(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔実施形態1〕
以下、本発明を適用した画像形成装置の一つ目の実施形態(以下、「実施形態1」と呼ぶ)について説明する。実施形態1及び後述する実施形態2では、電子写真方式の複写機(以下、単に「複写機1」という。)として、カラー画像形成装置を例に挙げて説明するが、本発明は、公知のモノクロ画像形成装置についても同様に適用することができる。
【0008】
図1は、実施形態1の画像形成装置である複写機1の全体の概略構成図であり、
図2は、複写機1の全体の斜視説明図である。
図1に示すように、複写機1本体の画像形成部110には、四つの作像装置2(2a、2b、2c及び2d)、中間転写装置E、二次転写装置F、用紙搬送装置G、定着装置H及びトナー補給装置J等を備えている。また、画像形成部110の
図1中の下方には、記録媒体である用紙Pを収容する記録媒体収納容器である給紙トレイ40を備える記録媒体収納部である給紙装置111を備え、画像形成部110の
図1中の右方には両面装置113を備える。さらに、画像形成部110の
図1中の上方には画像読取装置114を備え、画像形成部110と画像読取装置114との間に胴内排紙部112を形成する。また、画像形成部110内の各部材は、外装カバー10内に収容されている。
【0009】
四つの作像装置2(2a、2b、2c及び2d)は、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色のトナーを用いて異なる単色画像を形成するものである。それぞれの作像装置2は、回転可能に支持するドラム状の潜像担持体である感光体12を備え、複写機1の画像形成部110では、四つの感光体12をタンデム式に並べて備える。個々の作像装置2には、感光体12の周りに、帯電手段である帯電装置13、現像手段である現像装置14、一次転写手段である一次転写ローラ15、潜像担持体クリーニング手段である感光体クリーニング装置16、除電手段である除電装置17を配置している。
【0010】
さらに、画像形成部110内の四つの作像装置2(2a、2b、2c及び2d)の下方には、個々の感光体12の表面上を各々別々に露光する潜像形成手段である共通の露光装置18が設けられている。
図1では、イエロー用作像装置2aについてのみ、作像装置2を構成する各部材の符号を付しているが、マゼンタ用作像装置2b、シアン用作像装置2c及びブラック用作像装置2dでも同様の構成を備える。
露光装置18は、光源やレンズ等の光学部品を備え、光源が照射したレーザ光を光学部品によって感光体12の表面に向けて照射し、感光体12の表面を光学的に走査し、光書き込みを行うものである。
【0011】
中間転写装置Eは、個々の作像装置2(2a、2b、2c及び2d)で形成された各色のトナー像が一次転写ローラ15によってそれぞれ一次転写されて担持する、ベルト状の一次転写像担持体である中間転写ベルト20を備える。中間転写装置Eでは、三つの支持ローラである中間転写ベルト第一支持ローラ21、中間転写ベルト第二支持ローラ22及び中間転写ベルト第三支持ローラ23に中間転写ベルト20を掛け回している。また、中間転写ベルト20を、それぞれの感光体12に接触させ、感光体12とそれに対応するそれぞれの一次転写ローラ15との間に中間転写ベルト20を通している。さらに、中間転写ベルト20の周りに、中間転写ベルトクリーニング装置24と、二次転写手段である二次転写ローラ25とを配置している。
【0012】
二次転写装置Fは、両面印刷の際に、中間転写ベルト20に担持されたトナー像を二次転写ローラ25によって二次転写されて担持するベルト状の二次転写像担持体である二次転写ベルト30を備える。二次転写装置Fでは、三つの支持ローラである二次転写ベルト第一支持ローラ31、二次転写ベルト第二支持ローラ32及び二次転写ベルト第三支持ローラ33に二次転写ベルト30を掛け回している。また、二次転写ベルト30を、中間転写ベルト20に接触させ、中間転写ベルト20と二次転写ローラ25との間に通して、中間転写ベルト20と二次転写ベルト30との間で所定の二次転写ニップを形成している。さらに、二次転写ベルト30の周りに、二次転写ベルトクリーニング装置35と、二次転写ベルト30に担持された裏面用の画像を用紙Pに転写する裏面画像転写装置36とを配置している。
【0013】
給紙装置111は、給紙トレイ40と、給紙トレイ40内の用紙Pを送り出す給紙ローラ41とを上下に二段備える構成であり、二つの給紙トレイ40のそれぞれに用紙Pを収納する。給紙ローラ41は二段の給紙トレイ40のそれぞれから用紙Pを上から一枚ずつ送り出す。
記録媒体搬送手段である用紙搬送装置Gは、給紙装置111から給紙された用紙Pが、中間転写装置Eと二次転写装置Fとの間を通過して
図1中の下方から上方へと伸びる記録媒体搬送路である用紙搬送路を通過するように用紙Pを搬送するものである。用紙搬送装置Gは、給紙ガイド42、レジストローラ対43、排紙ガイド44及び排紙ローラ対45(45a、45b)等を備えている。
【0014】
給紙ガイド42は、給紙ローラ41によって送り出された用紙Pをレジストローラ対43の二つのローラによって形成されるレジストニップに向けて案内する。レジストローラ対43は、給紙ガイド42によって案内され搬送されてくる用紙Pの先端をレジストニップに突き当てて止め、用紙Pの傾きを補正する。その後、中間転写ベルト20及び二次転写ベルト30の表面上の画像とタイミングを取って、用紙Pを二次転写ニップに向けて送り出す。
【0015】
排紙ガイド44は定着装置Hで画像が定着された後の用紙Pを排紙口51(51aまたは51b)に向けて案内する。排紙口51(51a、51b)に配置された排紙ローラ対45(45a、45b)は、排紙ガイド44で案内されて搬送されてきた用紙Pを胴内排紙部112に向けて
図1中の矢印a(a1またはa2)方向の外装カバー10の外部に向けて排紙する。
図1に示すように、排紙口51は下部排紙口51aと上部排紙口51bとの二箇所あり、それぞれに下部排紙ローラ対45aと上部排紙ローラ対45bとが設けられている。
【0016】
定着装置Hは、中間転写ベルト20及び二次転写ベルト30から用紙Pに転写されたトナー像を用紙Pに定着するものであり、トナー像が担持された用紙Pを加熱・圧着し、トナー像を用紙Pに定着するものである。定着装置Hは、一対の加熱ローラからなる定着ローラ対47を備えている。
トナー補給装置Jは、四つの作像装置2(2a、2b、2c及び2d)のそれぞれに粉体ポンプ等を用いて新規トナーを補給するものである。トナー補給装置Jのトナー収納部52内には各色のトナーをそれぞれ収容するトナーカートリッジ53(53a、53b、53c及び53d)を備えている。
