特許第6793856号(P6793856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6793856変性共役ジエン系重合体およびそれを含むゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793856
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体およびそれを含むゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 236/04 20060101AFI20201119BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20201119BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20201119BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20201119BHJP
   C08C 19/25 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   C08F236/04
   C08L9/00
   C08K3/04
   C08K3/36
   C08C19/25
【請求項の数】12
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2019-555811(P2019-555811)
(86)(22)【出願日】2018年11月30日
(65)【公表番号】特表2020-516739(P2020-516739A)
(43)【公表日】2020年6月11日
(86)【国際出願番号】KR2018015144
(87)【国際公開番号】WO2019112262
(87)【国際公開日】20190613
【審査請求日】2019年10月11日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0165559
(32)【優先日】2017年12月5日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0150921
(32)【優先日】2018年11月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒョン−ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウォン−ヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソン−トゥ
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−171418(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/133202(WO,A1)
【文献】 特表2018−534401(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/188641(WO,A1)
【文献】 特表2017−519841(JP,A)
【文献】 特表2015−520789(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0283387(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0079323(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00;301/00
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/16
C08C19/00− 19/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC、Gel permeation chromatography)による分子量分布曲線が単峰形(unimodal)を有し、
分子量分布(PDI;MWD)が1.0以上1.7未満であり、
一方の末端に、下記化学式1で表される変性開始剤由来の官能基を含み、他方の末端に、下記化学式2または化学式3で表される変性剤由来の官能基を含む、変性共役ジエン系重合体。
【化16】
(前記化学式1中、
Mは、アルカリ金属であり、
1およびR2は、互いに独立して、水素;炭素数1〜30のアルキル基;N、O、またはS原子を含む炭素数1〜30のヘテロアルキル基;炭素数5〜30のシクロアルキル基;炭素数6〜30のアリール基;N、O、およびS原子のうち1つ以上を含む炭素数3〜30のヘテロ環基であるか;R1およびR2が互いに連結され、炭素数4〜20のシクロアルキル基;またはN、O、およびS原子のうち1つ以上を含む炭素数3〜20のヘテロ環基を形成し、
3は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基で置換されているかまたは置換されていない炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基、または炭素数4〜20のアリーレン基であり、
4は、水素;炭素1〜30のアルキル基;N、O、またはS原子を含む炭素数1〜30のヘテロアルキル基;炭素数5〜30のシクロアルキル基;炭素数6〜30のアリール基;またはN、O、およびS原子のうち1つ以上を含む炭素数3〜30のヘテロ環基であり、
【化17】
前記化学式2中、
20およびR23は、互いに独立して、単結合、または炭素数1〜10のアルキレン基であり、
21およびR22は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基であり、
24は、水素、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアルキル基で置換された2価、3価、もしくは4価のアルキルシリル基であり、
aは1〜3の整数であり、
cは1〜3の整数であり、bは0〜2の整数であって、b+c=3であり、
【化18】
前記化学式3中、
1およびA2は、互いに独立して、炭素数1〜20のアルキレン基であり、
25〜R28は、互いに独立して、炭素数1〜20のアルキル基であり、
1〜L4は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基で置換された2価、3価、もしくは4価のアルキルシリル基、または炭素数1〜20のアルキル基である。)
【請求項2】
前記化学式1で表される変性開始剤が、下記化学式1aで表される、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体。
【化19】
(前記化学式1a中、
M、R1、R2、およびR4は、化学式1における定義のとおりであり、
5〜R8は、互いに独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基である。)
【請求項3】
前記化学式2中、
20およびR23は、互いに独立して、単結合、または炭素数1〜5のアルキレン基であり、
21およびR22は、互いに独立して、炭素数1〜5のアルキル基であり、
24は、水素、炭素数1〜5のアルキル基、または炭素数1〜5のアルキル基で置換された4価のアルキルシリル基である、請求項1または2に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項4】
前記化学式3中、
1およびA2は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキレン基であり、
25〜R28は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基であり、
1〜L4は、互いに独立して、炭素数1〜5のアルキル基で置換された4価のアルキルシリル基、または炭素数1〜10のアルキル基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項5】
数平均分子量(Mn)が1,000g/mol〜2,000,000g/molであり、重量平均分子量(Mw)が1,000g/mol〜3,000,000g/molである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項6】
Siの含量およびNの含量がそれぞれ重量基準で50ppm以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項7】
100℃で測定されたムーニー緩和率が0.7以上3.0以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項8】
粘度検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィ−光散乱法の測定により求められる収縮因子が1.0〜3.0である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項9】
前記変性共役ジエン系重合体のカップリング数(C.N.)が1<C.N.<Fであり、ここで、Fは変性剤の官能基の数である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体および充填剤を含むゴム組成物。
【請求項11】
前記変性共役ジエン系重合体100重量部に対して、0.1重量部〜200重量部の充填剤を含む、請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記充填剤がシリカ系充填剤またはカーボンブラック系充填剤である、請求項10または11に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月5日付けの韓国特許出願第10‐2017‐0165559号および2018年11月29日付けの韓国特許出願第10‐2018‐0150921号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、加工性に優れるとともに、引張特性および粘弾性特性に優れた変性共役ジエン系重合体、およびそれを含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、自動車に対する低燃費化の要求に伴い、タイヤ用ゴム材料として、転がり抵抗が少なく、耐磨耗性、引張特性に優れるとともに、ウェットグリップ性で代表される調整安定性も兼備した共役ジエン系重合体が求められている。
【0004】
タイヤの転がり抵抗を減少させるための方法としては、加硫ゴムのヒステリシス損を小さくする方法が挙げられ、かかる加硫ゴムの評価指標としては、50℃〜80℃の反発弾性、tanδ、グッドリッチ発熱などが用いられている。すなわち、前記温度での反発弾性が大きいか、tanδ、グッドリッチ発熱が小さいゴム材料が好ましい。
【0005】
ヒステリシス損の小さいゴム材料としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、またはポリブタジエンゴムなどが知られているが、これらは、ウェットグリップ性が小さいという問題がある。そこで、近年、スチレン‐ブタジエンゴム(以下、SBRという)またはブタジエンゴム(以下、BRという)などの共役ジエン系重合体または共重合体が乳化重合や溶液重合により製造され、タイヤ用ゴムとして用いられている。中でも、乳化重合に比べて溶液重合が有する最も大きい利点は、ゴムの物性を規定するビニル構造の含量およびスチレンの含量を任意に調節することができ、カップリング(coupling)や変性(modification)などによって分子量および物性などが調節可能であるという点である。したがって、最終的に製造されたSBRやBRの構造の変化が容易であるとともに、鎖末端の結合や変性によって鎖末端の動きを減少させ、シリカまたはカーボンブラックなどの充填剤との結合力を増加させることができるため、溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として多く用いられている。
【0006】
かかる溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として用いられる場合、前記SBR中のビニルの含量を増加させることで、ゴムのガラス転移温度を上昇させることにより、走行抵抗および制動力などのようなタイヤに要求される物性を調節することができるだけでなく、ガラス転移温度を適宜調節することで、燃料消費を低減することができる。前記溶液重合によるSBRは、アニオン重合開始剤を用いて製造し、形成された重合体の鎖末端を種々の変性剤を用いて結合させたり、変性させたりして用いている。例えば、米国特許第4,397,994号には、一官能性開始剤であるアルキルリチウムを用いて、非極性溶媒下でスチレン‐ブタジエンを重合することで得られた重合体の鎖末端の活性アニオンを、スズ化合物などの結合剤を用いて結合させた技術が提示されている。
【0007】
一方、前記SBRまたはBRの重合は、回分式(batch)または連続式重合により行われるが、回分式重合による場合、製造された重合体の分子量分布が狭いため物性改善の点で利点があるが、生産性が低く、加工性に劣るという問題がある。また、連続式重合による場合、重合が連続的に行われるため生産性に優れ、加工性改善の点で利点があるが、分子量分布が広いため物性に劣るという問題がある。そこで、SBRまたはBRの製造時に、生産性、加工性、および物性を同時に改善させるための研究が求められつつある状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、連続式重合により製造され、加工性に優れながらも、引張特性などの物性に優れるとともに、粘弾性特性に優れた変性共役ジエン系重合体、およびそれを含むゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC、Gel permeation chromatography)による分子量分布曲線が単峰形(unimodal)を有し、分子量分布(PDI;MWD)が1.0以上1.7未満であり、一方の末端に、下記化学式1で表される変性開始剤由来の官能基を含み、他方の末端に、下記化学式2または化学式3で表される変性剤由来の官能基を含む、変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0010】
