2.0質量%以下。平均腐食速度は0.03mm/年〜0.05mm/年。
(E)高純度アルミニウム
純度99.999%のアルミニウム。平均腐食速度は0.05mm/年。
(F)高純度アルミニウム−マグネシウム−ケイ素合金1
純度99.8%のアルミニウムと、マグネシウムと、ケイ素との合金。マグネシウムとケイ素の合計含有量は、アルミニウム含有金属全量中に0.1質量%以上1.0質量%以下。平均腐食速度は0.05mm/年〜0.20mm/年未満。
(G)高純度アルミニウム−マグネシウム−ケイ素合金2
純度99.999%のアルミニウムと、マグネシウムと、ケイ素との合金。マグネシウムとケイ素の合計含有量は、アルミニウム含有金属全量中に0.1質量%以上1.0質量%以下。平均腐食速度は0.05mm/年〜0.20mm/年未満。
(H)高純度アルミニウム−ストロンチウム合金
純度99.999%のアルミニウムと、ストロンチウムとの合金。ストロンチウムの含有量は、アルミニウム含有金属全量中に100ppm以上1000ppm以下。平均腐食速度は0.03mm/年〜0.05mm/年。
(I)高純度アルミニウム−ガリウム合金
純度99.999%のアルミニウムと、ガリウムとの合金。ガリウムの含有量は、アルミニウム含有金属全量中に500ppm以上1200ppm以下。平均腐食速度は0.03mm/年〜0.06mm/年。
【0023】
・アルミニウムの高純度化方法
本実施形態に用いるアルミニウムを高純度化する精錬方法として、例えば偏析法および三層電解法を例示できる。
【0024】
偏析法は、アルミニウム溶湯の凝固の際の偏析現象を利用した純化法であり、複数の手法が実用化されている。偏析法の一つの形態としては、容器の中に溶湯アルミニウムを注ぎ、容器を回転させながら上部の溶湯アルミニウムを加熱、撹拌しつつ底部より精製アルミニウムを凝固させる方法がある。偏析法により、純度99.99質量%以上の高純度アルミニウムを得ることができる。
【0025】
三層電解法は、アルミニウムを高純度化する電解法である。三層電解法の一つの形態としては、まず、Al−Cu合金層に、比較的純度の低いアルミニウム等(例えば純度99.9質量%のJIS−H2102の時1種程度のグレード)を投入する。その後、溶融状態で陽極とし、その上に例えばフッ化アルミニウムおよびフッ化バリウム等を含む電解浴を配置し、陰極に高純度のアルミニウムを析出させる方法である。
三層電解法では純度99.999質量%以上の高純度アルミニウムを得ることができる。
【0026】
アルミニウムを高純度化する方法は、偏析法、三層電解法に限定されるものではなく、帯溶融精製法、超高真空溶解性製法等、既に知られている他の方法でもよい。
【0027】
本実施形態に用いるアルミニウムは高純度であるものの、製造残渣等の不純物が混合することもある。この場合、例えばアルミニウムに含まれる鉄と銅の合計含有率は、100ppm以下が好ましく、80ppm以下がより好ましく、50ppm以下がさらに好ましい。
【0028】
・アルミニウム含有金属の製造方法
・・高純度アルミニウムの製造方法
(鋳造工程)
上述の方法により高純度化したアルミニウムは、鋳造、切削加工などを行うことで、圧延に好適な形状のアルミニウム鋳塊を得ることができる。
鋳造を行う場合には、例えば高純度アルミニウムを約680℃以上800℃以下で溶融し、ガスや非金属介在物を除去して清浄にする処理(例えば、アルミニウム溶湯の真空処理)を行う。
真空処理は、例えば700℃以上800℃以下で、1時間以上10時間以下、真空度0.1Pa以上100Pa以下の条件で行われる。
【0029】
アルミニウム溶湯を清浄にする処理としては、フラックス、不活性ガスや塩素ガスを吹き込む処理も利用できる。真空処理などで清浄にされた合金溶湯は、通常、鋳型にて鋳造され、鋳塊が得られる。
鋳型は50℃以上200℃以下に加熱した鉄や黒鉛製を用いる。本実施形態の高純度アルミニウムは、680℃以上800℃以下の合金溶湯を流し込む方法で鋳造できる。また、一般的に利用されている連続鋳造により鋳塊を得ることもできる。
【0030】
(圧延工程)
得られたアルミニウムの鋳塊は、そのまま切削加工して電池部材に利用できる。鋳塊を圧延加工や押出加工、鍛造加工などを施して板材や型材にすると、クラッド材等に利用しやすくなる。