複写機1には、定着装置Hの周辺の空気の排出量を調整することにより、定着装置Hの温度調整を行う定着排気手段としての排気システム100が設けられている。
【0017】
複写機1で、用紙Pの表裏両面にカラー画像を形成するときは、画像読取装置114のコンタクトガラス上に原稿をセットし、操作表示部115にあるスタートスイッチを押す。すると、感光体12、中間転写ベルト20の支持ローラの一つ(21、22または23)、二次転写ベルト30の支持ローラの一つ(31、32または33)、給紙ローラ41などが、それぞれタイミングを取って回転する。
四つの作像装置2(2a、2b、2c及び2d)では、個々の感光体12が
図1中の時計回り方向に回転するのに伴い、それぞれの帯電装置13で感光体12の表面を一様に帯電する。そして、共通の露光装置18からの個別の書き込み光で感光体12に書き込みを行って、色別の潜像を形成し、それぞれの現像装置14で各色のトナーを感光体12の表面上付着させ、個々の感光体12上にそれぞれ色別のトナー像を形成する。
【0018】
中間転写装置Eでは、中間転写ベルト20の支持ローラの一つ(21、22または23)が駆動回転するとともに、他の二つの支持ローラが従動回転し、中間転写ベルト20を感光体12に同期させて
図1中の反時計回り方向に回転移動する。中間転写ベルト20を挟んで感光体12と対向する一次転写ローラ15のそれぞれに一次転写バイアスを印加し、それぞれの感光体12の表面上のトナー像を中間転写ベルト20に順次転写する。これにより、中間転写ベルト20の表面上に四色のトナー像を重ね合わせた第一のフルカラー画像(裏面用の画像)を形成する。
【0019】
中間転写ベルト20にトナー像を転写した後の四つの作像装置2(2a、2b、2c及び2d)の感光体12は、表面上に残留した転写残トナーを感光体クリーニング装置16によって除去され、表面上の電位を除電装置17によって除電される。その後、再び、それぞれの帯電装置13で帯電して露光装置18で潜像の書き込みを行い、それぞれの現像装置14で現像して個々の感光体12上にそれぞれ再度色別のトナー像が形成される。
【0020】
二次転写装置Fでは、二次転写ベルト30の支持ローラの一つ(31、32または33)が駆動回転するとともに、他の二つの支持ローラが従動回転し、二次転写ベルト30を中間転写ベルト20に同期させて
図1中の時計回り方向に回転移動する。二次転写ニップでは、二次転写ベルト30を挟んで中間転写ベルト20と対向する二次転写ローラ25に二次転写バイアスを印加し、中間転写ベルと20の表面上のトナー像を二次転写ベルト30に転写する。このとき、二次転写ベルトクリーニング装置35は、クリーニング装置支持軸56を中心に回動して二次転写ベルト30から離れた、非クリーニング状態にある。
【0021】
中間転写装置Eでは、二次転写ベルト30に第一のフルカラー画像を転写した後の中間転写ベルト20の表面上に残留した転写残トナーを、中間転写ベルトクリーニング装置24で静電的に除去する。その後、再び中間転写ベルト20の表面上に個々の一次転写ローラ15によって個の感光体12の表面上のトナーを順次転写し、中間転写ベルト20の表面上に四色のトナー像を重ね合わせた第二のフルカラー画像(おもて面用の画像)を形成する。
【0022】
第二のフルカラー画像を形成する各色のトナー像が転写された後の四つの作像装置2(2a、2b、2c及び2d)の感光体12は、表面上に残留した転写残トナーを感光体クリーニング装置16によって除去される。そして、表面上の電位を除電装置17によって除電され、次の作像サイクルに備える。
【0023】
一方、給紙装置111では、二つの給紙ローラ41のうちの一つを適宜選択的に回転して、給紙トレイ40内の用紙Pを送り出す。用紙搬送装置Gでは、給紙装置111から送り出された用紙Pを給紙ガイド42で案内し、用紙Pの先端をレジストローラ対43のレジストニップに突き当てて止める。そして、上述した第一のフルカラー画像及び第二のフルカラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ対43を回転し、中間転写ベルト20と二次転写ベルト30との間である二次転写ニップに用紙Pを送り込む。
【0024】
二次転写ニップでは、用紙Pの裏面側に位置する二次転写ローラ25に二転写バイアスが印加されることで、中間転写ベルト20の表面上の上述した第二のフルカラー画像を用紙Pのおもて面に転写する。
次に、用紙Pを若干上方へと搬送した裏面画像転写装置36と二次転写ベルト30との対向部では、裏面画像転写装置36によって裏面画像転写バイアスを印加する。これによって、二次転写ベルト30の表面上の上述した第一のフルカラー画像を用紙Pの裏面に転写する。
その後、表裏両面にトナー像が転写された後の用紙Pを定着装置Hへと導き、定着ローラ対47によって形成される定着ニップを通過させて、熱と圧力とを加えて両面の転写画像を用紙Pに定着する。その後、排紙ガイド44で用紙Pを案内し、排紙ガイド44によって形成される用紙搬送路の途中に配置された経路切換爪によって搬送先を適宜振り分ける。そして、下部または上部の一方の排紙ローラ対45によって排紙口51から外装カバー10の外に用紙Pを排出し、胴内排紙部112のスタック部50上に表面を下にしてフェイスダウンでスタックする。
【0025】
中間転写装置Eでは、第二のフルカラー画像を用紙Pに転写した後の中間転写ベルト20の表面上に残留した転写残トナーを、中間転写ベルトクリーニング装置24で除去する。
また、二次転写装置Fでは、第一のフルカラー画像を用紙Pに転写した後の二次転写ベルト30の表面上に残留した転写残トナーを、二次転写ベルトクリーニング装置35で除去する。このとき、中間転写ベルト20から第一のフルカラー画像が転写される際に非クリーニング状態にあった二次転写ベルトクリーニング装置35を、クリーニング装置支持軸56を中心に回動して二次転写ベルト30に接触させてクリーニング状態としておく。
中間転写ベルト20及び二次転写ベルト30の表面上の転写残トナーを除去し、それぞれ次の画像担持に備える。
【0026】
画像形成を続けることにより、個々の現像装置14内のトナーがなくなったときには、トナー補給装置Jのトナー収納部52における、現像装置14に対応するトナーカートリッジ53から粉体ポンプ等で搬送して同色のトナーを補給する。また、ジャムにより用紙Pの搬送が妨げられたときには、両面装置113を、両面装置支持軸55を中心として
図1中の矢印d方向に開き、用紙搬送路を開放してジャム処理を行う。
【0027】
