特許第6793742号(P6793742)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793742
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】電解処理治具及び電解処理方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/12 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   C25D21/12 A
   C25D21/12 C
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-543803(P2018-543803)
(86)(22)【出願日】2017年9月11日
(86)【国際出願番号】JP2017032675
(87)【国際公開番号】WO2018066315
(87)【国際公開日】20180412
【審査請求日】2019年4月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-198729(P2016-198729)
(32)【優先日】2016年10月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】星野 智久
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 正人
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−138304(JP,A)
【文献】 特開2015−200029(JP,A)
【文献】 特開2013−166999(JP,A)
【文献】 特開2010−287648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 21/100−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に電解処理を行う電解処理治具であって、
平板状の基体と、
前記基体に設けられた電極と、
前記基体に3本以上設けられ、且つ弾性を有し、前記被処理基板の外周部に接触する端子と、
前記端子の少なくとも1本が前記被処理基板に接触したことを電気的に検知する検知部と、を有し、
前記検知部は、一の前記端子と他の前記端子の間の抵抗値を測定する、電解処理治具。
【請求項2】
被処理基板に電解処理を行う電解処理治具であって、
平板状の基体と、
前記基体に設けられた電極と、
前記基体に3本以上設けられ、且つ弾性を有し、前記被処理基板の外周部に接触する端子と、
前記端子の少なくとも1本が前記被処理基板に接触したことを電気的に検知する検知部と、を有し、
前記端子にかかる荷重を測定する荷重測定部をさらに有する、電解処理治具。
【請求項3】
被処理基板に電解処理を行う電解処理治具であって、
平板状の基体と、
前記基体に設けられた電極と、
前記基体に3本以上設けられ、且つ弾性を有し、前記被処理基板の外周部に接触する端子と、
前記端子の少なくとも1本が前記被処理基板に接触したことを電気的に検知する検知部と、を有し、
前記検知部による検知結果に基づいて、前記被処理基板に対する前記端子の接触が不良であった場合に警告を発する警告部をさらに有する、電解処理治具。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電解処理治具において、
前記検知部は、前記端子を流れる電流の有無を検出する。
【請求項5】
電解処理治具を用いて被処理基板に電解処理を行う電解処理方法であって、
前記電解処理治具は、
平板状の基体と、
前記基体に設けられた電極と、
前記基体に3本以上設けられ、且つ弾性を有し、前記被処理基板の外周部に接触する端子と、
前記端子の少なくとも1本が前記被処理基板に接触したことを電気的に検知する検知部と、を有し、
前記電解処理方法は、
前記電解処理治具と前記被処理基板を相対的に近づけるように移動させ、前記端子を前記被処理基板に接触させる第1の工程と、
その後、前記電極と前記被処理基板の間に処理液が供給された状態で、前記電極と前記被処理基板の間に電圧を印加して、当該被処理基板に電解処理を行う第2の工程と、を有し、
前記第1の工程において、前記検知部によって前記端子と前記被処理基板の接触を検知する。
【請求項6】
請求項に記載の電解処理方法において、
前記第1の工程において、前記検知部によって一の前記端子と他の前記端子の間の抵抗値を測定し、当該測定された抵抗値が所定の抵抗値である場合に、前記端子と前記被処理基板の接触が検知される。
【請求項7】
請求項に記載の電解処理方法において、
