(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記報知部は、前記吸収周波数と前記基準吸収周波数との前記差分が第1閾値以上の場合にはメンテナンスが必要である旨のメンテナンス情報を出力する請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0017】
[プラズマ処理装置の概要]
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を示す図である。
図1に示されるプラズマ処理装置1は、チャンバ本体12、及び、マイクロ波出力装置16(マイクロ波出力部の一例)を備えている。プラズマ処理装置1は、ステージ14、アンテナ18、及び、誘電体窓20を更に備え得る。
【0018】
チャンバ本体12は、その内部に処理空間Sを提供している。チャンバ本体12は、側壁12a及び底部12bを有している。側壁12aは、略筒形状に形成されている。この側壁12aの中心軸線は、鉛直方向に延びる軸線Zに略一致している。底部12bは、側壁12aの下端側に設けられている。底部12bには、排気用の排気孔12hが設けられている。また、側壁12aの上端部は開口している。
【0019】
側壁12aの上端部の上には誘電体窓20が設けられている。この誘電体窓20は、処理空間Sに対向する下面20aを有する。誘電体窓20は、側壁12aの上端部の開口を閉じている。この誘電体窓20と側壁12aの上端部との間にはOリング19が介在している。このOリング19により、チャンバ本体12の密閉がより確実なものとなる。
【0020】
ステージ14は、処理空間S内に収容されている。ステージ14は、鉛直方向において誘電体窓20と対面するように設けられている。また、ステージ14は、誘電体窓20と当該ステージ14との間に処理空間Sを挟むように設けられている。このステージ14は、その上に載置される被加工物WP(例えば、ウエハ)を支持するように構成されている。
【0021】
一実施形態において、ステージ14は、基台14a及び静電チャック14cを含んでいる。基台14aは、略円盤形状を有しており、アルミニウムといった導電性の材料から形成されている。基台14aの中心軸線は、軸線Zに略一致している。この基台14aは、筒状支持部48によって支持されている。筒状支持部48は、絶縁性の材料から形成されており、底部12bから垂直上方に延びている。筒状支持部48の外周には、導電性の筒状支持部50が設けられている。筒状支持部50は、筒状支持部48の外周に沿ってチャンバ本体12の底部12bから垂直上方に延びている。この筒状支持部50と側壁12aとの間には、環状の排気路51が形成されている。
【0022】
排気路51の上部には、バッフル板52が設けられている。バッフル板52は、環形状を有している。バッフル板52には、当該バッフル板52を板厚方向に貫通する複数の貫通孔が形成されている。このバッフル板52の下方には上述した排気孔12hが設けられている。排気孔12hには、排気管54を介して排気装置56が接続されている。排気装置56は、自動圧力制御弁(APC:Automatic Pressure Control valve)と、ターボ分子ポンプといった真空ポンプとを有している。この排気装置56により、処理空間Sを所望の真空度まで減圧することができる。
【0023】
基台14aは、高周波電極を兼ねている。基台14aには、給電棒62及びマッチングユニット60を介して、RFバイアス用の高周波電源58が電気的に接続されている。高周波電源58は、被加工物WPに引き込むイオンのエネルギーを制御するのに適した一定の周波数、例えば、13.65MHzの高周波(以下適宜「バイアス用高周波」という)を、設定されたパワーで出力する。マッチングユニット60は、高周波電源58側のインピーダンスと、主に電極、プラズマ、チャンバ本体12といった負荷側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合器を収容している。この整合器の中には自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれている。
【0024】
基台14aの上面には、静電チャック14cが設けられている。静電チャック14cは、被加工物WPを静電吸着力で保持する。静電チャック14cは、電極14d、絶縁膜14e、及び、絶縁膜14fを含んでおり、概ね円盤形状を有している。静電チャック14cの中心軸線は軸線Zに略一致している。この静電チャック14cの電極14dは、導電膜によって構成されており、絶縁膜14eと絶縁膜14fの間に設けられている。電極14dには、直流電源64がスイッチ66及び被覆線68を介して電気的に接続されている。静電チャック14cは、直流電源64より印加される直流電圧により発生するクーロン力によって、被加工物WPを吸着保持することができる。また、基台14a上には、フォーカスリング14bが設けられている。フォーカスリング14bは、被加工物WP及び静電チャック14cを囲むように配置される。
【0025】
基台14aの内部には、冷媒室14gが設けられている。冷媒室14gは、例えば、軸線Zを中心に延在するように形成されている。この冷媒室14gには、チラーユニットからの冷媒が配管70を介して供給される。冷媒室14gに供給された冷媒は、配管72を介してチラーユニットに戻される。この冷媒の温度がチラーユニットによって制御されることにより、静電チャック14cの温度、ひいては被加工物WPの温度が制御される。
【0026】
また、ステージ14には、ガス供給ライン74が形成されている。このガス供給ライン74は、伝熱ガス、例えば、Heガスを、静電チャック14cの上面と被加工物WPの裏面との間に供給するために設けられている。
【0027】
マイクロ波出力装置16は、チャンバ本体12内に供給される処理ガスを励起させるためのマイクロ波を出力する。マイクロ波出力装置16は、マイクロ波の周波数、パワー、及び、帯域幅を可変に調整するよう構成されている。マイクロ波出力装置16は、設定パワーに応じたパワーを有するマイクロ波を、設定周波数範囲で周波数変調させながら発生することができる。周波数変調とは、時間に応じて周波数を変更させることである。周波数変調されたマイクロ波については後述する。一例において、マイクロ波出力装置16は、マイクロ波のパワーを0W〜5000Wの範囲内で調整することができ、マイクロ波の周波数を2400MHz〜2500MHzの範囲内で調整することでき、マイクロ波の帯域幅を0MHz〜100MHzの範囲で調整することができる。
【0028】
プラズマ処理装置1は、導波管21、チューナ26、モード変換器27、及び、同軸導波管28を更に備えている。マイクロ波出力装置16の出力部は、導波管21の一端に接続されている。導波管21の他端は、モード変換器27に接続されている。つまり、導波管21は、マイクロ波出力装置16によって出力されたマイクロ波を、後述するチャンバ本体12のアンテナ18へ導く管路として構成されている。導波管21は、例えば、矩形導波管である。導波管21には、チューナ26が設けられている。チューナ26は、一例として、可動板26a及び可動板26bを有している。可動板26a及び可動板26bの各々は、導波管21の内部空間に対するその突出量を調整可能なように構成されている。チューナ26は、基準位置に対する可動板26a及び可動板26bの各々の突出位置を調整することにより、マイクロ波出力装置16のインピーダンス(マイクロ波出力部側のインピーダンス)と負荷とを整合させる。例えば、チューナ26は、マイクロ波出力装置16のインピーダンスとチャンバ本体12のインピーダンス(アンテナ側のインピーダンス)とを整合するように可動板の位置を調整する。
【0029】
モード変換器27は、導波管21からのマイクロ波のモードを変換して、モード変換後のマイクロ波を同軸導波管28に供給する。同軸導波管28は、外側導体28a及び内側導体28bを含んでいる。外側導体28aは、略円筒形状を有しており、その中心軸線は軸線Zに略一致している。内側導体28bは、略円筒形状を有しており、外側導体28aの内側で延在している。内側導体28bの中心軸線は、軸線Zに略一致している。この同軸導波管28は、モード変換器27からのマイクロ波をアンテナ18に伝送する。
【0030】
アンテナ18は、誘電体窓20の下面20aの反対側の面20b上に設けられている。アンテナ18は、スロット板30、誘電体板32、及び、冷却ジャケット34を含んでいる。
【0031】
スロット板30は、誘電体窓20の面20b上に設けられている。このスロット板30は、導電性を有する金属から形成されており、略円盤形状を有している。スロット板30の中心軸線は軸線Zに略一致している。スロット板30には、複数のスロット孔30aが形成されている。複数のスロット孔30aは、一例においては、複数のスロット対を構成している。複数のスロット対の各々は、互いに交差する方向に延びる略長孔形状の二つのスロット孔30aを含んでいる。複数のスロット対は、軸線Z周りの一以上の同心円に沿って配列されている。また、スロット板30の中央部には、後述する導管36が通過可能な貫通孔30dが形成される。
【0032】
誘電体板32は、スロット板30上に設けられている。誘電体板32は、石英といった誘電体材料から形成されており、略円盤形状を有している。この誘電体板32の中心軸線は軸線Zに略一致している。冷却ジャケット34は、誘電体板32上に設けられている。誘電体板32は、冷却ジャケット34とスロット板30との間に設けられている。
【0033】