図1に示す複写機1で、用紙Pの片面にフルカラー画像を形成するときは、四つの作像装置2(2a、2b、2c及び2d)のそれぞれの感光体12の表面上に形成したトナー像を中間転写ベルト20の表面上に転写してフルカラー画像を形成する。次に、そのフルカラー画像を二次転写装置Fの二次転写ベルト30に転写することなく用紙搬送装置Gで搬送する用紙Pの片面に転写する。そして、定着装置Hで転写画像を用紙Pに定着し、胴内排紙部112のスタック部50上に画像面を下にしてフェイスダウンでページ順に揃えてスタックする。
【0028】
また、
図1に示す複写機1で、用紙Pに二色画像やモノクロ画像を形成するときは、四つの作像装置2(2a、2b、2c及び2d)のうちの対応する色の作像装置2を用いてトナー像を形成する。そのトナー像を中間転写装置Eの中間転写ベルト20や二次転写装置Fの二次転写ベルト30を介して用紙Pに転写する。
【0029】
実施形態1の複写機1は、
図1及び
図2に示すように、胴内排紙部112は、排紙口51が設けられた壁面部を含む壁面部(排紙壁面部112a及び奥側壁面部112b)と天井部112cとに囲まれている。そして、胴内排紙部112は、装置本体の側面として、装置右側面(
図1中の右側の面)と装置正面(
図1中の手前側の面)との二面に開口部を有する空間となっている。
さらに、
図1及び
図2に示すように、胴内排紙部112における装置右側の開口部の上端を形成する部分に、天井部112cから下方に向けて突き出した排紙部上部仕切壁120を備える。開放された二面のうちの一面である装置右側の上部が、排紙部上部仕切壁120によって胴内排紙部112の天井部112cよりも低くなっている。
【0030】
実施形態1の複写機1は、胴内排紙部112の装置右側の開口部の上端の位置は排紙部上部仕切壁120の下端部となり、天井部112cよりも低くなっている。
これにより、排紙口51から排出された空気を滞留させる排気滞留部αを胴内排紙部112の上部に備える構成となっている。
このような排紙口51から排出された空気を滞留させる構成を備えることにより、排紙口51から排出される非常に微細な微粒子及び超微粒子が、複写機1の周囲に拡散することを抑制できる。
【0031】
海外、特に欧州において、環境への関心が非常に高く、電子写真プロセスを用いた複写機、複合機、プリンター等の画像形成装置においても、画像形成時に発生するVOC(揮発性有機化合物)、オゾン、ダスト、微粒子及び超微小粒子等に対する様々な認定基準が存在する。ドイツ政府の研究機関においては、「ブルーエンジェル」というエコラベル制度があり、認証を受けた製品及びサービスにのみラベルの使用を認められる。
【0032】
具体的には、画像形成装置から発生する5.6[nm]〜560[nm]の微粒子及び超微小粒子を粒子計測器FMPS(Fast Mobility Particle Sizer)で計測する。そして、上記範囲の微粒子及び超微小粒子の発生速度が、3.5×10
11[個/10分]より少ないことが求められている。このため、画像形成装置から発生する微粒子及び超微小粒子の拡散を抑制することが求められる。
【0033】
画像形成装置から発生する微粒子及び超微小粒子(以下、「FP/UFP」と示す)のほとんどは、シロキサンやパラフィン等の高沸点の物質であることが多く、定着時の熱エネルギーにより揮発したものである。
シロキサンは、定着ローラのシリコーンゴムやトナーのシリコーンオイルから蒸発して発生する。また、定着ベルトの摺動剤としてシリコーンオイルが使用されていたり、ウエブクリーニングにシリコーンオイルが使用されていたりすれば、シロキサンが発生し得る。パラフィンはトナーに含有しているワックス及びトナー中の不純物が蒸発して発生する。
【0034】
これらの高沸点の物質が揮発して発生したガスが試験チャンバー内の空気で冷却され、凝結して微粒子化したものが画像形成装置から発生するFP/UFPの主成分である。
画像形成装置からFP/UFPとして排出されるこれらの物質の重量は、多くても数[μg/10min]である。
【0035】
上述のように、画像形成装置から発生するFP/UFPは、ガスとして揮発したものが、凝集して微粒子化したものである。凝集を活発に生じさせ、FP/UFPを構成する粒子の大きさを大きくさせていくと、粒径の大きい粒子の割合が増加する。
ブルーエンジェルにおけるFP/UFPの基準ではFP/UFPの数を規定している。このため、FP/UFPの総発生量(総重量)が同じであっても、FP/UFPの大きさが大きくなれば、ブルーエンジェルにおけるFP/UFP(個数)は少なくなる。例えば、FP/UFPの粒径が2倍になれば、FP/UFPの数は1/8となる。
粒子の粒径が大きくなることで、画像形成装置の表面や画像形成装置の周辺の床面等に付着したときの付着力が大きくなり、画像形成装置から排出された微粒子が周辺環境に拡散することを抑制することが可能となる。
【0036】
特許文献1には、画像形成装置で発生する微粒子の原因物質の一つであるパラフィンが揮発する定着ローラ付近に遮蔽板を設け、揮発したパラフィンをマシン内部に滞留させ、発生する発生する微粒子の粒径を大きくする構成が記載されている。発生する粒子を大きくし、定着装置で発生した微粒子が定着装置外へ拡散することを抑制する構成が記載されている。
しかしながら、微粒子の粒径が大きくなるにはある程度の時間がかかる。このため、特許文献1の画像形成装置で微粒子が定着装置外に拡散することを抑制できる理由は、発生した微粒子を大きくさせることによるというよりも、抑制部材によって発生した微粒子を定着装置外に排出させないことによると考えられる。
【0037】
特許文献1の画像形成装置では、抑制部材によって定着装置近傍の空気が外部に排出されることを抑制できる。しかし、定着装置は高温の熱源であるため、画像形成の生産性が高い画像形成装置では、高温になった定着装置近傍の空気を装置外へ排出しないと、定着装置周辺の温度が高くなり過ぎ不具合が発生してしまう。
【0038】
定着装置周辺の温度が高温となることを防止する構成として、定着装置近傍の空気を排気する機構を設けている画像形成装置がある。排気を行う場合、排気した分の空気を定着装置に供給する必要があるが、外気を直接取り込むと、定着装置の温度が下がりすぎる可能性がある。このため、定着装置より離れた場所から外気を吸気あるいは、画像形成装置の隙間から吸気し、画像形成装置内を通過してきた空気が供給されることが多い。また、定着装置周辺の空気を排気する構成では、排気口からの微粒子の排出量が多くなるおそれがある。特許文献2には、排出経路に設けたフィルタによって微粒子を捕集し、画像形成装置外への微粒子の拡散を防止する構成が記載されている。
【0039】