【化1】
【0011】
前記化学式1中、
Mは、アルカリ金属であり、
1およびR2は、互いに独立して、水素;炭素数1〜30のアルキル基;N、O、またはS原子を含む炭素数1〜30のヘテロアルキル基;炭素数5〜30のシクロアルキル基;炭素数6〜30のアリール基;N、O、およびS原子のうち1種以上を含む炭素数3〜30のヘテロ環基であるか;R1およびR2が互いに連結され、炭素数4〜20のシクロアルキル基;またはN、O、およびS原子のうち1種以上を含む炭素数3〜20のヘテロ環基を形成するものであり、
3は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基で置換されているかまたは置換されていない炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基、または炭素数4〜20のアリーレン基であり、
4は、水素;炭素1〜30のアルキル基;N、O、またはS原子を含む炭素数1〜30のヘテロアルキル基;炭素数5〜30のシクロアルキル基;炭素数6〜30のアリール基;またはN、O、およびS原子のうち1種以上を含む炭素数3〜30のヘテロ環基であり、
【0012】
【化2】
【0013】
前記化学式2中、
20およびR23は、単結合、または炭素数1〜10のアルキレン基であり、
21およびR22は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基であり、
24は、水素、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアルキル基で置換された2価、3価、または4価のアルキルシリル基であり、
aは、1〜3の整数であり、
cは、1〜3の整数であり、bは0〜2の整数であって、b+c=3であり、
【0014】
【化3】
【0015】
前記化学式3中、
1およびA2は、互いに独立して、炭素数1〜20のアルキレン基であり、
25〜R28は、互いに独立して、炭素数1〜20のアルキル基であり、
1〜L4は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基で置換された2価、3価、または4価のアルキルシリル基、または炭素数1〜20のアルキル基である。
【0016】
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体および充填剤を含むゴム組成物を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明による変性共役ジエン系重合体は、後述の連続式重合により製造されることで、ゲル浸透クロマトグラフィによる分子量分布曲線が単峰形を有し、且つ分子量分布が1.7未満と狭いため、加工性に優れるとともに、引張特性および粘弾性特性に優れるという効果がある。
【0018】
また、本発明による変性共役ジエン系重合体は、一方の末端に変性開始剤由来の官能基を含み、他方の末端に変性剤由来の官能基を含むことで、さらに優れた粘弾性特性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本明細書に添付の次の図面は、本発明の好ましい実施形態を例示するためのものであって、上述の発明の内容とともに、本発明の技術思想をより理解させる役割をするものであるため、本発明は、この図面に記載の事項にのみ限定されて解釈されてはならない。
図1】本発明の一実施形態に係る実施例1の変性共役ジエン系重合体のゲル浸透クロマトグラフィ(GPC、Gel permeation chromatography)による分子量分布曲線を示した図である。
図2】本発明の一実施形態に係る実施例4の変性共役ジエン系重合体のゲル浸透クロマトグラフィ(GPC、Gel permeation chromatography)による分子量分布曲線を示した図である。
図3】本発明の一実施形態に係る比較例1の変性共役ジエン系重合体のゲル浸透クロマトグラフィ(GPC、Gel permeation chromatography)による分子量分布曲線を示した図である。
図4】本発明の一実施形態に係る参照例1の変性共役ジエン系重合体のゲル浸透クロマトグラフィ(GPC、Gel permeation chromatography)による分子量分布曲線を示した図である。
図5】本発明の一実施形態に係る参照例2の変性共役ジエン系重合体のゲル浸透クロマトグラフィ(GPC、Gel permeation chromatography)による分子量分布曲線を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
【0021】
本発明の説明および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0022】
本発明において、用語「アルキル基(alkyl group)」は、1価の脂肪族飽和炭化水素を意味し、メチル、エチル、プロピル、およびブチルなどの直鎖状アルキル基;イソプロピル(isopropyl)、sec−ブチル(sec‐butyl)、tert‐ブチル(tert‐butyl)、およびネオペンチル(neo‐pentyl)などの分岐状アルキル基の両方を含む意味であり得る。
【0023】
本発明において、用語「アルキレン基(alkylene group)」は、メチレン、エチレン、プロピレン、およびブチレンなどのような2価の脂肪族飽和炭化水素を意味し得る。
【0024】
本発明において、用語「シクロアルキル基(cycloalkyl group)」は、環状の飽和炭化水素を意味し得る。
【0025】
本発明において用いる用語「アリール基(aryl group)」は、環状の芳香族炭化水素を意味し、また、1つの環が形成された単環芳香族炭化水素(monocyclic aromatic hydrocarbon)、または2つ以上の環が結合された多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon)の両方を含む意味であり得る。
【0026】
本発明において用いる用語「ヘテロアルキル基(heteroalkyl group)」は、アルキル基中の炭素原子(末端の炭素原子は除く)が、1個以上のヘテロ原子で置換されたアルキル基を意味し得る。
【0027】
本発明において、用語「由来の単位」および「由来の官能基」は、ある物質に起因した成分、構造、またはその物質自体を意味し得る。
【0028】
本発明において、用語「単結合」は、別の原子または分子団を含まない単一共有結合自体を意味し得る。
【0029】
本発明は、連続重合により製造され、加工性に優れながらも、分子量分布が狭くて物性に優れた変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0030】
本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC、Gel permeation chromatography)による分子量分布曲線が単峰形(unimodal)を有し、分子量分布(PDI;MWD)が1.0以上1.7未満であって、一方の末端に、下記化学式1で表される変性開始剤由来の官能基を含み、他方の末端に、下記化学式2または化学式3で表される変性剤由来の官能基を含むことを特徴とする。
【0031】
【化4】
【0032】
前記化学式1中、Mは、アルカリ金属であり、R1およびR2は、互いに独立して、水素;炭素数1〜30のアルキル基;N、O、またはS原子を含む炭素数1〜30のヘテロアルキル基;炭素数5〜30のシクロアルキル基;炭素数6〜30のアリール基;N、O、およびS原子のうち1種以上を含む炭素数3〜30のヘテロ環基であるか;R1およびR2が互いに連結され、炭素数4〜20のシクロアルキル基;またはN、O、およびS原子のうち1種以上を含む炭素数3〜20のヘテロ環基を形成するものであり、R3は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基で置換されているかまたは置換されていない炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基、または炭素数4〜20のアリーレン基であり、R4は、水素;炭素1〜30のアルキル基;N、O、またはS原子を含む炭素数1〜30のヘテロアルキル基;炭素数5〜30のシクロアルキル基;炭素数6〜30のアリール基;またはN、O、およびS原子のうち1種以上を含む炭素数3〜30のヘテロ環基であり、
【0033】
【化5】
【0034】
前記化学式2中、R20およびR23は、単結合、または炭素数1〜10のアルキレン基であり、R21およびR22は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基であり、R24は、水素、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアルキル基で置換された2価、3価、または4価のアルキルシリル基であり、aは1〜3の整数であり、cは1〜3の整数であり、bは0〜2の整数であって、b+c=3であり、
【0035】
【化6】
【0036】
前記化学式3中、A1およびA2は、互いに独立して、炭素数1〜20のアルキレン基であり、R25〜R28は、互いに独立して、炭素数1〜20のアルキル基であり、L1〜L4は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基で置換された2価、3価、または4価のアルキルシリル基、または炭素数1〜20のアルキル基である。
【0037】
本発明の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、変性開始剤由来の官能基、および変性剤由来の官能基を含んでもよい。前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、共役ジエン系単量体が重合時に成す繰り返し単位を意味し得る。前記変性開始剤由来の官能基および変性剤由来の官能基は、それぞれ重合体鎖の末端に存在する変性開始剤または変性剤に由来の官能基を意味し得る。
【0038】
また、本発明の他の実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位、変性開始剤由来の官能基、および変性剤由来の官能基を含む共重合体であってもよい。ここで、前記芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位は、芳香族ビニル単量体が重合時に成す繰り返し単位を意味し得る。
【0039】
本発明の一実施形態によると、前記共役ジエン系単量体は、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ピペリレン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、イソプレン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、および2−ハロ−1,3−ブタジエン(ハロは、ハロゲン原子を意味する)からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0040】
前記芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、1−ビニルナフタレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−(p−メチルフェニル)スチレン、1−ビニル−5−ヘキシルナフタレン、3−(2−ピロリジノエチル)スチレン(3−(2−pyrrolidino ethyl)styrene)、4−(2−ピロリジノエチル)スチレン(4−(2−pyrrolidino ethyl)styrene)、および3−(2−ピロリジノ−1−メチルエチル)−α−メチルスチレン(3−(2−pyrrolidino−1−methyl ethyl)styrene)からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0041】
さらに他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位とともに、炭素数1〜10のジエン系単量体由来の繰り返し単位をさらに含む共重合体であってもよい。前記ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、前記共役ジエン系単量体とは異なるジエン系単量体に由来の繰り返し単位であってもよい。前記共役ジエン系単量体とは異なるジエン系単量体は、例えば、1,2−ブタジエンであってもよい。前記変性共役ジエン系重合体がジエン系単量体をさらに含む共重合体である場合、前記変性共役ジエン系重合体は、ジエン系単量体由来の繰り返し単位を0超過重量%〜1重量%、0超過重量%〜0.1重量%、0超過重量%〜0.01重量%、または0超過重量%〜0.001重量%で含んでもよく、この範囲内である場合、ゲルの生成を防止する効果がある。
【0042】
本発明の一実施形態によると、前記共重合体はランダム共重合体であってもよく、この場合、各物性間のバランスに優れる効果がある。前記ランダム共重合体は、共重合体を成す繰り返し単位が無秩序に配列されたものを意味し得る。
【0043】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が1,000g/mol〜2,000,000g/mol、10,000g/mol〜1,000,000g/mol、または100,000g/mol〜800,000g/molであってもよく、重量平均分子量(Mw)が1,000g/mol〜3,000,000g/mol、10,000g/mol〜2,000,000g/mol、または100,000g/mol〜2,000,000g/molであってもよく、最大ピーク分子量(Mp)が1,000g/mol〜3,000,000g/mol、10,000g/mol〜2,000,000g/mol、または100,000g/mol〜2,000,000g/molであってもよい。この範囲内である場合、転がり抵抗およびウェットグリップ性に優れる効果がある。さらに他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、分子量分布(PDI;MWD;Mw/Mn)が1.7未満、1.0以上〜1.7未満、または1.1以上〜1.7未満であってもよく、この範囲内である場合、引張特性および粘弾性特性に優れるとともに、各物性間のバランスに優れる効果がある。尚、前記変性共役ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC、Gel permeation chromatography)による分子量分布曲線が単峰形(unimodal)を有するものであり、これは、連続式重合により重合された重合体で現れる分子量分布であって、変性共役ジエン系重合体が均一な特性を有することを意味する。すなわち、本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、連続式重合により製造され、単峰形の分子量分布曲線を有しながらも、分子量分布が1.7未満であることができる。
