(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1または2に記載のポリマーフィルタを用いて溶融されたポリマーをろ過し、その後、ろ過したポリマーをフィルム状に成膜してポリマーフィルムを製造する、ポリマーフィルムの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のポリマーフィルタでは、ポリマー流路に別途フィルタ部材を設けているため、高コストとなる。さらに、ポリマーフィルタ内でポリマーが滞留する位置は、特許文献1において検討された位置だけではなく、ポリマーの滞留の発生を更に低減する技術が望まれている。
【0007】
そこで、本発明の課題は、別途フィルタ部材を設けなくても、ポリマーの滞留を一層低減して、ポリマーの熱劣化を低減できるポリマーフィルタを提供することにある。
また、ポリマーの熱劣化を低減できて、品質のよいポリマーフィルムを製造できるポリマーフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明のポリマーフィルタは、
ポリマー入口部および開口部を有する容器本体と、
前記容器本体の開口部に取り付けられた蓋部と、
前記容器本体内に配置され、前記ポリマー入口部から前記容器本体内に流入したポリマーをろ過して内周孔部から排出する複数のディスク状のフィルタエレメントと、
前記蓋部に一端が固定され、前記フィルタエレメントの内周孔部に挿入されて前記複数のフィルタエレメントを積層した状態で支持し、前記内周孔部から流入したポリマーを前記容器本体外に排出する内部流路を有するセンターポールと、
前記センターポールの他端に取り付けられ、前記複数のフィルタエレメントを前記蓋部と共に挟んで押さえる押さえ部と
を備え、
前記押さえ部と前記押さえ部に最も近い最端のフィルタエレメントとの間に最端空間を設け、前記最端空間と前記容器本体の前記ポリマー入口部とを連通するポリマー流路を設け、
前記ポリマー流路は、前記最端空間の前記フィルタエレメントの内周側に連通する内側流路と、前記最端空間の前記フィルタエレメントの外周側に連通する外側流路とから構成される。
【0009】
本発明のポリマーフィルタによれば、ポリマー流路は、最端空間のフィルタエレメントの内周側に連通する内側流路と、最端空間のフィルタエレメントの外周側に連通する外側流路とから構成されるので、最端空間の内周側においてポリマーの滞留を低減できる。さらに、最端空間の内周側におけるポリマーの滞留を低減することで、センターポールの内部流路におけるポリマーの滞留を低減できる。
【0010】
したがって、別途フィルタ部材を設けなくても、ポリマーの滞留を一層低減して、ポリマーの熱劣化を低減でき、この結果、そのポリマーを用いた押出成型品の品質を向上できる。
【0011】
また、本発明のポリマーフィルタは、
ポリマー入口部および開口部を有する容器本体と、
前記容器本体の開口部に取り付けられた蓋部と、
前記容器本体内に配置され、前記ポリマー入口部から前記容器本体内に流入したポリマーをろ過して内周孔部から排出する複数のディスク状のフィルタエレメントと、
前記蓋部に一端が固定され、前記フィルタエレメントの内周孔部に挿入されて前記複数のフィルタエレメントを積層した状態で支持し、前記内周孔部から流入したポリマーを前記容器本体外に排出する内部流路を有するセンターポールと、
前記センターポールの他端に取り付けられ、前記複数のフィルタエレメントを前記蓋部と共に挟んで押さえる押さえ部と
を備え、
前記押さえ部と前記押さえ部に最も近い最端のフィルタエレメントとの間に最端空間を設け、前記最端空間と前記容器本体の前記ポリマー入口部とを連通するポリマー流路を設け、
前記ポリマー流路は、前記最端空間の前記フィルタエレメントの内周側に連通する内側流路から構成される。
【0012】
本発明のポリマーフィルタによれば、ポリマー流路は、最端空間のフィルタエレメントの内周側に連通する内側流路から構成されるので、最端空間の内周側においてポリマーの滞留を低減できる。さらに、最端空間の内周側におけるポリマーの滞留を低減することで、センターポールの内部流路におけるポリマーの滞留を低減できる。
