特許第6794420号(P6794420)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794420
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】外用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/196 20060101AFI20201119BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20201119BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20201119BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20201119BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20201119BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20201119BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   A61K31/196
   A61K47/06
   A61K47/12
   A61K47/14
   A61K9/08
   A61K9/06
   A61P29/00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-231489(P2018-231489)
(22)【出願日】2018年12月11日
(62)【分割の表示】特願2014-61931(P2014-61931)の分割
【原出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2019-34978(P2019-34978A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2019年1月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-72157(P2013-72157)
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】阿度 和克
【審査官】 飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】 スイス国特許発明第699814(CH,B5)
【文献】 特開平07−267862(JP,A)
【文献】 特開平06−072877(JP,A)
【文献】 特開平02−233617(JP,A)
【文献】 特開2008−255017(JP,A)
【文献】 特開2012−193176(JP,A)
【文献】 特開2006−036687(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/087947(WO,A1)
【文献】 特開平07−285887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 29/00−29/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ジクロフェナクナトリウム、(B)モノテルペン2〜7重量%、(C)乳酸及び/又はその塩0.1〜5重量%、並びに水を含有することを特徴とする、外用医薬組成物(但し、ジルコニウムイオン供与体として機能するジルコニウム化合物を含有する場合を除く)。
【請求項2】
更に、(D)極性油を含む、請求項1に記載の外用医薬組成物。
【請求項3】
前記極性油を0.1〜20重量%含有する、請求項1又は2に記載の外用医薬組成物。
【請求項4】
前記極性油が脂肪族モノカルボン酸エステルである、請求項2又は3に記載の外用医薬組成物。
【請求項5】
前記脂肪族モノカルボン酸エステルがミリスチン酸イソプロピル及び/又はパルミチン酸イソプロピルである、請求項4に記載の外用医薬組成物。
【請求項6】
液剤又はゲル剤である、請求項1〜5のいずれかに記載の外用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮吸収性が高められている外用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会では、OA機器の普及による長時間の同じ姿勢、過度のストレス、運動不足等によって、肩こり、筋肉痛、関節痛等に悩む人が増えている。従来、このような、肩こり、筋肉や関節の痛み等に対しては、患部で発生している炎症を抑え、症状を改善するために、消炎鎮痛剤を塗布するという対処が行なわれている。
【0003】
従来、消炎鎮痛剤として、ジクロフェナク、フェルビナク、デキサメタゾン、インドメタシン、イブプロフェン等の非ステロイド性抗炎症薬が実用化されている。これらの非ステロイド性抗炎症薬の中でも、ジクロフェナクは、シクロオキシゲナーゼに対する阻害活性が高く、優れた消炎鎮痛作用を発揮できることが知られている。ジクロフェナクは、経口又は直腸投与した場合、副作用として胃腸、腎臓又は肝臓障害が生じる場合があり、特に胃腸については重篤な副作用を呈することもあることから、最近では外用剤としての適用が増えている。しかしながら、ジクロフェナクは、経皮吸収性が低く、経皮適用すると、本来有する消炎鎮痛作用を十分に発揮できないという欠点がある。
【0004】
そこで、従来、ジクロフェナクの経皮吸収性を向上させたり、その薬効を向上させたりする製剤技術の検討が種々為されている。例えば、特許文献1には、ジクロフェナク又はその塩を含む外用組成物において、アルコールとカルボン酸エステル及び/又はカルボン酸とを添加することにより、ジクロフェナク又はその塩の経皮吸収性が向上することが開示されている。また、特許文献2には、外用医薬組成物中で、ジクロフェナク又はその薬学的に許容される塩を0.5〜1.5重量%、清涼化剤を5〜15重量%の割合で含有させることにより、鎮痛効果が向上することが開示されている。
