特許第6794611号(P6794611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6794611ポリイミド共重合体及びそれを利用したポリイミドフィルム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794611
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】ポリイミド共重合体及びそれを利用したポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20201119BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20201119BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   C08G73/10
   C08J5/18CFG
   H05K1/03 610N
   H05K1/03 670
【請求項の数】13
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2019-531085(P2019-531085)
(86)(22)【出願日】2018年7月17日
(65)【公表番号】特表2020-502313(P2020-502313A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(86)【国際出願番号】KR2018008045
(87)【国際公開番号】WO2019054616
(87)【国際公開日】20190321
【審査請求日】2019年6月21日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0118000
(32)【優先日】2017年9月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ユン、チョルミン
(72)【発明者】
【氏名】キム、キュンジュン
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−524040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10
C08J 5/18
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合成分として、
酸二無水物、
ジアミン及び
ジメチルシロキサン(DMS)−ジフェニルシロキサン(DPS)オリゴマーと、
分配係数(LogP)正数である溶媒と、
を含有する
組成物を
重合及び硬化して製造される
ポリイミド共重合体であって、
DMS−DPSドメインが、50nm以下のサイズにポリイミドマトリックスに均一に分布しており、
DMS−DPSドメインが占める体積が全体体積の15〜30体積%であり、
前記分配係数(LogP)正数である溶媒は、ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、及び、ジエチルプロピオンアミド(DEPA)から選択される1つ以上である、
ポリイミド共重合体。
【請求項2】
前記DMS−DPSオリゴマーが、下記の構造を有する
請求項1に記載のポリイミド共重合体:
【化1】
前記構造において、
p及びqは、モル分率であって、
p+q=100である時、
pは、70〜90、
qは、10〜30である。
【請求項3】
DMS−DPSドメインのサイズが、1〜50nmである
請求項1又は2に記載のポリイミド共重合体。
【請求項4】
前記酸二無水物が、下記化学式2aから化学式2hの4価の有機基を分子構造内に含むテトラカルボン酸二無水物のうちから選択される1つ以上である
請求項1からのいずれか1項に記載のポリイミド共重合体:
[化学式2a]
【化2】
[化学式2b]
【化3】
[化学式2c]
【化4】
[化学式2d]
【化5】
[化学式2e]
【化6】
[化学式2f]
【化7】
[化学式2g]
【化8】
[化学式2h]
【化9】
前記化学式2aから化学式2hにおいて、
前記R11からR24は、それぞれ独立して−F、−Cl、−Br及び−Iからなる群から選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、チオール基(−SH)、ニトロ基(−NO)、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲノアルコキシ、炭素数1〜10のハロゲノアルキル、炭素数6〜20のアリール基から選択される置換基であり、
前記a1は、0〜2の整数、
a2は、0〜4の整数、
a3は、0〜8の整数、
a4及びa5は、それぞれ独立して0〜3の整数、そして、
a7及びa8は、それぞれ独立して0〜3の整数であり、
a10及びa12は、それぞれ独立して0〜3の整数、
a11は、0〜4の整数、
a15及びa16は、それぞれ独立して0〜4の整数、
a17及びa18は、それぞれ独立して0〜4の整数であり、
a6、a9、a13、a14、a19、a20は、それぞれ独立して0〜3の整数であり、
nは、1〜3の整数であり、
11からA16は、それぞれ独立して−O−、−CR'R''−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものであり、
この際、前記R'及びR''は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、及び炭素数1〜10のフルオロアルキル基からなる群から選択されるものである。
【請求項5】
前記ジアミンが、下記化学式3の2価の有機基を分子構造内に含むジアミンを含む
請求項1からのいずれか1項に記載のポリイミド共重合体:
[化学式3]
【化10】
前記化学式3において、
前記R31、R32は、それぞれ独立して−F、−Cl、−Br及び−Iからなる群から選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、チオール基(−SH)、ニトロ基(−NO)、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲノアルコキシ、炭素数1〜10のハロゲノアルキル、炭素数6〜20のアリール基から選択される置換体であり、
Qは、単一結合、−O−、−CR'R''−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものであり、
この際、前記R'及びR''は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、及び炭素数1〜10のフルオロアルキル基からなる群から選択されるものである。
【請求項6】