【0031】
鋳塊の圧延加工においては、例えば、熱間圧延と冷間圧延とを行い、鋳塊を板材又は箔状に加工する。熱間圧延を実施する温度条件は、例えば、アルミニウム鋳塊又はアルミニウム合金鋳塊を温度350℃以上450℃以下とすることが挙げられる。
圧延加工では、一対の圧延ロール間に材料を繰り返し通過させ、目標の板厚に仕上げてゆく。一対の圧延ロール間に通過させることを「パス」と記載する。
1回のパス(1パス)当たりの加工率rは、圧延ロールを1回通過したときの板厚減少率であり、下記の式で算出される。
r=(T
0−T)/T
0×100
(T
0:圧延ロール通過前の厚み、T:圧延ロール通過後の厚み)
本実施形態においては、加工率rが2%以上20%以下の条件で、アルミニウム鋳塊又はアルミニウム合金鋳塊を目的の厚さとなるまで繰り返し行うことが好ましい。
【0032】
熱間圧延後、冷間圧延の前に中間焼鈍処理を行ってもよい。
中間焼鈍処理は、例えば、熱間圧延したアルミニウム鋳塊又はアルミニウム合金鋳塊を、350℃以上450℃以下に加熱、昇温後直ちに放冷してもよい。
また、アルミニウム鋳塊又はアルミニウム合金鋳塊を1時間以上5時間以下程度保持後に放冷してもよい。
この処理にて、アルミニウム鋳塊又はアルミニウム合金鋳塊の材料が軟質化して、冷間圧延しやすい状態が得られる。
【0033】
冷間圧延は、例えば、アルミニウムの再結晶温度未満の温度、通常、室温から80℃以下で、1パスのダイスにおいては、加工率rが1%以上10%以下の条件で、アルミニウム鋳塊を目的の厚さとなるまで繰り返し行われる。
冷間圧延後には、熱処理工程を実施してもよい。熱処理工程は、大気雰囲気下、酸素雰囲気下で実施できる。また、窒素雰囲気下において酸素濃度を0.1%以上3%以下に制御して実施してもよい。本実施形態においては、大気雰囲気下で実施することが好ましく、乾燥大気であることがより好ましい。
熱処理工程の熱処理温度は、200℃以上600℃以下が好ましく、250℃以上550℃以下がより好ましく、350℃以上500℃以下が特に好ましい。
熱処理工程の熱処理時間は、60分間以上1200分間以下が好ましく、120分間以上600分間以下がより好ましく、180分間以上480分間以下が特に好ましい。
熱処理工程により加工硬化した板材を軟質化することができるほか、結晶組織を制御することで各種物性を調整する場合もある。
【0034】
・・高純度アルミニウム合金の製造方法
(鋳造工程)
上述の高純度アルミニウムの製造方法と同様の方法により、鋳造工程を行う。
上述の鋳造工程での溶融の際に、Mg、Ni、Mn、Zn、Cd、Pb、Si、Sr、Ga等の金属元素を所定量添加することで、高純度アルミニウム合金を得ることができる。添加するこれらの元素を含む金属は、純度が99質量%以上であることが好ましい。
【0035】
(圧延工程)
上述の高純度アルミニウムの製造方法と同様の方法により、圧延工程を行う。
【0036】
本実施形態において、アルミニウム含有金属の金属箔の厚みは、5μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましく、7μm以上がさらに好ましい。また、200μm以下が好ましく、190μm以下はより好ましく、180μm以下がさらに好ましい。上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。本実施形態においては、5μm以上200μm以下が好ましい。
本実施形態において、金属箔の厚みは、シックネスゲージ又はノギスを用いて測定すればよい。
【0037】
本実施形態においては、アルミニウム含有金属は、平均粒径が1μm以上20μm以下の粉体であってもよい。上記鋳造工程により得られた鋳塊を粉砕することにより得ることができる。粉砕方法は特に限定されず、ボールミル、ビーズミルなどを用いる方法や、ジェットミルなどを用いる方法が挙げられる。
粉体製造方法は特に限定されず、例えば、アルミニウム溶湯をノズルから噴出させるアトマイズ法等により製造できる。
【0038】
