(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の実施の態様は、後述する実施例に限定されるものではなく、その技術思想の範囲において、種々の変形が可能である。
【0013】
(1)透明容器用ラベル
(1−1)実施例1
図1に、透明容器(例えば採血管)に貼り付ける透明容器用ラベル(以下「ラベル」という。)の実施例を示す。ラベル10の表面側には、のぞき窓11と、バーコード12と、患者情報印字部13とが配置されている。
図1に示すのぞき窓11は長方形状を有している。のぞき窓11の部分には、不透過性の表紙14は存在せず、透明台紙15と剥離台紙16だけが存在している。ここで、剥離台紙16は、使用の際、透明台紙15から剥がされる。このため、使用の際、のぞき窓11には、透過性の透明台紙15だけが存在する。もっとも、のぞき窓11の上端側及び下端側の両方又は一方には、のぞき窓11の左右に位置する表紙14を接続する不透過性の架橋部(表紙14の一部)が配置されてもよい。
【0014】
のぞき窓11は、ラベル10のうち透明容器17の円周方向に沿って巻き付けられる辺の中央付近に設けられる。もっとも、
図1(C)に示すように、ラベル10を透明容器17に貼り付けた際にラベル10の両端の間に出来る隙間18の対面位置に、のぞき窓11が位置するように配置することが望ましい。のぞき窓11の対面側に表紙14の裏面が位置していなければ、のぞき窓11を通過して透明容器17内の試料を撮像する場合でも、表紙14に印字された情報が撮像画像に映り込むこともなく、画像処理の障害にもならない。
【0015】
のぞき窓11の幅L4は、例えば想定する透明容器17の円周方向の長さの約20%(13φの場合は8mm)とする。幅L4は、ラベル10を透明容器17に貼り付けて使用する際に、透明容器17を一方向から見る場合に、のぞき窓11とバーコード12を同一方向から確認できる幅でありさえすればよい。
図1の場合、のぞき窓11の右側に位置する表紙14の長さL3は、ラベル10のうち透明容器17の円周方向に沿って巻き付けられる変の長さL1の半分の長さに規定する。もっとも、長さL3は、厳密に長さL1の半分である必要はなく、同一方向からのぞき窓11を見た場合に、のぞき窓11の対面側に隙間18が位置する寸法に設計すればよい。
【0016】
バーコード12は、採血日、受診科、患者の性別、患者の氏名などの個人情報を含む情報をコード化したパターンであり、透明台紙15の表面に張り付けられた表紙14の表面に印字されている。バーコード12を構成するバー及びスペースは、のぞき窓11に沿うように、のぞき窓11の近傍に配置される。
図1の場合、のぞき窓11の右側に沿ってバーコード12を配置しているが、左側に沿ってバーコード12を配置してもよい。このため、視野方向19から撮像する際に、のぞき窓11とバーコード12を同じ視野範囲20内に収めることができる。患者情報印字部13には、採血日、受診科、患者の性別、患者の氏名などの個人情報がテキスト情報として印字される。もっとも、バーコードに代えてQRコードを印字してもよい。
【0017】
本実施例の場合、長さL1は、検査室で使用されることが多い13φの透明容器17の円周方向の長さの約60%(具体的には、約24mm)とする。ここで、円周方向の長さの約60%という値は、ラベル10の隙間18の幅が、のぞき窓11の幅L4の約2倍の大きさとするために導き出される値である。ラベル10の長さL1を透明容器17の円周長より短くすることで、透明容器17にラベル10を貼付した際に隙間18を形成することができる。ラベル10の縦方向の長さL2は、貼り付け対象である透明容器17の高さを逸脱しない程度の長さに定める。
【0018】
なお、表紙14には、不透明な材料(例えば紙、合成紙、プラスチック)が用いられる。透明台紙15には、透明な素材が用いられる。表紙14と透明台紙15の間は、剥がれないよう強く接着されている。透明台紙15のうち、ラベル供給用の剥離台紙16と面する側には粘着剤が塗布されている。剥離台紙16の表面には、透明台紙15に粘着剤が塗布されていても容易に剥がせる材質が用いられる。透明容器17にラベル10を貼り付ける際には、透明台紙15が剥離台紙16から剥がされる。前述の説明では、透明容器17が13φであるものとしてラベル10の構成を説明したが、同じラベル10をそのまま16φの透明容器17に貼り付けて使用することもできる。その場合も、のぞき窓11の対面位置には隙間18が位置する。