前記酸二無水物が、下記化学式4の構造を含むテトラカルボン酸二無水物を全体テトラカルボン酸二無水物中に20〜80mol%含む
請求項1からのいずれか1項に記載のポリイミド共重合体:
[化学式4]
【化11】
【請求項7】
前記酸二無水物が、下記化学式5のテトラカルボン酸二無水物を全体テトラカルボン酸二無水物中に20〜80mol%含む
請求項1からのいずれか1項に記載のポリイミド共重合体:
[化学式5]
【化12】
前記化学式5において、
及びQは、それぞれ独立して単一結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものである。
【請求項8】
前記酸二無水物が、下記化学式4及び化学式5のテトラカルボン酸二無水物を共に含む
請求項1からのいずれか1項に記載のポリイミド共重合体:
[化学式4]
【化13】
[化学式5]
【化14】
前記化学式5において、
及びQは、それぞれ独立して単一結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものである。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載のポリイミド共重合体で製造された
ポリイミドフィルム。
【請求項10】
前記ポリイミドフィルムのヘイズが、2以下である
請求項に記載のポリイミドフィルム。
【請求項11】
前記ポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)が、350℃以上である
請求項または1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項12】
前記ポリイミドフィルムの熱膨張係数(CTE)が、100ppm/℃以下である
請求項から11のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
【請求項13】
請求項1からのいずれか一項に記載のポリイミド共重合体で製造された
Oxide TFT用またはLTPS用透明ポリイミド基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年9月14日付の韓国特許出願10−2017−0118000号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、耐熱性及び透明度が改善されたポリイミドフィルムを製造するためのポリイミド共重合体を提供する。
【背景技術】
【0003】
ポリイミド(polyimide、PI)は、比較的結晶化度が低いか、ほぼ非晶質構造を有する高分子であって、合成が容易であり、薄膜フィルムを作ることができ、硬化のための架橋基が不要であるという長所だけではなく、透明性、剛直な鎖構造によって優れた耐熱性と耐化学性、優れた機械的物性、電気的特性及び寸法安定性を有している高分子材料であって、現在、自動車、航空宇宙分野、柔軟性回路基板、LCD用液晶配向膜、接着及びコーティング剤などの電気、電子材料として広く使われている。
【0004】
しかし、ポリイミドは、高い熱安定性、機械的物性、耐化学性、そして、電気的特性を有している高性能高分子材料であるにも拘らず、ディスプレイ分野に使用するための基本的な要件である無色透明な性質を満足させず、また、熱膨張係数をさらに下げなければならないという課題が存在する。例えば、デュポン社から販売されているKaptonの熱膨張係数は、約30ppm/℃程度と低い熱膨張係数値を示しているが、これも、プラスチック基板の要求条件には及ぼしていない。したがって、現在、ポリイミドの基本的な特性を保持しながら、光学的特性と熱履歴変化とを最小化するための研究が多く進められている。
【0005】
一般的に、芳香族ポリイミドの場合、濃い褐色の固有な色を帯びているが、その理由は、イミド主鎖内に存在するベンゼンのπ電子が、鎖間の結合によって発生する電荷遷移複合化(charge transfer complex、以下、CT−complexと称する)理論で説明可能であり、これは、イミド(imide)構造内にσ電子、π電子、非結合(nonbonding)非共有電子対が存在するので、電子の励起が可能であるためである。
【0006】
一般的なポリイミドの場合には、400nm以下の波長から500nmの間の可視光線領域の光を吸収することによって、その配色であるyellow〜redの色を帯びる。したがって、芳香族ポリイミドの短所であるCT−complexを下げるためには、この主鎖内にトリフルオロメチル(−CF)、スルホン(−SO)、エーテル(−O−)のような電気陰性度が比較的強い元素を導入することにより、π電子の移動を制限して、共鳴効果を下げる方法があり、また、ベンゼンではないオレフィン系環状(cycloolefin)構造を導入することにより、主鎖内に存在するπ電子の密度を減少させて、無色透明なポリイミドフィルムを製造することができる。
【0007】
一方、ポリアミドイミドの場合、耐熱性、機械的強度、電気的特性などに優れているために、従来から電気、電子、機械、航空分野などの工業用材料として広く使われている。また、一般的なポリイミドとは構造自体が異なり、ポリアミドイミドは、有機溶剤に可溶であるということが多く知られており、エナメルニス(enamel varnish)、電気絶縁用のコーティング剤、塗料など溶液成形が必須的な用途としても使われている。
【0008】
しかし、ディスプレイ分野に使用するためには、より低い熱膨張係数を有し、高い溶解度、透明度及び熱的安全性を有するフレキシブルディスプレイ用ポリマーの開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性及び光学的特性が改善されたポリイミドフィルムを製造するためのポリイミド共重合体を提供するところにある。
【0010】
本発明が解決しようとする他の課題は、前記ポリイミド共重合体で製造されたポリイミドフィルムを提供するところにある。
【0011】
本発明のさらなる課題は、前記ポリイミド共重合体を用いるディスプレイ素子を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述した技術的課題を解決するために、重合成分として、酸二無水物、ジアミン及びジメチルシロキサン(DMS)−ジフェニルシロキサン(DPS)オリゴマーと、分配係数(LogP)正数である溶媒と、を含有する組成物を重合及び硬化して製造されるポリイミド共重合体であって、DMS−DPSドメインが、50nm以下のサイズにポリイミドマトリックスに均一に分布しており、DMS−DPSドメインが占める体積が全体体積の15〜30体積%であるポリイミド共重合体を提供する。
【0013】
一実施例によれば、前記DMS−DPSオリゴマーが、下記の構造を有するものである。
【化1】
【0014】
前記構造において、p及びqは、モル分率であって、p+q=100である時、pは、70〜90、qは、10〜30である。
