特許第6792786号(P6792786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792786
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】ガス混合装置および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 5/00 20060101AFI20201119BHJP
   B01F 3/02 20060101ALI20201119BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20201119BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   B01F5/00 G
   B01F3/02
   C23C16/455
   H01L21/31 B
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-121947(P2016-121947)
(22)【出願日】2016年6月20日
(65)【公開番号】特開2017-226863(P2017-226863A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】特許業務法人弥生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133776
【弁理士】
【氏名又は名称】三井田 友昭
(72)【発明者】
【氏名】山下 潤
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0003127(US,A1)
【文献】 特表2006−528541(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0047426(US,A1)
【文献】 特開平04−080366(JP,A)
【文献】 特表2015−503082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00 − 5/00
C23C 16/00
H01L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種のガスを混合するためのガス混合装置において、
上面が塞がれた円筒部と、
前記円筒部の底面の中央部に開口し、下方に伸びるガス流出路と、
前記ガス流出路における前記底面の開口縁に沿って周方向に互いに間隔を置いて配置されると共に前記円筒部の中心に対して回転対称に設けられ、前記上面に向かって突出した複数のガス流案内壁と、
前記ガス流案内壁と円筒部の内周面との間に設けられ、前記ガス流案内壁の前後方向の中央よりも後方側にガス流入位置が位置するように構成された混合すべきガスが流入するガス流入部と、
前記円筒部の周方向において時計回り及び反時計回りの一方で見たときに、当該一方の方向を向いた側を前方と定義すると、前記ガス流案内壁は、円筒部の内周面とガス流案内壁との間に流入したガスを当該ガス流案内壁の外周面に沿って前記ガス流出路に案内し、これにより旋回流を形成するように、前方側に向かうにつれて前記円筒部の中心部寄りに屈曲していることを特徴とするガス混合装置。
【請求項2】
複数種のガスを混合するためのガス混合装置において、
上面が塞がれた円筒部と、
前記円筒部の底面の中央部に開口し、下方に伸びるガス流出路と、
前記ガス流出路における前記底面の開口縁に沿って周方向に互いに間隔を置いて配置されると共に前記円筒部の中心に対して回転対称に設けられ、前記上面に向かって突出し、その内周面は、下方に向かうにつれて円筒部の中心部に近づくように傾斜している傾斜面を形成した複数のガス流案内壁と、
前記ガス流案内壁と円筒部の内周面との間に設けられ、混合すべきガスが流入するガス流入部と、
前記円筒部の周方向において時計回り及び反時計回りの一方で見たときに、当該一方の方向を向いた側を前方と定義すると、前記ガス流案内壁は、円筒部の内周面とガス流案内壁との間に流入したガスを当該ガス流案内壁の外周面に沿って前記ガス流出路に案内し、これにより旋回流を形成するように、前方側に向かうにつれて前記円筒部の中心部寄りに屈曲していることを特徴とするガス混合装置。
【請求項3】
前記ガス流案内壁の外周面の円弧形状は、平面で見たときに前記円筒部の内周面の円弧形状よりも小径の円弧形状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガス混合装置。
【請求項4】
前記ガス流入部は、前記円筒部内に上面側からガスが流入するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のガス混合装置。
【請求項5】
前記ガス流出路は、開口部から下方に向かうにつれて円筒部の中心部に近づくように傾斜していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のガス混合装置。
【請求項6】
互いに隣接するガス流案内壁のうち前方側のガス流案内壁における後端寄りの内周面と後方側のガス流案内壁における前端寄りの外周面とが対向し、当該内周面と外周面とに挟まれた空間が旋回流を形成するためのガス流の案内路として構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のガス混合装置。