微粒子が排出される場所として、画像形成を行った記録媒体の排紙口がある。電子写真方式での画像形成は、定着が最後となるため、定着装置は排紙口に近いところにある。また、定着装置は熱源であるため、現像、転写等の作像部の温度上昇を防止するため、定着装置は画像形成装置の比較的上部の排紙口に近いところにある。そのため、画像形成を行った記録媒体を排紙口から排紙する際に伴う気流により、排紙口からFP/UFPを含んだ空気が排出されてしまうことが分かった。
【0040】
画像形成中に発生するFP/UFPのうち、排紙口から排出されるFP/UFPの割合は多くはない。これは以下の理由による。
すなわち、画層形成中、定着装置は常に加熱されるため、定着装置周辺の温度は上昇する。このとき、定着装置周辺の温度が上がり過ぎないよう、通常は定着装置周辺の空気を排気口から画像形成装置の機外に排気する。FP/UFPとなる物質は定着時の熱により、定着装置を構成する部材やトナーから揮発するが、定着装置周辺の温度上昇を抑えるための排気の流れとともに、排気口から機外に出て行く。このため、画像形成中に記録媒体とともに排紙口から排出されるFP/UFPの割合は多くはない。
【0041】
しかし、画像形成のジョブが終了した時点で、定着装置への電力供給は停止するため、定着装置を冷却する必要はなくなり、定着装置周辺の空気の排気は停止あるいは、排気のスピードを徐々に落として最終的に停止させる。
このとき、まだ高温の状態のFP/UFPを含んだ空気は上昇していき、排紙口から装置外部の排紙部に漏れ出てしまう。排紙部が胴内排紙部の場合は、FP/UFPを含んだ空気は胴内排紙部内を上昇しながら、最終的には画像形成装置外の空気に拡散されてしまう。
「FP/UFPを含んだ空気」とは、気化したFP/UFPの原因物質が固化して安定なFP/UFPとして空気中に含まれる状態のみではなく、FP/UFPの原因物質が気化した状態で空気中に含まれる状態も含むものである。
【0042】
排紙口より漏れ出た空気は外気によって急激に冷却される。FP/UFPを含んだ空気が急激に冷却されると、微小なFP/UFPの核ができ、それが安定となるため、粒径の小さなFP/UFPが多数発生してしまい、場合によっては、画像形成時に機外に排出されるFP/UFPの数よりも多くなる場合がある。一方、FP/UFPを含んだ空気がゆっくり冷却されると、FP/UFPの核に、FP/UFPの素となる物質が結合していくため、径の大きなFP/UFPができ、FP/UFPの数が少なくなる。
【0043】
本発明者らは、FP/UFPの排出箇所を調査する過程で、FP/UFPの排出のメカニズムに気づき、画像形成後に胴内排紙部から外部に漏れ出るFP/UFPの抑制について検討を行った。
胴内排紙部の開口部(
図1及び
図2に示す複写機の装置正面の開口部及び装置右側面の開口部)を全て覆い、FP/UFPの発生量を調べたところ、画像形成後に胴内排紙部から装置の外部に漏れ出るFP/UFPの量を大幅に抑制することができることが分かった。これは、開口部の全てを覆うことで、排紙口から胴内排紙部に排出されたFP/UFPが、胴内排紙部から外部に出ることが出来なくなり、胴内排紙部を形成する壁部及び天井部や画像が形成され胴内排紙部に排紙される記録媒体に付着し、固定化されるためである。
【0044】
しかし、胴内排紙部の開口部を全て覆ってしまっては、画像形成を行った記録媒体をユーザーが取り出す際の利便性が大幅に低下する。また、画像形成した記録媒体が胴内排紙部にあるかどうかが分かり難くなる。このため、胴内排紙部の開口部を全て覆うと、ユーザーにとって使い難い画像形成装置となってしまう。
【0045】
図11は、従来の複写機1の胴内排紙部112の拡大説明図である。
図11に示す従来の複写機1は、排紙部上部仕切壁120を備えていない点で
図1及び
図2に示す実施形態1の複写機1と異なる。
図11に示す複写機1の胴内排紙部112は、画像形成を行った用紙をストックする底面であるスタック部50と、スキャナー等の画像読取装置114を保持するための天井部112cには開口部がない。さらに、画像形成を行った用紙Pが排紙される排紙壁面部112a、及び、
図11中の奥の面である奥側壁面部112bも、開口部がない。
【0046】
図11に示す複写機1では、画像形成を行った用紙をユーザーが取り出すために、装置正面と、画像形成を行った用紙が排紙される面(排紙壁面部112a)に対して胴内排紙部112を挟んで反対側の面である装置右側面は開放されている。すなわち、胴内排紙部112における装置正面側と装置右側とは、胴内排紙部112へのアクセスを妨げるものが何もない構成となっている。
【0047】
本発明者らが、画像形成を行った用紙をユーザーがどのように取り出すかを観察したところ、多くのユーザーが装置正面側の開口部から手を入れて取り出しており、装置右側の開口部から手を入れることはほとんどないことが分かった。
そのため、多くのユーザーが最も多く使用するA4の用紙のみに画像形成を行う場合には、
図11に示す複写機1の胴内排紙部112の装置右側を覆ってしまっても問題がない。
【0048】
しかし、画像形成装置の多くは、様々な大きさのシート材に画像形成を行うことができるように設計されている。そのため、
図11に示す複写機1で、画像形成可能な最大の用紙に画像形成を行った場合には、画像形成を行った画像形成可能な最大の用紙が、胴内排紙部112の装置右側の開口部から僅かにはみ出す場合がある。また、画像形成可能な最大の用紙は長いので、ユーザーが画像形成を行った用紙を取り出す際には、胴内排紙部112の装置右側の開口部からも手を入れて用紙を取り出そうとする。このため、
図11に示す複写機1の胴内排紙部112の装置右側の開口部を完全に塞ぐことは難しいことが分かった。
しかし、胴内排紙部112の装置右側の開口部の上部であれば、覆ってもユーザーが画像形成可能な最大の用紙を取り出すのに、ほとんど違和感を持たないことが分かった。
【0049】
図11に示す複写機1の胴内排紙部112の装置正面の側の開口部も上部であれば被うことも可能である。しかし、胴内排紙部112の装置右側の開口部よりも装置正面の側の開口部の方が、開口部の上部を覆う領域を少なくする必要があることが分かった。
【0050】
また、胴内排紙を行う画像形成装置には、FAX等の特定のチャンネルから要求された画像をストックするためのインナー排紙トレイを設けていることが多い。基本的にはオプションであるが、インナー排紙トレイを備える構成専用の画像形成装置を設計することは非効率であるため、インナー排紙トレイが設置できるように画像形成装置は設計されていることが多い。インナー排紙トレイへの用紙を排出する画像形成は、通常の画像形成に対して圧倒的に少ないため、インナー排紙トレイは胴内排紙部112の上部に設置されている。インナー排紙トレイへ排出する用紙への画像出力は、非常に少なく、ほとんどの場合がA4であり、画像形成可能な最大の紙を用いることはほとんどない。