前記第1の工程において、前記検知部によって前記端子を流れる電流の有無を検出し、当該端子に電流が流れた場合に、前記端子と前記被処理基板の接触が検知される。
【請求項8】
請求項に記載の電解処理方法において、
前記電解処理治具は、前記端子にかかる荷重を測定する荷重測定部をさらに有し、
前記第1の工程において、前記荷重測定部によって前記端子にかかる荷重が測定された場合に、1本目の前記端子と前記被処理基板の接触が検知される。
【請求項9】
請求項に記載の電解処理方法において、
前記第1の工程において、所定数の前記端子を前記被処理基板に接触させた後、さらに前記電解処理治具と前記被処理基板を相対的に近づけるように所定距離移動させる。
【請求項10】
請求項に記載の電解処理方法において、
前記第1の工程において、前記検知部による検知結果に基づいて、前記被処理基板に対する前記端子の接触が不良であった場合に、警告部より警告を発する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2016年10月7日に日本国に出願された特願2016−198729号に基づき、優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【0002】
本発明は、被処理基板に電解処理を行う電解処理治具、及び当該電解処理治具を用いた電解処理方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電解プロセス(電解処理)は、めっき処理やエッチング処理等の種々の処理に用いられる技術である。例えば半導体装置の製造工程においても、電解処理は行われる。
【0004】
上述しためっき処理は、従来、例えば特許文献1に記載されためっき装置で行われる。めっき装置では、アノード電極に対面配置された半導体ウェハが、そのめっき処理面が下方に向くように配置される。また、半導体ウェハを支持する支持部は、当該半導体ウェハに接続されるカソード電極を構成している。そして半導体ウェハのめっき処理面に向けて、前記アノード電極を通してめっき液を噴流させることにより半導体ウェハのめっき処理を行う。
【0005】
また、特許文献1に記載されためっき装置には超音波振動子が設けられており、かかる超音波振動子から発振される超音波をめっき液に伝えることで、めっき液を攪拌している。これより、めっき処理の均一性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開2004−250747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されためっき装置を用いた場合、めっき処理の均一性向上を実現するためには、めっき液を攪拌するための超音波振動子が必要となり、大掛かりな攪拌手段が必要となる。そして装置構成上、このような撹拌手段を設けることができない場合もある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、被処理基板に対する電解処理を効率よく且つ適切に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明の一態様は、被処理基板に電解処理を行う電解処理治具であって、平板状の基体と、前記基体に設けられた電極と、前記基体に3本以上設けられ、且つ弾性を有し、前記被処理基板の外周部に接触する端子と、前記端子の少なくとも1本が前記被処理基板に接触したことを電気的に検知する検知部とを有し、前記検知部は、一の前記端子と他の前記端子の間の抵抗値を測定する
【0010】
前記した本発明の一態様によれば、先ず、電解処理治具と被処理基板を相対的に近づけるように移動させ、端子を被処理基板に接触させる。この際、検知部によって端子と被処理基板の接触を検知することができ、かかる接触を確実に行うことができる。その後、電極と被処理基板の間に処理液が供給された状態で、電極と被処理基板の間に電圧を印加して、当該被処理基板に電解処理を行う。端子は被処理基板の外周部に接触し、また上述したように端子と被処理基板とは確実に接触しているので、均一に電解処理を行うことができる。しかも、電解処理の均一性を向上させるため、従来のように処理液を攪拌させるための大掛かりな手段が必要なく、装置構成を簡易化することができる。したがって、電解処理を効率よく且つ適切に製造することができる。
【0011】
