(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保護層を形成する工程は、イソシアネートの液体またはミストを前記低誘電率膜に染み込ませると共に、前記低誘電率膜に水分を供給してイソシアネートを加水分解してアミンを生成し、前記基板を加熱してイソシアネートとアミンとを重合反応させる工程を含むことを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
前記保護層を形成する工程は、イソシアネートの液体またはミストを前記低誘電率膜に染み込ませた後、基板が置かれる雰囲気を水蒸気雰囲気とする工程であることを特徴とする請求項3記載の半導体装置の製造方法。
前記保護層を形成する工程は、イソシアネートの蒸気とアミンの蒸気との一方及び他方を前記低誘電率膜内に順番に拡散させると共に前記基板を加熱してイソシアネートとアミンとを重合反応させる工程であることを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
前記保護層を形成する工程は、イソシアネートの蒸気とアミンの蒸気とを基板に供給すると共に基板を加熱してイソシアネートとアミンとを重合反応させる工程であることを特徴とする請求項6または7記載の半導体装置の製造方法。
前記保護層を形成する工程は、イソシアネートの液体とアミンの液体とを基板に供給すると共に基板を加熱してイソシアネートとアミンとを当該基板表面で重合反応させる工程であることを特徴とする請求項6または7記載の半導体装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法の工程の一部を示す説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法の工程の一部を示す説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法の工程の一部を示す説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法の工程の一部を示す説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法の工程の一部を示す説明図である。実施形態にかかる半導体装置の製造方法の工程の一部を示す説明図である。
【
図6】イソシアネートと水とを用いて自己重合により、尿素結合を有する重合体を生成する様子を示す説明図である。
【
図7】イソシアネートと水とを用いて自己重合により、尿素結合を有する重合体を生成する処理を段階的に示す説明図である。
【
図8】イソシアネートの一例の分子構造を示す分子構造図である。
【
図9】イソシアネートの液体を基板に供給するための装置を示す断面図である。
【
図10】イソシアネートの液体が供給された後の基板に水蒸気を供給するための装置を示す断面図である。
【
図11】イソシアネートと水蒸気が供給された基板を加熱するための加熱装置を示す断面図である。
【
図12】尿素結合を有する重合体を共重合による反応により生成する様子を示す説明図である。
【
図13】尿素結合を有する重合体がオリゴマーとなる反応を示す説明図である。
【
図14】二級アミンを用いて尿素結合を有する重合体を生成する様子を示す説明図である。
【
図15】尿素結合を有する単量体を架橋させて、尿素結合を有する重合体を生成する様子を示す説明図である。
【
図16】イソシアネートとアミンとを各々蒸気で反応させて尿素結合を有する重合体を生成するための装置を示す断面図である。
【
図17】本発明の第2の実施形態にかかる半導体装置の製造方法の工程の一部を示す説明図である。
【
図18】本発明の第2の実施形態にかかる半導体装置の製造方法の工程の一部を示す説明図である。
【
図19】本発明の第2の実施形態にかかる半導体装置の製造方法の工程の一部を示す説明図である。
【
図20】イソシアネートの液体とアミンの液体とを基板に供給するための装置を示す断面図である。
【
図21】低誘電率膜におけるポリ尿素の埋め込み前後の吸収スペクトルを示す特性図である。
【
図22】ポリ尿素膜を形成した2枚の基板を重ねて加熱した後の吸収スペクトルを示す特性図である。
【
図23】ポリ尿素膜の膜厚と加熱温度との関係を示す特性図である。
【