【0051】
本発明者らが、胴内排紙部112内に漏れ出すFP/UFPの挙動の解析を行ったところ、胴内排紙部112に漏れ出したFP/UFPを含む空気は温度が高く軽いため、胴内排紙部112内で上昇することが分かった。そして、胴内排紙部112内におけるFP/UFPの濃度が上昇していき、FP/UFPの結合が起き、排紙口51から排出された直後よりも単位体積当たりの空気に含まれるFP/UFPの数が減少することが分かった。
【0052】
FP/UFPの結合は、二つのFP/UFPが衝突して起き、その確率はFP/UFPの濃度の二条に比例するため、FP/UFPの濃度が一定以上になれば、FP/UFPの結合が顕著になり、FP/UFPの数が減少する。BAM(ドイツ連邦材料試験研究所)が認証したBAM認証試験チャンバー内の空気は、常に撹拌されている。このため、
図11に示す従来の複写機1のように、通常の胴内排紙部112を備える画像形成装置では、胴内排紙部112に漏れ出したFP/UFPは、結合することなくBAM認証試験チャンバー内へ放出されてしまう。これにより、FP/UFPの数が非常に多い状態となることが分かった。
【0053】
しかし、胴内排紙部112の上部にBAM認証試験チャンバーの風が当らない空間として排気滞留部αを設けておけば、胴内排紙部112に漏れ出したFP/UFPは排気滞留部αで滞留し、空気中のFP/UFPの濃度が高くなって結合する。これにより、FP/UFPの数が少なくなるとともに、結合したFP/UFPの多くが排気滞留部αを形成する壁等に付着し、BAM認証試験チャンバー内へのFP/UFPの流出が抑制されることが分かった。FP/UFPは胴内排紙部112における排気滞留部αを形成する壁等に付着するが、付着するFP/UFPの重量は極めて小さいため、胴内排紙部112の壁等に付着しても肉眼的にも、感触的にもほとんど感じることはできない。
【0054】
図11に示す従来の複写機1におけるFP/UFPの排出速度を計測しようとすると、BAM認証試験チャンバー内の風により、胴内排紙部112に漏れ出してきたFP/UFPは、
図11中の破線矢印で示すように、直ぐに機外に流れてしまう。このため、FP/UFPが結合することは難しくなる。
【0055】
図3は、
図1及び
図2に示す実施形態1の複写機1の胴内排紙部112の拡大説明図である。
図1乃至
図3に示すように、胴内排紙部112における装置右側の開口部の上端を形成する部分に、天井部112cから下方に向けて突き出した排紙部上部仕切壁120を備える。これにより、胴内排紙部112における装置右側の開口部の上端位置を、胴内排紙部112の天井である天井部112cよりも低くしている。
【0056】
排紙口51から排出される空気は、定着装置Hでの加熱により温度が高く、外気よりも比重が小さいため胴内排紙部112の天井部112cに向かう。天井部112cの近傍に到達した空気は天井部112cに沿って移動するが、装置右側の開口部の上端位置が、天井部112cよりも低いため、装置右側の開口部から外部に流出せず、天井部112cの近傍で滞留する。
【0057】
このような構成により、排紙口51から胴内排紙部112に漏れ出してきたFP/UFPは、
図3中の破線矢印で示すように、直ぐに機外に流出せず、胴内排紙部112の天井部112c付近に長く滞留する。そのため、胴内排紙部112の天井部112c付近の空気中のFP/UFPの濃度が高くなり、FP/UFPの結合が起こりFP/UFPの数が減少するとともに、FP/UFPを構成する粒子が大きくなる。
【0058】
図1乃至
図3に示す排紙部上部仕切壁120の下端部は、複写機1を正面から見たときの手前奥方向で一定となっており、胴内排紙部112における装置右側の開口部の上端の位置も複写機1の手前奥方向で一定となっている。しかし、排紙部上部仕切壁120の下端部を装置奥側ほど低くする構成としてもよい。このような構成では、胴内排紙部112における装置右側の開口部の上端の位置が、複写機1の奥側に行くほど低くなる。胴内排紙部112における装置右側の開口部の奥側は、ユーザーが画像形成をされた用紙を取り出す際にあまり影響がなく、かつ、奥側の開口部の上端の位置を低くすることにより、FP/UFPを含有する空気を滞留させ易くなるため好ましい構成である。
【0059】
胴内排紙部112における装置右側の開口部は、狭いほどFP/UFPの数の抑制効果は高いが、開口部を狭くし過ぎると、当然にユーザーが画像形成をされた用紙を取り出し難くなる。このため、胴内排紙部112の大きさ等を考慮しながら適宜、設定されるものである。胴内排紙部112の天井面の最も低い場所から排紙部上部仕切壁120の下端部までの長さ「L1」が、50[mm]以上、好ましくは60[mm]以上あると、ある程度のFP/UFPの低減の効果が生じる。
【0060】
胴内排紙部112の上部にFP/UFPを含有する空気を滞留させる排気滞留部αを備える実施形態1の複写機1では、胴内排紙部112の天井部112cは平面状であるが、FP/UFPを含む空気を滞留するための空間を天井部112cが形成する構成としてもよい。
図4及び
図5に、FP/UFPを含む空気を滞留するための空間を天井部112cが形成する複写機1の例を示す。
図4は、胴内排紙部112の天井部112cの全体が一つの曲面を形成する複写機1の概略構成図であり、
図5は、胴内排紙部112の天井部112cが部分的な凹部形状を備える複写機1の概略構成図である。
また、複写機1を正面から見たときの奥側ほど天井部112cの高さを高くするとFP/UFPを含む空気が排気滞留部αに滞留し易くなり、FP/UFPの低減効果の向上を図ることが出来る。
【0061】
図6は、胴内排紙部112における装置正面側の開口部の上端を形成する部分に、天井部112cから下方に向けて突き出した排紙部正面側上部仕切壁130を備える複写機1の概略構成図である。
図6に示すように、胴内排紙部112の装置正面側の開口部の上端を胴内排紙部112の天井部112cよりも低くすることにより、FP/UFPを含む空気が排気滞留部αに滞留し易くなり、FP/UFPの低減効果の向上を図ることが出来る。
【0062】
胴内排紙部112における装置正面側の開口部は、狭いほどFP/UFPの数の抑制効果は高いが、開口部を狭くし過ぎると、当然にユーザーが画像形成をされた用紙を取り出し難くなる。このため、胴内排紙部112の大きさ等を考慮しながら適宜、設定されるものである。胴内排紙部112の天井面の最も低い場所から排紙部正面側上部仕切壁130の下端部までの長さ「L2」が、40[mm]以上、好ましくは50[mm]以上あると、ある程度のFP/UFPの低減の効果が生じる。
【0063】
図7は、
