(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、新規な構造を有し、表面張力低下能が改善されたカチオン性ジェミニ型界面活性剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、カチオン性ジェミニ型界面活性剤について鋭意検討を重ねた結果、新規な構造を有し、表面張力低下能が改善されたカチオン性ジェミニ型界面活性剤を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下に示す実施態様を含むものである。
【0008】
[1]下記式(1)で示されるカチオン性ジェミニ型界面活性剤。
【0009】
【化1】
【0010】
[上記式(1)中、R
1〜R
5は各々独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。R
6及びR
7は各々独立して、炭素数6〜20のアルキル基、炭素数6〜20のヒドロキシアルキル基、炭素数6〜20のハロゲン化アルキル基、又は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。mは1又は2である。A
−はカウンターイオンを表す。また、上記式(1)で示される化合物に光学活性体、ジアステレオマー、幾何異性体が存在する場合は、それぞれの混合物及びそれらが単離された異性体の双方を包含する。]
[2]式(1)において、R
1〜R
5が全て水素原子であることを特徴とする上記[1]に記載のカチオン性ジェミニ型界面活性剤。
【0011】
[3]式(1)において、mが1であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のカチオン性ジェミニ型界面活性剤。
【0012】
[4]式(1)において、R
6及びR
7が各々独立して、炭素数6〜16のアルキル基を表すことを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のカチオン性ジェミニ型界面活性剤。
【0013】
[5]式(1)において、R
6及びR
7が各々独立して、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシイコシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルブチル基、フェニルヘキシル基、フェニルオクチル基、フェニルデシル基、フェニルドデシル基、フェニルテトラデシル基、及びそれらの構造異性体からなる群より選択されることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のカチオン性ジェミニ型界面活性剤。
【0014】
[6]式(1)において、R
6及びR
7が各々独立して、ドデシル基及びその構造異性体からなる群より選択されることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のカチオン性ジェミニ型界面活性剤。
【0015】
[7]式(1)において、A
−が、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、又はヨウ素イオンを表すことを特徴とする上記[1]乃至[6]のいずれかに記載のカチオン性ジェミニ型界面活性剤。
【0016】
[8]下記式(2)
【0017】
【化2】
【0018】
[上記式(2)中、R
1〜R
5は各々独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。mは1又は2である。]
で示される3級アミン化合物と、下記式(3)
【0019】
【化3】
【0020】
[上記式(3)中、Rは、炭素数6〜20のアルキル基、炭素数6〜20のヒドロキシアルキル基、炭素数6〜20のハロゲン化アルキル基、又は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子を表す。]
で示されるハロゲン化炭化水素化合物から選ばれる1種又は2種の化合物とを反応させることを特徴とする上記[1]乃至[7]のいずれかに記載のカチオン性ジェミニ型界面活性剤の製造方法。
【0021】
[9]式(2)において、R
1〜R
5が全て水素原子であることを特徴とする上記[8]に記載の製造方法。
【0022】
[10]式(2)において、mが1であることを特徴とする上記[8]又は[9]に記載の製造方法。
【0023】
[11]式(3)において、Rが、炭素数6〜16のアルキル基を表すことを特徴とする上記[8]乃至[10]のいずれかに記載の製造方法。
【0024】
[12]式(3)において、Rが、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシイコシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルブチル基、フェニルヘキシル基、フェニルオクチル基、フェニルデシル基、フェニルドデシル基、フェニルテトラデシル基、及びそれらの構造異性体からなる群より選択されることを特徴とする上記[8]乃至[10]のいずれかに記載の製造方法。
【0025】
[13]式(3)において、Rが、ドデシル基及びその構造異性体からなる群より選択されることを特徴とする上記[8]乃至[10]のいずれかに記載の製造方法。
【0026】