本実施形態においては、アルミニウム含有金属は、アルミニウム繊維からなる不織布であってもよい。アルミニウムからなる不織布は、高純度のアルミニウム溶湯を加圧、ノズルから噴射し急冷凝固させて繊維を製造する 「溶融紡糸法」によりアルミニウム繊維を得た後、噴射綿状の繊維をロール圧延する方法が挙げられる。 アルミニウム繊維としては例えば、5μm以上200μm径のアルミニウム繊維、アルミニウム短繊維等が挙げられる。
【0039】
<負極及び電池>
次いで、電池の構成を説明しながら、本発明の負極活物質を、電池の負極活物質として用いた負極、およびこの負極を有する二次電池について説明する。
以下、正極にリチウム正極活物質を用いたリチウム二次電池を例に説明する。
【0040】
本実施形態のリチウム二次電池の一例は、正極および負極、正極と負極との間に挟持されるセパレータ、正極と負極との間に配置される電解液を有する。
【0041】
図1A及び
図1Bは、本実施形態のリチウム二次電池の一例を示す模式図である。本実施形態の円筒型のリチウム二次電池10は、次のようにして製造する。
【0042】
まず、
図1Aに示すように、帯状を呈する一対のセパレータ1、一端に正極リード21を有する帯状の正極2、および一端に負極リード31を有する帯状の負極3を、セパレータ1、正極2、セパレータ1、負極3の順に積層し、巻回することにより電極群4とする。
【0043】
次いで、
図1Bに示すように、電池缶5に電極群4および不図示のインシュレーターを収容した後、缶底を封止し、電極群4に電解液6を含浸させ、正極2と負極3との間に電解質を配置する。さらに、電池缶5の上部をトップインシュレーター7および封口体8で封止することで、リチウム二次電池10を製造することができる。
【0044】
電極群4の形状としては、例えば、電極群4を巻回の軸に対して垂直方向に切断したときの断面形状が、円、楕円、長方形、角を丸めた長方形となるような柱状の形状を挙げることができる。
【0045】
また、このような電極群4を有するリチウム二次電池の形状としては、国際電気標準会議(IEC)が定めた電池に対する規格であるIEC60086、又はJIS C 8500で定められる形状を採用することができる。例えば、円筒型、角型などの形状を挙げることができる。
【0046】
さらに、リチウム二次電池は、上記巻回型の構成に限らず、正極、セパレータ、負極、セパレータの積層構造を繰り返し重ねた積層型の構成であってもよい。積層型のリチウム二次電池としては、いわゆるコイン型電池、ボタン型電池、ペーパー型(又はシート型)電池を例示することができる。
【0047】
以下、各構成について順に説明する。
(正極)
本実施形態の正極は、まず正極活物質、導電材およびバインダーを含む正極合剤を調整し、正極合剤を正極集電体に担持させることで製造することができる。
【0048】
(正極活物質)
正極活物質には、リチウム含有化合物又は他の金属化合物よりなるものを用いることができる。リチウム含有化合物としては、例えば、層状構造を有するリチウムコバルト複合酸化物、層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物が挙げられる。
また他の金属化合物としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウム若しくは二酸化マンガンなどの酸化物、または硫化チタン若しくは硫化モリブデンなどの硫化物が挙げられる。
【0049】
(導電材)
本実施形態の正極が有する導電材としては、炭素材料を用いることができる。炭素材料として黒鉛粉末、カーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、繊維状炭素材料などを挙げることができる。カーボンブラックは、微粒で表面積が大きい。このため、少量を正極合剤中に添加することにより正極内部の導電性を高め、充放電効率および出力特性を向上させることができる。一方、カーボンブラックを多く入れすぎるとバインダーによる正極合剤と正極集電体との結着力、および正極合剤内部の結着力がいずれも低下し、かえって内部抵抗を増加させる原因となる。
【0050】