図1に示す複写機1の胴内排紙部112にインナー排紙トレイ116を設置した状態の概略構成図である。インナー排紙トレイ116は、FAX等の特定のチャンネルからの画像形成を行った紙がストックされる。
上述したように、インナー排紙トレイ116は使用頻度が少ないため、胴内排紙部112の上部に配置されていることが多い。
図7に示すように、インナー排紙トレイ116は胴内排紙部112を上下に仕切る。そして、その上方にインナー排紙トレイ116でスタックする用紙Pを排出する上部排紙口51bが位置し、下方にスタック部50でスタックされる用紙Pを排出する下部排紙口51aが位置する。
【0064】
このような配置では、インナー排紙トレイ116に通気性がないと、次のような問題がある。すなわち、インナー排紙トレイ116よりも下方に位置する下部排紙口51aから漏れ出してきたFP/UFPを含む空気が胴内排紙部112の天井部112c付近の排気滞留部αに向けて上昇していくことができない。このため、
図7に示す複写機1では、インナー排紙トレイ116を上下に貫通するインナートレイ開口部116aを設け、インナー排紙トレイ116の通気性を確保している。インナー排紙トレイ116の通気性を確保する構成としては、インナー排紙トレイ116を格子状としてもよい。
【0065】
インナー排紙トレイ116における下部排紙口51aの側から100[mm]までのインナートレイ開口部116a等の穴部の面積率が、30[%]以上であることが望ましい。これにより、排紙壁面部112aに設けられた下部排紙口51aから排出される空気を効率よく通過させることが可能となり、下部排紙口51aから排出されるFP/UFPを含んだ空気を効率的に排気滞留部αに案内することが可能となる。
また、インナー排紙トレイ116の形状を工夫し、胴内排紙部112の奥側の面である奥側壁面部112bとインナー排紙トレイ116との間や、排紙口側の面である排紙壁面部112aとの間に空間を設ける形状としてもよい。このような形状にすることにより、下部排紙口51aから胴内排紙部112に漏れ出したFP/UFPを含む空気を、インナー排紙トレイ116の上方となる胴内排紙部112の上部の排気滞留部αに登りやすくすることが可能となる。
【0066】
〔実験例1〕
排気滞留部を備えない従来の画像形成装置と、排気滞留部を備える画像形成装置とでFP/UFPの発生速度を比較する実験を行った。
【0067】
〔比較例1〕
デジタルフルカラー複合機MPC5503(リコー製)を改造し、定着の設定温度を6[℃]高くした。この画像形成装置をドイツ環境ラベル「ブルーエンジェルマーク」の認証試験所に設置された5[m
3]チャンバーで、RAL−UZ 171に従い、FP/UFPの発生速度を測定した。その結果、4.4×10
11[個/10分]と、ブルーエンジェルマークの認定基準である3.5×10
11[個/10分]を上回った。
【0068】
〔実施例1〜実施例3〕
比較例1に用いた画像形成装置の胴内排紙部の画像形成を行った紙が排紙される面の対局の面(実施形態1の装置右側の開口部)の上部にアクリル板(実施形態1の排紙部上部仕切壁120)を設けて、開口の上部を塞いだ。
胴内排紙部の天井面からアクリル板の下端までの長さが、実施例1は30[mm]、実施例2は50[mm]、実施例3は70[mm]となるようにアクリル板を設置した。そして、各実施例について、上述した比較例1と同様の測定条件によってFP/UFPの発生速度を測定した。
【0069】
実施例1の測定結果は、4.3×10
11[個/10分]であり、ブルーエンジェルマークの認定基準よりも多くなったが、比較例1よりもFP/UFPの発生速度が減少傾向となった。
実施例2の測定結果は、3.5×10
11[個/10分]であり、実施例3の測定結果は、3.2×10
11[個/10分]であり、比較例1よりもFP/UFPの発生速度が減少し、さらに、ブルーエンジェルマークの認定基準を満たすものとなった。
【0070】
〔実施例4及び実施例5〕
実施例2及び実施例3の画像形成装置において、胴内排紙部の天井を幅50[mm]の枠を残し、天井の内側を30[mm]高くして、それぞれ実施例4及び実施例5とした。そして、各実施例について、上述した比較例1と同様の測定条件によってFP/UFPの発生速度を測定した。
【0071】
実施例4の測定結果は、3.1×10
11[個/10分]であり、実施例5の測定結果は、2.4×10
11[個/10分]であり、何れも比較例1よりもFP/UFPの発生速度が減少し、さらに、ブルーエンジェルマークの認定基準を満たすものとなった。
【0072】
〔実施例6〕
実施例5の画像形成装置において、胴内排紙部内に開口率が46[%]のインナー排紙トレイを設け、実施例6とし、上述した比較例1と同様の測定条件によってFP/UFPの発生速度を測定した。
実施例6の測定結果は、3.4×10
11[個/10分]であり、比較例1よりもFP/UFPの発生速度が減少し、さらに、ブルーエンジェルマークの認定基準を満たすものとなった。
【0073】
〔実施形態2〕
次に、本発明を適用した画像形成装置の二つ目の実施形態(以下、「実施形態2」と呼ぶ)について説明する。
図8は、実施形態2の画像形成装置である複写機1の全体の概略構成図である。実施形態2の複写機1は、イオン発生装置140を備える点で
図1に示す実施形態1の複写機1と異なり、他の点は共通する。共通する構成については説明を省略し、相違点について説明する。
【0074】
図8に示すように、実施形態2の複写機1は、胴内排紙部112内にイオンを供給するイオン供給手段であるイオン発生装置140を備える。胴内排紙部112にイオンを供給する構成を備えることにより、胴内排紙部112に漏れ出たFP/UFPが複写機1の周囲に拡散することを抑制できる。
【0075】
VOC(揮発性有機化合物)を除去する方法として、VOCにマイナスイオン照射してマイナスイオン化し、静電フィルタに吸着させて除去する電気集塵器が実用化されている。画像形成装置から発生するVOCの除去に、上記集塵システムを用いた画像形成装置が特許文献3に提案されている。静電フィルタは、ファイバーが帯電したVOCを引き寄せるため、ファイバーの密度を高くしなくても効率的にVOCを除去することができ、フィルタによる排気経路の圧力損失を抑えることができる。
【0076】
しかし、静電フィルタは非常に高価であり、画像形成装置のコスト削減が求められる中、積極的に使えるものではない。また、VOCだけではなく、FP/UFPに対してもある程度の抑制が期待できる。しかし、それは静電フィルタを用いた場合であり、フィルタを使用しない場合、あるいは静電フィルタ以外の安価なフィルタを使用した場合には、FP/UFPの発生速度はそれほど大きく低減することはなかった。
【0077】
