【文献】
Ozgur Oyman et al.,Quality of experience for HTTP adaptive streaming services,IEEE Communications Magazine,IEEE,2012年 4月 5日,Volume: 50 , Issue: 4 , April 2012,pp.20-27,IEL Online,URL,https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=6178830
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エンコードレート決定部は、候補エンコードレートを下げていったときの前記Nの変化量が閾値以下となる場合には、前記Nの変化量が閾値以下となる直前の候補エンコードレートを新たなエンコードレートとして決定することを特徴とする、請求項2に記載の配信サーバ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アダプティブストリーミングは、回線品質の劣化による動画再生の途切れを抑制することができるが、以下に述べる課題がある。
【0006】
従来のアダプティブストリーミングでは、配信サーバは、専ら高品質、中品質、低品質のエンコードレートの動画ストリームを生成する。受信できる品質の上限は、受信者の設置したインターネット受信環境の持つ潜在的な性能(回線容量)により、おのずと決まる。例えば、光回線の契約世帯は高品質の動画を受信できるが、メタル回線やモバイル回線といった回線容量の低い通信環境を利用している場合には、中品質あるいは低品質の動画を受信せざるを得ない。したがって、インターネットの回線品質を無視したとき、高品質、中品質、低品質の動画を受信する受信装置数の構成は、受信者設備等の回線容量で決まる。
【0007】
実際には、インターネットの輻輳等の品質劣化要因(受信状況)は時々刻々と変化する。アダプティブストリーミングでは、受信装置は受信状況に応じて再生可能な品質を適宜、自律的に選択するため、動画再生の途切れは発生しにくい。しかし、例えば高品質から、中品質や低品質に急に品質が変化した場合(最悪、途切れた場合)には、ユーザは品質劣化を体感し、それが繰り返される頻度が多いほど不快に感じてしまう。
【0008】
急な品質劣化を避ける方法として、例えば高品質と中品質の間や、中品質と低品質の間の品質の多くの動画ストリームをあらかじめ生成することで、受信装置が選択する品質が変化した場合でも、品質の変化量を小さくすることができる。しかし、品質種類が多くなればなるほどエンコード処理量は増加し、ハードウェア処理であればマシン台数の増加につながり、ソフトウェア処理であれば演算量の増加につながる。すなわち、コスト増加につながる。
【0009】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、エンコード処理にかかるコストを増加させることなく、受信状況の変化に伴う動画再生の品質変化を緩やかにし、ユーザに品質劣化を体感させにくくすることが可能な動画配信システム、配信サー
バ、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る動画配信システムは、動画コンテンツを配信する配信サーバと、該配信サーバから動画コンテンツを受信する複数の受信装置とを備える動画配信システムであって、前記受信装置はそれぞれ、前記配信サーバからマニフェストファイルを取得するマニフェスト取得部と、前記配信サーバから動画コンテンツのセグメントを取得するセグメント取得部と、前記セグメントをデコードして再生する再生部と、通信速度及びバッファ蓄積量を前記配信サーバに送信する端末情報送信部と、を備え、前記配信サーバは、前記複数の受信装置から取得した、各受信装置の前記通信速度及び前記バッファ蓄積量に基づいて、動画コンテンツの複数の品質に対応する複数のエンコードレートを適応的に決定するエンコードレート通知部と、前記エンコードレートに基づいてマニフェストファイルを生成するマニフェスト生成部と、前記エンコードレートでエンコードされた動画ストリームを分割してセグメントを生成するセグメント生成部と、を備え
