特許第6793919号(P6793919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793919
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】水田作業車
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   A01C11/02 330A
   A01C11/02 334G
   A01C11/02 320R
   A01C11/02 322C
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-217858(P2016-217858)
(22)【出願日】2016年11月8日
(65)【公開番号】特開2018-74922(P2018-74922A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100206106
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 修
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勇介
(72)【発明者】
【氏名】石川 昌範
(72)【発明者】
【氏名】土江 昌嗣
(72)【発明者】
【氏名】松川 雅彦
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−201512(JP,A)
【文献】 特開2014−158424(JP,A)
【文献】 特開昭59−106205(JP,A)
【文献】 特開平07−213117(JP,A)
【文献】 実開昭58−161712(JP,U)
【文献】 実開昭58−075515(JP,U)
【文献】 実開昭55−160109(JP,U)
【文献】 特開2003−143904(JP,A)
【文献】 特開平07−227114(JP,A)
【文献】 実公昭63−037773(JP,Y1)
【文献】 実開昭53−132819(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 63/00−63/32
A01C 11/00−11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に昇降リンク機構を介して作業機を連結し、前記作業機を昇降させる作業機用油圧昇降装置と
車輪を走行機体本体に対して相対上下移動させて走行機体の前後傾斜角度を変更可能とする車輪昇降装置を備えた水田作業車において、
前記作業機用油圧昇降装置は、
前記作業機を昇降させる作業機用油圧アクチュエータと、
前記作業機用油圧アクチュエータを動作させる作業機用油圧バルブと、
前記作業機用油圧バルブを操作する作業機用昇降操作具と、
を備え
記車輪昇降装置は、後輪を支持するリヤアクスルケースを昇降させるリヤアクスル用油圧昇降装置からなり、
前記リヤアクスル用油圧昇降装置は、
前記リヤアクスルケースを昇降させるリヤアクスル用油圧アクチュエータと、
前記リヤアクスル用油圧アクチュエータを動作させるリヤアクスル用油圧バルブと、
前記リヤアクスル用油圧バルブを操作するリヤアクスル用昇降操作具と、
を備え、
前記リヤアクスル用昇降操作具及び前記作業機用昇降操作具は前記走行機体の運転席の左右いずれか一側方に隣接して配置されるとともに、その下方に前記リヤアクスル用油圧バルブ及び前記作業機用油圧バルブが集中配置されたものであり、
前記リヤアクスルケース及び前記作業機の昇降姿勢には、作業に適した作業用姿勢が含まれ、
前記走行機体は、前記作業機が作業用姿勢のとき、前記リヤアクスルケースの作業用姿勢からの姿勢変更を牽制する牽制手段を備える
ことを特徴とする水田作業車。
【請求項2】
