特許第6793725号(P6793725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6793725ハロゲン不含難燃剤を有するポリエステルブレンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793725
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】ハロゲン不含難燃剤を有するポリエステルブレンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20201119BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20201119BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   C08L67/02
   C08L67/04
   C08K5/5313
【請求項の数】12
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-519457(P2018-519457)
(86)(22)【出願日】2016年9月22日
(65)【公表番号】特表2018-530657(P2018-530657A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】EP2016072569
(87)【国際公開番号】WO2017063841
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2019年9月19日
(31)【優先権主張番号】15189683.4
(32)【優先日】2015年10月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン ヴァーグナー
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ヘルムート クレーマー
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/132655(WO,A1)
【文献】 特開平2−58561(JP,A)
【文献】 特開2008−156392(JP,A)
【文献】 特表2015−507029(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0151618(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02476730(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L67/00〜67/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)C)とは異なる10〜99重量%の熱可塑性ポリエステルであるポリアルキレンテレフタレート
B)0.1〜30重量%のポリ(ε−カプロラクトン)
C)0.1〜30重量%の脂肪族/芳香族の生分解性ポリエステル
D)0.1〜30重量%のホスフィン酸塩
E)0〜20重量%の窒素含有難燃剤
F)少なくとも1つのアルキル置換されたフェニル環を有する0〜15重量%の芳香族リン酸エステル
G)0〜50重量%のさらなる添加剤
を含有し、ここで成分A)〜G)の重量%の合計が100%になり、かつ、
成分C)が、
C1)C1)およびC2)を基準として、30〜70mol%の脂肪族ジカルボン酸またはその混合物、
C2)C1)およびC2)を基準として、30〜70mol%の芳香族ジカルボン酸またはその混合物、
C3)C1)およびC2)を基準として、98.5〜100mol%の1,4−ブタンジオールまたは1,3−プロパンジオールまたはそれらの混合物、
C4)C1)からC3)を基準として、0.05〜1.5重量%の鎖延長剤
から構成されている、熱可塑性成形材料。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリエステルが、2〜10個のC原子をアルコール部分に有するポリアルキレンテレフタレートである、請求項1に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートまたはこれらの混合物である、請求項1又は2に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項4】
前記生分解性ポリエステルが、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)又はポリブチレンセバケートテレフタレート(PBSeT)である、請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項5】
A)10〜99重量%
B)0.1〜30重量%
C)0.1〜30重量%
D)0.1〜30重量%
E)0〜20重量%
F)0.1〜15重量%
G)0〜50重量%
を含有する、請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項6】
成分D)が、式(I)のホスフィン酸塩または/および式(II)のジホスフィン酸塩またはそれらのポリマー:
【化1】
(上記式中、
、Rは、同じまたは異なり、かつ水素、直鎖状もしくは分枝鎖状のC〜Cアルキルおよび/またはアリール、
【化2】
を意味し、
R’は、水素、フェニルまたはトリルを意味し、
は、直鎖状または分枝鎖状のC〜C10アルキレン、C〜C10アリーレン、C〜C10アルキルアリーレンまたはC〜C10アリールアルキレンを意味し、
Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kおよび/またはプロトン化された窒素塩基を意味し、
mは1〜4を意味し、nは1〜4を意味し、xは1〜4を意味する)
から構成されている、請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項7】
成分D)のR、Rが、互いに独立して、水素、メチルまたはエチルを意味する、請求項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項8】
成分F)が、ISO11357,1(20K/分の加熱曲線)に準拠したDSCにより測定して、50〜150℃の融点を有する、請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項9】
成分F)が、
【化3】
または
【化4】
またはこれらの混合物から構成されており、
上記式中、互いに独立して、
=H、メチルまたはイソプロピル、
n=0〜7
2〜6=H、メチル、エチルまたはイソプロピル
m=1〜5
R‘‘=H、メチル、エチルまたはシクロプロピル、
を意味しており、ただし、少なくとも1つの基R〜Rがアルキル基である、請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項10】
一般式III、IVおよびVの置換基は、
が水素を意味し、または/かつ
〜Rがメチルを意味し、または/かつ
mが1〜2を意味する、
請求項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項11】
成分F)が、
【化5】
から構成されている、請求項1〜10のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の熱可塑性成形材料から得られる、繊維、箔または成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
A)C)とは異なる10〜99重量%の熱可塑性ポリエステル
B)0.1〜30重量%のポリ(ε−カプロラクトン)
C)B)とは異なる0.1〜30重量%の生分解性ポリエステル
D)0.1〜30重量%のホスフィン酸塩
E)0〜20重量%の窒素含有難燃剤
F)少なくとも1つのアルキル置換されたフェニル環を有する0〜15重量%の芳香族リン酸エステル
G)0〜50重量%のさらなる添加剤
を含有し、ここで成分A)〜G)の重量%の合計が100%になる、熱可塑性成形材料に関する。
【0002】
さらに、本発明は、あらゆる種類の難燃性成形体を製造するための熱可塑性成形材料の使用、およびこの際に得られる成形体に関する。
【0003】
熱可塑性ポリエステルは、長きにわたり、原料として使用されている。その機械的、熱的、電気的および化学的な特性だけでなく、難燃性および高いグローワイヤ耐性などの特性がますます重要視されてきている。ここで例としては、家庭用品の領域(例えばプラグ)および電子機器の領域(例えば回路遮断機のカバー)における用途がある。
【0004】
さらに、ハロゲン不含で難燃性の熱可塑性ポリエステルに対して市場の関心が高まっている。ここで、難燃剤に対する実質的な要求は、固有色が明るいこと、ポリマー加工中の温度安定性が十分であること、ならびに強化ポリマーおよび強化されていないポリマー中での燃焼防止効果である。
【0005】
ホスフィン酸塩および窒素含有相乗剤またはメラミンとリン酸との反応生成物(ポリリン酸メラミン)から成るハロゲン不含の難燃性添加剤混合物の効果は、実質的に、UL94−Vに準拠した火災試験に従って記載される(欧州特許出願公開第1423260号明細書(EPA1423260)、欧州特許出願公開第1084181号明細書(EP−A1084181)参照)。
【0006】
独国特許出願公開第19960671号明細書(DE−A−19960671)には、一般的な難燃剤、例えばホスフィン酸塩およびメラミン化合物の他に、金属酸化物、金属水酸化物またはその他の塩との組み合わせも記載されている。