、前記エンコードレート通知部は、前記複数の受信装置から、各受信装置の通信速度及びバッファ蓄積量を取得する受信状況取得部と、セグメントの品質毎に、セグメントを受信している受信装置の数を集計する品質毎集計部と、エンコードレートの変更値の候補となる候補エンコードレートを複数決定し、各候補エンコードレートに対応する品質毎に、セグメントを受信する受信装置の数を予測する品質毎集計予測部と、前記品質毎集計部により集計した受信装置の数と、前記品質毎集計予測部により予測した受信装置の数との差Nに基づいて、前記複数の候補エンコードレートから新たなエンコードレートを決定するエンコードレート決定部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る配信サーバは、動画コンテンツを複数の受信装置に配信する配信サーバであって、前記複数の受信装置から取得した、各受信装置の通信速度及びバッファ蓄積量に基づいて、動画コンテンツの複数の品質に対応する複数のエンコードレートを適応的に決定するエンコードレート通知部と、前記エンコードレートに基づいてマニフェストファイルを生成するマニフェスト生成部と、前記エンコードレートに基づいてエンコードされたデータを分割してセグメントを生成するセグメント生成部と、を備え
、前記エンコードレート通知部は、前記複数の受信装置から、各受信装置の通信速度及びバッファ蓄積量を取得する受信状況取得部と、セグメントの品質毎に、セグメントを受信している受信装置の数を集計する品質毎集計部と、エンコードレートの変更値の候補となる候補エンコードレートを複数決定し、各候補エンコードレートに対応する品質毎に、セグメントを受信する受信装置の数を予測する品質毎集計予測部と、前記品質毎集計部により集計した受信装置の数と、前記品質毎集計予測部により予測した受信装置の数との差Nに基づいて、前記複数の候補エンコードレートから新たなエンコードレートを決定するエンコードレート決定部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明に係る配信サーバにおいて、前記エンコードレート通知部は、前記複数の受信装置から、各受信装置の通信速度及びバッファ蓄積量を取得する受信状況取得部と、セグメントの品質毎に、セグメントを受信している受信装置の数を集計する品質毎集計部と、エンコードレートの変更値の候補となる候補エンコードレートを複数決定し、各候補エンコードレートに対応する品質毎に、セグメントを受信する受信装置の数を予測する品質毎集計予測部と、前記品質毎集計部により集計した受信装置の数と、前記品質毎集計予測部により予測した受信装置の数との差Nに基づいて、前記複数の候補エンコードレートから新たなエンコードレートを決定するエンコードレート決定部と、を備える特徴とする。
【0013】
さらに、本発明に係る配信サーバにおいて、前記エンコードレート決定部は、前記Nが最も小さくなるときの候補エンコードレートを新たなエンコードレートとして決定することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明に係る配信サーバにおいて、前記エンコードレート決定部は、前記Nが閾値以下となったときの候補エンコードレートを新たなエンコードレートとして決定することを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明に係る配信サーバにおいて、前記エンコードレート決定部は、候補エンコードレートを下げていったときの前記Nの変化量が閾値以下となる場合には、前記Nの変化量が閾値以下となる直前の候補エンコードレートを新たなエンコードレートとして決定することを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明に係る配信サーバにおいて、前記複数の候補エンコードレートは、最も低いエンコードレートについては固定値であることを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明に係る配信サーバにおいて、緊急情報を受信する緊急情報受信部と、前記緊急情報が入力された場合には前記エンコードレート決定部により決定されたエンコードレートを低下させるエンコードレート調整部と、を更に備えることを特徴とする。
【0019】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、上記配信サーバとして機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、エンコード処理にかかるコストを増加させることなく、受信状況の変化に伴う動画再生の品質変化を緩やかにし、ユーザに品質劣化を体感させにくくすることができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
(動画配信システム)
図1に、本発明の一実施形態に係る動画配信システムの概念図を示す。動画配信システム1は、配信サーバ10と、複数の受信装置20(20−1,20−2,・・・,20−n)とを備える。配信サーバ10と複数の受信装置20とは、インターネット30を介して接続される。