【0019】
図2を用い、のぞき窓11やバーコード12のより詳しい位置関係を説明する。のぞき窓11は、ラベル10の長さL1を2分する位置を通る線(中心線21)が、のぞき窓11の領域を通るように配置される。前述したように、のぞき窓11の近傍にはバーコード12が配置されており、両者の間隔L7は、2mm以内であることが好ましい。間隔L7を2mm以下とすることで、のぞき窓11とバーコード12を一度に撮像するのに都合がよい。もっとも、のぞき窓11とバーコード12は接していてもよい(すなわち、L7=0mmでもよい)。
【0020】
図2の場合、のぞき窓11の中心線22は、長さL1を2分する中心線21よりも患者情報印字部13の側にシフトした位置に配置されている。具体的には、のぞき窓11の幅L4を3:1に分割する位置を中心線21が通るように、ラベル10上におけるのぞき窓11の位置を決める。これにより、ラベル10を透明容器17に巻き付けた際に、隙間18とのぞき窓11とバーコード12とを、1つの視野範囲20に含めることができる。
【0021】
(1−2)実施例2
図3に、ラベル30の構成例を示す。
図3には
図1との対応部分に同一符号を付して示す。ラベル30は、のぞき窓11の形状とバーコード12の配置位置が、
図1に示すラベル10と異なっている。ラベル30の場合、のぞき窓11の上端側の長さL5は、のぞき窓11の下端側の長さL6よりも長い形状(すなわち、L字を180°左に回転した形状)を有している。この場合、のぞき窓11の左下側に表紙14の余白領域が形成される。そこで、
図3では、バーコード12を、形成された余白領域(のぞき窓11の2辺に接する領域)に配置している。
【0022】
もっとも、
図1の場合と同様、本実施例の場合も、バーコード12をのぞき窓11の右側に沿って配置してもよい。本実施例の場合も、のぞき窓11とバーコード12の間隔L7は2mm以内とする。ラベル30の場合、透明容器17に貼り付けた際、ラベル10を用いる場合よりものぞき窓11の面積が広いため、試料の状態の確認が容易になる。
【0023】
(1−3)実施例3
図4に、ラベル40の構成例を示す。
図4にも、
図1との対応部分に同一符号を付して示す。ラベル40は、透明容器17への貼り付け後にのぞき窓11を作成するタイプである点で、予めのぞき窓11を配置するラベル10と異なっている。なお、ラベル40の諸寸法は、ラベル10と同じである。ラベル40の場合、透明台紙15の表面の全体が表紙14によって覆われている。表紙14のうちののぞき窓11(
図1)に対応する位置には切り取部41が配置されている。切り取部41の寸法は、のぞき窓11(
図1)と同じである。
【0024】
図4の場合、切り取部41の下端は、左右の表紙14の下端よりも飛び出している。この飛び出した部分は、切り取部41を透明台紙15から剥ぎ取る際の摘み部42として用いられる。摘み部42の長さは、5mm程度である。摘み部42の幅や形状は、人間が摘みやすい寸法及び形状であれば任意である。
【0025】
長方形状を有する切り取部41の左右には縦方向にミシン目(ハーフカットを含む)43が形成されている。ミシン目43は、ラベル40を透明容器17に貼り付けた後に切り取部41だけを透明台紙15から剥ぎ取ることができるように表紙14の表面に加工されている。本実施例の場合、切り取部41は透明台紙15から剥ぎ取って使用するため、当該部分の表紙14と透明台紙15の間だけは弱く接着されている。勿論、切り取部41の左右に位置する表紙14と透明台紙15の間はラベル10と同じく強く接着され、容易に剥がれないようになっている。
【0026】
本実施例の場合、バーコード12は、切り取部41の領域とその外側の表紙14の間に跨って印刷されている。
図4の場合は、切り取部41の左側の表紙14に患者情報印字部13が配置されるため、切り取部41の右側の表紙14に跨るようにバーコード12が印刷される。なお、切り取部41の側に印刷されるバーコード12の長さは任意である。