【0007】
これらの配合物に特有の問題は、機械的に脆性であることであり、これにより、適用時にしばしば予定より早く破断(破断伸び)がもたらされる。ポリマー混合物に基づく様々なアプローチがすでに記載されていた:市場で一般的な耐衝撃性改質剤(市販の製品は、Lotader(登録商標)、Paraloid(登録商標)、Metablen(登録商標)という名称で得られる)を使用することにより、機械的性質の著しい改善がもたらされるが、壁厚の薄い難燃性生成物を実現することはもはやできない。その理由は、大部分がエチレンまたはブタジエンに基づくこの添加剤の燃焼性が高いことである。よって、強靱な難燃性生成物は、しばしばPBTと様々なエラストマーとの混合物により達成され(米国特許出願公開第2008/0167406号明細書(US2008/0167406)および欧州特許出願公開第2476730号明細書(EP−A−2476730))、その際、同じ欠点が生じる。
【0008】
国際公開第2006/018127号(WO2006/018127)では、流動性向上剤と耐衝撃性改質剤としてのゴムとをどちらも含有するポリエステル混合物が記載されている。これらの混合物において、機械的性質は改善されるが、ただし、ゴムを添加することにより、流動性が再び悪化する。
【0009】
ABSおよびPCで普及している市販の難燃性添加剤であるレゾルシノールビスジフェニルホスフェート(RDP、CAS:57583−54−7)およびビスフェノール−Aジフェニルホスフェート(BDP、CAS:5945−33−5)は、マイグレーションの点で欠点を示す(Polymer Degradation and Stability、2002、77(2)、267〜272頁参照)。
【0010】
よって、本発明の課題は、良好な機械的性質(破断伸び)および難燃特性を有するハロゲン不含の難燃性ポリエステル成形材料を提供することであった。さらに、その加工を改善するものとし、加工および所望の用途(殊に薄壁部分のため)における添加剤のマイグレーションも同様に改善するものとする。
【0011】
これに応じて、始めに規定した成形材料が発見された。好ましい実施形態は、従属請求項から明らかとなる。
【0012】
本発明による成形材料は、成分(A)として、B)またはC)とは異なる少なくとも1種の熱可塑性ポリエステルを、10〜99重量%、好ましくは20〜92重量%、殊に35〜80重量%含有する。
【0013】
一般的に、芳香族ジカルボン酸および脂肪族または芳香族ジヒドロキシ化合物に基づくポリエステルA)が使用される。
【0014】
より好ましいポリエステルの第一群は、ポリアルキレンテレフタレート、殊に2〜10個のC原子をアルコール部分に有するポリアルキレンテレフタレートである。
【0015】
このようなポリアルキレンテレフタレートは、それ自体が公知であり、文献に記載されている。これらは、芳香族ジカルボン酸由来の芳香族環を主鎖に有する。また、芳香族環は例えば、塩素および臭素などのハロゲンにより、またはメチル基、エチル基、i−もしくはn−プロピル基およびn−、i−もしくはt−ブチル基などのC〜Cアルキル基により置換されていてもよい。
【0016】
これらのポリアルキレンテレフタレートは、芳香族ジカルボン酸、そのエステルまたはその他のエステル形成誘導体と脂肪族ジヒドロキシ化合物とを、それ自体が公知の手法で反応させることにより製造することができる。
【0017】
好ましいジカルボン酸としては、2,6−ナフタリンジカルボン酸、テレフタル酸およびイソフタル酸またはこれらの混合物が挙げられる。30mol%まで、好適には10mol%以下の芳香族ジカルボン酸を、脂肪族または脂環式ジカルボン酸、例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸およびシクロヘキサンジカルボン酸で置き換えることができる。
【0018】
脂肪族ジヒドロキシ化合物のうち、2〜6個の炭素原子を有するジオール、殊に1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびネオペンチルグリコールまたはこれらの混合物が好ましい。
【0019】
特に好ましいポリエステル(A)としては、2〜6個のC原子を有するアルカンジオールから誘導されるポリアルキレンテレフタレートが挙げられる。これらのうち、殊にポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートまたはこれらの混合物が好ましい。1重量%まで、好適には0.75重量%までの1,6−ヘキサンジオールおよび/または2−メチル−1,5−ペンタンジオールをさらなるモノマー単位として有するPETおよび/またはPBTがさらに好ましい。
【0020】
ポリエステル(A)の粘度数は、一般的に50〜220、好適には80〜160の範囲にある(フェノール/o−ジクロロベンゼン混合物(25℃での重量比1:1)において0.5重量%の溶液中でISO1628に準拠して測定)。
【0021】
カルボキシル末端基の含量がポリエステル100meq/kgまで、好ましくは50meq/kgまで、殊に40meq/kgまでであるポリエステルが殊に好ましい。このようなポリエステルは、例えば独国特許出願公開第4401055号明細書(DE−A4401055)の方法により製造され得る。カルボキシル末端基の含量は、通常、滴定法(例えば電位差測定)により特定される。
【0022】
さらに、場合によっては、PETリサイクル材(スクラップPETとも呼ばれる)をポリアルキレンテレフタレート、例えばPBTと混合して使用することが有利である。
【0023】
一般的に、リサイクル材とは、以下のように理解される:
1)いわゆる工業使用後のリサイクル材:これは、重縮合もしくは加工における製造廃棄物、例えば射出成形加工におけるスプルー(Anguesse)、射出成形加工もしくは押出成形における出発材料(Anfahrware)、または押出成形されたプレートもしくはシートの周端部である。
2)消費者使用後のリサイクル材:これは、最終使用者による利用後に回収および後処理されるプラスチック製品である。量的にはるかに多い製品は、ミネラルウォーター、ソフトドリンクおよびジュース用のブロー成形されたPETボトルである。
【0024】
どちらの種類のリサイクル材も、粉砕物として、または顆粒の形態で存在することができる。後者の場合、リサイクル原料は、分離および洗浄後に、押出成形機内で溶融および顆粒化される。これにより、たいていの場合、さらなる加工工程のための取り扱い、流動性および供給性が容易になる。
【0025】
顆粒化されたリサイクル材および粉砕物として存在するリサイクル材をどちらも使用することができ、ここで、最大辺長は、10mm、好適には8mm未満であるものとする。
【0026】
(痕跡量の水分により)加工時にポリエステルは加水分解するため、リサイクル材を事前に乾燥させることが推奨される。乾燥後の残留含水率は、好適には0.2%未満、殊に0.05%未満である。
【0027】
さらなる群としては、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される全芳香族ポリエステルが挙げられる。
【0028】
芳香族ジカルボン酸としては、すでにポリアルキレンテレフタレートにおいて記載された化合物が適している。5〜100mol%のイソフタル酸と0〜95mol%のテレフタル酸とからの混合物、殊に約80%のテレフタル酸と20%のイソフタル酸との混合物から、これら両方の酸のほぼ当量の混合物までを使用することが好ましい。
【0029】
芳香族ジヒドロキシ化合物は、好適には一般式:
【化1】
(上記式中、Zは、8個までのC原子を有するアルキレン基またはシクロアルキレン基、12個までのC原子を有するアリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子もしくは硫黄原子、または化学結合であり、mは、0〜2の値を有する)を有する。これらの化合物は、フェニレン基に、C〜Cアルキル基もしくはアルコキシ基、およびフッ素、塩素または臭素を置換基として有することができる。
【0030】
これらの化合物の基本骨格(Stammkoerper)としては、例えば、
ジヒドロキシジフェニル、
ジ(ヒドロキシフェニル)アルカン、
ジ(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、
ジ(ヒドロキシフェニル)スルフィド、
ジ(ヒドロキシフェニル)エーテル、
ジ(ヒドロキシフェニル)ケトン、
ジ(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、
α,α’−ジ(ヒドロキシフェニル)ジアルキルベンゼン、
ジ(ヒドロキシフェニル)スルホン、ジ(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン
レゾルシノールおよびヒドロキノン、ならびにそれらの核アルキル化または核ハロゲン化誘導体が挙げられる。
【0031】
これらのうち、
4,4’−ジヒドロキシジフェニル、
2,4−ジ(4’−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、
α,α’−ジ(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、
2,2−ジ(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび
2,2−ジ(3’−クロロ−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、