【0013】
したがって、別途フィルタ部材を設けなくても、ポリマーの滞留を一層低減して、ポリマーの熱劣化を低減でき、この結果、そのポリマーを用いた押出成型品の品質を向上できる。
【0014】
また、ポリマーフィルムの製造方法の一実施形態では、前記ポリマーフィルタを用いて溶融されたポリマーをろ過し、その後、ろ過したポリマーをフィルム状に成膜してポリマーフィルムを製造する。
【0015】
前記実施形態によれば、前記ポリマーフィルタを用いてポリマーフィルムを製造しているので、ポリマーの熱劣化を低減できて、品質のよいポリマーフィルムを製造できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリマーフィルタによれば、ポリマー流路は、最端空間のフィルタエレメントの内周側に連通する内側流路と、最端空間のフィルタエレメントの外周側に連通する外側流路とから構成されるので、別途フィルタ部材を設けなくても、ポリマーの滞留を一層低減して、ポリマーの熱劣化を低減できる。
本発明のポリマーフィルタによれば、ポリマー流路は、最端空間のフィルタエレメントの内周側に連通する内側流路から構成されるので、別途フィルタ部材を設けなくても、ポリマーの滞留を一層低減して、ポリマーの熱劣化を低減できる。
本発明のポリマーフィルムの製造方法によれば、前記ポリマーフィルタを用いてポリマーフィルムを製造しているので、ポリマーの熱劣化を低減できて、品質のよいポリマーフィルムを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明のポリマーフィルタの第1実施形態を示す断面図である。
図2は、ポリマーフィルタの拡大断面図である。
図1と
図2に示すように、ポリマーフィルタ1は、容器本体11と、蓋部12と、複数のディスク状のフィルタエレメント20と、センターポール30と、押さえ部40とを有する。
【0020】
ポリマーフィルタ1は、押出機と金型との間に接続され、押出機により溶融され押し出されるポリマーをろ過して金型に送り出す。金型から送り出されたポリマーは、フィルム状に成膜されて、光学フィルムが得られる。ポリマーは、例えばポリプロピレンやポリカーボネートなどの熱劣化する樹脂である。ポリマーは、ポリマーフィルタ1内において、図中の点線の矢印で示す方向に流れる。
【0021】
容器本体11は、ポリマー入口部11aと開口部11bとを有する。ポリマー入口部11aと開口部11bは、互いに反対側に位置する。蓋部12は、容器本体11の開口部11bに取り付けられている。蓋部12は、貫通孔12aを有する。容器本体11に蓋部12が取り付けられて、容器本体11内に収納空間11cが形成される。容器本体11には、ヒータなどの加熱装置が設けられ、容器本体11内のポリマーを加熱する。
【0022】
複数のフィルタエレメント20は、容器本体11の収納空間11cに配置されている。フィルタエレメント20は、リーフディスク型フィルタである。フィルタエレメント20は、中央に、内周孔部20aを有する。フィルタエレメント20は、ポリマー入口部11aから容器本体11内に流入したポリマーをろ過して内周孔部20aから排出する。
【0023】
フィルタエレメント20は、互いに重ね合わされた2枚の円板状のろ過部21と、2枚のろ過部21の間に位置してろ過部21を支持する支持部22と、2枚のろ過部21の内周縁を固定する内周固定部23と、2枚のろ過部21の外周縁を固定する外周固定部24とを有する。ろ過部21は、例えば、焼結体からなる。支持部22は、例えば、金網からなる。内周固定部23および外周固定部24は、例えば、環状の金具からなる。内周固定部23の内周孔部が、フィルタエレメント20の内周孔部20aを構成する。内周固定部23は、2枚のろ過部21の間の空間と外部空間とを連通する貫通孔23aを有する。ポリマーは、ろ過部21を通過することでろ過されて、2枚のろ過部21の間の空間を通り、貫通孔23aから排出される。
【0024】
センターポール30は、容器本体11内に挿入されている。センターポール30の一端は、蓋部12の貫通孔12aに挿入されて、蓋部12にボルトなどにて固定される。センターポール30は、フィルタエレメント20の内周孔部20aに挿入されて複数のフィルタエレメント20を積層した状態で支持する。センターポール30は、内周孔部20aから流入したポリマーを容器本体11外に排出する内部流路30aを有する。
【0025】
センターポール30は、一端に、開口を有する筒部材である。筒部材の内部空間は、内径流路30aを構成する。筒部材の一端の開口は、容器本体11外に面し、筒部材の他端の封口は、容器本体11内に位置する。
【0026】
センターポール30の周面には、センターポール30の軸Lに沿って延在する複数の凹溝30bが設けられている。複数の凹溝30bは、軸Lを中心として周方向に、配列される。凹溝30bの底面には、内部流路30aに連通する複数の貫通孔30cを有する。凹溝30bは、フィルタエレメント20の内周孔部20aの内面に対向する。つまり、凹溝30bは、内周固定部23の貫通孔23aと連通する。フィルタエレメント20でろ過されたポリマーは、内周固定部23の貫通孔23aから凹溝30bに流入し、その後、貫通孔30cを通って内周孔部20aに流入して、容器本体11外に排出される。
【0027】
押さえ部40は、センターポール30の他端(封口側)に取り付けられ、複数のフィルタエレメント20を蓋部12と共に挟んで押さえる。押さえ部40は、中央孔部40aを有し、センターポール30の他端(封口側)は、押さえ部40の中央孔部40aに挿入されている。センターポール30の他端部には、ボルト50が螺合され、ボルト50を締め付けることで、押さえ部40を介して複数のフィルタエレメント20を押圧する。
【0028】
なお、
図1では、センターポール30を、一端に開口を有する筒部材で表したが、両端に開口を有する筒部材でも良い。その場合、筒部材の一端が、押さえ部40の中央孔部40aに挿入され、ボルト50により螺合することにより、押さえ部40を介して複数のフィルタエレメント20を押圧する。このとき、ボルト50により他端部の開口が封口される。
【0029】
図3は、ポリマーフィルタ1の押さえ部40側の拡大断面図である。
図2と
図3に示すように、隣り合うフィルタエレメント20の間の内周側、および、押さえ部40とフィルタエレメント20の間の内周側に、ガスケット60を有する。ガスケット60は、フィルタ20の内周固定部23に接触し、この接触部分をシールする機能を有する。
【0030】
隣り合う一対のフィルタエレメント20,20において、一方のフィルタエレメント20の内周固定部23に設けられた台部23bと、他方のフィルタエレメント20の内周固定部23に設けられた台部23bとの間に、ガスケット60が挟まれる。隣り合う押さえ部40およびフィルタエレメント20において、フィルタエレメント20の内周固定部23に設けられた台部23bと、押さえ部40の端面41との間に、ガスケット60が挟まれる。
【0031】
台部23bは、軸Lに沿った方向に突出しており、軸Lを中心とした環状に形成されている。これにより、隣り合うフィルタエレメント20の間、および、押さえ部40とフィルタエレメント20の間に、ポリマーの流路となる空間S1,S2が形成される。
【0032】
つまり、隣り合うフィルタエレメント20の間に、隣接空間S1を設けている。隣接空間S1の大きさにおいて、フィルタエレメント20の内周側とフィルタエレメント20の外周側とは、同じ大きさである。
【0033】
押さえ部40と押さえ部40に最も近い最端のフィルタエレメント20(以下、最端のフィルタエレメント20Aという)との間に、最端空間S2を設けている。最端空間S2の大きさにおいて、最端のフィルタエレメント20Aの内周側と最端のフィルタエレメント20Aの外周側とは、同じ大きさである。隣接空間S1の大きさと最端空間S2の大きさは、同じであってもよく、または、異なっていてもよい。
【0034】