正極合剤中の導電材の割合は、正極活物質100質量部に対して5質量部以上20質量部以下であると好ましい。導電材として黒鉛化炭素繊維、カーボンナノチューブなどの繊維状炭素材料を用いる場合には、正極合剤中の導電材の割合を下げることも可能である。
【0051】
(バインダー)
本実施形態の正極が有するバインダーとしては、熱可塑性樹脂を用いることができる。
この熱可塑性樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFということがある。)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;を挙げることができる。
【0052】
これらの熱可塑性樹脂は、2種以上を混合して用いてもよい。バインダーとしてフッ素樹脂およびポリオレフィン樹脂を用い、正極合剤全体に対するフッ素樹脂の割合を1質量%以上10質量%以下、ポリオレフィン樹脂の割合を0.1質量%以上2質量%以下とすることによって、正極集電体との密着力および正極合剤内部の結合力がいずれも高い正極合剤を得ることができる。
【0053】
(正極集電体)
本実施形態の正極が有する正極集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を用いることができる。なかでも、集電体としては、加工しやすく、安価であるという点でAlを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
また負極に用いるアルミニウム箔と同じものも使ってもよい。
【0054】
正極集電体に正極合剤を担持させる方法としては、正極合剤を正極集電体上で加圧成型する方法が挙げられる。また、有機溶媒を用いて正極合剤をペースト化し、得られる正極合剤のペーストを正極集電体の少なくとも一面側に塗布して乾燥させ、プレスし固着することで、正極集電体に正極合剤を担持させてもよい。
【0055】
正極合剤をペースト化する場合、用いることができる有機溶媒としては、N,N―ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミンなどのアミン系溶媒;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸メチルなどのエステル系溶媒;ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPということがある。)などのアミド系溶媒;が挙げられる。
【0056】
正極合剤のペーストを正極集電体へ塗布する方法としては、例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法および静電スプレー法が挙げられる。
【0057】
以上に挙げられた方法により、正極を製造することができる。
【0058】
(負極)
本実施形態のリチウム二次電池が有する負極は、本実施形態の負極活物質を用いる。
【0059】
(負極集電体)
負極が有する負極集電体としては、Cu、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を挙げることができる。なかでも、集電体の材料としては、リチウムと合金を作り難く、加工しやすいという点で、Cuを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
【0060】
このような負極集電体に、負極活物質が、粉末からなる場合、負極合剤を担持させる方法としては、正極の場合と同様に、負極活物質と、バインダーと、からなる負極合剤を加圧成型による方法、さらに溶媒などを用いてペースト化し負極集電体上に塗布、乾燥後プレスし圧着する方法が挙げられる。
また、負極合材にさらに導電材を加えてもよい。導電材としては、正極材の導電材として挙げたものが使用可能である。
【0061】
(セパレータ)
本実施形態のリチウム二次電池が有するセパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質からなる、多孔質膜、不織布、織布などの形態を有する材料を用いることができる。また、これらの材質を2種以上用いてセパレータを形成してもよいし、これらの材料を積層してセパレータを形成してもよい。
【0062】