ならびに、殊に
2,2−ジ(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ジ(3’,5−ジクロロジヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ジ(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
3,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンおよび
2,2−ジ(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、
またはこれらの混合物が好ましい。
【0032】
当然のことながら、ポリアルキレンテレフタレートと全芳香族ポリエステルとの混合物を使用することもできる。一般的に、この混合物は、20〜98重量%のポリアルキレンテレフタレートおよび2〜80重量%の全芳香族ポリエステルを含有する。
【0033】
当然のことながら、ポリエステルブロックコポリマー、例えばコポリエーテルエステルを使用することもできる。このような生成物は、それ自体が公知であり、文献において、例えば米国特許第3651014号明細書(US−A3651014)に記載されている。また、相応する生成物、例えばHytrel(登録商標)(DuPont)を市販で得ることもできる。
【0034】
本発明によると、ポリエステルとは、ハロゲン不含のポリカーボネートとも理解されるものとする。適切なハロゲン不含のポリカーボネートは、例えば、一般式:
【化2】
(上記式中、Qは、単結合、C〜Cアルキレン基、C〜Cアルキリデン基、C〜Cシクロアルキリデン基、C〜C12アリーレン基、および−O−、−S−または−SO−を意味し、mは、0〜2の整数である)
のジフェノールに基づくものである。
【0035】
ジフェノールは、フェニレン基に、置換基、例えばC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシを有することもできる。
【0036】
この式の好ましいジフェノールは、例えばヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンである。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ならびに1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが特に好ましい。
【0037】
ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートのどちらも、成分Aとして適しており、ビスフェノールAホモポリマーの他には、ビスフェノールAのコポリカーボネートが好ましい。
【0038】
適切なポリカーボネートは、公知の手法で分枝鎖状にされていてよく、特に好適には、使用されるジフェノールの合計を基準として、0.05〜2.0mol%の少なくとも三官能性の化合物、例えば3つまたは3つより多くのフェノール性水酸基を有する化合物を組み込むことにより分枝鎖状にされていてよい。
【0039】
1.10〜1.50、殊に1.25〜1.40の相対粘度ηrelを有するポリカーボネートが特に適していると判明した。これは、10000〜200000、好適には20000〜80000g/molの重量平均分子量Mw(重量平均値)に相当する。
【0040】
この一般式のジフェノールは、それ自体が公知であるか、または公知の方法により製造することができる。
【0041】
ポリカーボネートの製造は、例えば、ジフェノールとホスゲンとを相界面法によって反応させることにより、またはジフェノールとホスゲンとを均質相における方法(いわゆるピリジン法)によって反応させることにより行うことができ、ここで、それぞれ調整される分子量は、公知の手法で、相応量の公知の連鎖停止剤により得られる(ポリジオルガノシロキサン含有ポリカーボネートについては、例えば独国特許出願公開第3334782号明細書(DE−OS3334782)参照)。
【0042】
適切な連鎖停止剤は、例えばフェノール、p−t−ブチルフェノールであるが、長鎖アルキルフェノール、例えば独国特許出願公開第2842005号明細書(DE−OS2842005)によると、4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノール、または独国特許出願公開第3506472号明細書(DE−A3506472)によると、合計8〜20個のC原子をアルキル置換基に有するモノアルキルフェノールもしくはジアルキルフェノール、例えばp−ノニルフェニル、3,5−ジ−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールでもある。
【0043】
本発明の意味合いにおけるハロゲン不含のポリカーボネートは、このポリカーボネートが、ハロゲン不含のジフェノール、ハロゲン不含の連鎖停止剤、および場合によってはハロゲン不含の分岐剤から構成されていることを意味しており、ここで、例えばホスゲンを用いて相界面法によりポリカーボネートを製造することにより生じる僅かなppm量の可鹸化塩素の含量は、本発明の意味合いにおいて、ハロゲンを含有するとは見なされない。ppm含量の可鹸化塩素を有するこのようなポリカーボネートは、本発明の意味合いにおいて、ハロゲン不含のポリカーボネートである。
【0044】
さらなる適切な成分A)としては、非晶質のポリエステルカーボネートが挙げられ、ここで製造時に、ホスゲンを、芳香族ジカルボン酸単位、例えばイソフタル酸および/またはテレフタル酸単位で置き換えた。ここでさらなる詳細については、欧州特許出願公開第711810号明細書(EP−A711810)を参照されたい。
【0045】
シクロアルキル基をモノマー単位として有するさらなる適切なコポリカーボネートは、欧州特許出願公開第365916号明細書(EP−A365916)に記載されている。
【0046】
さらに、ビスフェノールAをビスフェノールTMCで置き換えることができる。このようなポリカーボネートは、APEC HT(登録商標)という商標でBayer社から得ることができる。
【0047】
本発明による成形材料は、成分B)として、ポリε−カプロラクトンを、0.1〜30重量%、好適には0.5〜15重量%、殊に1〜10重量%、極めて特に好ましくは1〜5重量%含有する。
【0048】
このようなポリエステルは、以下の構造:
【化3】
を示す。
【0049】
この製造は、通常、ε−カプロラクトンを開環重合することにより行われる。
【0050】
このようなポリマーは、半結晶性であり、生分解性ポリエステルに属する。
【0051】
Roempp Online Lexikonによると、このようなポリマーは、生物活性環境(コンポストなど)にある微生物の存在下で分解されるポリマーと理解される(酸化型分解性またはUV開始型のポリエステル分解とは対照的である)。
【0052】
好ましい成分B)は、平均分子量Mwを、5000〜200000g/mol、殊に50000〜140000g/mol有する(ヘキサフルオロイソプロパノールおよび0.05%のトリフルオロ酢酸カリウムを溶媒として用いたGPCにより特定し、標準としてPMMAを使用した)。
【0053】
溶融範囲(DSC、DIN11357に準拠して20K/分)は、一般的に、80〜150℃、好ましくは100〜130℃である。
【0054】
市販では、このような生成物は、例えばCapa(登録商標)という商標でPerstorp社から得ることができる。
【0055】
本発明による成形材料は、成分C)として、B)およびA)とは異なる生分解性ポリエステルを、0.1〜30重量%、好適には0.5〜15重量%、殊に1〜10重量%、極めて特に好ましくは1〜5重量%含有する。
【0056】
これは好適には、脂肪族/芳香族ポリエステルであると理解するものとする。
【0057】
脂肪族/芳香族ポリエステルC)とは、鎖延長された直鎖状、好適には鎖延長された分枝鎖状のポリエステルと理解され、例えば国際公開第96/15173〜15176号(WO96/15173 bis 15176)または国際公開第98/12242号(WO98/12242)に記載されており、これを明示的に参照する。同様に、様々な半芳香族ポリエステルの混合物も考えられる。比較的最近の興味深い発展は、再生可能な原料に基づく(国際公開第2010/034689号(WO2010/034689)参照)。殊にポリエステルC)とは、ecoflex(登録商標)(BASF SE)のような生成物と理解される。
【0058】
好ましいポリエステルC)には、重要な成分として以下のものを含有するポリエステルが挙げられる:
C1)成分C1)〜C2)を基準として、30〜70mol%、好適には40〜60mol%、殊に好ましくは50〜60mol%の脂肪族ジカルボン酸またはその混合物、好適には以下に挙げられるもの:アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびブラシル酸、
C2)成分C1)およびC2)を基準として、30〜70mol%、好適には40〜60mol%、殊に好ましくは40〜50mol%の芳香族ジカルボン酸またはその混合物、好適には以下に挙げられるもの:テレフタル酸、
C3)成分C1)〜C2)を基準として、98.5〜100mol%の1,4−ブタンジオールおよび1,3−プロパンジオール;および
