(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記外部表示器からの電波を受信して該電波を電力に変換する制御部側アンテナ部と、前記電力によって駆動される集積回路および記憶部とを備えることを特徴とする請求項10に記載のポンプ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧力タンクに蓄圧された状態で、供給先にて水の使用があったとき、まずは圧力タンク内の水が供給されるため、吐出側圧力は緩やかに下降する。したがって、ポンプの始動直後は、ポンプの吐出側圧力と目標圧力との偏差が非常に小さい。
【0006】
ここで、ポンプ装置におけるPI制御の演算方法として、前回の偏差と今回の偏差との差分より操作量を演算し、その操作量を前回の演算結果に加算し、回転速度の指令値としている。このPI演算方法では、吐出側圧力の急変を防ぎ安定した圧力にて水を供給できる。ポンプ始動時の1回目のPI演算時は、前回の偏差並びに前回の演算結果が存在しない為、固定の始動速度を回転速度の指令値とする(
図16参照)。以降のPI演算では、ポンプの吐出側圧力と目標圧力との偏差の差分により回転速度の操作量を算出し、その操作量を前回の回転速度に加算することになる。よって、ポンプ始動後は、始動速度より徐々に回転速度を上昇させることとなるが、特に、井戸の水位と供給先の高低差が大きい場合は、供給先までポンプにて加圧した水が到着するのには時間がかかるため、ポンプの始動速度が低いと、圧力不足により給水が途切れてしまう虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、吐出圧力の低下を発生させずに、ポンプを始動させることができるポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ポンプと、前記ポンプを駆動する電動機と、前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、前記ポンプの吐出側圧力を保持するための圧力タンクと、前記吐出側圧力の測定値と目標圧力値との偏差に基づいて、前記ポンプの回転速度指令値を算出する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ポンプ
が停止する前の蓄圧運転時の前記ポンプの回転速度指令値に基づいて、前記ポンプの始動回転速度を決定することを特徴とするポンプ装置である。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記ポンプの回転速度指令値を基に決定された前記始動回転速度は、前記ポンプを次に始動するときの前記ポンプの始動回転速度であることを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記始動回転速度は、前記蓄圧運転時の最大回転速度指令値であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、前記蓄圧運転時の前記ポンプの回転速度指令値に係数を加算または乗算することで前記始動回転速度を決定することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、前記ポンプの前回の始動時の吐出側圧力の低下に従って前記係数を変化させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、前記目標圧力値に従って前記係数を変化させることを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記吐出側圧力の測定値、目標圧力値、前記ポンプの回転速度の目標値を表示や設定する表示器をさらに備えていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、外部表示器と有線通信または無線通信で接続することができることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、有線通信または無線通信で接続した外部機器より、前記運転情報を受信することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、近距離無線通信(NFC)によって前記外部表示器に接続できることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、前記外部表示器からの電波を受信して該電波を電力に変換する制御部側アンテナ部と、前記電力によって駆動される集積回路および記憶部とを備えることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、前記吐出側圧力の制御の実行履歴を示すデータを前記記憶部に記憶し、前記集積回路は、前記記憶部から前記データを読み取り、前記制御部側アンテナ部は前記データを前記外部表示器に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓄圧運転時のポンプの回転速度を基準にして、ポンプの始動回転速度を決定することにより、給水源の水位との給水先との高低差に応じたポンプの始動回転速度にてポンプを始動することができる。これにより、ポンプの始動時の圧力低下を防止するとともに、定常運転時の圧力変動を抑止することができる。更には、圧力変動が抑制されるため、圧力タンクを小型化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係るポンプ装置を示す模式図である。