【0005】
しかしながら、肩こり、筋肉痛、関節痛等に悩む人の増加に伴って、より優れた消炎鎮痛作用を発揮できる外用剤への要望が高まっており、ジクロフェナクの経皮吸収性をより一層向上させる製剤技術の開発への期待は高くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−182450号公報
【特許文献2】特開2011−074032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩を含む外用医薬組成物において、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮吸収性を向上させる製剤技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩と共に、モノテルペンと、乳酸及び/又はその塩とを含む外用医薬組成物は、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮吸収性が飛躍的に向上することを見出した。また、前記外用医薬組成物に、更に極性油を含有させることにより、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮吸収性がより一層向上することを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩、(B)モノテルペン、並びに(C)乳酸及び/又はその塩を含有することを特徴とする、外用医薬組成物。
項2. 更に、(D)極性油を含む、項1に記載の外用医薬組成物。
項3. 前記モノテルペンがメントールである、項1又は2に記載の外用医薬組成物。
項4. 前記モノテルペンを1〜10重量%、前記乳酸及び/又はその塩を0.1〜5重量%含有する、項1〜3のいずれかに記載の外用医薬組成物。
項5. 前記極性油を0.1〜20重量%含有する、項2〜4のいずれかに記載の外用医薬組成物。
項6. 前記極性油が脂肪族モノカルボン酸エステルである、項2又は5に記載の外用医薬組成物。
項7. 前記脂肪族モノカルボン酸エステルがミリスチン酸イソプロピル及び/又はパルミチン酸イソプロピルである、項6に記載の外用医薬組成物。
項8. 液剤又はゲル剤である、項1〜7のいずれかに記載の外用医薬組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の外用医薬組成物によれば、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩が、モノテルペンと乳酸及び/又はその塩と共存することにより、その経皮吸収性が飛躍的に向上しているので、優れた消炎鎮痛作用を発揮でき、肩こり、筋肉痛、関節痛等を効果的に緩和又は治癒させることができる。また、本発明の外用医薬組成物は、前記成分に加えて、極性油を含有させることにより、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮吸収性をより一層向上でき、これによって卓越した消炎鎮痛作用を発揮させることができる。更に、本発明の外用医薬組成物には、モノテルペンが含まれており、適用した皮膚に清涼感を付与することもできるので、良好な使用感を得ることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の外用医薬組成物は、(A)ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩
、(B)モノテルペン、並びに(C)乳酸及び/又はその塩を含有することを特徴とする。以下、本発明の外用医薬組成物について詳述する。
【0012】
(A)ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩
本発明の外用医薬組成物は、消炎鎮痛成分として、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩(以下、「(A)成分」と表記することもある)を含有する。
【0013】
ジクロフェナクとは2−(2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)フェニル)酢酸とも称される非ステロイド系の公知化合物である。
【0014】
ジクロフェナクの薬学的に許容される塩としては、特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニアとの塩;ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第1級、第2級若しくは第3級のアルキルアミンとの塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の第1級、第2級若しくは第3級のアルカノールアミンとの塩等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアルカリ金属塩、更に好ましくはナトリウム塩が挙げられる。これらのジクロフェナクの薬学的に許容される塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
本発明の外用医薬組成物において、(A)成分として、ジクロフェナク及びその薬学的に
許容される塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。(A)成分の中でも、好ましくはジクロフェナクの薬学的に許容される
塩、更に好ましくはジクロフェナクのアルカリ金属塩、特に好ましくはジクロフェナクナトリウムが挙げられる。
【0016】
本発明の外用医薬組成物における(A)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば0.2〜2重量%、好ましくは0.5〜1.5重量%、更に好ましくは0.7〜1.3重量%が挙げられる。