C4)成分C1)〜C3)を基準として、0.05〜1.5重量%、好適には0.1〜0.2重量%の鎖延長剤、殊に二官能性または多官能性のイソシアネート、好適にはヘキサメチレンジイソシアネート、および場合によっては分岐剤、好適にはトリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、殊にグリセリン。
【0059】
脂肪族の二酸および相応する誘導体C1)としては、一般的に、6〜20個の炭素原子、好適には6〜10個の炭素原子を有するものが考えられる。これらは、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよい。しかしながら基本的には、より大きな炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸も使用することができる。
【0060】
例示的には以下のものが挙げられる:2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、α−ケトグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、スベリン酸(コルク酸)およびイタコン酸。ここで、ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体を、単独で、またはこれらのうち2種以上からの混合物として使用することができる。
【0061】
アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸もしくはそれらの各エステル形成誘導体、またはこれらの混合物を使用することが好ましい。アジピン酸、またはセバシン酸、またはそれらの各エステル形成誘導体、またはこれらの混合物を使用することが特に好ましい。
【0062】
以下の脂肪族/芳香族ポリエステルが殊に好ましい:ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBSeT)。
【0063】
芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体C2を、単独で、またはこれらのうち2種以上からの混合物として使用することができる。テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体、例えばジメチルテレフタレートを使用することが特に好ましい。
【0064】
ジオールC3(1,4−ブタンジオールおよび1,3−プロパンジオール)は、再生可能な原料として得ることができる。上記のジオールの混合物も使用することができる。
【0065】
基本的に、ポリエステルの合計重量を基準として、0.05〜1.5重量%、好適には0.1〜1.0重量%、殊に好ましくは0.1〜0.3重量%の分岐剤、および/またはポリエステルの合計重量を基準として、0.05〜1重量%、好適には0.1〜1.0重量%の鎖延長剤C4)が使用され、これらは、以下のものから成る群より選択される:多官能性イソシアネート、イソシアヌレート、オキサゾリン、カルボン酸無水物、例えばマレイン酸無水物、エポキシド(殊にエポキシド含有ポリ(メタ)アクリレート)、少なくとも三官能性のアルコールまたは少なくとも三官能性のカルボン酸。鎖延長剤C4)としては、多官能性、殊に二官能性イソシアネート、イソシアヌレート、オキサゾリンまたはエポキシドが考えられる。
【0066】
また、鎖延長剤、ならびに少なくとも3個の官能性基を有するアルコールまたはカルボン酸誘導体を分岐剤として解釈することもできる。特に好ましい化合物は、3〜6個の官能性基を有する。以下のものが例示的に挙げられる:酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸およびピロメリット酸二無水物;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン;ペンタエリトリット、ポリエーテルトリオールおよびグリセリン。ポリオール、例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、殊にグリセリンが好ましい。成分C4)により、構造粘性を有する生分解性ポリエステルが構築される。溶融物のレオロジー挙動を改善することができ、つまり、生分解性ポリエステルをより容易に加工することができる。
【0067】
基本的に、分枝鎖状にする(少なくとも三官能性の)化合物を、重合の比較的早い時点で添加することが合理的である。
【0068】
二官能性鎖延長剤としては、例えばトルイレン−2,4−ジイソシアネート、トルイレン−2,6−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートまたはメチレン−ビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)が適している。イソホロンジイソシアネートおよび殊に1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0069】
ポリエステルC)は、基本的に、数平均分子量(Mn)を、5000〜100000g/molの範囲で、殊に10000〜75000g/molの範囲で、好ましくは15000〜38000g/molの範囲で有し、重量平均分子量(Mw)を、30000〜300000g/mol、好適には60000〜200000g/mol有し、Mw/Mn比率を、1〜6、好適には2〜4有する。粘度数は、好適には50〜450g/ml、好適には80〜250g/mlである(o−ジクロロベンゼン/フェノール(重量比50/50)中で測定)。融点は、85〜150℃の範囲、好ましくは95〜140℃の範囲にある。
【0070】
EN ISO1133−1DE(190℃、重量2.16kg)に準拠したMVR(メルトボリュームレート)は、一般的に、0.5〜8cm/10分、好ましくは0.8〜6cm/10分である。DIN EN12634に準拠した酸価は、一般的に、0.01〜1.2mgKOH/g、好適には0.01〜1.0mgKOH/g、殊に好ましくは0.01〜0.7mgKOH/gである。
【0071】
本発明による成形材料は、成分D)として、ホスフィン酸塩を、A)〜C)を基準として、0.1〜30重量%、好適には5〜25重量%、殊に10〜25重量%含有する。
【0072】
式(I)のホスフィン酸塩または/および式(II)のジホスフィン酸塩またはそれらのポリマー:
【化4】
(上記式中、
、Rは、同じまたは異なり、かつ水素、直鎖状もしくは分枝鎖状のC〜Cアルキルおよび/またはアリール、
【化5】
を意味し、
R’は、水素、フェニル、トリルを意味し、
は、直鎖状または分枝鎖状のC〜C10アルキレン、C〜C10アリーレン、C〜C10アルキルアリーレンまたはC〜C10アリールアルキレンを意味し、
Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kおよび/またはプロトン化された窒素塩基を意味し、
mは1〜4を意味し、nは1〜4を意味し、xは1〜4を意味する)
が好ましい。
【0073】
成分DのR、Rは、同じまたは異なり、かつ水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルおよび/またはフェニルを意味することが好ましい。
【0074】
成分DのRは、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、tert−ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレンまたはn−ドデシレン、フェニレンまたはナフチレン;メチルフェニレン、エチルフェニレン、tert−ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレンまたはtert−ブチルナフチレン;フェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレンまたはフェニルブチレンを意味することが好ましい。
【0075】
、Rは、水素、メチル、エチルであり、かつM=Mg、Ca、Zn、Alであることが特に好ましく、ここで、次亜リン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウムが特に好ましい。
【0076】
ホスフィン酸塩の製造は、好適には、相応する金属塩を水溶液から析出させることにより行われる。しかしながら、ホスフィン酸塩は、担体材料(白色顔料、例えばTiO、SnO、ZnO、ZnS、SiO)としての適切な無機金属酸化物または無機金属硫化物の存在下で析出させることもできる。こうして、レーザーマーキング用難燃剤として熱可塑性ポリエステルのために使用可能な表面改質された顔料が得られる。
【0077】
本発明による成形材料は、成分E)として、窒素含有難燃剤、好適にはメラミン化合物を、0〜20重量%、好適には1〜20重量%、殊に1〜15重量%含有することができる。
【0078】
本発明によると(成分E)好ましい適切なシアヌル酸メラミンは、好適には当モル量のメラミン(式I)およびシアヌル酸またはイソシアヌル酸(式IaおよびIb)からの反応生成物である:
【化6】
【0079】
これは、例えば出発化合物の水溶液を90〜100℃で反応させることにより得られる。市販で得られる製品は、1.5〜7μmの平均粒径d50および50μm未満のd99値を有する白色粉末である。
【0080】
さらなる適切な化合物(しばしば塩または付加物とも称される)は、硫酸メラミン、メラミン、ホウ酸メラミン、シュウ酸メラミン、リン酸メラミン(prim.)、リン酸メラミン(sec.)およびピロリン酸メラミン(sec.)、ネオペンチルグリコールホウ酸メラミン、ならびにポリマー状リン酸メラミン(CAS−No.56386−64−2または218768−84−4)である。