図2は
図1に示すポンプ装置の詳細を示す図である。
図1および
図2に示すように、ポンプ装置は、井戸内などの水中に設置することができる水中ポンプユニット1と、吸込管4を介して水中ポンプユニット1に接続された陸上ユニット5とを備えている。水中ポンプユニット1は、羽根車(図示しない)を有するポンプ2と、このポンプ2を回転させる電動機3とを備えている。電動機3が駆動されると、ポンプ2が回転し、水は吸込管4を通じて陸上ユニット5に送られる。
図1の符号H0,H1は、ポンプ2によって汲み上げられる水の水位を表している。
【0015】
陸上ユニット5は地上に配置されている。陸上ユニット5は、水中ポンプユニット1の動作を制御する制御ユニット10と、吸込管4に接続された配水管11と、配水管11を流れる水の流量が所定の値にまで低下したことを検知するフロースイッチ12と、ポンプ2の吐出側圧力を測定する圧力センサ13とを備えている。フロースイッチ12および圧力センサ13は配水管11に接続されており、圧力センサ13はフロースイッチ12の下流側に設けられている。配水管11の一端は吸込管4に接続され、他端は排出管18に接続されている。排出管18には水栓などの給水器具19が接続されている。吸込管4には、逆止弁21が取り付けられている。この逆止弁21は、ポンプ2が停止したときの水の逆流を防止するために設けられている。さらに、本実施形態では、配水管11には空気抜き管33が接続されており、空気抜き管33には、開閉弁35が配置されている。
【0016】
陸上ユニット5は、ポンプ2の吐出側圧力を保持するための圧力タンク15をさらに備えている。圧力タンク15は配水管11に接続されており、圧力センサ13の下流側に設けられている。圧力タンク15は、その耐圧容器の内部にゴム製のブラダを有している。ポンプ2の吐出側圧力が上昇すると、ブラダの外側の空気は圧縮され、水が加圧状態で貯留される。配水管11内の圧力が低下すると、ブラダに保持された水は圧縮された空気によって配水管11内に押し出される。このようにして、ポンプ2が停止しても、しばらくの間、圧力タンク15から配水管11に水が供給される。
【0017】
制御ユニット10は、電動機3を変速可能とするインバータ22と、インバータ22の動作を制御する制御部20を備えている。インバータ22は制御部20に接続されている。本実施形態では、インバータ22および制御部20には、電源16から電力が供給される。制御部20は、インバータ22を構成するパワー素子(例えば、IGBTなどのスイッチング素子)のスイッチング動作を制御することで、電動機3の回転速度、すなわちポンプ2の回転速度を制御する。
【0018】
または、制御ユニット10は、インバータ22と、制御部20は通信やアナログ信号や接点信号にて接続され、インバータ22に制御部20より周波数指令値や発停信号を指令してもよい。その場合、インバータ22にCPU(不図示)を有し、インバータ22のCPUにてパワー素子(例えば、IGBTなどのスイッチング素子)のスイッチング動作を制御することで、電動機3の回転速度、すなわちポンプ2の回転速度を制御する。
【0019】
フロースイッチ12および圧力センサ13は信号線を介して制御部20に接続されている。ポンプ2の吐出側圧力の測定値は、圧力センサ13から制御部20に送られる。配水管11を流れる水の流量が減り、所定のポンプ停止条件が成立すると(例えば、水の流量が所定の値にまで低下したこと(小水量)を、フロースイッチ12が検出すると)、制御部20はポンプ2の指令速度を一時的に上げ、ポンプ2の吐出側圧力が所定の停止圧力になるまで、あるいは所定の蓄圧運転時間が経過するまで、圧力タンク15に蓄圧する蓄圧運転を行ってから、ポンプ2の運転を停止させる。ポンプ2の吐出側圧力が所定の始動圧力まで低下したことを圧力センサ13が検出すると、制御部20はポンプ2を始動させる。
【0020】