前記牽制手段は、前記昇降リンク機構の昇降に連動して、前記リヤアクスル用昇降操作具の操作軌跡に対して進退する牽制部材を備え、該牽制部材による前記リヤアクスル用昇降操作具の操作規制に基づいて、前記作業機が作業用姿勢のとき、前記リヤアクスルケースの作業用姿勢からの姿勢変更を牽制することを特徴とする請求項1に記載の水田作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機などの水田作業車の車輪昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リヤアクスルケースの後輪支持部を走行機体本体に対して昇降可能にした水田作業車が知られている。例えば、特許文献1、2には、リヤアクスルケースのファイナルケースを走行機体本体に対して昇降可能にした乗用田植機(乗用管理機)が開示されている。このような水田作業車によれば、リヤアクスルケースの昇降動作に基づいて、走行機体の前後傾斜角や車高を調節できるので、中山間地における傾斜地の走行性や畦等の障害の乗り越えが容易になるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭63−37773号公報
【特許文献2】特開2014−158424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の水田作業車は、既存の乗用田植機をベースとし、リヤアクスル用油圧昇降機構などを追加することで実現可能と考えられるが、リヤアクスル用油圧昇降機構には、リヤアクスルケースを昇降させるリヤアクスル用油圧アクチュエータ、該リヤアクスル用油圧アクチュエータを動作させるリヤアクスル用油圧バルブ、該リヤアクスル用油圧バルブを操作するリヤアクスル用昇降操作具などが含まれるため、これらの配置スペースを確保する必要があるだけでなく、油圧構成が複雑になり、製造コストの上昇やメンテナンス性の低下が懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、走行機体の後部に昇降リンク機構を介して作業機を連結し、前記作業機を昇降させる作業機用油圧昇降装置と、車輪を走行機体本体に対して相対上下移動させて走行機体の前後傾斜角度を変更可能とする車輪昇降装置を備えた水田作業車において、前記作業機用油圧昇降装置は、前記作業機を昇降させる作業機用油圧アクチュエータと、前記作業機用油圧アクチュエータを動作させる作業機用油圧バルブと、前記作業機用油圧バルブを操作する作業機用昇降操作具と、を備え、前記車輪昇降装置は、後輪を支持するリヤアクスルケースを昇降させるリヤアクスル用油圧昇降装置からなり、前記リヤアクスル用油圧昇降装置は、前記リヤアクスルケースを昇降させるリヤアクスル用油圧アクチュエータと、前記リヤアクスル用油圧アクチュエータを動作させるリヤアクスル用油圧バルブと、前記リヤアクスル用油圧バルブを操作するリヤアクスル用昇降操作具と、を備え、前記リヤアクスル用昇降操作具及び前記作業機用昇降操作具は前記走行機体の運転席の左右いずれか一側方に隣接して配置されるとともに、その下方に前記リヤアクスル用油圧バルブ及び前記作業機用油圧バルブが集中配置されたものであり、前記リヤアクスルケース及び前記作業機の昇降姿勢には、作業に適した作業用姿勢が含まれ、前記走行機体は、前記作業機が作業用姿勢のとき、前記リヤアクスルケースの作業用姿勢からの姿勢変更を牽制する牽制手段を備えることを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の水田作業車であって、前記牽制手段は、前記昇降リンク機構の昇降に連動して、前記リヤアクスル用昇降操作具の操作軌跡に対して進退する牽制部材を備え、該牽制部材による前記リヤアクスル用昇降操作具の操作規制に基づいて、前記作業機が作業用姿勢のとき、前記リヤアクスルケースの作業用姿勢からの姿勢変更を牽制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、運転席の左右いずれか一側方にリヤアクスル用昇降操作具及び作業機用昇降操作具が集中配置されるとともに、その下方にリヤアクスル用油圧バルブ及び作業機用油圧バルブが集中配置されているので、リヤアクスル用油圧昇降装置及び作業機用油圧昇降装置の配置が容易になるだけでなく、集中配置による油圧配管の簡略化により、製造コストの削減やメンテナンス性の向上が図れる。また、運転席の左右いずれか一側方への集中配置により、両手によるリヤアクスル用昇降操作具と作業機用昇降操作具との同時操作が抑制されるので、リヤアクスル用油圧アクチュエータと作業機用油圧アクチュエータとの同時動作に起因する動作不良や故障の発生を防止できる。
さらに、作業機が作業用姿勢(例えば、下降姿勢)のとき、リヤアクスルケースの作業用姿勢(例えば、最上昇姿勢)からの姿勢変更を牽制する牽制手段を備えるので、作業中におけるリヤアクスル用昇降操作具の誤操作で作業精度が低下することを防止できる。