【0081】
平均縮合度数nが20〜200の間にあり、かつ1,3,5−トリアジン含量がリン原子1モルあたり1,3,5−トリアジン化合物1.1〜2.0molである1,3,5−トリアジン化合物のポリリン酸メラミン塩が好ましく、1,3,5−トリアジン化合物は、メラミン、メラム、メレム、メロン、アンメリン、アメリド、2−ウレイドメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンおよびジアミンフェニルトリアジンから成る群より選択される。このような塩のn値は、一般的に40〜150であることが好ましく、リン原子1モルあたりの1,3,5−トリアジン化合物の比率は、好適には1.2〜1.8である。さらに、欧州特許第1095030号明細書(EP−B1095030)に準拠して調製された、10重量%の塩の水性スラリーのpHは、一般的に4.5超、好適には少なくとも5.0である。pH値は一般的なやり方で特定される:塩25gおよび25℃のきれいな水225gを300mlのビーカーに入れ、できあがる水性スラリーを30分間にわたり撹拌し、その後pHを測定する。上記のn値である数平均縮合度は、31P−固体NMRにより特定され得る。J.R.van Wazer、C.F.Callis、J.ShooleryおよびR.Jones著J.Am.Chem.Soc.,78,5715,1956から、隣接するリン酸基の数により特有の化学シフトが生じ、この化学シフトにより、オルトリン酸塩、ピロリン酸塩およびポリリン酸塩を明確に区別することができると知られている。さらに、欧州特許第1095030号明細書(EP1095030B1)では、20〜200のn値を有し、かつその1,3,5−トリアジン含量が1.1〜2.0molの1,3,5−トリアジン化合物である1,3,5−トリアジン化合物の所望のポリリン酸塩の製造方法が記載されている。この方法は、1,3,5−トリアジン化合物をオルトリン酸でそのオルトリン酸塩にして、引き続き、脱水および熱処理をして、オルトリン酸塩を1,3,5−トリアジン化合物のポリリン酸塩にすることを含む。この熱処理は、少なくとも300℃の温度、好適には少なくとも310℃で実施されるのが好ましい。1,3,5−トリアジン化合物のオルトリン酸塩に加えて、同様にその他の1,3,5−トリアジンリン酸塩を使用することもでき、例えばオルトリン酸塩とピロリン酸塩とからの混合物が含まれる。
【0082】
適切なグアニジン塩は以下のものである。
【表1】
【0083】
本発明の意味合いにおいて、化合物とは、例えばベンゾグアナミン自体およびその付加物または塩とも、窒素のところで置換されている誘導体およびその付加物または塩とも理解されるものとする。
【0084】
ポリリン酸アンモニウム(NHPO(ただしnは、約200〜1000、好ましくは600〜800)および式IV:
【化7】
のトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)または芳香族カルボン酸Ar(COOH)(これらは、場合によっては互いに混合されて存在することができ、ここでArは、1核、2核または3核の芳香族六環系を意味し、mは2、3または4である)とのその反応生成物がさらに適している。
【0085】
適切なカルボン酸は、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸、メロファン酸、プレニト酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、ナフタリンジカルボン酸およびアントラセンカルボン酸である。
【0086】
この製造は、欧州特許出願公開第584567号明細書(EP−A584567)の方法に従って、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートと、酸、そのアルキルエステルまたはそのハロゲン化物とを反応させることにより行われる。
【0087】
このような反応生成物は、モノマー状およびオリゴマー状のエステルの混合物であり、これはまた、架橋されていてもよい。オリゴマー化度は、通常、2〜約100、好適には2〜20である。THEICおよび/またはTHEICとリン含有窒素化合物、殊に(NHPOまたはピロリン酸メラミンまたはポリマー状リン酸メラミンとの反応生成物の混合物を使用することが好ましい。例えば(ΝΗΡO:THEICの混合比は、このような成分B1)の混合物を基準として、好適には90〜50:10〜50重量%、殊に80〜50:50〜20重量%である。
【0088】
さらに、式V:
【化8】
(上記式中、R、R’は、1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、好ましくは水素を意味し、殊にリン酸、ホウ酸および/またはピロリン酸を有するその付加物を意味する)
のベンゾグアナミン化合物が適している。
【0089】
さらに、式VI
【化9】
(上記式中、R、R’は、式Vに記載されている意味を有する)
のアラントイン化合物、ならびにリン酸、ホウ酸および/またはピロリン酸と式VIのアラントイン化合物との塩、ならびに式VII:
【化10】
(上記式中、Rは、式Vに挙げられている意味を有する)
のグリコールウリルまたは上記の酸と式VIIのグリコールウリルとの塩が好ましい。
【0090】
適切な生成物は、市販または独国特許出願公開第19614424号明細書(DE−A19614424)により得られる。
【0091】
本発明により使用可能なシアングアニジン(式VIII)は、例えば石灰窒素(カルシウムシアナミド)と炭酸とを反応させることにより得られ、ここで、生成するシアナミドは、pH9〜10で二量体化され、シアングアニジンになる:
【化11】
【0092】
市販で得られる製品は、209℃〜211℃の融点を有する白色粉末である。
【0093】
成分B):C)の比は、1:1〜5:1、殊に1:1.5〜1:2.5であることが好ましい。
【0094】
本発明によると、粒径分布が以下のようであるシアヌル酸メラミンを使用することが極めて特に好ましい:
98が25μm未満、好ましくは20μm未満。
50が4.5μm未満、好ましくは3μm未満。
【0095】
基本的に、d50値とは、50%の粒子がそれより小さな粒径を有し、かつ50%がそれより大きな粒径を有する、粒径の値であると当業者により理解される。
【0096】
粒径分布は、通常、レーザー回折により特定される(ISO13320と同様)。
【0097】
本発明による成形材料は、成分F)として、少なくとも1つのアルキル置換されたフェニル環を有する芳香族リン酸エステルを、0〜15重量%、好適には0.1〜15重量%、殊に0.5〜10重量%含有することができる。
【0098】
好ましいリン酸エステルは、ISO11357,1(20K/分の加熱曲線)に準拠したDSCにより測定して、50〜150℃、好ましくは60〜110℃の融点を有する。
【0099】
好ましい成分F)は、
【化12】
または
【化13】
またはこれらの混合物から構成されており、
上記式中、互いに独立して、
=H、メチルまたはイソプロピル、好ましくはH、
n=0〜7、好ましくは0、
2〜6=H、メチル、エチルまたはイソプロピル、好適にはメチル、
m=1〜5、好ましくは1〜2、
R‘‘=H、メチル、エチルまたはシクロプロピル、好適にはメチルまたは水素
を意味しており、ただし、少なくとも1つの基R〜Rがアルキル基である。
【0100】
好ましくは、基RおよびRは同一であり、殊に、基R〜Rは同一である。
【0101】
好ましい成分F)は、
【化14】
である。
【0102】
このような化合物は、Daihachi社のPX−200(登録商標)(CAS No.139189−30−3)として、またはICL−IP社のSol−DP(登録商標)として、市販で得ることができる。
【0103】
本発明による成形材料は、成分G)として、さらなる添加剤および加工助剤を、0〜50重量%、殊に40重量%まで含有することができる。
【0104】
通常の添加剤E)は、例えば40重量%まで、好適には15重量%までの量が、ゴム弾性ポリマーである(しばしば耐衝撃性改質剤、エラストマーまたはゴムとも称される)。
【0105】
これは、極めて一般的には、好ましくは以下のモノマーのうち少なくとも2つから構成されているコポリマーである:エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルおよび1〜18個のC原子をアルコール成分中に有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル。
【0106】
このようなポリマーは、例えばHouben−Weyl著、Methoden der organischen Chemie、Bd.14/1(Georg−Thieme−Verlag、Stuttgart、1961)、392〜406頁、およびC.B.Bucknallの研究論文「Toughened Plastics」(Applied Science Publishers、London、1977)に記載されている。
【0107】
以下に、このようなエラストマーの幾つかの好ましい種類を提示する。
【0108】
好ましい種類のエラストマーは、いわゆるエチレン−プロピレン(EPM)ゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムである。
【0109】
EPMゴムは、実質的に二重結合を有しないのが一般的だが、EPDMゴムは、C原子100個あたり1〜20個の二重結合を有することができる。
【0110】