本実施形態において、セパレータは、電池使用時(充放電時)に電解質を良好に透過させるため、JIS P 8117で定められるガーレー法による透気抵抗度が、50秒/100cc以上、300秒/100cc以下であることが好ましく、50秒/100cc以上、200秒/100cc以下であることがより好ましい。
【0063】
また、セパレータの空孔率は、好ましくは30体積%以上80体積%以下、より好ましくは40体積%以上70体積%以下である。セパレータは空孔率の異なるセパレータを積層したものであってもよい。
【0064】
(電解液)
本実施形態のリチウム二次電池が有する電解液は、電解質および有機溶媒を含有する。
【0065】
電解液に含まれる電解質としては、LiClO
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiSbF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiN(SO
2CF
3)(COCF
3)、Li(C
4F
9SO
3)、LiC(SO
2CF
3)
3、Li
2B
10Cl
10、LiBOB(ここで、BOBは、bis(oxalato)borateのことである。)、LiFSI(ここで、FSIはbis(fluorosulfonyl)imideのことである)、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl
4などのリチウム塩が挙げられ、これらの2種以上の混合物を使用してもよい。なかでも電解質としては、フッ素を含むLiPF
6、LiAsF
6、LiSbF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(SO
2CF
3)
2およびLiC(SO
2CF
3)
3からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。
【0066】
また前記電解液に含まれる有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物、又はこれらの有機溶媒にさらにフルオロ基を導入したもの(有機溶媒が有する水素原子のうち1以上をフッ素原子で置換したもの)を用いることができる。
【0067】
有機溶媒としては、これらのうちの2種以上を混合して用いることが好ましい。中でもカーボネート類を含む混合溶媒が好ましく、環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒および環状カーボネートとエーテル類との混合溶媒がさらに好ましい。環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。このような混合溶媒を用いた電解液は、動作温度範囲が広く、高い電流レートにおける充放電を行っても劣化し難く、長時間使用しても劣化し難い。
【0068】
また、電解液としては、得られるリチウム二次電池の安全性が高まるため、LiPF
6などのフッ素を含むリチウム塩およびフッ素置換基を有する有機溶媒を含む電解液を用いることが好ましい。ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテルなどのフッ素置換基を有するエーテル類とジメチルカーボネートとを含む混合溶媒は、高い電流レートにおける充放電を行っても容量維持率が高いため、さらに好ましい。
【0069】
上記の電解液の代わりに固体電解質を用いてもよい。固体電解質としては、例えばポリエチレンオキサイド系の高分子化合物、ポリオルガノシロキサン鎖又はポリオキシアルキレン鎖の少なくとも一種以上を含む高分子化合物などの有機系高分子電解質を用いることができる。また、高分子化合物に非水電解液を保持させた、いわゆるゲルタイプのものを用いることもできる。またLi
2S−SiS
2、Li
2S−GeS
2、Li
2S−P
2S
5、Li
2S−B
2S
3、Li
2S−SiS
2−Li
3PO
4、Li
2S−SiS
2−Li
2SO
4、Li
2S−GeS
2−P
2S