冷却ジャケット34の表面は、導電性を有する。冷却ジャケット34の内部には、流路34aが形成されている。この流路34aには、冷媒が供給されるようになっている。冷却ジャケット34の上部表面には、外側導体28aの下端が電気的に接続されている。また、内側導体28bの下端は、冷却ジャケット34及び誘電体板32の中央部分に形成された孔を通って、スロット板30に電気的に接続されている。
【0034】
同軸導波管28からのマイクロ波は、誘電体板32内を伝搬して、スロット板30の複数のスロット孔30aから誘電体窓20に供給される。誘電体窓20に供給されたマイクロ波は、処理空間Sに導入される。
【0035】
同軸導波管28の内側導体28bの内孔には、導管36が通っている。また、上述したように、スロット板30の中央部には、導管36が通過可能な貫通孔30dが形成されている。導管36は、内側導体28bの内孔を通って延在しており、ガス供給系38に接続されている。
【0036】
ガス供給系38は、被加工物WPを処理するための処理ガスを導管36に供給する。ガス供給系38は、ガス源38a、弁38b、及び、流量制御器38cを含み得る。ガス源38aは、処理ガスのガス源である。弁38bは、ガス源38aからの処理ガスの供給及び供給停止を切り替える。流量制御器38cは、例えば、マスフローコントローラであり、ガス源38aからの処理ガスの流量を調整する。
【0037】
プラズマ処理装置1は、インジェクタ41を更に備え得る。インジェクタ41は、導管36からのガスを誘電体窓20に形成された貫通孔20hに供給する。誘電体窓20の貫通孔20hに供給されたガスは、処理空間Sに供給される。そして、誘電体窓20から処理空間Sに導入されるマイクロ波によって、当該処理ガスが励起される。これにより、処理空間S内でプラズマが生成され、当該プラズマからのイオン及び/又はラジカルといった活性種により、被加工物WPが処理される。
【0038】
プラズマ処理装置1は、制御器100を更に備えている。制御器100は、プラズマ処理装置1の各部を統括制御する。制御器100は、CPUといったプロセッサ、ユーザインタフェース、及び、記憶部を備え得る。
【0039】
プロセッサは、記憶部に記憶されたプログラム及びプロセスレシピを実行することにより、マイクロ波出力装置16、ステージ14、ガス供給系38、排気装置56等の各部を統括制御する。
【0040】
ユーザインタフェースは、工程管理者がプラズマ処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボード又はタッチパネル、プラズマ処理装置1の稼働状況等を可視化して表示するディスプレイ等を含んでいる。
【0041】
記憶部には、プラズマ処理装置1で実行される各種処理をプロセッサの制御によって実現するための制御プログラム(ソフトウエア)、及び、処理条件データ等を含むプロセスレシピ等が保存されている。プロセッサは、ユーザインタフェースからの指示等、必要に応じて、各種の制御プログラムを記憶部から呼び出して実行する。このようなプロセッサの制御下で、プラズマ処理装置1において所望の処理が実行される。
【0042】
[マイクロ波出力装置16、チューナ26及び復調部29の構成例]
以下、マイクロ波出力装置16、チューナ26及び復調部29の詳細を説明する。
図2は、マイクロ波出力装置16、チューナ26及び復調部29の一例を示す図である。マイクロ波出力装置16は、マイクロ波発生部16a、導波管16b、サーキュレータ16c、導波管16d、導波管16e、第1の方向性結合器16f、第1の測定部16g、第2の方向性結合器16h、第2の測定部16i、及び、ダミーロード16jを有している。
【0043】
マイクロ波発生部16aは、波形発生部161、パワー制御部162、減衰器163、増幅器164、増幅器165、及び、モード変換器166を有している。
【0044】
波形発生部161は、マイクロ波を発生する。波形発生部161は、例えば、所定の周波数の範囲内において所定の速度(走査速度)で周波数を変更しながら、所定帯域幅を有するマイクロ波を発生する。一例として、波形発生部161は、制御器100によって指定される設定周波数範囲(例えば開始周波数及び終了周波数)、設定変調方式、設定帯域幅、及び、設定走査速度に応じて、マイクロ波を発生する。変調方式とは、周波数の変調方式であり、例えば周波数の時間依存性の波形を示す。波形の詳細は後述する。
【0045】
図3は、波形発生部におけるマイクロ波の生成原理を説明する図である。波形発生部161は、例えば、高周波発振器であるPLL(Phase Locked Loop)発振器と、PLL発振器に接続されたIQデジタル変調器とを有する。波形発生部161は、PLL発振器において発振されるマイクロ波の周波数を制御器100から指定された設定周波数範囲内の周波数に設定する。そして、波形発生部161は、PLL発振器からのマイクロ波と、当該PLL発振器からのマイクロ波とは90°の位相差を有するマイクロ波とを、IQデジタル変調器を用いて変調する。これにより、波形発生部161は、設定周波数範囲内の周波数のマイクロ波を生成する。波形発生部161は、PLL発振器において発振されるマイクロ波の周波数を制御器100から指定された設定走査速度で変更する。
【0046】
図3に示されるように、波形発生部161は、例えば、開始周波数から終了周波数までのN個の波形データを走査速度に応じて順次入力し、量子化及び逆フーリエ変換することにより、周波数変調されたマイクロ波を生成することが可能である。
【0047】
一例では、波形発生部161は、予めデジタル化された符号の列で表された波形データを有している。波形発生部161は、波形データを量子化し、量子化したデータに対して逆フーリエ変換を適用することにより、Iデータ(In−phaseデータ)とQデータ(Quadratureデータ)とを生成する。そして、波形発生部161は、Iデータ及びQデータの各々に、D/A(Digital/Analog)変換を適用して、二つのアナログ信号を得る。波形発生部161は、これらアナログ信号を、低周波成分のみを通過させるLPF(ローパスフィルタ)へ入力する。波形発生部161は、LPFから出力された二つのアナログ信号を、PLL発振器からのマイクロ波、PLL発振器からのマイクロ波とは90°の位相差を有するマイクロ波とそれぞれミキシングする。そして、波形発生部161は、ミキシングによって生成されたマイクロ波を合成する。これにより、波形発生部161は、周波数変調されたマイクロ波を生成する。
【0048】
波形発生部161は、上述したIQ変調を用いた波形発生部に限定されるものではなく、DDS(Direct Digital Synthesizer)及びVCO(Voltage Controlled Ocillator)を用いた波形発生部であってもよい。
【0049】
波形発生部161は、繰り返し周期の波形を有する波形データを入力する。
図4は、波形発生部161へ入力される波形データの一例である。
図4に示されるデータは、横軸が時間、縦軸が周波数の波形データであり、(A)三角波、(B)正弦波、(C)のこぎり波などの形状を有する。波形データは、時間t1から時間t2までを1周期とする繰り返し周期を有する。波形データの形状は、制御器100によって変調方式として指定される。例えば、制御器100によって三角波の変調方式を指定された場合、波形発生部161は、(A)に示される三角波の波形データを用いてマイクロ波を発生する。
【0050】
図5は、周波数変調されたマイクロ波を説明する図である。
図5に示されるように、周波数変調されたマイクロ波においては、所定パワーの単波形が、時間(スキャン速度)に応じて周波数変更されている。
【0051】
図2に戻り、波形発生部161の出力は、減衰器163に接続されている。減衰器163には、パワー制御部162が接続されている。パワー制御部162は、例えば、プロセッサであり得る。パワー制御部162は、制御器100から指定された設定パワーに応じたパワーを有するマイクロ波がマイクロ波出力装置16から出力されるよう、減衰器163におけるマイクロ波の減衰率を制御する。減衰器163の出力は、増幅器164及び増幅器165を介してモード変換器166に接続されている。増幅器164及び増幅器165は、マイクロ波をそれぞれに所定の増幅率で増幅するようになっている。モード変換器166は、増幅器165から出力されるマイクロ波のモードを変換するようになっている。このモード変換器166におけるモード変換によって生成されたマイクロ波は、マイクロ波発生部16aの出力マイクロ波として出力される。
【0052】
マイクロ波発生部16aの出力は導波管16bの一端に接続されている。導波管16bの他端は、サーキュレータ16cの第1ポート261に接続されている。サーキュレータ16cは、第1ポート261、第2ポート262、及び、第3ポート263を有している。サーキュレータ16cは、第1ポート261に入力されたマイクロ波を第2ポート262から出力し、第2ポート262に入力したマイクロ波を第3ポート263から出力するように構成されている。サーキュレータ16cの第2ポート262には導波管16dの一端が接続されている。導波管16dの他端は、マイクロ波出力装置16の出力部16tである。
【0053】
サーキュレータ16cの第3ポート263には、導波管16eの一端が接続されている。導波管16eの他端はダミーロード16jに接続されている。ダミーロード16jは、導波管16eを伝搬するマイクロ波を受けて、当該マイクロ波を吸収するようになっている。ダミーロード16jは、例えば、マイクロ波を熱に変換する。
【0054】
