特許第6793071号(P6793071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793071
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】酸性液状調味料
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/60 20160101AFI20201119BHJP
【FI】
   A23L27/60 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-52367(P2017-52367)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-153129(P2018-153129A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中園 陽子
【審査官】 茅根 文子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−214831(JP,A)
【文献】 特開平07−194350(JP,A)
【文献】 特開平08−056576(JP,A)
【文献】 特開2016−220594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00−27/40;27/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食塩が4.5〜6質量%、
粉末状のコブミカンの葉が生換算で0.35〜2質量%含有され、
前記粉末状のコブミカンの葉含有量(生換算)が、酢酸に対して90〜210質量%である、
酸性液状調味料。
【請求項2】
前記請求項1に記載の酸性液状調味料において、
前記粉末状のコブミカンの葉の95%以上が12タイラーメッシュパスである、
酸性液状調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コブミカンの葉を含有するにも関わらず、苦味を感じず、爽やかなコブミカンの香りを有する酸性液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、爽やかなハーブの香りが特徴的なエスニック料理が流行している。なかでも、エスニック料理を象徴する香りとして、コブミカンの葉の香りが挙げられる。コブミカンの葉は、爽やかな香りを放つことで食欲を増進させる一方、特有の苦味を有するため、一般的には喫食前に料理から取り除いてしまう。
【0003】
しかしながら、スーパー等で市販されている酸性液状調味料のように、製造から消費者が喫食するまでに時間を要する食品においては、コブミカンの葉特有の苦味を理由にコブミカンの葉を製造時に酸性液状調味料から取り除いてしまうと、喫食時には物足りない風味となってしまう問題がある。
【0004】
これまで、特許文献1のように、バジルやルッコラ等のハーブ含有ドレッシングが知られているものの、特有の苦味を有するコブミカンの葉を含有した爽やかな香りを有する酸性液状調味料については一切検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−86772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、コブミカンの葉を含有するにも関わらず、苦味を感じず、爽やかなコブミカンの香りを有する酸性液状調味料に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、食塩が特定量、粉末状のコブミカンの葉が特定量含有され、前記粉末状のコブミカンの葉含有量(生換算)が、酢酸に対して特定割合であることにより、意外にも、コブミカンの葉を含有するにも関わらず、苦味を感じず、爽やかなコブミカンの香りを有する酸性液状調味料を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)食塩が4.5〜6質量%、
粉末状のコブミカンの葉が生換算で0.35〜2質量%含有され、
前記粉末状のコブミカンの葉含有量(生換算)が、酢酸に対して90〜210質量%である、
酸性液状調味料、
(2)前記請求項1に記載の酸性液状調味料において、
前記粉末状のコブミカンの葉の95%以上が12タイラーメッシュパスである、