5などの硫化物を含む無機系固体電解質が挙げられ、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。これら固体電解質を用いることで、リチウム二次電池の安全性をより高めることができることがある。
【0070】
また、本実施形態の電池において、固体電解質を用いる場合には、固体電解質がセパレータの役割を果たす場合もあり、その場合には、セパレータを必要としないこともある。
【0071】
<アルミニウムクラッド金属積層体>
本実施形態は、薄層と基板とを積層したアルミニウムクラッド金属積層体である。薄層は、前記本実施形態の非水電解液二次電池用負極活物質から構成されている。基板は、薄層を構成する金属とは異なる金属からなる。
【0072】
本実施形態のアルミニウムクラッド金属積層体は、基板の片面又は両面に薄層を備える。薄層を構成する金属としては、上述した本実施形態のアルミニウム含有金属からなる非水電解液二次電池用負極活物質である。
基板を構成する金属としては、アルミニウム又はリチウムと合金化しない金属を用いる。このような金属としては、例えば銅、ニッケル、ステンレスが挙げられる。
また、基板を構成する金属としては、アルミニウム又はリチウムと合金化しにくい金属を用いることもできる。このような金属としては、耐食性の低いアルミニウムが挙げられる。基板を構成する金属としてのアルミニウムの例としては、アルミニウム純度が99.9%以下のものが挙げられる。このようなアルミニウムの耐食性は、例えば上述の浸漬試験により測定される平均腐食速度が0.20mm/年以上である。
【0073】
本実施形態のアルミニウムクラッド金属積層体は、薄層と、基板とを重ねて、圧力をかけながら拡散焼鈍して圧延接合することにより製造できる。拡散焼鈍の温度は、例えば150℃以上550℃以下とすればよい。圧延接合の後に、冷間加工をしてもよい。
【実施例】
【0074】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0075】
<高純度アルミニウム又はアルミニウム合金の成分分析> 発光分光分析装置(型式:ARL−4460、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を使用し、アルミニウム中の金属元素の量を定量した。なお、金属元素は、グロー放電質量分析装置によって、より精密に定量することができる。
【0076】
<平均腐食速度の測定>
[浸漬条件]
アルミニウム含有金属を、縦40mm、横40mm、厚さ0.5mmのサイズの試験用金属片とした。試験用金属片の表面を、エタノールで洗浄した。試験用金属片を、酢酸をpH調整剤として用い、pH3に調整した3.5%NaCl水溶液に浸漬させ、72時間後に試験用金属片を取り出した。浸漬温度は30℃とした。
腐食度は、試験用金属片の表面積1mm
2に対する1日当たりの腐食減量のmg数とした。つまり、腐食度は下記の式により算出した。質量の測定には、精密天秤等を用いた。
腐食度=(試験用金属片の浸漬前の質量(mg)−試験用金属片の浸漬後の質量(mg))/(試験用金属片の表面積×試験日数)
【0077】
得られた腐食度から、下記の方法により腐食速度を算出した。
腐食速度(mm/年)=[腐食度×365]/試験片の密度(g/cm
3)
【0078】
≪実施例1≫
[負極の作製]
高純度アルミニウム(純度:99.999%以上)と、マグネシウムを750℃で溶融し、アルミニウム−マグネシウム溶湯を得た。次に、アルミニウム−マグネシウム溶湯を温度720℃で、2時間、真空度50Paの条件で保持して真空処理を行った。真空処理後のアルミニウム−マグネシウム溶湯を150℃の鋳鉄鋳型(22mm×150mm×200mm)にて鋳造し、鋳塊を得た。
【0079】
圧延は以下の条件で行った。鋳塊の両面を2mm面削加工した後、厚さ18mmから加工率99.9%で冷間圧延を行った。得られた圧延材の厚みは100μmであった。
アルミニウム純度99.999%、マグネシウム含有量3.7質量%の高純度アルミニウム−マグネシウム合金箔(厚さ100μm)を、φ14mmの円盤状に切り出し、負極を製造した。
【0080】
アルミニウム純度99.999%、マグネシウム含有量3.7質量%の高純度アルミニウム−マグネシウム合金箔の平均腐食速度は、0.06mm/年であった。