図1と
図3に示すように、ポリマーフィルタ1は、最端空間S2と容器本体11のポリマー入口部11aとを連通するポリマー流路を設けている。ポリマー流路は、最端空間S2のフィルタエレメント20Aの内周側に連通する内側流路71と、最端空間S2のフィルタエレメント20Aの外周側に連通する外側流路72とから構成される。ポリマー流路は、内側流路71および外側流路72のみから成る。
【0035】
内側流路71は、押さえ部40に軸Lに沿って貫通された貫通孔から構成される。外側流路72は、押さえ部40と容器本体11との間の空間から構成される。外側流路72の断面積は、内側流路71の断面積よりも大きい。
【0036】
フィルタエレメント20の外周面と容器本体11との間には、外周流路75が設けられている。外側流路72および最端空間S2は、さらに、外周流路75に連通する。
【0037】
次に、ポリマーフィルタ1の動作について説明する。
【0038】
容器本体11のポリマー入口部11aからポリマーを流入させる。その後、ポリマーは、内側流路71および外側流路72を通過して、最端空間S2、外周流路75および隣接空間S1に流入する。その後、ポリマーは、フィルタエレメント20の内部に流入し、フィルタエレメント20によりろ過されたポリマーは、センターポール30の貫通孔30cを通過して、センターポール30の内部流路30aに導かれる。その後、ポリマーは、ポリマーフィルタ1の外部空間に流出される。
【0039】
前記ポリマーフィルタ1によれば、ポリマー流路は、最端空間S2のフィルタエレメント20Aの内周側に連通する内側流路71と、最端空間S2のフィルタエレメント20Aの外周側に連通する外側流路72とから構成されるので、最端空間S2の内周側においてポリマーの滞留を低減できる。さらに、最端空間S2の内周側におけるポリマーの滞留を低減することで、センターポール30の内部流路30aにおけるポリマーの滞留を低減できる。これは、最端空間S2の内周側でのポリマーの流量を多くすることができ、これに伴って、センターポール30の内部流路30aのポリマーの流量も多くすることができると考えられる。
【0040】
したがって、ポリマーの滞留を一層低減して、ポリマーの熱劣化を低減でき、この結果、そのポリマーを用いた押出成型品(ポリマーフィルム)の品質を向上できる。例えば、押出成型品としてのフィルムのスジの発生を低減できる。また、ディスク状のフィルタエレメントと異なる従来のフィルタ部材を、別途設ける必要がなく、コストを低減できる。
【0041】
要するに、本願発明者は、ポリマーフィルタ1内の滞留位置を鋭意検討した結果、センターポール30の内部流路30aに加え、最端空間S2の内周側にポリマーの滞留が生じやすいことを見出し、さらに、最端空間S2の内周側の滞留を低減すると、センターポール30の内部流路30aの滞留も低減できることを見出した。このように、内側流路71および外側流路72を設けることで、最端空間S2の内周側の流量を多くして、最端空間S2の内周側およびセンターポール30の内部流路30aの滞留を低減でき、ポリマーの熱劣化を飛躍的に低減できる。
【0042】
次に、ポリマーフィルムの製造方法について説明する。この製造方法では、前記ポリマーフィルタ1を用いて溶融されたポリマーをろ過し、その後、ろ過したポリマーをフィルム状に成膜してポリマーフィルムを製造する。
【0043】
具体的に述べると、ポリマーフィルタ1は、押出機と金型の間に接続される。押出機内で、ポリマーを加熱して溶融させ、押し出す。押出機により押し出されたポリマーは、ポリマーフィルタ1に導かれる。ポリマーフィルタ1によりろ過されたポリマーは、金型に導かれる。金型から押出して、ポリマーをフィルム状に成膜する。成膜されたフィルムを、ローラに接触させ、冷却する。冷却されたフィルムを、巻き取り、ロール状の原反フィルムを得る。原反フィルムは、長尺状のポリマーフィルムである。
【0044】