別な観点による本発明の一態様は、電解処理治具を用いて被処理基板に電解処理を行う電解処理方法であって、前記電解処理治具は、平板状の基体と、前記基体に設けられた電極と、前記基体に3本以上設けられ、且つ弾性を有し、前記被処理基板の外周部に接触する端子と、前記端子の少なくとも1本が前記被処理基板に接触したことを電気的に検知する検知部と、を有している。そして前記電解処理方法は、前記電解処理治具と前記被処理基板を相対的に近づけるように移動させ、前記端子を前記被処理基板に接触させる第1の工程と、その後、前記電極と前記被処理基板の間に処理液が供給された状態で、前記電極と前記被処理基板の間に電圧を印加して、当該被処理基板に電解処理を行う第2の工程と、を有し、前記第1の工程において、前記検知部によって前記端子と前記被処理基板の接触を検知する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被処理基板に対する電解処理を効率よく且つ適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態にかかる電解処理治具を備えた、半導体装置の製造装置の構成の概略を示す説明図である。
図2】移動機構の構成の概略を示す説明図である。
図3】ウェハ上にめっき液の液パドルを形成する様子を示す説明図である。
図4】ウェハ上にめっき液の液パドルを形成した様子を示す説明図である。
図5】1本目の端子をウェハに接触させる様子を示す説明図である。
図6】1本目の端子をウェハに接触させる際の移動機構の様子を示す説明図である。
図7】2本目の端子をウェハに接触させる様子を示す説明図である。
図8】3本目〜8本目の端子をウェハに接触させる様子を示す説明図である。
図9】すべての端子をウェハに接触させた後、電解処理治具を所定距離させる様子を示す説明図である。
図10】間接電極とウェハとの間に電圧を印加した様子を示す説明図である。
図11】直接電極とウェハとの間に電圧を印加した様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施の形態にかかる電解処理治具を備えた、半導体装置の製造装置の構成の概略を示す説明図である。製造装置1では、被処理基板としての半導体ウェハW(以下、「ウェハW」という。)に対し、電解処理としてめっき処理を行う。このウェハWの表面には、電極として用いられるシード層(図示せず)が形成されている。なお、以下の説明で用いる図面において、各構成要素の寸法は、技術の理解の容易さを優先させるため、必ずしも実際の寸法に対応していない。
【0016】
製造装置1は、ウェハ保持部10を有している。ウェハ保持部10は、ウェハWを保持して回転させるスピンチャックである。ウェハ保持部10は、平面視においてウェハWの径より大きい径を有する上面10aを有し、当該上面10aには、例えばウェハWを吸引する吸引口(図示せず)が設けられている。この吸引口からの吸引により、ウェハWをウェハ保持部10上に吸着保持できる。
【0017】
ウェハ保持部10には、例えばモータなどを備えた駆動機構11が設けられ、その駆動機構11により所定の速度に回転できる。また、駆動機構11には、シリンダなどの昇降駆動部(図示せず)が設けられており、ウェハ保持部10は鉛直方向に移動可能である。
【0018】
ウェハ保持部10の上方には、当該ウェハ保持部10に対向して、電解処理治具20が設けられている。電解処理治具20は、絶縁体からなる基体21を有している。基体21は平板状であり、平面視においてウェハWの径より大きい径を有する下面21aを有している。基体21には、端子22、直接電極23及び間接電極24が設けられている。
【0019】
端子22は、基体21の外周部において、下面21aから突出して設けられている。端子22は例えば8本設けられ、基体21の同心円周上に均等間隔に配置されている。また、端子22は屈曲し、弾性を有している。さらに、複数の端子22は、その先端部から構成される仮想面、すなわち複数の各端子22の先端部(点)によって形成される平面が、ウェハ保持部10に保持されたウェハWの表面と略平行になるように配置されている。
【0020】
そして、めっき処理を行う際、端子22は、後述するようにウェハW(シード層)の外周部に接触し、当該ウェハWに電圧を印加する。なお、端子22の数は本実施の形態に限定されず、少なくとも3本以上であればよい。また、端子22の形状も本実施の形態に限定されず、端子22が弾性を有していればよい。
【0021】
直接電極23は、基体21の下面21aに設けられている。直接電極23は、ウェハ保持部10に保持されたウェハWに対向し、且つ略平行に配置されている。そして、めっき処理を行う際、直接電極23は、後述するようにウェハW上のめっき液に接触する。
【0022】
間接電極24は、基体21の内部に設けられている。すなわち、間接電極24は外部に露出していない。
【0023】
端子22、直接電極23及び間接電極24には、直流電源30が接続されている。端子22は、直流電源30の負極側に接続されている。直接電極23と間接電極24は、それぞれ直流電源30の正極側に接続されている。
【0024】
また、直流電源30と端子22を接続する回路には、検知部31が設けられている。検知部31は、複数の端子22のうち、一の端子22と他の端子22の間の抵抗値を測定する抵抗計である。そして、検知部31は、この電流値を測定することにより、後述するようにウェハWに対する端子22の接触を電気的に検知する。