[14]式(3)で示されるハロゲン化炭化水素化合物が、クロロヘキサン、クロロオクタン、クロロデカン、クロロドデカン、クロロテトラデカン、クロロヘキサデカン、クロロイコサン、1−クロロ−6,6,6−トリフルオロヘキサン、1−クロロ−8,8,8−トリフルオロオクタン、1−クロロ−10,10,10−トリフルオロデカン、1−クロロ−12,12,12−トリフルオロドデカン、1−クロロ−16,16,16−トリフルオロヘキサデカン、1−クロロ−20,20,20−トリフルオロイコサン、1−クロロ−4−パーフルオロエチルブタン、1−クロロ−6−パーフルオロエチルヘキサン、1−クロロ−8−パーフルオロエチルオクタン、1−クロロ−10−パーフルオロエチルデカン、1−クロロ−12−パーフルオロエチルドデカン、1−クロロ−16−パーフルオロエチルヘキサデカン、1−クロロ−18−パーフルオロエチルオクタデカン、1−クロロ−2−パーフルオロブチルエタン、1−クロロ−3−パーフルオロブチルプロパン、1−クロロ−4−パーフルオロブチルブタン、1−クロロ−6−パーフルオロブチルヘキサン、1−クロロ−8−パーフルオロブチルオクタン、1−クロロ−10−パーフルオロブチルデカン、1−クロロ−12−パーフルオロブチルドデカン、1−クロロ−16−パーフルオロブチルヘキサデカン、1−クロロ−1−パーフルオロヘキシルメタン、1−クロロ−2−パーフルオロヘキシルエタン、1−クロロ−3−パーフルオロヘキシルプロパン、1−クロロ−4−パーフルオロヘキシルブタン、1−クロロ−6−パーフルオロヘキシルヘキサン、1−クロロ−8−パーフルオロヘキシルオクタン、1−クロロ−10−パーフルオロヘキシルデカン、1−クロロ−12−パーフルオロヘキシルドデカン、1−クロロ−16−パーフルオロヘキシルテトラデカン、1−クロロ−1−パーフルオロオクチルメタン、1−クロロ−2−パーフルオロオクチルエタン、1−クロロ−3−パーフルオロオクチルプロパン、1−クロロ−4−パーフルオロオクチルブタン、1−クロロ−6−パーフルオロオクチルヘキサン、1−クロロ−8−パーフルオロオクチルオクタン、1−クロロ−10−パーフルオロオクチルデカン、1−クロロ−12−パーフルオロオクチルドデカン、クロロベンゼン、ベンジルクロリド、ナフチルメチルクロリド、アントラセニルメチルクロリド、2−フルオロ−1−クロロベンゼン、2,4−ジフルオロ−1−クロロベンゼン、2,4,6−トリフルオロ−1−クロロベンゼン、ペンタフルオロ−1−クロロベンゼン、2−フルオロベンジルクロリド、2,4−ジフルオロベンジルクロリド、2,4,6−トリフルオロベンジルクロリド、ペンタフルオロベンジルクロリド、ジブロモヘキサン、ジクロロヘキサン、及びそれらの構造異性体からなる群より選択されることを特徴とする上記[8]乃至[13]のいずれかに記載の製造方法。
【0027】
[15]式(3)において、Xが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表すことを特徴とする上記[8]乃至[14]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明のカチオン性ジェミニ型界面活性剤は、改善された表面張力低下能を有する。本発明のカチオン性ジェミニ型界面活性剤がN,N’−ジドデシル−トリエチレンジアンモニウムジハライドと近い構造を有しながら、改善された表面張力低下能を示したことは予想外の知見である。
【0029】
本発明のカチオン性ジェミニ型界面活性剤は、洗浄剤組成物、分散剤組成物、殺菌剤組成物、乳化剤組成物、柔軟材組成物、表面処理剤組成物、及び帯電防止剤組成物の構成物質として使用可能であり、それらの組成物を含む洗浄剤、分散剤、殺菌剤、乳化剤、柔軟材、表面処理剤、帯電防止剤等として広範に使用されうる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明のカチオン性ジェミニ型界面活性剤は、上記式(1)で示される構造を有する。
【0032】
上記式(1)において、置換基R
1〜R
5はそれぞれ、上記の定義に該当すれば良く、特に限定するものではないが、例えば、水素原子、水酸基、ヒドロキシメチル基、炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)、炭素数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基)等を挙げることができる。これらのうち、製造の容易性の観点から、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシ基である。さらに、上記式(1)において、置換基R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5の全てが水素原子である化合物が特に好ましい。
【0033】
上記式(1)において、mは1又は2を表す。製造の容易性の観点から、mは1が好ましい。
【0034】
上記式(1)において、炭素数6〜20のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖状アルキル基、それらの分岐アルキル基、それらの環状アルキル基等が挙げられる。
【0035】
また、炭素数6〜20のヒドロキシアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、上記した炭素数6〜20のアルキル基中の炭化水素に水酸基が置換したものが挙げられる。
【0036】