図24】ポリ尿素膜の上に形成したポリイミド膜の膜厚ごとに、加熱後のポリ尿素膜の吸収スペクトルを測定した結果を示す特性図である。
【
図25】ポリ尿素膜の上に形成したポリイミド膜の膜厚ごとに、加熱後のポリ尿素膜のCH結合の残存率と加熱温度との関係を示す特性図である。
【
図26】ポリ尿素膜の上に形成したポリイミド膜の膜厚と、加熱後のポリ尿素膜のCH結合及びNH結合の残存率と、の関係を示す特性図である。
【
図27】ポリ尿素膜単体について、加熱後の膜厚とCH結合の残存率との関係を示す特性図である。
【
図28】ポリ尿素膜単体について、膜厚と、加熱後のポリ尿素膜のCH結合及びNH結合の残存率と、の関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法を、デュアルダマシンにより半導体装置の配線を形成する工程に適用した実施形態について説明する。
図1〜
図3は、下層側の回路部分に上層側の回路部分を形成する様子を段階的に示す説明図であり、11は下層側の例えば層間絶縁膜、12は層間絶縁膜11に埋め込まれた配線材料である銅配線、13はエッチング時のストッパーの機能を持つエッチングストッパー膜である。エッチングストッパー膜13は、例えばSiC(炭化ケイ素)やSiCN(炭化窒化ケイ素)などにより形成されている。
エッチングストッパー膜13の上には、層間絶縁膜である低誘電率膜20が形成されている。低誘電率膜20は、この例ではSiOC膜が用いられ、SiOC膜は例えばDEMS(Diethoxymethylsilane)をプラズマ化してCVD法により成膜される。低誘電率膜20は多孔質であり、
図1〜
図3では低誘電率膜20内の孔部21を極めて模式的に示している。なお下層側の層間絶縁膜11についてもSiOC膜が用いられる。
【0011】
本実施形態の方法では、基板である半導体ウエハ(以下ウエハという)の表面に、
図1(a)に示すように下層側の回路部分が形成され、この回路部分の上に多孔質である低誘電率膜20が形成されている状態から処理が始まる。この例では、低誘電率膜20が被保護膜に相当する。
本実施形態では、低誘電率膜20内の孔部21を次のように埋め込み材料である、尿素結合を有する重合体(ポリ尿素)により埋める。低誘電率膜20内の孔部21に埋め込まれたポリ尿素は、被保護膜である低誘電率膜20を後述のプラズマ処理におけるプラズマから保護する保護層に相当する。ポリ尿素の製法としては、後述のように共重合などの手法もあるが、この例では自己重合により重合体が生成される手法について述べる。
【0012】
先ず自己重合の原料である、イソシアネート(液体)を低誘電率膜20の中に染み込ませ(
図1(b))、次いで低誘電率膜20の中に水分、例えば水蒸気を染み込ませる(
図1(c))。イソシアネートと水分とを反応させると、イソシアネートが加水分解して直ちにポリ尿素が生成され、低誘電率膜20の孔部21がポリ尿素で埋められる。
図6は、この反応を示しており、イソシアネートの一部が不安定な中間生成物であるアミンとなり、当該中間生成物と加水分解しなかったイソシアネートとが反応してポリ尿素が生成される。
図6中、Rは例えばアルキル基(直鎖状アルキル基または環状アルキル基)またはアリール基であり、nは2以上の整数である。
【0013】
イソシアネートとしては、例えば脂環式化合物、脂肪族化合物、芳香族化合物などを用いることができる。脂環式化合物としては、例えば後述の
図7(a)に示すように1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)を用いることができる。また脂肪族化合物としては、
図8に示すように、例えばヘキサメチレンジイソシアネートを用いることができる。またイソシアネートは、融点が100℃以下であって、室温で液体であるものであれば、より好ましい。
【0014】
図7は、H6XDIを原料モノマーとして用いた処理の様子を、ウエハWに対する処理と化学式とを対応付けて模式的に記載した説明図である。
図7(a)は、
図1(b)に示した、ウエハWに対してイソシアネートを供給する処理に相当し、先ずウエハWに対してH6XDIの液体をスピン塗布することにより、当該液体を低誘電率膜20に染み込ませる。
【0015】
スピン塗布を行うためのスピン塗布装置としては、例えば
図9に示す装置を使用することができる。
