特許第6793676号(P6793676)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6793676光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造装置および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793676
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/018 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   C03B37/018 C
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-70632(P2018-70632)
(22)【出願日】2018年4月2日
(65)【公開番号】特開2019-182668(P2019-182668A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2020年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】野田 直人
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 均
(72)【発明者】
【氏名】井上 大
【審査官】 大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−217330(JP,A)
【文献】 特表2015−502316(JP,A)
【文献】 特開2005−225747(JP,A)
【文献】 特開昭63−285131(JP,A)
【文献】 特開2012−020905(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/005332(WO,A1)
【文献】 特表2001−512085(JP,A)
【文献】 特開昭63−134531(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/104359(WO,A1)
【文献】 特開2003−073131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/018
C03B 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発材上にガラス微粒子を堆積して多孔質ガラス母材を製造する方法であって、液体状態の有機ケイ素化合物原料とキャリアガスとを気化器に供給する工程と、該気化器において、液体状態の有機ケイ素化合物原料とキャリアガスとを混合し、気化して原料混合ガスに変換する工程と、該原料混合ガスと可燃性ガスとをバーナーに供給し燃焼させ、生成したSiO2微粒子をバーナーから噴出させる工程と、該気化器とバーナーとが同期し一体となって出発材の長手方向に対して平行に移動を繰り返すことで、バーナーから噴出したSiO2微粒子を出発材上に堆積する工程とからなることを特徴とする光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法。
【請求項2】
前記有機ケイ素化合物原料が、純度99質量%以上有するオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)である請求項1に記載の光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法。
【請求項3】
前記キャリアガスとして、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いて原料混合ガスとする請求項1に記載の光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法。
【請求項4】
前記原料混合ガスに、さらに酸素を混合して前記バーナーに供給する請求項3に記載の光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法。
【請求項5】
前記キャリアガスとして、酸素又は酸素と不活性ガスとの混合ガスを用いる請求項1に記載の光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法。
【請求項6】
多孔質ガラス母材を製造する製造装置であって、出発材の長手方向に沿って平行移動しつつ該出発材上にSiO2微粒子を堆積させるバーナーと、液体状態の有機ケイ素化合物原料を気体状態に変換してバーナーに供給する気化器と、該気化器に前記有機ケイ素化合物原料を供給する原料腋用配管とを備え、該気化器がバーナーと一体となって移動可能に設置されていることを特徴とする光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造装置。
【請求項7】
前記原料液用配管が、バーナーに追従して移動する可動性を有する請求項6に記載の光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外付け法(OVD法)により出発コア母材上にクラッド部を堆積する光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ用プリフォームは、例えば、VAD法などで製造されたコア母材上に、OVD法などでSiO2微粒子を外付け堆積し、焼結して製造される。SiO2微粒子をコア母材上に外付け堆積するには、従来、ケイ素化合物原料として、四塩化ケイ素(SiCl4)が広く用いられている。
【0003】
SiCl4は、火炎加水分解反応により、下記の[化1]式に基づきSiO2微粒子が生成される。