また、炭素数6〜20のハロゲン化アルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、上記した炭素数6〜20のアルキル基中の炭化水素にハロゲン原子が置換したものが挙げられる。ハロゲン原子がフッ素原子である場合を例に説明すると、具体的には、フルオロヘキシル基、ジフルオロヘキシル基、トリフルオロヘキシル基からパーフルオロイコシル基等の直鎖状ハロゲン化アルキル基、それらの分岐状ハロゲン化アルキル基、それらの環状ハロゲン化アルキル基等が例示される。
【0037】
また、炭素数6〜20の芳香族炭化水素としては、特に限定するものではないが、例えば、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルビニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、それらの位置異性体等が挙げられる。
【0038】
上記式(1)において、A
−で表されるカウンターイオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、水酸化物イオン、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲン化物イオン、硝酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0039】
上記式(1)において、A
−で表されるカウンターイオンは、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲン化物イオンから硝酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート等のカウンターイオンに交換してもよく、特に限定するものではないが、例えば、塩素イオンをギ酸イオンや酢酸イオンに交換することができる。
【0040】
上記式(1)において、A
−で表されるカウンターイオンは、2種以上を組み合わせてもよく、その場合の種類及び比率等に特に制限はなく、任意に変えることができる。
【0041】
ジェミニ型界面活性剤としての水溶性と臨界ミセル濃度(cmc)を考慮すると、上記式(1)中のR
6及びR
7としては、炭素数6〜16のアルキル基が好ましく、特に炭素数8〜14のアルキル基が好ましく、さらに炭素数12のアルキル基が好ましい。A
−としては、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンが好ましく、特に塩素イオン又は臭素イオンが好ましい。
【0042】
上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤は、例えば、以下の方法により製造することができる。すなわち、上記式(2)で示される3級アミン化合物と、上記式(3)で示されるハロゲン化炭化水素化合物とを反応させることにより、製造することができる。
この場合、上記式(2)で示される3級アミン化合物を、例えば、アセトン、アセトニトリル、トルエン等の有機溶媒又は水に溶解させ、当該ハロゲン化炭化水素化合物を添加して反応させることが好ましい。
【0043】
上記式(2)で示される3級アミン化合物の具体例としては、例えば、以下の例示化合物1〜15を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
上記式(2)で示される3級アミン化合物の製造方法は、特に限定するものではないが、例えば、ジヒドロキシアルキルピペラジン類の環化反応により製造することができる(例えば、特開2010−37325公報参照)。
【0046】
ここで、炭素数6〜20のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖状アルキル基、それらの分岐アルキル基、それらの環状アルキル基等が挙げられる。これらのうち、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が好ましく、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基がより好ましい。
【0047】
また、炭素数6〜20のヒドロキシアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、上記した炭素数6〜20のアルキル基中の炭化水素に水酸基が置換したものが挙げられる。
【0048】
また、炭素数6〜20のハロゲン化アルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、上記した炭素数6〜20のアルキル基中の炭化水素にハロゲン原子が置換したものが挙げられる。ハロゲン原子がフッ素原子である場合を例に説明すると、具体的には、フルオロヘキシル基、ジフルオロヘキシル基、トリフルオロヘキシル基からパーフルオロイコシル基等の直鎖状ハロゲン化アルキル基、それらの分岐状ハロゲン化アルキル基、それらの環状ハロゲン化アルキル基等が例示される。
【0049】
また、炭素数6〜20の芳香族炭化水素としては、特に限定するものではないが、例えば、フェニル基、ベンジル基、スチリル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルビニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、それらの位置異性体等が挙げられる。
【0050】