【0044】
一般に、共役ジエン系重合体を回分式重合方法により製造して変性反応させる場合、製造された変性共役ジエン系重合体の分子量分布曲線は、二峰形(bimodal)以上の多峰の分子量分布曲線を有する。具体的に、回分式重合の場合、原料が全て投入された後に重合反応が開始され、多数の開始剤によって発生する開始点から鎖の成長が同時に起きり得るため、各鎖の成長がほぼ均一であり、これにより製造された重合体鎖の分子量が一定であって、分子量分布が非常に狭い単峰形であることができる。しかし、変性剤を投入して変性反応させる場合には、「変性されない場合」と「変性およびカップリングされる場合」という2つの場合が発生し得て、これにより、重合体鎖間において分子量の差が大きい2つのグループが形成され得る。その結果、分子量分布曲線のピークが2つ以上の多峰の分子量分布曲線が形成されることになる。一方、本発明の一実施形態に係る連続式重合方法では、回分式重合と異なって、反応の開始と原料の投入が連続して行われ、反応が開始される開始点が生成される時点が異なるため、重合開始が反応初期から始まったもの、反応途中に始まったもの、反応末期に始まったものなどと多様である。したがって、重合反応が完了した時には、多様な分子量を有する重合体鎖が製造される。これにより、分子量の分布を示す曲線において、特定のピークが優勢に現われないため、単一のピークとして分子量分布曲線が広く現われ、反応末期に重合が開始された鎖がカップリングされても、反応初期に重合が開始された鎖の分子量と類似であって、分子量分布の多様性は同様に維持されることができるため、相変わらず単峰形の分布曲線が維持されることが一般的な場合である。
【0045】
但し、回分式重合方法により重合体を製造して変性する場合にも、単峰形を有するように変性条件を調節することは可能であるが、この場合には、重合体の全てがカップリングされていないものであるか、重合体の全てがカップリングされているものでなければならず、それ以外の場合には、単峰形の分子量分布曲線を示すことができない。
【0046】
また、上述のように、回分式重合方法により製造されたにもかかわらず変性共役ジエン系重合体の分子量分布曲線が単峰形の分布を示す場合で、重合体の全てがカップリングされている場合には、何れも同等水準の分子量を有する重合体のみが存在するため、加工性に劣る恐れがあり、シリカまたはカーボンブラックなどの充填剤と相互作用できる官能基がカップリングにより減少することにより、配合物性に劣る恐れがある。また、反対の場合で、重合体の全てがカップリングされていない場合には、加工時にシリカまたはカーボンブラックなどの充填剤と相互作用すべきの重合体末端の官能基が、充填剤よりも、重合体末端の官能基同士の相互作用が優勢となり、充填剤との相互作用を妨害する現象が発生し得て、これにより、加工性が非常に劣る恐れがある。結局、回分式重合方法により重合体を製造し、単峰形の分子量分布曲線を有するように調節する場合、製造された変性共役ジエン系重合体の加工性および配合物性が低下するという問題があり、特に、加工性が著しく低下し得る。
【0047】
一方、変性共役ジエン系重合体のカップリング有無は、カップリング数(Coupling Number、C.N.)から確認することができ、この際、カップリング数は、重合体の変性後、変性剤に存在する重合体が結合可能な官能基の数に依存的な数値である。すなわち、重合体鎖同士のカップリングがなく、末端変性のみがなされた重合体と、1つの変性剤に多数の重合体鎖がカップリングされた重合体の割合を示すものであって、1≦C.N.≦Fの範囲を有することができる。この際、Fは変性剤において、活性重合体の末端と反応可能な官能基の数を意味する。換言すれば、カップリング数が1である変性共役ジエン系重合体は、重合体鎖の全てがカップリングされていないことを意味し、カップリング数がFである変性共役ジエン系重合体は、重合体鎖の全てがカップリングされていることを意味する。
【0048】
したがって、本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、分子量分布曲線が単峰形であるとともに、カップリング数が1よりは大きく、且つ使用された変性剤の官能基数よりは小さいことができる(1<C.N.<F)。
【0049】
さらに他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、Siの含量が、重量基準で50ppm以上、100ppm以上、100ppm〜10,000ppm、または100ppm〜5,000ppmであってもよく、この範囲内である場合、変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物の引張特性および粘弾性特性などの機械的物性に優れる効果がある。前記Siの含量は、前記変性共役ジエン系重合体中に存在するSi原子の含量を意味し得る。一方、前記Si原子は、変性剤由来の官能基に由来のものであってもよい。
【0050】
さらに他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、総重量を基準として、Nの含量が50ppm以上、100ppm以上、100ppm〜10,000ppm、または100ppm〜5,000ppmであってもよく、この範囲内である場合、変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物の引張特性および粘弾性特性などの機械的物性に優れる効果がある。前記Nの含量は、前記変性共役ジエン系重合体中に存在するN原子の含量を意味し得る。この際、前記N原子は、変性剤由来の官能基に由来のものであってもよい。
【0051】
前記Siの含量は、例えば、ICP分析方法により測定することができる。前記ICP分析方法では、誘導結合プラズマ発光分析器(ICP−OES;Optima 7300DV)を用いて測定することができる。前記誘導結合プラズマ発光分析器を用いる場合、試料約0.7gを白金るつぼ(Pt crucible)に入れ、濃硫酸(98重量%、Electronic grade)約1mLを入れて、300℃で3時間加熱し、試料を電気炉(Thermo Scientific、Lindberg Blue M)にて、下記ステップ(step)1〜3のプログラムで灰化を進行した後、
1)ステップ1:initial temp 0℃、rate(temp/hr)180℃/hr、temp(holdtime)180℃(1hr)
2)ステップ2:initial temp 180℃、rate(temp/hr)85℃/hr、temp(holdtime)370℃(2hr)
3)ステップ3:initial temp 370℃、rate(temp/hr)47℃/hr、temp(holdtime)510℃(3hr)
残留物に、濃硝酸(48重量%)1mL、濃フッ酸(50重量%)20μlを加え、白金るつぼを密封して30分以上振った(shaking)後、試料にホウ酸(boric acid)1mLを入れて0℃で2時間以上保管してから、超純水(ultrapure water)30mLに希釈し、灰化を進行して測定してもよい。
【0052】
この際、試料は、スチームで加熱された温水に入れて撹拌し、溶媒を除去した変性共役ジエン系重合体であって、残留単量体、残留変性剤、およびオイルが除去されたものである。
【0053】
また、前記Nの含量は、例えば、NSX分析方法により測定することができる。前記NSX分析方法では、極微量窒素定量分析器(NSX−2100H)を用いて測定することができる。例示的に、前記極微量窒素定量分析器を用いる場合、極微量窒素定量分析器(Auto sampler、Horizontal furnace、PMT&Nitrogen detector)をオンにし、Arを250ml/min、O2を350ml/min、オゾナイザ(ozonizer)300ml/minにキャリアガス流量を設定し、ヒータ(heater)を800℃に設定した後、約3時間待機して分析器を安定化させた。分析器が安定化された後、Nitrogen standard(AccuStandard S−22750−01−5ml)を用いて、検量線範囲5ppm、10ppm、50ppm、100ppm、および500ppmの検量線を作成し、各濃度に該当するAreaを得た後、濃度とAreaとの割合を用いて直線を作成した。その後、試料20mgが入ったセラミックボートを前記分析器のAuto samplerに置いて測定し、areaを得た。得られた試料のareaと前記検量線を用いてNの含量を計算した。
【0054】
この際、前記NSX分析方法に用いられる試料は、スチームで加熱された温水に入れて撹拌し、溶媒を除去した変性共役ジエン系重合体試料であって、残留単量体および残留変性剤を除去した試料であってもよい。また、前記試料にオイルが添加されている場合、オイルが抽出(除去)された後の試料であってもよい。
【0055】
さらに他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、100℃で測定されたムーニー緩和率が0.7以上、0.7以上3.0以下、0.7以上2.5以下、または0.7以上2.0以下であってもよい。
【0056】
ここで、前記ムーニー緩和率は、同量の変性(strain)に対する反応として現れるストレス(stress)の変化を示すものであって、ムーニー粘度計を用いて測定することができる。具体的に、前記ムーニー緩和率は、Monsanto社のMV2000EのLarge Rotorを用いて、100℃およびRotor Speed 2±0.02rpmの条件で、重合体を室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(platen)を作動させてトルク(torque)を印加しながらムーニー粘度を測定した後、トルクが解放されながら現れるムーニー粘度変化の勾配値を測定し、絶対値として得た。
【0057】
一方、ムーニー緩和率は、該当重合体の分岐構造の指標として用いることができ、例えば、ムーニー粘度が同等な重合体を比較する際に、分岐が多いほどムーニー緩和率が小さくなるため、分岐度の指標として用いることができる。
【0058】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、ムーニー粘度(Mooney viscosity)が、100℃で30以上、40〜150、または40〜140であってもよく、この範囲内である場合、加工性および生産性に優れる効果がある。
【0059】
さらに他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、粘度検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィ−光散乱法の測定により求められる収縮因子(g´)が1.0以上、具体的には1.0以上3.0以下、より具体的には1.0以上1.3以下であってもよい。
【0060】
ここで、前記ゲル浸透クロマトグラフィ−光散乱法の測定により求められる収縮因子(g´)は、同じ絶対分子量を有する直鎖状重合体の固有粘度に対する、分岐を有する重合体の固有粘度の割合であって、分岐を有する重合体の分岐構造の指標、つまり、分岐が占める割合の指標として用いることができる。例えば、前記収縮因子が減少するにつれて、該当重合体の分岐数は増加する傾向があり、したがって、絶対分子量が等しい重合体を比較する場合、分岐が多いほど収縮因子が小さくなるため、分岐度の指標として用いることができる。
【0061】
また、前記収縮因子は、粘度検出器を備えたゲルクロマトグラフィ−光散乱測定装置を用いてクロマトグラムを測定し、溶液粘度および光散乱法に基づいて算出したものである。具体的には、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラム2本が連結された、光散乱検出器および粘度検出器が備えられたGPC−光散乱測定装置を用いて、絶対分子量、および各絶対分子量に該当する固有粘度を得て、前記絶対分子量に該当する直鎖状重合体の固有粘度を算出した後、各絶対分子量に対応する固有粘度の比として収縮因子を求めた。例示的に、前記収縮因子は、光散乱検出器および粘度検出器が備えられたGPC−光散乱測定装置(Viscotek TDAmax、Malvern社)に試料を注入して光散乱検出器から絶対分子量を得て、光散乱検出器と粘度検出器から絶対分子量に対する固有粘度[η]を得た後、下記数学式2により、前記絶対分子量に対する直鎖状重合体の固有粘度[η]0を算出し、各絶対分子量に対応する固有粘度の比([η]/[η]0)の平均値を収縮因子として示した。この際、溶離液としては、テトラヒドロフランとN,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミンの混合溶液(N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン20mLをテトラヒドロフラン1Lに混合させて調整)を使用し、カラムとしてはPL Olexix(Agilent社)を使用し、オーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で測定した。また、試料は、10mLのTHFに重合体15mgを溶解させて準備した。
【0062】
【数1】
【0063】
前記数学式2中、Mは絶対分子量である。