ポリマーフィルム10は、例えば、アクリル系樹脂からなる。アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂であり、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体を意味する。メタクリル酸エステルの重合体としては、例えば、メタクリル酸アルキルを主体とする重合体からなるものが、透明性に優れ、かつ剛性も高い点で好ましい。メタクリル酸アルキルの単量体組成は、全単量体の合計100重量%を基準として、メタクリル酸アルキルが、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上であり、かつメタクリル酸アルキルが99重量%以下である。なお、アクリル系樹脂としては、メタクリル酸アルキルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸アルキル50重量%以上とメタクリル酸アルキル以外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよい。メタクリル酸アルキルとしては、通常、そのアルキル基の炭素数が1〜4のものが用いられ、中でもメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。 また、メタクリル酸アルキル以外の単量体は、分子内に1個の重合性炭素−炭素二重結合を有する単官能単量体であってもよいし、分子内に2個以上の重合性炭素−炭素二重結合を有する多官能単量体であってもよい。特に、単官能単量体が好ましく用いられ、その例としては、アクリル酸メチルやアクリル酸エチルのようなアクリル酸アルキル、スチレンやアルキルスチレンのようなスチレン系単量体、アクリロニトリルやメタクリロニトリルのような不飽和ニトリルが挙げられる。共重合成分としてアクリル酸アルキルを用いる場合、その炭素数は通常1〜8である。
【0045】
したがって、ポリマーフィルムの製造方法では、ポリマーフィルタ1を用いてポリマーフィルムを製造しているので、ポリマーの熱劣化を低減できて、品質のよいポリマーフィルムを製造できる。
【0046】
(第2実施形態)
図4は、本発明のポリマーフィルタの第2実施形態を示す断面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、ポリマー流路の構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0047】
図4に示すように、ポリマーフィルタ1Aのポリマー流路は、最端空間S2のフィルタエレメント20Aの内周側に連通する内側流路71から構成される。つまり、ポリマーフィルタ1Aのポリマー流路には、第1実施形態の外側流路72がない。ポリマー流路は、内側流路71のみから成る。
【0048】
ポリマーフィルタ1Aの動作について説明すると、容器本体11のポリマー入口部11aからポリマーを流入させる。その後、ポリマーは、内側流路71を通過して、最端空間S2、外周流路75および隣接空間S1に流入する。その後、ポリマーは、フィルタエレメント20の内部に流入し、フィルタエレメント20によりろ過されたポリマーは、センターポール30の貫通孔30cを通過して、センターポール30の内部流路30aに導かれる。その後、ポリマーは、ポリマーフィルタ1Aの外部空間に流出される。
【0049】
前記ポリマーフィルタ1Aによれば、ポリマー流路は、最端空間S2のフィルタエレメント20Aの内周側に連通する内側流路71から構成されるので、最端空間S2の内周側においてポリマーの滞留を低減できる。さらに、最端空間S2の内周側におけるポリマーの滞留を低減することで、センターポール30の内部流路30aにおけるポリマーの滞留を低減できる。したがって、ポリマーの滞留を一層低減して、ポリマーの熱劣化を低減でき、この結果、そのポリマーを用いた押出成型品(ポリマーフィルム)の品質を向上できる。
【0050】
次に、ポリマーフィルムの製造方法について説明すると、前記ポリマーフィルタ1Aを用いて溶融されたポリマーをろ過し、その後、ろ過したポリマーをフィルム状に成膜してポリマーフィルムを製造する。このように、ポリマーフィルタ1Aを用いてポリマーフィルムを製造しているので、ポリマーの熱劣化を低減できて、品質のよいポリマーフィルムを製造できる。