また、請求項3の発明によれば、牽制手段を機械的に構成できるので、信頼性の高い牽制手段が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る乗用田植機のリヤアクスルケースを示す要部側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の油圧構成を示す油圧回路図である。
図5】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の油圧構成を示す要部側面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の油圧構成を示す要部背面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の操作レバー類を示す要部斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の牽制機構を示す要部側面図であり、(A)は牽制状態を示す要部側面図、(B)は牽制解除状態を示す要部側面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の制御構成を示すブロック図である。
図10】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の報知・警報制御の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1は中山間地仕様の乗用田植機(水田作業車)であって、該乗用田植機1は、走行機体2と、該走行機体2の後部に昇降リンク機構3を介して連結される植付作業機4と、を備える。なお、本実施形態の乗用田植機1は、植付作業機4に代えて播種作業機、施肥作業機、薬剤散布作業機、溝切り作業機などの各種の作業機を連結することにより、様々な作業に兼用可能な乗用管理機として使用できる。
【0009】
走行機体2は、機体フレーム5(走行機体本体)と、機体前部に搭載されるエンジン6(図4参照)と、エンジン6の動力を無段変速装置7(図4参照)を介して入力するミッションケース8と、前輪9を操舵可能に支持し、且つミッションケース8から伝動される動力で前輪9を駆動させるフロントアクスルケース(図示せず)と、後輪10を支持し、且つミッションケース8から伝動される動力で後輪10を駆動させるリヤアクスルケース11と、を備える。
【0010】
なお、本実施形態の無段変速装置7は、可変容量油圧ポンプと油圧モータとの組み合わせで油圧的に無段変速を実現する静油圧式無段変速装置(HST)であるが、機械的に無段変速を実現するベルト式無段変速装置(CVT)であってもよい。
【0011】
図3に示すように、リヤアクスルケース11は、機体フレーム5に左右方向に沿って取り付けられるセンターケース11aと、センターケース11aの左右両端部から下後方に延出し、その先端側で後輪10を支持する左右のファイナルケース11b(後輪支持部)と、左右のファイナルケース11bを連結する連結部材11c(図6参照)と、を備える。ミッションケース8から伝動される動力は、センターケース11aの左右中間部からセンターケース11a内に入力され、センターケース11a及びファイナルケース11bに内装される伝動機構を介して左右の後輪10に伝動される。
【0012】
左右のファイナルケース11bは、センターケース11aを中心とする上下回動に基づき、機体フレーム5に対して相対的に昇降可能に構成されている。このような乗用田植機1によれば、リヤアクスルケース11の一部であるファイナルケース11bの昇降動作(以下、単にリヤアクスルケース11の昇降動作という。)に基づいて、走行機体2の前後傾斜角や車高を調節できるので、中山間地における傾斜地の走行性や畦等の障害の乗り越えが容易になる。
【0013】
図4に示すように、走行機体2には、油圧構成として、エンジン6の動力を無段変速する無段変速装置7と、エンジン6の動力で駆動される油圧ポンプ12と、油圧ポンプ12から圧送される作動油で前輪9を操舵させるトルクジェネレータ13と、トルクジェネレータ13を介して油圧ポンプ12から圧送される作動油を分流させる分流弁14と、分流弁14で分流される一方の流路に設けられる作業機用油圧昇降装置15と、分流弁14で分流される他方の流路に設けられるリヤアクスル用油圧昇降装置16(車輪昇降装置)と、トルクジェネレータ13と分流弁14との間の流路に設けられるリリーフ弁17と、を備える。