【0064】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、ビニルの含量が5重量%以上、10重量%以上、または10重量%〜60重量%であってもよい。ここで、前記ビニルの含量は、ビニル基を有する単量体と芳香族ビニル系単量体からなる共役ジエン系共重合体100重量%に対する、1,4−添加ではなく1,2−添加された共役ジエン系単量体の含量を意味し得る。
【0065】
一方、本発明の一実施形態に係る前記化学式1で表される変性開始剤は、重合を開始すると同時に重合されて形成された重合体鎖の一末端に官能基を導入させることができるものであってもよい。
【0066】
具体的に、前記化学式1中、R1およびR2は、互いに独立して、水素;炭素数1〜10のアルキル基;N、O、またはS原子を含む炭素数1〜10のヘテロアルキル基であるか;R1およびR2が互いに連結され、炭素数4〜10のシクロアルキル基;またはN、O、およびS原子のうち1種以上を含む炭素数3〜10のヘテロ環基を形成するものであってもよく、R3は、炭素数1〜10のアルキレン基;炭素数5〜20のシクロアルキレン基;または炭素数5〜20のアリーレン基であってもよく、R4は、水素または炭素数1〜30のアルキル基であってもよい。
【0067】
さらに他の例として、前記Mは、隣接した炭素とイオン結合により結合されたものであってもよい。
【0068】
より具体的に、前記化学式1で表される変性開始剤は、下記化学式1aで表される化合物であってもよい。
【0069】
【化7】
【0070】
前記化学式1a中、Mはアルカリ金属であり、R1およびR2は、互いに独立して、水素;炭素数1〜30のアルキル基;N、O、またはS原子を含む炭素数1〜30のヘテロアルキル基;炭素数5〜30のシクロアルキル基;炭素数6〜30のアリール基;N、O、およびS原子のうち1種以上を含む炭素数3〜30のヘテロ環基であるか;R1およびR2が互いに連結され、炭素数4〜20のシクロアルキル基;またはN、O、およびS原子のうち1種以上を含む炭素数3〜20のヘテロ環基を形成し、R4は、水素;炭素1〜30のアルキル基;N、O、またはS原子を含む炭素数1〜30のヘテロアルキル基;炭素数5〜30のシクロアルキル基;炭素数6〜30のアリール基;またはN、O、およびS原子のうち1種以上を含む炭素数3〜30のヘテロ環基であり、R5〜R8は、互いに独立して、水素;炭素数1〜10のアルキル基;炭素数5〜10のシクロアルキル基;または炭素数6〜20のアリール基であってもよい。
【0071】
より具体的に、前記化学式1aで表される化合物は、下記化学式1−1〜化学式1−3で表される化合物から選択されるものであってもよい。
【0072】
【化8】
【0073】
【化9】
【0074】
【化10】
【0075】
前記化学式1−1〜化学式1−3中、Mは、Na、K、またはLiであり、R4は、水素または炭素数1〜5のアルキル基であってもよい。
【0076】
また、本発明による前記変性剤は、共役ジエン系重合体の残りの一末端を変性させるための変性剤であってもよく、具体的な例として、シリカ親和性変性剤であってもよい。前記シリカ親和性変性剤は、変性剤として用いられる化合物中にシリカ親和性官能基を含有する変性剤を意味し得て、前記シリカ親和性官能基は、充填剤、特に、シリカ系充填剤との親和性に優れ、シリカ系充填剤と変性剤由来の官能基との相互作用が可能な官能基を意味し得る。
【0077】
具体的に、本発明の一実施形態によると、前記変性剤は、化学式2で表される化合物であってもよい。前記化学式2中、R20は、単結合、または炭素数1〜5のアルキレン基であり、R21およびR22は、互いに独立して、炭素数1〜5のアルキル基であり、R23は、単結合、または炭素数1〜5のアルキレン基であり、R24は、水素、炭素数1〜5のアルキル基、または炭素数1〜5のアルキル基で置換された4価のアルキルシリル基であり、aは2または3の整数であり、cは1〜3の整数であり、bは0〜2の整数であって、この際、b+c=3であってもよい。
【0078】
より具体的な例として、前記化学式2で表される化合物は、N,N−ビス(3−(ジメトキシ(メチル)シリル)プロピル)−メチル−1−アミン(N,N−bis(3−(dimethoxy(methyl)silyl)propyl)−methyl−1−amine)、N,N−ビス(3−(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)−メチル−1−アミン(N,N−bis(3−(diethoxy(methyl)silyl)propyl)−methyl−1−amine)、N,N−ビス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)−メチル−1−アミン(N,N−bis(3−(trimethoxysilyl)propyl)−methyl−1−amine)、N,N−ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)−メチル−1−アミン(N,N−bis(3−(triethoxysilyl)propyl)−methyl−1−amine)、N,N−ジエチル−3−(トリメトキシシリル)プロパン−1−アミン(N,N−diethyl−3−(trimethoxysilyl)propan−1−amine)、N,N−ジエチル−3−(トリエトキシシリル)プロパン−1−アミン(N,N−diethyl−3−(triethoxysilyl)propan−1−amine)、トリ(トリメトキシシリル)アミン(tri(trimethoxysilyl)amine)、トリ(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アミン(tri−(3−(trimethoxysilyl)propyl)amine)、N,N−ビス(3−(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)−1,1,1−トリメチルシランアミン(N,N−bis(3−(diethoxy(methyl)silyl)propyl)−1,1,1−trimethlysilanamine)、および3−(ジメトキシ(メチル)シリル)−N,N−ジエチルプロパン−1−アミン(3−(dimethoxy(methyl)silyl)−N,N−diethylpropane−1−amine)からなる群から選択される1種であってもよい。
【0079】
また、具体的に、本発明の他の実施形態によると、前記変性剤は、化学式3で表される化合物であってもよい。前記化学式3中、A1およびA2は、互いに独立して、1〜10のアルキレン基であり、R25〜R28は、互いに独立して、炭素数1〜10のアルキル基であり、L1〜L4は、互いに独立して、炭素数1〜5のアルキル基で置換された4価のアルキルシリル基、炭素数1〜10のアルキル基であってもよい。
【0080】
より具体的な例として、前記化学式3で表される化合物は、3,3´−(1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジメチルプロパン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetramethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−dimethylpropan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラエトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジメチルプロパン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetraethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−dimethylpropan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラプロポキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジメチルプロパン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetrapropoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−dimethylpropan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジエチルプロパン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetramethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−diethylpropan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジプロピルプロパン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetramethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−dipropylpropan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラエトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジエチルプロパン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetraethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−diethylpropan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラプロポキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジエチルプロパン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetrapropoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−diethylpropan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラエトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジプロピルプロパン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetraethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−dipropylpropan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラプロポキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジプロピルプロパン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetrapropoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−dipropylpropan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジエチルメタン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetramethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−diethylmethan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラエトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジエチルメタン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetraethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−diethylmethan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラプロポキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジエチルメタン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetrapropoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−diethylmethan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジメチルメタン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetramethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−dimethylmethan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジプロピルメタン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetramethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−dipropylmethan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラプロポキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジメチルメタン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetrapropoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−dimethylmethan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラプロポキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジプロピルメタン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetrapropoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−dipropylmethan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラエトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジメチルメタン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetraethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−dimethylmethan−1−amine))、3,3´−(1,1,3,3−テトラエトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジプロピルメタン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetraethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−dipropylmethan−1−amine))、N,N´−((1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(プロパン−3,1−ジイル))ビス(1,1,1−トリメチル−N−(トリメチルシリル)シランアミン)(N,N´−((1,1,3,3−tetramethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(propan−3,1−diyl))bis(1,1,1−trimethyl−N−(trimethylsilyl)silanamine))、N,N´−((1,1,3,3−テトラエトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(プロパン−3,1−ジイル))ビス(1,1,1−トリメチル−N−(トリメチルシリル)シランアミン)(N,N´−((1,1,3,3−tetraethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(propan−3,1−diyl))bis(1,1,1−trimethyl−N−(trimethylsilyl)silanamine))、N,N´−((1,1,3,3−テトラプロポキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(プロパン−3,1−ジイル))ビス(1,1,1−トリメチル−N−(トリメチルシリル)シランアミン)(N,N´−((1,1,3,3−tetrapropoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(propan−3,1−diyl))bis(1,1,1−trimethyl−N−(trimethylsilyl)silanamine))、N,N´−((1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(プロパン−3,1−ジイル))ビス(1,1,1−トリメチル−N−フェニルシランアミン)(N,N´−((1,1,3,3−tetramethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(propan−3,1−diyl))bis(1,1,1−trimethyl−N−phenylsilanamine))、N,N´−((1,1,3,3−テトラエトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(プロパン−3,1−ジイル))ビス(1,1,1−トリメチル−N−フェニルシランアミン)(N,N´−((1,1,3,3−tetraethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(propan−3,1−diyl))bis(1,1,1−trimethyl−N−phenylsilanamine))、およびN,N´−((1,1,3,3−テトラプロポキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(プロパン−3,1−ジイル))ビス(1,1,1−トリメチル−N−フェニルシランアミン)(N,N´−((1,1,3,3−tetrapropoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(propan−3,1−diyl))bis(1,1,1−trimethyl−N−phenylsilanamine))からなる群から選択される1種であってもよい。
【0081】
上述のように、本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、特定の構造を有し、特有の分子量分布度および形態を有することができる。かかる重合体の構造は、収縮因子、ムーニー緩和率、カップリング数のような物性で表現されることができ、前記分子量分布度およびその形態は、分子量分布値と分子量分布曲線の形態、およびカップリング数で発現される。変性剤と変性開始剤による両末端変性は、構造および分子量分布度と、その形態に影響を与え得る。このような重合体の構造を表現するパラメータと分子量分布に関する特徴は、後述の製造方法により満たすことができる。
【0082】
また、このような製造方法により製造されることが上記の特徴を満たすのに好ましいが、上記の特徴を全て満たす場合に、本発明で実現しようとする効果を達成することができる。
【0083】
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0084】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、炭化水素溶媒中で、下記化学式1で表される変性開始剤の存在下で、共役ジエン系単量体、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル単量体を重合することで、前記変性開始剤由来の官能基が導入された活性重合体を製造するステップ(S1)と、前記(S1)ステップで製造された活性重合体と、下記化学式2または化学式3で表される変性剤とを反応またはカップリングさせるステップ(S2)と、を含み、前記(S1)ステップは、2器以上の重合反応器で連続的に行い、前記重合反応器のうち第1反応器での重合転換率が50%以下であってもよい。
【0085】
【化11】
【0086】
【化12】
【0087】
【化13】
【0088】
前記化学式1〜化学式3中、R1〜R4、R20〜R28、M、A1、A2、およびL1〜L4は、上述の定義のとおりである。
【0089】
前記炭化水素溶媒は、特に制限されるものではないが、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、およびキシレンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0090】
また、前記共役ジエン系単量体および芳香族ビニル単量体は、上述の定義のとおりである。
【0091】
本発明の一実施形態によると、前記変性開始剤は、単量体の総100gを基準として、0.01mmol〜10mmol、0.05mmol〜5mmol、0.1mmol〜2mmol、0.1mmol〜1mmol、または0.15mmol〜0.8mmolで用いてもよい。
【0092】
前記(S1)ステップにおける重合は、例えば、アニオン重合であってもよく、具体的な例として、アニオンによる成長重合反応によって重合末端にアニオン活性部位を有するリビングアニオン重合であってもよい。また、前記(S1)ステップにおける重合は、昇温重合、等温重合、または定温重合(断熱重合)であってもよい。前記定温重合は、変性開始剤を投入した後に任意に熱を加えず、その自体の反応熱で重合させるステップを含む重合方法を意味し、前記昇温重合は、前記変性開始剤を投入した後に任意に熱を加えて温度を増加させる重合方法を意味し、前記等温重合は、前記変性開始剤を投入した後に熱を加えて熱を増加させたり、熱を奪うことで、重合物の温度を一定に維持する重合方法を意味し得る。
【0093】
また、本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップにおける重合は、前記共役ジエン系単量体以外に、炭素数1〜10のジエン系化合物をさらに含んで行ってもよく、この場合、長時間運転する際に反応器の壁面にゲルが形成されることが防止される効果がある。前記ジエン系化合物は、例えば、1,2−ブタジエンであってもよい。
【0094】
前記(S1)ステップにおける重合は、例えば、80℃以下、−20℃〜80℃、0℃〜80℃、0℃〜70℃、または10℃〜70℃の温度範囲で行ってもよい。この範囲内である場合、重合体の分子量分布を狭く調節して、物性改善に優れる効果がある。
【0095】
前記(S1)ステップにより製造された活性重合体は、重合体アニオンと有機金属カチオンが結合された重合体を意味し得る。
【0096】
本発明の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、2器以上の重合反応器および変性反応器を含む複数の反応器で、連続式重合方法により行ってもよい。具体的な例として、前記(S1)ステップは、第1反応器を含む2器以上の重合反応器で連続的に行ってもよく、前記重合反応器の数は、反応条件および環境によって弾力的に決定され得る。前記連続式重合方法は、反応器に反応物を連続的に供給し、生成された反応生成物を連続的に排出する反応工程を意味し得る。前記連続式重合方法による場合、生産性および加工性に優れるとともに、製造される重合体の均一性が優れる効果がある。
【0097】
また、本発明の一実施形態によると、前記重合反応器で連続的に活性重合体を製造する時に、第1反応器での重合転換率は50%以下、10%〜50%、または20%〜50%であってもよい。この範囲内である場合、重合反応が開始された後、重合体が形成されながら発生する副反応を抑制し、重合時に直鎖状(linear)構造の重合体を誘導することができ、これにより、重合体の分子量分布を狭く調節することが可能であって、物性改善に優れる効果がある。
【0098】
この際、前記重合転換率は、反応温度、反応器滞留時間などによって調節され得る。
【0099】
前記重合転換率は、例えば、重合体の重合時に、重合体を含む重合体溶液中の固体濃度を測定することで決定されてもよく、具体的な例として、前記重合体溶液を確保するために、各重合反応器の出口にシリンダ型容器を取り付けて一定量の重合体溶液をシリンダ型容器に満たし、前記シリンダ型容器を反応器から取り外し、重合体溶液が満たされているシリンダの重量(A)を測定した後、シリンダ型容器に満たされている重合体溶液を、アルミニウム容器、例えば、アルミニウム皿に移し、重合体溶液が除去されたシリンダ型容器の重量(B)を測定し、重合体溶液が入ったアルミニウム容器を140℃のオーブンで30分間乾燥させ、乾燥された重合体の重量(C)を測定した後、下記数学式1により計算したものであってもよい。
【0100】
【数2】
【0101】
一方、前記第1反応器で重合された重合物は、変性反応器の前の重合反応器まで順に移送され、最終的に重合転換率が95%以上となるまで重合が行われてもよい。第1反応器で重合された後、第2反応器、または第2反応器から変性反応器の前の重合反応器までの各反応器毎の重合転換率は、分子量分布の調節のために、各反応器毎に適宜調節して行われてもよい。
【0102】
一方、前記(S1)ステップにおいて、活性重合体の製造時に、第1反応器での重合物の滞留時間は1分〜40分、1分〜30分、または5分〜30分であってもよく、この範囲内である場合、重合転換率の調節が容易であるため、重合体の分子量分布を狭く調節することが可能であり、これにより、物性改善に優れる効果がある。
【0103】
本発明において、用語「重合物」は、(S1)ステップまたは(S2)ステップが完了されて活性重合体または変性共役ジエン系重合体が得られる前に、(S1)ステップを行っている中に、各反応器内で重合が行われている重合体形態の中間体を意味し得て、反応器内で重合が行われている、重合転換率が95%未満の重合体を意味し得る。
【0104】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップで製造された活性重合体の分子量分布(PDI、polydispersed index;MWD、molecular weight distribution;Mw/Mn)は、1.5未満、1.0以上〜1.5未満、または1.1以上〜1.5未満であってもよい。この範囲内である場合、変性剤との変性反応またはカップリングにより製造される変性共役ジエン系重合体の分子量分布が狭くて、物性改善に優れる効果がある。
【0105】
一方、前記(S1)ステップにおける重合は、極性添加剤を含んで行ってもよく、前記極性添加剤は、単量体の総100gを基準として、0.001g〜50g、0.001g〜10g、または0.005g〜0.1gの割合で添加してもよい。さらに他の例として、前記極性添加剤は、変性開始剤の総1mmolを基準として、0.001g〜10g、0.005g〜5g、0.005g〜4gの割合で添加してもよい。
【0106】