図9中、31は、ウエハWを吸着保持して回転機構30により回転するバキュームチャック、32は、カップモジュール、33は、下方に伸びる外周壁及び内周壁が筒状に形成されたガイド部材である。34は、全周に亘って排気、排液を行うことができるように外カップ35と前記外周壁との間に形成された排出空間であり、排出空間33の下方側は気液分離できる構造になっている。液体供給源37から上記の液体がノズル36を介してウエハWの中心部に供給されると共に、ウエハWを例えば1500rpmの回転数で回転させ、液体をウエハWの表面に展伸して塗布膜が形成される。
【0016】
次いでウエハWを例えば80℃の加熱雰囲気でありかつ水蒸気雰囲気(相対湿度100%)に位置させることにより、水蒸気が低誘電率膜20の中に浸透する。
図7(b)は、
図1(c)に示す、水分である水蒸気をウエハWに供給する処理に相当する。
水蒸気処理を行う装置としては、例えば
図10に示す装置を用いることができる。
図10中、41は水蒸気雰囲気を形成するための処理容器、42は水蒸気発生部、43は下面に多数の孔部が形成された水蒸気吐出部、44は水蒸気を水蒸気吐出部43内の拡散空間に導く管路、45はヒータ46を内蔵した載置台、47は吸引機構により排気される排気管である。処理容器41の内壁は、図示しない加熱機構により例えば80℃に加熱されている。ウエハWは載置台45の上に載置され、水蒸気吐出部43から吐出された水蒸気の雰囲気に置かれる。
【0017】
また水蒸気処理を行う装置としては、水蒸気発生部42及び水蒸気吐出部43を設けることに代えて、載置台45の上方に蓋付きの扁平な容器を設け、この容器内に水を収容した状態で当該容器を加熱し、処理容器内を水蒸気雰囲気とする構成を採用してもよい。この場合、ウエハWを搬入出するときには蓋により容器が閉じられる。
【0018】
低誘電率膜20内には既にH6XDIが染み込んでいることから、水蒸気が低誘電率膜20内に浸透することにより、既述のように加水分解が起こり、直ちに重合反応が起こってポリ尿素が生成される。このため低誘電率膜20内の孔部21内はポリ尿素により埋め尽くされる。
図1において、孔部21に原料モノマー(この例ではH6XDIの液体)が満たされている状態を便宜上「ドット」で示し、孔部21がポリ尿素で埋められた状態を便宜上「斜線」で示している。
【0019】
続いてウエハWを加熱して低誘電率膜20に存在する残渣を除去する(
図7(c))。加熱温度としては、例えば200℃以上、例えば250℃に設定し、ウエハを不活性ガス雰囲気例えば窒素ガス雰囲気で加熱する。この処理は例えば
図11に示すように、処理容器51内の載置台52にウエハWを載置し、ランプハウス53内の赤外線ランプ54によりウエハWを加熱することにより行うことができる。
図11中、55は透過窓、56は窒素ガスを供給する供給管、57は排気管である。処理雰囲気は例えば常圧雰囲気とされるが、真空雰囲気であってもよい。
【0020】
こうして低誘電率膜20の孔部21内にポリ尿素を埋め込んだ後、低誘電率膜20に対してビアホール及びトレンチ(配線埋め込み用の溝)の形成工程を行うが、その前に、低誘電率膜20の上に封止膜60を形成する(
図1(d))。この封止膜60は、保護層である孔部21内のポリ尿素(斜線部分)の耐熱性を高めるために設けられている。従って封止膜60は、ポリ尿素(重合体)が解重合する温度よりも低い温度例えば250℃以下で成膜される。
【0021】
この例では封止膜60はポリイミド膜であり、例えば無水ピロメリト酸(PMDA)と4,4’-オキシジアニリン(ODA)との混合ガスを用い、150〜200℃、真空雰囲気下において蒸着により成膜される。封止膜60の膜厚は例えば100nmである。ポリイミド膜は蒸着法に限らす薬液を塗布して成膜してもよい。低誘電率膜20の表面には、孔部21内のポリ尿素が露出していることから、封止膜60は、保護層(ポリ尿素)が露出している部分を覆うように形成されている、ということができる。
【0022】
封止膜60の成膜後、
図2(e)に示すように封止膜60の表面に、例えば真空雰囲気にて300℃のプロセス温度でCVD(Chemical Vapor Deposition)によりシリコン酸化膜65を成膜する。シリコン酸化膜65は、例えば有機系のシリコン原料の蒸気と酸素あるいはオゾンなどの酸化ガスとの反応により生成される。シリコン酸化膜65は、後述のエッチング時においてパターンマスク(ハードマスク)としての役割を果たす。シリコン酸化膜65の成膜工程は、保護層が解重合する温度以上の高い温度でウエハWに対して行われる処理に相当する。