図4の例では、縦方向の長さL2の半分以上の長さでバーコード12が印刷されている。透明台紙15から剥ぎ取った切り取部41の裏面には、透明台紙15との接着に使用されていた粘着剤の一部が残っている。従って、剥ぎ取った切り取部41は後述するように管理台帳に貼り付けて用いることもできる。
【0027】
(1−4)実施例4
図5に、ラベル50の構成例を示す。
図5には、
図4との対応部分に同一符号を付して示す。ラベル50は、
図4に示すラベル40の変形例にあたる。ただし、ラベル50は、以下の2点で、ラベル40(
図4)と異なっている。相違点の1つ目は、透明台紙15を用いない点である。このため、表紙14は、剥離台紙16の表面に直接接着されている。表紙14の裏面(剥離台紙16側)には、粘着剤が塗布されている。剥離台紙16の表面は、表紙14に粘着剤が塗布されていても容易にはがせる材質となっている。ラベル50を透明容器17に貼り付ける際、表紙14を剥離台紙16から剥がして使用する。なお、切取り部41に当たる表紙14の裏面(剥離台紙16側)には、切り取部41以外の表紙14に用いる粘着剤よりも弱い粘着剤が塗布されている。このため、ラベル50を透明容器17に貼り付けた後も、切り取部41を容器表面から容易に剥離することができる。
【0028】
相違点の2つ目は、切り取部41の上端が表紙14の上端と一致していない点である。このため、切り取部41の縦方向の長さは、ラベル40の場合よりも短くなっている。このため、透明容器17に貼り付けられたラベル50から切り取部41を剥ぎ取った後に、切り取部41の左右に位置する表紙14を接続する架橋部51が残ることになる。架橋部51が存在することで、表紙14を剥離台紙16から剥がす際にも、切り取部41の左右に位置する表紙14が分断されずに済む。因みに、表紙14が2つに分断されると、巻き付け方向の長さが短くなって接着面積が少なくなり、表紙14と切り取部41が分断され易くなる。また、分断された表紙14を透明容器17に貼り付ける場合、透明容器17の縦方向に対して各ラベルが斜めに貼り付けられ易くなり、バーコード12の読み取り不良等の原因にもなる。なお、
図5においては、架橋部51をラベル50の上端側に1つだけ設けているが、2つの架橋部51をラベル50の上端と下端にそれぞれ1つずつ設けてもよい。
【0029】
(1−5)試料容器用ラベルの使用例
図6に、ラベル40を透明容器17に貼り付ける手順を示す。他のラベルについてもほぼ同様の手順となる。まず、剥離台紙16から表紙14と透明台紙15を剥離する(
図6(A)、(B))。次に、剥離した表紙14と透明台紙15を、透明容器17の外周面に貼り付ける(
図6(C))。図では、試料が収容されている透明容器17に、表紙14と透明台紙15を貼り付ける様子を表しているが、表紙14と透明台紙15を貼り付けた透明容器17に対して試料を収容してもよい。
【0030】
続いて、作業者は、透明容器17を遠心分離機等に装着する(
図6(D))。次に、作業者が摘み部42を摘まみ、切取り部41を表紙14から剥離する(
図6(E))。ラベル40の場合、バーコード12は表紙14と切取り部41に跨って印刷されるため、剥離された切取り部41には、透明容器17側の表紙14と同じバーコード12の情報が残っている。
【0031】
この後、作業者は透明容器17を自動分析装置に装着する。自動分析装置は、分析開始前に透明容器17に作成されたのぞき窓11を通じて試料の状態を確認すると共に、のぞき窓11に隣接するバーコード12から患者情報を取得する。一方、作業者は、剥離した切り取部41を試料管理用の台帳44などに貼り付ける(
図6(F))。作業者や自動分析装置は、透明容器17に巻き付けられたラベル40(表紙14)の端部の間にできる隙間18と、その対角に位置するのぞき窓11を通して、透明容器17に収容された試料(内容物)の状態を確認することができる。
【0032】
(1−6)小括