【請求項7】
前記ガス流案内壁における前端側の内周面は傾斜面であり、前記ガス流案内壁における後端側の内周面は、前記前端側の内周面よりも立っていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のガス混合装置。
【請求項8】
前記ガス流案内壁の配置数は、2個または3個であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のガス混合装置。
【請求項9】
前記ガス流入部は、各ガス流案内壁毎に設けられたことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載のガス混合装置。
【請求項10】
互いに異なる処理ガスが互いに異なる位置から流入して、これら処理ガスを混合するガス混合装置と、
前記ガス混合装置にて混合された処理ガスが供給される処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、前記処理ガスにより処理される基板を載置するための載置部と、
前記処理容器内を真空排気する排気部と、を備え、
前記ガス混合装置は、請求項1ないし9のいずれか一項に記載のガス混合装置であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項11】
前記ガス混合装置は、キャリアガスと原料ガスとが流入する一のガス流入部と、キャリアガスと前記原料ガスと反応する反応ガスとが流入する他のガス流入部とを備え、
前記基板処理装置にて行う処理は、基板が置かれている真空雰囲気とされた処理容器内に、前記ガス混合装置において一のガス流入部から流入するキャリアガス及び原料ガスと他のガス流入部から流入するキャリアガスとを混合したガスと、前記ガス混合装置において一のガス流入部から流入するキャリアガスと他のガス流入部から流入するキャリアガス及び反応ガスとを混合したガスと、を交互に複数サイクル供給して成膜する成膜処理であることを特徴とする請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記ガス混合装置は、原料ガスが流入する一のガス流入部と、前記原料ガスと反応する反応ガスが流入する他のガス流入部とを備え、
前記基板処理装置にて行う処理は、前記一のガス流入部から流入する原料ガスと他のガス流入部から流入する反応ガスとを混合したガスを基板に供給して成膜する成膜処理であることを特徴とする請求項10に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種のガスを混合する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスにおいて処理ガスにより基板を処理する装置、例えば成膜装置では、複数種の処理ガスを均一に混合して基板に供給することが要請される場合がある。基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)に成膜を行う手法として、原料ガス、及び原料ガスと反応する反応ガスをウエハに対して順番に供給してウエハの表面に反応生成物の分子層を堆積させて薄膜を得るいわゆるALD(Atomic Layer Deposition)法などと呼ばれている手法が知られている。ALDにおいては、キャリアガスを流している状態で成膜用のガスである第1のガスと第2のガスとを交互に供給するが、成膜処理についてウエハの面内均一性を良好にするためには、成膜ガスがキャリアガスに均一に混合された状態で基板に供給されることが必要である。
【0003】
このような複数種のガスを混合する手法としては、例えば特許文献1には、第1のガス流と第2のガス流とを渦巻き状のガス流混合体として均一に混合する技術が記載されている。また特許文献2には、ガス流出路から見て周方向一方に流した後、ガス流出路側に垂直に屈曲させてガス流出路の周縁に向けて流し旋回流を形成する技術が記載されている。さらに特許文献3には、原料ガスをガス混合部の中央部分に供給し、その周囲から一様に希釈ガスを同じ流れ方向に供給してガス拡散部を通過させることで原料ガスを一様に拡散させながら混合する技術が記載されている。
【0004】
しかし公知の混合手法は、広範囲の流量比においてガスの偏りを少なくしようとする場合には不向きである。特に大流量のガス、例えばキャリアガスに小流量の成膜ガスを供給する場合には、ガスの均一化を図ることは困難である。またガス混合装置内にスタティックミキサーを設け、強制的に混合しようとするとガス混合装置における圧力損失が大きくなる。ALD法のように処理容器内をパージガスにより置換しながら複数種のガスを順番に供給するには、大流量のガスを高速で流す必要があるため適さない。
【0005】
また合流流路を長くすることで少量のガスが混合されやすくなるが、合流流路が長い場合には、ガスの温度が下がり、例えばある種のプリカーサにおいては、温度の低下により液化して、パーティクルの発生を引き起こす懸念がある。従って合流経路は極力短くすることが要請されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−260763号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0047426号