【0024】
配信サーバ10は、受信装置20からの動画配信要求に応じて、アダプティブストリーミング方式により動画ストリームを生成し、インターネット30を経由して受信装置20に配信する。配信サーバ10は、品質(エンコードレート)の異なる複数のセグメントと、動画コンテンツの属性やURLを記述したマニフェストファイルを用意する。本実施形態では、高品質、中品質、低品質の3種類のセグメントが用意されているものとする。
【0025】
受信装置20は、配信サーバ10からマニフェストファイルを取得し、内容を解析する。そして、マニフェストファイルに記述された情報を基に、配信サーバ10に対して配信要求を行う。配信サーバ10からセグメントを受信すると、セグメントを1本の動画コンテンツにつなぎ合わせて再生する。
【0026】
(受信装置)
まず、受信装置20の構成について説明する。
図2に、本発明の一実施形態に係る受信装置20の構成例を示す。
図2に示す受信装置20は、マニフェスト取得部21と、セグメント取得部22と、バッファ23と、デコード部24と、再生部25と、受信状況計測部26と、端末情報送信部27とを備える。なお、図中の矢印は主なデータの流れを示すものであって、双方向にデータをやり取りしてもよい。
【0027】
マニフェスト取得部21は、アプリケーション起動時又は番組選択時に、マニフェスト要求(リクエスト)を生成して配信サーバ10に送信する。そして、配信サーバ10から該要求に対するレスポンスとして所望の番組のマニフェストファイル(MPDファイル)を取得する。そして、マニフェストファイルを基にセグメント開始時刻及びセグメントのURLを対応付けたセグメントURLリストを生成し、セグメント取得部22に出力する。
【0028】
受信状況計測部26は、受信状況として、通信速度(セグメントの受信速度)、及びバッファ23の蓄積量を定期的に計測し、セグメント取得部22及び端末情報送信部27に出力する。通信速度は、例えばバッファ23の1秒当たりの蓄積量の変化から求めることができる。
【0029】
セグメント取得部22は、マニフェスト取得部21から入力されたセグメントURLリストから、セグメント開始時刻に対応付けられたセグメントのURLを抽出する。そして、受信状況計測部26から入力された受信状況(通信速度及びバッファ蓄積量)に基づき、高品質、中品質、低品質の3種類のセグメントから1つを選択し、選択したセグメントのURLを含むセグメント要求(リクエスト)を生成して配信サーバ10に送信する。受信状況計測部26から受信状況が入力される前においては、予め決められた品質を選択する。例えば、光回線に接続されている受信装置20は高品質を選択し、メタル回線に接続されている受信装置20は中品質を選択し、モバイル回線に接続されている受信装置20は低品質を選択する。
【0030】
なお、セグメント取得部22は、アダプティブストリーミングが従来持つ仕組みにより、複数種類のセグメントのうち一つを選択するようにしてもよい。セグメント取得部22は、配信サーバ10から該要求に対するレスポンスとして対応するセグメントを取得すると、バッファ23に蓄積する。
【0031】
バッファ23は、セグメント取得部22から入力されたセグメントを一時的に蓄積しておくメモリである。
【0032】
デコード部24は、再生部25から要求されたセグメントをバッファ23から読み出す。そして、読み出したセグメントをメディアの形式(映像、音声、テキスト等)に従ってデコードし、再生部25に出力する。
【0033】
再生部25は、再生開始時刻情報を含む再生命令を入力すると、再生開始時刻に基づいてセグメントを再生する。また、停止命令を入力した場合には、再生を停止する。
【0034】
端末情報送信部27は、受信状況計測部26から入力された受信状況(通信速度及びバッファ蓄積量)、及び受信装置を識別する識別情報を含む端末情報を、定期的に配信サーバ10に送信する。
【0035】
なお、上述した受信装置20として機能させるためにコンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、受信装置20の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを該コンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。なお、このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録可能である。
【0036】
(第1の実施形態に係る配信サーバ)