前記極性添加剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン、ジエチルエーテル、シクロアミルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレンメチルエーテル、エチレンジメチルエーテル、ジエチルグリコール、ジメチルエーテル、3級ブトキシエトキシエタン、ビス(3−ジメチルアミノエチル)エーテル、(ジメチルアミノエチル)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N、N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、ナトリウムメントレート(sodium mentholate)、および2−エチルテトラヒドロフルフリルエーテル(2−ethyl tetrahydrofurfuryl ether)からなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくは、2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ナトリウムメントレート(sodium mentholate)、または2−エチルテトラヒドロフルフリルエーテル(2−ethyl tetrahydrofurfuryl ether)であってもよい。前記極性添加剤を含む場合、共役ジエン系単量体、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を共重合させる際に、それらの反応速度の差を補完することにより、ランダム共重合体が容易に形成されるように誘導する効果がある。
【0107】
本発明の一実施形態によると、前記(S2)ステップにおける反応またはカップリングは、変性反応器で行ってもよい。この際、前記変性剤は、単量体の総100gを基準として、0.01mmol〜10mmolの量で用いてもよい。さらに他の例として、前記変性剤は、前記(S1)ステップの変性開始剤の1モルを基準として、1:0.1〜10、1:0.1〜5、または1:0.1〜1:3のモル比で用いてもよい。
【0108】
また、本発明の一実施形態によると、前記変性剤は変性反応器に投入してもよく、前記(S2)ステップは、変性反応器で行ってもよい。さらに他の例として、前記変性剤は、前記(S1)ステップで製造された活性重合体を、(S2)ステップを行うための変性反応器に移送するための移送部に投入してもよく、前記移送部内で、活性重合体と変性剤の混合により反応またはカップリングが進行されることができる。
【0109】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、上述の変性共役ジエン系重合体の特性を満たすことができる方法であり、上記のように本発明で達成しようとする効果は、上記の特徴を満たした際に達成されることができるが、少なくとも、前記製造方法において、連続式工程下で第1反応器から第2反応器に移送する時の重合転換率は満たす必要があり、それ以外の重合条件は多様に制御されることで、本発明による変性共役ジエン系重合体が有する物性を実現することができる。
【0110】
なお、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物を提供する。
【0111】
前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体を10重量%以上、10重量%〜100重量%、または20重量%〜90重量%の量で含んでもよい。この範囲内である場合、引張強度、耐磨耗性などの機械的物性に優れ、各物性間のバランスに優れる効果がある。
【0112】
また、前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体以外に、必要に応じて、他のゴム成分をさらに含んでもよい。この際、前記ゴム成分は、ゴム組成物の総重量に対して90重量%以下の含量で含まれてもよい。具体的な例として、前記他のゴム成分は、前記変性共役ジエン系重合体100重量部に対して、1重量部〜900重量部で含まれてもよい。
【0113】
前記ゴム成分は、例えば、天然ゴムまたは合成ゴムであってもよく、具体的な例として、シス−1,4−ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR);前記一般的な天然ゴムを変性または精製した、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱蛋白天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどの変性天然ゴム;スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリイソブチレン−コ−イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)、ポリ(スチレン−コ−イソプレン)、ポリ(スチレン−コ−イソプレン−コ−ブタジエン)、ポリ(イソプレン−コ−ブタジエン)、ポリ(エチレン−コ−プロピレン−コ−ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどのような合成ゴムであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。
【0114】
前記ゴム組成物は、例えば、本発明の変性共役ジエン系重合体100重量部に対して、0.1重量部〜200重量部、または10重量部〜120重量部の充填剤を含んでもよい。前記充填剤は、例えば、シリカ系充填剤であり、具体的な例として、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、またはコロイドシリカなどであってもよく、好ましくは、破壊特性の改良効果およびウェットグリップ性(wet grip)の両立効果が最も高い湿式シリカであってもよい。また、前記ゴム組成物は、必要に応じて、カーボン系充填剤をさらに含んでもよい。
【0115】
さらに他の例として、前記充填剤としてシリカが用いられる場合、補強性および低発熱性を改善するために、シランカップリング剤がともに用いられてもよい。具体的な例として、前記シランカップリング剤は、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、またはジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。好ましくは、補強性の改善効果を考慮すると、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたは3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであってもよい。
【0116】
また、本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、ゴム成分として、活性部位にシリカとの親和性が高い官能基が導入された変性共役ジエン系重合体が用いられているため、シランカップリング剤の配合量が通常の場合よりも低減されることができる。したがって、前記シランカップリング剤は、シリカ100重量部に対して、1重量部〜20重量部、または5重量部〜15重量部で用いられてもよい。この範囲内である場合、カップリング剤としての効果が十分に発揮されながらも、ゴム成分のゲル化が防止される効果がある。
【0117】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、硫黄架橋性であってもよく、加硫剤をさらに含んでもよい。前記加硫剤は、具体的に、硫黄粉末であってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部〜10重量部で含まれてもよい。この範囲内である場合、加硫ゴム組成物が必要とする弾性率および強度を確保するとともに、低燃費性に優れる効果がある。
【0118】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、上記の成分の他に、ゴム工業界で通常用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、酸化防止剤、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂などをさらに含んでもよい。
【0119】
前記加硫促進剤としては、例えば、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系化合物、もしくはDPG(ジフェニルグアニジン)などのグアニジン系化合物が使用可能であり、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部〜5重量部で含まれてもよい。
【0120】
前記プロセス油は、ゴム組成物中で軟化剤として作用するものであって、例えば、パラフィン系、ナフテン系、または芳香族系化合物であってもよく、引張強度および耐磨耗性を考慮すると芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損および低温特性を考慮するとナフテン系またはパラフィン系プロセス油が使用できる。前記プロセス油は、例えば、ゴム成分100重量部に対して100重量部以下の含量で含まれてもよく、この範囲内である場合、加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止する効果がある。
【0121】
前記酸化防止剤は、例えば、2,6−ジ−t−ブチルパラクレゾール、ジブチルヒドロキシトルエニル、2,6−ビス((ドデシルチオ)メチル)−4−ノニルフェノール(2,6−bis((dodecylthio)methyl)−4−nonylphenol)、または2−メチル−4,6−ビス((オクチルチオ)メチル)フェノール(2−methyl−4,6−bis((octylthio)methyl)phenol)であってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部〜6重量部で用いられてもよい。
【0122】
前記老化防止剤は、例えば、N−イソプロピル−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、またはジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物などであってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部〜6重量部で用いられてもよい。
【0123】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、前記配合処方に応じて、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を用いて混練することで得られ、成形加工後、加硫工程により、低発熱性および耐磨耗性に優れたゴム組成物が得られることができる。
【0124】
これにより、前記ゴム組成物は、タイヤトレッド、アンダトレッド、サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラー、チェーファー、またはビードコーティングゴムなどのタイヤの各部材や、防塵ゴム、ベルトコンベア、ホースなどの各種工業用ゴム製品の製造において有用である。
【0125】
尚、本発明は、前記ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供する。
【0126】
前記タイヤは、タイヤまたはタイヤトレッドを含んでもよい。
【0127】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、種々の形態に変形可能であり、本発明の範囲が、以下で詳述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に、本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0128】
[実施例1]
3器の反応器が直列で連結された連続反応器のうち第1反応器に、n−ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解されたスチレン溶液を3.6kg/h、n−ヘキサンに1,3−ブタジエンが60重量%で溶解された1,3−ブタジエン溶液を12.6kg/h、n−ヘキサン47.2kg/h、n−ヘキサンに1,2−ブタジエンが2.0重量%で溶解された1,2−ブタジエン溶液を40g/h、極性添加剤として、n−ヘキサンに2,2−(ジ−2(テトラヒドロフリル)プロパンが10重量%で溶解された溶液を121.0g/h、変性開始剤として、下記化学式(i)で表される化合物を59.0g/hの速度で注入した。この際、第1反応器の温度は50℃になるように維持し、重合転換率が42%となった時に、移送配管を介して第1反応器から第2反応器へ重合物を移送した。
【0129】
次に、第2反応器に、n−ヘキサンに1,3−ブタジエンが60重量%で溶解された1,3−ブタジエン溶液を0.74kg/hの速度で注入した。この際、第2反応器の温度は65℃になるように維持し、重合転換率が95%以上となった時に、移送配管を介して第2反応器から第3反応器へ重合物を移送した。
【0130】
前記第2反応器から第3反応器へ重合物を移送し、変性剤として、3,3´−(1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジエチルプロパン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetramethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−diethylpropan−1−amine))が20重量%で溶解された溶液を93g/hの速度で第3反応器に投入した。第3反応器の温度は65℃になるように維持した。
【0131】
その後、第3反応器から排出された重合溶液に、酸化防止剤として、30重量%で溶解されたIR1520(BASF社製)溶液を167g/hの速度で注入して撹拌した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れて撹拌し、溶媒を除去することで、両末端変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0132】
【化14】
【0133】
[実施例2]
実施例1において、重合転換率が43%となった時に、移送配管を介して第1反応器から第2反応器へ重合物を移送し、変性剤として、3,3´−(1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジエチルプロパン−1−アミン)の代わりに、N,N−ビス(3−(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)−メチル)−1−アミン)(N,N−bis(3−(diethoxy(methyl)silyl)propyl)−methyl−1−amine)が20重量%で溶解された溶液を81g/hの速度で第3反応器に連続的に供給したことを除き、前記実施例1と同様に行って、両末端変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0134】