[化1]
SiCl4 + 2H2O → SiO2 + 4HCl
この反応の副生成物として塩酸が生成し、水分が混入すると金属腐食性を呈するため、製造装置材料や排気温度管理に注意が必要である。さらに、排気から塩酸を回収処理する設備を設けるとコスト増を招く。
【0004】
ケイ素化合物原料として、四塩化ケイ素(SiCl4)が広く用いられているが、ときには、分子内にCl(クロル)を内包しないハロゲンフリーな有機ケイ素化合物がSiO2微粒子の出発原料として使用されることがある。これには、工業規模で利用可能な高純度の有機ケイ素化合物であるオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)が挙げられる。
【0005】
OMCTSは、火炎加水分解反応により、下記の[化2]式に基づきSiO2微粒子が生成される。
[化2]
[SiO(CH3)2]4 + 16O2 → 4SiO2 + 8CO2 + 12H2O
このように、バーナーに供給するケイ素化合物原料として、OMCTSに代表されるハロゲンフリーな有機ケイ素化合物を用いると、塩酸が排出されない。そのため、製造装置材料や排気の取り扱いの自由度が増す。また、塩酸回収処理設備を設ける必要がなく、コストを抑えることが期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
OMCTSに代表される有機ケイ素化合物原料を液体状態でバーナーに供給すると、バーナーで不規則に気化して燃焼するため、SiO2微粒子の噴出量が安定しなかったり、火炎温度が変化してSiO2微粒子の堆積量や堆積体の密度が安定しなかったりする。
一方、気化した有機ケイ素化合物原料をバーナーに供給した場合、今度はバーナーへの配管中で再液化することがある。バーナー到達前の再液化を防ぐために原料ガス用配管を加熱する方法があるが、この場合、バーナーはSiO2微粒子を堆積させる出発材の長手方向に沿って往復移動するため、出発材の長さに応じて原料ガス用配管を長くしなければならず、配管に加熱むらが生じて低温部で局所的に液化したり、あるいは高温部で局所的に原料の重合体が生成したりして配管が閉塞することがある。
【0007】
本発明の課題は、ケイ素化合物原料として液体状態の有機ケイ素化合物原料を使用し、バーナーへの配管中での加熱むらによる局所的な液化や重合体の生成による配管の閉塞を防止し、出発材上へのSiO2微粒子の安定した堆積を行うことのできる光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造装置および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法は、上記課題を解決してなり、すなわち、出発材上にガラス微粒子を堆積して多孔質ガラス母材を製造する方法であって、液体状態の有機ケイ素化合物原料とキャリアガスとを気化器に供給する工程と、該気化器において、液体状態の有機ケイ素化合物原料とキャリアガスとを混合し、気化して原料混合ガスに変換する工程と、該原料混合ガスと可燃性ガスとをバーナーに供給し燃焼させ、生成したSiO2微粒子をバーナーから噴出させる工程と、該気化器とバーナーとが同期し一体となって出発材の長手方向に対して平行に移動を繰り返すことで、バーナーから噴出したSiO2微粒子を出発材上に堆積する工程とからなることを特徴としている。
【0009】
なお、前記有機ケイ素化合物原料には、純度99質量%以上有するオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)を使用するのが好ましい。前記キャリアガスとして、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いて原料混合ガスとし、さらに該原料混合ガスに、さらに酸素を混合して前記バーナーに供給するようにしても良い。また、前記キャリアガスとして、酸素又は酸素と不活性ガスとの混合ガスを用いるようにしても良い。
【0010】
本発明の光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造装置は、多孔質ガラス母材を製造する製造装置であって、出発材の長手方向に沿って平行移動しつつ該出発材上にSiO2微粒子を堆積させるバーナーと、液体状態の有機ケイ素化合物原料を気体状態に変換してバーナーに供給する気化器と、該気化器に前記有機ケイ素化合物原料を供給する原料腋用配管とを備え、該気化器がバーナーと一体となって移動可能に設置されていることを特徴としている。
なお、前記原料液用配管が、バーナーに追従して移動する可動性を持たせるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特に、有機ケイ素化合物原料を気化させる気化器とバーナーとが同期して一体的に移動するようにしたことにより、バーナーには原料が気体状態で安定して供給されるようになり、SiO2微粒子の噴出量や火炎の温度が安定する。さらに、気化器からバーナーに至る原料ガス用配管を、バーナーの移動区間の長さとは関係なく一定とすることができ、出発材の長手方向の長さに比べて短縮することができ、原料ガス用配管を均一に加熱しやすくなる、等の極めて優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態として挙げた多孔質ガラス母材製造装置への原料ガス等の供給フロー図である。
図2】本発明の実施形態として挙げた、酸素を気化器の下流で原料ガスと混合する気化器周りの供給フロー図である。
図3】本発明の実施形態として挙げた多孔質ガラス母材の製造装置を示す概略図である。
図4】比較例として挙げた気化器の設置位置を示す概略図である。