前述したように、各実施例に係るラベルには、個人情報などを管理するためのバーコード12の近接位置にのぞき窓11(又は、切り取部41)が配置され、しかも、ラベルを透明容器17に巻き付けた際にのぞき窓11(又は、切り取部41)の対角付近にラベルの隙間18が位置するように設計されている。すなわち、透明容器17に巻き付けられたラベルにおけるのぞき窓11の対向面にラベルが存在しない領域を意図的に形成することができる。
【0033】
これにより、のぞき窓11を介しての観察又は撮像時に、表紙14の印字内容が撮像画像に写り込むことがなく、患者から採取した試料の状態をより鮮明に確認することができるラベルを実現できる。また、ラベルを透明容器17に貼り付けた状態で、のぞき窓11と隙間18が直線状に配置されるため、のぞき窓11から見て隙間18の背面に色のついた板を置けば試料の色と板側の色との比較を行うことができ、背面側からつい立てを取り除けば透明容器17の試料を透過した光を観察することができる。すなわち、各実施例に係るラベルは、複数種類の分析や観察にも対応できる。特に、透過光を観察できるので、各実施例に係るラベルは、試料中のゲル状の浮遊物や濁りなどの確認にも使用できる。
【0034】
また、各実施例に係るラベルでは、のぞき窓11が予め形成されているか、事前に形成されているミシン目43に沿って切り取部41を剥ぎ取るだけでのぞき窓11の形成が可能であるため、削り刃を用いてラベルの表面を削り取る従来手法に比して分析時間の短縮が可能となる。また、各実施例に係るラベルは、従来手法のように透明容器17を破損させるおそれもない。さらに、各実施例で説明したラベルを用いれば、自動分析装置による分析時に、透明容器17内の試料の状態と管理情報を示すバーコード12を一度に撮像できる。このため、試料の状態と管理情報の登録作業を一度に実現でき、分析動作の作業効率や管理効率がよい。
【0035】
(2)生体試料分析装置
(2−1)装置構成
続いて、前述したラベルの特性を利用した生体試料分析装置について説明する。
図7に、実施例に係る生体試料分析装置100を示す。
図7は、生体試料分析装置100の主要部を上方から見た図である。生体試料分析装置100は、生体試料が入った容器を搬送する搬送部と生体試料を分析する分析部とに分かれている。
【0036】
搬送部は、ラック101に架設された試料容器102を装置内へ取り込む搬入機構103と、ラック101に架設された試料容器102を試料分取ポジションまで搬送する試料位置搬送機構104と、試料の採取が終了した試料容器102を架設するラック101を排出する排出機構105を有している。
【0037】
分析部は、前述した搬送部に囲まれており、以下に示す各種の機構を有している。反応ディスク110の円周上には、複数の反応容器111が配列されている。試薬ディスク112の円周上には、複数の試薬容器113が配列されている。反応容器111と試薬容器113は、それぞれ反応ディスク110と試薬ディスク112に対して取り外し可能である。
【0038】
反応ディスク110の外周は、37度に温度管理された熱伝導性の媒体(例えば水)で満たされた反応槽114に浸されている。反応槽114の内側を温度が一定に保たれた媒体(例えば恒温水)が循環することで、反応容器111の温度を常に37度に保っている。反応ディスク110の近くには、試料容器102を載せたラック101を移動する試料位置搬送機構104が設置されている。試料位置搬送機構104と反応ディスク110の間には、回転と上下動が可能な試料分注機構115が設置されている。試料分注機構115には、試料容器102から反応容器111に試料を分注するための試料ノズルが設けられている。試料分注機構115と試料位置搬送機構104との間には、試料分注機構115の動作を妨げないように装置本体に対して出し入れされる、つい立(板状部材)116が設けられている。つい立116には後述するように検査用の色が付されていてもよい。
【0039】
反応ディスク110と試薬ディスク112の間には、回転と上下動が可能な試薬分注機構117が設置されている。試薬分注機構117には、試薬容器113から反応容器111に試薬を分注するための試薬ノズルが設けられている。反応ディスク110の周囲には、洗浄機構118、攪拌機構119が配置されている。試料分注機構115、試薬分注機構117、攪拌機構119の動作範囲には洗浄槽120がそれぞれ設置されている。
