【文献】
European Journal of Organic Chemistry,2009年,No. 12,pp. 1871-1879
【文献】
Journal of the American Chemical Society,2003年,Vol. 125, No. 22,pp. 6653-6655
【文献】
Journal of Organometallic Chemistry,1999年,Vol. 576,pp. 125-146
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0009】
本発明は、金属触媒存在下、芳香族ニトロ化合物と、アミン化合物をクロスカップリング反応させることを特徴とする芳香族アミン化合物の製造方法である。
【0010】
芳香族ニトロ化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、ニトロ化芳香族炭化水素化合物やニトロ化ヘテロ芳香族化合物を例示することができる。当該芳香族ニトロ化合物としては、特に限定するものではないが、下記一般式(1)
【0012】
(式中、Ar
1は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有してもよいヘテロ芳香族基を表し、nは1〜5の整数を表す。)
で表すこともできる。
【0013】
前記の置換基を有してもよい芳香族炭化水素基としては、特に限定するものではないが、例えば、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいビフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいアントラセニル基、置換基を有してもよいピレニル基、置換基を有してもよいターフェニル基、置換基を有してもよいフェナントラセニル基、置換基を有してもよいペリレニル基、置換基を有してもよいトリフェニレニル基等を例示することができる。
【0014】
前記の置換基を有してもよいヘテロ芳香族としては、特に限定するものではないが、例えば、置換基を有してもよいフラニル基、置換基を有してもよいベンゾフラニル基、置換基を有してもよいジベンゾフラニル基、置換基を有してもよいフェニルジベンゾフラニル基、置換基を有してもよいジベンゾフラニルフェニル基、置換基を有してもよいチエニレニル基、置換基を有してもよいベンゾチエニル基、置換基を有してもよいジベンゾチエニレニル基、置換基を有してもよいフェニルジベンゾチエニレニル基、置換基を有してもよいジベンゾチエニレニルフェニル基、置換基を有してもよいピリジル基、置換基を有してもよいピリミジル基、置換基を有してもよいピラジル基、置換基を有してもよいキノリル基、置換基を有してもよいイソキノリル基、置換基を有してもよいカルバゾリル基、置換基を有してもよい9−フェニルカルバゾリル基、置換基を有してもよいアクリジニル基、置換基を有してもよいベンゾチアゾリル基、置換基を有してもよいキナゾリル基、置換基を有してもよいキノキサリル基、置換基を有してもよい1,6−ナフチリジニル基、又は置換基を有してもよい1,8−ナフチリジニル基等を挙げることができる。
【0015】
また、前記の置換基を有してもよい芳香族炭化水素基上及び置換基を有してもよいヘテロ芳香族基上の置換基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、炭素数3〜18のアルキル基(例えば、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキサジエニル基、オクチル基、ベンジル基、又はフェネチル基等)、炭素数1−18のハロゲン化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基等)、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3−18のアルコキシ基(例えば、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘキサジエニルオキシ基、オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数1−18のハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフルオロメトキシ基等)、フェニル基、トリル基、ピリジル基、ピリミジル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、又はジベンゾフラニル基等が挙げられる。
【0016】
Ar
1については、芳香族アミン化合物の製造効率に優れる点で、置換基を有してもよい炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数3〜30のヘテロ芳香族基であることが好ましく、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数3〜20のヘテロ芳香族基であることがより好ましく、さらに詳細には、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ターフェニル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基、ジベンゾフラニルフェニル基、ジベンゾチエニレニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基、ジベンゾチエニレニルフェニル基、ピリジル基、フェニルピリジル基、ピリジルフェニル基、ピリミジル基、ピラジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基、又は9−フェニルカルバゾリル基(これらの置換基は、メチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、メトキシ基、フェニル基、トリル基、ピリジル基、ピリミジル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基で置換されていてもよい)であることがより好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基、ジベンゾフラニルフェニル基、ジベンゾチエニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基、ジベンゾチエニレニルフェニル基、ピリジル基、キノリル基、又はカルバゾリル基(これらの置換基は、メチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、又はメトキシ基で置換されていてもよい)であることがより好ましい。