【特許文献3】特開2003−133300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、複数種のガスを混合するにあたって、ガスを均一に混合する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のガス混合装置は、複数種のガスを混合するためのガス混合装置において、
上面が塞がれた円筒部と、
前記円筒部の底面の中央部に開口し、下方に伸びるガス流出路と、
前記ガス流出路における前記底面の開口縁に沿って周方向に互いに間隔を置いて配置されると共に前記円筒部の中心に対して回転対称に設けられ、前記上面に向かって突出した複数のガス流案内壁と、
前記ガス流案内壁と円筒部の内周面との間に設けられ、前記ガス流案内壁の前後方向の中央よりも後方側にガス流入位置が位置するように構成された混合すべきガスが流入するガス流入部と、
前記円筒部の周方向において時計回り及び反時計回りの一方で見たときに、当該一方の方向を向いた側を前方と定義すると、前記ガス流案内壁は、円筒部の内周面とガス流案内壁との間に流入したガスを当該ガス流案内壁の外周面に沿って前記ガス流出路に案内し、これにより旋回流を形成するように、前方側に向かうにつれて前記円筒部の中心部寄りに屈曲していることを特徴とする。
また本発明のガス混合装置は、複数種のガスを混合するためのガス混合装置において、
上面が塞がれた円筒部と、
前記円筒部の底面の中央部に開口し、下方に伸びるガス流出路と、
前記ガス流出路における前記底面の開口縁に沿って周方向に互いに間隔を置いて配置されると共に前記円筒部の中心に対して回転対称に設けられ、前記上面に向かって突出し、その内周面は、下方に向かうにつれて円筒部の中心部に近づくように傾斜している傾斜面を形成した複数のガス流案内壁と、
前記ガス流案内壁と円筒部の内周面との間に設けられ、混合すべきガスが流入するガス流入部と、
前記円筒部の周方向において時計回り及び反時計回りの一方で見たときに、当該一方の方向を向いた側を前方と定義すると、前記ガス流案内壁は、円筒部の内周面とガス流案内壁との間に流入したガスを当該ガス流案内壁の外周面に沿って前記ガス流出路に案内し、これにより旋回流を形成するように、前方側に向かうにつれて前記円筒部の中心部寄りに屈曲していることを特徴とする。
【0009】
本発明の基板処理装置は、互いに異なる処理ガスが互いに異なる位置から流入してこれら処理ガスを混合するガス混合装置と、
前記ガス混合装置にて混合された処理ガスが供給される処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、前記処理ガスにより処理される基板を載置するための載置部と、
前記処理容器内を真空排気する排気部と、を備え、
前記ガス混合装置は、上述のガス混合装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、複数種のガスを混合するにあたって、底面中央部にガス流出路が開口する円筒部内に各々周方向に沿って円筒部の中心部寄りに屈曲し、円筒部の中心に対して回転対称となる複数のガス流案内壁をガス流出路の開口縁に沿って、周方向に間隔を置いて配置している。そのためガス流案内壁と、円筒部の内周面との間に流入したガスが、ガス流案内壁の外周面に沿って流れ、旋回流となって、ガス流出路に案内される。従って各ガスが旋回流となって、ガス流出路にて合流するので混合ガスの濃度のムラができにくくなり均一に混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る成膜装置の縦断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るガス混合装置の断面図である。
図3】ガス拡散部の分解斜視図である。
図4】ガス混合装置の断面斜視図である。
図5】ガス混合装置の縦断面図である。
図6】ガス混合装置の平面図である。
図7】本発明の実施の形態におけるガスの供給の推移を示す説明図である。
図8】ガス混合装置におけるガスの流れを説明する説明図である。
図9】ガス混合装置におけるガスの流れを説明する説明図である。
図10】比較例および実施例にかかるガス混合装置を示す断面斜視図である。
図11】比較例および実施例におけるガスの質量の標準偏差を示す特性図である。
図12】実施例におけるガスの質量流量比に対するガスの質量の標準偏差を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係るガス混合装置を適用した基板処理装置の一例である成膜装置の構成について説明する。成膜装置は、ウエハWの表面に、塩化チタン(TiCl)ガスとアンモニア(NH)ガスと酸素(O)ガスを順番に供給して、いわゆるALD法により酸化窒化チタン(TiON)膜を成膜する装置として構成されている。なお明細書中では、キャリアガスも処理ガスに含むものとする。
【0013】
図1に示すように成膜装置は、アルミニウム等の金属により構成され、平面形状が概ね円形の真空容器である処理容器1を備え、この処理容器1内には、ウエハWが載置される載置台2が設けられている。処理容器1の側面には、ウエハWの搬入出口11と、この搬入出口11を開閉するゲートバルブ12とが設けられている。