【0017】
(B)モノテルペン
本発明の外用医薬組成物は、モノテルペン(以下、「(B)成分」と表記することもある
)を含有する。モノテルペンを含有することにより、後述する乳酸及び/又はその塩との相互作用によって、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮吸収性を飛躍的に向上させることができ、更に適用した皮膚に清涼感を付与し、使用感を良好にすることも可能になる。
【0018】
モノテルペンとは、イソプレン単位2個からなる炭素数10個のテルペノイド化合物である。本発明の外用医薬組成物において使用されるモノテルペンとしては、特に制限されないが、例えば、メントール、リモネン、メントン、カルボン、ジヒドロカルボン、ピネン、ゲラニオール、リナロール、チモール、ボルネオール、ペリルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、カンフル、シネオール等が挙げられる。本発明において使用されるモノテルペンは、光学異性体が存在する場合、d体、l体、dl体のいずれであってもよい。
【0019】
また、本発明の外用医薬組成物は、(B)成分として、モノテルペンを含む精油を使用し
てもよい。モノテルペンを含む精油は、公知のものから適宜選択して使用することができるが、例えば、メントールを含む精油としては、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油等が挙げられる。
【0020】
本発明の外用医薬組成物において、(B)成分として、1種のモノテルペンを単独で使用
してもよく、また2種以上のモノテルペンを組み合わせて使用してもよい。(B)成分の中
でも、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮吸収性をより一層向上させるという観点から、好ましくはメントール、及びこれを含む精油、更に好ましくはl−メントール及びこれを含む精油が挙げられる。
【0021】
本発明の外用医薬組成物における(B)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、1〜10重量%が挙げられる。特に、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮吸収性をより一層向上させるという観点から、本発明の外用医薬組成物における(B)成分の含有量として、好ましくは1〜8重量%、更に好ましくは2〜7重量%が挙げられる。なお、(B)成分として、モノテルペンを含有する精油を使用する場合、本発明の外用医薬組成物におけるモノテルペンの含有量が前記範囲を充足するように、精油中に含まれる前記テルペンの量に応じて、配合する精油の量を適宜設定すればよい。
【0022】
(C)乳酸及び/又はその塩
本発明の外用医薬組成物は、乳酸及び/又はその塩(以下、「(C)成分」と表記することもある)を含有する。乳酸及び/又はその塩を含有することにより、後述するモノテルペンとの相互作用によって、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮吸収性を飛躍的に向上させることが可能になる。
【0023】
乳酸の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニアとの塩等が挙げられる。これらの乳酸の塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明の外用医薬組成物において、(C)成分として、乳酸及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。(C)成分の中でも、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮吸収性をより一層向上させるという観点から、好ましくは乳酸、乳酸のアルカリ金属塩、更に好ましくは乳酸、乳酸ナトリウム、特に好ましくは乳酸ナトリウムが挙げられる。
【0025】
本発明の外用医薬組成物における(C)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、0.1〜5重量%が挙げられる。特に、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮吸収性をより一層向上させるという観点から、本発明の外用医薬組成物における(C)成分の含有量として、好ましくは0.1〜4重量%、更に好ましくは0.1〜3重量%、特に好ましくは0.2〜3重量%が挙げられる。
【0026】
(D)極性油
本発明の外用医薬組成物は、前記(A)〜(C)成分に加えて、更に極性油(以下、「(D)成分」と表記することもある)を含有してもよい。このように極性油を含有することにより、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮吸収性をより一層向上させることができる。
【0027】
極性油とは、分子内に水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基、アミド基等の極性基を含有する炭化水素系の油分である。本発明の外用医薬組成物において使用される極性油について、そのIOB値(無機性/有機性バランス)については特に制限されないが、例えば、IOB値0.01〜3.0、好ましくは0.05〜2.0、更に好ましくは0.05〜1.0が挙げられる。
【0028】
本発明の外用医薬組成物において使用される極性油としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸エステル、トリグリセライド、脂肪族ジカルボン酸ジエステル、脂肪族ジカルボンアルキレングリコールエステル、高級脂肪酸等が挙げられる。
【0029】