所望の圧力を有する水が給水器具19から吐出されるように、制御部20は、ポンプ2の回転速度を制御するための目標圧力値、ポンプ2を停止するときの目標圧である停止圧力、および、ポンプ2を始動するときの閾値である始動圧力を予め記憶しており、且つ後述するPI演算に必要な値を記憶するメモリなどの記憶部(後述する)を有する。さらに、制御部20は、圧力センサ13によって測定されるポンプ2の吐出側圧力を監視している。ポンプ2が始動すると、制御部20は、ポンプ2の吐出側圧力の測定値と目標圧力値との偏差に基づいて、ポンプ2の回転速度を制御する。より具体的には、制御部20は、目標圧力値とポンプ2の吐出側圧力の測定値との偏差を算出し、この偏差を0にするため、PI演算を行い、ポンプ2の回転速度指令値を算出する。上述したように、制御部20は、PI演算に関連する値を記憶する記憶部を有する。制御部20によって算出された回転速度指令値は、インバータ22に送られ、インバータ22は、送られた回転速度指令値に基づいて、電動機3の回転速度、すなわち、ポンプ2の回転速度を変更する。このように、制御部20は、インバータ22の動作を制御することで、ポンプ2の吐出側圧力を制御する。
【0021】
図3は、ポンプ2の自動運転制御を説明するためのグラフである。
図3の縦軸はポンプ2の吐出側圧力を表し、
図3の横軸は時間を表す。
図3に示されるように、インバータ22の動作を制御するための目標圧力値PSは一定(吐出圧力一定制御)とする。
【0022】
まず、ポンプ装置が最初に設置されたときは、吸込管4と配水管11(
図2参照)内に水は存在しない。この場合、圧力センサ13によって測定されるポンプ2の吐出側圧力の値は0である。このとき、制御部20は、ポンプ2の吐出側圧力値は始動圧力PO以下であると判断して、ポンプ2を始動する。その後、所定のポンプの停止条件が成立すると(例えば、吐出側圧力がある設定値以上であって、且つフロースイッチ12が小水量を検出すると)、圧力タンク15に蓄圧するため、蓄圧運転を行う。蓄圧運転中は、制御部20は、吐出側圧力を所定の停止圧力PEまで徐々に上昇する様に回転速度指令値を変化させ、ポンプ2の吐出側圧力が所定の停止圧力PEになるまで、あるいは所定の時間ポンプ2の運転を継続する。蓄圧運転が終了したらポンプ2を停止して小水量停止状態となる。この状態が、
図3における時刻T0の状態である。
【0023】
次に、時刻T1にて、ポンプ2の吐出側圧力が所定の始動圧力POまで低下すると、制御部20は、給水器具19にて水の使用があると認識し、ポンプ2を始動する(小停再始動)。制御部20は、吐出側圧力と目標圧力値PSの偏差ΔPを基にPI演算にて回転速度指令値を算出し、ポンプ2の回転速度を制御する。ポンプ2の始動後、吐出側圧力が目標圧力値PSまで到達し安定したら(時刻:T2)ポンプ2は定常運転となる。定常運転中は吐出側圧力と目標圧力値PSとの偏差を0にすべくPI制御を行う。更に、定常運転中に配水管11を流れる水の流量が減少(時刻:T3)しフロースイッチ12が小水量を検知し所定の停止条件が成立する(時刻:T4)と、制御部20は、給水器具19にて水の使用が無くなったと判断して、ポンプ2に蓄圧運転を行わせる。所定の停止条件とは、例えば、小水量の状態が一定時間以上経過する、あるいは吐出側圧力が所定範囲内で、かつ小水量の状態が成立するなどである。蓄圧運転中は、吐出側圧力が停止圧力PEに到達するまでポンプ2の回転速度を徐々に上昇させ一定時間停止圧力PEを保つ。その後、ポンプを停止(時刻:T5)する。
【0024】
なお、
図3において、時刻T4から次にポンプ2が始動するまでの間、小水量検知が検知されているが、蓄圧運転中には、圧力タンク15に貯水される流量によってフロースイッチ12における小水量検知信号が途切れることがある。よって、制御部20は、蓄圧運転中はフロースイッチ12が小水量検知信号を出力していなくても蓄圧運転を継続してもよい。
【0025】
一般的に、PI演算では、偏差に比例した操作量を出力するため任意の比例定数を用いる。この比例定数は使用する制御系にて所定の値に調整される。本実施形態のポンプ装置でも比例定数を調整する必要がある。ここで、定常運転に合わせて比例定数を調整すると、ポンプ2の始動後は、回転速度が指令回転数までに至るまでの間に圧力低下(偏差)が大きくなっていくため、この比例定数を用いたPI演算結果による回転速度指令値では、結果的に始動時の吐出側圧力が不足し給水器具19にて給水が途切れてしまう虞がある。一方、始動運転に合わせて調整した比例定数を用いると、制御部20が定常運転中における吐出側圧力の変動に過敏に反応してしまい、結果、吐出側圧力がハンチングしてしまい、給水器具19における給水量の安定性が悪くなる虞がある。これらの圧力変動を小さくするためには大きな容量の圧力タンクを設置し、圧力変動を圧力タンクにて吸収する等の対策が必要であった。
【0026】
また、水中ポンプユニット1を設置する井戸の水位は、各現場によって異なる。一例として、本実施形態におけるポンプ2の吸い上げ高さは8m〜40mまで対応可能である。したがって、井戸の水位と給水器具19の高低差、配管の圧損、吐出側の目標圧力等のポンプ装置の設置環境に合わせて、最適なポンプの2の吐出側圧力の制御を行う必要がある。
【0027】