酸性液状調味料、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コブミカンの葉を含有するにも関わらず、苦味を感じず、爽やかなコブミカンの香りを有する酸性液状調味料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、格別に断らない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
<本発明の特徴>
本発明の酸性液状調味料は、食塩が4.5〜6%、粉末状のコブミカンの葉が生換算で0.35〜2%含有され、前記粉末状のコブミカンの葉含有量(生換算)が、酢酸に対して90〜210質量%であることにより、コブミカンの葉を含有するにも関わらず、苦味を感じず、爽やかなコブミカンの香りを有することを特徴とする。
【0011】
<酸性液状調味料>
本発明の酸性液状調味料とは、常温流通を可能にするためにpHを4.6以下に調整した調味料をいう。
このような本発明の酸性液状調味料としては、一般的に分離液状調味料、乳化液状調味料等と称されるものを含む。
【0012】
<食塩含有量>
本発明の酸性液状調味料は、食塩を4.5%以上6%以下含む。前記食塩の含有量が前記範囲より小さい場合、コブミカンの葉が有する爽やかな香りが充分に感じられず、前記範囲より多い場合、塩味が強くなることで酸性液状調味料として好ましくなくなる。
【0013】
<粉末状のコブミカンの葉>
本発明の酸性液状調味料は、粉末状のコブミカンの葉を含む。コブミカンは、カフィアライム、バイマックルー等とも呼ばれる果樹であり、本発明では、前記コブミカンの葉部分の粉末を用いる。前記粉末状のコブミカンの葉は、生の葉と乾燥した葉のいずれのものでもよい。また、前記コブミカンの葉の粉砕方法には特に制限はなく、例えば、乾燥処理した葉をミキサー等で粉砕処理する方法が挙げられる。
【0014】
<粉末状のコブミカンの葉の大きさ>
本発明の酸性液状調味料において、前記粉末状のコブミカンの葉の95%以上が12タイラーメッシュパスであるとよい。ここで、“12タイラーメッシュパス”とは、Tyler規格の12メッシュの篩(目開き1.4mm)にかけたときに通過するという意味である。前記粉末状のコブミカンの葉の大きさの上限値は、好ましくは16タイラーメッシュパス(目開き1mm)、より好ましくは24タイラーメッシュパス(目開き0.71mm)であるとよい。また、前記粉末状のコブミカンの葉の大きさの下限値は、好ましくは170タイラーメッシュパス(目開き0.09mm)であるとよい。前記粉末状のコブミカンの葉の大きさが前記範囲であることで、特有の苦味を感じさせず、コブミカンの葉が有する爽やかな香りが充分に感じられる。
また、前記粉末状のコブミカンの葉の大きさは、市販の振動粉末ふるい機を使用して測定することができる。さらに、ふるいにかけられたコブミカンの葉の質量を、ふるいにかける前のコブミカンの葉の全質量で除すれば、本発明に用いる95%以上が12タイラーメッシュパスである粉末状のコブミカンの葉の割合を算出することができる。
【0015】
<粉末状のコブミカンの葉含有量>
本発明の酸性液状調味料は、粉末状のコブミカンの葉を生換算で0.35%以上2%以下含む。前記粉末状のコブミカンの葉含有量の下限値は、好ましくは0.6%以上、上限値は好ましくは1.5%以下、より好ましくは1.2%以下である。粉末状のコブミカンの葉含有量が前記範囲より少ない場合、コブミカンの葉が有する爽やかな香りが充分に感じられず、前記範囲より多い場合、コブミカンの葉特有の苦味が酸性液状調味料中に出てしまう。
【0016】
<酢酸含有量に対する粉末状のコブミカンの葉含有量>
本発明の酸性液状調味料において、粉末状のコブミカンの葉含有量(生換算)は、酢酸含有量に対して90%以上210%以下である。前記粉末状のコブミカンの葉含有量(生換算)の下限値は、酢酸含有量に対して好ましくは100%以上、上限値は、好ましくは190%以下、より好ましくは130%以下である。酢酸含有量に対して粉末状のコブミカンの葉含有量(生換算)が前記範囲であることで、苦味を感じず、爽やかなコブミカンの香りを有する酸性液状調味料が得られる。
【0017】
<その他の原料>
本発明の酸性液状調味料には、本発明の効果を損なわない範囲で酸性液状調味料に一般的に使用されている原料を適宜選択し配合することができる。
このような原料としては、例えば、食酢、醤油、核酸系旨味調味料、柑橘果汁等の各種調味料、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン等の乳化剤、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、香料、色素、各種具材等が挙げられる。
【0018】