【0025】
基体21の上面21b側には、当該基体21を移動させる移動機構40が設けられている。図2に示すように移動機構40は、基体21の上面21bを押圧して移動させる押圧部41を有している。押圧部41は、押圧板42、支持板43及び支持柱44が一体に構成されている。押圧板42は基体21の上面21bに接触して設けられ、支持板43は押圧板42に対向して設けられている。これら押圧板42と支持板43は、それぞれ剛体であり、荷重がかかっても変形しないようになっている。支持柱44は、押圧板42と支持板43の間を接続して設けられている。
【0026】
押圧部41には、当該押圧部41を昇降させる昇降駆動部45が設けられている。昇降駆動部45は例えばエアベアリングシリンダであり、支持柱44に取り付けられている。なお、昇降駆動部45の構成は本実施の形態に限定されず、押圧部41を昇降させるものであれば任意である。
【0027】
押圧板42と支持板43の間には、荷重測定部46が設けられている。荷重測定部46には、例えばロードセルが用いられる。荷重測定部46は、支持部材47によって固定されている。昇降駆動部45によって押圧部41が下降し、支持板43が荷重測定部46と当接して、荷重測定部46は荷重を測定する。また、この際に荷重測定部46で測定される荷重は、後述するように端子22にかかる荷重となる。なお、荷重測定部46の構成は本実施の形態に限定されず、端子22にかかる荷重を測定するものであれば任意である。
【0028】
図1に示すようにウェハ保持部10と電解処理治具20の間には、ウェハW上にめっき液を供給するノズル50が設けられている。ノズル50は、移動機構51によって、水平方向及び鉛直方向に移動自在であり、ウェハ保持部10に対して進退自在に構成されている。またノズル50は、めっき液を貯留するめっき液供給源(図示せず)に連通し、当該めっき液供給源からノズル50にめっき液が供給されるようになっている。なお、めっき液としては、例えば硫酸銅と硫酸を溶解した混合液が用いられ、かかる場合めっき液中には、たとえば銅イオンが含まれている。また、本実施の形態では処理液供給部としてノズル50を用いているが、めっき液を供給する機構としては他の種々の手段を用いることができる。
【0029】
なお、ウェハ保持部10の周囲には、ウェハWから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するカップ(図示せず)が設けられていてもよい。
【0030】
以上の製造装置1には、制御部(図示せず)が設けられている。制御部は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、製造装置1におけるウェハWの処理を制御するプログラムが格納されている。なお、前記プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御部にインストールされたものであってもよい。
【0031】
次に、以上のように構成された製造装置1を用いた製造方法におけるめっき処理について説明する。表1は、めっき処理の各工程における、端子22の接触状態、電解処理治具20の位置、荷重測定部46で測定される荷重、及び検知部31で測定される抵抗値を示している。
【0032】
【表1】
【0033】
先ず、図3に示すようにウェハ保持部10と電解処理治具20を対向配置した状態で、移動機構51によってノズル50をウェハ保持部10に保持されたウェハWの中心部の上方まで移動させる。その後、駆動機構11によってウェハWを回転させながら、ノズル50からめっき液MをウェハWの中心部に供給する。供給されためっき液Mは遠心力によりウェハW全面に拡散される。このとき、ウェハWが回転することで、めっき液Mはウェハ面内で均一に拡散する。そして、ノズル50からのめっき液Mの供給を停止し、ウェハWの回転を停止すると、図4に示すようにめっき液Mの表面張力によってウェハW上にめっき液Mが留まり、均一な厚みのめっき液Mの液パドルが形成される(表1の工程S1)。
【0034】
工程S1では、電解処理治具20は通常の待機位置から移動しておらず、電解処理治具20の高さ位置はP1である。この高さ位置P1において、ウェハ保持部10の上面10aと電解処理治具20の基体21の下面21aとの間の距離は約100mmである。そして、すべての端子22はウェハWに接触していない。また、移動機構40において荷重測定部46は支持板43に当接しておらず、荷重測定部46で測定される荷重はゼロである。さらに、端子22間に電流が流れておらず、検知部31で測定される抵抗値は無限大である。
【0035】