【0023】
続いてトレンチに対応する部位が開口する、例えばTiN(チタンナイトライド)膜からなるエッチング用のパターンマスクであるハードマスク61を公知の手法により形成する(
図2(f))。
次にハードマスク61の上にビアホールをエッチングするときのマスクとなるマスク用の膜62を形成し(
図2(g))、更にマスク用の膜62の上に反射防止膜63及びレジスト膜64をこの順に積層する(
図2(h)、
図3(i)))。マスク用の膜62は、例えば炭素を主成分とする有機膜が用いられ、この有機膜は、反射防止膜63及びレジスト膜64を形成してレジストパターンを形成する装置内にて、薬液をウエハWにスピンコーティングすることにより得られる。
【0024】
そしてレジスト膜64の露光、現像によりビアホールに対応する部位に開口部641が形成されるレジストパターンを形成し(
図3(j))、このレジストパターンを用いて反射防止膜63を例えばCF系のガスを用いてエッチングする(
図3(k))。続いて反射防止膜63をマスクとして、例えば酸素ガスをプラズマ化して得たプラズマによりマスク用の膜62をエッチングし、このときレジスト膜64もエッチングされて除去される(
図3(l))。こうしてマスク用の膜62においてビアホールに対応する部位に開口部621が形成される。
【0025】
続いてマスク用の膜62をエッチングマスクとして用い、低誘電率膜20をエッチングし、ビアホール201を形成する(
図4(m))。低誘電率膜20、この例ではSiOC膜をエッチングする手法としては、C
6F
6ガスをプラズマ化して得たプラズマにより行うことができ、この場合、更に微量の酸素ガスを添加するようにしてもよい。
【0026】
その後、ビアホール201の底部のエッチングストッパー膜13をエッチングして除去する。このエッチングは、エッチングストッパー膜13が例えばSiC膜である場合には、例えばCF
4ガスをプラズマ化して得たプラズマにより行うことができる。続いて、マスク用の膜62を酸素ガスをプラズマ化して得たプラズマによりアッシングして除去する(
図4(n))。
【0027】
次にビアホール201を形成したプロセスと同様にして、ハードマスク61を用いて低誘電率膜20をエッチングし、ビアホール201を囲む領域にトレンチ202を形成する(
図4(o))。その後、ビアホール201及びトレンチ202の内面に、後述の導電路である銅が層間絶縁膜20に拡散することを防止するためのバリア層、例えばTiとTiONとの積層膜からなるバリア層70aを成膜する(
図4(p))。しかる後、ビアホール201及びトレンチ202に銅70を埋め込み(
図5(q))、余分な銅70、バリア層70a、封止膜60、絶縁膜65及びハードマスク61をCMP(Chemical Mechanical Polishing)により除去して銅配線70を形成し、上層の回路部分が形成される(
図5(r))。
【0028】
以上において、この段階までに行われる各プロセスは、ポリ尿素が解重合する温度よりも低い温度で実施されることが必要である。そして低誘電率膜20の孔部21を埋めている埋め込み物質であるポリ尿素を除去する(
図5(s))。ポリ尿素は、300℃以上、例えば350℃に加熱するとアミンに解重合して蒸発するが(
図7(d))、ウエハW上に既に形成されている素子部分、特に銅配線に悪影響を与えないようにするためには、400℃未満例えば390℃以下、例えば300〜350℃で加熱することが好ましい。ポリ尿素の解重合を行う時間、例えば300℃〜400℃で加熱する時間は、素子への熱的ダメージを抑えるという観点から、例えば5分以下が好ましい。加熱の手法としては、既述のように赤外線ランプを用いてもよいし、ヒータを内蔵した載置台の上にウエハWを載せて加熱するようにしてもよい。加熱雰囲気は例えば窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気とされる。
【0029】