第1の方向性結合器16fは、マイクロ波発生部16aから出力されて、出力部16tに伝搬するマイクロ波(即ち、進行波)の一部を分岐させて、当該進行波の一部を出力するように構成されている。第1の測定部16gは、第1の方向性結合器16fから出力された進行波の一部に基づき、出力部16tにおける進行波のパワーを示す第1の測定値を決定する。
【0055】
第2の方向性結合器16hは、出力部16tに戻されたマイクロ波(即ち、反射波)の一部を分岐させて、当該反射波の一部を出力するように構成されている。第2の測定部16iは、第2の方向性結合器16hから出力された反射波の一部に基づき、出力部16tにおける反射波のパワーを示す第2の測定値を決定する。
【0056】
第1の測定部16g及び第2の測定部16iはパワー制御部162に接続されている。第1の測定部16gは、第1の測定値をパワー制御部162に出力し、第2の測定部16iは、第2の測定値をパワー制御部162に出力する。パワー制御部162は、第1の測定値と第2の測定値の差、即ちロードパワーが、制御器100によって指定される設定パワーに一致するよう、減衰器163を制御し、必要に応じて波形発生部161を制御する。
【0057】
第1の方向性結合器16fは、導波管16bの一端と他端との間に設けられている。第2の方向性結合器16hは、導波管16eの一端と他端との間に設けられている。なお、第1の方向性結合器16fが導波管16dの一端と他端との間に設けられていてもよいし、第1の方向性結合器16f及び第2の方向性結合器16hの双方が導波管16dの一端と他端との間に設けられていてもよい。
【0058】
チューナ26は、導波管21に設けられる。チューナ26は、制御器100の信号に基づいて、マイクロ波出力装置16側のインピーダンスとアンテナ18側のインピーダンスとを整合するように可動板の突出位置を調整する。チューナ26は、図示しないドライバ回路及びアクチュエータにより、可動板を動作させる。なお、可動板の突出位置の調整はスタブ構造で実現してもよい。
【0059】
復調部29は、例えば導波管21におけるチューナ26とアンテナ18との間に設けられる。復調部29は、導波管21内を進行する進行波のパワーである進行波パワー、及び、アンテナ18側からの反射波のパワーである反射波パワーを周波数ごとに取得する。なお、復調部29は、導波管21におけるサーキュレータ16c(第2ポート262)とチューナ26との間に設けられてもよい。
【0060】
復調部29は、方向性結合器29a及び復調制御部29bを有する。方向性結合器29aは、4つのポートを有する双方向性結合器である。方向性結合器29aは、マイクロ波発生部16aから出力されて、導波管21内に伝搬するマイクロ波(即ち、進行波)の一部を分岐させて、当該進行波の一部を出力するように構成されている。同様に、方向性結合器29aは、モード変換器27から戻ってくるマイクロ波(即ち、反射波)の一部を分岐させて、当該反射波の一部を出力するように構成されている。
【0061】
復調制御部29bは、プロセッサ及びメモリを有する演算器である。復調制御部29bは、方向性結合器29aから出力された進行波の一部に基づき、方向性結合器29aにおける進行波パワーPfを測定する。同様に、復調制御部29bは、方向性結合器29aから出力された反射波の一部に基づき、方向性結合器29aにおける反射波パワーPrを測定する。
【0062】
以下では、復調制御部29bについて、2つの構成例を開示する。
【0063】
[第1例の復調制御部29b]
図6は、第1例の復調制御部29bの構成図である。第1例の復調制御部29bは、IQ復調を行う。
図4に示されるように、第1例の復調制御部29bは、減衰器301、RFスイッチ302、バンドパスフィルタ303、ミキサ304、PLL発振器305、周波数シフタ306、ミキサ307、ローパスフィルタ308,309、A/D変換器310,311、ミキサ312(FFT(Fast Fourier Transform)用)及びミキサ313(パラレル−シリアル変換用)を有している。
【0064】
減衰器301、RFスイッチ302、バンドパスフィルタ303、ミキサ304、PLL発振器305、周波数シフタ306、ミキサ307、ローパスフィルタ308,309、A/D変換器310,311、ミキサ312,313は、第1のスペクトル解析部を構成している。第1のスペクトル解析部は、上述した進行波パワー又は反射波パワーにそれぞれ相当するデジタル値Pf(f),Pr(f)を算出する。
【0065】
減衰器301の入力には、方向性結合器29aから出力された進行波の一部又は反射波の一部が入力される。減衰器301によって減衰されたアナログ信号は、RFスイッチ302及びバンドパスフィルタ303によって所定の信号にフィルタリングされる。フィルタリングされた信号は、PLL発振器305からのマイクロ波と、周波数シフタ306により90°の位相差を与えられたマイクロ波とを用いてミキサ304,307によりミキシングされて、I信号及びQ信号に変調される。I信号及びQ信号は、それぞれローパスフィルタ308,309でフィルタイリングされ、A/D変換器310,311によってデジタル信号にそれぞれ変更される。デジタル変換されたI信号及びQ信号は、ミキサ312において離散高速フーリエ変換が行われ、ミキサ313においてパラレル−シリアル変換されたデジタル値Pf(f),Pr(f)が出力される。デジタル値Pf(f),Pr(f)は、周波数fと対応付けられた進行波パワーPf又は反射波パワーPrを表している。周波数と対応付けられた進行波パワー又は反射波パワーは、制御器100へ出力される。
【0066】
[第2例の復調制御部29b]
図7は、第2例の復調制御部29bの構成図である。第2例の復調制御部29bは、スーパーへテロダイン方式にて復調を行う。
図5に示されるように、第2例の復調制御部29bは、減衰器321、ローパスフィルタ322、ミキサ323、局部発振器324、周波数掃引コントローラ325、IFアンプ326(中間周波数増幅器)、IFフィルタ327(中間周波数フィルタ)、ログアンプ328、ダイオード329、キャパシタ330、バッファアンプ331、A/D変換器332、及び、第2の処理部333を有している。
【0067】
減衰器321、ローパスフィルタ322、ミキサ323、局部発振器324、周波数掃引コントローラ325、IFアンプ326、IFフィルタ327、ログアンプ328、ダイオード329、キャパシタ330、バッファアンプ331、及び、A/D変換器332は、第2のスペクトル解析部を構成している。第2のスペクトル解析部は、上述した進行波パワー又は反射波パワーにそれぞれ相当するデジタル値Pf(f),Pr(f)を算出する。
【0068】
減衰器321の入力には、方向性結合器29aから出力された進行波の一部又は反射波の一部が入力される。減衰器321によって減衰されたアナログ信号は、ローパスフィルタ322においてフィルタリングされる。ローパスフィルタ322においてフィルタリングされた信号は、ミキサ323に入力される。一方、局部発振器324は、減衰器321に入力される進行波の一部又は反射波の一部の帯域内における周波数成分を所定の周波数の信号に変換するために、周波数掃引コントローラ325による制御の下、発信する信号の周波数を変更する。ミキサ323は、ローパスフィルタ322からの信号と局部発振器324からの信号をミキシングすることにより、所定の周波数の信号を生成する。
【0069】
ミキサ323からの信号は、IFアンプ326によって増幅され、IFアンプ326によって増幅された信号は、IFフィルタ327においてフィルタリングされる。IFフィルタ327においてフィルタリングされた信号は、ログアンプ328において増幅される。ログアンプ328において増幅された信号は、ダイオード329による整流、キャパシタ330による平滑化、及び、バッファアンプ331による増幅によって、アナログ信号(電圧信号)へと変更される。そして、バッファアンプ331からのアナログ信号がA/D変換器332によってデジタル値Pf(f)又はデジタル値Pr(f)に変更される。これらのデジタル値は、進行波パワー又は反射波パワーを表している。第2のスペクトル解析部で算出されたデジタル値は第2の処理部333に入力される。
【0070】
第2の処理部333は、CPUといったプロセッサから構成されている。第2の処理部333には、記憶装置334が接続されている。一例において、記憶装置334には、周波数に関連付けて予め設定された第2の補正係数が記憶されている。複数の第2の補正係数は、デジタル値Pf(f)又はデジタル値Pr(f)を、進行波パワー又は反射波パワーに補正するための係数である。第2の処理部333は、周波数と対応付けられた進行波パワー又は反射波パワーを、制御器100へ出力する。
【0071】
なお、後述するように、吸収周波数を反射波パワーの最小値から算出する場合には、復調部29は、反射波パワーのみを取得する構成としてもよい。この場合、方向性結合器29aは、第2の方向性結合器16hのように反射波のみを分岐させる単方向性結合器であり、復調制御部29bは、反射波パワーPrのみを測定する。
【0072】
[進行波パワー及び反射波パワー]
以下では、波形発生部161から出力された進行波のパワー、マイクロ波発生部16aから出力された進行波のパワー、及び、復調部29において測定された進行波パワー及び反射波パワーの関係性について説明する。
【0073】
図8は、各構成要素における進行波パワー及び反射波パワーの一例である。
図8において、各グラフの横軸は周波数、縦軸はパワーである。(A)のグラフは、波形発生部161により出力された進行波(増幅前)のパワースペクトルの周波数依存性を示す。(A)のグラフに示されるように、波形発生部161から出力された進行波の進行波パワーPfaは一定値であり、開始周波数f0から終了周波数f1までの周波数範囲において図中矢印で示すように周波数変調される。なお、(A)のグラフは、スイープ平均で得られたグラフである。スイープ平均とは、正弦波の信号を用いて周波数を順次変更してスペクトルを得る手法である。