【0051】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1と第2実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
ちなみに、ポリマーフィルタ内の各所のポリマーの滞留性は、例えば、解析ソフトPolyflow(ANSYS社製)により、平均滞留時間を算出することにより評価することができる。
【0052】
前記実施形態では、筒状のセンターポール30について示したが、これに限らない。センターポール30は棒状であり、軸Lに沿って延在し、容器本体11の外まで延びる複数の凹溝が設けられた形状でも良い。フィルタエレメント20でろ過されたポリマーは、凹溝に流入し、その後容器本体11外に排出させてもよい。
【実施例】
【0053】
図5Aに第1実施形態の第1実施例を示し、
図5Bに第2実施形態の第2実施例を示し、
図5Cに比較例を示す。
【0054】
図5Aに示すポリマーフィルタ1は、第1実施形態と同じ構成であり、ポリマー流路は、内側流路71および外側流路72から構成される。
【0055】
ポリマーフィルムの原料として、メタクリル酸メチル-アクリル酸メチルの共重合樹脂(スミペックスMH 住友化学株式会社製)を原料とし、濾過精度5μm以下のフィルタエレメントを用い、ポリマーフィルタの温度が240℃以上300℃以下、溶融ポリマー粘度が約500Pa・sの条件で実施した。
また、ポリマーフィルタ内のポリマーの平均滞留時間は、解析ソフトPolyflow(ANSYS社製)を用いて、ポリマーフィルタ内のせん断速度 約1.3/sとして算出した。
【0056】
最端空間S2におけるポリマーの平均滞留時間と、隣接空間S1におけるX地点、Y地点のポリマーの平均滞留時間とを求めた。X地点は、押さえ部40側から数えて5番目のフィルタエレメント20と6番目のフィルタエレメント20の間の隣接空間S1である。Y地点は、押さえ部40側から数えて10番目のフィルタエレメント20と11番目のフィルタエレメント20の間の隣接空間S1である。
【0057】
最端空間S2の平均滞留時間は、350秒であった。隣接空間S1のX地点の平均滞留時間は、100秒であり、隣接空間S1のY地点の平均滞留時間は、97秒であった。
【0058】
図5Bに示すポリマーフィルタ1Aは、第2実施形態と同じ構成であり、ポリマー流路は、内側流路71から構成される。最端空間S2の平均滞留時間は、26秒であった。隣接空間S1のX地点の平均滞留時間は、93秒であり、隣接空間S1のY地点の平均滞留時間は、91秒であった。
【0059】
図5Cに示すポリマーフィルタ100は、
図5Aに示すポリマーフィルタ1と比べて、ポリマー流路の構成が相違し、ポリマー流路は、外側流路72から構成される。つまり、
図5Aのポリマーフィルタ1の内側流路71がない。最端空間S2の平均滞留時間は、640秒であった。隣接空間S1のX地点の平均滞留時間は、98秒であり、隣接空間S1のY地点の平均滞留時間は、96秒であった。
【0060】
この結果、
図5Aの第1実施例の最端空間S2の平均滞留時間は、
図5Cの比較例の最端空間S2の平均滞留時間の半分ほどに低減された。言い換えると、第1実施例では、最端空間S2の平均滞留時間は、隣接空間S1の平均滞留時間の5倍以下となった。
【0061】
図5Bの第2実施例の最端空間S2の平均滞留時間は、
図5Cの比較例の最端空間S2の平均滞留時間の25分の1ほどに低減された。さらに、第2実施例では、最端空間S2の平均滞留時間は、隣接空間S1の平均滞留時間の3分の1以下となった。
【0062】
このことから、ポリマー流路に内側流路71を含めることで、最端空間S2のポリマーの滞留を低減できることがわかる。さらに、ポリマー流路を内側流路71から構成することで、最端空間S2のポリマーの滞留を一層低減できることがわかる。