【0081】
[対極の作製]
純度99.9%リチウム箔(厚さ300μm:本荘ケミカル)を、φ16mmの円盤状に切り出し、対極を製造した。
【0082】
[電解液の作製]
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とをEC:DEC=30:70(体積比)で混合させてなる混合溶媒に、LiPF
6を1モル/リットルとなるように溶解した電解液を作製した。
【0083】
[非水電解質二次電池の作製]
上記の負極と対極との間にポリエチレン製多孔質セパレータを配置して、電池ケース(規格2032)に収納し、上記の電解液を注液し、電池ケースを密閉することにより、直径20mm、厚み3.2mmのコイン型(ハーフセル)の非水電解質二次電池を作製した。
【0084】
[充放電評価:初期充放電]
コイン型の非水電解質二次電池を室温で10時間静置することでセパレータに充分電解液を含浸させた。
次に室温において0.5mAで0.005Vまで定電流充電(AlにLi吸蔵)してから0.005Vで定電圧充電する定電流定電圧充電を5時間行った後、0.5mAで2.0Vまで放電(AlからLi放出)する定電流放電を行うことで初期充放電を行った。
【0085】
[充放電評価:3サイクル目の充放電効率]
初期充放電後、初期充放電の条件と同様に0.5mAで充電、0.5mAで放電を2回(初期充放電から合計3回)繰り返した。
3回のサイクル試験にて寿命評価を実施し、3回後の放電容量維持率を以下の式にて算出した。
【0086】
3回後の放電容量維持率(%)=3回目の放電容量/3回目の充電容量×100
【0087】
実施例1において、上記の方法により算出した放電容量維持率は、98.6%であった。充放電曲線を
図2に示す。
【0088】
≪比較例1≫
使用する負極を、純度99.8%のアルミニウム箔(厚さ100μm)にしたこと以外は、実施例1と同様にしてコイン型(ハーフセル)の非水電解質二次電池を作製し、評価した。
【0089】
純度99.8%のアルミニウム箔の平均腐食速度は、0.22mm/年であった。
【0090】
比較例1において、上記の方法により算出した放電容量維持率は、90.8%であった。充放電曲線を
図3に示す。
【0091】
≪実施例2≫
使用する負極を、アルミニウム純度99.999%、マグネシウム含有量0.1質量%のアルミニウム合金箔(厚さ100μm)にしたこと以外は、実施例1と同様にしてコイン型(ハーフセル)の非水電解質二次電池を作製し、評価した。
【0092】
アルミニウム純度99.999%、マグネシウム含有量0.1質量%のアルミニウム合金箔の平均腐食速度は、0.04mm/年であった。
【0093】
実施例2において、上記の方法により算出した放電容量維持率は、98.4%であった。
【0094】
≪実施例3≫
使用する負極を、アルミニウム純度99.99%、マグネシウム含有量0.15質量%、マンガン含有量1.4質量%のアルミニウム合金箔(厚さ100μm)にしたこと以外は、実施例1と同様にしてコイン型(ハーフセル)の非水電解質二次電池を作製し、評価した。
【0095】
アルミニウム純度99.99%、マグネシウム含有量0.15質量%、マンガン含有量1.4質量%のアルミニウム合金箔の平均腐食速度は、0.04mm/年であった。
【0096】
実施例3において、上記の方法により算出した放電容量維持率は、98.9%であった。
【0097】
≪実施例4≫
使用する負極を、アルミニウム純度99.999%、ニッケル含有量0.1質量%、のアルミニウム合金箔(厚さ100μm)にしたこと以外は、実施例1と同様にしてコイン型(ハーフセル)の非水電解質二次電池を作製し、評価した。
【0098】
アルミニウム純度99.999%、ニッケル含有量0.1質量%、のアルミニウム合金箔の平均腐食速度は、0.14mm/年であった。
【0099】
実施例4において、上記の方法により算出した放電容量維持率は、96.8%であった。
【0100】
≪実施例5≫
使用する負極を、アルミニウム純度99.9%、マグネシウム含有量0.1質量%、のアルミニウム合金箔(厚さ100μm)にしたこと以外は、実施例1と同様にしてコイン型(ハーフセル)の非水電解質二次電池を作製し、評価した。