配信サーバについては実施形態を2つ挙げる。まず、第1の実施形態について説明する。
図3に、本発明の第1の実施形態に係る配信サーバ10の構成例を示す。
図3に示す配信サーバ10は、端末情報受信部11と、エンコードレート通知部12と、エンコーダ13と、マニフェスト生成部14と、セグメント生成部15と、マニフェスト送信部16と、データ生成部17と、セグメント送信部18とを備える。エンコーダ13は、配信サーバ10の外部に設けられる装置であってもよい。なお、図中の矢印は主なデータの流れを示すものであって、双方向にデータをやり取りしてもよい。また、マニフェストファイルやセグメントなどのデータを一時的に蓄積するバッファの図示は省略する。
【0037】
端末情報受信部11は、受信装置20からあらかじめ指定した時間間隔で送信される端末情報を受信し、端末情報に含まれる受信状況をエンコードレート通知部12に出力する。
【0038】
エンコードレート通知部12は、端末情報受信部11から受信状況が入力される度に、動画コンテンツの複数の品質(高品質、中品質、低品質)に対応するエンコードレートを適応的に決定し、エンコーダ13及びマニフェスト生成部14に出力する。エンコードレート通知部12の詳細については後述する。
【0039】
エンコーダ13は、エンコードレート通知部12から通知されたエンコードレートで動画をエンコードして動画ストリームを生成し、セグメント生成部15に出力する。
【0040】
マニフェスト生成部14は、エンコードレート通知部12から入力されたエンコードレートに基づいてマニフェストファイルを生成し、マニフェスト送信部16及びデータ生成部17に出力する。マニフェストファイルに記述するエンコードレートは、エンコードレート通知部12から通知されたエンコードレートに基づいて随時変更される。
【0041】
図4にMPEG−DASH形式のマニフェストファイルの一例(抜粋)を示す。MPD形式ではPeriod,AdaptationSet,Representationの順に階層構造となっている。Periodは、番組を時間方向に一つ又は複数に区切った一区画を示している。Periodは一つ以上のAdaptationSetから構成される。
【0042】
AdaptationSetは、メディアのコンポーネント(映像、音声、テキストなど)の情報を示しており、同じメディアでパラメータ(ビットレートや画像サイズ、音声のチャンネル数など)の異なる複数のコンポーネントを含むことができる。
【0043】
Representationは、AdaptationSetに含まれるそれぞれのメディアのコンポーネントの画像サイズ、エンコードレート、そのファイルの格納場所(例えば、URL)などの情報を示しており、一つ以上のセグメントで構成される。
【0044】
マニフェスト生成部14は、エンコードレートを変更する場合には、マニフェストファイルのbandwidthの値を、エンコードレート通知部12から通知されたエンコードレートの値に書き換える。
図4(a)はエンコードレートの変更前のマニフェストファイルの一例であり、低品質、中品質、高品質の動画のエンコードレートはそれぞれ240kbps、10Mbps、20Mbpsである(
図4(a)の下線部参照)。
図4(b)はエンコードレートの変更後のマニフェストファイルの一例であり、低品質の動画のエンコードレートは240kbpsで変わらないが、中品質、高品質の動画のエンコードレートがそれぞれ7.2Mbps、18.5Mbpsに変更されている(
図4(b)の下線部参照)。
【0045】
マニフェスト送信部16は、受信装置20からマニフェスト要求を受信すると、マニフェスト生成部14から入力されたマニフェストファイルを該受信装置20に送信する。
【0046】
セグメント生成部15は、エンコーダ13から入力された動画ストリームを分割して所定の形式のセグメントを生成し、データ生成部17に出力する。
【0047】
データ生成部17は、マニフェスト生成部14から入力されたマニフェストファイルに基づき、セグメント生成部15から入力されたセグメントを所定のアダプティブストリーミングのファイル形式に変換し、セグメント送信部18に出力する。
【0048】
セグメント送信部18は、受信装置20からセグメント要求を受信すると、データ生成部17から入力されたセグメントを該受信装置20に送信する。
【0049】
(エンコードレート通知部)
つぎに、エンコードレート通知部12の処理内容について、
図5を参照して説明する。
図5は、エンコードレート通知部12の構成例を示すブロック図である。