そこで、ポンプ2の小停再始動時の始動回転速度F0を最適な値とし、小停再始動時の圧力低下時の応答性を向上するために、制御部20は、ポンプ2が停止する前の運転情報に基づいて、ポンプ2を次に始動するときのポンプ2の始動回転速度を決定する。本実施形態では、制御部20は、蓄圧運転時の回転速度指令値を監視し、制御部20にて記憶して、次に小停再始動する際の始動回転速度F0は、前回の蓄圧運転時の回転速度指令値を基に決定する。以下では、始動回転速度F0を最適な値とするための自動設定方法が説明される。
【0028】
図4は、ポンプ2の自動運転制御を更に詳細に説明するためのグラフである。
図4において
図3と同等の記号は同じ内容を意味する。
図4の上側のグラフにおいて、縦軸はポンプ2の吐出側圧力を表し、横軸は時間を表す。
図4の下側のグラフにおいて、縦軸はポンプ2の回転速度指令値を表し、横軸は時間を表す。また、
図4の上側のグラフと下側のグラフは同一時間軸とする。
【0029】
時刻T1にて、ポンプ2の吐出側圧力が所定の始動圧力POまで低下すると、制御部20は、ポンプ2の回転速度指令値として所定の始動回転速度F0をインバータ22に送る。ポンプ2の始動時の1回目のPI演算時は、前回の偏差と前回の回転速度指令値が存在しないため、予め定められた始動回転速度F0を回転速度指令値とする。制御部20は、吐出側圧力と目標圧力値PSの偏差ΔP1を前回の偏差として記憶し、さらに始動回転速度F0を前回の回転速度指令値F1として記憶する。ここで、「前回の偏差」とは、前回のPI演算時における吐出側圧力と目標圧力値PSとの偏差であり、「前回の回転速度指令値」とは、前回のPI演算によって算出された回転速度指令値をいう。
【0030】
回転速度指令値をインバータ22に送信してからPI演算周期ΔT経過後、制御部20は、ポンプ2の吐出側圧力と目標圧力値PSとの偏差ΔP2を算出し、さらに偏差ΔP2と偏差ΔP1との差分を基に回転速度の差分を算出し、この算出した差分を前回の回転速度指令値F1に加算して、回転速度指令値F2を決定する。そして、ポンプ始動時の1回目の回転速度指令値の算出時と同様に、制御部20は、吐出側圧力と目標圧力値PSの偏差ΔP2を前回の偏差として記憶し、さらに回転速度指令値F2を前回の回転速度指令値F1として記憶する。以降、ポンプ2が停止する時刻T5に至るまで、最適な回転速度指令値を算出するため、前回のPI演算のタイミングよりΔT経過後には、前回の偏差と前回の回転速度指令値を用いてPI演算を行う。
【0031】
ここで、ポンプ2の始動(時刻:T1)後は、回転速度を始動回転速度F0から徐々に上昇させることとなるが、特に、井戸の水位との給水器具19の高低差が大きい場合は、ポンプ2にて加圧した水が給水器具19まで到着するのには時間がかかるため、ポンプ始動回転速度F0が低いと、給水器具19における圧力が不足して給水が途切れてしまう虞がある。逆にポンプ2の始動回転速度F0が井戸の水位との給水器具19の高低差に対して大きすぎると、給水器具19にて必要以上に加圧された水が噴きだしてしまう虞がある。
【0032】
図5は、ポンプ2の特性を示す締切運転カーブを示したグラフである。C0は井戸の水位H0におけるポンプ2の締切運転カーブであり、C1は井戸の水位H1におけるポンプ2の締切運転カーブである。
図5に示すように、井戸の水位H1と水位H0とでは、停止圧力PEに達した時のポンプ2の回転速度が異なる。ここで、蓄圧運転時に、小水量検知状態である場合、蓄圧運転時のポンプ2の運転カーブは、ポンプ2の締切運転カーブにて近似できる。蓄圧運転時に、井戸の水位がH0の場合は、ポンプ2の回転速度は停止圧力にてF0_H0となり、井戸の水位がH1の場合は、ポンプ2の回転速度は停止圧力にてF0_H1となる。また、ポンプ設備における陸上ユニット5、および給水器具19の地上からの高さは施工時に決定され不変であるため、蓄圧運転時の回転速度より井戸の水位と陸上ユニット5、あるいは給水器具19との高低差を推測できる。
【0033】
よって、制御部20は、蓄圧運転時の回転速度指令値を監視および記憶し、次に小停再始動する際の始動回転速度F0を前回の蓄圧運転時の回転速度指令値を基に決定することにより、井戸の水位と給水器具の高低差を加味した始動回転速度F0とすることが出来る。ここで、上述したように蓄圧運転時には徐々に圧力を上昇させるため、始動回転速度F0の決定に用いる回転速度指令値は、蓄圧運転時における最大の回転速度指令値としてもよい。
【0034】
図4に示す実施形態では、前回の蓄圧運転時の回転速度指令値が始動回転速度F0として使用される。一実施形態では、始動回転速度F0の算出方法として、前回の蓄圧運転時の回転速度指令値に任意の係数を加算または乗算してもよい。この係数は固定値でもよいし、変数でも良い。変数とする一例として、ポンプ2の前回の始動時の吐出側圧力の低下を加味して、始動回転速度F0を求めてもよい。例えば、給水器具19がフラッシュ弁であると使用開始時に大量の水が使われるため、始動時の吐出側圧力の低下が大きくなる。そこで、前回のポンプ2の始動時の吐出側圧力の低下を制御部20に記憶し、この記憶された吐出側圧力の低下に従って変化する係数を制御部20にて決定し、前回の蓄圧運転時の回転速度指令値に係数を加算または乗算してもよい。具体的には、前回の始動時の吐出側圧力の低下に比例して係数を大きくするとよい。一実施形態では、前回の蓄圧運転時における最大の回転速度指令値に係数を加算または乗算してもよい。