【0014】
なお、本実施形態の乗用田植機1では、作業機用油圧昇降装置15とリヤアクスル用油圧昇降装置16とを個別に動作させることを前提として油圧ポンプ12の容量が設定されている。換言すると、作業中には走行機体2の前後傾斜を変更しないことを前提に、油圧容量を抑えた構成としており、走行機体2の小型化に寄与している。
【0015】
作業機用油圧昇降装置15は、植付作業機4を昇降させる作業機用油圧シリンダ18(作業機用油圧アクチュエータ)と、作業機用油圧シリンダ18を動作させる作業機用油圧バルブ19と、作業機用油圧バルブ19を操作する作業機用昇降操作レバー20(作業機用昇降操作具)と、を備える。作業機用油圧シリンダ18は、機体フレーム5と昇降リンク機構3との間に設けられ、その縮小動作に基づいて植付作業機4を上昇させる一方、その伸長動作に基づいて植付作業機4を下降させる。
【0016】
なお、本実施形態の作業機用油圧バルブ19は、図示しないリンク機構を介して植付作業機4の感知フロート4aに連結されており、作業機用昇降操作レバー20が植付作業位置(下降位置)に操作されているとき、感知フロート4aの上下動に応じて植付作業機4を自動的に昇降させる作業機自動昇降制御機構を構成している。また、本実施形態の作業機用昇降操作レバー20は、植付作業機4への動力伝動を入り切りする作業クラッチ(図示せず)の操作具に兼用されている。つまり、作業機用昇降操作レバー20を植付作業位置まで下降操作すると、作業クラッチが入り状態となり、作業機用昇降操作レバー20を植付作業位置から上昇操作すると、作業クラッチが切り状態となる。
【0017】
リヤアクスル用油圧昇降装置16は、リヤアクスルケース11(ファイナルケース11b)を昇降させるリヤアクスル用油圧シリンダ21(リヤアクスル用油圧アクチュエータ)と、リヤアクスル用油圧シリンダ21を動作させるリヤアクスル用油圧バルブ22と、リヤアクスル用油圧バルブ22を操作するリヤアクスル用昇降操作レバー23(リヤアクスル用昇降操作具)と、を備える。リヤアクスル用油圧シリンダ21は、機体フレーム5と連結部材11cとの間に設けられ、その縮小動作に基づいてリヤアクスルケース11を上昇させる一方、その伸長動作に基づいてリヤアクスルケース11を下降させる。
【0018】
そして、リヤアクスル用油圧シリンダ21が最も縮小した状態である状態をリヤアクスルケース11の最上昇姿勢としており、リヤアクスル用油圧シリンダ11内のピストンとシリンダの縮小側での接当によりこの最上昇姿勢は維持される。本実施形態の乗用田植機1では、植付作業を行う場合、リヤアクスルケース11を最上昇姿勢とし、且つ植付作業機4を作業用姿勢である下降姿勢(自動昇降制御位置)とすることにより、油圧揚力に頼らない機械的な接当で走行機体2の作業用姿勢を維持し、植付作業時の機体姿勢を安定的に保持することを可能としている。
【0019】
図1及び図2に示すように、乗用田植機1は、走行機体2上に操作部24を備える。操作部24には、オペレータが座る運転席25が設けられるとともに、その周囲には、前輪9を操舵するステアリングハンドル26、エンジン6の回転数を設定するエンジンコントロールレバー27、無段変速装置7を変速操作する主変速レバー28、走行ブレーキ装置(図示せず)を操作するブレーキペダル29、植付作業機4を昇降操作する前述の作業機用昇降操作レバー20、リヤアクスルケース11を昇降操作する前述のリヤアクスル用昇降操作レバー23、作業機自動昇降制御機構の油圧感度を調節する油圧感度調節レバー30などの操作具が配置されている。
【0020】
作業機用昇降操作レバー20は、前後方向に操作され、且つ手を離しても操作位置が保持される非中立復帰式の操作レバーであり、前方操作に応じて植付作業機4の下降動作が行われ、後方操作に応じて植付作業機4の上昇動作が行われる。
【0021】
リヤアクスル用昇降操作レバー23は、前後方向に操作され、且つ手を離すと自動的に中立位置に復帰する自動中立復帰式の操作レバーであり、前方操作をしている間リヤアクスルケース11の上昇動作(車高下げ動作)が行われ、後方操作をしている間リヤアクスルケース11の下降動作(車高上げ動作)が行われる。
【0022】