FP/UFPの原因物質である環状シロキサン蒸気にα線やX線等の放射線を照射し、環状シロキサンをイオン化すると、環状シロキサンの結合が促進され、FP/UFPの粒径が大きくなることが知られている(Imaging Conference JAPAN 2015 Fall Meeting 論文集、p51等参照)。しかし、放射線は人体に対する影響が大きく、画像形成装置に用いることは極めて難しい。また、FP/UFPの個数は大きく減少するが、FP/UFPの体積(重量)は逆に大きく増加する。FP/UFPの体積(重量)が増加するのは、放射線のエネルギーが強すぎるため、単純に環状シロキサンが結合する以外の現象が生じている。
【0078】
特許文献4には、トルマリンイオン発生器を照射しながら画像形成を行う画像形成装置が開示されている。しかし、トルマリンイオン発生器はイオンの発生自体が極めて少なく、FP/UFPの抑制にはほとんど効果がない。
【0079】
特許文献5及び特許文献6には、空気清浄機やエアコンに用いられるイオン発生機が開示されている。このイオン発生器は非常に小型でありながら、イオンの発生量の多い優れたイオン発生機である。
【0080】
本発明者らは、FP/UFPをイオンによって粒径を大きくすることにより、FP/UFPの数を減少させることについて、鋭意検討を行った。FP/UFPは本来、結合しやすい性質があるが、結合するには時間がかり、BAMの試験時間の後半以降でようやく結合が始まることが分かった。イオンを照射すると、FP/UFPは帯電して活性となり、帯電していないFP/UFPと結合し易くなり、イオンの照射がない場合よりも早い段階でFP/UFPの結合が起こり始めることが分かった。
【0081】
本発明者らは、FP/UFPの結合が起こり始める要因について調査を行ったところ、FP/UFPの濃度が一定以上になると、結合が始まることが分かった。さらに、イオンを照射した場合には、FP/UFPが結合し始める濃度が、イオン照射のない場合に比べて、1/2〜1/4の濃度となることが分かった。
【0082】
図8に示すように、実施形態2の複写機1は、
図1に示す実施形態1の複写機1と同様に、胴内排紙部112の装置右側の開口部に排紙部上部仕切壁120を備え、胴内排紙部112の上部に排気滞留部αが形成されている。排紙口51から漏れ出るFP/UFPを含んだ空気が排気滞留部αに滞留し、排気滞留部αでFP/UFPの濃度が高くなって、FP/UFPの粒子同士の結合が促進され、FP/UFPの数が減少するとともに、FP/UFPを構成する粒子が大きくなる。これにより、排紙口51から空気とともに排出されたFP/UFPが複写機1の周辺環境に拡散することを抑制することが可能となる。
【0083】
さらに、実施形態2の複写機1は、胴内排紙部112内にイオンを供給するイオン発生装置140を備える。イオンを照射することで、FP/UFPの結合はさらに促進されFP/UFPの数を大幅に減少することが可能となり、FP/UFPが複写機1の周辺環境に拡散することを抑制する作用の向上を図ることができる。
【0084】
図4及び
図5に示す複写機1のように、FP/UFPを含む空気を滞留するための空間を天井部112cが形成する構成に、イオン発生装置140を設けることで、FP/UFPが複写機1の周辺環境に拡散することを抑制する作用の向上を図ることができる。
また、
図6に示す複写機1のように、排紙部正面側上部仕切壁130を備える構成に、イオン発生装置140を設けることで、FP/UFPが複写機1の周辺環境に拡散することを抑制する作用の向上を図ることができる。
【0085】
実施形態2の複写機1に設置するイオン発生装置140としては、上述した特許文献5や特許文献6に開示されているイオン発生装置が、小型でありながらイオンの発生量が多く、非常に好ましい。発生するイオンとして、マイナスイオン、プラスイオン、及び両方のイオンを用いることができる。
胴内排紙部112等の画像形成装置の排紙部におけるイオン発生装置の設置場所としては、空気中のFP/UFPの濃度が高くなる場所にイオンを供給することができる場所であれば、どこであっても構わない。通常、イオン発生装置から十〜数十[cm]の箇所が最もイオンの濃度が高いことを考慮して設置すると良い。
【0086】
図9は、
図8に示す複写機1の胴内排紙部112にインナー排紙トレイ116を設置した状態の概略構成図である。イオン発生装置140を備える点以外は、
図7に示す複写機1と同様の構成を備える。
【0087】
図10は、
図9に示す複写機1のインナー排紙トレイ116の上方の排紙口51である上部排紙口51bと天井部112cとの間にイオン発生装置140を追加した複写機1の概略構成図である。空気中のFP/UFPの濃度が高い胴内排紙部112の天井部112c付近の排気滞留部αの近くにイオン発生装置140を設けることにより、イオンによってFP/UFPを凝集させる効果の向上を図ることができる。
【0088】
〔実験例2〕
排気滞留部とイオン発生装置とを備えない従来の画像形成装置と、排気滞留部とイオン発生装置とを備える画像形成装置とでFP/UFPの発生速度を比較する実験を行った。
【0089】
〔比較例2〕
デジタルフルカラー複合機MPC5503(リコー製)を改造し、定着の設定温度を8[℃]高くした。この画像形成装置をドイツ環境ラベル「ブルーエンジェルマーク」の認証試験所に設置された5[m
3]チャンバーで、RAL−UZ 171に従い、FP/UFPの発生速度を測定した。その結果、5.1×10
11[個/10分]と、ブルーエンジェルマークの認定基準である3.5×10
11[個/10分]を上回った。
【0090】
〔実施例7〜実施例9〕
比較例2に用いた画像形成装置の胴内排紙部の画像形成を行った紙が排紙される面の対局の面(実施形態2の装置右側の開口部)の上部にアクリル板(実施形態2の排紙部上部仕切壁120)を設けて、開口の上部を塞いだ。さらに、胴内排紙部の排紙口のある面の手前奥方向の中央で、排紙口の25[mm]上方に、イオン発生装置としてイオナイザNHM306−01(村田制作所製)を設置し、水平方向よりも40[°]上方に向けてイオンが照射できるように設置した。
胴内排紙部の天井面からアクリル板の下端までの長さが、実施例7は30[mm]、実施例8は50[mm]、実施例9は70[mm]となるようにアクリル板を設置した。そして、各実施例について、上述した比較例2と同様の測定条件によってFP/UFPの発生速度を測定した。
【0091】
実施例7の測定結果は、3.6×10
11[個/10分]であり、ブルーエンジェルマークの認定基準よりも多くなったが、比較例2よりもFP/UFPの発生速度が減少傾向となった。
実施例8の測定結果は、3.0×10