【0035】
あるいは、目標吐出圧力の設定値を加味して、始動回転速度F0を求めてもよい。例えば、目標吐出圧力の設定値が高い場合、始動時の始動回転速度F0が低いと、始動時の吐出側圧力の低下が大きくなる。そこで、ポンプ2の目標圧力値に従って変化する係数を制御部20にて決定し、前回の蓄圧運転時の回転速度指令値に係数を加算または乗算してもよい。
【0036】
上述のように始動回転速度F0の自動算出方法を説明したが、井戸の水位がほぼ一定の場合は、始動回転速度F0は固定値として、制御部20より設定されてもよい。また、始動回転速度F0を自動算出するか固定値とするかの選択は、後述する表示器等により選択可能としてもよい。
【0037】
よって、蓄圧運転時のポンプ2の回転速度を基準にして、ポンプ2の始動回転速度F0を決定することにより、井戸の水位との給水器具19の高低差に応じたポンプ2の始動回転速度F0にてポンプ2を始動することができる。これにより、ポンプ2の始動時の圧力低下を防止するとともに、定常運転時の圧力変動を抑止することができる。更には、圧力変動が抑制されるため、圧力タンク12を小型化することができる。
【0038】
図6は本発明の第2の実施形態に係るポンプ装置を示す模式図である。第2の実施形態と第1の実施形態との違いは、水中ユニットが存在せず、ポンプ2とモータ3が陸上ユニット5内に設置され、ポンプ2の吸込口に接続された吸込管6が井戸内に設置されている点である。給水源である井戸内の水を陸上のポンプ2にて揚水し、給水器具19に給水を行う。その他の構成要素は第1の実施形態と同じなので説明を省略する。
【0039】
本実施形態においても、井戸の水位の変動にて、ポンプ2の始動回転速度F0を変更することにより第1の実施形態と同様に最適なPI制御を実施することが可能となる。
【0040】
図7は本発明の第3の実施形態に係るポンプ装置を示す模式図である。本実施形態のポンプ装置においては、ジェットポンプ部40が使用される。その他の構成は第2の実施形態と同様のため説明を省略する。このジェットポンプ部40は、陸上ユニット5内に設置されたポンプ2と、水の吸込口41aを有するジェット部41と、ポンプ2とジェット部41とを接続する圧力管42および揚水管43を備えている。本実施形態では、ジェット部41は、給水源である井戸の内部に配置されており、ジェット部41の吸込口41aは水中に没している。陸上のポンプ2から水が圧力管42を通ってジェット部41に供給されると、その揚水作用によって、井戸内の水が揚水管43より吸い上げられる。本実施形態に係るポンプ装置は、他の実施形態より深い井戸の水を揚水することができる。
【0041】
本実施形態においても、始動時において、第1の実施形態と同様のPI制御を実施することにより、第1の実施形態と同様の効果を上げることができる。
【0042】
次に、上述したポンプ装置のより詳細な構成について
図8を参照して説明する。
図8に示すように、ポンプ装置は、上述した始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御が実行されていることを含む運転情報を表示する表示器49をさらに備えている。制御部20は、設定部46、記憶部47、演算部48、I/O部50、および運転パネル51を備えている。運転パネル51は、ヒューマンインターフェースとして機能する。設定部46には、ポンプ2の運転制御に関する各種設定値が入力される。例えば、上述した圧力増加レートを算出するための設定時間TSが設定部46に入力される。設定部46および表示器49は、運転パネル51に設けられている。表示器49は液晶パネルであり、設定部46はタッチパネル式操作器でもよい。本実施形態では、表示器49は制御部20に取り付けられているが、表示器49は制御部20から離れて配置されてもよい。また、表示器49は液晶パネルと7セグメントLEDや表示灯を組み合わせた構成でもよい。
【0043】
記憶部47は、始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行の履歴なども記憶する。演算部48としては、CPUが使用される。表示器49は、ヒューマンインターフェースとして機能し、始動回転速度F0を用いたPI制御が実行されていることを含む運転情報を表示する。ユーザーは、設定部46上のクリアボタン53を押すことにより、表示器49での表示を消去することができる。
【0044】
図9は記憶部47の詳細を示す図である。