【0015】
また、分配係数(LogP)正数である溶媒が、アミド系溶媒であり得る。
【0016】
前記アミド系溶媒が、ジメチルプロピオンアミド(dimethylpropionamide、DMPA)、ジエチルプロピオンアミド(diethylpropionamide、DEPA)、N,N−ジエチルアセトアミド(N,N−diethylacetamide、DEAc)、N,N−ジエチルホルムアミド(N,N−diethylformamide、DEF)、N−エチルピロリドン(N−ethylpyrrolidone、NEP)から選択される1つ以上であるポリイミド共重合体であり得る。
【0017】
また、前記ポリイミドマトリックス内に分布されたDMS−DPSドメインのサイズが、1〜50nm、または5〜40nm、または10〜30nmであるものであり、ポリイミドマトリックスに連続相で連結されて分布されている。
【0018】
一実施例によれば、前記酸二無水物は、下記化学式2aから化学式2hの4価の有機基構造を含むテトラカルボン酸二無水物のうちから選択されるものである。
[化学式2a]
【化2】
[化学式2b]
【化3】
[化学式2c]
【化4】
[化学式2d]
【化5】
[化学式2e]
【化6】
[化学式2f]
【化7】
[化学式2g]
【化8】
[化学式2h]
【化9】
【0019】
前記化学式2aから化学式2hにおいて、前記R11からR24は、それぞれ独立して−F、−Cl、−Br及び−Iからなる群から選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、チオール基(−SH)、ニトロ基(−NO)、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲノアルコキシ、炭素数1〜10のハロゲノアルキル、炭素数6〜20のアリール基から選択される置換基であり、前記a1は、0〜2の整数、a2は、0〜4の整数、a3は、0〜8の整数、a4及びa5は、それぞれ独立して0〜3の整数、そして、a7及びa8は、それぞれ独立して0〜3の整数であり、a10及びa12は、それぞれ独立して0〜3の整数、a11は、0〜4の整数、a15及びa16は、それぞれ独立して0〜4の整数、a17及びa18は、それぞれ独立して0〜4の整数であり、a6、a9、a13、a14、a19、a20は、それぞれ独立して0〜3の整数であり、nは、1〜3の整数であり、A11からA16は、それぞれ独立して−O−、−CR'R''−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものであり、この際、前記R'及びR''は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、及び炭素数1〜10のフルオロアルキル基からなる群から選択されるものである。
【0020】
一実施例によれば、下記化学式3の構造を含むジアミンを全体ジアミン含量中に80〜99mol%に含みうる。
[化学式3]
【化10】
【0021】
前記化学式3において、前記R31、R32は、それぞれ独立して−F、−Cl、−Br及び−Iからなる群から選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、チオール基(−SH)、ニトロ基(−NO)、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲノアルコキシ、炭素数1〜10のハロゲノアルキル、炭素数6〜20のアリール基から選択される置換体であり、Qは、単一結合、−O−、−CR'R''−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものであり、この際、前記R'及びR''は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、及び炭素数1〜10のフルオロアルキル基からなる群から選択されるものである。
【0022】
一実施例によれば、下記化学式4のテトラカルボン酸二無水物を全体テトラカルボン酸二無水物中に20〜80mol%に含みうる。
[化学式4]
【化11】
【0023】
一実施例によれば、下記化学式5のテトラカルボン酸二無水物を全体テトラカルボン酸二無水物中に20〜80mol%に含みうる。
[化学式5]
【化12】
【0024】
前記化学式5において、Q及びQは、それぞれ独立して単一結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものである。
【0025】
一実施例によれば、下記化学式4及び化学式5のテトラカルボン酸二無水物を共に含みうる。
[化学式4]
【化13】
[化学式5]
【化14】
【0026】
前記化学式5において、Q及びQは、それぞれ独立して単一結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものである。
【0027】
本発明の他の課題を解決するために、前記ポリイミド共重合体で製造されたポリイミドフィルムを提供する。
【0028】
一実施例によれば、前記ポリイミドフィルムのヘイズ(haze)が、2以下であり得る。
【0029】
一実施例によれば、前記ポリイミドフィルムのTgが、350℃以上であり得る。
【0030】
一実施例によれば、前記ポリイミドフィルムのCTEは、100ppm/℃以下であり得る。
【0031】
本発明は、また、前記ポリイミド共重合体で製造されたOxide TFT用またはLTPS用透明ポリイミド基板を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によって高分子量のシロキサン構造を含むジアミン(DMS−DPS)を含む重合成分をLogPが正数である有機溶媒存在下に重合及び硬化して製造したポリイミド共重合体は、DMS−DPSがナノサイズに連続相を有しながら分布されており、耐熱性と機械的物性は保持しながら、残留応力(residual stress)を効率的に減少させて、高耐熱低ストレス高分子材料として適している。したがって、素子用基板、ディスプレイ用カバー基板、光学フィルム、IC(integrated circuit)パッケージ、粘着フィルム(adhesive film)、多層FPC(flexible printed circuit)、テープ、タッチパネル、光ディスク用保護フィルムのような多様な分野に使われる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明による共重合体の構造を説明する概略的な図面である。
図2A】実施例2によるポリイミドフィルム断面のTEMイメージを多様な部位で倍率を多様にして撮影したものである。
図2B】実施例2によるポリイミドフィルム断面のTEMイメージを多様な部位で倍率を多様にして撮影したものである。