[実施例3]
実施例1において、重合転換率が40%となった時に、移送配管を介して第1反応器から第2反応器へ重合物を移送し、変性剤として、3,3´−(1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジエチルプロパン−1−アミン)の代わりに、N,N−ジエチル−3−(トリメトキシシリル)プロパン−1−アミン(N,N−diethyl−3−(trimethoxysilyl)propane−1−amine)が20重量%で溶解された溶液を52g/hの速度で第3反応器に連続的に供給したことを除き、前記実施例1と同様に行って、両末端変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0135】
[実施例4]
実施例1において、重合転換率が40%となった時に、移送配管を介して第1反応器から第2反応器へ重合物を移送し、変性剤として、3,3´−(1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジエチルプロパン−1−アミン)の代わりに、3−(ジメトキシ(メチル)シリル)−N,N−ジエチルプロパン−1−アミン(3−(dimethoxy(methyl)silyl)−N,N−diethylpropane−1−amine)が20重量%で溶解された溶液を48g/hの速度で第3反応器に連続的に供給したことを除き、前記実施例1と同様に行って、両末端変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0136】
[実施例5]
3器の反応器が直列で連結された連続反応器のうち第1反応器に、n−ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解されたスチレン溶液を1.80kg/h、n−ヘキサンに1,3−ブタジエンが60重量%で溶解された1,3−ブタジエン溶液を14.2kg/h、n−ヘキサン49.11kg/h、n−ヘキサンに1,2−ブタジエンが2.0重量%で溶解された1,2−ブタジエン溶液を40g/h、極性添加剤として、n−ヘキサンに2,2−(ジ−2(テトラヒドロフリル)プロパンが10重量%で溶解された溶液を78.0g/h、変性開始剤として、下記化学式(ii)で表される化合物を121.0g/hの速度で注入した。この際、第1反応器の温度は50℃になるように維持し、重合転換率が43%となった時に、移送配管を介して第1反応器から第2反応器へ重合物を移送した。
【0137】
次に、第2反応器に、n−ヘキサンに1,3−ブタジエンが60重量%で溶解された1,3−ブタジエン溶液を0.74kg/hの速度で注入した。この際、第2反応器の温度は65℃になるように維持し、重合転換率が95%以上となった時に、移送配管を介して第2反応器から第3反応器へ重合物を移送した。
【0138】
前記第2反応器から第3反応器へ重合物を移送し、変性剤として、3,3´−(1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジエチルプロパン−1−アミン)(3,3´−(1,1,3,3−tetramethoxydisiloxane−1,3−diyl)bis(N,N−diethylpropan−1−amine))が20重量%で溶解された溶液を93g/hの速度で第3反応器に投入した。第3反応器の温度は65℃になるように維持した。
【0139】
その後、第3反応器から排出された重合溶液に、酸化防止剤として、30重量%で溶解されたIR1520(BASF社製)溶液を167g/hの速度で注入して撹拌した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れて撹拌し、溶媒を除去することで、両末端変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0140】
【化15】
【0141】
[実施例6]
実施例5において、重合転換率が41%となった時に、移送配管を介して第1反応器から第2反応器へ重合物を移送し、変性剤として、3,3´−(1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジエチルプロパン−1−アミン)の代わりに、N,N−ビス(3−(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)−メチル)−1−アミン)(N,N−bis(3−(diethoxy(methyl)silyl)propyl)−methyl−1−amine)が20重量%で溶解された溶液を81g/hの速度で第3反応器に連続的に供給したことを除き、前記実施例5と同様に行って、両末端変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0142】
[実施例7]
実施例5において、変性剤として、3,3´−(1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジエチルプロパン−1−アミン)の代わりに、N,N−ジエチル−3−(トリメトキシシリル)プロパン−1−アミン(N,N−diethyl−3−(trimethoxysilyl)propane−1−amine)が20重量%で溶解された溶液を52g/hの速度で第3反応器に連続的に供給したことを除き、前記実施例5と同様に行って、両末端変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0143】
[比較例1]
20Lのオートクレーブ反応器に、スチレン270g、1,3−ブタジエン710g、n−ヘキサン5000g、および極性添加剤として2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン1.48gを入れた後、反応器の内部温度を50℃に昇温した。反応器の内部温度が50℃に達した時に、変性開始剤として前記化学式(i)で表される化合物5.8mmolを投入し、断熱昇温反応を進行させた。20分程度経過した後、1,3−ブタジエン20gを投入して重合体の鎖末端をブタジエンでキャッピング(capping)した。5分後、3−(ジメトキシ(メチル)シリル)−N,N−ジエチルプロパン−1−アミン6.2mmolを投入し、15分間反応させた。その後、エタノールを用いて重合反応を停止させ、酸化防止剤であるIR1520(BASF社製)がn−ヘキサンに0.3重量%溶解されている溶液45mlを添加した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れて撹拌し、溶媒を除去することで、両末端変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0144】
[比較例2]
3器の反応器が直列で連結された連続反応器のうち第1反応器に、n−ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解されたスチレン溶液を3.6kg/h、n−ヘキサンに1,3−ブタジエンが60重量%で溶解された1,3−ブタジエン溶液を12.6kg/h、n−ヘキサン47.2kg/h、n−ヘキサンに1,2−ブタジエンが2.0重量%で溶解された1,2−ブタジエン溶液を40g/h、極性添加剤として、n−ヘキサンに2,2−(ジ−2(テトラヒドロフリル)プロパンが10重量%で溶解された溶液を125.0g/h、n−ヘキサンにn−ブチルリチウムが10重量%で溶解されたn−ブチルリチウム溶液を84.0g/hの速度で注入した。この際、第1反応器の温度は55℃になるように維持し、重合転換率が48%となった時に、移送配管を介して第1反応器から第2反応器へ重合物を移送した。
【0145】
次に、第2反応器に、n−ヘキサンに1,3−ブタジエンが60重量%で溶解された1,3−ブタジエン溶液を0.74kg/hの速度で注入した。この際、第2反応器の温度は65℃になるように維持し、重合転換率が95%以上となった時に、移送配管を介して第2反応器から第3反応器へ重合物を移送した。
【0146】
前記第2反応器から第3反応器へ重合物を移送し、カップリング剤として、n−ヘキサンにジクロロジメチルシランが2重量%で溶解された溶液を40g/hの速度で第3反応器に投入した。第3反応器の温度は65℃になるように維持した。
【0147】
その後、第3反応器から排出された重合溶液に、酸化防止剤として、30重量%で溶解されたIR1520(BASF社製)溶液を167g/hの速度で注入して撹拌した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れて撹拌し、溶媒を除去することで、未変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0148】
[比較例3]
3器の反応器が直列で連結された連続反応器のうち第1反応器に、n−ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解されたスチレン溶液を1.80kg/h、n−ヘキサンに1,3−ブタジエンが60重量%で溶解された1,3−ブタジエン溶液を14.2kg/h、n−ヘキサン49.11kg/h、n−ヘキサンに1,2−ブタジエンが2.0重量%で溶解された1,2−ブタジエン溶液を40g/h、極性添加剤として、n−ヘキサンに2,2−(ジ−2(テトラヒドロフリル)プロパンが10重量%で溶解された溶液を78.0g/h、n−ヘキサンにn−ブチルリチウムが10重量%で溶解されたn−ブチルリチウム溶液を84.0g/hの速度で注入した。この際、第1反応器の温度は55℃になるように維持し、重合転換率が48%となった時に、移送配管を介して第1反応器から第2反応器へ重合物を移送した。
【0149】
次に、第2反応器に、n−ヘキサンに1,3−ブタジエンが60重量%で溶解された1,3−ブタジエン溶液を0.74kg/hの速度で注入した。この際、第2反応器の温度は65℃になるように維持し、重合転換率が95%以上となった時に、移送配管を介して第2反応器から第3反応器へ重合物を移送した。
【0150】
前記第2反応器から第3反応器へ重合物を移送し、カップリング剤として、n−ヘキサンにジクロロジメチルシランが2重量%で溶解された溶液を40g/hの速度で第3反応器に投入した。第3反応器の温度は65℃になるように維持した。
【0151】
その後、第3反応器から排出された重合溶液に、酸化防止剤として、30重量%で溶解されたIR1520(BASF社製)溶液を167g/hの速度で注入して撹拌した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れて撹拌し、溶媒を除去することで、未変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0152】
[比較例4]
実施例1において、反応温度を、第1反応器では75℃、第2反応器では80℃、第3反応器では80℃に維持し、第1反応器での重合転換率が74%となった時に、移送配管を介して第1反応器から第2反応器へ重合物を移送して重合したことを除き、前記実施例1と同様に行って、両末端変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0153】
[比較例5]
実施例1において、重合転換率が38%となった時に、移送配管を介して第1反応器から第2反応器へ重合物を移送し、第3反応器に変性剤を投入せずに反応させたことを除き、前記実施例1と同様に行って、片末端変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0154】
[比較例6]
実施例1において、変性開始剤(i)の代わりに、n−ヘキサンにn−ブチルリチウムが10重量%で溶解されたn−ブチルリチウム溶液を84.0g/hの速度で第1反応器に連続的に投入し、重合転換率が43%となった時に、移送配管を介して第1反応器から第2反応器へ重合物を移送したことを除き、前記実施例1と同様に行って、片末端変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0155】
[参照例1]
比較例1において、3−(ジメトキシ(メチル)シリル)−N,N−ジエチルプロパン−1−アミンを8.3mmol投入したことを除き、前記比較例1と同様に行って、両末端変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0156】
[参照例2]
比較例1において、3−(ジメトキシ(メチル)シリル)−N,N−ジエチルプロパン−1−アミンを3.3mmol投入したことを除き、前記比較例1と同様に行って、両末端変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0157】
<実験例1>
前記実施例、比較例、および参照例で製造された各変性または未変性の共役ジエン系重合体に対して、重合体中のスチレン単位の含量およびビニルの含量、重量平均分子量(Mw、X103g/mol)、数平均分子量(Mn、X103g/mol)、分子量分布(PDI、MWD)、カップリング数、ムーニー粘度(MV)、収縮因子、Siの含量、Nの含量、およびムーニー緩和率をそれぞれ測定した。結果を下記表1および表2に示した。
【0158】
1)スチレン単位およびビニルの含量(重量%)
前記各重合体中のスチレン単位(SM)およびビニル(Vinyl)の含量は、Varian VNMRS 500 MHz NMRを用いて測定および分析した。
【0159】
NMR測定時に、溶媒としては1,1,2,2−テトラクロロエタンを使用し、溶媒ピーク(solvent peak)は5.97ppmで計算し、7.2〜6.9ppmはランダムスチレン、6.9〜6.2ppmはブロックスチレン、5.8〜5.1ppmは1,4−ビニル、5.1〜4.5ppmは1,2−ビニルのピークとしてスチレン単位およびビニルの含量を計算した。
【0160】
2)重量平均分子量(Mw、X103g/mol)、数平均分子量(Mn、X103g/mol)、分子量分布(PDI、MWD)、およびカップリング数(coupling number、C.N.)