【0040】
また、装置内部には、不図示の画像処理部121が設けられている。画像処理部121は、いわゆるコンピュータ(制御装置、演算装置、記憶装置(RAM、ROM、ハードディスク等)、入出力装置)を基本構成とし、後述する異常判定動作はコンピュータ上で実行されるプログラムを通じて実現される。なお、画像処理部121は専用の装置である必要は無く、生体試料分析装置100を構成する各部を制御する制御装置の一部機能として実現されてもよいし、生体試料分析装置100に外部接続される外部装置の一部機能として実現されてもよい。
【0041】
この他、生体試料分析装置100には、のぞき窓11とバーコード12の読み取り用にCCDカメラ122、123が配置されている。
図7の場合、CCDカメラ122は、試料位置搬送機構104の搬送経路上のP1に配置され、CCDカメラ123は、試料位置搬送機構104の搬送経路上のP2に配置されている。なお、P1の付近には、ラック101の搬送を妨げない位置につい立116Aが設けられている。つい立116Aは、その周囲に干渉するような可動物が存在しないため装置本体に対して固定されている。もっとも、つい立116と同様に、つい立116Aも装置本体に対して出し入れ可能でもよい。
図7では、P1及びP2のそれぞれにCCDカメラ122及び123を配置しているが、CCDカメラの台数は任意でよい。また、CCDカメラの配置位置も搬送部の経路上であれば任意でよい。
【0042】
ただし、ラック101上の試料容器102は、のぞき窓11とバーコード12の面がCCDカメラ122及び123の方向に向いている必要がある。このような位置合わせは、作業者が試料容器102をラック101に架設する際に手作業で行ってもよいし、ラック101上の試料容器102の向きを所定の方向に揃える専用の機構を用いて行ってもよい。なお、CCDカメラ122及び123の撮像方向が異なる場合には(
図7の場合は一致している)、CCDカメラ122及び123の個々の撮像方向に合わせて試料容器102の向きを搬送中に変更する必要がある。この変更も手作業で行ってもよいし、専用の機構により自動的に行ってもよい。
【0043】
(2−2)ラベルの撮像
図8(A)及び(B)に示すように、P1及びP2に配置されたCCDカメラ122及び123は、その撮像範囲130に、試料容器102に貼り付けられたラベルののぞき窓11とバーコード12が含まれるように位置決めされる。ただし、試料容器102が架設されるラック101は、撮影範囲130と干渉しない構造を有する。CCDカメラ122及び123は、装置内に設置されるため、装置のカバーなどの陰に入る可能性がある。そこで、
図8(C)に示すように、光源131から発せられる可視光によって撮像範囲130を照明しながら撮影する。
【0044】
この際、光源131の光軸が、のぞき窓11と隙間18と同じ線上に並ぶように配置する。これにより、CCDカメラ122及び123は、ラベルを構成する表紙14の印字内容の写り込みのない、鮮明な撮像画像を取得することができる。光源131の配置位置は、
図8(C)に示すように、CCDカメラ122及び123の撮影方向と同じ側でもよいし、試料容器102の上方や試料容器102を挟んでCCDカメラ122及び123の対角側でもよい。
【0045】
画像処理部121は、CCDカメラ122及び123から入力される撮像画像の中からのぞき窓11とバーコード12を含む画像部分を切り出す。
図9に、切り出し後の撮像画像140の例を示す。画像処理部121は、撮像画像140に含まれるバーコード12の像から患者情報を読み取り、のぞき窓11に対応する像から試料の状態に関する情報を読み取る。
図9の場合、のぞき窓11の部分には、空気層141、血清層142、分離剤143、血餅層144等の各層が写っている。
【0046】
P1にCCDカメラ122を設置する場合、試料を分取する前に、試料の状態を確認することができる。すなわち、分析実行前に、異常値が発生する可能性が高いか否かを判定することができる。例えば試料の液面に気泡145がある場合(
図10)や異物146が液面に浮遊している場合(