【0017】
前記アミン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、アルキルアミン化合物、ジアルキルアミン化合物、芳香族アミン化合物、N−アルキル芳香族アミン化合物、ヘテロ芳香族アミン化合物、又はN−アルキルヘテロ芳香族アミン化合物等を例示することができる。当該アミン化合物としては、特に限定するものではないが、たとえば、下記一般式(2)
【0019】
(式中、Ar
2及びAr
3は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有してもよいヘテロ芳香族基を表す。なお、Ar
2及びAr
3は互いに結合して環を形成しても良い。)
で表すこともできる。
【0020】
前記の炭素数1〜18のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキサジエニル基、オクチル基、ベンジル基、又はフェネチル基等を例示することができる。
【0021】
前記の置換基を有してもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有してもよいヘテロ芳香族基については、それぞれ、前記Ar
1における置換基を有してもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有してもよいヘテロ芳香族基と同様である。
【0022】
Ar
2及びAr
3は互いに結合して環を形成した場合、下記一般式(4)
【0024】
(式中、Ar
2及びAr
3は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有してもよいヘテロ芳香族基を表す。)
で表される化合物となる。
【0025】
当該一般式(4)で表される化合物としては、特に限定するものではないが、ピロール、インドール、カルバゾール、ベンゾカルバゾール、ピロリジン、ピペリジン、又はピペラジン等を例示することができる。
【0026】
Ar
2及びAr
3については、芳香族アミン化合物の製造効率に優れる点で、各々独立して、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数3〜30のヘテロ芳香族基であることが好ましく、各々独立して、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数3〜20のヘテロ芳香族基であることがより好ましく、さらに詳細には、各々独立して、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ターフェニル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基、ジベンゾフラニルフェニル基、ジベンゾチエニレニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基、ジベンゾチエニレニルフェニル基、ピリジル基、フェニルピリジル基、ピリジルフェニル基、ピリミジル基、ピラジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基、又は9−フェニルカルバゾリル基(これらの置換基は、メチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、メトキシ基、フェニル基、トリル基、ピリジル基、ピリミジル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基で置換されていてもよい)、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はヘキシル基であることがより好ましく、各々独立して、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基、ジベンゾフラニルフェニル基、ジベンゾチエニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基、ジベンゾチエニレニルフェニル基、ピリジル基、キノリル基、又はカルバゾリル基(これらの置換基は、メチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、又はメトキシ基で置換されていてもよい)、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はヘキシル基であることがより好ましい。
【0027】
本発明において、金属触媒存在下、芳香族ニトロ化合物と、アミン化合物をクロスカップリング反応させることによって製造される芳香族アミン化合物としては、特に限定するものではないが、2級又は3級の芳香族アミン化合物を例示することができる。
【0028】
なお、本発明において、前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2)で表される化合物を用いた場合、下記一般式(3)
【0030】
(式中、Ar
1、Ar
2、Ar
3及びnは一般式(1)及び(2)で示したものと同じものを表す。)
で表される芳香族アミン化合物が得られる。