【0014】
前記搬入出口11よりも上部側の位置には、縦断面の形状が角型のダクトを円環状に湾曲させて構成した排気ダクト13が、処理容器1の本体を構成する側壁の上に積み重なるように設けられている。排気ダクト13の内周面には、周方向に沿って伸びるスリット状の開口部131が形成されている。排気ダクト13の外壁面には排気口132が形成されており、この排気口132には真空ポンプなどからなる排気部14が接続されている。
【0015】
処理容器1内には、前記排気ダクト13の内側の位置に、載置台2が配置されている。載置台2の内部には、ウエハWを例えば350℃〜550℃の成膜温度に加熱するための図示しないヒータが埋設されている。載置台2には、載置台2の周縁部及び載置台2の側周面を周方向に亘って覆うように設けられたカバー部材22が設けられている。載置台2の下面側中央部には、処理容器1の底面を貫通し、上下方向に伸びる支持部材23が接続されている。この支持部材23の下端部は、処理容器1の下方側に水平に配置された板状の支持台232を介して昇降機構24に接続されている。昇降機構24は、搬入出口11から進入してきたウエハ搬送機構との間でウエハWを受け渡す受け渡し位置(図1に一点鎖線で記載してある)と、この受け渡し位置の上方側であって、ウエハWへの成膜が行われる図1中実線で示す処理位置との間で載置台2を昇降させる。この支持部材23が貫通する処理容器1の底面と、支持台232との間には、処理容器1内の雰囲気を外部と区画し、支持台232の昇降動作に伴って伸び縮みするベローズ231が、前記支持部材23を周方向の外側から覆うように設けられている。
【0016】
載置台2の下方側には、外部のウエハ搬送機構とのウエハWの受け渡し時に、ウエハWを下面側から支持して持ち上げる例えば3本の支持ピン25が設けられている。支持ピン25は、昇降機構26に接続されて昇降自在となっており、載置台2を上下方向に貫通する図示しない貫通孔を介して載置台2の上面から支持ピン25を突没させることにより、ウエハ搬送機構との間でのウエハWの受け渡しを行う。
【0017】
排気ダクト13の上面側には、載置台2に載置されたウエハWに向けてガスを供給するためのガス供給部5が円形の開口を塞ぐように設けられている。ガス供給部5について図2を参照して説明する。ガス供給部5は、天板部50を備え、天板部50の下方位置には、上方が開口した扁平な有底円筒形のシャワーヘッド51が設けられている。ガス供給部5の内部には、後述するガス混合装置4が設けられ、ガス混合装置4で混合されたガスがガス流出路41を介して、天板部50の下面中央に開口した開口部52からシャワーヘッド51内に供給されるよう構成されている。
【0018】
シャワーヘッド51内における開口部52の周囲には、ガス混合装置4から供給されたガスを拡散する扁平な円筒形の拡散室53が設けられている。拡散室53の下面には、平面的に見て載置台2に載置されたウエハWの中心部を中心する円に沿って等間隔に複数のガス拡散部54が配置され、さらにウエハWの中心部の上方にガス拡散部54が配置されている。図3に示すようにガス拡散部54は、円筒形の部材で構成され、拡散室53の底面から下方に向けて突出するように設けられる。拡散室53の底面53Aには、各ガス拡散部54にガスを供給するための孔部55が形成されており、ガス拡散部54の側面には、周方向に沿って間隔をおいて設けられた複数のガス吐出口56が形成されており、拡散室53からガス拡散部54に流れ込んだガスは、各ガス吐出口56から水平方向へ向けて均一に広がるように吐出される。そしてシャワーヘッド51内に吐出されたガスは、シャワーヘッド51に形成されたガス噴出孔57を介して、ウエハWに供給される。
【0019】
続いてガス混合装置4について図4図6を参照して説明する。ガス混合装置4は、下部材40Aと下部材40Aの上方を塞ぐ上部材40Bとで構成される円筒部40を備えている。下部材40Aは底面部46と円筒部40の周壁をなす環状壁の外壁47とを備え、外壁47の外周には、フランジ46Aが形成されている。上部材40Bは、下部材40Aの環状壁である外壁47の上方を覆う天板部分48を備え、周縁が下方に向けて屈曲して壁部49となっている。そして上部材40Bを下部材40Aに上方から係合させることにより外壁47が天板部分48に密接し、扁平な円筒形の円筒部40を構成する。なお図4図6のグレー部分は、下部材40Aにおける上部材40Bの天板部分48に密接する部分を示している。
図4図6に示すように下部材40Aは、底面部46の下面側の中心部に上下方向に伸びるガス流出路41が接続されている。なおガス混合装置4は、ガス流出路41が水平に伸びるように配置されてもよいが、明細書中では、円筒部40の中心軸の伸びる方向を上下方向とする。下部材40Aの内部には、ガス流出路41の開口縁に沿って、周方向に伸びるように形成された3つのガス流案内壁42A〜42Cが設けられている。各ガス流案内壁42A〜42Cは、互いに円筒部40の中心に対して回転対称になるように形成されている。3つのガス流案内壁42A〜42Cは、同じ構造であるためここでは、代表してガス流案内壁42Aについて説明する。
【0020】