図9に示すように、記憶部47は、不揮発性メモリから構成された不揮発性記憶領域47aと、揮発性メモリから構成された揮発性記憶領域47bを備えている。不揮発性記憶領域47aは、始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行の履歴、ポンプ2の運転に必要な各種設定値、故障履歴、運転履歴などを記憶する領域である。揮発性記憶領域47bは、始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行、圧力信号、ポンプ回転速度、電流値、故障、警報などを記憶する領域である。
【0045】
図10はポンプ装置の他の実施形態を示す図である。本実施形態では、表示器49に加えて、外部表示器61がさらに設けられている。
図10に示すように、制御部20は通信部60をさらに備えている。制御部20は有線通信または無線通信によって外部表示器61に接続されている。外部表示器61として、例えばスマートフォンや携帯電話、パソコン、タブレットの汎用端末機器または遠隔監視器などの専用端末機器が採用される。本実施形態では、表示器49は7セグメントLEDや表示灯などの簡易な表示器であり、外部表示器61は液晶画面と液晶画面のタッチ入力方式や押圧ボタン方式用いた高機能表示器である。簡易な表示器49に比べて外部表示器61は表示できる情報量が格段に多いため、外部表示器61に始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御が実行されていることを表示することによって、ポンプ装置に不慣れなユーザーは誤解することなく、始動回転速度F0を用いたPI制御が実行されていることを認識することが出来る。
【0046】
ポンプ装置は機械室やポンプ室などの電気的なノイズの多い環境に設置されることがある。本実施形態によれば、ポンプ装置に組み込まれる表示器49として、液晶表示やタッチパネルよりも電気的ノイズに強い7セグメントLEDや表示灯、機械的な押圧ボタンなどにて構成された表示器を使用することにより、外部環境から発生される電気的なノイズにより外部表示器61の液晶表示やタッチパネル操作に異常が発生した場合でも、表示器49によりポンプ装置の運転に必要な最低限度の表示や操作を行うことが可能なため、ポンプ装置を電気的ノイズの多い環境下にも設置することができる。さらに、外部表示器61として、スマートフォン、携帯電話、パソコン、タブレットなどの汎用端末機器を使用すると、ユーザーは専用のアプリケーションソフトウエアを用いて、始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御が実行されていることを表示させることができるため、専用のアプリケーションソフトウエアを複数用意し使い分けることによりユーザーのレベルに沿った始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行の表示を提供することが可能である。
【0047】
図11はポンプ装置のさらに他の実施形態を示す図である。本実施形態では、制御部20に表示器49は設けられていなく、代わりに外部表示器(高機能表示器)61のみが設けられる。その他の構成は、
図10に示す実施形態と同様である。
図11に示す実施形態によれば、ポンプ装置には表示器自体を設ける必要がなくなるので、ポンプ装置全体のコストを更に下げることが可能である。
【0048】
図12はポンプ装置のさらに他の実施形態を示す図である。
図12において、表示器49は7セグメントLEDや表示灯などの簡易な表示器である。通信部60は公衆回線を介して保守管理会社または管理人室に設けられた外部表示器65に接続されている。制御部20は、始動回転速度F0を用いたPI制御が実行されていることを判断し、外部表示器65は制御部20に公衆回線を通じて定期的に通信し、始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御が実行されているか否かを制御部20に問い合わせる。そして、始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御が実行されている場合は、外部表示器65は始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御が実行されていることを表示する。外部表示器65は始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御が実行されていることを他の情報に追加的に表示してもよい。
【0049】
本実施形態の制御部20は、
図8に示すクリアボタン53を備えていなく、代わりに、外部表示器65は、
図12に示すように、クリアボタン66を備えている。ユーザーがこのクリアボタン66を押すと、外部表示器65上に表示されている始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行の表示が消去される。