【0074】
(B)のグラフは、マイクロ波発生部16aにより出力された進行波(増幅後)のパワースペクトルの周波数依存性を示す。(B)のグラフに示されるように、マイクロ波発生部16aから出力された進行波の進行波パワーPfbは、増幅器164及び増幅器165などにより、波形発生部161から出力された進行波の進行波パワーPfaよりも増幅される。なお、(B)のグラフは、スイープ平均で得られたグラフである。(C)のグラフは、(B)のグラフと同様に、マイクロ波発生部16aにより出力された進行波(増幅後)のパワースペクトルの周波数依存性を示し、マックスホールド機能を用いて得られたグラフである。マックスホールド機能とは、最大値を保存してプロットする機能である。(C)に示されるように、マイクロ波発生部16aから出力された進行波の進行波パワーPfcの波形を得ることができる。
【0075】
(D)のグラフは、復調部29により得られた進行波のパワースペクトルの周波数依存性を示し、スイープ平均で得られた進行波パワーPfdのグラフであり、(E)のグラフは、復調部29により得られた進行波のパワースペクトルの周波数依存性を示し、マックスホールド機能を用いて得られた進行波パワーPfeのグラフである。
【0076】
(F)のグラフは、復調部29により得られた反射波のパワースペクトルの周波数依存性を示し、スイープ平均で得られた反射波パワーPraのグラフであり、(G)のグラフは、復調部29により得られた反射波のパワースペクトルの周波数依存性を示し、マックスホールド機能を用いて得られた反射波パワーPrbのグラフである。
【0077】
(C)のグラフで示された波形と(E)のグラフで示された波形とを比較すると、マイクロ波発生部16aにより出力された進行波は、復調部29にロスなく到達していることがわかる。また、(E)のグラフで示された波形と(G)のグラフで示された波形とを比較すると、マイクロ波の反射の程度を理解することができる。
【0078】
[復調部29における取得波形]
復調部29で取得される波形の詳細を説明する。
図9は、復調部29で取得された進行波パワーの一例である。
図9において、各グラフの横軸は周波数、縦軸はパワーである。
図9の(A)の複数のグラフに示されるように、周波数2400MHz〜2500MHzの周波数範囲において、周波数ごとに進行波パワーPf(n)(nは自然数)が取得される。(A)に示されるように、Pf(1)〜Pf(n)までのn個のパワースペクトルが周波数を変更して順次取得される。(B)のグラフは、Pf(1)〜Pf(n)までのn個のパワースペクトルをマージしたものである。(C)のグラフは、Pf(1)〜Pf(n)までのn個のパワースペクトルを、マックスホールド機能を用いてプロットしたものである。このように、復調部29は、周波数と進行波パワーPfとを関連付けて検出する。
【0079】
図10は、復調部29で取得された反射波パワーの一例である。
図10において、各グラフの横軸は周波数、縦軸はパワーである。
図10の(A)の複数のグラフに示されるように、周波数2400MHz〜2500MHzの周波数範囲において、周波数ごとに反射波パワーPr(n)(nは自然数)が取得される。Pr(1)〜Pr(n)までのn個のパワースペクトルが周波数を変更して順次取得される。(B)のグラフは、Pr(1)〜Pr(n)までのn個のパワースペクトルをマージしたものである。(C)のグラフは、Pr(1)〜Pr(n)までのn個のパワースペクトルを、マックスホールド機能を用いてプロットしたものである。このように、復調部29は、周波数と反射波パワーPrとを関連付けて検出する。
【0080】
[進行波パワー及び反射波パワーの校正]
図9,
図10で得られた波形は、復調部29を設けることによる影響を受けている。具体的には、パワーの波形は、復調部29の方向性結合器29aを配置したことによる影響と、復調制御部29bの復調回路の周波数特性の影響を受ける。
図11は、復調部29を設けることによる進行波パワー及び反射波パワーに与える影響を説明する図である。
図11において、各グラフの横軸は周波数、縦軸はパワーである。また、進行波の設定パワーは一定値(ここでは1500W)としている。(A)のグラフは、波形発生部161により出力された進行波(増幅前)のパワースペクトルの周波数依存性を示す。(B),(C)のグラフは、復調部29により得られた進行波のパワースペクトルの周波数依存性を示し、(B)のグラフではパワーをデシベル単位で示しており、(C)のグラフではパワーをワット単位で示している。(D),(E)のグラフは、復調部29により得られた反射波のパワースペクトルの周波数依存性を示し、(D)のグラフではパワーをデシベル単位で示しており、(E)のグラフではパワーをワット単位で示している。
【0081】
進行波パワーは、設定パワーが一定の場合、周波数に依存することなく平坦であることが求められ、一般的にワット換算で±1W程度の精度が求められる。(A)のグラフに示されるように、波形発生部161により出力された進行波の進行波パワーPfは、ほぼ2.0dBmであり、ほぼ一定である。(B)のグラフに示されるように、復調部29で測定された進行波パワーPfは、多少の変動が存在している。(C)のグラフに示されるように、進行波パワーPfをワット換算した場合には、設定パワー1500Wに対して1300W〜1700Wの範囲で変動していることがわかる。同様に、(D)のグラフに示されるように、復調部29で測定された反射波パワーPrは、多少の変動が存在している。(E)のグラフに示されるように、反射波パワーPrをワット換算した場合には、設定パワー1500Wに対して1300W〜1700Wの範囲で変動していることがわかる。
【0082】
図12は、進行波パワー及び反射波パワーのそれぞれのパワー比率及び補正係数を示すグラフである。(A)のグラフは、横軸が周波数、縦軸がパワー比率である。パワー比率は、
図11における(C)のグラフを、パワーが1500Wのときに100%となるように規格化したものである。(A)のグラフでは、進行波パワーのパワー比率Pfr(f)を破線で示し、反射波パワーのパワー比率Prr(f)を実線で示している。(B)のグラフは、横軸が周波数、縦軸が補正係数である。補正係数は、(A)で示すパワー比率に積算することにより100%となる係数である。(B)のグラフでは、進行波パワーのパワー比率Pfr(f)の補正係数kf(f)を破線で示し、反射波パワーのパワー比率Prr(f)の補正係数kr(f)を実線で示している。補正係数kf(f)は、パワー比率Pfr(f)の逆数である。同様に、補正係数kr(f)は、パワー比率Prr(f)の逆数である。このように、補正係数kf(f),kr(f)を用いることにより、進行波パワー及び反射波パワーの校正を行うことができる。
【0083】
図13は、補正係数の取得処理のフローチャートである。
図13に示されるフローチャートは、制御器100により実行され、例えば装置管理者の開始操作に応じて処理が開始される。また、フローチャートは、進行波及び反射波のそれぞれに対して実行される。以下では、進行波の進行波パワーの補正係数を算出する例を説明する。
【0084】
図13に示されるように、制御器100は、設定情報取得処理(S10)として、進行波パワーPfの波形及び周波数を取得する。制御器100は、例えば、装置管理者からユーザインタフェースを介して波形及び周波数を取得する。
【0085】
次に、制御器100は、設定処理(S12)として、変調方式、周波数範囲及びパワーを設定する。制御器100は、設定情報取得処理(S10)で取得された波形及び周波数から変調方式及び周波数範囲を決定し、決定された変調方式及び周波数範囲を波形発生部161へ出力する。制御器100は、所定のパワーをパワー制御部162へ出力する。
【0086】
次に、制御器100は、チューナポジション設定処理(S14)として、チューナ26を動作させる。制御器100は、インピーダンスが整合する位置にチューナ26の可動板26a及び可動板26bを移動させる。
【0087】
次に、制御器100は、モード設定処理(S16)として、進行波の補正係数を取得するモードへ設定する。制御器100は、復調部29に対して進行波を取得するように指令を出力する。次に、制御器100は、マイクロ波の発生処理(S18)として、マイクロ波発生部16aにマイクロ波を出力させる。
【0088】
マイクロ波が出力されると、復調部29は、測定処理(S20)として、進行波パワーPfの周波数依存性を取得する。復調部29は、例えば、
図11の(C)のグラフを取得する。
【0089】
次に、制御器100は、補正係数取得処理(S22)として、測定処理(S20)で得られた進行波パワーPfの周波数依存性に基づいて、補正係数kf(f)を取得する。制御器100は、例えば、
図12の(A)のグラフに示されるように、測定処理(S20)で得られた進行波パワーPfを設定パワーで規格化することによりパワー比率に変換し、周波数依存性のあるパワー比率Pfr(f)を得る。そして、制御器100は、パワー比率Pfr(f)の逆数を補正係数kf(f)とする。以上で
図13に示された補正係数の取得処理を終了する。
【0090】
反射波の反射波パワーPrの補正係数kr(f)を取得する処理は、進行波の進行波パワーPfの補正係数kf(f)を取得する例と同一であるため、説明を省略する。
【0091】
制御器100は、得られた補正係数kf(f),kr(f)を用いて、進行波パワーPf及び反射波パワーPrを補正する(校正処理)。以下では一例として、反射波パワーPrの校正処理について説明する。