EPDMゴム用のジエンモノマーとしては例えば、共役ジエン、例えばイソプレンおよびブタジエン、5〜25個のC原子を有する非共役ジエン、例えばペンタ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,5−ジエン、2,5−ジメチルヘキサ−1,5−ジエンおよびオクタ−1,4−ジエン、環状ジエン、例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエンおよびジシクロペンタジエン、ならびにアルケニルノルボルネン、例えば5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネン、およびトリシクロジエン、例えば3−メチル−トリシクロ(5.2.1.0.2.6)−3,8−デカジエン、またはこれらの混合物が挙げられる。ヘキサ−1,5−ジエン、5−エチリデンノルボルネンおよびジシクロペンタジエンが好ましい。EPDMゴムのジエン含量は、ゴムの合計重量を基準として、好適には0.5〜50重量%、殊に1〜8重量%である。
【0111】
EPMゴムまたはEPDMゴムは、好適には、反応性カルボン酸またはその誘導体でグラフトされていてもよい。ここで、例えばアクリル酸、メタクリル酸およびその誘導体、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、ならびにマレイン酸無水物が挙げられる。
【0112】
好ましいゴムのさらなる群は、エチレンと、アクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはこれらの酸のエステルとのコポリマーである。さらに、ゴムは、マレイン酸およびフマル酸またはこれらの酸の誘導体(例えばエステルおよび無水物)などのジカルボン酸、および/またはエポキシ基を有するモノマーをも含有することができる。これらのジカルボン酸誘導体、またはエポキシ基を有するモノマーは、好適にはジカルボン酸基またはエポキシ基を含有する、一般式IまたはIIまたはIIIまたはIV:
【化15】
(上記式中、R〜Rは、水素または1〜6個のC原子を有するアルキル基であり、mは、0〜20の整数であり、gは、0〜10の整数であり、pは、0〜5の整数である)
のモノマーをモノマー混合物に添加することにより、ゴムに組み込まれる。
【0113】
好適には、基R〜Rは水素を意味し、ここで、mは0または1を表し、gは1を表す。相応する化合物は、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸無水物、アリルグリシジルエーテルおよびビニルグリシジルエーテルである。
【0114】
式I、IIおよびIVの好ましい化合物は、マレイン酸、マレイン酸無水物、ならびにアクリル酸および/またはメタクリル酸のエポキシ基含有エステル、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートおよび第三級アルコールを有するエステル、例えばt−ブチルアクリレートである。後者は、遊離カルボキシル基を有しないものの、その挙動において遊離酸に近く、よって潜在的カルボキシル基を有するモノマーと称される。
【0115】
有利には、コポリマーは、エチレン50〜98重量%、エポキシ基を有するモノマーおよび/またはメタクリル酸および/または酸無水物基を有するモノマー0.1〜20重量%から、ならびに残りの量は(メタ)アクリル酸エステルから成る。
【0116】
以下のものから成るコポリマーが特に好ましい:
エチレン50〜98重量%、殊に55〜95重量%、
グリシジルアクリレートおよび/またはグリシジルメタクリレート、(メタ)アクリル酸および/またはマレイン酸無水物0.1〜40重量%、殊に0.3〜20重量%、ならびに
n−ブチルアクリレートおよび/または2−エチルヘキシルアクリレート1〜45重量%、殊に10〜40重量%。
【0117】
アクリル酸および/またはメタクリル酸のさらなる好ましいエステルは、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびi−またはt−ブチルエステルである。
【0118】
それだけでなく、ビニルエステルおよびビニルエーテルもコモノマーとして使用することができる。
【0119】
先に記載されているエチレンコポリマーは、それ自体が公知である方法により、好適には高圧力および高温でのランダム重合により製造され得る。相応する方法が、一般的に知られている。
【0120】
また、好ましいエラストマーはエマルションポリマーでもあり、その製造は、例えばBlackleyにより研究論文「Emulsion Polymerization」に記載されている。使用可能な乳化剤および触媒は、それ自体が公知である。
【0121】
基本的に、均質に構成されたエラストマーまたはシェル構造を有する均質に構成されたエラストマーを使用することができる。シェル型の構造は、個別のモノマーの添加順序により決定される;ポリマーのモルホロジーもこの添加順序に影響される。
【0122】
ここで単に例示的に、エラストマーのゴム部分を製造するためのモノマーとして、アクリレート、例えばn−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレート、相応するメタクリレート、ブタジエンおよびイソプレン、ならびにこれらの混合物が挙げられる。これらのモノマーを、さらなるモノマー、例えばスチレン、アクリロニトリル、ビニルエーテルおよびさらなるアクリレートまたはメタクリレート、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびプロピルアクリレートと、共重合させることができる。
【0123】
エラストマーの軟相またはゴム相(0℃未満のガラス転移温度を有する)は、コア、外側の外殻または中間シェル(2つより多くのシェル構造を有するエラストマーの場合)であってよく、エラストマーのシェルが複数である場合、複数のシェルは、ゴム相から成っていてもよい。
【0124】
ゴム相だけでなく、さらに1つ以上の硬質成分(20℃超のガラス転移温度を有する)がエラストマーの構造に関与している場合、これらは、一般的に、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレートおよびメチルメタクリレートを主要なモノマーとして重合することにより製造される。それだけでなく、ここで、比較的少ない割合のさらなるコモノマーを使用することもできる。
【0125】
幾つかの場合において、表面に反応性基を有するエマルションポリマーを使用することが有利であると判明した。このような基は、例えばエポキシ基、カルボキシル基、潜在的カルボキシル基、アミノ基またはアミド基、ならびに一般式:
【化16】
(上記式中、置換基は以下の意味を有し得る:
10は、水素またはC〜Cアルキル基であり、
11は、水素、C〜Cアルキル基またはアリール基、殊にフェニルであり、
12は、水素、C〜C10アルキル基、C〜C12アリール基または−OR13であり、
13は、場合によってはOまたはNを含有する基で置換可能なC〜Cアルキル基またはC〜C12アリール基であり、
Xは、化学結合、C〜C10アルキレン基またはC〜C12アリーレン基である)
のモノマーを併用することにより導入可能な官能基、
または
【化17】
(上記式中、
Yは、O−ZまたはNH−Zであり、
Zは、C〜C10アルキレン基またはC〜C12アリーレン基である)
である。
【0126】
また、欧州特許出願公開第208187号明細書(EP−A208187)に記載されているグラフトモノマーも、表面における反応性基の導入に適している。
【0127】
さらなる例としては、さらにアクリルアミド、メタクリルアミドおよびアクリル酸またはメタクリル酸の置換エステル、例えば(N−t−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、(N,N−ジメチルアミノ)メチルアクリレートおよび(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレートが挙げられる。
【0128】
さらに、ゴム相の粒子は架橋されていてもよい。架橋剤として作用するモノマーは、例えばブタ−1,3−ジエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレートおよびジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート、ならびに欧州特許出願公開第50265号明細書(EP−A50265)に記載されている化合物である。
【0129】
さらに、いわゆるグラフト架橋モノマー(グラフト結合モノマー)、つまり重合時に異なる速度で反応する2つ以上の重合可能な二重結合を有するモノマーも使用することができる。好適には、少なくとも片方の反応性基が通常のモノマーとほぼ同じ速度で重合される一方で、他方の反応性基(または複数の反応性基)が例えばそれより著しくゆっくりと重合される化合物を使用する。異なる重合速度により、特定の割合の不飽和二重結合がゴム中にもたらされる。引き続きこのようなゴムにさらなる相をグラフトする場合、ゴム中に存在する二重結合は、少なくとも部分的にグラフトモノマーと反応して、化学結合を形成する。つまり、グラフトされた相は、少なくとも部分的に、化学結合によりグラフト幹部と繋がっている。
【0130】