その後、移動機構40によって電解処理治具20を下降させる。ここで、上述したように複数の端子22の先端部から構成される仮想面は、ウェハ保持部10に保持されたウェハWの表面と略平行であるが、実際には端子22の先端部の高さには微小なばらつきがある。また、電解処理治具20の基体21やウェハ保持部10に保持されたウェハWは、微小な表面粗さを有し、また微小な傾斜度を有しており、すなわちウェハWの表面は完全に平坦ではない。これらの要因より、電解処理治具20を下降させて端子22をウェハWに接触させる際、各端子22でウェハWに接触するタイミングはばらつく。以下、本実施の形態では、技術の理解を容易にするため、複数の端子22がすべてばらついてウェハWに接触する場合について説明する。
【0036】
図5に示すように電解処理治具20を下降させると、先ず1本目の端子22aがウェハWに接触する(表1の工程S2)。この際、電解処理治具20の高さ位置はP2である。高さ位置P2は、例えば移動機構40によって電解処理治具20の高さ調整のティーチングを行う際の原点高さとなる。
【0037】
工程S2では、図6に示すように荷重測定部46が支持板43に当接し、荷重測定部46において荷重が測定される。換言すれば、荷重測定部46が所定の荷重を測定することで、1本目の端子22aの接触が検知される。
【0038】
また、工程S2では、端子22、22間に電流が流れておらず、検知部31で測定される抵抗値は工程S1と変わらず無限大である。
【0039】
その後、図7に示すように電解処理治具20をさらに下降させると、2本目の端子22bがウェハWに接触する(表1の工程S3)。この際、電解処理治具20の高さ位置はP3である。
【0040】
工程S3では、1本目の端子22aと2本目の端子22bの間でウェハWを介して電流が流れる。そうすると、検知部31では、ウェハWの抵抗値に相当する所定の抵抗値が測定される。換言すれば、検知部31が所定の抵抗値を測定することで、2本目の端子22bの接触が検知される。
【0041】
また、工程S3では、荷重測定部46において荷重が測定される。そして、1本の端子22にかかる荷重は、荷重測定部46で測定された荷重の1/2となる。
【0042】
その後、図8に示すように電解処理治具20をさらに下降させ、3本目〜8本目の端子22を順次ウェハWに接触させ、すべての端子22をウェハWに接触させる(表1の工程S4)。この際、電解処理治具20の高さ位置はP4である。ここで、上述したように1本目の端子22aがウェハWに接触する高さ位置P2が、電解処理治具20の高さ調整のティーチングを行う際の原点高さとなるが、このティーチングにおいて、高さ位置P4はすべての端子22がウェハWに接触する高さとして用いられる。
【0043】
工程S4では、工程S3と同様に各端子22、22間でウェハWを介して電流が流れる。そうすると、検知部31では、ウェハWの抵抗値に相当する所定の抵抗値が測定される。換言すれば、検知部31が所定の抵抗値を測定することで、各端子22bの接触が検知される。
【0044】
また、工程S4では、荷重測定部46において荷重が測定される。そして、1本の端子22にかかる荷重は、荷重測定部46で測定された荷重を、接触する端子の数で除したものとなる。
【0045】
その後、図9に示すように電解処理治具20を所定距離、例えば1mmさらに下降させる(表1の工程S5)。この際、電解処理治具20の高さ位置はP5であり、ウェハ保持部10の上面10aと電解処理治具20の基体21の下面21aとの間の距離は約1mmである。工程S4においてすべての端子22がウェハWに接触していれば、その後のめっき処理を開始することは可能であるが、このように工程S5において電解処理治具20をさらに下降させることで、端子22とウェハWの接触をより確実なものとすることができる。
【0046】
そして、このように工程S5においてすべての端子22とウェハWを接触させる際、荷重測定部46で測定された荷重に基づいて移動機構40を制御することで、各端子22にかかる荷重を適切な荷重に維持する。そうすると、例えば酸化膜などの薄膜や、接点形成が困難な硬度の高い材料に対しても、端子22とウェハWの間に電気的接点を形成することができる。
【0047】
また、工程S5においてすべての端子22とウェハWを接触させる際には、直接電極23をウェハW上のめっき液Mに接触させる。この直接電極23とめっき液Mとの接触は、工程S2〜S5のいずれの段階で行われてもよいが、少なくとも工程S5において直接電極23はめっき液Mに接触している必要がある。
【0048】
さらに、工程S5においてすべての端子22とウェハWが接触しているので、電解処理治具20の表面、すなわち基体21の下面21a及び直接電極23(以下単に電解処理治具20の表面ということがある)と、ウェハWの表面が平行になっている。このため、後述するめっき処理を適切に行うことができる。
【0049】