【0031】
本発明では、ニトロ基が脱離するため、ニトロ基が結合してあった炭素上にアミン窒素原子との結合が新たに形成されることになる。
【0032】
本発明の製造方法において、前記の芳香族ニトロ化合物(モル)÷前記のアミン化合物(モル)で示されるモル比は、特に限定するものではないが、0.1〜10.0の範囲が好ましい。経済性の観点から、当該モル比については、0.2〜5.0であることが好ましく、0.33〜3.0であることがより好ましく、0.5〜2.0の範囲であることがより好ましい。
【0033】
nは1〜5の整数を表す。目的の芳香族アミン化合物を高選択的に合成する観点から、好ましくは1〜3の整数であり、更に好ましくは1〜2の整数である。
【0034】
前記の金属触媒としては、特に限定するものではないが、パラジウム触媒又はニッケル触媒が挙げられる。パラジウム触媒としては、特に限定するものではないが、例えば、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)、パラジウムトリフルオロアセテート(II)等の2価パラジウム化合物、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等の0価パラジウム化合物が挙げられる。また、ポリマー固定型パラジウム触媒、パラジウム炭素等の固定化パラジウム触媒も例示できる。なお、これらのパラジウム触媒については、ホスフィン化合物等の配位性化合物を共存させてもよい。当該配位性化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(o―トリル)ホスフィン、トリ(メシチル)ホスフィン等の単座アリールホスフィン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(イソプロピル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン等の単座アルキルホスフィン、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジイソプロポキシビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−メチルビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−3,6−ジメトキシ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル等のBuchwaldホスフィン配位子、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等のニ座ホスフィン、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾリウムクロライド、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリウムクロライド、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾリウムクロライド等のN−ヘテロカルベン配位子等が挙げられる。また、パラジウム触媒にホスフィン化合物等の配位性化合物を共存させる場合、上記パラジウム化合物とホスフィン化合物又はN−ヘテロカルベン化合物を事前に混合、調製したものを用いて反応させてもよい。
【0035】
ニッケル触媒としては、例えば、ニッケル塩と前記ホスフィンからなる化合物が挙げられる。ニッケル塩とは、ニッケル元素を有効成分とする化合物を示し、例えば、0価から2価のニッケル塩を示す。具体的には、フッ化ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、ヨウ化ニッケル(II)等のハロゲン化ニッケル、ニッケル(0)粉末、硫酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、過塩素酸ニッケル(II)等の無機塩、蟻酸ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、安息香酸ニッケル(II)、ニッケルアセチルアセトナート(II)等の有機酸ニッケル塩が挙げられる。
【0036】
これら金属触媒の内、目的の反応を進行させる観点から、パラジウム触媒を用いることが好ましい。また、高選択的に目的の反応を進行させる観点から、金属触媒には、Buchwaldホスフィン配位子を共存させるのが望ましく、中でも、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−3,6−ジメトキシ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニルが特に好ましい。
【0037】
なお、Buchwaldホスフィン配位子としては、特に限定するものではないが、例えば、下記一般式(5)で表されるホスフィン化合物を挙げることができる。
【0039】
(式中、R
1は、各々独立して、シクロヘキシル基又はtert−ブチル基を表す。R
2は、各々独立して、水素原子、メチル基、メトキシ基、イソプロピル基、イソプロポキシ基、ジメチルアミノ基、又はスルホン酸基を表す。)
金属触媒の使用量は、特に限定するものではないが、芳香族ニトロ化合物1モルに対し通常0.01〜20モル%の範囲である。金属触媒が上記範囲内であれば、高い選択率で芳香族アミン化合物を合成できるが、高価な金属触媒の使用量を低減させる意味から、より好ましい金属触媒の使用量は、芳香族ニトロ化合物1モルに対し、金属換算で0.01〜10モル%の範囲である。
【0040】