図14は、進行波パワーに対する補正前後の反射波パワーの一例である。(A)のグラフは、横軸は周波数、縦軸はパワーであり、マイクロ波発生部16aにより出力された進行波(増幅後)のパワースペクトルの周波数依存性を示す(設定パワーは1500W)。このとき得られる反射波パワーのグラフが(B)である。(B)のグラフは、横軸は周波数、縦軸はパワーであり、復調部29により得られた反射波のパワースペクトルの周波数依存性を示す。
【0092】
制御器100は、(B)のグラフに示された反射波パワーに対して
図13の補正係数の取得処理で得られた補正係数kr(f)を積算する。これにより、(C)のグラフで示されるように、補正反射波パワーPr(補正Pr)を得ることができる。補正反射波パワーPrを用いることにより、補正前の反射波パワーPrを用いる場合と比べて、吸収周波数FPをより正確に算出することができる。吸収周波数FPとは、反射波パワーが最小値(極小値)となる周波数である。なお、(D)のグラフは、(C)のグラフを変換したものであり、横軸は周波数、縦軸は反射係数である。反射係数は、全反射を1として規格化したものである。校正処理を実行することにより、反射係数の精度も向上する。
【0093】
図15及び
図16は、反射係数の算出処理のフローチャートである。
図15に示されるフローチャートは、制御器100により実行され、例えば装置管理者の開始操作に応じて処理が開始される。
【0094】
図15に示されるように、制御器100は、設定処理(S30)として、変調方式、周波数範囲、パワー及び掃引速度を設定する。制御器100は、例えば装置管理者などによって予め設定された変調方式及び周波数範囲及び掃引速度を波形発生部161へ出力する。制御器100は、所定のパワーをパワー制御部162へ出力する。
【0095】
制御器100は、変調開始処理(S32)として、各構成要素に変調を開始する旨の信号を出力する。次に、制御器100は、回数設定処理(S34)として、平均回数nを1に設定する。そして、制御器100は、周波数設定処理(S36)として、周波数fを開始周波数fstaに設定する。そして、制御器100は、パワー取得処理(S37)として、各構成要素を動作させて、進行波パワーPf(f)及び反射波パワーPr(f)を取得する。続いて、制御器100は、補正処理(S38)として、パワー取得処理(S37)で取得された進行波パワーPf(f)及び反射波パワーPr(f)にそれぞれの補正係数を積算する。そして、制御器100は、終了判定(S40)として、現在の周波数fが終了周波数fsto以上であるか否かを判定する。制御器100は、現在の周波数fが終了周波数fsto以上でない場合、つまり、設定周波数範囲内である場合には、増加処理(S42)として、現在の周波数fに所定の周波数Δfを加算する。Δfは例えば0.1MHzを用いることができる。その後、制御器100は、パワー取得処理(S37)、補正処理(S38)及び終了判定(S40)を実行する。このように、制御器100は、現在の周波数が終了周波数fstoを超えるまで、増加処理(S42)、パワー取得処理(S37)及び補正処理(S38)を繰り返し実行する。つまり、制御器100は、設定周波数範囲内のΔf間隔のパワーを測定する。
【0096】
制御器100は、終了判定(S40)において現在の周波数fが終了周波数fsto以上である場合、終了判定(S44)として、現在の平均回数nが閾値よりも大きいか否かを判定する。閾値は、予め設定された値であり、例えばホワイトノイズを除去可能な回数が設定される。閾値として、例えば128回を設定することができる。制御器100は、現在の平均回数nが閾値よりも大きくない場合には、増加処理(S46)として、現在の平均回数nをインクリメントする(1回増加)。その後、制御器100は、周波数設定処理(S36)、パワー取得処理(S37)、補正処理(S38)、終了判定(S40)及び終了判定(S44)を実行する。このように、制御器100は、平均回数nが閾値となるまで、周波数設定処理(S36)、パワー取得処理(S37)、補正処理(S38)及び終了判定(S40)を繰り返し実行する。つまり、制御器100は、設定周波数範囲内のΔf間隔のパワー測定を、閾値で設定された回数実行する。
【0097】
制御器100は、終了判定(S44)において現在の平均回数nが閾値よりも大きい場合、
図16に示されるように、周波数設定処理(S48)として、周波数fを開始周波数fstaに設定する。この処理は、閾値回数分測定したデータを平均化するための前処理である。次に、制御器100は、回数設定処理(S50)として、平均回数nを1に設定する。この処理は、閾値回数分測定したデータを平均化するための前処理である。
【0098】
制御器100は、平均化処理(S52)として、閾値回数分測定したデータを平均化する。平均回数nかつ周波数fにおける進行波パワーをPf(n,f)、周波数fにおける平均化された進行波パワーをPfa(f),平均回数nかつ周波数fにおける反射パワーをPr(n,f)、周波数fにおける平均化された進行波パワーをPra(f)としたとき、制御器100は、例えば以下の数式を用いて、平均化する。
【数1】
【0099】
続いて、制御器100は、終了判定(S54)として、現在の平均回数nが閾値よりも大きいか否かを判定する。閾値は、終了判定(S44)で用いた閾値と同一の閾値が用いられる。制御器100は、現在の平均回数nが閾値よりも大きくない場合には、増加処理(S56)として、現在の平均回数nをインクリメントする(1回増加)。その後、制御器100は、平均化処理(S52)及び終了判定(S54)を実行する。このように、制御器100は、平均回数nが閾値となるまで、平均化処理(S52)を繰り返し実行する。つまり、制御器100は、取得されたデータの全てを用いて平均化するまで処理を繰り返す。
【0100】
終了判定(S54)において現在の平均回数nが閾値よりも大きい場合、所定の周波数の全てのデータを用いて平均化したことを意味する。このため、制御器100は、反射係数算出処理(S58)として、周波数fにおける反射係数Γ(f)を算出する。制御器100は、例えば以下の数式を用いて反射係数Γ(f)を算出する。
【数2】
【0101】
制御器100は、終了判定(S60)として、現在の周波数fが終了周波数fsto以上であるか否かを判定する。制御器100は、現在の周波数fが終了周波数fsto以上でない場合、つまり、設定周波数範囲内である場合には、増加処理(S62)として、現在の周波数fに所定の周波数Δfを加算する。Δfは例えば0.1MHzを用いることができる。その後、制御器100は、回数設定処理(S50)、平均化処理(S52)、終了判定(S54)、増加処理(S56)、反射係数算出処理(S58)及び終了判定(S60)を実行する。このように、制御器100は、現在の周波数が終了周波数fstoを超えるまで、回数設定処理(S50)、平均化処理(S52)、終了判定(S54)、増加処理(S56)及び反射係数算出処理(S58)を繰り返し実行する。つまり、制御器100は、設定周波数範囲内のΔf間隔のパワーを周波数毎にそれぞれ平均化する。
【0102】
制御器100は、終了判定(S40)において現在の周波数fが終了周波数fsto以上である場合、
図15,16に示される反射係数の取得処理を終了する。
【0103】
[制御器100の機能]
制御器100は、反射係数Γ(f)が極小点となる周波数である吸収周波数を算出する。制御器100は、吸収周波数の変化に基づいてメンテナンスの要否を判定したり、マイクロ波出力装置16の電源周波数を変更したりしてもよい。
【0104】
図17は、制御器100の機能ブロック図である。
図17に示されるように、制御器100は、算出部101、報知部102及び周波数設定部103を備える。
【0105】
算出部101は、進行波パワーPf(f)及び反射波パワーPr(f)に基づいて算出された周波数fごとの反射係数Γ(f)が極小点となる周波数fを吸収周波数として算出する。あるいは、算出部101は、反射波パワーPr(f)が極小点となる周波数を吸収周波数として算出してもよい。
【0106】
図18は、反射係数Γ(f)の極小点を説明する図である。図中の縦軸は反射係数、横軸は周波数である。開始周波数fstaと終了周波数fstoとの間が、極小値を求める周波数の有効範囲Xfである。図中では、P(2),P(4)で示す二つの極小点が存在する。極小点となる周波数が吸収周波数である。極小点の算出処理については後述する。
【0107】
図17に戻り、報知部102は、吸収周波数と予め取得された基準吸収周波数との差分に応じたメンテナンス情報を出力する。基準吸収周波数とは、吸収周波数を評価するために用いられる閾値であり、予め取得された吸収周波数である。マイクロ波を用いたプラズマ処理装置では、使用に応じて天板などが消耗し、吸収周波数が変化する。つまり、吸収周波数と予め取得された基準吸収周波数との差分が小さいほど、現在の装置状態が基準吸収周波数を取得した装置状態に近いことを意味する。また、吸収周波数と予め取得された基準吸収周波数との差分が大きいほど、現在の装置状態が基準吸収周波数を取得した装置状態に近くないことを意味する。メンテナンス情報とは、装置状態に関する情報、又はメンテナンスの要否を示す情報を含む。装置状態に関する情報とは、装置の正常状態又は異常状態を示す情報である。報知部102は、例えばディスプレイ、スピーカなどを通じて、映像、画像、音声などにより、メンテナンス情報を出力する。
【0108】