その後、間接電極24を陽極とし、ウェハWを陰極として直流電圧を印加して、電界(静電場)を形成する。そうすると、図10に示すように電解処理治具20の表面(間接電極24及び直接電極23)側に負の荷電粒子である硫酸イオンSが集まり、ウェハWの表面側に正の荷電粒子である銅イオンCが移動する(表1の工程S6)。
【0050】
このとき、直接電極23が陰極になるのを回避するため、直接電極23をグランドに接続せず、電気的にフローティング状態にしている。かかる場合、電解処理治具20とウェハWのいずれの表面においても電荷交換が抑制されるので、静電場により引きつけられた荷電粒子が電極表面に配列されることになる。そして、ウェハWの表面においても銅イオンCが均一に配列される。また、ウェハW表面で銅イオンCの電荷交換が行われず、水の電気分解も抑制されるので、間接電極24とウェハWとの間に電圧を印可する際の電界を高くすることができる。そして、この高電界によって銅イオンCの移動を速くでき、めっき処理のめっきレートを向上させることができる。さらに、この電界を任意に制御することで、ウェハWの表面に配列される銅イオンCも任意に制御される。
【0051】
その後、十分な銅イオンCがウェハW側に移動して集積すると、直接電極23を陽極とし、ウェハWを陰極として電圧を印加して、直接電極23とウェハWとの間に電流を流す。そうすると、図11に示すようにウェハWの表面に均一に配列されている銅イオンCの電荷交換が行われ、銅イオンCが還元されて、ウェハWの表面に銅めっき60が析出する(表1の工程S7)。なお、このとき硫酸イオンSは直接電極23によって酸化されている。
【0052】
ウェハWの表面に十分な銅イオンCが集積し、均一に配列された状態で還元されるので、ウェハWの表面に銅めっき60を均一に析出させることができる。結果的に、銅めっき60における結晶の密度が高くなり、品質の良い銅めっき60を形成することができる。また、ウェハWの表面に銅イオンCが均一に配列された状態で還元を行っているので、銅めっき60を均一かつ高品質に生成することができるのである。
【0053】
そして、上述したノズル50からのめっき液Mの供給、間接電極24による銅イオンCの移動、直接電極23及びウェハWによる銅イオンCの還元が繰り返し行われることで、銅めっき60が所定の膜厚に成長する。こうして、製造装置1における一連のめっき処理が終了する。
【0054】
以上の実施の形態によれば、電解処理治具20を下降させていくと、先ず、1本目の端子22とウェハWの接触は荷重測定部46によって検知され、続いて、2本目〜8本目の端子22とウェハWの接触は検知部31で検知される。このように荷重測定部46と検知部31で端子22とウェハWの接触が検知された後、さらに電解処理治具20を下降させるので、すべての端子22とウェハWの接触を確実に行うことができる。そして、すべての端子22とウェハWの接触が確保されることで、後続のめっき処理を均一に行うことができる。
【0055】
また、上述のように端子22とウェハWが確実に接触しているのに加え、複数の端子22はウェハWの外周部に接触するので、これら複数の端子22に囲まれた領域では均一にめっき処理を行うことができる。
【0056】
ここで、端子22とウェハWの接触は、電解処理治具20の移動距離で制御することも考えられる。この点、本実施の形態のように荷重測定部46と検知部31を用いて実際の接触を検知する方が、接触検知の精度が高くなる。
【0057】
また、めっき処理を行う際、電解処理治具20の直接電極23とウェハW上のめっき液が接触する必要があるが、電解処理治具20の表面とウェハWの表面の距離は微小であるため、必然的に電解処理治具20の表面とウェハWの表面が平行である必要がある。この点、複数の端子22の先端部から構成される仮想面が、ウェハWの表面と略平行になるように配置されているので、端子22とウェハWが接触する際、電解処理治具20の表面とウェハWの表面が平行となる。換言すれば、電解処理治具20に複数の端子22が設けられているので、電解処理治具20の表面とウェハWの表面の平行が保証される。したがって、かかる観点からもめっき処理を適切に行うことができる。
【0058】
さらに、電解処理治具20とウェハWの間のめっき液Mの量は、銅めっき60の膜厚(成膜量)、均一性に影響を及ぼすため、電解処理治具20の表面とウェハWの表面の距離は重要である。この点、本実施の形態では、電解処理治具20の表面とウェハWの表面を平行にし、且つ微小な距離を維持できる。したがって、めっき液Mの量を適切に制御して安定化させることができ、めっき処理を均一に行うことができる。
【0059】
以上の実施の形態では、検知部31は一の端子22と他の端子22の間の抵抗値を測定する抵抗計であったが、これに代えて、1本の端子22を流れる電流の有無を検出する電流計であってもよい。
【0060】