図11)は、異常値が発生する可能性が高い。異物146には、浮遊した分離剤、フィブリン等がある。これらの場合は、試料ノズルの空吸いや詰まりなどの原因となるためである。画像処理部121は、CCDカメラ122で撮影された撮像画像140の画像処理を通じ、液面表面に浮遊している気泡145や異物146を検知すると、当該試料についてはサンプリングしないように制御する。なお、この用途の場合、つい立116Aを設けなくてもよい。また、試料容器102の背景が誤検出の原因とならないように、つい立116の表面が基準色(例えば白色)のみでもよい。
【0047】
画像処理部121による画像処理は、液面表面の状態等に限らず、試料の色調や濃淡も検知対象とする。溶血、黄疸、濁りなどの検知は、色調や光の透過率等を通じて行われる。
図12に、つい立116、116Aに使用する着色例を示す。
図12のつい立116、116Aには、左端から右端の方向に、黄疸判別用、試料基準色調用、溶血判別用の色調に調整された塗料が塗布されている。試料基準色調用には、白色等の判別が容易な色調の塗料が用いられる。これら3色は全体で模様を構成する。
【0048】
図13に、
図12に示す色調を付したつい立116、116Aを試料容器102の背後に配置し、のぞき窓11を通して試料の色を確認する場合の撮像画面140の例を示す。左端の撮像画面140は、試料が正常な場合に対応する。この場合、黄疸判別用の色部分、試料基準色調用の色部分、溶血判別用の色部分の境目を確認できる。中央の撮像画面140は、試料に黄疸がある場合に対応する。この場合、黄疸判別用の色部分と試料基準色調用の色部分の境が無いように見える。右端の撮像画面140は、試料に溶血がある場合に対応する。この場合、溶血判別用の色部分と試料基準色調用の色部分の境が無いように見える。画像処理部121は、撮像画像140がこれら3種類の見え方のいずれに一致するかを判定し、試料が正常か異常かを判定する。また、画像処理部121は、異常の原因が黄疸によるものか、溶血によるものかを判定し、測定結果にアラームを付与して作業者に知らせる。
【0049】
また、試料ノズルは、分離剤143との接触により汚染される。試料ノズルが極度に汚染された場合には、緊急メンテナンスが必要になる。画像処理部121は、画像処理を通じ、試料ノズルの汚染の回避にも使用できる。
図14(A)に示す撮像画像140では、血清層142の幅が充分大きく、試料ノズル150の浸漬量151が血清層142にとどまっている。一方、
図14(B)に示す撮像画像140では、血清層142の幅が浸漬量151よりも狭いため、分注動作をそのまま継続すると、試料ノズル150が分離剤143に触れてしまう。そこで、画像処理部121は、
図14(B)の場合、試料の分注動作を事前に中止するように制御する。
【0050】
P2にCCDカメラ123を設ける場合、前述した分析動作前に使用できるだけでなく、例えば分析終了後に試料ノズルを引き抜く瞬間の画像の取得にも使用できる。
図15(A)は試料ノズル150に汚れが無い場合の撮像画像140であり、
図15(B)は試料ノズル150の先端に異物152が付着している場合の撮像画像140である。画像処理部121は、試料ノズル150を引き抜く際に取得した撮像画像140について、試料ノズル150の形状を評価し、自動的に異常の有無を判別する。この機能により、圧力センサーなどでは検知できない、試料ノズル150の外側へのフィブリンなどの付着を確認することができる。試料ノズル150を引き抜く際に取得した撮像画像140は、詰まりが生じた場合や反応容器111に試料が吐出されない空打ちが生じた場合の確認データとして使用することができる。
【0051】
生体試料分析装置100で取得された画像情報は画像装置の表示画面に表示することができる。
図16に、表示画面160の例を示す。画像処理部121は、撮像画像140から抽出したバーコード12の情報を作業者が読み取り可能な情報に変換し、表示画面160に表示する。表示画面160は、撮像画面140と、測定結果161と、バーコード情報162とで構成される。作業者は、これらの情報を同じ画面上で同時に確認することができる。この表示画面160を用い、作業者は、異常なデータが生じた際の原因を究明することができる。