基準吸収周波数は、例えば、出荷時、メンテナンス後、クリーニング後などの基準時において予め取得される。この場合、報知部102は、吸収周波数と予め取得された基準吸収周波数との差分が小さいほど、出荷時、メンテナンス後、クリーニング後の正常な装置状態に近いと判定することができる。そして、報知部102は、吸収周波数と予め取得された基準吸収周波数との差分が第1閾値以上の場合には、現在の装置状態が正常な装置状態ではないと判定し、メンテナンスが必要である旨のメンテナンス情報を出力することができる。第1閾値は、吸収周波数と予め取得された基準吸収周波数との差分を判定するために予め設定された閾値である。
【0109】
なお、基準吸収周波数は、装置の異常時に取得されてもよい。この場合、報知部102は、吸収周波数と予め取得された基準吸収周波数との差分が閾値以下の場合には、現在の装置状態が正常な装置状態ではないと判定し、メンテナンスが必要である旨のメンテナンス情報を出力することができる。
【0110】
周波数設定部103は、吸収周波数とマイクロ波出力装置16の電源周波数との差分に応じて、プロセス処理に用いられるマイクロ波出力装置16の電源周波数を変更する。マイクロ波出力装置16は、電源周波数を可変に調整するよう構成されている。周波数設定部103は、マイクロ波出力装置16に対して、信号を出力することにより、電源周波数を制御する。周波数設定部103は、制御器100の記憶部に記憶されたレシピを参照し、プロセス処理中における電源周波数を設定する。例えば、周波数設定部103は、吸収周波数と電源周波数との差分が第2閾値以下の場合には電源周波数を所定の周波数だけ増加又は減少させる。第2閾値は、吸収周波数と予め取得された基準吸収周波数との差分を判定するために予め設定された閾値である。プラズマの吸収周波数がマイクロ波出力部の電源周波数に近づいた場合、プラズマが不安定になるおそれがある。周波数設定部103は、吸収周波数と電源周波数とが一致することを避けるように動作することで、プラズマが不安定になることを回避する。
【0111】
[極小点算出処理:反射係数]
図19及び
図20は、反射係数の極値算出処理のフローチャートである。
図19及び
図20に示されるフローチャートは、制御器100の算出部101により実行され、例えば装置管理者の開始操作に応じて処理が開始される。
【0112】
最初に、算出部101は、条件設定処理(S70)として、初期値の設定を行う。算出部101は、周波数f、吸収周波数FP及び暫定吸収周波数FTを、開始周波数fstaに設定する。また、算出部101は、反射係数の極値GP及び暫定極値GTを、開始周波数fstaの反射係数Γ(fsta)に設定する。さらに、算出部101は、nに1を設定する。
【0113】
次に、算出部101は、差分判定処理(S72)として、現在の周波数fにおける反射係数Γ(f)と反射係数の極値GPとの差分の絶対値が閾値ΔΓa以下であるか否かを判定する。数式で表すと以下のとおりとなる。
【数3】
閾値ΔΓaは、極値を判定するための所定の閾値であり、例えば0.05を用いることができる。
【0114】
算出部101は、差分判定処理(S72)において現在の周波数fにおける反射係数Γ(f)と反射係数の極値GPとの差分の絶対値が閾値ΔΓa以下である場合には、終了判定処理(S74)として、現在の周波数fが終了周波数fsto以上であるか否かを判定する。算出部101は、現在の周波数fが終了周波数fsto以上でない場合、つまり、設定周波数範囲内である場合には、増加処理(S76)として、現在の周波数fに所定の周波数Δfを加算する。Δfは例えば0.1MHzを用いることができる。算出部101は、増加処理(S76)実行後、差分判定処理(S72)を再度実行する。このように、算出部101は、終了判定(S74)を満たすまで、増加処理(S76)及び差分判定処理(S72)が繰り返し実行される。
【0115】
一方、算出部101は、差分判定処理(S72)において現在の周波数fにおける反射係数Γ(f)と反射係数の極値GPとの差分の絶対値が閾値ΔΓa以下でない場合には、
図20の減少判定処理(S80)へ移行する。
【0116】
算出部101は、減少判定処理(S80)として、現在の周波数fにおける反射係数Γ(f)と反射係数の極値GPとの差分が閾値−ΔΓaより小さいか否かを判定する。数式で表すと以下のとおりとなる。
【数4】
【0117】
算出部101は、減少判定処理(S80)において現在の周波数fにおける反射係数Γ(f)と反射係数の極値GPとの差分が閾値−ΔΓaより小さい場合には、暫定極小値判定処理(S82)へ移行する。
【0118】
算出部101は、暫定極小値判定処理(S82)として、現在の周波数fの反射係数Γ(f)が反射係数の暫定極値GTよりも小さいか否かを判定する。数式で表すと以下のとおりとなる。
【数5】
【0119】
算出部101は、暫定極小値判定処理(S82)において現在の周波数fの反射係数Γ(f)が反射係数の暫定極値GTよりも小さい場合、暫定極小値記憶処理(S84)へ移行する。算出部101は、暫定極小値記憶処理(S84)として、反射係数の暫定極値GTを、現在の周波数fの反射係数Γ(f)に設定するとともに、吸収周波数FTを現在の周波数fに設定する。
【0120】
算出部101は、暫定極小値判定処理(S82)において現在の周波数fの反射係数Γ(f)が反射係数の暫定極値GTよりも小さくない場合、又は、暫定極小値記憶処理(S84)が終了した場合、ノイズ判定処理(S86)として、反射係数の暫定極値GTと現在の周波数fの反射係数Γ(f)との差分が閾値ΔΓbより大きいか否かを判定する。数式で表すと以下のとおりとなる。
【数6】
閾値ΔΓbは、ノイズレベルであるか否かを判定するための所定の閾値であり、例えば0.02を用いることができる。
【0121】
算出部101は、ノイズ判定処理(S86)において反射係数の暫定極値GTと現在の周波数fの反射係数Γ(f)との差分が閾値ΔΓbより大きい場合、極小値記憶処理(S88)へ移行する。算出部101は、極小値記憶処理(S88)として、P(n)を“極小値”に設定するとともに、極値GP(n)に暫定極値GTを設定し、吸収周波数FP(n)に吸収周波数FTを設定する。
【0122】
続いて、算出部101は、更新処理(S100)として、極値GPに暫定極値GTを設定し、吸収周波数FPに吸収周波数FTを設定し、nにn+1を設定する。その後、算出部101は、
図19に記載の増加処理(S76)を実行する。増加処理(S76)以降の説明は前述のとおりである。
【0123】
同様に、算出部101は、ノイズ判定処理(S86)において反射係数の暫定極値GTと現在の周波数fの反射係数Γ(f)との差分が閾値ΔΓbより大きくない場合、
図19に記載の増加処理(S76)を実行する。増加処理(S76)以降の説明は前述のとおりである。
【0124】
また、算出部101は、上昇判定処理(S90)において現在の周波数fにおける反射係数Γ(f)と反射係数の極値GPとの差分が閾値ΔΓaより大きい場合には、暫定極大値判定処理(S92)へ移行する。
【0125】
算出部101は、暫定極大値判定処理(S92)として、現在の周波数fの反射係数Γ(f)が反射係数の暫定極値GTよりも大きいか否かを判定する。数式で表すと以下のとおりとなる。
【数7】
【0126】
算出部101は、暫定極大値判定処理(S92)において現在の周波数fの反射係数Γ(f)が反射係数の暫定極値GTよりも大きい場合、暫定極大値記憶処理(S94)へ移行する。算出部101は、暫定極大値記憶処理(S94)として、反射係数の暫定極値GTを、現在の周波数fの反射係数Γ(f)に設定するとともに、吸収周波数FTを現在の周波数fに設定する。
【0127】
算出部101は、暫定極小値判定処理(S92)において現在の周波数fの反射係数Γ(f)が反射係数の暫定極値GTよりも大きくない場合、又は、暫定極大値記憶処理(S94)が終了した場合、ノイズ判定処理(S96)として、反射係数の暫定極値GTと現在の周波数fの反射係数Γ(f)との差分が閾値−ΔΓbより大きいか否かを判定する。数式で表すと以下のとおりとなる。
【数8】
閾値−ΔΓbは、ノイズレベルであるか否かを判定するための所定の閾値であり、例えば−0.02を用いることができる。
【0128】
算出部101は、ノイズ判定処理(S96)において反射係数の暫定極値GTと現在の周波数fの反射係数Γ(f)との差分が閾値−ΔΓbより大きい場合、極大値記憶処理(S98)へ移行する。算出部101は、極大値記憶処理(S98)として、P(n)を“極大値”に設定するとともに、極値GP(n)に暫定極値GTを設定し、吸収周波数FP(n)に吸収周波数FTを設定する。
【0129】
続いて、算出部101は、更新処理(S100)として、極値GPに暫定極値GTを設定し、吸収周波数FPに吸収周波数FTを設定し、nにn+1を設定する。その後、算出部101は、
図19に記載の増加処理(S76)を実行する。増加処理(S76)以降の説明は前述のとおりである。
【0130】
同様に、算出部101は、上昇判定処理(S90)において現在の周波数fにおける反射係数Γ(f)と反射係数の極値GPとの差分が閾値ΔΓaより大きくない場合、
図19に記載の増加処理(S76)を実行する。増加処理(S76)以降の説明は前述のとおりである。
【0131】
同様に、算出部101は、ノイズ判定処理(S96)において反射係数の暫定極値GTと現在の周波数fの反射係数Γ(f)との差分が閾値−ΔΓbより大きくない場合、
図19に記載の増加処理(S76)を実行する。増加処理(S76)以降の説明は前述のとおりである。
【0132】
算出部101は、
図19に記載の終了判定(S74)において現在の周波数fが終了周波数fsto以上である場合、
図19,20に示される極値の取得処理を終了する。
【0133】
以上、
図19,20に示される極値の取得処理によって、反射係数の極大値、極小値が取得される。