本発明においては、塩基の使用が好ましい。使用される塩基としては、無機塩基及び/又は有機塩基から選択すればよく、特に限定するものではないが、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、燐酸カリウム、燐酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等の無機塩基、ナトリウム−メトキシド、ナトリウム−エトキシド、カリウム−メトキシド、カリウム−エトキシド、リチウム−tert−ブトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド等のようなアルカリ金属アルコキシド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等の有機塩基であって、目的の芳香族アミン化合物の選択率を向上させる観点から、更に好ましくは、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、燐酸カリウム、燐酸ナトリウム、フッ化セシウム等の無機塩基である。
【0041】
使用される塩基の量は、使用する芳香族ニトロ化合物に対し1.0倍モル以上使用するのが好ましい。塩基の量が1.0倍モル未満では、目的の芳香族アミン化合物の収率が低くなる場合がある。塩基を大過剰に加えても目的の芳香族アミン化合物の収率に変化はないが、反応終了後の後処理操作が煩雑になることから、より好ましい塩基の量は、1.0〜5.0倍モルの範囲である。
【0042】
本反応は、通常、不活性溶媒存在下で行う。使用される溶媒としては、本反応を著しく阻害しない溶媒であればよく、特に限定するものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶媒や、ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホトリアミド等を挙げることができる。これらのうちより好ましくは、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラハイドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系有機溶媒である。
【0043】
本反応は、常圧下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことも、また加圧下でも行うことができる。反応は、20〜250℃の範囲で行われるが、目的の芳香族アミン化合物の収率を上げるため好ましくは50〜200℃の範囲で行われ、更に好ましくは、100〜160℃の範囲で行われ、さらに好ましくは、120℃〜150度の範囲で行われる。
【0044】
本反応は、添加剤として相関移動触媒を使用しても良い。相間移動触媒としては特に限定されるものではないが、具体的には、24−クラウン−8、18−クラウン−6、15−クラウン−5、12−クラウン−4等のクラウンエーテル類、テトラ(n−ブチル)アンモニウムクロライド、テトラ(n−ブチル)アンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、トリエチル−n−ドデシルアンモニウムクロライド、トリエチル−n−ドデシルアンモニウムブロマイド、トリメチル−n−ヘキサデシルアンモニウムクロライド、トリメチル−n−ヘキサデシルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩を挙げることができる。
【0045】
本反応にかかる反応時間は、芳香族ニトロ化合物、アミン化合物、金属触媒、塩基の量、種類及び反応温度等によって一定ではないが、数分〜72時間の範囲から選択することが好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によって具体的に記述する。しかし、これらによって本発明は制限されるものではない。
【0047】
測定機器:NMR 日本電子株式会社製ECS−400(1H NMR、400MHz; 13C NMR、101 MHz)、中圧カラムクロマトグラフィー 昭光サイエンティフィック社製Purif−espoir2
実施例1
窒素下において、15mLスクリューバイアル管に、撹拌子、4−ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)、ジフェニルアミン 152mg(0.90mmol)、パラジウムアセチルアセトナート(II) 9.1mg(0.030mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−3,6−ジメトキシ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル 48mg(0.090mmol)、リン酸三カリウムn水和物 480mg(1.8mmol)、及びヘプタン 3mLを加えた。バイアル管にしっかりと蓋をした後、130℃で24時間加熱撹拌した。次いで、反応液を室温まで冷却した。この反応液に酢酸エチルを添加し、セライトを通じて濾過した。濾液を濃縮して得られた残渣をジエチルエーテル(10mL)に溶解し、30%過酸化水素水溶液(1.5mL)を加えた。室温で10分撹拌したのち、ジエチルエーテル(20mL×3)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、濃縮して得られた残渣を中圧カラムクロマトグラフィー(フルカ酸化アルミニウム(activated, neutral, Brokmann Activity I)使用、展開溶媒=ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、目的の4−メトキシトリフェニルアミンを白色粉末として100mg得た(収率61%)。目的物の同定は1H及び13C−NMRで実施した。
1H−NMR(CDCL3)=δ 7.22(t,J=7.7Hz,4H), 7.12−7.02(m,6H), 6.95(t,J=7.4Hz,2H), 6.85(d,J=9.4Hz,2H), 3.81(s,3H)
13C−NMR(CDCL3)=δ 156.1, 148.1, 140.7, 129.0, 127.3, 122.8, 121.8, 114.7, 55.4。
【0048】
実施例2