図2C】実施例2によるポリイミドフィルム断面のTEMイメージを多様な部位で倍率を多様にして撮影したものである。
図2D】実施例2によるポリイミドフィルム断面のTEMイメージを多様な部位で倍率を多様にして撮影したものである。
図3図2のTEMイメージで明るい領域と暗い領域とに対してSTEM(scanning transmission electron microscope)HAADF(high−angle annular dark−field imaging)分析及びEDS(Energy Dispersive Spectrometer)マッピング(mapping)によって成分分析を行って、Siの分布を示した図面である。
図4A】比較例1によるポリイミドフィルム断面のTEMイメージを多様な部位で倍率を多様にして撮影したものである。
図4B】比較例1によるポリイミドフィルム断面のTEMイメージを多様な部位で倍率を多様にして撮影したものである。
図4C】比較例1によるポリイミドフィルム断面のTEMイメージを多様な部位で倍率を多様にして撮影したものである。
図4D】比較例1によるポリイミドフィルム断面のTEMイメージを多様な部位で倍率を多様にして撮影したものである。
図5図4のTEMイメージで明るい領域と暗い領域とに対してSTEM HAADF分析及びEDSマッピングによって成分分析を行って、Siの分布を示した図面である。
図6】それぞれ実施例2及び比較例1の共重合体で製造したフィルムのEDS成分分析の結果を示した図面である。
図7】それぞれ実施例2及び比較例1の共重合体で製造したフィルムのEDS成分分析の結果を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、多様な変換を加え、さまざまな実施例を有することができるので、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明に詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる、あらゆる変換、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。本発明を説明するに当って、関連した公知技術についての具体的な説明が、本発明の要旨を不明にする恐れがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0035】
本明細書において、あらゆる化合物または有機基は、特別な言及がない限り、置換または非置換のものであり得る。ここで、「置換された」とは、化合物または有機基に含まれた少なくとも1つの水素がハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、炭素数3〜30のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、カルボン酸基、アルデヒド基、エポキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、及びこれらの誘導体からなる群から選択される置換基に置き換えられたことを意味する。
【0036】
また、本明細書において、「これらの組合わせ」とは、特別な言及がない限り、2つ以上の作用基が単一結合、二重結合、三重結合、炭素数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基(−CH−)、エチレン基(−CHCH−)など)、炭素数1〜10のフルオロアルキレン基(例えば、フルオロメチレン基(−CF−)、パーフルオロエチレン基(−CFCF−)など)、N、O、P、S、またはSiのようなヘテロ原子またはそれを含む作用基(例えば、分子内カルボニル基(−C=O−)、エーテル基(−O−)、エステル基(−COO−)、−S−、−NH−または−N=N−などを含むヘテロアルキレン基)のような連結基によって結合されているか、または2つ以上の作用基が縮合、連結されていることを意味する。
【0037】
高温工程を伴うフレキシブルデバイスは、高温での耐熱性が要求されるが、特に、Oxide TFTとLTPS(low temperature polycrystalline silicon)工程を使用するOLED(organic light emitting diode)デバイスの場合、工程温度が350℃以上500℃に近接する。
【0038】
このような温度では、耐熱性に優れたポリイミドであっても、熱分解されやすく、熱による収縮または膨張が起こりうる。したがって、フレキシブルデバイスの製造のためには、優れた機械的特性と共に、高温で高い透明性を保持しながら、優れた熱安定性を示すことができるポリイミドの開発が必要である。
【0039】
本発明は、重合成分として、酸二無水物、ジアミン及びジメチルシロキサン(DMS)−ジフェニルシロキサン(DPS)オリゴマーと、25℃分配係数(LogP)が正数である溶媒と、を含有する組成物を重合及び硬化して製造されるポリイミド共重合体であって、DMS−DPSドメインが、50nm以下のサイズにポリイミドマトリックスに均一に分布しており、DMS−DPSドメインが占める体積が全体体積の15〜30体積%であるポリイミド共重合体を提供する。DMS−DPSドメインのサイズは 1〜50nm、または5〜40nm、または10〜30nmであることが均一な分布のために望ましい。
【0040】
一実施例によれば、前記DMS−DPSオリゴマーが、下記の構造を有するものである。
【化15】
【0041】
前記構造において、p及びqは、モル分率であって、p+q=100である時、pは、70〜90、qは、10〜30である。
【0042】
また、25℃分配係数(LogP)正数である溶媒が、アミド系溶媒であり得る。
【0043】
前記アミド系溶媒が、ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、ジエチルプロピオンアミド(DEPA)、N,N−ジエチルアセトアミド(DEAc)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N−エチルピロリドン(NEP)から選択される1つ以上であるポリイミド共重合体であり得る。
【0044】
本発明によれば、ポリイミドマトリックス内に分布されているDMS−DPSドメインのサイズが、ナノサイズ、例えば、1〜50nm、または5〜40nm、または10〜30nmであって、連続相を有するので、耐熱性と機械的物性とを保持しながら、残留応力を最小化することができる。このような連続相を有さない場合には、残留応力の減少効果はあり得るが、耐熱性と機械的物性とが著しく減少して、工程に利用することが困難である。
【0045】
ここで、DMS−DPSドメインは、DMS−DPS構造のポリマーが分布する領域を意味し、そのサイズは、当該領域を取り囲む円の直径を称するものとする。
【0046】