【0050】
図13はポンプ装置のさらに他の実施形態を示す図である。本実施形態の制御部20の基本的構成は
図11に示す実施形態の制御部20の構成と同じであるが、制御部20が通信部60に代えて、制御部側アンテナ部67を備えている点、および制御部側アンテナ部67に接続された集積回路68を備えている点で異なっている。集積回路68は、不揮発性記憶領域47a、揮発性記憶領域47bを有する記憶部47に電気的に接続されている。なお、本実施形態の制御部20は表示器49を備えていないが、制御部20に表示器49を設けてもよい。
【0051】
外部表示器70は、電波を送受信する表示器側アンテナ部71と、表示器側アンテナ部71で受信したデータを読み取るデータリーダー74と、データリーダー74によって読み取られたデータ(例えば、始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行、ポンプ2の運転状態、吐出し圧力など)を表示する表示部72と、データリーダー74、表示器側アンテナ部71、および表示部72に電力を供給するバッテリー73とを備えている。外部表示器70として、例えばスマートフォンや携帯電話、パソコン、タブレット等の汎用端末機器でもよく、遠隔監視器などの専用の端末機器でもよい。特に、スマートフォンなどの汎用端末機器を外部表示器として使用すれば、専用の表示器を制作するコストが削減できるので、ポンプ装置のコストを下げることができる。また、複数のユーザーが個々の汎用端末機器に始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行を表示させることができるので、マンションやビルの管理人のようなポンプ装置に関する専門知識のないユーザーに対しても、始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御が実行されていることを分かり易く知らせることができるポンプ装置を安価に提供することができる。
【0052】
外部表示器70は、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)の技術によって制御部20と接続される。より具体的には、外部表示器70を制御部20に近づけた状態で、表示器側アンテナ部71が電波を発生すると、その電波を制御部側アンテナ部67が受け取り、制御部側アンテナ部67は電波を電力に変換する。この電力は集積回路68および記憶部47に供給されてこれら集積回路68および記憶部47を駆動する。集積回路68は記憶部47に記憶されている上記データを読み取り、制御部側アンテナ部67にデータを送る。制御部側アンテナ部67は、データとともに電波を表示器側アンテナ部71に送信する。データリーダー74は、表示器側アンテナ部71が受信したデータを読み取り、そのデータを表示部72に表示させる。
【0053】
外部表示器70は、始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行の表示を消去するためのクリアボタン66を備えている。ユーザーがこのクリアボタン66を押すと、表示部72に表示されている始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行の表示が消去される。本実施形態のクリアボタン66は、表示部72の画面上に現れる仮想的なボタンであるが、クリアボタン66は表示部72の外に設けられた機械的なボタンであってもよい。本実施形態の制御部20はクリアボタンを備えていないが、制御部20にクリアボタンを設けてもよい。なお、これらの操作には、操作制限を設けてもよい。具体的には、ユーザーが主に使用する外部表示器70にクリアボタン66を設け、メンテナンス員が主に使用する制御部20にリセットボタン52を設ける。このように制御部20にのみリセットボタン52を設けることで、ユーザーのリセットボタン52の誤操作を防ぐことができる。パスワード等の複雑な使用制限の解除方法ではなく、外部表示器70を設けることで、ユーザーの誤操作による始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行のクリアを防止することができる。
【0054】
本実施形態では、外部表示器70と制御部20との間で無線通信が行われ、記憶部47に記憶されている始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行などを含むデータは、制御部20から外部表示器70に送られる。本実施形態によれば、ポンプ装置の電源が入っていない場合でも、制御部側アンテナ部67は外部表示器70から発せられる電波から電力を発生し、集積回路68および記憶部47を駆動することができる。したがって、ポンプ装置のメンテンナンス中などにおいて制御部20に電力が供給されていないときでも、外部表示器70は、制御部20の記憶部47から始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行の履歴を含むデータを取得し、該データを表示することができる。