図5図7に示すように、作業機用昇降操作レバー20及びリヤアクスル用昇降操作レバー23は、運転席25の左右いずれか一側方(本実施形態では右側方)に集中配置されている。具体的には、運転席25の右側方に作業機用昇降操作レバー20が前後操作可能に配置され、作業機用昇降操作レバー20の後方に油圧感度調節レバー30が前後操作可能に配置され、油圧感度調節レバー30の外側方にリヤアクスル用昇降操作レバー23が前後操作可能に配置されている。このような配置構成によれば、レバー類の配置スペースをコンパクト化できるだけでなく、作業機用昇降操作レバー20とリヤアクスル用昇降操作レバー23との同時操作を抑制できるので、作業機用油圧シリンダ18とリヤアクスル用油圧シリンダ21との同時動作に起因する動作不良や故障の発生を防止できる。
【0023】
また、作業機用昇降操作レバー20及びリヤアクスル用昇降操作レバー23の下方には、作業機用昇降操作レバー20及びリヤアクスル用昇降操作レバー23と機械的に接続された状態で作業機用油圧バルブ19及びリヤアクスル用油圧バルブ22が集中配置されている。このような配置構成によれば、作業機用油圧昇降装置15及びリヤアクスル用油圧昇降装置16をコンパクトに配置できるだけでなく、集中配置による油圧配管の簡略化により、製造コストの削減やメンテナンス性の向上が図れる。
【0024】
走行機体の前後傾斜角を変更できる乗用田植機では、植付作業中に走行機体の前後傾斜角が変更されてしまうと植付作業機の対地前後姿勢が変化してしまい植付作業精度が低下するという問題があり、本実施形態の乗用田植機1においても植付作業中におけるリヤアクスル用昇降操作レバー23の誤操作に基づいてリヤアクスルケース11が昇降動作した場合同様の問題が生じる。
【0025】
そこで、本実施形態の乗用田植機1には、植付作業機4が作業用姿勢(下降姿勢)のとき、リヤアクスルケース11の作業用姿勢(最上昇姿勢)からの姿勢変更を牽制する牽制機構31(牽制手段)が設けられている。本実施形態の牽制機構31は、図8に示すように、昇降リンク機構3の昇降に連動して、リヤアクスル用昇降操作レバー23の操作軌跡に対して進退する牽制部材32を備えた機械式であり、該牽制部材32によるリヤアクスル用昇降操作レバー23の操作規制に基づいて、植付作業機4が作業用姿勢のとき、リヤアクスルケース11の作業用姿勢からの姿勢変更を牽制するように構成されている。以下、リヤアクスル用昇降操作レバー23の中立復帰機構33及び牽制機構31について、図5及び図8を参照して詳細に説明する。
【0026】
図5及び図8に示すように、運転席25の右側下方には、リヤアクスル用油圧バルブ22を支持するバルブブラケット34が設けられている。バルブブラケット34の前端部には、レバーブラケット35が立設されており、その先端側で、且つリヤアクスル用油圧バルブ22の上方位置に、リヤアクスル用昇降操作レバー23を前後操作可能に支持するレバー支軸36が設けられている。
【0027】
リヤアクスル用昇降操作レバー23は、レバー支軸36を支点として前後回動するプレート部23aと、プレート部23aの上端から上方に延出するレバー操作部23bと、を一体に備える。プレート部23aの下端部には、上下方向に沿う長孔23cが形成されている。この長孔23cは、リヤアクスル用油圧バルブ22の作動レバー22aに設けられるピン22bに係合しており、リヤアクスル用昇降操作レバー23の前後操作に応じて作動レバー22aを背反方向に回動させることにより、リヤアクスル用油圧バルブ22を切り換える。
【0028】
リヤアクスル用昇降操作レバー23の中立復帰機構33は、レバー支軸36を支点として前後回動自在な前後一対の中立復帰アーム37、38と、中立復帰アーム37、38の先端部同士を互いに引き寄せる方向に付勢するスプリング39と、プレート部23aから前後の中立復帰アーム37、38間に突出する第1ピン40と、レバーブラケット35からプレート部23aの長孔23dを介して前後の中立復帰アーム37、38間に突出する第2ピン41と、を備える。なお、プレート部23aの長孔23dは、リヤアクスル用昇降操作レバー23の操作方向に沿うように形成されている。
【0029】
図8の(A)に示すように、リヤアクスル用昇降操作レバー23が中立位置のときは、第1ピン40及び第2ピン41が前後の中立復帰アーム37、38間に挟まれ、上下に並んでいる。図8の(B)に示すように、リヤアクスル用昇降操作レバー23が中立位置から前後方向に操作されると、第1ピン40がリヤアクスル用昇降操作レバー23と一体的に前後方向に移動して中立復帰アーム37、38の一方を回動させる一方、第2ピン41が中立復帰アーム37、38の他方を回動規制する。このため、前後方向に操作したリヤアクスル用昇降操作レバー23から手を離すと、スプリング39の付勢力で中立復帰アーム37、38の一方が第1ピン40を中立方向に押圧し、リヤアクスル用昇降操作レバー23を中立復帰させる。