実施例1において、4−ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、ニトロベンゼン 73mg(0.60mmol)を用いた以外は、同様の反応操作を行った。次いで、反応液を室温まで冷却した。この反応液に酢酸エチルを添加し、セライトを通じて濾過した。濃縮して得られた残渣を中圧カラムクロマトグラフィー(バイオタージSNAP Ultraカラム(粒径25μm)使用、展開溶媒=ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、目的のトリフェニルアミンを白色粉末として104mg得た(収率70%)。目的物の同定は1H及び13C−NMRで実施した。
1H−NMR(CDCL3)=δ 7.24(t,J=8.0Hz,6H), 7.08(d,J=7.8Hz,6H), 7.00(t,J=7.3Hz,3H)
13C−NMR(CDCL3)=δ 147.8, 129.2, 124.1, 122.6。
【0049】
実施例3
実施例1において、4−ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、4−ニトロトルエン 82mg(0.60mmol)を用いた以外は、同様の反応操作を行った。次いで、反応液を室温まで冷却した。この反応液に酢酸エチルを添加し、セライトを通じて濾過した。濾液を濃縮して得られた残渣をジエチルエーテル(10mL)に溶解し、30%過酸化水素水溶液(1.5mL)を加えた。室温で10分撹拌したのち、ジエチルエーテル(20mL×3)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、濃縮して得られた残渣を中圧カラムクロマトグラフィー(バイオタージSNAP Ultraカラム(粒径25μm)使用、展開溶媒=ヘキサン/トリエチルアミン)で精製し、目的の4−メチルトリフェニルアミンを白色粉末として107mg得た(収率69%)。目的物の同定は1H及び13C−NMRで実施した。
1H−NMR(CDCL3)=δ 7.28−7.17(m,4H), 7.13−7.02(m,6H), 7.02−6.91(m,4H), 2.31(s,3H)
13C−NMR(CDCL3)=δ 148.0, 145.2, 132.7, 129.9, 129.1, 124.9, 123.6, 122.2, 20.8。
【0050】
実施例4
実施例1において、4−ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、2−ニトロトルエン 82mg(0.60mmol)を用い、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−3,6−ジメトキシ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル 48mg(0.090mmol)を用いる代わりに2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル 44mg(0.090mmol)を用いた以外は、同様の反応操作を行った。次いで、反応液を室温まで冷却した。この反応液に酢酸エチルを添加し、セライトを通じて濾過した。濃縮して得られた残渣を中圧カラムクロマトグラフィー(バイオタージSNAP Ultraカラム(粒径25μm)使用、展開溶媒=ヘキサン)で精製し、目的の2−メチルトリフェニルアミンを白色粉末として100mg得た(収率64%)。目的物の同定は1H及び13C−NMRで実施した。
1H−NMR(CDCL3)=δ 7.25−7.10(m,8H), 7.00−6.94(m,4H), 6.94−6.88(m,2H), 2.03(s,3H)
13C−NMR(CDCL3)=δ 147.4, 145.3, 136.5, 131.7, 129.6, 129.0, 127.3, 126.0, 121.5, 121.3, 18.6。
【0051】
実施例5
実施例1において、ジフェニルアミン 152mg(0.90mmol)を用いる代わりに、4−フルオロジフェニルアミン 168mg(0.90mmol)を用いた以外は、同様の反応操作を行った。次いで、反応液を室温まで冷却した。この反応液に酢酸エチルを添加し、セライトを通じて濾過した。濾液を濃縮して得られた残渣をジエチルエーテル(10mL)に溶解し、30%過酸化水素水溶液(1.5mL)を加えた。室温で10分撹拌したのち、ジエチルエーテル(20mL×3)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、濃縮して得られた残渣を中圧カラムクロマトグラフィー(バイオタージSNAP Ultraカラム(粒径25μm)使用、展開溶媒=ヘキサン/塩化メチレン)で精製し、目的のN−(4−フルオロフェニル)−N−(4−メトキシフェニル)ベンゼンアミンを白色固体として89mg得た(収率51%)。目的物の同定は1H、13C及び19F−NMRで実施した。
1H−NMR(CDCL3)=δ 7.21(t,J=7.7Hz,2H), 7.15−6.90(m,9H), 6.85(d,J=8.7Hz,2H), 3.80(s,3H)
13C−NMR(CDCL3)=δ 159.6, 157.2, 156.0, 148.3, 144.2, 140.8, 129.1, 126.8, 125.3, 125.2, 121.9, 121.5, 116.0, 115.7, 114.8, 55.5
19F−NMR(CDCL3)=δ 120.6。
【0052】
実施例6