図5】本発明の実施形態として挙げた気化器の設置位置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の多孔質ガラス母材の製造装置および製造方法について、図を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されず様々な態様が可能である。
図1は、本発明における多孔質ガラス母材製造装置に原料等を供給する供給フローの一例を示す図である。
液体状態の有機ケイ素化合物(原料液)101は、液体原料タンク1から送液される。原料液101の液体原料タンク1からの送液法としては、例えば、送液ポンプ2やガス圧送などを用いてよい。図1では、送液ポンプ2を使用している場合を図示している。原料液用配管3は、液体原料タンク1へと戻る循環配管3aと、バルブ4を介して多孔質ガラス母材製造装置10へと向かう原料液供給配管3bに分かれている。原料液供給配管3b側には、原料液101を精密に流量制御する液体マスフローコントローラー5が設けてある。
【0014】
また、原料液用配管3は、原料液101が凝固しない程度に加熱するのが好ましい。原料液101を気化させる気化器8は、多孔質ガラス母材製造装置10の内部に設置されている。気化器8にはキャリアガス102も供給され、気化器内8で原料液101と混合し、原料ガス103として原料ガス用配管9を通ってバーナー11に供給される。キャリアガス用配管7の途中には、ガスマスフローコントローラー6が設けてある。
【0015】
原料液101は、液体マスフローコントローラー5により、堆積状態によって10 g/minから100 g/minまで供給流量を変化させながら供給される。
キャリアガス102は窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスまたは、酸素や、酸素と不活性ガスの混合ガスを用いることができる。キャリアガス102は、効率良く気化器内8で原料液101を気化させるために、その供給流量に応じて予備加熱を行ってもよい。
【0016】
キャリアガス102として、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることで安全に原料を移送することができる。一方で、反応に無関係な不活性ガスの割合をあまり増やすのは望ましくない。キャリアガス102に窒素等の不活性ガスを用いる場合、キャリアガス102の供給流量は30SLM以下に抑えるのが好ましい。
キャリアガス102として、酸素や、酸素と不活性ガスの混合ガスを用いる場合、気化器で原料と予混合しておくことにより完全燃焼が促進される。
なお、酸素の供給量としては、逆火が生じない程度にするのが好ましい。
【0017】
原料液101は、気化器内8でキャリアガス102と混合し、気化される。有機ケイ素化合物原料としてOMCTSを用いる場合、気化器内8の温度は原料液101を効率よく気化し、かつ原料物質の重合を防ぐという観点から、150〜250 ℃の温度に設定するのが好ましい。気化された原料ガスとキャリアガスとの混合ガス103は、原料ガス用配管9を通ってバーナー11に供給される。原料ガス用配管9は、原料ガスの再液化を防ぐために、原料ガスの分圧から計算される液化温度以上に加熱するのが好ましい。具体的には、OMCTSの分圧が1.00atmのとき液化温度は175℃、0.30atmのとき134℃になる。原料ガス用配管9の加熱は、例えば電気ヒーターを用いることができる。
【0018】
原料の完全燃焼を促進するため、上記のとおり、原料ガスは気化器8において酸素等のキャリアガスと混合され、予混合状態としてバーナー11に供給される。原料の燃焼反応が不十分であると、不純物ゲルまたは不純物微粒子等がバーナー11に付着したり、炭素がスートに付着したり、スートに欠陥が生じる。そこで、キャリアガス102として酸素を使用し、予め原料と酸素を予混合してバーナー11に供給することにより原料の反応性を高めることができる。このように、キャリアガス102として酸素を用い、気化器内8で原料と酸素を混合しても良く、キャリアガス102として窒素等の不活性ガスを用い、気化器8の下流で原料と混合するようにしても良い。
【0019】
図2は、本発明における気化器周りの供給フローの一例を示す図であり、キャリアガス102に窒素等の不活性ガスを用い、酸素104を気化器8の下流で原料ガスと混合してハーナー11に供給するケースである。
酸素104は、酸素用配管13を通して気化器8の下流で原料ガスと混合される。なお、原料の再液化を防ぐために原料ガスの分圧から計算される液化温度以上に予め加熱した状態で酸素を供給するのが好ましい。酸素104の加熱は、小型の熱交換器14などを用いることができる。キャリアガス102は、効率良く気化器内8で原料液101を気化させるために、その供給流量に応じて小型の熱交換器12などを用いて予備加熱を行ってもよい。酸素104の供給流量としては、酸素104/原料液101のモル比(標準状態)で、8以下にするのが好ましい。
【0020】
本発明に係る光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法では、バーナー11として、複数のノズルを並べたマルチノズルバーナーや、ノズルを同心多重に配置した多重管バーナー等を用いることができる。
バーナー11に供給されるガスには、キャリアガス102等と予混合された原料ガスのほかに、シールガス、燃焼用可燃性ガス、燃焼用酸素ガス等が挙げられる。燃焼用可燃性ガスとして、例えば、水素やメタン、エタン、プロパン等を用いることができる。
【0021】
有機ケイ素化合物原料として、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)や、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメトキシメチルシラン、テトラメトキシシラン等を用いることができる。これらの沸点は300℃以下であり、気化した原料ガスの配管にはPTFE等の樹脂製のものを用いることができる。