DMS−DPS構造を含む部分(ドメイン)が、ポリイミドマトリックス内に連続相で連結されていることが望ましいが、ここで、連続相とは、ナノサイズのドメインが均一に分布している形状を意味する。
【0047】
したがって、本発明は、高分子量を有するDMS−DPSであるにも拘らず、ポリイミドマトリックス内で相分離なしに均一に分布されて、ヘイズ特性が低下して、より透明な特性を有するポリイミドが得られるだけではなく、DMS−DPS構造が連続相として存在することにより、ポリイミドの機械的強度及びストレス緩和効果をより効率的に向上させる。このような特性から、本発明による組成物は、熱的特性及び光学的特性だけではなく、コーティング−硬化後、基板が反る現象が減少して、平らなポリイミドフィルムを提供することができる。
【0048】
本発明は、分子量が高いSi構造を含むジアミンを用いて25℃分配係数(LogP)が正数である有機溶媒でポリイミドを重合して製造することにより、より無色透明でありながらも、耐熱性に優れたポリイミドフィルムを提供することができる。
【0049】
一実施例によれば、共重合体は、下記化学式の構造を分子構造内に含み、分子量が4000g/mol以上であるジアミンと1種以上のテトラカルボン酸二無水物とを重合成分として製造されたポリイミド前駆体;及びLogPが正数である有機溶媒を含むポリイミド前駆体組成物;を硬化して製造することができる。
【化16】
【0050】
前記構造において、前記R及びRは、それぞれ独立して単一結合、炭素数1〜5のアルキレン基または炭素数6以上の2価の芳香族基であり、R、R、R及びRは、それぞれ独立して1〜5のアルキル基であり、R、R、R及びR10は、それぞれ独立してフェニル基であり、m1及びm2は、それぞれ独立して1以上の整数であり、*は、連結部位を示す。
【0051】
望ましい実施例によれば、前記化学式のジアミンは、下記化学式1の構造を有する。
[化学式1]
【化17】
【0052】
前記構造において、p及びqは、モル分率であって、p+q=100である時、pは、70〜90、qは、10〜30である。
【0053】
一実施例によれば、前記化学式1の構造を含むジアミンの分子量は、4000g/mol以上であり、望ましくは、4400g/mol以上、より望ましくは、5000g/mol以上の分子量を有するものである。ここで、分子量は、重量平均分子量を意味し、分子量計算は、NMR分析または酸塩基滴定法を使用してアミン当量を計算する方式を使用することができる。
【0054】
前記化学式1の構造を含むジアミンの分子量が4000g/mol未満である場合には、耐熱性が低下し、例えば、製造されたポリイミドのガラス転移温度(Tg)が低下するか、熱膨張係数が過度に増加する。
【0055】
一実施例によれば、本発明は、1種以上のジアミンが使われ、前記化学式1のジアミンは、全体ジアミンのうち、1〜20mol%に含まれ、望ましくは、1〜10mol%に含まれうる。
【0056】
一実施例によれば、前記化学式1のジアミンは、ポリイミド共重合体の全体固形分、すなわち、ポリイミド前駆体固形分の重量または前記重合成分(ジアミン及び酸二無水物)の総重量に対して10〜50重量%であり、望ましくは、10〜40重量%に添加されるものである。前記化学式1の構造を含むジアミンが高分子総重量に対して過度に添加されれば、例えば、50重量%以上、または40重量%以上に添加されれば、ポリイミドのモジュラス(modulus)のような機械的特性が低下し、膜の強度が減少することにより、工程上でフィルムが破れるなどの物理的損傷が発生する。また、化学式1の構造を有するジアミンが過度に添加される場合、前記シロキサン構造を有する高分子から由来するTgが表われ、これにより、350℃以下の低い工程温度でTgが表われて、350℃以上の無機膜蒸着工程時に、高分子の流動現象によってフィルム表面にしわが発生して、無機膜が割れる現象が発生する。
【0057】
本発明に使われる溶媒としては、LogPが正数である有機溶媒を使用することが望ましく、具体的に、LogPが正数であるアミド系溶媒を使用するものである。例えば、ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、ジエチルプロピオンアミド(DEPA)、N,N−ジエチルアセトアミド(DEAc)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)及びN−エチルピロリドン(NEP)から選択される1つ以上の有機溶媒を含みうる。特に、ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、ジエチルプロピオンアミド(DEPA)が望ましい。
【0058】
本発明によるポリイミド共重合体は、前記のような有機溶媒を使用することにより、化学式1の構造が導入されたフレキシブル(flexible)なポリイミド反復構造と異なるポリイミド構造の極性差による相分離によって発生する白濁現象を減少させることができる。従来、前記相分離を解決するために、2種の有機溶媒を使用したが、本発明は、1種の有機溶媒を使用することだけでも、白濁現象を減少させて、より透明なポリイミドフィルムを製造することができる。
【0059】
本発明は、シロキサン構造を含む化学式1の構造をポリイミド構造に挿入することにより、ポリイミドのモジュラス強度を向上させ、外力によるストレスを緩和させる。この際、シロキサン構造を含むポリイミドは、極性を示し、シロキサン構造を含まないポリイミド構造との極性差による相分離が発生し、これにより、シロキサン構造がポリイミド構造全般に不均一に分布される。この場合には、シロキサン構造によるポリイミドの強度向上及びストレス緩和効果のような物性向上効果を示しにくいだけではなく、相分離によってヘイズが増加して、フィルムの透明性が低下する。特に、シロキサン構造を含むジアミンが高分子量を有する場合に、これより製造されたポリイミドは、その極性がさらに克明に表われて、ポリイミド間の相分離現象がより克明に表われることができる。しかし、低分子量の構造を有するシロキサンジアミンを使用する場合には、ストレス緩和などの効果を示すためには、多量を添加しなければならず、これは、低い温度でTgが発生するなどの工程上の問題を発生させ、これにより、ポリイミドフィルムの物理的特性が低下する。これにより、高分子量のシロキサンジアミンを添加する場合には、relaxation segmentが分子内に大きく形成され、したがって、低分子量を添加することに比べて、少ない含量でも効果的にストレス緩和効果を示すことができる。したがって、本発明は、前記高分子量を有するシロキサン構造を有する化学式1のジアミンをポリイミドマトリックス上に相分離なしにより均等に分布させるための方法を研究した。
【0060】