<酸性液状調味料の製造方法>
本発明の酸性液状調味料の製造方法は、常法に則り製造すればよく特に限定するものではないが、コブミカンの葉特有の苦味を抑制し、爽やかな香りを感じさせるために、粉末状のコブミカンの葉を酢酸と混合した酸度1以上3以下の液中で、80℃以上100℃以下の温度下において10分以上60分以下の加熱工程を有することが好ましい。例えば、粉末状のコブミカンの葉や酢酸等の上述の原料を混合した後、加熱処理を行い、その他残りの原料を添加して混合し、製造することができる。
【0019】
以下、本発明の実施例、比較例を述べ、本発明を更に説明する。なお、本発明はこれらに限定するものではない
【実施例】
【0020】
[実施例1]<酸性液状調味料の調製>
配合1の酸性液状調味料を調製した。
すなわち、まず、撹拌タンクに粉末状のコブミカンの葉と醸造酢を投入して均一に混合した酸度1以上3以下の液中で、80℃以上100℃以下の温度下において10分以上60分以下の加熱処理を行った。そして、残りの原料を添加して混合した後、ガラス瓶容器に充填し、実施例1の酸性液状調味料を調製した。
【0021】
<配合1>
粉末状コブミカンの葉(95%以上が12タイラーメッシュパス) 生換算0.9%
醸造酢(酢酸4%換算) 19 %
食塩 5.3%
魚醤 9 %
グラニュ―糖 3.5%
グルタミン酸ナトリウム 0.5%
植物油脂 27 %
柑橘果汁 5 %
コブミカン抽出物 2 %
キサンタンガム 0.3%
清水 残余
【0022】
[実施例2]
食塩が6%、粉末状のコブミカンの葉(生換算)が0.5%、醸造酢が13%に置き換えた以外は実施例1と同様にして、実施例2の酸性液状調味料を調製した。
【0023】
[実施例3]
食塩が4.8%、粉末状のコブミカンの葉(生換算)が1.9%、醸造酢が23.8%に置き換えた以外は実施例1と同様にして、実施例3の酸性液状調味料を調製した。
【0024】
[実施例4]
粉末状のコブミカンの葉(生換算)が1.2%、醸造酢が25.4%、粉末状のコブミカンの葉の95%が長径1.3mm以下に置き換えた以外は実施例1と同様にして、実施例4の酸性液状調味料を調製した。
【0025】
[実施例5]
粉末状のコブミカンの葉の95%が長径2mm以下に置き換えた以外は実施例1と同様にして、実施例5の酸性液状調味料を調製した。
【0026】
[比較例1]
粉末状のコブミカンの葉(生換算)が2.5%、醸造酢が29.8%に置き換えた以外は実施例1と同様にして、比較例1の酸性液状調味料を調製した。
【0027】
[比較例2]
粉末状のコブミカンの葉(生換算)が0.1%、醸造酢が2.1%に置き換えた以外は実施例1と同様にして、比較例2の酸性液状調味料を調製した。
【0028】
[比較例3]
粉末状のコブミカンの葉(生換算)が0.4%、醸造酢が14.3%に置き換えた以外は実施例1と同様にして、比較例3の酸性液状調味料を調製した。
【0029】
[比較例4]
粉末状のコブミカンの葉(生換算)が0.4%、醸造酢が4.3%に置き換えた以外は実施例1と同様にして、比較例4の酸性液状調味料を調製した。
【0030】
[比較例5]
粉末状のコブミカンの葉(生換算)が0.4%、食塩含有量が1%、醸造酢が8.5%に置き換えた以外は、実施例1と同様にして、比較例5の酸性液状調味料を調製した。
【0031】
[試験例]
実施例1〜5及び比較例1〜5で得られた酸性液状調味料の官能評価を、以下の評価方法及び評価基準にしたがって行った。結果を表1に示す。
【0032】
<評価方法>
実施例1〜5及び比較例1〜5の酸性液状調味料を喫食し、苦味及びコブミカンの葉の香りについて評価した。
【0033】
<苦味についての評価基準>
○:コブミカン特有の苦味を全く感じない。
△:コブミカン特有の苦味をやや感じるが問題のない程度。
×:コブミカン特有の苦味を感じる。
【0034】
<コブミカンの葉の香りについての評価基準>
○:コブミカン特有の爽やかな香りが感じられる。
△:コブミカン特有の爽やかな香りがやや感じられる。
×:コブミカン特有の爽やかな香りが感じられない。
【0035】
【表1】
【0036】
上述の試験結果より、食塩が4.5〜6質量%、粉末状のコブミカンの葉が生換算で0.35〜2質量%含有され、前記粉末状のコブミカンの葉含有量(生換算)が、酢酸に対して90〜210質量%である酸性液状調味料は、コブミカンの葉を含有しているにも関わらず、苦味を感じず、爽やかなコブミカンの香りを感じられたことが理解できる(実施例1〜4)。さらに、粉末状のコブミカンの葉の95%以上が12タイラーメッシュパスであると、本発明の効果をさらに奏し易いことが理解できる(実施例5)。