上述実施形態では、低誘電率膜20に対してイソシアネートと水分とを順番に供給して低誘電率膜20内の孔部21に尿素結合を有する重合体であるポリ尿素を埋め込んで、低誘電率膜20を保護する保護層を形成している。そしてこの状態で低誘電率膜20をエッチングしてビアホール201及びトレンチ202を形成し、エッチングマスクのアッシングを行っている。従って、この例ではプラズマ処理として実施されるエッチング時及びアッシング時にはポリ尿素により低誘電率膜20が保護されているので、低誘電率膜20のダメージの発生が抑えられる。
【0030】
また絶縁膜65の成膜温度がポリ尿素の解重合の温度以上の高い例えば300℃であるが、ポリ尿素が埋め込まれた低誘電率膜20の上(保護層の上)には封止膜60が形成されているため、ポリ尿素の解重合が抑えられ、保護層の機能が損なわれない。そしてポリ尿素は300℃程度の温度で解重合することから、ポリ尿素を低誘電率膜20から除去するときに、ウエハW上に既に形成されている素子部分、特に銅配線に悪影響を及ぼすおそれがないし、またポリ尿素の除去を加熱処理だけで行うことができるので、手法が簡単である。
封止膜60は、ポリイミドに限られるものではなく、ポリ尿素を生成する温度よりも低い温度で成膜することができる膜であれば例えば金属膜あるいは絶縁膜などであってもよい。金属膜としては例えばTiN膜、TaN膜などを挙げることができ、例えば無電解メッキ法などで成膜してもよい。また絶縁膜としては、例えばアミノシラン系のガスとオゾンなどの酸化ガスとを真空雰囲気で反応させて成膜されるシリコン酸化膜などが挙げられる。この場合、シリコン酸化膜は例えば250℃もの低温で成膜ができる。絶縁膜を封止膜60として使用する場合には、例えば絶縁膜の前駆体を含む塗布液をウエハW上に塗布する手法を採用してもよい。
【0031】
上述の実施形態では、イソシアネートをウエハW上にスピンコーティングしているが、ウエハWを停止した状態でイソシアネートのミストを供給するようにしてもよい。
上述の実施形態では、イソシアネートの自己重合によりポリ尿素膜を生成しているが、
図12に一例を示すようにイソシアネートとアミンとを用いて共重合によりポリ尿素膜を生成するようにしてもよい。なお、Rは例えばアルキル基(直鎖状アルキル基または環状アルキル基)またはアリール基であり、nは2以上の整数である。
【0032】
この場合、例えばイソシアネート及びアミンの一方である液体を既述のようにスピンコーティング法によりウエハに供給して低誘電率膜に浸透させ、次いでイソシアネート及びアミンの他方である液体を同様にスピンコーティング法によりウエハに供給して低誘電率膜に浸透させる手法を採用することができる。またイソシアネート及びアミンを気体(蒸気)の状態でウエハに順番に供給するように、例えば交互に複数回供給するようにしてもよい。この場合には、例えばイソシアネートの蒸気が低誘電率膜の孔部に拡散して吸着し、次いでアミンの蒸気が孔部に拡散して重合反応が起こり、このような作用が繰り返されて孔部がポリ尿素膜により埋め尽くされる。
ポリ尿素自体は、固体であって液体にすることができないため、上述のようにポリ尿素となる原料を別々に膜に供給して膜中にてポリ尿素を生成する手法を採用している。
【0033】
原料モノマーの蒸気を用いる手法においては、互いの蒸気圧が大きく離れていること、例えば1桁以上離れていることが好ましい。その理由については、互いの蒸気圧が近い組み合わせでは、例えばアミンを低誘電率膜の孔部に拡散させるときに孔部の表面に吸着してしまい、イソシアネートとの反応効率が悪くなることによる。
【0034】
イソシアネート及びアミンの蒸気圧差が1桁以上である組み合わせとしては、イソシアネートからイソシアネート官能基を除いた骨格分子とアミンからアミン官能基を除いた骨格分子とが同一である例、即ち互いに同一骨格分子を備えたイソシアネート及びアミンを挙げることができる。例えばアミン官能基が結合したH6XDAの蒸気圧は、当該H6XDAの骨格分子と同一の骨格分子であって、イソシアネート官能基が結合したH6XDIの蒸気圧に比べて1桁以上高い。
【0035】
また
図13(a)〜(d)に示すように、原料モノマーとして一官能性分子を用いてもよい。
更にまた
図14(a)、(b)に示すように、イソシアネートと二級アミンとを用いてもよく、この場合に生成される重合体に含まれる結合も尿素結合である。
【0036】
そして尿素結合を備えた原料モノマーを重合させてポリ尿素膜を得るようにしてもよい。この場合の原料モノマーは、液体、ミストまたは蒸気の状態で低誘電率膜に供給することができる。