図5に示すエンコードレート通知部12は、受信状況取得部121と、品質毎集計部122と、受信状況分析部123と、品質毎集計予測部124と、エンコードレート決定部125とを備える。なお、図中の矢印は主なデータの流れを示すものであって、双方向にデータをやり取りしてもよい。
【0050】
受信状況取得部121は、端末情報受信部11から複数の受信装置20の受信状況(通信速度及びバッファ蓄積量)を取得し、品質毎集計部122及び受信状況分析部123に出力する。
【0051】
品質毎集計部122は、受信状況取得部121から受信状況が入力される度に、各受信装置20がどの品質のセグメントを要求しているかを把握し、高品質のセグメントを受信している受信装置20の数H
nowと、中品質のセグメントを受信している受信装置20の数M
nowと、低品質のセグメントを受信している受信装置20の数L
nowをそれぞれ集計し、集計した品質毎受信装置数H
now、M
now、L
nowを品質毎集計予測部124及びエンコードレート決定部125に出力する。あるいは、品質毎集計部122は、受信装置20から受信したセグメント要求からどの品質のセグメントを要求しているかを把握し、品質毎受信装置数H
now、M
now、L
nowを集計してもよい。
【0052】
受信状況分析部123は、受信状況取得部121から受信状況が入力される度に、各受信装置20受信状況の良否を判定し、判定結果を品質毎集計予測部124に出力する。例えば、バッファ蓄積量が所定のバイト数よりも多い場合には受信状況が良いと判定し、バッファ蓄積量が所定のバイト数以下になった場合に受信状況が悪いと判定する。また、受信状況が良い場合にはエンコードレートをどれだけ高くしたセグメントを受信可能か判定し、受信状況が悪い場合にはエンコードレートをどれだけ低くしたセグメントを受信可能か判定する。
【0053】
例えば、当初、高品質の20Mbpsのセグメントを受信していた受信装置20が、回線品質の劣化によりバッファ蓄積量が少なくなってきた場合、品質を切り替えて中品質の10Mbpsのセグメントを要求すると予測される。しかし、高品質に対応するエンコードレートを20Mbpsから18Mbpsに変更した場合には、中品質の10Mbpsのセグメントを要求することなく、高品質の18Mbpsのセグメントを要求すると予測される。
【0054】
そこで、品質毎集計予測部124は、高品質、中品質、低品質に対応する各エンコードレートの変更値の候補となる候補エンコードレートを複数決定する。そして、品質毎集計予測部124は、品質毎集計部122から入力された品質毎受信装置数H
now、M
now、L
nowと、受信状況分析部123から入力された判定結果とに基づき、候補エンコードレートに対応する品質毎に、セグメントを受信する受信装置の予測数(品質毎予測受信装置数)H
after,M
after,L
afterを求め、エンコードレート決定部125に出力する。この処理を候補エンコードレートの値を変えながら、繰り返し行う。すなわち、高品質、中品質、低品質に対応するエンコードレートの値を変更させたと仮定して、高品質のセグメントを受信すると予測される受信装置20の数H
afterと、中品質のセグメントを受信すると予測される受信装置20の数M
afterと、低品質のセグメントを受信すると予測される受信装置20の数L
afterを求める。
【0055】
品質毎集計予測部124は、候補エンコードレートの試行順番は任意とすることができる。例えば、受信状況が良い受信装置20の割合が閾値以上である場合には、現状よりもエンコードレートが高い候補エンコードレートを、現状のエンコードレートとの差が徐々に大きくなる順番で試行するようにしてもよい。また、受信状況が悪い受信装置20の割合が閾値以上である場合には、現状よりもエンコードレートが低い候補エンコードレートを、現状のエンコードレートとの差が徐々に大きくなる順番で試行するようにしてもよい。
【0056】
候補エンコードレートの変化量は高品質、中品質、低品質ともに同一であってもよいし、品質毎に変化量の大きさが異なってもよい。例えば、高品質、中品質、低品質に対応するエンコードレートの初期値が20Mbps、10Mbps、240kbpsである場合、候補エンコードレートは高品質を0.5Mbpsきざみで20Mbps〜15Mbpsとし、中品質を0.5Mbpsきざみで10Mbps〜5Mbpsとし、低品質を240kbps又は120kbpsとする。
【0057】
ここで、低品質に対応するエンコードレートを低く設定している場合には、更にエンコードレートを下げると映像が途切れてしまうおそれがある。そのため、複数の候補エンコードレートは、最も低いエンコードレートについては固定値(例えば、初期値のまま)としてもよい。
【0058】