【0052】
(2−3)異常判定動作
図17に、生体試料分析装置100の画像処理部121で実行される異常判定動作の一例を示す。画像処理部121は、P1のCCDカメラ122で撮影された撮像画像140についての判定動作を最初に実行した後、P2のCCDカメラ123で撮影された撮像画像140についての判定動作を実行する。
【0053】
まず、画像処理部121は、試料のサンプリング前に、血清量の確認(ステップS1)、浮遊物の検知(ステップS2)、溶血や黄疸などの識別(ステップS3)についての判定処理を実行する。血清量又は浮遊物に異常が確認された場合、画像処理部121は、該当する試料のサンプリング動作をスキップする(ステップS8)。一方、溶血、黄疸、濁りが検知された場合、画像処理部121は、サンプリングをスキップせずに測定を継続し、最終的に出力される結果にアラームを付与する(ステップS7)。
【0054】
前述したように、画像処理部121は、ステップS2で血清表面の様子を確認しているが、異物152の確認が漏れる場合やサンプリングポジションに搬送されるまでの間に異物152が浮遊してくる可能性がある。そのような場合に備え、画像処理部121は、P2のCCDカメラ123で試料ノズル150を引き抜く撮像画像140を処理し、試料ノズル150への付着物の有無を確認する(ステップS4、S5)。付着物が確認された場合、画像処理部121は、対象とする試料の測定を継続するものの、最終的な測定結果にアラームを付与する(ステップS7)。なお、付着物が確認されない場合、画像処理部121は、測定を継続し、アラームを付けることなく測定結果を出力する(ステップS6)。
【0055】
(2−4)小括
前述したように、生体試料分析装置100は、ラック101の搬送経路上にCCDカメラ122及び123を配置し、前述したラベル10等ののぞき窓11を通して試料容器102の内部状態を撮影し、表紙14の印字内容の移り込みのない鮮明な撮像画像140を取得する。そして、画像処理部121は、取得された撮像画像140の画像処理を通じ、サンプリングの実行が好ましくない試料を事前に取り除いたり、問題が含まれる可能性がある測定結果にアラームを付けたりする。これにより、データのトレーサビリティを高品質で保つことができる。
【0056】
また、撮像画像140には、のぞき窓11を通して観察される試料の状態とバーコード12が含まれるため、データの取得作業を集約化できる。この結果、生体試料分析装置100への情報の作業者による入力作業が不要となる。更に、作業者は、集約されたデータを一つの画面上で確認できるため、異常データが検出された場合にも、作業者は、当該異常に迅速に対応できる。
【0057】
(3)他の実施例
本発明は、上述した実施例に限定されるものでなく、様々な変形例を含んでいる。例えば、上述した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備える必要はない。また、ある実施例の一部を他の実施例の構成に置き換えることができる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることもできる。また、各実施例の構成の一部について、他の実施例の構成の一部を追加、削除又は置換することもできる。
【0058】
また、上述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良い。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することにより(すなわちソフトウェア的に)実現しても良い。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に格納することができる。また、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示すものであり、製品上必要な全ての制御線や情報線を表すものでない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。