図15はこのような例を示し、原料モノマーに対して光、例えば紫外線を照射して光エネルギーを与えることにより重合が起こってポリ尿素膜が生成され、このポリ尿素膜を例えば350℃で加熱すると、イソシアネートとアミンとに解重合する。
【0037】
原料モノマーを気体で反応させてポリ尿素を低誘電率膜20内にて生成する(蒸着重合する)ためのCVD装置を
図16に示しておく。70は真空雰囲気を区画する真空容器である。71a、72aは夫々原料モノマーであるイソシアネート及びアミンを液体で収容する原料供給源であり、イソシアネートの液体及びアミンの液体は供給管71b、72bに介在する気化器71c、72cにより気化され、各蒸気がガス吐出部であるシャワーヘッド73に導入される。シャワーヘッド73は、下面に多数の吐出孔が形成されており、イソシアネートの蒸気及びアミンの蒸気を別々の吐出孔から処理雰囲気に吐出するように構成されている。ウエハWは、温調機構を備えた載置台74に載置される。先ずウエハWに対してイソシアネートの蒸気が供給され、これによりウエハW上の低誘電率膜内にイソシアネートの蒸気が入り込む。次いでイソシアネートの蒸気の供給を止め、真空容器70内を真空排気してから、アミンの蒸気をウエハWに供給し、低誘電率膜内に残留しているイソシアネートとアミンとが反応してポリ尿素が生成される。
【0038】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態について説明する。この実施形態は、本発明をRAMの形成工程に適用した実施形態であり、電極のオーバーエッチングによるダメージをポリ尿素からなる保護層により保護する例である。
図17(a)〜(d)は、絶縁膜81で囲まれた下層側の回路の電極82の上に、メモリ素子を形成するためのメモリ素子膜83が形成され、更にメモリ素子膜83の上に電極膜84が形成され、電極膜84の上にポリ尿素からなる保護層(ポリ尿素膜)85が順次形成される様子を示している。メモリ素子としては、例えばReRAM、PcRAM、MRAMなどが挙げられ、メモリ素子膜83は例えばReRAM(抵抗変化型メモリ)に用いられる金属酸化膜が挙げられる。
電極膜84は、例えばチタンナイトライド(TiN)膜及びタングステン膜(W)を下からこの順に積層した積層膜からなる。
ポリ尿素からなる保護層(ポリ尿素膜)85は、例えば既述の
図12に示すように、イソシアネートとアミンとを用いて共重合により生成される。保護層85の膜厚は例えば20nm〜50nmに設定される。この場合、保護層を生成するための装置としては、既述の
図16に示すCVD装置を挙げることができる。
【0039】
次に保護層85の上に、マスク膜(ハードマスク)86を成膜する(
図18(e))。マスク膜86としては、例えばボロン(B)含有シリコン膜を挙げることができる。ボロン(B)含有シリコン膜は、例えばシラン系のガスとドープ用のガスであるB
2H
6ガスとを用いて成膜される。しかる後、マスク膜86の上にレジストパターンを形成してマスク膜86にパターンを形成し、マスク膜86をハードマスクとして、保護層85、電極膜84、メモリ素子膜83をエッチングし、前記パターンを転写する(
図18(f))。
【0040】
次にマスク膜86、メモリ素子膜83、電極膜84及び保護層85からなる積層体の上面及び側面を覆うように例えばポリイミド膜からなる封止膜87を成膜する(
図18(g))。封止膜87は第1の実施形態にて説明したように、保護層85が解重合する温度よりも高い温度で加熱されたときに解重合を抑えるためである。
更にメモリ素子膜83、金属層84及び保護層85からなる積層体の周囲に、素子同士を電気的に分離するための素子分離膜として絶縁膜である例えばシリコン酸化膜88を成膜し、シリコン酸化膜88の中に前記積層体が埋没した状態を形成する(
図18(h))。シリコン酸化膜88は、例えば真空雰囲気にて300℃のプロセス温度でCVDにより成膜される。シリコン酸化膜88の成膜工程は、保護層が解重合する温度以上の高い温度でウエハWに対して行われる処理に相当する。
【0041】
次いで、シリコン酸化膜88における前記積層体に対応した部位を、保護層85するまでエッチングガスによりエッチングして、コンタクトホール89を形成する(
図19(i))。その後、保護層85を加熱してポリ尿素の解重合を行い、保護層85を除去する(