【0030】
牽制機構31は、左右方向に沿ってバルブブラケット34に回動可能に支持される第1回動軸42と、第1回動軸42から後方に延出し、植付作業機4の上昇動作時に昇降リンク機構3の当接部3aに押されて上方に回動する第1アーム部材43と、第1回動軸42から前方に延出し、第1アーム部材43と一体的に回動する第2アーム部材44と、左右方向に沿ってレバーブラケット35に回動可能に支持される第2回動軸45と、第2回動軸45から前方に延出し、ロッド46を介して第2アーム部材44と連結される第3アーム部材47と、レバーブラケット35と第3アーム部材47との間に設けられ、第3アーム部材47を上方に付勢するスプリング48と、第2回動軸45から上方に延出し、第3アーム部材47と一体的に回動する第4アーム部材49と、前述した牽制部材32と、を備える。なお、上記の当接部3aは、昇降リンク機構3のロアリンク3bに溶着された板材であり、植付作業機4が上昇端近傍にあるとき、第1アーム部材43を上方に回動させるように配置されている。
【0031】
牽制部材32は、冂字状のスライド支持部材35aを介してレバーブラケット35に前後スライド可能に支持されており、その前端部が第4アーム部材49に係合されている。つまり、昇降リンク機構3が上昇以外の位置にあるときは、図8の(A)に示すように、スプリング48の付勢力で第4アーム部材49が後方に回動し、牽制部材32を後方にスライドさせた位置に保持する一方、昇降リンク機構3が上昇位置にあるときは、図8の(B)に示すように、第1アーム部材43が昇降リンク機構3に押されて上方に回動するのに伴い、第4アーム部材49が前方に回動し、牽制部材32を前方にスライドさせる。
【0032】
リヤアクスル用昇降操作レバー23のプレート部23aには、前方に延出するストッパ部23eが形成されている。図8の(A)に示すように、ストッパ部23eは、リヤアクスル用昇降操作レバー23が中立位置で、且つ牽制部材32が後方にスライドした位置にあるとき、牽制部材32の後端部に下方から当接することで、リヤアクスル用昇降操作レバー23の後方への操作を規制する。これにより、植付作業機4が上昇以外の位置にあるとき、言い換えると、植付作業機4が作業用姿勢である下降位置にある可能性があるとき、リヤアクスル用昇降操作レバー23のリヤアクスルケース11を下降させる側の操作(車高上げ側の操作)を牽制することが可能になる。
【0033】
図9に示すように、乗用田植機1には、マイコンなどを用いて構成される制御部50が設けられている。制御部50の入力側には、リヤアクスルケース11の昇降姿勢が作業用姿勢(最上昇姿勢)であるか否かを検出するリヤアクスル上昇検出スイッチ51(作業用姿勢検出手段)と、作業機用昇降操作レバー20の植付作業位置(下降位置)への下降操作に基づいて、植付作業機4の作業開始操作を検出する作業機下降操作検出スイッチ52(作業開始操作検出手段)と、が接続される一方、出力側には、報知ブザーや報知ランプによって報知を行う報知部53と、警報ブザーや警報ランプによって警報を発する警報部54と、が接続されている。
【0034】
本実施形態のリヤアクスル上昇検出スイッチ51は、図3に示すように、左右少なくとも一方のファイナルケース11bの基端側上方に位置するように機体フレーム5側に設けられ、ファイナルケース11bが作業用姿勢である最上昇位置まで上昇したとき、ファイナルケース11bと接触して検出状態(ON状態)となる接触式の検出スイッチで構成されている。
【0035】
また、本実施形態の作業機下降操作検出スイッチ52は、図7に示すように、作業機用昇降操作レバー20の操作軌跡上に配置され、作業機用昇降操作レバー20が植付作業位置まで下降操作されたとき、作業機用昇降操作レバー20の基端部と接触して検出状態(ON状態)となる接触式の検出スイッチで構成されている。なお、植付作業機4の作業開始操作は、作業機用昇降操作レバー20が植付作業位置まで下降操作されたときだけでなく、植付クラッチの入り操作に基づいて検出するようにしてもよい。
【0036】