【0134】
[極小点算出処理:反射波パワー]
図21及び
図22は、反射波パワーの極値算出処理のフローチャートである。
図21及び
図22に示されるフローチャートは、制御器100の算出部101により実行され、例えば装置管理者の開始操作に応じて処理が開始される。
【0135】
最初に、算出部101は、条件設定処理(S170)として、初期値の設定を行う。算出部101は、周波数f、吸収周波数FP及び暫定吸収周波数FTを、開始周波数fstaに設定する。また、算出部101は、反射波パワーの極値RP及び暫定極値RTを、開始周波数fstaの反射波パワーPr(fsta)に設定する。さらに、算出部101は、nに1を設定する。
【0136】
次に、算出部101は、差分判定処理(1S72)として、現在の周波数fにおける反射波パワーPr(f)と反射波パワーの極値RPとの差分の絶対値が閾値ΔPa以下であるか否かを判定する。数式で表すと以下のとおりとなる。
【数9】
閾値ΔPaは、極値を判定するための所定の閾値であり、例えば5dBを用いることができる。
【0137】
算出部101は、差分判定処理(S172)において現在の周波数fにおける反射波パワーPr(f)と反射波パワーの極値RPとの差分の絶対値が閾値ΔPa以下である場合には、終了判定処理(S174)として、現在の周波数fが終了周波数fsto以上であるか否かを判定する。算出部101は、現在の周波数fが終了周波数fsto以上でない場合、つまり、設定周波数範囲内である場合には、増加処理(S176)として、現在の周波数fに所定の周波数Δfを加算する。Δfは例えば0.1MHzを用いることができる。算出部101は、増加処理(S176)実行後、差分判定処理(S172)を再度実行する。このように、算出部101は、終了判定(S174)を満たすまで、増加処理(S176)及び差分判定処理(S172)が繰り返し実行される。
【0138】
一方、算出部101は、差分判定処理(S172)において現在の周波数fにおける反射波パワーPr(f)と反射波パワーの極値RPとの差分の絶対値が閾値ΔPa以下でない場合には、
図22の減少判定処理(S180)へ移行する。
【0139】
算出部101は、減少判定処理(S180)として、現在の周波数fにおける反射波パワーPr(f)と反射波パワーの極値RPとの差分が閾値−ΔPaより小さいか否かを判定する。数式で表すと以下のとおりとなる。
【数10】
【0140】
算出部101は、減少判定処理(S180)において現在の周波数fにおける反射波パワーPr(f)と反射波パワーの極値RPとの差分が閾値−ΔPaより小さい場合には、暫定極小値判定処理(S182)へ移行する。
【0141】
算出部101は、暫定極小値判定処理(S182)として、現在の周波数fの反射波パワーPr(f)が反射波パワーの暫定極値RTよりも小さいか否かを判定する。数式で表すと以下のとおりとなる。
【数11】
【0142】
算出部101は、暫定極小値判定処理(S182)において現在の周波数fの反射波パワーPr(f)が反射波パワーの暫定極値RTよりも小さい場合、暫定極小値記憶処理(S184)へ移行する。算出部101は、暫定極小値記憶処理(S184)として、反射波パワーの暫定極値RTを、現在の周波数fの反射波パワーPr(f)に設定するとともに、吸収周波数FTを現在の周波数fに設定する。
【0143】
算出部101は、暫定極小値判定処理(S182)において現在の周波数fの反射波パワーPr(f)が反射波パワーの暫定極値RTよりも小さくない場合、又は、暫定極小値記憶処理(S184)が終了した場合、ノイズ判定処理(S186)として、反射波パワーの暫定極値RTと現在の周波数fの反射波パワーPr(f)との差分が閾値ΔPbより大きいか否かを判定する。数式で表すと以下のとおりとなる。
【数12】
閾値ΔPbは、ノイズレベルであるか否かを判定するための所定の閾値であり、例えば2dBを用いることができる。
【0144】
算出部101は、ノイズ判定処理(S186)において反射波パワーの暫定極値RTと現在の周波数fの反射波パワーPr(f)との差分が閾値ΔPbより大きい場合、極小値記憶処理(S188)へ移行する。算出部101は、極小値記憶処理(S188)として、P(n)を“極小値”に設定するとともに、極値RP(n)に暫定極値RTを設定し、吸収周波数FP(n)に吸収周波数FTを設定する。
【0145】
続いて、算出部101は、更新処理(S1100)として、極値RPに暫定極値RTを設定し、吸収周波数FPに吸収周波数FTを設定し、nにn+1を設定する。その後、算出部101は、
図21に記載の増加処理(S176)を実行する。増加処理(S176)以降の説明は前述のとおりである。
【0146】
同様に、算出部101は、ノイズ判定処理(S186)において反射波パワーの暫定極値RTと現在の周波数fの反射波パワーPr(f)との差分が閾値ΔPbより大きくない場合、
図21に記載の増加処理(S176)を実行する。増加処理(S176)以降の説明は前述のとおりである。
【0147】
また、算出部101は、上昇判定処理(S190)において現在の周波数fにおける反射波パワーPr(f)と反射波パワーの極値RPとの差分が閾値ΔPaより大きい場合には、暫定極大値判定処理(S192)へ移行する。
【0148】
算出部101は、暫定極大値判定処理(S192)として、現在の周波数fの反射波パワーPr(f)が反射波パワーの暫定極値RTよりも大きいか否かを判定する。数式で表すと以下のとおりとなる。
【数13】
【0149】
算出部101は、暫定極大値判定処理(S192)において現在の周波数fの反射波パワーPr(f)が反射波パワーの暫定極値RTよりも大きい場合、暫定極大値記憶処理(S194)へ移行する。算出部101は、暫定極大値記憶処理(S194)として、反射波パワーの暫定極値RTを、現在の周波数fの反射波パワーPr(f)に設定するとともに、吸収周波数FTを現在の周波数fに設定する。
【0150】
算出部101は、暫定極小値判定処理(S192)において現在の周波数fの反射波パワーPr(f)が反射波パワーの暫定極値RTよりも大きくない場合、又は、暫定極大値記憶処理(S194)が終了した場合、ノイズ判定処理(S196)として、反射波パワーの暫定極値RTと現在の周波数fの反射波パワーPr(f)との差分が閾値−ΔPbより大きいか否かを判定する。数式で表すと以下のとおりとなる。
【数14】
閾値−ΔPbは、ノイズレベルであるか否かを判定するための所定の閾値であり、例えば−2dBを用いることができる。
【0151】
算出部101は、ノイズ判定処理(S196)において反射波パワーの暫定極値RTと現在の周波数fの反射波パワーPr(f)との差分が閾値−ΔPbより大きい場合、極大値記憶処理(S198)へ移行する。算出部101は、極大値記憶処理(S198)として、P(n)を“極大値”に設定するとともに、極値RP(n)に暫定極値RTを設定し、吸収周波数FP(n)に吸収周波数FTを設定する。
【0152】
続いて、算出部101は、更新処理(S1100)として、極値RPに暫定極値RTを設定し、吸収周波数FPに吸収周波数FTを設定し、nにn+1を設定する。その後、算出部101は、
図21に記載の増加処理(S176)を実行する。増加処理(S176)以降の説明は前述のとおりである。
【0153】
同様に、算出部101は、上昇判定処理(S190)において現在の周波数fにおける反射波パワーPr(f)と反射波パワーの極値RPとの差分が閾値ΔPaより大きくない場合、
図21に記載の増加処理(S176)を実行する。増加処理(S176)以降の説明は前述のとおりである。
【0154】
同様に、算出部101は、ノイズ判定処理(S196)において反射波パワーの暫定極値RTと現在の周波数fの反射波パワーPr(f)との差分が閾値−ΔPbより大きくない場合、
図21に記載の増加処理(S176)を実行する。増加処理(S176)以降の説明は前述のとおりである。
【0155】
算出部101は、
図21に記載の終了判定(S174)において現在の周波数fが終了周波数fsto以上である場合、
図21,22に示される極値の取得処理を終了する。
【0156】
以上、
図21,22に示される極値の取得処理によって、反射波パワーの極大値、極小値が取得される。
【0157】
[基準吸収周波数(初期吸収周波数)の記憶処理]
次に、吸収周波数の初期値を記憶する処理を説明する。
図23は、基準吸収周波数(初期吸収周波数)の記憶処理のフローチャートである。
図23に示されるフローチャートは、制御器100により実行され、例えばメンテナンス実行後において、装置管理者の開始操作に応じて処理が開始される。
【0158】
制御器100は、モード設定処理(S202)として、初期データを記憶するモードに装置を設定する。例えば、制御器100は、初期データの記憶領域を確保し、装置構成要素が動作可能なようにオンラインにし、復調部が初期データを取得するモードとなるように設定する。
【0159】
次に、制御器100は、設定処理(S204)として、変調方式、周波数範囲、パワー、掃引速度を設定する。そして、制御器100は、プロセス条件設定処理(S206)として、予め記憶部に記憶されたプロセス条件を読み込み、ガス種及びプロセス時間などを設定する。続いて、制御器100は、マイクロ波の発生処理(S208)として、設定処理(S204)及びプロセス条件設定処理(S206)における設定に基づいてマイクロ波を発生させる。そして、制御器100は、記憶処理(S210)として、吸収周波数を測定し、記憶する。制御器100は、例えば、記憶部にプロセス条件と関連付けて吸収周波数を記憶する。吸収周波数は、反射係数又は反射波パワーの何れかから算出すればよい。制御器100は、記憶処理(S210)を終了すると、