図19(j))。ポリ尿素の解重合を行う工程は、第1の実施形態にて説明したと同様の手法を採用できる。そしてコンタクトホール89内に導電路となる金属例えば銅を埋め込み、CMPにより余分な金属を除去して導電路91を形成し、こうしてメモリ素子を製造する(
図19(k))。
【0042】
上述実施形態によれば、次のような効果がある。保護層85がない場合には、ドライエッチングによりコンタクトホール89を開けるときに、マスク膜86のオーバーエッチングにより電極膜84の表面が酸化されてダメージ層が形成される。このため電極膜84と導電路91との間の界面にダメージ層が介在することになり、電気特性に悪影響を与える。これに対して上述実施の形態では、電極膜84の表面に保護層85を形成し、保護層85は熱により除去できることから、電極膜84の表面にダメージ層が形成されることを防止できる。
そして保護層85が形成された後に、ポリ尿素の解重合の温度以上で絶縁膜88が成膜されるが、保護層85は封止膜87により覆われているため、ポリ尿素の解重合が抑えられ、保護層85の機能が損なわれない。
【0043】
保護層85を生成する手法としては、CVDに限らず、第1の実施形態にて
図9を参照して説明した液処理であってもよいし、あるいは
図20に示す塗布装置を用いてもよい。
図20において、
図9に示す符号に相当する部位には同じ符号を付している。38aは、薬液である例えばH6XDIの供給源、38bは、薬液である例えば1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(H6XDA)の供給源であり、この塗布装置は、これらの薬液がノズル38の直前で合流して混合液がウエハWの中心部に供給されるように構成されている。そしてウエハWが回転することにより混合液がウエハW上に広がり、ポリ尿素膜である保護層85が生成される。また
図20に示すようにウエハWの下方には、例えば発光ダイオードからなる加熱部39が配置されており、加熱部39によりウエハWを加熱して重合を促進するようにしている。
保護層85を生成するための原料としては、上述の例に限らず、例えば既述の
図13〜
図15に示した原料を用いることができる。
【実施例】
【0044】
[評価試験1]
ベアウエハ上にSiOC膜からなる低誘電率膜を成膜し、ポリ尿素を埋め込む前の低誘電率膜、ポリ尿素を埋め込んだ状態の低誘電率膜、ポリ尿素を除去した後の低誘電率膜の各々について吸収スペクトルを測定した。測定結果は、
図21に示す通りである。
図21中、(1)〜(3)は、夫々埋め込み前、埋め込み後、除去後に対応している。埋め込み後(2)においては、NH結合(矢印a)、CH結合(矢印b)、CO結合(矢印c)、CN結合(矢印d)に対応するピークが見られるが、埋め込み前(1)及び除去後(3)には、これらのピークは見られない。
この結果から、第1の実施形態で述べた手法により低誘電率膜内の孔部にポリ尿素が埋め込まれていること、またポリ尿素の除去処理を行うことで、ポリ尿素が低誘電率膜の中に全く残っていないこと、が裏付けられている。
【0045】
[評価試験2]
1辺が5cmの正方形状の2つの基板の表面に、既述した真空蒸着により各々ポリ尿素膜を成膜した。そしてこれらの基板を重ね合わせ、窒素ガス雰囲気にて、350℃で5分間加熱した。この加熱処理時において上側に配置した基板の裏面(下面)、下側に配置した基板の表面(上面)を赤外吸収分光法(IR)により夫々吸収スペクトルを測定した。測定結果を
図22に示す。実線の波形が上側に配置した基板の裏面のスペクトルを、点線の波形が下側に配置した基板の表面のスペクトルを示している。これらの各スペクトルは、測定した箇所にポリ尿素膜が存在することを示している。また、目視で観察すると、上側に配置した基板の裏面及び下側に配置した基板の表面にはポリ尿素膜が存在しているように見られ、上側に配置した基板の表面及び下側に配置した基板の裏面には、ポリ尿素膜は見られなかった。
【0046】
上側に配置した基板の表面の状態から、基板を加熱することでポリ尿素膜を除去することができることが確認された。また、このように上側に配置した基板の表面ではポリ尿素膜が消失したことから、上側に配置した基板と下側に配置した基板との間においては、2枚の基板に挟まれているために加熱中にポリ尿素膜21が消失することは防がれたと考えられる。その理由については、解重合により生成されたモノマーの逃げ場がないため、解重合が抑えられているのではないかと推測される。従って既述のようにポリ尿素膜(保護層)の上に封止膜を形成することで、解重合が起こるはずの温度よりも高温であっても、保護層が消失しないことが裏付けられている。