【0055】
制御部20が故障した場合には新制御部20に交換する必要がある。この制御部20の交換時に、故障した旧制御部20はすでに電源が入らない状態においても、本実施形態では、旧制御部20の始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行の履歴に関するデータを新制御部20の記憶部47に継承することが可能となる。具体的には、旧制御部20の記憶部47の該データを外部表示器70にて表示し、その表示を確認しながらメンテナンス員が新制御部20の操作部より入力し、新制御部20の記憶部47に該データを記憶させてもよいし、旧制御部20の該データを外部表示器70にて取得し、外部表示器70から新しい制御部20の記憶部47へと通信手段にて書き込んでもよい。制御部20の電源が入らない状態で故障しても、不揮発性記憶領域47aに記憶されているデータを新制御部20の記憶部47に継承できるので、始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行の履歴のデータが損失されることない。これは、ポンプ装置が新制御部20にて自動運転を開始した後でも、始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行の履歴を表示することができることを意味する。
【0056】
本実施形態によれば、ポンプ装置に電力が供給されていないときでも、ユーザーやメンテナンス員が外部表示器70を制御部20に近づけるだけで、記憶部47から始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行の履歴を含む情報を取得することが可能である。
【0057】
本実施形態で採用される近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)は、数cmの近距離でのみ相互通信が可能な技術である。したがって、外部表示器70に始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行やその他の各種情報を表示させるためには、ユーザーやメンテナンス員は外部表示器70を制御部20に近づける必要がある。このことは、外部表示器70を操作するときは、ユーザーやメンテナンス員はポンプ装置の近くにいることを意味する。したがって、ユーザーやメンテナンス員はポンプ装置を目視しながら外部表示器70を操作することになり、誤操作に起因したポンプ装置の予期しない動作を防止することに繋がる。また、複数のポンプ装置が設置された現場では、始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行を表示したいポンプ装置の近距離でのみ通信可能となる為、無線通信にてよくある意図しない別のポンプ装置の始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行を表示してしまうという誤表示を防止することが出来る。
【0058】
図14はポンプ装置のさらに他の実施形態を示す図である。本実施形態では、制御部20は通信部60を備えている。通信部60は、有線通信または無線通信によって外部表示器75の通信部76に接続されている。外部表示器75は制御部80を備えており、制御部80は通信部76、記憶部77、演算部78、および表示部79を備えている。制御部20は、表示器49を備えていてもよい。また、記憶部77は記憶部47と同様に
図9の構成とする。
【0059】
図15はポンプ装置のさらに他の実施形態を示す図である。本実施形態では、制御部20には表示器は設けられておらず、代わりに、外部表示器75に表示部79と設定部82が設けられている。その他の構成は
図14に示す実施形態と同様である。本実施形態では、始動回転速度F0の自動調整機能を用いたPI制御の実行の状態は表示部79に表示され、その他各種設定値の入力は、外部表示器75の設定部82を通じて行われる。
【0060】
上述した実施形態において、定常時の圧力制御として圧力一定制を例として説明したが、該知の推定末端圧制御でもよい。また、小水量の検知はフロースイッチ12を用いたが、フロースイッチ12を用いずに他の手段にて小水量を検知してもよい。例えば、小水量時はインバータの負荷が減るため、電流値が過少となる。この過少電流値を監視してもよいし、電磁流量計等の他の検出手段でも良い。更には、ポンプ12の台数は複数台でもよい。
【0061】
また、上述した実施形態において、I/O部50は制御部20に備えられているが、外部表示器75、あるいは外部機器(図示しない)内に備えていてもよい。
【0062】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。