円筒部40の周方向における時計回りの方向を前方、反時計回りの方向を後方とすると、ガス流案内壁42Aは、下部材40Aの底面から上部材40Bの天板部分48に向けて突出し、下部材40Aと上部材40Bとを係合させたときに、ガス流案内壁42Aの上面が上部材40Bの天板部分48に密接するように設けられている。またガス流案内壁42Aは、円筒部40の内周面に対向する面が、前方側に向かうにつれて円筒部40の中心寄りに屈曲しており、図6に示すように平面で見たときに円筒部40の内周面の円弧形状よりも小径の円弧形状となっている。
【0021】
さらにガス流案内壁42Aにおいて円筒部40の内周と対向する面をガス流案内壁42Aの外周面、ガス流案内壁42Aにおいて円筒部40の中心側の面をガス流案内壁42Aの内周面とすると、ガス流案内壁42Aの外周面の前方側の端部と、当該ガス流案内壁の前方に設けられたガス流案内壁42Bの内周面の後方側の端部とが互いに隙間を介して対向するように配置され、後方側のガス流案内壁42Aの外周面の前方側の端部と、前方側のガス流案内壁42Bの内周面の後方側の端部と挟まれた領域は、ガス流の案内路43になる。
【0022】
またガス流案内壁42Aの内周面の前方側の部分は、下方に向かって傾斜する傾斜面となっており、ガス流案内壁42Aの内周面の後方側は、立った面となっている。また傾斜面は、ガス流出路41の内周面と連続する曲面となっており、図5に示すようにガス流出路41の内周面は、円筒部40の底面における開口部から下方に向かって徐々に狭くなるように傾斜している。
図6に示すように円筒部40における各ガス流案内壁42A〜42Cと円筒部40の内周面との間であって、ガス流案内壁42A〜42Cを前方後方に見て、中央よりも後方の位置には、各ガス流案内壁42A〜42Cに対応する第1〜第3のガス流入管45A〜45Cの一端側が上部材40Bの天板部分48を貫通して接続されている。第1〜第3のガス流入管45A〜45Cは、円筒部40の中心に対して互いに回転対称となるように配置されている。また下部材40Aにおける、円筒部40の内周面及び各ガス流案内壁42A〜42Cの外周面は、第1〜第3のガス流入管45A〜45Cの開口部分の輪郭に沿って湾曲している。円筒部40内における第1〜第3のガス流入管45A〜45Cの開口部分は、ガス流入部に相当する。
【0023】
図1図2に戻って、第1のガス流入管45Aは、その他端側が2本に分岐し、各分岐端には、夫々窒素(N)ガス供給源61と、塩化チタン(TiCl)ガス供給源62が接続されている。また第2のガス流入管45Bは、その他端側が2本に分岐し、各分岐端には、夫々窒素(N)ガス供給源63と、アンモニア(NH)ガス供給源64が接続されている。さらに第3のガス流入管45Cは、その他端側が2本に分岐し、各分岐端には、夫々窒素(N)ガス供給源65と、酸素(O)ガス供給源66が接続されている。なお図中のM1〜M6は流量調整部であり、V1〜V6は、バルブである。第1〜第3のガス流入管45A〜45Cは例えば図示しないヒータにより200℃に加熱するように構成されている。この例では、Nガスがキャリアガスに相当し、TiClガス、NHガス及びOガスが成膜ガスに相当する。
【0024】
成膜装置は、図1に示すように制御部9と接続されている。制御部9は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には成膜装置の作用、即ち載置台2上に載置されたウエハWを処理位置まで上昇させ、ウエハWに向けて決められた順番で反応ガス、酸化ガス及び置換用のガスを供給してTiONの成膜を実行し、成膜が行われたウエハWを搬出するまでの制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0025】
続いて、本発明の実施の形態に係る成膜装置の作用について説明する。図7は、ALD法によるTiON膜の成膜処理におけるガスの供給の推移を示す説明図である。なお図7の横軸は、各ガスの供給、停止の時間間隔を正確に示すものではない。はじめに、予め処理容器1内を所定の真空雰囲気に減圧した後、載置台2を受け渡し位置まで降下させる。そして、ゲートバルブ12を開放し、搬入出口11と接続された、例えば真空搬送室に設けられたウエハ搬送機構の搬送アームを進入させ、支持ピン25との間でウエハWの受け渡しを行う。しかる後、支持ピン25を降下させ、ヒータによって、例えば440℃に加熱された載置台2上にウエハWを載置する。
【0026】
次いで、ゲートバルブ12を閉じ、載置台2を処理位置まで上昇させる。さらに図7に示す時刻t0において、ガス混合装置4のバルブV1、V3及びV5を開く。なお以下のシーケンスの説明に記載した流量や時間は説明のための一例に過ぎない。これにより第1〜第3のガス流入管45A〜45Cから円筒部40内に各々5000sccmの流量のNガスが供給される。従ってガス混合装置4から処理容器1内には、合計15000sccmの流量のNガスが供給される。
次いで処理容器1内の圧力をプロセスレシピによりきめられた圧力に調整した後、時刻t1からバルブV2を0.05秒間開く。これにより第1のガス流入管45Aから円筒部40内にNガスとともに、例えば50sccmの流量のTiClガスが供給される。そして第1のガス流入管45Aから流入したTiClガスと、Nガスと、の混合ガスは、円筒部40にて、第2のガス流入管45Bおよび第3のガス流入管45Cから各々流入するNガスと混合され、ガス流出路41を介して処理容器1内に供給される。
【0027】