制御部50は、リヤアクスル上昇検出スイッチ51の検出信号に基づいて、リヤアクスルケース11の昇降姿勢が作業用姿勢(最上昇姿勢)であるか否かを判断し(図10のステップS1)、これが肯定された場合(図10のステップS1:ON)、リヤアクスルケース11の昇降姿勢が作業用姿勢であることを報知(図10のステップS2)する報知手段として機能する。このような報知手段によれば、リヤアクスルケース11の作業用姿勢を容易に確認できるだけでなく、リヤアクスルケース11の作業用姿勢の誤認に起因する作業精度の低下を防止できる。
【0037】
また、制御部50は、リヤアクスル上昇検出スイッチ51及び作業機下降操作検出スイッチ52の検出信号に基づいて、リヤアクスルケース11の昇降姿勢が作業用姿勢以外の状態で(図10のステップS1:OFF)、作業機用昇降操作レバー20が作業位置に操作されたか否かを判断し(図10のステップS3)、これが肯定された場合(図10ステップS3:ON)、所定の警報(図10のステップS4)を発する警報手段として機能する。このような警報手段によれば、リヤアクスルケース11が作業用姿勢以外の状態で作業が行われることを確実に防止できる。
【0038】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、走行機体2の後部に昇降リンク機構3を介して植付作業機4を連結して構成される乗用田植機1であって、走行機体2は、オペレータが座る運転席25と、後輪10を支持し、且つ後輪支持部であるファイナルケース11bが機体フレーム5に対して相対的に昇降可能なリヤアクスルケース11と、リヤアクスルケース11を昇降させるリヤアクスル用油圧昇降装置16と、植付作業機4を昇降させる作業機用油圧昇降装置15と、を備え、リヤアクスル用油圧昇降装置16は、リヤアクスルケース11を昇降させるリヤアクスル用油圧シリンダ21と、リヤアクスル用油圧シリンダ21を動作させるリヤアクスル用油圧バルブ22と、リヤアクスル用油圧バルブ22を操作するリヤアクスル用昇降操作レバー23と、を備え、作業機用油圧昇降装置15は、植付作業機4を昇降させる作業機用油圧シリンダ18と、作業機用油圧シリンダ18を動作させる作業機用油圧バルブ19と、作業機用油圧バルブ19を操作する作業機用昇降操作レバー20と、を備え、運転席25の左右いずれか一側方にリヤアクスル用昇降操作レバー23及び作業機用昇降操作レバー20が集中配置されるとともに、その下方にリヤアクスル用油圧バルブ22及び作業機用油圧バルブ19が集中配置されているので、リヤアクスル用油圧昇降装置16及び作業機用油圧昇降装置15の配置が容易になるだけでなく、集中配置による油圧配管の簡略化により、製造コストの削減やメンテナンス性の向上が図れる。また、運転席25の左右いずれか一側方への集中配置により、リヤアクスル用昇降操作レバー23と作業機用昇降操作レバー20との同時操作が抑制されるので、リヤアクスル用油圧シリンダ21と作業機用油圧シリンダ18との同時動作に起因する動作不良や故障の発生を防止できる。
【0039】
また、リヤアクスルケース11及び植付作業機4の昇降姿勢には、作業に適した作業用姿勢が含まれ、走行機体2は、植付作業機4が作業用姿勢のとき、リヤアクスルケース11の作業用姿勢からの姿勢変更を牽制する牽制機構31を備えるので、作業中におけるリヤアクスル用昇降操作レバー23の誤操作で作業精度が低下することを防止できる。
【0040】
また、牽制機構31は、昇降リンク機構3の昇降に連動して、リヤアクスル用昇降操作レバー23の操作軌跡に対して進退する牽制部材32を備え、該牽制部材32によるリヤアクスル用昇降操作レバー23の操作規制に基づいて、植付作業機4が作業用姿勢のとき、リヤアクスルケース11の作業用姿勢からの姿勢変更を牽制するので、機械的に構成された信頼性の高い牽制機構31が得られる。
【符号の説明】
【0041】
1 乗用田植機
2 走行機体
3 昇降リンク機構
4 植付作業機
5 機体フレーム
10 後輪
11 リヤアクスルケース
15 作業機用油圧昇降装置
16 リヤアクスル用油圧昇降装置
18 作業機用油圧シリンダ
19 作業機用油圧バルブ
20 作業機用昇降操作レバー
21 リヤアクスル用油圧シリンダ
22 リヤアクスル用油圧バルブ
23 リヤアクスル用昇降操作レバー
25 運転席
31 牽制機構
32 牽制部材
50 制御部
51 リヤアクスル上昇検出スイッチ
52 作業機下降操作検出スイッチ
53 報知部
54 警報部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10