上記式(3)で示されるハロゲン化炭化水素化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、クロロヘキサン、クロロオクタン、クロロデカン、クロロドデカン、クロロテトラデカン、クロロヘキサデカン、クロロイコサン、1−クロロ−6,6,6−トリフルオロヘキサン、1−クロロ−8,8,8−トリフルオロオクタン、1−クロロ−10,10,10−トリフルオロデカン、1−クロロ−12,12,12−トリフルオロドデカン、1−クロロ−16,16,16−トリフルオロヘキサデカン、1−クロロ−20,20,20−トリフルオロイコサン、1−クロロ−4−パーフルオロエチルブタン、1−クロロ−6−パーフルオロエチルヘキサン、1−クロロ−8−パーフルオロエチルオクタン、1−クロロ−10−パーフルオロエチルデカン、1−クロロ−12−パーフルオロエチルドデカン、1−クロロ−16−パーフルオロエチルヘキサデカン、1−クロロ−18−パーフルオロエチルオクタデカン、1−クロロ−2−パーフルオロブチルエタン、1−クロロ−3−パーフルオロブチルプロパン、1−クロロ−4−パーフルオロブチルブタン、1−クロロ−6−パーフルオロブチルヘキサン、1−クロロ−8−パーフルオロブチルオクタン、1−クロロ−10−パーフルオロブチルデカン、1−クロロ−12−パーフルオロブチルドデカン、1−クロロ−16−パーフルオロブチルヘキサデカン、1−クロロ−1−パーフルオロヘキシルメタン、1−クロロ−2−パーフルオロヘキシルエタン、1−クロロ−3−パーフルオロヘキシルプロパン、1−クロロ−4−パーフルオロヘキシルブタン、1−クロロ−6−パーフルオロヘキシルヘキサン、1−クロロ−8−パーフルオロヘキシルオクタン、1−クロロ−10−パーフルオロヘキシルデカン、1−クロロ−12−パーフルオロヘキシルドデカン、1−クロロ−16−パーフルオロヘキシルテトラデカン、1−クロロ−1−パーフルオロオクチルメタン、1−クロロ−2−パーフルオロオクチルエタン、1−クロロ−3−パーフルオロオクチルプロパン、1−クロロ−4−パーフルオロオクチルブタン、1−クロロ−6−パーフルオロオクチルヘキサン、1−クロロ−8−パーフルオロオクチルオクタン、1−クロロ−10−パーフルオロオクチルデカン、1−クロロ−12−パーフルオロオクチルドデカン、クロロベンゼン、ベンジルクロリド、ナフチルメチルクロリド、アントラセニルメチルクロリド、2−フルオロ−1−クロロベンゼン、2,4−ジフルオロ−1−クロロベンゼン、2,4,6−トリフルオロ−1−クロロベンゼン、ペンタフルオロ−1−クロロベンゼン、2−フルオロベンジルクロリド、2,4−ジフルオロベンジルクロリド、2,4,6−トリフルオロベンジルクロリド、ペンタフルオロベンジルクロリド、ジブロモヘキサン、ジクロロヘキサン及びそれらの構造異性体等が挙げられる。
【0051】
ジェミニ型界面活性剤としての水溶性と臨界ミセル濃度(cmc)を考慮すると、上記式(3)中のRとしては、炭素数6〜16のアルキル基が好ましく、特に炭素数8〜14のアルキル基が好ましく、さらに炭素数12のアルキル基が好ましい。
【0052】
上記式(2)で示される3級アミン化合物と上記式(3)で示されるハロゲン化炭化水素化合物との反応は、室温から溶媒の沸点までの反応温度で実施することが好ましい。原料の沸点が溶媒の沸点より低い場合、公知の方法で還流操作により原料を反応液に戻すことができる。
【0053】
上記式(2)で示される3級アミン化合物を上記の有機溶媒や水に溶解させたところに上記式(3)で示されるハロゲン化炭化水素化合物を添加してもよく、上記式(3)で示されるハロゲン化炭化水素化合物を上記の有機溶媒や水に溶解させたところに上記式(1)で示される3級アミン化合物を添加してもよく、上記式(1)で示される3級アミン化合物、上記式(3)で示されるハロゲン化炭化水素化合物のそれぞれを上記の有機溶媒や水に溶解させて混合してもよく、特に限定されない。これらのうち、上記式(2)で示される3級アミン化合物を上記の有機溶媒や水に溶解させたところに上記式(3)で示されるハロゲン化炭化水素化合物を添加するのが好ましい。
【0054】
反応終了後、原料は洗浄、蒸留などの公知の方法で除去することができる。さらに、アセトンやアセトニトリル、トルエン、エーテル類、アルコール類等の有機溶媒や水等を用いて再結晶、晶析等の公知の方法で精製することができる。
【0055】
上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤は、例えば、洗浄剤組成物、分散剤組成物、殺菌剤組成物、乳化剤組成物、柔軟剤組成物、表面処理剤組成物、帯電防止剤組成物等の構成物質として使用可能であり、それらの組成物を含む洗浄剤、分散剤、殺菌剤、乳化剤、柔軟材、表面処理剤、帯電防止剤等として広範に使用することができる。
【0056】
上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤を含む洗浄剤組成物としては、例えば、
(a)上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤、
(b)ポリオキシアルキレンアミン、
(c)アルキルアミン、及び
(d)非イオン性界面活性剤
を含む洗浄剤組成物、
(a)上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤、
(b)アニオン界面活性剤、
(c)両性界面活性剤、及び
(d)多価アルコール
を含む洗浄剤組成物、さらには
(a)上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤、
(b)水溶性の金属塩、及び
(c)ポリエチレンイミン又はアルキルアミン
を含む洗浄剤組成物等が挙げられる。これら各成分の種類及び比率は特に限定されない。
【0057】