かかる場合、工程S2において1本目の端子22がウェハWに接触する際、検知部31が1本目の端子22を流れる電流を検出し、すなわち1本目の端子22におけるオープン・ショートを検出する。これによって1本目の端子22の接触が検知される。この際、荷重測定部46を用いた、1本目の端子22の接触の検知を省略してもよい。
【0061】
また、工程S3〜S4において、2本目〜8本目の端子22がウェハWに接触する際、検知部31がこれら2本目〜8本目の端子22のそれぞれを流れる電流を検出し、端子22の接触が検知される。
【0062】
本実施の形態においても、上記実施の形態と同じ効果を享受できる。すなわち、すべての端子22とウェハWの接触を確保して、めっき処理を均一に行うことができる。
【0063】
以上の実施の形態の電解処理治具20には、検知部31による検知結果に基づいて、ウェハWに対する端子22の接触が不良であった場合に警告を発する警告部(図示せず)がさらに設けられていてもよい。例えば複数の端子22のうち、1本の端子22が非導通になった場合(例えば検知部31で検出される抵抗値が変わった場合)、その端子22が折れたり損傷している場合がある。かかる場合、ウェハWに対する端子22の接触が不良となり、その結果、めっき処理を適切に行うことができない。
【0064】
そこで、工程S2〜S4において、検知部31によって端子22の接触不良が検知された場合、警告部から警告が発せられ、接触不良の端子22を交換する。これにより、その後の工程S6、S7におけるめっき処理を適切に行うことができ、製品としてのウェハWの歩留まりを向上させることができる。
【0065】
以上の実施の形態では、すべての端子22がウェハWに接触した後、めっき処理を行っていたが、電解処理治具20の複数の端子22のうち、すべてではなく所定数の端子22がウェハWに接触した段階で、工程S6、S7におけるめっき処理を行ってもよい。例えば電解処理治具20に設けられる端子22の数が、例えば16本や32本と増加すると、1本の端子22あたりの影響は小さくなるので、実際の運用上は、すべての端子22をウェハWに接触させる必要はない。また、以上の実施の形態では、端子22が接触検知と電解処理の両方の役割を担っていたが、端子22のうちの一部を接触検知用、一部を電解処理用と、それぞれの役割を割り当ててもよい。
【0066】
以上の実施の形態では、移動機構40によって電解処理治具20を下降させて、端子22をウェハWに接触させていたが、製造装置1において、駆動機構11によってウェハ保持部10を上昇させてもよい。あるいは、電解処理治具20とウェハ保持部10の両方を移動させてもよい。また、電解処理治具20とウェハ保持部10の配置を逆にし、電解処理治具20をウェハ保持部10の下方に配置してもよい。
【0067】
以上の実施の形態では、工程S1においてウェハW上にめっき液Mの液パドルを形成した後、工程S2〜S5において端子22をウェハWに接触させていたが、この工程S1と工程S2〜S5の順を逆にしてよい。すなわち、端子22をウェハWに接触させた後、ウェハW上にめっき液Mの液パドルを形成してもよい。かかる場合、電解処理治具20にはめっき液Mを供給するための液供給路(図示せず)が形成されていてもよい。
【0068】
以上の実施の形態の電解処理治具20には間接電極24が設けられていたが、この間接電極24を書略してもよい。かかる場合、工程S6が省略され、工程S5の後、工程S7のめっき処理が行われる。
【0069】
以上の実施の形態では、ウェハ保持部10はスピンチャックであったが、これに代えて、上面が開口し、内部にめっき液Mを貯留するカップを用いてもよい。
【0070】
以上の実施の形態では、電解処理としてめっき処理を行う場合について説明したが、本発明は例えばエッチング処理等の種々の電解処理に適用することができる。
【0071】
また、以上の実施の形態ではウェハWの表面側において銅イオンCを還元する場合について説明したが、本発明はウェハWの表面側において被処理イオンを酸化する場合にも適用できる。かかる場合、被処理イオンは陰イオンであり、上記実施の形態において陽極と陰極を反対にして同様の電解処理を行えばよい。本実施の形態においても、被処理イオンの酸化と還元の違いはあれ、上記実施の形態と同様の効果を享受することができる。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。
【符号の説明】
【0073】
1 製造装置
20 電解処理治具
21 基体
22 端子
23 直接電極
24 間接電極
30 直流電源
31 検知部
40 移動機構
46 荷重測定部
60 銅めっき
C 銅イオン
M めっき液
S 硫酸イオン
W ウェハ(半導体ウェハ)
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
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図11