前記脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、イソステアリン酸ヘキサデシル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル等が挙げられる。これらの脂肪族モノカルボン酸エステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
前記トリグリセライドとしては、例えば、トリアシルグリセロール、トリパルミチン、トリパルミチン酸グリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、1−パルミトイル−2,3−ジオレオイルグリセロール、1,3−ジオレオイル−2−パルミトイルグリセロール、1−パルミトオレオイル−2−ステアロイル−3−リノレオイルグリセロール、1−リノレオイル−2−パルミトオレオイル−3−ステアロイルグリセロール等が挙げられる。これらのトリグリセライドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
前記脂肪族ジカルボン酸ジエステルとしては、例えば、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル等が挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸ジエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
前記脂肪族ジカルボン酸アルキレングリコールエステルとしては、例えば、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール等が挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸アルキレングリコールエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
前記高級脂肪酸としては、例えば、炭素数12〜26の脂肪酸が挙げられる。このような高級脂肪酸としては、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸等が挙げられる。これらの高級脂肪酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
本発明の外用医薬組成物において、(D)成分として、1種の極性油を選択して単独で使用してもよく、また2種以上の極性油を組み合わせて使用してもよい。(D)成分の中でも
、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮吸収性をより一層向上させるという観点から、好ましくは脂肪族モノカルボン酸エステル;更に好ましくは、炭素数10〜17の脂肪酸と炭素数1〜5の1価アルコールとのエステル;特に好ましくは、ミリスチン酸イソプロピル及びパルミチン酸イソプロピルが挙げられる。
【0035】
本発明の外用医薬組成物において(D)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.1〜20重量%が挙げられる。特に、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩の経皮吸収性をより一層効果的に向上させるという観点から、本発明の外用医薬組成物における(D)成分の含有量として、好ましくは0.5〜15重量%、更に好ましくは1〜10重量%が挙げられる。
【0036】
その他の成分
本発明の外用医薬組成物には、本発明の効果を妨げない限り、前述する成分の他に、必要に応じて、薬理成分を含んでいてもよい。本発明の外用医薬組成物に配合可能な薬理成分については、特に制限されないが、例えば、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルリチン酸ステアリル等の抗炎症剤;ジフェニルイミダゾール、ジフェンヒドラミン及びその薬学的に許容される塩、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤;酢酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジルエステル、ノナン酸バニリルアミド、トウガラシチンキ等の血行促進剤;アルニカチンキ、オウバクエキス、サンシシエキス、セイヨウトチノキエキス、ロートエキス、ベラドンナエキス、トウキエキス、シコンエキス、サンショウエキス等の生薬等が挙げられる。
【0037】
また、本発明の外用医薬組成物には、所望の製剤形態にするために、水性基剤、油性基材等の基材を含むことができる。水性基剤としては、例えば、水、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール及びイソブタノール等の低級アルコール等が挙げられる。油性基材としては、非極性油、具体的には、パラフィン、イソパラフィン等の炭化水素類;スクワラン、ワックス等が挙げられる。
【0038】
更に、本発明の外用医薬組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、外用医薬組成物に通常使用される他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、pH調節剤、界面活性剤、乳化剤、可溶化剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤、キレート剤、増粘剤、香料、着色料等が挙げられる。
【0039】
製剤形態
本発明の外用医薬組成物の製剤形態については、経皮適用可能であることを限度として特に制限されず、例えば、液剤(ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、及び乳液剤を含む)、フォーム剤、軟膏剤、硬膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは液剤及びゲル剤、更に好ましくは液剤が挙げられる。これらの製剤形態への調製は、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法に従って、製剤形態に応じた添加剤を用いて製剤化することにより行うことができる。