上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤を含む分散剤組成物としては、例えば、
(a)上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤、
(b)ポリエーテル系化合物、
(c)ポリカルボン酸系共重合体、及び
(d)水
を含む分散剤組成物等が挙げられる。これら各成分の種類及び比率は特に限定されない。
【0058】
上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤を含む殺菌剤組成物としては、例えば、
(a)上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤、及び
(b)トリエタノールアミン
を含む殺菌剤組成物、
(a)上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤、
(b)次亜塩素酸類又は次亜塩素酸塩類、
(c)有機酸又はその塩、及び
(d)防錆剤
を含む殺菌剤組成物等が挙げられる。これら各成分の種類及び比率は特に限定されない。
【0059】
上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤を含む乳化剤組成物としては、例えば、
(a)上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤、
(b)グリチルレチン酸誘導体、
(c)トコフェロールや脂肪酸エステル等の油剤、及び
(d)リン脂質
を含む乳化剤組成物等が挙げられる。これら各成分の種類及び比率は特に限定されない。
【0060】
上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤を含む柔軟剤組成物としては、例えば、
(a)上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤、
(b)アニオン性界面活性剤、及び
(c)アミノカルボン酸系キレート剤
を含む柔軟剤組成物、
(a)上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤、
(b)アルカノールアミン、
(c)尿素及びその誘導体、並びに
(d)香料
を含む柔軟剤組成物、
(a)上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤、
(b)香料を含むマイクロカプセル、及び
(c)アルコール等の水溶性溶剤
を含む柔軟剤組成物、
(a)上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤、
(b)3級アミン、
(c)シリカ粒子及び
(d)非イオン性界面活性剤
を含む柔軟剤組成物
等が挙げられ、各成分の種類及び比率は特に限定されない。
【0061】
上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤を含む表面処理剤組成物としては、例えば、
(a)上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤、
(b)アルキレングリコールアルキルエーテル、アルコール、グリコール、
(c)洗浄剤、及び
(d)水
を含む表面処理剤組成物等が挙げられる。これら各成分の種類及び比率は特に限定されない。
【0062】
上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤を含む帯電防止剤組成物としては、例えば、
(a)上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤、
(b)水性ポリオレフィンワックス、及び
(c)水
を含む帯電防止剤組成物、
(a)上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤、
(b)ポリアルキレングリコール誘導体等の凝集防止剤、
(c)ケイ素、カルシウム等を含有する無機化合物、及び必要に応じて
(d)ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂
を含む帯電防止剤組成物、
(a)上記式(1)で示されるジェミニ型界面活性剤、及び
(b)カルボキシ変性ポリオレフィン
を含む帯電防止剤組成物等が挙げられる。これら各成分の種類及び比率は特に限定されない。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び参考例により本発明を具体的に説明する。
【0064】
なお、実施例及び参考例における元素分析、NMR及び表面張力は以下の方法で測定した。
【0065】
<元素分析>
Perkin−Elmer 2400II CHNS/Oを用いて測定した。
【0066】
<NMR測定>
JEOL(日本電子社) JNM−EXを用いて行った。
<表面張力測定>
Dynamic drop tensiometer (Tracker、Interfacial Technology Concept社) を用い、Pendant Drop法に基づいて行った。最低表面張力は、界面活性剤を溶解させた水溶液の表面張力が到達した最低値である。また、pC
20は、溶媒の表面張力を20mNm
−1低下させるのに必要な界面活性剤の濃度(C
20)の逆数の対数(=−logC
20)である。pC
20の値が大きくなると,界面活性剤は一層効率的に界面に吸着することを示す。
【0067】
参考例1.