前記問題を解決するために、極性溶媒と非極性溶媒とを混合して使用する方法もあるが、極性溶媒の場合、揮発性の高い傾向があり、したがって、製造工程上であらかじめ揮発されるなどの問題が発生し、このために、工程の再現性が低下するなどの問題が発生するだけではなく、相分離問題を完全に改善することができず、製造されたポリイミドフィルムのヘイズが高くなって、透明度が低下する。本発明では、化学式1の構造を含むポリイミド構造を全体的なポリイミドマトリックスに均一に分布させるために、LogPが正数である溶媒を使用し、特に、LogPが正数であるアミン係溶媒を使用し、より具体的には、溶媒の分子が両親媒性を有する構造を含む溶媒を使用することにより、極性溶媒を使用することによる工程上の問題を解決するだけではなく、両親媒性を有する分子構造によって、1種類の溶媒のみを使用しても、ポリイミドを均一に分布させて、相分離による問題の解決に非常に適し、これにより、ヘイズ特性が著しく改善されたポリイミドを提供することができる。
【0061】
一実施例によれば、前記テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式2aから化学式2hの4価の有機基を分子構造内に含むテトラカルボン酸二無水物のうちから選択されるものである。
[化学式2a]
【化18】
[化学式2b]
【化19】
[化学式2c]
【化20】
[化学式2d]
【化21】
[化学式2e]
【化22】
[化学式2f]
【化23】
[化学式2g]
【化24】
[化学式2h]
【化25】
【0062】
前記化学式2aから化学式2hにおいて、前記R11からR24は、それぞれ独立して−F、−Cl、−Br及び−Iからなる群から選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、チオール基(−SH)、ニトロ基(−NO)、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲノアルコキシ、炭素数1〜10のハロゲノアルキル、炭素数6〜20のアリール基から選択される置換基であり、前記a1は、0〜2の整数、a2は、0〜4の整数、a3は、0〜8の整数、a4及びa5は、それぞれ独立して0〜3の整数、そして、a7及びa8は、それぞれ独立して0〜3の整数であり、a10及びa12は、それぞれ独立して0〜3の整数、a11は、0〜4の整数、a15及びa16は、それぞれ独立して0〜4の整数、a17及びa18は、それぞれ独立して0〜4の整数であり、a6、a9、a13、a14、a19、a20は、それぞれ独立して0〜3の整数であり、nは、1〜3の整数であり、A11からA16は、それぞれ独立して−O−、−CR'R''−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものであり、この際、前記R'及びR''は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、及び炭素数1〜10のフルオロアルキル基からなる群から選択されるものである。
【0063】
本発明は、前記化学式1のジアミンの以外に、ジアミンとして、下記化学式3の2価の有機基を分子構造内に含むジアミンを全体ジアミン含量中に80〜99mol%に含みうる。
[化学式3]
【化26】
【0064】
前記化学式3において、前記R31、R32は、それぞれ独立して−F、−Cl、−Br及び−Iからなる群から選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、チオール基(−SH)、ニトロ基(−NO)、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲノアルコキシ、炭素数1〜10のハロゲノアルキル、炭素数6〜20のアリール基から選択される置換体であり、望ましくは、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル基、アルキル基、アリール基及びシアノ基から選択される置換基であり得る。例えば、前記ハロゲン原子は、フルオロ(−F)であり、ハロゲノアルキル基は、フルオロ原子を含む炭素数1〜10のフルオロアルキル基であって、フルオロメチル基、パーフルオロエチル基、トリフルオロメチル基などから選択されるものであり、前記アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基から選択されるものであり、前記アリール基は、フェニル基、ナフタレニル基から選択されるものであり、より望ましくは、フルオロ原子及びフルオロアルキル基などのフルオロ原子を含む置換基であり得る。
【0065】
Qは、単一結合、−O−、−CR'R''−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものであり、この際、前記R'及びR''は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、及び炭素数1〜10のフルオロアルキル基からなる群から選択されるものである。
【0066】
この際、本発明の「フルオロ系置換基」とは、「フルオロ原子置換基」だけではなく、「フルオロ原子を含有する置換基」をいずれも意味するものである。
【0067】
前記化学式3のジアミンは、具体的に、下記化学式3aから化学式3dで表される化合物から選択されるものである。
【化27】
【0068】
前記化学式3aから化学式3dにおいて、Qは、前記前述した通りである。
【0069】
一実施例によれば、前記テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式4の構造を含むテトラカルボン酸二無水物を全体テトラカルボン酸二無水物中に20〜80mol%含むものであり、望ましくは、30〜80mol%、より望ましくは、30〜70mol%に含まれうる。
[化学式4]
【化28】
【0070】
一実施例によれば、前記テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式5の構造を含むテトラカルボン酸二無水物を全体テトラカルボン酸二無水物中に20〜80mol%含むものであり、望ましくは、20〜60mol%、より望ましくは、20〜50mol%に含みうる。
[化学式5]
【化29】
【0071】
前記化学式5において、Q及びQは、それぞれ独立して単一結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものである。
【0072】
一実施例によれば、前記化学式5は、下記化学式5aから化学式5eの化合物であり得る。
【化30】
【0073】
前記フルオレン構造を含む反復構造をポリイミド構造に含ませることにより、フィルムの厚さ方向位相差を減少させることができる。
【0074】
本発明は、前記化学式4または化学式5のテトラカルボン酸二無水物と共に、下記化学式6aから化学式6rの4価の有機基構造を含むテトラカルボン酸二無水物から選択される1つ以上を共に使用することができる。
【化31】
【0075】