また時刻t1から0.05秒経過後にバルブを閉じることにより、第1のガス流入管45Aから円筒部40に流入するガスがNガスのみになり、ガス混合装置4から処理容器1内には、Nガスのみが供給される。これにより処理容器1内のTiClガスがNガスに置換される。続いてバルブV2を閉じた後、0.2秒経過後の時刻t2からバルブV4を0.2秒間開く。これにより第2のガス流入管45Bから円筒部40にNガスとともに2700sccmの流量のNHガスが供給される。そして第2のガス流入管45Bから供給されるガスは、円筒部40内にて、第1のガス流入管45Aおよび第3のガス流入管45Cの各々から流入するNガスと混合され、処理容器1に供給される。
【0028】
さらにバルブV4を閉じることで、第2のガス流入管45Bから流入するガスがNガスのみになり、ガス混合装置4から処理容器1にNガスが供給され処理容器1内のNHガスがNガスに置換される。またバルブV4を閉じた後3.3秒経過後の時刻t3からバルブV6を0.2秒間開く。これにより第3のガス流入管45Cから円筒部40にNガスとともに50sccmの流量のOガスが供給され、円筒部40内にて、第1のガス流入管45Aおよび第2のガス流入管45Bの各々から流入するNガスと混合され、処理容器1に供給される。さらにバルブV6を閉じることで、第3のガス流入管45Cから流入するガスがNガスのみになり、ガス混合装置4から処理容器1内にNガスが供給され処理容器1内のOガスがNガスに置換される。
【0029】
このようにして、TiClガス→Nガス→NHガス→Nガス→Oガス→Nガスの順番で反応ガス(TiClガス、NHガス)及び酸化ガス(Oガス)と置換用のガス(Nガス)とを供給する。ウエハWにTiClガス及びNHガスを供給することにより、ウエハWの表面に窒化チタン(TiN)の分子層が積層され、さらにOガスを供給することにより窒化チタン(TiN)の分子層が酸化されてTiONの分子層になる。これを繰り返すことによりTiONが積層されTiONの膜が成膜される。
【0030】
第1〜第3のガス流入管45A〜45Cから流入するガスは、ガス混合装置4にて混合されて処理容器1に供給されるが、背景技術にて述べたように、上述の実施の形態に示すOガスなどの流量の少ないガスを大流量のNガスと混合するときには、均一に混ざりにくくなる問題がある。ここで上述の実施の形態に係るガス混合装置4におけるガスの混合について、時刻t3からOガスを供給する例で説明する。
【0031】
図8に示すように第3のガス流入管45Cから円筒部40内に供給されたガスは、ガス流案内壁42Cに規制されるため、円筒部40の周方向(前後方向)に流れる。ガス流案内壁42Cは、前方側が円筒部40の中心側に向けて屈曲し、ガス流案内壁42Cの外周面の前端側は、当該ガス流案内壁42Cの前方に位置するガス流案内壁42Aの内周面の後端側と対向するように配置され、ガス流案内壁42Cの外周面の前端側と、ガス流案内壁42Aの内周面の後端側との間は、ガスを案内する案内路43になっている。またガス流案内壁42Cは、円筒部40の内周面よりも小径の円弧となっている。従って第3のガス流入管45Cから円筒部40に流入し、ガス流案内壁42Cの外周面に沿って前方側に流れたガスは、円筒部40の中心方向に曲がりながら流れ、案内路43から一つ前方のガス流案内壁42Aの内周面側に進入する。
【0032】
ガス流案内壁42Aの内周面側に進入したガスは、ガス流案内壁42Aの内周面に沿って流れる。ガス流案内壁42Aの内周面の前方側は、ガス流出路41の内面と連続する曲面となっているため、ガス流案内壁42Aの内周面側に進入したガスは、ガス流案内壁42Aの内周面の湾曲に沿って曲がりながら、ガス流出路41に進入する。このときガスは、ガス流案内壁42Cの外周面及びガス流案内壁42Aの内周面に沿って流れることにより、ガス流出路41の周縁を周方向に流れながらガス流出路41に進入するため、図8に示すようにガス流出路41の内周面を周方向に流れる旋回流となる。
また第3のガス流入管45Cから円筒部40に供給されたガスの一部は、ガス流案内壁42Cの外周面を後方に向けて流れ、第2のガス流入管45Bから供給され、ガス流案内壁42Cよりも一つ後方のガス流案内壁42Bに沿って前方に向けて流れるガスとともにガス流案内壁42Cの内周面側に流れ、ガス流出路41の内周面を周方向に流れる旋回流となる。
【0033】
またガス流案内壁42A〜42Cの内面とガス流出路41の内周面とで囲まれる空間は、下方に向かうに従って狭くなるように構成されている。そのため図9に示すようにガス流案内壁42A〜42Cの内面に沿って流れ、ガス流出路41の内周面に沿って流れる旋回流は、ガス流出路41の下方側に向かうにしたがって、その回転半径が徐々に短くなり、流速が上昇する。
そして第1のガス流入管45Aおよび第2のガス流入管45Bから円筒部40に供給されるNガスも第3のガス流入管45Cから円筒部40に供給されるガスと同様に旋回流となり、徐々に流速を増しながらガス流出路41を流れる。
【0034】
これらの第1〜第3のガス流入管45A〜45Cから供給されたガスが各々旋回流となり、徐々に流速を増しながらガス流出路41を流れる。後述の実施例に示すようにTiClガスとNガス、NHガスとNガスとの混合だけでなく、成膜ガスに対応するNガスとの流量比が小さいガスをNガスに混合する場合においても均一に混合される。従って第3のガス流入管45Cから供給された少量のOを含むガスと、第1のガス流入管45Aおよび第2のガス流入管45Bから供給されるNガスと、が互いに混合されて均一な濃度の混合ガスとなり処理容器1に供給される。そしてガス拡散部54にて拡散され、シャワーヘッド51を介して、ウエハWに供給される。