GPC(Gel permeation Chromatography)分析により前記重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布曲線を得た。また、分子量分布(PDI、MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算して得た。具体的に、前記GPCとしては、PLgel Olexis(Polymer Laboratories社製)カラム2本とPLgel mixed−C(Polymer Laboratories社製)カラム1本を組み合わせて使用し、分子量の計算時に、GPC基準物質(Standard material)としてはPS(polystyrene)を使用して実施した。GPC測定溶媒は、テトラヒドロフランに2重量%のアミン化合物を交ぜて製造した。この際、得られた分子量分布曲線から単峰形であるか二峰形であるかを確認し、図1図5に示した。
【0161】
また、カップリング数は、各実施例および比較例で変性剤またはカップリング剤を投入する前に、一部の重合物を採取して重合体のピーク分子量(Mp1)を得て、その後、各変性共役ジエン系重合体のピーク分子量(Mp2)を得て、下記の数学式3で計算した。
【0162】
【数3】
【0163】
3)ムーニー粘度およびムーニー緩和率
前記ムーニー粘度(MV、(ML1+4、@100℃)MU)は、MV−2000(ALPHA Technologies社製)により、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを用いて測定した。この際、使用された試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて4分間測定した。
【0164】
ムーニー粘度の測定後、トルクが解放されながら現れるムーニー粘度変化の勾配値を測定し、ムーニー緩和率を得た。
【0165】
4)Siの含量
前記Siの含量は、ICP分析方法により、誘導結合プラズマ発光分析器(ICP−OES;Optima 7300DV)を用いて測定した。具体的に、試料約0.7gを白金るつぼ(Pt crucible)に入れ、濃硫酸(98重量%、Electronic grade)約1mLを入れて、300℃で3時間加熱し、試料を電気炉(Thermo Scientific、Lindberg Blue M)にて、下記ステップ(step)1〜3のプログラムで灰化を進行した後、
1)ステップ1:initial temp 0℃、rate(temp/hr)180℃/hr、temp(holdtime)180℃(1hr)
2)ステップ2:initial temp 180℃、rate(temp/hr)85℃/hr、temp(holdtime)370℃(2hr)
3)ステップ3:initial temp 370℃、rate(temp/hr)47℃/hr、temp(holdtime)510℃(3hr)
残留物に、濃硝酸(48重量%)1mL、濃フッ酸(50重量%)20μlを加え、白金るつぼを密封して30分以上振った(shaking)後、試料にホウ酸(boric acid)1mLを入れて0℃で2時間以上保管してから、超純水(ultrapure water)30mLに希釈し、灰化を進行して測定した。
【0166】
5)Nの含量
Nの含量は、NSX分析方法により、極微量窒素定量分析器(NSX−2100H)を用いて測定した。具体的に、極微量窒素定量分析器(Auto sampler、Horizontal furnace、PMT&Nitrogen detector)をオンにし、Arを250ml/min、O2を350ml/min、オゾナイザ(ozonizer)300ml/minにキャリアガス流量を設定し、ヒータ(heater)を800℃に設定した後、約3時間待機して分析器を安定化させた。分析器が安定化された後、Nitrogen standard(AccuStandard S−22750−01−5ml)を用いて、検量線範囲5ppm、10ppm、50ppm、100ppm、および500ppmの検量線を作成し、各濃度に該当するAreaを得た後、濃度とAreaとの割合を用いて直線を作成した。その後、試料20mgが入ったセラミックボートを前記分析器のAuto samplerに置いて測定し、areaを得た。得られた試料のareaと前記検量線を用いてNの含量を計算した。
【0167】
6)収縮因子(g´)
収縮因子は、光散乱検出器および粘度検出器が備えられたGPC−光散乱測定装置(Viscotek TDAmax、Malvern社)に試料を注入し、光散乱検出器から絶対分子量を得て、光散乱検出器と粘度検出器から絶対分子量に対する固有粘度[η]を得た後、下記数学式2により、前記絶対分子量に対する直鎖状重合体の固有粘度[η]0を算出し、各絶対分子量に対応する固有粘度の比([η]/[η]0)の平均値を収縮因子として示した。この際、溶離液としては、テトラヒドロフランとN,N,N´、N´−テトラメチルエチレンジアミンの混合溶液(N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン20mLをテトラヒドロフラン1Lに混合させて調整)を使用し、カラムとしてはPL Olexix(Agilent社)を使用し、オーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で測定した。また、試料は、10mLのTHFに重合体15mgを溶解させて準備した。
【0168】
【数4】
【0169】
前記数学式2中、Mは絶対分子量である。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
【0172】
前記表1および表2中、開始剤、変性剤およびカップリング剤の具体的な物質は、下記のとおりである。
【0173】
*開始剤a:化学式(i)で表される化合物
*開始剤b:化学式(ii)で表される化合物
*開始剤c:n−ブチルリチウム
*変性剤A:3,3´−(1,1,3,3−テトラメトキシジシロキサン−1,3−ジイル)ビス(N,N−ジエチルプロパン−1−アミン)
*変性剤B:N,N−ビス(3−(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)−メチル−1−アミン
*変性剤C:N,N−ジエチル−3−(トリメトキシシリル)プロパン−1−アミン
*変性剤D:3−(ジメトキシ(メチル)シリル)−N,N−ジエチルプロパン−1−アミン
*カップリング剤E:ジクロロジメチルシラン
前記表1および表2に示されたように、本発明の一実施形態に係る実施例1〜7の変性共役ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィによる分子量分布曲線が単峰形(unimodal)を有しながらも(図1および図2参照)、PDI(分子量分布)が1.0以上1.7未満であり、Siの含量およびNの含量が50ppm以上であり、ムーニー緩和率が0.7以上で、収縮因子が1.0以上であることを確認することができる。これに対し、比較例1〜比較例5の変性共役ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィによる分子量分布曲線が二峰形を有するか(図3参照)、ムーニー緩和率が0.7未満、収縮因子が1.0未満、Siの含量が50ppm未満、またはNの含量が50ppm未満であることを確認することができた。特に、連続式重合により製造され、且つ第1反応器での重合転換率が本発明の範囲を外れている比較例4は、PDI値が1.7を超え、ムーニー緩和率および収縮因子がそれぞれ0.7未満であって、実施例に比べて著しく減少された値を示した。
【0174】
また、本発明の実施例4と同じ変性開始剤および変性剤を適用したが、回分式重合方法により重合体を製造した比較例1は、ゲル浸透クロマトグラフィによる分子量分布曲線が二峰形(bimodal)を示した(図3参照)。一方、参照例1および2のように、回分式重合方法を適用しても、分子量分布曲線が単峰形(unimodal)を有するように調節することはできるが(図4および図5参照)、この場合は、重合体のカップリング数がそれぞれ1.0または2.0であって、重合体の全てが変性剤によりカップリングされていないもの(参照例1)と、重合体の殆どが変性剤によりカップリングされているもの(参照例2)のみが存在するため、本発明の連続式重合方法による単峰形の重合体とは、構造および性質が異なる。これにより、後述の表4から確認されるように、実施例4に比べて加工性特性が著しく劣り、引張特性および粘弾性特性が著しく低下した特性を示した。
【0175】
一方、比較例5は、本発明の一実施形態で提示する変性剤を使用していないことを除き、実施例1と同様の条件で製造されたものであり、比較例6の変性共役ジエン系重合体は、重合時に使用された開始剤を除き、実施例1と同様の条件で製造されたものであって、本発明で提示する変性剤および変性開始剤を適用して製造されていないため、製造された重合体中の変性剤および変性開始剤由来の官能基を同時に含まず、これにより、後述の表4から確認されるように、充填剤との配合物性に劣り、引張特性および粘弾性特性が実施例に比べて著しく低下していることを確認することができる。
【0176】
<実験例2>
前記実施例、比較例、および参照例で製造された各変性または未変性の共役ジエン系共重合体を含むゴム組成物、およびそれから製造された成形品の物性を比較分析するために、引張特性、粘弾性特性をそれぞれ測定し、その結果を下記表4および表5に示した。
【0177】
1)ゴム試験片の製造
実施例、比較例、および参照例の各変性または未変性の共役ジエン系重合体を原料ゴムとして、下記表3に示した配合条件で配合した。表3中の原料の含量は、原料ゴム100重量部を基準とした各重量部である。
【0178】
【表3】
【0179】
具体的に、前記ゴム試験片は、第1段混練および第2段混練を経て混練される。第1段混練では、温度制御装置付きのバンバリーミキサを用いて、原料ゴム、シリカ(充填剤)、有機シランカップリング剤、プロセス油、亜鉛華、ステアリン酸、酸化防止剤、老化防止剤、およびワックスを混練した。この際、混練機の初期温度を70℃に制御し、配合完了後、145℃〜155℃の排出温度で1次配合物を得た。第2段混練では、前記1次配合物を室温まで冷却した後、混練機に1次配合物、硫黄、ゴム促進剤、および加硫促進剤を加え、100℃以下の温度で混合して2次配合物を得た。その後、160℃で20分間キュアリング工程を経てゴム試験片を製造した。
【0180】
2)引張特性
引張特性は、ASTM412の引張試験法に準じて各試験片を製造し、前記試験片の切断時における引張強度および300%伸び時の引張応力(300%モジュラス)を測定した。具体的に、引張特性は、Universal Test Machin 4204(Instron社製)引張試験機を用いて、室温で50cm/minの速度で測定した。
【0181】
3)粘弾性特性
粘弾性特性は、動的機械分析機(GABO社製)を用いて、Film Tensionモードで、周波数10Hz、各測定温度(−60℃〜60℃)で動的変形に対する粘弾性挙動を測定し、tanδ値を確認した。結果値において、低温0℃でのtanδ値が高いほど、ウェットグリップ性に優れることを意味し、高温60℃でのtanδ値が低いほど、ヒステリシス損が少なく、低走行抵抗性(燃費性)に優れることを意味する。
【0182】
4)加工性特性
前記1)ゴム試験片の製造時に得られた2次配合物のムーニー粘度(MV、(ML1+4、@100℃)MU)を測定し、各重合体の加工性特性を比較分析した。この際、ムーニー粘度の測定値が低いほど、加工性特性に優れることを意味する。
【0183】
具体的に、MV−2000(ALPHA Technologies社製)により、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを使用し、各2次配合物は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて4分間測定した。
【0184】
【表4】
【0185】
前記表4において、実施例1〜実施例4、比較例1および比較例4〜6、ならびに参照例1および2の粘弾性特性の結果値は、比較例2の測定値を基準として指数化(%)して示した。
【0186】
【表5】
【0187】
前記表5において、実施例5〜実施例7の結果値は、比較例3の測定値を基準として指数化(%)して示した。
【0188】
前記表4および表5に示されたように、本発明の一実施形態に係る実施例1〜実施例7が、比較例1〜比較例6に比べて引張特性、粘弾性特性、および加工性特性が改善されたことを確認した。
【0189】
一方、粘弾性特性において、通常、0℃でのtanδ値が向上するとともに、60℃でのtanδ値が改善される特性を有することは非常に難しいと知られている。したがって、比較例1〜比較例6に比べて0℃でのtanδ値は同等以上の優れた水準を示すとともに、60℃でのtanδ値が著しく改善される効果を示す実施例1〜実施例7は、非常に優れた粘弾性特性を有することを確認することができる。
【0190】
また、前記表4に示されたように、参照例1および2のように、回分式重合により製造されたが、単峰形の分子量分布曲線を有する場合には、回分式重合の固有の劣悪な加工性が改善されないだけでなく、回分式重合で実現され得る優れた配合物性も実現されないことを確認した。ここで、回分式重合の固有の劣悪な加工性は、通常の回分式重合により製造されて二峰形の分子量分布曲線を有する比較例1の結果から確認することができる。
図1
図2
図3
図4
図5