N,N’−ジドデシル−トリエチレンジアンモニウムジクロリドを、特許文献5に記載の方法で合成した。
【0068】
実施例1.
まず、特開2010−37325公報の記載に従って、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン−2−メタノール(上記した例示化合物1に相当)を合成した。2Lのセパラブルフラスコに、ピペラジン43.1g(0.5mol)、トリエチルアミン151.8g(1.5mol)を仕込み、トルエンで希釈した。窒素置換後、これにトルエンで希釈した2,3−ジブロモプロピオン酸エチル(東京化成工業社製、130g、0.5mol)を攪拌しながら添加し、100℃で24時間熟成反応を行った。析出したトリエチルアミンの臭化水素塩をろ過により除去し、得られた反応液を濃縮し、エステル体を合成した。このエステル体をテトロヒドロフランに溶解させ、氷浴下、水素化アルミニウムリチウムのテトロヒドロフラン溶液(1.5mol)に攪拌しながら添加した。室温で2時間反応後、水、15%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、不溶物をろ過により除去した。反応液を濃縮後、酢酸エチルで抽出洗浄した。酢酸エチルを除去し、目的化合物である1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン−2−メタノールを42g得た(収率60%)。
【0069】
次に、得られた1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン−2−メタノール10.0g(1.0当量)をアセトニトリルに溶解し、溶液を約80℃まで昇温させた後、1−ブロモドデカン70.3g(4.0当量)を5時間かけて滴下し,その後45時間加熱還流した。反応終了後、溶媒をエバポレーターによって減圧留去し、残渣の固体をヘキサンおよび酢酸エチルで繰り返し洗浄し、残渣をメタノールで再結晶し、白色固体の1−ヒドロキシメチル−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン−1,4−ジドデシルジブロマイド(以下「2C
12RZETA(Br
−)」と称する)6.01を得た。収率は13%であった。生成物の構造を
1H−NMR及び元素分析で確認した。
【0070】
イオン交換樹脂約50gをイオン交換水に浸した後、クロマト管に入れ,イオン交換水、メタノールの順に、約500mLをそれぞれ流し込んだ。メタノールに溶解させた1−ヒドロキシメチル−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン−1,4−ジドデシルジブロマイドを少量ずつ流し、得られた溶媒を再びカラムに入れ少量ずつ流し、メタノールで数回置換した。得られた溶媒をエバポレーターによって除去した後、残渣をヘキサンと酢酸エチルで繰り返し洗浄し、得られた残渣を真空デシケーターで十分に乾燥させることによって白色固体1−ヒドロキシメチル−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン−1,4−ジドデシルジクロライド(以下「2C
12RZETA(Cl
−)」と称する)5.28gを得た。C
12RZETA(Br
−)からの収率は100%であった。生成物の構造を1H−NMR及び元素分析で確認した。
【0071】
実施例1で合成したカチオン性ジェミニ型界面活性剤(2C
12RZETA(Cl
−))及び参考例1で合成したカチオン性ジェミニ型界面活性剤の水溶液の表面張力を表1に併せて示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1より実施例1のカチオン性ジェミニ型界面活性剤は、参考例1の従来の界面活性剤と比べて最低表面張力が小さい。また、参考例1のカチオン性ジェミニ型界面活性剤は、25℃における水の表面張力72mNm
−1より20mNm
−1低下させることができず、pC20が定義されなかった。従って、実施例1で得られた化合物は、参考例1の化合物より高い表面張力低下能を有していることがわかる。
【0074】
また、実施例1のカチオン性ジェミニ型界面活性剤のcmcは0.310mMと小さく、高い界面活性を示した(測定方法は特許文献5に記載されたものと同じ)。