11[個/10分]であり、実施例9の測定結果は、2.6×10
11[個/10分]であり、比較例2よりもFP/UFPの発生速度が減少し、さらに、ブルーエンジェルマークの認定基準を満たすものとなった。
【0092】
〔実施例10及び実施例11〕
実施例8及び実施例9の画像形成装置において、胴内排紙部の天井を幅50[mm]の枠を残し、天井の内側を30[mm]高くして、それぞれ実施例10及び実施例11とした。そして、各実施例について、上述した比較例2と同様の測定条件によってFP/UFPの発生速度を測定した。
【0093】
実施例10の測定結果は、3.1×10
11[個/10分]であり、実施例11の測定結果は、2.0×10
11[個/10分]であり、何れも比較例2よりもFP/UFPの発生速度が減少し、さらに、ブルーエンジェルマークの認定基準を満たすものとなった。
【0094】
〔実施例12〕
実施例11の画像形成装置において、胴内排紙部内に開口率が46[%]のインナー排紙トレイを設け、実施例12とし、上述した比較例2と同様の測定条件によってFP/UFPの発生速度を測定した。
実施例12の測定結果は、3.1×10
11[個/10分]であり、比較例2よりもFP/UFPの発生速度が減少し、さらに、ブルーエンジェルマークの認定基準を満たすものとなった。
【0095】
上述した実施形態では、画像形成装置である複写機1が画像を形成する記録媒体が用紙Pである場合について説明した。本発明に係る画像形成装置が画像を形成する記録媒体としては、普通紙、コート紙、ラベル紙、OHPシート及びフィルム等を含むものである。
【0096】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0097】
(態様A)
用紙P等の記録媒体に画像を形成する画像形成部110等の画像形成手段と、画像が形成された記録媒体に画像を加熱定着する定着装置H等の定着手段と、画像形成手段及び定着手段を収容する外装カバー10等の筐体と、画像形成手段で画像が形成された記録媒体を筐体から排出する排紙口51等の排出口と、排出口から排出される記録媒体を収容する胴内排紙部112等の排出記録媒体収容部とを備え、排出記録媒体収容部は、装置本体の側面に開口部(装置右側の開口部等)を有し、排出口が設けられた壁面部(排紙壁面部112a等)と天井部112c等の天井部とに囲まれた空間となっている複写機1等の画像形成装置において、開口部の少なくとも一部の上端位置(排紙部上部仕切壁120の下端位置等)が、天井部よりも低い構成である。
これによれば、上記実施形態1について説明したように、排出口から排出されたFP/UFP等の微粒子を含有する空気等の気体は、定着手段での加熱により温度が高く、外気よりも比重が小さいため、排出記録媒体収容部の天井部に向かう。天井部近傍に到達した気体は、天井部に沿って移動するが、開口部の上端位置が天井部よりも低いことにより、開口部から装置外部に流出することを妨げられ、天井部近傍に滞留する。このため、天井部近傍では気体に含まれる微粒子の濃度が高くなる。
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、微粒子は、気体中に含まれる濃度が高いほど、粒子同士が結合し易く、粒径が大きくなり、粒子の数が減少することを見出した。
このため、態様Aでは、気体中に含まれる微粒子の濃度が高くなる排出記録媒体収容部の天井部の近傍では、微粒子の粒子同士の結合を促すことが出来、排出口から排出された気体に含有されていた微粒子の粒径を大きくすることができる。
排出された微粒子の粒径が大きくなることで、個々の粒子が気流の影響を受け難くなって気体に含有された状態を維持し難くなり、排出記録媒体収容部を形成する画像形成装置の壁面や画像形成装置の周辺の床面等の物体の表面に微粒子が付着し易くなる。また、微粒子が物体に付着したときの物体に対する微粒子の付着力は、粒径が大きいほど大きくなり付着した状態のままとなり易くなる。排出口から排出された気体に含有される微粒子が、物体に付着し易くなり、さらに、付着したときには付着した状態のままとなり易いため、排出口から気体とともに排出された微粒子が画像形成装置の周辺環境に拡散することを抑制することが可能となる。
【0098】
(態様B)
態様AまたはCにおいて、胴内排紙部112等の排出記録媒体収容部内にイオンを供給するイオン発生装置140等のイオン供給手段を備える。
これによれば、上記実施形態2について説明したように、イオンを供給することで、FP/UFP等の微粒子の結合はさらに促進され微粒子の数を大幅に減少することが可能となる。これにより、微粒子が複写機1等の画像形成装置の周辺環境に拡散することを抑制する作用の向上を図ることができる。
【0099】
(態様C)
態様AまたはBの何れかの態様において、胴内排紙部112等の排出記録媒体収容部における開口した側面の少なくとも一つの側面の開口(装置右側の開口部等)の上端の位置(排紙部上部仕切壁120の下端)が、天井部112c等の天井部よりも40[mm]以上低い。
これによれば、上記実施形態1について説明したように、天井部近傍に空気等の気体を滞留させることができ、FP/UFP等の微粒子の低減効果を得ることができる。
【0100】
(態様D)
態様A乃至Cの何れかの態様において、胴内排紙部112等の排出記録媒体収容部に用紙P等の記録媒体を排出する排紙口51等の排出口を上下方向に複数備え、下部排紙口51a及び上部排紙口51b等の複数の排出口の排出記録媒体収容部内での排出先を上下で仕切り、上部排紙口51b等の上方の排出口から排出される記録媒体を上面で保持するインナー排紙トレイ116等の収容部内保持部材を備え、収容部内保持部材における排出口の側に上下に貫通するインナートレイ開口部116a等の穴部を備える。
これによれば、上記実施形態1について説明したように、収容部内保持部材の通気性を確保し、排出記録媒体収容部内に漏れ出したFP/UFP等の微粒子を効率的に結合させることができ、微粒子の数を低減させることができる。
【0101】
(態様E)
態様Dにおいて、インナー排紙トレイ116等の収容部内保持部材における排紙口51等の排出口の側から100[mm]までのインナートレイ開口部116a等の穴部の面積率が、30[%]以上である。
これによれば、上記実施形態1について説明したように、収容部内保持部材の下方に設けられた下部排紙口51a等の排出口から排出される空気を効率よく通過させることが可能となる。これにより、下方の排出口から排出されるFP/UFP等の微粒子を含んだ空気を効率的に収容部内保持部材よりも上方の排気滞留部に案内することが可能となる。よって、排出記録媒体収容部内に漏れ出した微粒子を効率的に結合させることができ、微粒子の数を低減させることができる。