【0101】
アルミニウム純度99.9%、マグネシウム含有量0.1質量%のアルミニウム合金箔の平均腐食速度は、0.12mm/年であった。
【0102】
実施例5において、上記の方法により算出した放電容量維持率は、99.6%であった。
≪実施例6≫
使用する負極を、アルミニウム純度99.8%、マグネシウム含有量0.54質量%、ケイ素含有量0.45質量%のアルミニウム合金箔(厚さ100μm)にしたこと以外は、実施例1と同様にしてコイン型(ハーフセル)の非水電解質二次電池を作製し、評価した。
アルミニウム純度99.8%、マグネシウム含有量0.54質量%、ケイ素含有量0.45質量%のアルミニウム合金箔の平均腐食速度は、0.154mm/年であった。
実施例6において、上記の方法により算出した放電容量維持率は、97.1%であった。
≪実施例7≫
使用する負極を、アルミニウム純度99.999%、マグネシウム含有量0.53質量%、ケイ素含有量0.42質量%のアルミニウム合金箔(厚さ100μm)にしたこと以外は、実施例1と同様にしてコイン型(ハーフセル)の非水電解質二次電池を作製し、評価した。
アルミニウム純度99.999%、マグネシウム含有量0.53質量%、ケイ素含有量0.42質量%のアルミニウム合金箔の平均腐食速度は、0.073mm/年であった。
実施例7において、上記の方法により算出した放電容量維持率は、96.5%であった。
≪実施例8−1≫
使用する負極を、アルミニウム純度99.999%、ストロンチウムを800ppm含む、アルミニウム合金箔(厚さ100μm)にしたこと以外は、実施例1と同様にしてコイン型(ハーフセル)の非水電解質二次電池を作製し、評価した。
アルミニウム純度99.999%、ストロンチウムを800ppm含む、アルミニウム合金箔の平均腐食速度は、0.040mm/年であった。
実施例8−1において、上記の方法により算出した放電容量維持率は、98.0%であった。
≪実施例8−2≫
使用する負極を、冷間圧延工程の後、大気雰囲気下、350℃で180分間の熱処理を実施して得られたアルミニウム純度99.999%、ストロンチウムを800ppm含む、アルミニウム合金箔(厚さ100μm)にしたこと以外は、実施例8−1と同様にしてコイン型(ハーフセル)の非水電解質二次電池を作製し、評価した。
アルミニウム純度99.999%、ストロンチウムを800ppm含む、熱処理を実施したアルミニウム合金箔の平均腐食速度は、0.041mm/年であった。
実施例8−2において、上記の方法により算出した放電容量維持率は、97.7%であった。
≪実施例9−1≫
使用する負極を、アルミニウム純度99.999%、ガリウムを1100ppm含む、アルミニウム合金箔(厚さ100μm)にしたこと以外は、実施例1と同様にしてコイン型(ハーフセル)の非水電解質二次電池を作製し、評価した。
アルミニウム純度99.999%、ガリウムを1100ppm含む、アルミニウム合金箔の平均腐食速度は、0.055mm/年であった。
実施例9−1において、上記の方法により算出した放電容量維持率は、96.7%であった。
≪実施例9−2≫
使用する負極を、冷間圧延工程の後、大気雰囲気下、350℃で180分間の熱処理を実施して得られたアルミニウム純度99.999%、ガリウムを1100ppm含む、アルミニウム合金箔(厚さ100μm)にしたこと以外は、実施例9−1と同様にしてコイン型(ハーフセル)の非水電解質二次電池を作製し、評価した。
アルミニウム純度99.999%、ガリウムを1100ppm含む、熱処理を実施したアルミニウム合金箔の平均腐食速度は、0.044mm/年であった。
実施例9−2において、上記の方法により算出した放電容量維持率は、95.7%であった。
【0103】
下記表1に、実施例1〜5、比較例1の平均腐食速度、アルミニウム純度、負極材料、放電容量維持率をまとめて記載する。
下記表2に、実施例6〜7、8−1〜8−2、9−1〜9−2の平均腐食速度、アルミニウム純度、負極材料、放電容量維持率をまとめて記載する。
【0104】
【表1】
【表2】
【0105】
上記結果に示したとおり、本発明を適用した実施例は、比較例よりも放電容量維持率が高かった。