エンコードレート決定部125は、品質毎集計部122により集計した受信装置20の数と、品質毎集計予測部124により予測した受信装置の数との差、すなわち、エンコードレートを候補エンコードレートに変更した場合に受信するセグメントの品質を変更すると予測される受信装置20の総数(予測品質変更数)Nを求める。Nは式(1)で表される。そして、予測品質変更数Nに基づいて、複数の候補エンコードレートから新たなエンコードレートを決定し、エンコーダ13及びマニフェスト生成部14に出力する。
【0060】
候補エンコードレートから新たなエンコードレートを決定する例を、以下に説明する。第1のエンコードレート決定例では、エンコードレート決定部125は、予測品質変更数Nが最小となるときの候補エンコードレートを新たなエンコードレートとして決定する。
【0061】
第2のエンコードレート決定例では、品質毎集計予測部124は、エンコードレート決定部125から予測品質変更数Nを取得して予測品質変更数Nが閾値以下となったときにはその時点で処理を停止し、エンコードレート決定部125は、予測品質変更数Nが閾値以下となったときの候補エンコードレートを新たなエンコードレートとして決定する。
【0062】
また、候補エンコードレートを下げていってもあるところから予測品質変更数Nが小さくならず、予測品質変更数Nの変化量が閾値以下となる場合には、回線に異常が発生していると考えられる。そのため、第3のエンコードレート決定例では、品質毎集計予測部124は、エンコードレート決定部125から予測品質変更数Nを取得して予測品質変更数Nの変化量が閾値以下となったときにはその時点で処理を停止し、エンコードレート決定部125は、予測品質変更数Nの変化量が閾値以下となる直前の候補エンコードレートを新たなエンコードレートとして決定する。
【0063】
例えば、表1に示すように、高品質の候補エンコードレートを20Mbpsから0.5Mbpsきざみで下げていったときに、予測品質変更数Nの変化量の閾値が20である場合、予測品質変更数Nの変化量が閾値以下となる直前の候補エンコードレートである18.0Mbpsを新たなエンコードレートとして決定する。
【0065】
また、候補エンコードレートの値を上げていった場合には、低い品質に切り替える受信装置20が増加すると考えられる。そのため、第4のエンコードレート決定例では、品質毎集計予測部124は、エンコードレート決定部125から予測品質変更数Nを取得して予測品質変更数Nの変化量が閾値以上となったときにはその時点で処理を停止し、エンコードレート決定部125は、予測品質変更数Nの変化量が閾値以上となる直前の候補エンコードレートを新たなエンコードレートとして決定する。
【0066】
図6は、本発明の効果を説明する図である。
図6(a)に示すように高品質、中品質、低品質のセグメントを受信している受信装置20の数がそれぞれ同じであった場合に、ネットワークの輻輳等が発生すると、従来は
図6(b)に示すように高品質のセグメントを受信していた受信装置の一部は中品質のセグメントを受信するようになり、中品質のセグメントを受信していた受信装置の一部は低品質のセグメントを受信するようになる。品質間のエンコードレートの差が大きい程、ユーザの体感品質の変化が大きくなる。また、低品質においては途切れが発生してしまう。
【0067】
本発明では、配信サーバ10は、受信装置20の通信速度及び前記バッファ蓄積量に基づいて、動画コンテンツの複数の品質に対応するエンコードレートを適応的に決定し、
図6(c)に示すようにエンコードレートを略高品質、略中品質、略低品質に緩やかに変更させる。そのため、受信するセグメントの品質を大きく変更する受信装置20の数を少なくすることができ、アダプティブストリーミングの仕組みをそのまま利用しながらも、体感品質の維持を図ることができるようになる。
【0068】
また、本発明は、あらかじめ多くの品質の動画ストリームを用意しておくのではなく、生成する動画ストリームの数は変わらないため、エンコーダ13によるエンコード処理にかかるコストを増加させることもない。
【0069】
なお、上述した配信サーバ10として機能させるためにコンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、配信サーバ10の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを該コンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。なお、このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録可能である。