このようなグラフト架橋モノマーの例は、アリル基を有するモノマー、殊にエチレン性不飽和カルボン酸のアリルエステル、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネートまたはこれらのジカルボン酸の相応するモノアリル化合物である。それだけでなく、多数のさらなる適切なグラフト架橋モノマーがある;ここでさらなる詳細については、例えば米国特許第4148846号明細書(US−PS4148846)を参照されたい。
【0131】
一般的に、耐衝撃性改質ポリマーに対するこれらの架橋性モノマーの割合は、耐衝撃性改質ポリマーを基準として、5重量%まで、好適には3重量%以下である。
【0132】
以下に、幾つかの好ましいエマルションポリマーを列挙する。まずここで、コアおよび少なくとも1つの外側シェルを有し、以下の構造を有するグラフトポリマーを挙げる。
【表2】
【0133】
40重量%までの量のこれらのグラフトポリマー、殊にABSポリマーおよび/またはASAポリマーは、好適にはPBTの耐衝撃性を改質するために、場合によっては、40重量%までのポリエチレンテレフタレートと混合して使用される。相応するブレンド製品は、Ultradur(登録商標)S(以前はBASF AGのUltrablend(登録商標)S)という商標で得ることができる。
【0134】
複数のシェルを備える構造を有するグラフトポリマーの代わりに、ブタ−1,3−ジエン、イソプレンおよびn−ブチルアクリレートまたはそれらのコポリマーからの、均質、つまりシェルが1つのエラストマーを使用することもできる。また、これらの生成物も、架橋性モノマーまたは反応性基を有するモノマーを併用することにより製造することができる。
【0135】
好ましいエマルションポリマーの例は、n−ブチルアクリレート/(メタ)アクリル酸コポリマー、n−ブチルアクリレート/グリシジルアクリレートコポリマー、またはn−ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマー、n−ブチルアクリレートからの内部コアまたはブタジエンベースの内部コアと先に挙げたコポリマーからの外側の外殻とを有するグラフトポリマー、ならびにエチレンと反応性基をもたらすコモノマーとのコポリマーである。
【0136】
記載されているエラストマーは、その他の一般的な方法により、例えば懸濁重合により製造することもできる。
【0137】
独国特許出願公開第3725576号明細書(DE−A3725576)、欧州特許出願公開第235690号明細書(EP−A235690)、独国特許出願公開第3800603号明細書(DE−A3800603)および欧州特許出願公開第319290号明細書(EP−A319290)に記載されているように、シリコーンゴムも同様に好ましい。
【0138】
当然のことながら、先に列挙されている種類のゴムの混合物を使用することもできる。
【0139】
繊維状または粒子状のフィラーG)としては、ガラス繊維、ガラスビーズ、非晶質シリカ、アスベスト、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、白亜、粉末石英、雲母、硫酸バリウムおよび長石が挙げられる。繊維状のフィラーG)は、50重量%まで、殊に35重量%までの量で使用され、粒子状のフィラーは、30重量%まで、殊に10重量%までの量で使用される。
【0140】
好ましい繊維状のフィラーとしては、アラミド繊維およびチタン酸カリウム繊維が挙げられ、ここでEガラスとしてのガラス繊維が特に好ましい。これらは、ロービングまたはチョップドガラスとして、市場で一般的な形態で使用され得る。
【0141】
レーザー吸収性の高いフィラー、例えば炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、グラフェンまたはカーボンナノチューブは、好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0.05重量%未満の量で使用される。
【0142】
繊維状のフィラーは、熱可塑性樹脂との適合性をより良好にするために、シラン化合物により表面的に前処理されていてよい。
【0143】
適切なシラン化合物は、一般式:
【化18】
(上記式中、置換基は以下の意味を有する:
Xは、
【化19】
であり、
nは、2〜10、好ましくは3〜4の整数であり、
mは、1〜5、好ましくは1〜2の整数であり、
kは、1〜3の整数、好ましくは1である)
のシラン化合物である。
【0144】
好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、ならびに置換基Xとしてグリシジル基を有する相応するシランである。
【0145】
シラン化合物は、一般的に0.05〜5重量%、好適には0.1〜1.5重量%、殊に0.2〜0.5重量%(Gを基準とする)の量で表面被覆のために使用される。
【0146】
また、針状の鉱物フィラーも適している。
【0147】
本発明の意味合いにおいて、針状の鉱物フィラーとは、高度に発達した針状の特性を有する鉱物フィラーと理解される。例としては、針状ウォラストナイトが挙げられる。好適には、この鉱物は、8:1〜35:1、好ましくは8:1〜11:1のL/D(長さ/直径)比を有する。鉱物フィラーは、場合によっては先に挙げたシラン化合物で前処理されていてよいが、しかしながら、この前処理は必ずしも必要ではない。
【0148】
本発明による熱可塑性成形材料は、成分G)として、通常の加工助剤、例えば安定化剤、酸化防止剤、熱分解および紫外光による分解に対する薬剤、すべり剤および離型剤、着色剤、例えば着色料および顔料、可塑剤などを含有することができる。
【0149】
酸化防止剤および熱安定化剤の例としては、熱可塑性成形材料の重量を基準として1重量%までの濃度にある、立体障害フェノールおよび/またはホスファイト、ヒドロキノン、芳香族第二級アミン、例えばジフェニルアミン、様々に置換されたこれらの群のもの、これらの混合物が挙げられる。
【0150】
成形材料を基準として一般的に2重量%までの量で使用されるUV安定化剤としては、様々に置換されたレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノンが挙げられる。
【0151】
無機および有機の顔料、ならびに着色料、例えばニグロシンおよびアントラキノンを着色剤として添加することができる。特に適切な着色剤は、例えば欧州特許第1722984号明細書(EP1722984B1)、欧州特許第1353986号明細書(EP1353986B1)または独国特許出願公開第10054859号明細書(DE10054859A1)に挙げられている。
【0152】
10〜40個、好ましくは16〜22個のC原子を有する飽和または不飽和脂肪族カルボン酸と、2〜40個、好適には2〜6個のC原子を有する脂肪族飽和アルコールまたはアミンとのエステルまたはアミドがさらに好ましい。
【0153】
カルボン酸は、1価または2価であり得る。例としては、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸、特に好ましくはステアリン酸、カプリン酸およびモンタン酸(30〜40個のC原子を有する脂肪酸の混合物)が挙げられる。
【0154】
脂肪族アルコールは、1〜4価であり得る。アルコールの例は、n−ブタノール、n−オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリットであり、ここでグリセリンおよびペンタエリトリットが好ましい。
【0155】
脂肪族アミンは、1〜3価であり得る。これに関する例は、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジ(6−アミノヘキシル)アミンであり、ここでエチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。相応して、好ましいエステルまたはアミドは、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、エチレンジアミンジステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリントリラウレート、グリセリンモノベヘネートおよびペンタエリトリットテトラステアレートである。
【0156】
様々なエステルまたはアミドの混合物を使用することも、またはアミドとエステルとを組み合わせで使用することもでき、ここで混合比は任意である。
【0157】
さらなるすべり剤および離型剤は、通常、1重量%までの量で使用される。長鎖脂肪酸(例えばステアリン酸またはベヘン酸)、その塩(例えばステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸亜鉛)またはモンタンワックス(28〜32個のC原子の鎖長を有する直鎖状の飽和カルボン酸からの混合物)、ならびにモンタン酸カルシウムまたはモンタン酸ナトリウム、ならびに低分子量ポリエチレンワックスまたはポリプロピレンワックスが好ましい。
【0158】
可塑剤の例としては、フタル酸ジオクチルエステル、フタル酸ジベンジルエステル、フタル酸ブチルベンジルエステル、炭化水素油、N−(n−ブチル)ベンゼンスルホンアミドが挙げられる。
【0159】
本発明による成形材料は、0〜2重量%のフッ素含有エチレンポリマーをさらに含有することができる。これは、55〜76重量%、好適には70〜76重量%のフッ素含量を有するエチレンのポリマーである。
【0160】
これに関する例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、またはテトラフルオロエチレンコポリマーであって、比較的小さな割合(基本的に、50重量%まで)の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを有するものである。これらは、例えばSchildknechtにより、「Vinyl and Related Polymers」、Wiley−Verlag、1952、484〜494頁に、かつWallにより、「Fluorpolymers」(Wiley Interscience、1972)に記載されている。