【0040】
本発明の外用医薬組成物を液剤形態にする場合、その好適な一態様として、水性基剤として、水及び低級アルコールの混合液、好ましくは水及びエタノールの混合液を含むことが望ましい。本発明の外用医薬組成物に、水及び低級アルコールを配合して液剤形態にする場合、水及び低級アルコールの含有量としては、例えば、水が0〜50重量%、好ましくは0〜40重量%、更に好ましくは1〜30重量%;低級アルコールが20〜95重量%、好ましくは40〜95重量%、更に好ましくは60〜95重量%となる範囲が挙げられる。また、発明の外用医薬組成物を液剤形態にする場合、そのpHとしては、例えば3.0〜9.0、好ましくは4.0〜9.0、更に好ましくは4.5〜9.0が挙げられる。
【0041】
使用態様
発明の外用医薬組成物は、鎮痛が求められる局所(皮膚)に外用投与することにより使用される。本発明の外用医薬組成物の投与量は、投与する部位、治療すべき症状の程度等に応じて適宜設定されるが、投与する局所部位1cm2当たり、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩の1回当たりの投与量が10〜500mg程度となる量であることが望ましい。
【0042】
本発明の外用医薬組成物は、外用消炎鎮痛剤として、肩こりに伴う肩の痛み、関節痛、腰痛、筋肉痛、腱鞘炎(手・手首の痛み)、肘の痛み(テニス肘など)、打撲痛、ねんざ痛、骨折痛、神経痛等の痛みに対して、鎮痛を目的として好適に使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
試験例1
表1に示す組成の外用医薬組成物(液状)を調製した。各外用医薬組成物の経皮吸収性を評価するために、以下の試験を行った。−30℃で凍結されているYMP(Yucatan Micropig)皮膚(日本チャールズリバー社製)を室温に約30分放置し自然解凍を行った後、皮下についている脂肪及び肉片を取り除き、これを試験用皮膚とした。フランツ型拡散セル(有効透過径約25mm、ガラス製)に試験用皮膚を装着して、レセプター内を0.2M PBS緩衝液(pH7.4)で満たし、フランツ型拡散セルを37℃±3℃の温水に浸した。フランツ型拡散セル内が37℃±3℃になった後に、試験用皮膚の表皮側に外用医薬組成物1gを適用し、37℃±3℃で5時間保持した。外用医薬組成物の適用3時間後及び5時間後にレセプター内のPBS緩衝液0.5mlを採取し、液体クロマトグラフィーにて当該PBS緩衝液中のジクロフェナクの濃度を測定して、ジクロフェナクナトリウムが試験用皮膚を透過した量(ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収量、μg)を算出した。なお、本試験では、試験用皮膚は、全て同一ロットのものを使用した。
【0045】
得られた結果を表1に示す。表1から明らかなように、ジクロフェナクナトリウム及びl−メントールに加えて、乳酸を含む場合(実施例1)には、乳酸又は乳酸ナトリウムを含まない場合(比較例1)に比べて、ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収量が飛躍的に増加していた。また、ジクロフェナクナトリウム、l−メントール、及び乳酸又は乳酸ナトリウムと共に、更にミスチリン酸イソプロピル又はパルミチン酸イソプロピルを含む場合(実施例2〜7)には、ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収量が更に向上することも確認された。一方、ジクロフェナクナトリウム及びl−メントールと共に、クエン酸又は酢酸を含む場合(比較例4及び5)は、乳酸又は乳酸ナトリウムを使用した場合のように、ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収量を増加できなかった。更に、ジクロフェナクナトリウム及び乳酸を含んでいても、l−メントールを含んでいない場合(比較例6)には、ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収量が増加しなかった。以上の結果から、ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収量の飛躍的な増加は、ジクロフェナクナトリウム、l−メントール、及び乳酸又は乳酸ナトリウムを一体不可分の関係で含むことによって実現され、その経皮吸収量は更に極性油を含有させることによってより一層増加することが明らかとなった。
【0046】
【表1】
【0047】
試験例2
表2に示す組成の外用医薬組成物(液状)を調製し、前記試験例1と同様の方法で、ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収量(3時間後の浸透量)を求めた。なお、本試験例で使用したYMP皮膚は、試験例1で使用したものと異なるロットのものであり、試験例1で使用したものに比べてジクロフェナクナトリウムの経皮吸収量が1/5程度低くなることが確認できている。
【0048】
得られた結果を表2に示す。この結果からも、ジクロフェナクナトリウム、l−メントール及び乳酸を含む場合には、ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収量が飛躍的に増加し、更にミスチリン酸イソプロピルを含む場合にはジクロフェナクナトリウムの経皮吸収量がより一層向上することが確認された。
【0049】
【表2】
【0050】
製剤例
表3に示す組成の外用医薬組成物(製剤例1、3及び5は液状、製剤例2、4及び6はゲル状)を調製した。得られた外用医薬組成物は、いずれもジクロフェナクナトリウムの経皮吸収性が優れていた。
【0051】
【表3】