【0022】
本発明では、有機ケイ素化合物原料を複数種類混合した混合原料を用いることもできるが、純度を高めた単一種類原料を用いる方が反応の安定性、配管温度管理の容易性の観点で望ましい。例えば、原料としてOMCTSを用いる場合、純度99質量%以上有するものが好ましい。OMCTSには、三量体の環状シロキサンであるヘキサメチルシクロトリシロキサンや五量体の環状シロキサンであるデカメチルシクロペンタシロキサンが不純物成分として含有されやすい。これらの不純物成分はOMCTSとは反応性や沸点が異なる。よって、OMCTSの純度を高めることによって、原料ガス用配管の加熱温度をOMCTSの沸点に合わせるだけで良くなり、配管の温度管理がし易くなる。反応性が高いヘキサメチルシクロトリシロキサンの反応が進んで重合生成物が生じたりすることも防げ、また、高沸点のデカメチルシクロペンタシロキサンに合わせて、原料ガス用配管の加熱温度を過度に高める必要もなくなる。
【0023】
前記シールガスとして、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスまたは、酸素や、酸素と不活性ガスの混合ガスを用いることができる。シールガスは原料ガスの再液化を防ぐため、加熱供給してもよい。
【0024】
図3は、本発明で使用した多孔質ガラス母材製造装置の概略図である。
バーナー11は、図示を省略したトラバースモーターを用いガイド機構17に沿って平行移動を行う。出発コア母材18は回転機構19に取り付けられ、一定方向に回転する。出発コア母材18の長手方向に沿ってバーナー11が平行移動を繰り返しながら、バーナー11から噴出される原料ガスによってSiO2微粒子が生成し、出発コア母材18に付着し、スート堆積体20が形成される。スート堆積体20に付着しなかった未付着分のSiO2微粒子は、排気フード21を介して系外に排出される。排気フード21は、局所排気構造または全体排気構造のいずれでもよい。
【0025】
バーナー11に原料ガス等を供給する各ガス配管は、平行移動を繰り返すバーナー11に追従した動きを行う。このとき、バーナー11に供給される各ガスの配管には、可動性を持たせることが望ましく、各ガス配管は、例えば、ケーブルベヤ(株式会社椿本チエイン 登録商標)、フレキシブルチューブ等の可動ケーブル保護材15内に格納することで、バーナー11に追従した動きが可能となり、各ガス配管に大きな応力が掛からないような状態で可動性を持たせることができる。可動ケーブル保護材15は、可撓性を有する筒状の部材からなり、この中に各ガス配管が納められている。
【0026】
このような構成で有機ケイ素化合物を気化させる気化器8を、可動ケーブル保護材15の前段に固定設置した場合、図4に示すように、気化器8からバーナー11までの原料ガス用配管9は、出発コア母材18の長手方向の長さに応じて長くする必要があり、原料ガス用配管9の配管長は、バーナーの片道移動距離の2〜3倍必要となる。例えば、出発コア母材18の長さが3000 mmの場合、バーナーの片道移動距離も3000mm必要で、原料ガス用配管9の配管長は6000〜9000 mm必要となる。
【0027】
原料ガス用配管9は原料ガスの再液化を防ぐために、原料ガスの分圧から計算される液化温度以上に電気ヒーター等を用いて加熱するのが望ましい。しかし、配管には電気ヒーターからの距離に応じて温度不均一が生じやすく、配管の均一な温度制御が難しくなる。このように気化器8を可動ケーブル保護材15の前段に固定設置した場合、原料ガス用配管9の配管長が長くなるため、原料成分または不純物成分が局所的に過加熱されて配管内で重合体を生成したり、局所的な低温部分で凝縮して液化することがある。
【0028】
そこで本発明では、図5に示すように、液体状態の有機ケイ素化合物を気化させる気化器8を可動ケーブル保護材15の後段、すなわちバーナー11寄りに設置し、ガイド機構17によって移動するバーナー11と共に移動可能に設置されている。
これにより、原料ガス用配管9を出発コア母材18の長手方向の長さに関係なく一定の長さに設定することができ、気化器8からバーナー11までの原料ガス用配管9は著しく短くなり、原料ガスの再液化防止の電気ヒーターの加熱領域を短くすることができる。結果として、原料ガス用配管9内の重合生成物の発生は抑制され、また引っ張り応力や曲げ応力を過大に掛けることなく原料ガス用配管9のヒーター加熱が可能になる。また、配管をできるだけ短くすることで、配管の温度管理を容易にすることができ、配管内での重合体の生成や原料の凝縮を防ぐことができる。
【0029】
なお、ヒーターで加熱される原料ガス用配管9を可動ケーブル保護材15内に格納し、配管を加熱するために電気ヒーターを使用すると、ヒーターが疲労によって断線し易くなったり、熱媒を使用すると熱媒の配管が疲労によって破損し易くなったりする。そのため原料ガス用配管9を加熱する場合、加熱手段には、引っ張り応力や曲げ応力を過大にかけることが無いように配置するのが好ましく、原料ガス用配管自体は可動にしないのが好ましい。
【符号の説明】
【0030】
101.液体状態の有機ケイ素化合物(原料液)、
102.キャリアガス、
103.原料ガスとキャリアガスの混合ガス、
104.酸素、
1.液体原料タンク、
2.送液ポンプ、
3.原料液用配管、
3a.循環配管、
3b.原料液供給配管、
4.バルブ、
5.液体マスフローコントローラー、
6.ガスマスフローコントローラー、
7.キャリアガス用配管、
8.気化器、
9.原料ガス用配管、
10.多孔質ガラス母材製造装置、
11.バーナー、
12.熱交換器、
13.酸素用配管、
14.熱交換器、
15.可動ケーブル保護材、
17.ガイド機構、
18.出発コア母材、
19.回転機構、
20.スート堆積体、
21.排気フード。

図1
図2
図3
図4
図5