前記化学式6lにおいて、Aは、単一結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)NH−、−S−、−SO−、フェニレン基、及びこれらの組合わせからなる群から選択されるものであり、vは、0または1の整数であり、前記化学式6rにおいて、xは、1〜10の整数である。
【0076】
また、前記化学式6aから化学式6rの4価の有機基内に存在する1以上の水素原子は、−F、−Cl、−Br及び−Iからなる群から選択されるハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、チオール基(−SH)、ニトロ基(−NO)、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲノアルコキシ、炭素数1〜10のハロゲノアルキル、炭素数6〜20のアリール基から選択される置換基に置換される。
【0077】
または、本発明は、前記化学式4及び化学式5のテトラカルボン酸二無水物を共に使用し、前記化学式4及び化学式5のテトラカルボン酸二無水物を共に使用する場合、前記テトラカルボン酸二無水物の総含量に対して、前記化学式5のテトラカルボン酸二無水物の含量が、10〜30mol%、望ましくは、10〜25mol%、より望ましくは、15〜25mol%の含量で含まれるものである。前記フルオレン構造を含む化学式5の化合物が、化学式4で表される化合物と共にポリイミドの製造に使われることにより、熱による面方向収縮特性が緩和されて、加熱工程後、冷却工程時に発生するフィルムの収縮現象を改善及びガラス転移温度のような耐熱性が向上する。
【0078】
本発明の一実施例によれば、テトラカルボン酸二無水物の総含量と前記ジアミンの含量は、1:1.1〜1.1:1mol比で反応し、望ましくは、反応性の向上及び工程性の向上のために、前記テトラカルボン酸二無水物の総含量が、ジアミンに比べて、過量で反応するか、または、ジアミンの含量がテトラカルボン酸二無水物の総含量に比べて、過量で反応することが望ましい。
【0079】
本発明の一実施例によれば、前記テトラカルボン酸二無水物の総含量とジアミンの含量のmol比は、1:0.99〜0.99:1、望ましくは、1:0.98〜0.98:1に反応することが望ましい。
【0080】
また、前記重合反応に使われる有機溶媒としては、25℃での分配係数(LogP値)が正数であり、沸点が180℃以下であるものであり、より具体的に、分配係数LogP値は、0.01〜3、または0.01〜2、または0.1〜2であり得る。
【0081】
前記分配係数は、ACD/Labs社のACD/Percepta platformのACD/LogP moduleを使用して計算され、ACD/LogP moduleは、分子の2D構造を用いてQSPR(Quantitative Structure−Property Relationship)方法論の基盤のアルゴリズムを利用する。
【0082】
前記分配係数値が正数である場合には、溶媒の極性が疎水性であることを意味するが、本発明者の研究によれば、分配係数値が正数である特定の溶媒を使用してポリイミド前駆体組成物を製造すれば、溶液のディウェッティング(dewetting)特性が改善されることが分かった。また、本発明は、前記のようにLogPが正数を有する溶媒を使用することにより、レベリング剤のような素材の表面張力及び塗膜の平滑性を調節する添加剤を使用せずとも、溶液のディウェッティング現象を制御し、これは、添加剤などの付加的な添加剤を使用しないので、最終生成物に低分子物質が含有されるなどの品質及び工程上の問題を除去するだけではなく、より効率的に均一な特性を有するポリイミドフィルムを形成しうる効果がある。
【0083】
例えば、ポリイミド前駆体組成物をガラス基板にコーティングする工程において、硬化時または湿度条件のコーティング液の放置条件でコーティング層の収縮による溶液のディウェッティング現象が発生することがある。このようなコーティング溶液のディウェッティング現象は、フィルムの厚さの偏差をもたらして、これによるフィルムの耐屈曲性の不足によってフィルムが切れるか、カッティング時に、エッジが割れる現象が表われて、工程上の作業性が悪く、収率が低下するという問題が発生する。
【0084】
また、基板上に塗布されたポリイミド前駆体組成物に極性を有する微細異物が流入される場合、LogPが負数である極性の溶媒を含むポリイミド前駆体組成物では、前記異物が有する極性によって異物の位置を基準に散発的なコーティングの亀裂または厚さの変化が起こりうるが、LogPが正数である疎水性の溶媒を使用する場合には、極性を有する微細異物が流入される場合にも、コーティングの亀裂による厚さの変化などの発生が減少または抑制される。
【0085】
具体的に、LogPが正数である溶媒を含むポリイミド前駆体組成物は、下記式1と定義されるディウェッティング率(dewetting ratio)が0〜0.1%以下であり得る。
[式1]
ディウェッティング率(%)=[(A−B)/A]×100
【0086】
前記式1において、A:基板(100mm×100mm)上にポリイミド前駆体組成物が完全にコーティングされた状態での面積であり、B:ポリイミド前駆体組成物またはPIフィルムがコーティングされた基板の縁部先端からディウェッティング現象が発生した後の面積である。
【0087】
このようなポリイミド前駆体組成物及びフィルムのディウェッティング現象は、ポリイミド前駆体組成物溶液をコーティングした後、30分以内に発生し、特に、縁部から巻き込まれ始めることにより、縁部の厚さが厚くなってしまう恐れがある。
【0088】
本発明によるポリイミド前駆体組成物を基板にコーティングした後、10分以上、例えば、10分以上、例えば、40分以上の時間湿度条件で放置した後の前記コーティングされた樹脂組成物溶液のディウェッティング率が0.1%以下であり、例えば、20〜30℃の温度で、40%以上の湿度条件、より具体的には、40〜80%の範囲の湿度条件、すなわち、40%、50%、60%、70%、80%のそれぞれの湿度条件で、例えば、50%の湿度条件で10〜50分間放置された以後にも、0.1%以下の非常に小さなディウェッティング率を示し、望ましくは、0.05%、より望ましくは、ほぼ0%に近いディウェッティング率を示すことができる。
【0089】
前記のようなディウェッティング率は、硬化以後にも保持されるものであり、例えば、ポリイミド前駆体組成物を基板にコーティングした後、10分以上、例えば、20〜30℃の温度で、40%以上の湿度条件、より具体的には、40〜80%の範囲の湿度条件、すなわち、40%、50%、60%、70%、80%のそれぞれの湿度条件で、例えば、50%の湿度条件で10〜50分間放置した後、硬化されたポリイミドフィルムのディウェッティング率が0.1%以下であり、すなわち、熱処理による硬化工程でも、ディウェッティングがほとんど起こらないか、全く起こらず、具体的には、0.05%、より望ましくは、ほぼ0%に近いディウェッティング率を示すことができる。