【0047】
[評価試験3]
一辺が6cmの正方形のシリコン基板の上に、膜厚が400nmのポリ尿素膜を成膜し、その後ポリ尿素膜を窒素ガス雰囲気で5分間加熱した。加熱温度は、150℃から450℃までの温度を50度刻みで設定した。加熱処理(アニール)後のポリ尿素膜の膜厚を測定したところ、
図23に示す結果が得られた。この結果からポリ尿素膜は250℃であれば解重合しないが、300℃になると解重合が大幅に進み、350℃では完全に消失することが分かる。
【0048】
[評価試験4]
一辺が6cmの正方形のシリコン基板を4個用意し、各シリコン基板の上に、膜厚が400nmのポリ尿素膜を成膜した。3つの基板にはポリ尿素膜の上に夫々膜厚が10nm、30nm、70nmであるポリイミド膜を成膜した。残り1つの基板にはポリイミド膜を成膜しなかった。これら4個の試料を窒素ガス雰囲気にて300℃で5分間加熱処理をし、その後、赤外吸収分光法(IR)により吸収スペクトルを測定した。測定結果を
図24に示す。
図24中、(1)はポリイミド膜を成膜していない基板、(2)はポリイミド膜を10nmの膜厚で成膜した基板、(3)はポリイミド膜を30nmの膜厚で成膜した基板、(4)はポリイミド膜を70nmの膜厚で成膜した基板に夫々相当する。吸収スペクトルにおいてCH結合等の波数の位置については既に評価試験1の項目にて説明していることから、
図24についての同様の説明は省略する。
【0049】
この結果から、封止膜であるポリイミド膜の厚さが10nm、30nmの場合には、ポリイミド膜を成膜しない場合よりもポリ尿素膜の解重合の程度は多少小さいが、かなり解重合が進んでいることが分かる。これに対してポリイミド膜の厚さが70nmの場合には、ポリ尿素膜の解重合は起こっていないことが分かる。
【0050】
[評価試験5]
評価試験4にて用いた試料と同様の4種類の試料を作成した。即ち、ポリ尿素膜の上に封止膜を形成しない試料と、ポリ尿素膜の上に膜厚が夫々10nm、30nm、70nmであるポリイミド膜を成膜した3種類の試料と、を作成した。そして各試料について加熱温度を250℃、275℃、300℃、325℃の4通りに設定して、各加熱温度にて5分間加熱処理を行った。
これら試料について、赤外吸収分光法により吸収スペクトルを測定し、ポリ尿素膜の骨格に相当するCH結合に対応するピーク値を求めた。そして加熱処理前のピーク値に対する加熱処理後のピーク値の割合を求め、加熱処理温度毎にピーク値の割合をプロットして
図25のグラフを得た。
図25において、PIはポリイミド膜の略称である。なおピーク値の割合を便宜上、結合残存率と呼ぶことにする。
【0051】
また加熱温度が300℃である試料については、尿素結合に対応するC=O結合のピーク値についても求めた。そしてCH結合のピーク値及びC=O結合のピーク値の各々について、加熱処理前のピーク値に対する加熱処理後のピーク値の割合を求め、ポリイミド膜の厚さとピーク値の割合との関係を求めた。結果は
図26に示すとおりである。
【0052】
これらの結果からポリ尿素膜の上にポリイミド膜を成膜した場合、上述の例ではポリイミド膜が70nmであるときには、300℃に加熱しても解重合しないことが分かる。このためポリイミド膜は、ポリ尿素膜に対して解重合を抑えることのできる封止膜として有効であることが分かる。
【0053】
[評価試験6]
ポリイミド膜を積層していないポリ尿素膜単体について、膜厚と耐熱性との関係を調べた。シリコン基板にポリ尿素膜を夫々280nm、360nm、3000nmの膜厚で成膜し、各試料について加熱温度を変えて、5分間の熱処理を行い、加熱処理前後にて夫々基板上の膜について赤外吸収分光法により吸収スペクトルを測定した。
CH結合について、各試料における加熱処理前のピーク値に対する加熱処理後のピーク値の割合(CH結合残存率)を求め、各ポリ尿素の膜厚ごとにCH結合残存率と、加熱温度との関係を求めた。結果は
図27に示すとおりである。また加熱温度が300℃の場合において、ポリ尿素膜の膜厚とCH結合及びC=O結合の各残存率を求めた。結果は
図28に示すとおりである。
この結果から、ポリ尿素膜の膜厚を厚くしても、耐熱性の向上は期待できないことがわかった。