【0035】
こうしてTiClガスの供給とNHガスの供給とOガスの供給とを例えば数十回〜数百回繰り返し、所望の膜厚のTiONの膜を成膜した後、置換用の窒素ガスを供給して最後のOガスを排出した後、載置台2を受け渡し位置まで降下させる。そしてゲートバルブ12を開いて搬送アームを進入させ、搬入時とは逆の手順で支持ピン25から搬送アームにウエハWを受け渡す。
【0036】
上述の実施の形態においては、大流量のNガスに小流量のOガスを混合するにあたって、底面中央部にガス流出路41が設けられ、上面が塞がれた円筒部40において、前方側の端部が円筒部40の中心部寄りに屈曲され、円筒部40の中心に対して回転対称となる複数のガス流案内壁42A〜42Cをガス流出路41の開口縁に沿って間隔を置いて配置している。そのためガス流案内壁42A〜42Cと、円筒部40の内周面との間に設けた第1〜第3のガス流入管45A〜45Cから流入したガスが、ガス流案内壁42A〜42Cの外周面に沿って流れ、旋回流となって、ガス流出路41に案内される。第1〜第3のガス流入管45A〜45Cから流入するガスを各々旋回流とすることで、ガス流出路41にて各ガス流合流させたときに混合ガスの濃度のムラができにくくなり均一に混合することができる。
【0037】
さらに後述の実施例に示すように例えば成膜ガスとキャリアガスとの混合比(成膜ガスの質量流量/キャリアガスの質量流量)が大きい場合にも十分に混合することができる。従って第1のガス流入管45AからTiClガスを供給し、第2及び第3のガス流入管45B、45CからNガスを供給する場合、あるいは、第2のガス流入管45AからNHガスを供給し、第1及び第3のガス流入管45A、45CからNガスを供給する場合においても均一に混合される。
【0038】
また成膜ガスとキャリアガスとの混合比が小さくなることでガスは混合されにくくなることから、成膜ガスとキャリアガスとの混合比が0.4以下となるガスを混合する場合には、より効果が大きいといえる。なお混合比は、一のガス流入管から円筒部40に供給するガスにおける(成膜ガスの質量流量/キャリアガスの質量流量)の値であり、他のガス流入管からは一のガス流入管から流入するキャリアガスと同量の質量流量のキャリアガスが円筒部40に流入するものとする。
【0039】
なお一のガス流入管から少流量の成膜ガスのみ流入させ、他のガス流入管から大流量のキャリアガスを流入させる場合にも同様の効果を得ることができる。
【0040】
また後述の実施例に示すように第1〜第3のガス流入管45A〜45Cをガス流案内壁42A〜42Cと円筒部40の内周面との間に設けるにあたってガス流案内壁42A〜42Cの中央部よりも後方側に設けることで混合ガスがより均一に混合される。これは、第1〜第3ガス流入管45A〜45Cから円筒部40に流入するガスの一部がガス流案内壁42A〜42Cの後方側に向けて流れ、後方側のガス流案内壁42A〜42Cの外周面に沿って流れるガスと合流することにより、混合されやすくなるためと推測される。
【0041】
さらにガス流案内壁42A〜42Cの内周面及びガス流出路41の円筒部40底面における開口部から下方に向かうにつれて、円筒部40の中心部に近づくように傾斜する傾斜面としている。このように構成することで旋回流の速度を徐々に速くすることができる。そのため後述の実施例に示すように混合ガスをより均一に混合することができる。
さらに隣接するガス流案内壁42A〜42Cのうち前方側のガス流案内壁、例えばガス流案内壁42Aの内周面の後端部と、後方側のガス流案内壁42Cの外周面の前端部とを対向するように配置し、ガス流案内壁42Aの内周面の後端部と、ガス流案内壁42Cの外周面の前端部と、の間をガス流の案内路43としている。そのため後方側のガス流案内壁42Cの外周面に沿って流れるガスをより確実に前方側のガス流案内壁42Aの内周面側に案内することができるため、より確実に旋回流を形成することができる。
【0042】
また既述のようにガス流案内壁42A〜42Cの内周面に傾斜をつけることで旋回流の速度を増すことができるため、混合ガスがより均一に混合されるが、ガス流案内壁42Aの内周面の後端部側まで傾斜面にすると、ガス流案内壁42Aの内周面の後端部とガス流案内壁42Cの外周面の前端部とが近づきすぎるため、前方側のガス流案内壁42Aの内周面側に案内されにくくなる。そのためガス流案内壁42Aの内周面の後方側を前方側よりも立った面とすることで案内路43にガスが進入しやすくなる。
【0043】
さらに3本のガス供給管45A〜45Cの内の一のガス流入管のガスを停止し、他の2本のガス供給管からガスを供給して、ガスを混合してもよい。例えばガス供給管45Aのガスの供給を停止し、ガス供給管45BからNガス、ガス供給管45CからNガス及びOガスを夫々供給する。このような場合にもガス供給管45B、及びガス供給管45Cから供給されるガスが各々旋回流となり、混合されるため、均一に混合されるため効果が得られる。
【0044】