【0070】
(第2の実施形態に係る配信サーバ)
つぎに、第2の実施形態に係る配信サーバについて説明する。第1の実施形態に係る配信サーバ10は、端末情報に基づいてエンコードレートを決定したが、端末情報に加えて他の情報に基づいてエンコードレートを決定してもよい。そこで、第2の実施形態では、端末情報及び緊急情報に基づいてエンコードレートを決定する配信サーバについて説明する。
【0071】
図7に、本発明の第2の実施形態に係る配信サーバ40の構成例を示す。
図7に示す配信サーバ40は、端末情報受信部11と、緊急情報受信部41と、エンコードレート通知部42と、エンコーダ13と、マニフェスト生成部14と、セグメント生成部15と、マニフェスト送信部16と、データ生成部17と、セグメント送信部18とを備える。配信サーバ40は、第1の実施形態に係る配信サーバ10と比較して、更に緊急情報受信部41を備え、エンコードレート通知部12に代えてエンコードレート通知部42を備える点が相違する。その他の構成については配信サーバ10と同一であるため、同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0072】
緊急情報受信部41は、緊急情報を受信すると、エンコードレート通知部42に出力する。緊急情報は、例えば、緊急地震速報のテレビ放送のチャイム音を検知して発報される信号や、気象庁が発表する緊急地震速報である。
【0073】
エンコードレート通知部42は、配信サーバ10のエンコードレート通知部12と同様に、端末情報受信部11から受信状況が入力される度に、動画コンテンツの複数の品質に対応するエンコードレートを適応的に決定し、エンコーダ13及びマニフェスト生成部14に出力するが、緊急情報が入力された場合には、エンコードレートを一定の時間低下させる。
【0074】
図8は、エンコードレート通知部42の構成例を示すブロック図である。
図8に示すエンコードレート通知部42は、受信状況取得部121と、品質毎集計部122と、受信状況分析部123と、品質毎集計予測部124と、エンコードレート決定部125と、エンコードレート調整部421とを備える。なお、図中の矢印は主なデータの流れを示すものであって、双方向にデータをやり取りしてもよい。エンコードレート通知部42は、第1の実施形態に係る配信サーバ10のエンコードレート通知部12と比較して、エンコードレート調整部421を更に備える点が相違する。その他の構成についてはエンコードレート通知部12と同一であるため、同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0075】
エンコードレート調整部421は、緊急情報が入力された場合には、エンコードレート決定部125により決定されたエンコードレートを一定の時間低下させる。低下させる時間は任意(例えば30秒)に設定することができ、この時間が経過した後、エンコードレートを原状に戻す。
【0076】
エンコードレート調整部421は、エンコードレートとともにフレームレートを低下させてもよい。例えば、フレームレートを、30フレーム/秒の1/30にあたる1フレーム/秒としたときには、エンコードレートも1/30としてもよいし、フレーム内の画質(特に地図情報と文字情報の画質)を向上させるために1/1〜1/30の間で任意に設定できるようにしてもよい。
【0077】
第1の実施形態に係る配信サーバ10では上述のように体感品質の維持を図ることができるが、気象庁の発表に基づく緊急地震速報のテレビ放送をストリーミング動画配信する際に動画再生の品質が低下したような場合には、画面にスーパーインポーズ表示される地図情報や文字情報の視認性が低下してしまう。このような場合に、第2の実施形態に係る配信サーバ40では動画のフレームレートを低下させるため、各フレームの動画品質を維持し、緊急地震速報の地図情報や文字情報の劣化を抑えて再生することが可能となる。
【0078】
なお、上述した配信サーバ40として機能させるためにコンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、配信サーバ40の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを該コンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。なお、このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録可能である。
【0079】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。