実施例1において、ジフェニルアミン 152mg(0.90mmol)を用いる代わりに、N−(1−ナフチル)フェニルアミン 197mg(0.90mmol)を用いた以外は、同様の反応操作を行った。次いで、反応液を室温まで冷却した。この反応液に酢酸エチルを添加し、セライトを通じて濾過した。濾液を濃縮して得られた残渣をジエチルエーテル(10mL)に溶解し、30%過酸化水素水溶液(1.5mL)を加えた。室温で10分撹拌したのち、ジエチルエーテル(20mL×3)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、濃縮して得られた残渣を中圧カラムクロマトグラフィー(中性アルミナ使用、展開溶媒=ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、目的のN−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル−1−ナフチルアミンを白色固体として84mg得た(収率43%)。目的物の同定は1H及び13C−NMRで実施した。
1H−NMR(CDCL3)=δ 7.97(d,J=8.7Hz,1H), 7.88(d,J=8.1Hz,1H), 7.74(d,J=8.1Hz,1H), 7.45(t,J=7.7Hz,2H), 7.36(t,J=7.4Hz,1H), 7.30(d,J=7.4Hz,1H), 7.15(t,J=7.7Hz,2H), 7.08(d,J=8.7Hz,2H), 6.90−6.76(m,5H), 3.77(s,3H)
13C−NMR(CDCL3)=δ 155.4, 149.3, 143.9, 141.6, 135.2, 131.1, 128.9, 128.3, 126.7, 126.3, 126.2, 126.0, 125.2, 124.4, 120.3, 119.9, 114.5, 55.4。
【0053】
実施例7
実施例1において、ジフェニルアミン 152mg(0.90mmol)を用いる代わりに、アニリン 84mg(0.90mmol)を用い、ヘプタン(3.0mL)を用いる代わりにDMF(3.0mL)を用いた以外は、同様の反応操作を行った。次いで、反応液を室温まで冷却した。この反応液に酢酸エチルを添加し、セライトを通じて濾過した。濾液を濃縮して得られた残渣をジエチルエーテル(10mL)に溶解し、30%過酸化水素水溶液(1.5mL)を加えた。室温で10分撹拌したのち、ジエチルエーテル(20mL×3)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、濃縮して得られた残渣を中圧カラムクロマトグラフィー(バイオタージSNAP Ultraカラム(粒径25μm)使用、展開溶媒=ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、目的のN−(4−メトキシフェニル)ベンゼンアミンを黄色固体として39mg得た(収率33%)。目的物の同定は1H及び13C−NMRで実施した。
1H−NMR(CDCL3)=δ 7.21(t,J=7.7Hz,2H), 7.08(d,J=8.7Hz,2H), 6.94−6.80(m,5H), 5.49(br s,1H), 3.80(s,3H)
13C−NMR(CDCL3)=δ 155.2, 145.1, 135.7, 129.3, 122.2, 119.5, 115.6, 114.6, 55.6。
【0054】
実施例8
実施例1において、ジフェニルアミン 152mg(0.90mmol)を用いる代わりに、p−トルイジン 96mg(0.90mmol)を用い、ヘプタン(3.0mL)を用いる代わりにDMF(3.0mL)を用いた以外は、同様の反応操作を行った。次いで、反応液を室温まで冷却した。この反応液に酢酸エチルを添加し、セライトを通じて濾過した。濾液を濃縮して得られた残渣をジエチルエーテル(10mL)に溶解し、30%過酸化水素水溶液(1.5mL)を加えた。室温で10分撹拌したのち、ジエチルエーテル(20mL×3)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、濃縮して得られた残渣を中圧カラムクロマトグラフィー(バイオタージSNAP Ultraカラム(粒径25μm)使用、展開溶媒=ヘキサン/塩化メチレン)で精製し、目的の4−メトキシ−4’−メチルジフェニルアミンを黄色固体として60mg得た(収率47%)。目的物の同定は1H及び13C−NMRで実施した。
1H−NMR(CDCL3)=δ 7.10−7.01(m,4H), 6.92−6.81(m,4H), 5.41(br s,1H), 3.81(s,3H), 2.30(s,3H)
13C−NMR(CDCL3)=δ 154.7, 142.4, 136.6, 129.8, 129.3, 121.1, 116.5, 114.6, 55.6, 20.5。
【0055】
実施例9
実施例1において、ジフェニルアミン 152mg(0.90mmol)を用いる代わりに、p−アニシジン 111mg(0.90mmol)を用い、ヘプタン(3.0mL)を用いる代わりにDMF(3.0mL)を用いた以外は、同様の反応操作を行った。次いで、反応液を室温まで冷却した。この反応液に酢酸エチルを添加し、セライトを通じて濾過した。濾液を濃縮して得られた残渣をジエチルエーテル(10mL)に溶解し、30%過酸化水素水溶液(1.5mL)を加えた。室温で10分撹拌したのち、ジエチルエーテル(20mL×3)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、濃縮して得られた残渣を中圧カラムクロマトグラフィー(バイオタージSNAP Ultraカラム(粒径25μm)使用、展開溶媒=ヘキサン/酢酸エチル/トリエチルアミン)で精製し、次いで、中圧カラムクロマトグラフィー(バイオタージSNAP Ultraカラム(粒径25μm)使用、展開溶媒=トルエン/トリエチルアミン)で精製し、目的の4,4’−ジメトキシジフェニルアミンを黄色固体として65mg得た(収率47%)。目的物の同定は1H及び13C−NMRで実施した。
1H−NMR(CDCL3)=δ 6.95(d,J=8.1Hz,4H), 6.83(d,J=8.7Hz,4H), 5.30(br s,1H), 3.79(s,6H)
13C−NMR(CDCL3)=δ 154.2, 138.0, 119.5, 114.7, 55.6。
【0056】
実施例のまとめを以下の表1に示す。
【0057】
【表1】