【0161】
これらのフッ素含有エチレンポリマーは、成形材料中に均質に分布しており、好ましくは粒径d50(数平均値)を、0.05〜10μm、殊に0.1〜5μmの範囲で有する。これらの低い粒径は、特に好ましくは、フッ素含有エチレンポリマーの水性分散液を使用し、これをポリエステル溶融物中に組み込むことにより達成される。
【0162】
本発明による熱可塑性成形材料は、それ自体が公知である方法により、出発成分を一般的な混合設備、例えばスクリュー押出成形機、ブラベンダーミキサーまたはバンバリーミキサー内で混ぜ、引き続き、押出成形することにより製造され得る。押出成形後、押出成形品を冷却し、粉砕することができる。また、個別の成分を予め混合する(例えば、個別の成分を顆粒に塗布またはドラムコーティング)こともでき、それから残りの出発物質を、単独で、および/または同様に混合して添加することもできる。混合温度は、基本的に230〜290℃である。
【0163】
さらなる好ましい作業方式により、各成分をポリエステルプレポリマーと混合、調製および顆粒化することができる。引き続き、得られる顆粒を、固相において、不活性ガス下で連続的または非連続的に、成分A)の融点未満の温度で、所望の粘度になるまで圧縮する。
【0164】
本発明による成形材料は、良好な機械的特性および難燃特性の点で優れている。マイグレーションおよび加工性は改善されている。殊に、薄壁での適用が、良好な難燃特性および機械的性質を示す。
【0165】
本発明による成形材料から製造される成形体は、電気、家具、スポーツ、機械工学、保健衛生、医学、エネルギー技術および駆動技術、自動車およびその他の輸送手段、または機器用ケース材料および電気通信用装置、家庭用電化製品、家庭用装置、機械工学、加熱領域、または施工物用もしくは容器用の固定部品、ならびにあらゆる種類の換気部品の分野において、好適には支持機能または機械的な機能を有する内部部品および外部部品を製造するために使用される。
【0166】
これらは、繊維、箔およびあらゆる種類の成形体を製造するために、殊にプラグ、スイッチ、ケース部分、ケース用の蓋、ヘッドランプベゼル、シャワーヘッド、電機子、アイロン、回転式スイッチ、コンロのボタン、フライヤーの蓋、ドアの取っ手、(バック)ミラーケース、(リア)ワイパー、光導体用シースとしての用途に適している。
【0167】
E/E分野では、本発明によるポリエステルにより、プラグ、プラグ部分、プラグ接続部、ケーブルハーネス部品、回路支持体、回路支持部品、三次元的に射出成形された回路支持体、電気接続部品、メカトロニクス部品またはオプトエレクトロニクス構成部品を製造することができる。
【0168】
車の内部では、ダッシュボード、ステアリングコラムスイッチ、シート部分、ヘッドレスト、センターコンソール、ギア部分およびドアモジュールのために、車の外部では、ドアの取っ手、ヘッドライト部品、外部ミラー部品、ワイパー部品、ワイパー保護ケース、装飾グリル、ルーフレール、サンルーフフレーム、ならびに車体外側部分のために使用可能である。
【0169】
台所および家事の分野については、ポリエステルを、台所用機器、例えばフライヤー、アイロン、ボタンのための部品を製造するために使用することができ、またガーデニング・レジャーの分野、例えば灌漑システムまたはガーデニング機器のための部品において用いることもできる。
【0170】
実施例
成分A:
130ml/gの粘度数VZおよび34meq/kgのカルボキシル末端基含量を有するポリブチレンテレフタレート(BASF SEのUltradur(登録商標)B4520)(VZは、フェノール/o−ジクロロベンゼン1:1の混合物からの0.5重量%の溶液、DIN53728またはISO1628に準拠して25℃で測定)、Aを基準として0.65重量%のペンタエリトリットテトラステアレートを潤滑剤(G1)として含有。
【0171】
成分B:
ポリ(ε)−カプロラクトン(Perstorp社のCapa(登録商標)6500):Mw(GPC、ヘキサフルオロイソプロパノール/0.05%のトリフルオロ酢酸カリウム、PMMA標準):99300g/mol、226ml/gの粘度数VZを有する(VZは、フェノール/o−ジクロロベンゼン1:1の混合物からの0.5重量%の溶液、DIN53728またはISO1628に準拠して25℃で測定)。溶融範囲(DSC、DIN11357に従って20K/分):58〜60℃。
【0172】
成分C:
コポリエステル:ポリブチレンセバケート−コテレフタレート、融点(DSC、DIN11357に従って20K/分):110〜120℃、Mw(GPC、ヘキサフルオロイソプロパノール/0.05%のトリフルオロ酢酸カリウム、PMMA標準):94600g/mol。
【0173】
成分D/1:
ジエチルホスフィン酸アルミニウム(Clariant GmbHのExolit(登録商標)OP1240):粒径d(0.9)=80.194μm、Mastersizer2000(測定範囲0.02〜20000μm)により水中で特定。
【0174】
成分D/2:
ジエチルホスフィン酸アルミニウム(Clariant GmbHのExolit(登録商標)OP935):粒径d(0.9)=5.613μm、Mastersizer2000(測定範囲0.02〜20000μm)により水中で特定。
【0175】
成分F:
Daihachi Chem.社のPX−200:融点(DSC、DIN11357に従って20K/分):95℃。
【化20】
【0176】
成分G/2:
3M(Dyneon)社のPTFE Dyneon TF2071。TDSに準拠した粒径は、500μm(ISO12086)であり、密度は、2.16g/cm(ISO12086)である。
【0177】
成形材料の製造
表1に記載の組成物について、まず個別の成分を、A)中で42.5重量%のDおよびA)中で38重量%のFの濃縮物(バッチ)としてコンパウンド化した。
【0178】
マスターバッチおよびさらなる各成分を、別個の計量秤により下記の射出成形機に計量供給し、直接加工して、相応する射出成形試験体にした。全ての実験における処理量は、10kg/hであった。ノズルを250℃で、供給部を20℃で稼働させた。温度230℃の溶融ゾーンから出発して、255℃のミキシングヘッド温度まで、温度をゾーンごとに5〜10℃の段階で上昇させた。
【0179】
表2にある本発明による実施例のための成形材料を二軸押出成形機ZE25により製造した。温度プロファイルを、ゾーン1における240℃から260℃(ゾーン2〜9)へと上昇させ、一定に維持した。回転数を130rpmに調整し、これにより、処理量が、配合物に応じて約7.5〜9.6kg/hになった。この押出成形品を水浴に通し、顆粒化した。引き続き、この顆粒を射出成形により加工した。
【0180】
特性の測定:
表1に関しては厚さ1.6mmの試験試料について、表2に関しては厚さ0.8/0.4mmの試料について、難燃性試験をUL94に準拠して行った。
【0181】
TA Instruments社の器具DSC Q2000を用いてDSC測定を実施した。導入量は約8.5mgであった。乾燥していないサンプルを20℃/分の加熱速度で−20℃から200℃に加熱し、融点を、加熱の間に溶融プロセスによりもたらされるピークの温度最大値として特定した(DIN11357)。
【0182】
ポリマーのモル質量の分布をサイズ排除クロマトグラフィー法(=SECまたはGPC)により特定した。M=800g/mol〜M=1,820,000g/molの分子量を有する狭く分布したPSS社のPMMA標準により較正を行った。この溶離範囲外の値は、著しい程度で生じることはなかった。これらの測定は、実質的にDIN55672−2:2008−06に準拠して行われた。
【0183】
溶離剤:ヘキサフルオロイソプロパノール+0.05%のトリフルオロ酢酸カリウム塩
カラム温度:35℃
貫流速度:1ml/分
注入量:50μL
濃度:1.5mg/ml
サンプル溶液をMillipore Millex FG(0.2μm)により濾過した。
検出器:DRI Agilent 1100
充填材料:スチレン−ジビニルベンゼン
カラム長:30cm
内径:7.5mm。
【0184】
表1にある全ての機械的性質に関するデータを以下のように特定した:配合物1種あたり5個の標準試験体(ISO294−1に従ったタイプ1A)について、引張・ひずみ測定を、Zwick/Roellの引張試験機T1−FR010TH.A50により、ISO527−1に準拠して実施した(最大試験応力:10kN、予備応力:0.3MPa)。同様に、シャルピーの耐衝撃性および耐ノッチ衝撃性(Kerbschlagzaehigkeit)測定を、配合物1種あたり5個の試験体(ISO294−1に従ったタイプB)について、Zwick/Roellの振子式衝撃試験機HIT5.5Pにより実施するか、または事前に準備した後に、Zwick/Roellのノッチフライス盤ZNOにより、ISO179−1に準拠して実施した(公称エネルギー:5J、衝突速度:2.9m/s)。
【0185】
表2にある全ての機械的性質に関するデータを同じ標準により特定した。しかしながら、機械としては、Instron Wolpert社の振子式衝撃試験機およびZwick社の引張試験機(Z020)を使用した。ISO527−1、等式11に従って、試料のタイプ1Aについて公称破断伸びを特定した。
【0186】
組成および測定結果は、表から明らかとなる。
【表3】
【表4】