図23に示されたフローチャートを終了する。
【0160】
このように、
図23に示されたフローチャートを実行することにより、プロセス条件ごとに記憶部に吸収周波数が記憶される。記憶された吸収周波数は、メンテナンス直後の装置状態を反映した値であるため、基準吸収周波数(初期吸収周波数)として利用される。
【0161】
[情報出力処理]
次に、情報出力処理を説明する。
図24は、情報出力処理のフローチャートである。
図24に示されるフローチャートは、制御器100により実行され、例えば装置管理者の開始操作に応じて処理が開始される。
【0162】
制御器100は、モード設定処理(S302)として、データを測定するモードに装置を設定する。例えば、制御器100は、測定データの記憶領域を確保し、装置構成要素が動作可能なようにオンラインにし、復調部が測定データを取得するモードとなるように設定する。
【0163】
次に、制御器100は、設定処理(S304)として、変調方式、周波数範囲、パワー、掃引速度を設定する。そして、制御器100は、プロセス条件設定処理(S306)として、予め記憶部に記憶されたプロセス条件を読み込み、ガス種及びプロセス時間などを設定する。続いて、制御器100は、マイクロ波の発生処理(S308)として、設定処理(S304)及びプロセス条件設定処理(S306)における設定に基づいてマイクロ波を発生させる。そして、制御器100は、記憶処理(S310)として、吸収周波数を測定し、記憶する。制御器100は、例えば、記憶部にプロセス条件と関連付けて吸収周波数を記憶する。
【0164】
続いて、制御器100の報知部102は、差分判定処理(S312)として、初期吸収周波数と測定吸収周波数とを比較する。例えば、報知部102は、初期吸収周波数と測定吸収周波数との差分が第1閾値以下であるか否かを判定する。第1閾値として、例えば5MHzなどが設定され得る。
【0165】
報知部102は、差分判定処理(S312)において初期吸収周波数と測定吸収周波数との差分が第1閾値以下である場合、情報出力処理(S314)として、メンテナンスが不要である旨を示すメンテナンス情報(判定OK)を出力する。一方、報知部102は、差分判定処理(S312)において初期吸収周波数と測定吸収周波数との差分が第1閾値以下でない場合、情報出力処理(S316)として、メンテナンスが必要である旨を示すメンテナンス情報(判定NG)を出力する。制御器100は、情報出力処理(S314、S316)が終了すると、
図24に示されるフローチャートを終了する。
【0166】
[マイクロ波出力装置16の電源の周波数変更処理]
次に、情報出力処理を説明する。
図25は、マイクロ波出力装置16の電源の周波数変更処理のフローチャートである。
図25に示されるフローチャートは、制御器100により実行され、例えば装置管理者の開始操作に応じて処理が開始される。
【0167】
制御器100は、モード設定処理(S402)として、データを測定するモードに装置を設定する。例えば、制御器100は、測定データの記憶領域を確保し、装置構成要素が動作可能なようにオンラインにし、復調部が測定データを取得するモードとなるように設定する。
【0168】
次に、制御器100は、設定処理(S404)として、変調方式、周波数範囲、パワー、掃引速度を設定する。そして、制御器100は、プロセス条件設定処理(S406)として、予め記憶部に記憶されたプロセス条件を読み込み、ガス種及びプロセス時間などを設定する。続いて、制御器100は、マイクロ波の発生処理(S408)として、設定処理(S404)及びプロセス条件設定処理(S406)における設定に基づいてマイクロ波を発生させる。そして、制御器100は、記憶処理(S410)として、吸収周波数を測定し、記憶する。制御器100は、例えば、記憶部にプロセス条件と関連付けて吸収周波数を記憶する。
【0169】
続いて、制御器100の周波数設定部103は、差分判定処理(S412)として、初期吸収周波数と測定吸収周波数とを比較する。例えば、周波数設定部103は、初期吸収周波数と測定吸収周波数との差分が第2閾値以下であるか否かを判定する。第2閾値として、例えば5MHzなどが設定され得る。
【0170】
周波数設定部103は、差分判定処理(S412)において初期吸収周波数と測定吸収周波数との差分が第2閾値以下である場合、周波数変更処理(S414)として、マイクロ波出力装置16の電源の周波数を変更する。周波数設定部103は、マイクロ波出力装置16の電源周波数を、例えば現在の電源周波数に10MHz加算したり、10MHz減算したりする。制御器100は、周波数変更処理(S414)が終了すると、
図25に示されるフローチャートを終了する。
【0171】
以上、プラズマ処理装置1では、導波管21におけるチューナ26とアンテナ18との間に、進行波パワー及び反射波パワーを周波数ごとに取得する復調部29が設けられる。そして、算出部101により、周波数ごとの反射係数が極小点となる周波数が吸収周波数として算出される。このように、この装置は、プラズマ空間内にプローブを配置する必要がないため、プラズマに外乱を与えることなく吸収周波数を算出することができる。
【0172】
また、プラズマ処理装置1では、導波管21におけるチューナ26とアンテナ18との間に、反射波パワーを周波数ごとに取得する復調部29が設けられる。そして、算出部101により、反射波パワーが極小点となる周波数が吸収周波数として算出される。このように、この装置は、プラズマ空間内にプローブを配置する必要がないため、プラズマに外乱を与えることなく吸収周波数を算出することができる。
【0173】
また、マイクロ波を用いたプラズマ処理装置1では、使用に応じて天板などが消耗し、吸収周波数が変化する。このため、出荷時、メンテナンス後、クリーニング後などの基準時において予め取得された基準吸収周波数と、算出部により算出された吸収周波数との差分の大きさは、基準時から現在までのプラズマ処理装置の構成要素の消耗度合いを示すことになる。このプラズマ処理装置1では、報知部102により、当該差分に応じて、装置が基準時から消耗しているか否かなどの情報を含むメンテナンス情報が出力される。よって、このプラズマ処理装置は、使用者などにメンテナンス情報を報知することができる。
【0174】
また、プラズマ処理装置1では、プラズマの吸収周波数がマイクロ波出力装置16の電源周波数に近づいた場合、プラズマが不安定になるおそれがある。これは、いわゆるモードジャンプとして知られている現象である。モードジャンプは、具体的には、周波数などのパラメータを連続的に変更していくとプラズマの状態があるパラメータで急激にシフトする現象である。このプラズマ処理装置の周波数設定部は、差分に応じてマイクロ波出力装置16の電源周波数を変更するため、モードジャンプを回避することができる。このため、プラズマ処理装置1は、プラズマが不安定になることを回避することができる。
【0175】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、各実施形態を組み合わせてもよい。例えば、報知部102及び周波数設定部103は、利用用途に応じて備えることができる。例えば、吸収周波数の変化に基づいてメンテナンスの要否を判定する機能のみ必要である場合には、制御器100は報知部102を備えるとともに周波数設定部103を備えなくてもよい。例えば、マイクロ波出力装置16の電源周波数を変更する機能のみ必要である場合には、制御器100は周波数設定部103を備えるとともに報知部102を備えなくてもよい。
【0176】
[実施例]
以下、発明者が行った実施例について説明する。
【0177】
(マイクロ波吸収効率の周波数依存性)
図26は、反射波パワーの測定結果であり、横軸が周波数、縦軸が反射波パワーである。(A)は、プラズマを発生させない状態で反射波パワーを測定した結果である。(B)は、20mTorr(2.66Pa)のAr分圧においてプラズマを発生させた状態で反射波パワーを測定した結果、(C)は、100mTorr(13.3Pa)のAr分圧においてプラズマを発生させた状態で反射波パワーを測定した結果である。(B)及び(C)では、パワーを1000W〜2000Wの範囲で設定した。
図26に示されるように、(A),(B),(C)ともに周波数特性が存在し、吸収周波数が装置条件で変化することが確認された。つまり、吸収周波数を利用して装置状態を把握することができることが示唆された。
【0178】
(周波数掃引によるプラズマ状態の把握)
図27は、プラズマの発光強度の測定結果であり、横軸が時間、縦軸が発光強度である。発光強度とは、受光素子などにより得られたプラズマの発光の強さである。マイクロ波出力装置16の電源のパワーは、各周波数において2400Wであり、各周波数における発光強度はほぼ同一である。
図27では周波数ごとに発光強度を縦方向に分割して記入している。
図27に示されるように、周波数2440〜2458MHzのときには、発光にちらつきがあることが確認された。このように、マイクロ波出力装置16の電源周波数に近い場合にはプラズマが不安定となり、マイクロ波出力装置16の電源周波数との差分が大きい場合にはプラズマが安定することが確認された。
【0179】
(プラズマ状態の変化)
図28は、反射波パワーの測定結果であり、横軸が周波数、縦軸が反射波パワーである。反射波パワーPr1は、消耗品(装置パーツ)が新品のときに測定された測定結果であり、反射波パワーPr2は、消耗品が消耗したときに測定された測定結果である。このように、消耗前後で反射波パワーの極小値が大きく異なることが確認された。つまり、反射波パワーの極小値を用いて装置状態を把握することができることが確認された。