またガス混合装置は、プラズマ処理装置に適用してもよい。例えば図1図2に示した成膜装置において、シャワーヘッド51に高周波電力を印加できるように構成し、載置台2を接地電位に接続する。そして上部電極となるシャワーヘッド51と下部電極となる載置台2との間に容量結合型のプラズマを発生させるように構成し、ガス混合装置により混合されたガスをシャワーヘッド51と載置台2との間に供給するように構成すればよい。
さらにガス混合装置が混合する処理ガスは、原料ガスと、原料ガスと反応する反応ガスと、であってもよく、原料ガスと反応ガスとを混合したガスをウエハWに供給するCVD装置に適用してもよい。
【0045】
また第1〜第3のガス流入管45A〜45Cは、円筒部40の側面に接続されていてもよい。円筒部40の側面からガスが供給される場合にもガス流案内壁42A〜42Cによってガス流が案内されるため同様の効果を得ることができる。
またガス流入管及びガス流案内壁の数が多くなると円筒部40を大きくする必要があり、ガスが混合されにくくなる。そのためガス流入管及びガス流案内壁は、2個か3個であることが好ましい。またガス流案内壁42A〜42Cの内周面は、傾斜面でなく垂直な面であってもよい。
【実施例】
【0046】
本発明の効果を検証するためにガス混合装置4を適用した成膜装置を用い、処理容器1内に混合したガスを供給し、載置台2の上方における均一性についてシミュレーションにより調べた。
(実施例1)
実施の形態にかかるガス混合装置4を適用した成膜装置を用い、第1のガス流入管45Aから供給する反応ガスとキャリアガスとの質量流量比(反応ガスの質量流量/キャリアガス質量流量)を0.338となるように設定した。また他の第2のガス流入管45Bと、第3のガス流入管45Cと、は、第1のガス流入管45Aから供給されるキャリアガスと同量のキャリアガスを流すものとした。また処理容器1内の圧力を3Torr(400Pa)、ガスの温度は、200℃とした。
(実施例2)
図10(a)に示すように、ガス流出路41の内周面を垂直な面としたことを除いて実施例1と同様の構成としたガス混合装置4を適用した例を実施例2とした。
(実施例3)
図10(b)に示すように、円筒部40における各ガスが流入する第1〜第3のガス流入管45A〜45Cの接続位置をガス流案内壁42A〜42Cの前後方向の中央部の間の位置に設定したことを除いて実施例2と同様の構成としたガス混合装置4を適用した例を実施例3とした。
(比較例)
図10(c)に示すように、実施例1に示す円筒部40に代えて、第1〜第3のガス流入管45A〜45Cから供給されたガスを、ガス流出路41から見て周方向一方に流した後、ガス流出路側に垂直に屈曲させてガス流出路41から排出する流路91を設けた構成としたガス混合装置を適用した例を比較例とした。なお図10(c)は、記載の煩雑化を避けるため、ガスの流れる部位のみ実線で示しており、下部材40Aにおける外壁、及び底面部は点線で示している。
【0047】
実施例1〜3および比較例の各々においてガスを供給した時の載置台2の周縁部の上方における周方向等間隔に8か所の地点におけるガスの質量を測定し、8か所の地点におけるガスの質量の標準偏差(1σ)を求めた。図11はこの結果を示し、実施例1〜3および比較例における標準偏差(1σ)を平均値に対する百分率(1σ%)で示した特性図である。なお比較例および実施例2、3については、拡散室53内に溝を形成した構造を採用しているが、ガス混合装置4の効果の評価に影響を及ぼすものではない。
【0048】
図11に示すように比較例および実施例1〜3における1σ%は、夫々7.8%、1.08%、2.9%、4.2%であった。この結果によれば、比較例に係るガス混合装置4と比べて、実施例1〜3に係るガス混合装置4は、1σ%が小さくなっており、載置台2の上方においてよりガスが均一に混合されていることが分かる。
また実施例2は、実施例3よりも1σ%が小さくなっている。従って円筒部40における各ガスを供給する第1〜第3のガス流入管45A〜45Cの接続位置をガス流案内壁42A〜42Cの前後方向の中央部よりも後方側に設けることで、よりガスが均一に混合されるといえる。
さらに実施例1は、実施例2よりも1σ%が小さくなっており、ガス流出路41の内周面を下方に向かうに従い、徐々に狭くなるように構成することで、よりガスが均一に混合されるといえる。
【0049】
また実施例1に示したガス混合装置4を適用した成膜装置を用い、反応ガスとキャリアガスとの質量流量比を0.338、0.342、0.363、0.830、0.840及び0.96に設定し、実施例1と同様にガスの質量の標準偏差(1σ)を求めた。
【0050】
図12はこの結果を示し、反応ガスとキャリアガスとの質量流量比に対する標準偏差(1σ%)を示す特性図である。図12に示すように質量流量比を0.338から0.96までのいずれにおいても、1σ%は、1.08以下と極めて低くなっていた。この結果によれば、本発明の実施の形態に係るガス混合装置4を用いることで、質量流量比にかかわらず載置台2の上方においてガスが均一に混合されるといえる。
【符号の説明】
【0051】
1 処理容器
2 載置台
4 ガス混合装置
40 円筒部
41 ガス流出路
42A〜42C ガス流案内壁
43 案内路
45A〜45C 第1〜第3のガス流入管
5 ガス供給部
51 シャワーヘッド
9 制御部
W ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12