【0090】
本発明によるポリイミド前駆体組成物は、このようなディウェッティング現象を解決することにより、より均一な特性を有するポリイミドフィルムを収得することができて、製造工程の収率をより向上させうる。
【0091】
また、本発明による溶媒の密度は、ASTM D1475の標準測定方法で測定して1g/cm以下であり、密度が1g/cm以上の値を有する場合には、相対粘度が高くなって、工程上の効率性が減少する。
【0092】
前記テトラカルボン酸二無水物をジアミンと反応させる方法は、溶液重合など通常のポリイミド前駆体重合の製造方法によって実施し、具体的には、ジアミンを有機溶媒中に溶解させた後、結果として収得された混合溶液にテトラカルボン酸二無水物を添加して重合反応させることで製造可能である。
【0093】
一実施例によれば、a)前記化学式1のジアミンを有機溶媒に投入する段階;b)前記a)段階から製造された溶液に化学式3のジアミンを投入する段階;c)前記b)段階から製造された溶液で1種以上のテトラカルボン酸二無水物を投入する段階;及びd)前記c)段階から製造された溶液を所定の反応温度で重合する段階;を含む方法で重合させることができる。
【0094】
前記反応は、不活性ガスまたは窒素気流下に実施され、無水条件で実行可能である。
【0095】
また、前記重合反応時に、反応温度は、−20〜80℃、望ましくは、0〜80℃で実施される。反応温度が過度に高い場合、反応性が高くなって、分子量が大きくなり、前駆体組成物の粘度が上昇することにより、工程上に不利であり得る。
【0096】
前記製造方法によって製造されたポリイミド前駆体組成物は、フィルム形成工程時の塗布性などの工程性を考慮して、前記組成物が適切な粘度を有させる量で固形分を含むことが望ましい。一実施例によれば、全体ポリイミド前駆体の含量が8〜25重量%になるように組成物の含量を調節し、望ましくは、10〜25重量%、より望ましくは、10〜20重量%以下に調節することができる。
【0097】
または、前記ポリイミド前駆体組成物が、3,000cP以上、あるいは4,000cP以上の粘度を有するように調節するものであり、前記ポリイミド前駆体組成物の粘度は、10,000cP以下、望ましくは、9,000cP以下、より望ましくは、8,000cP以下の粘度を有するように調節することが望ましい。ポリイミド前駆体組成物の粘度が、10,000cPを超過する場合、ポリイミドフィルム加工時に、脱泡の効率性が低下することにより、工程上の効率だけではなく、製造されたフィルムは、気泡の発生によって表面粗度が不良であって、電気的、光学的、機械的特性が低下する。
【0098】
また、本発明によるポリイミドの分子量は、10,000〜200,000g/mol、あるいは20,000〜100,000g/mol、あるいは30,000〜100,000g/molの重量平均分子量を有するものである。また、本発明によるポリイミドの分子量分布(Mw/Mn)は、1.1〜2.5であることが望ましい。ポリイミドの重量平均分子量または分子量分布が、前記範囲を外れる場合、フィルム形成が難しいか、または透過度、耐熱性及び機械的特性などポリイミド系フィルムの特性が低下する恐れがある。
【0099】
引き続き、前記重合反応の結果として収得されたポリイミド前駆体をイミド化させることにより、透明ポリイミドフィルムを製造することができる。この際、前記イミド化工程は、具体的に化学イミド化または熱イミド化の方法がある。
【0100】
例えば、前記重合されたポリイミド前駆体組成物に脱水剤及びイミド化触媒を添加した後、50〜100℃の温度で加熱して、化学的反応によってイミド化させるか、または前記溶液を還流させながら、アルコールを除去してイミド化させる方法でポリイミドが得られる。
【0101】
前記化学イミド化の方法において、前記イミド化触媒として、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリンまたはキノリンなどが使われ、その他にも、置換または非置換の窒素含有複素環化合物、窒素含有複素環化合物のN−オキシド化合物、置換または非置換のアミノ酸化合物、ヒドロキシル基を有する芳香族炭化水素化合物または芳香族複素環状化合物があり、特に、1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、5−メチルベンズイミダゾールなどの低級アルキルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール誘導体、イソキノリン、3,5−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、4−n−プロピルピリジンなどの置換ピリジン、p−トルエンスルホン酸などが使われることもある。
【0102】
前記脱水剤としては、無水酢酸などの酸無水物を使用することができる。
【0103】
または、前記ポリイミド前駆体組成物を基板上に塗布した後、熱処理する方法でイミド化することができる。
【0104】
前記ポリイミド前駆体組成物は、有機溶媒中に溶解された溶液の形態であり、このような形態を有する場合、例えば、ポリイミド前駆体を有機溶媒中で合成した場合、溶液は、得られる反応溶液それ自体でも良く、また、この反応溶液を他の溶媒で希釈したものでも良い。また、ポリイミド前駆体を固形粉末として得た場合には、それを有機溶媒に溶解させて溶液にしたものでも良い。
【0105】
本発明は、前記ポリイミド前駆体組成物を基板上に塗布する段階;前記塗布されたポリイミド前駆体組成物を熱処理する段階;を含むポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【0106】
前記ポリイミド前駆体組成物を基板に塗布し、IRオーブン、熱風オーブンやホットプレート上で熱処理され、この際、前記熱処理温度は、300〜500℃、望ましくは、320〜480℃の温度範囲であり、前記温度範囲内で多段階加熱処理で進行することもできる。前記熱処理工程は、20〜70分間進行し、望ましくは、20〜60分間進行しうる。
【0107】
本発明のポリイミド前駆体組成物に含有される前記有機溶媒としては、前記合成反応時に使われる有機溶媒と同一なものが使われる。
【0108】
本発明は、効果に損傷されない範囲であれば、シランカップリング剤、架橋性化合物、イミド化を効率的に進行させる目的としてイミド化促進剤などを添加しても良い。
【0109】
また、前記ポリイミド系フィルムは、ヘイズが2以下、望ましくは、1以下、または0.9以下のヘイズ値を有して、透明性が改善されたポリイミドフィルムを提供することができる。この際、前記ポリイミドフィルムの厚さは、8〜15μmであり、望ましくは、10〜12μmであり得る。
【0110】
また、5〜30μmのフィルムの厚さ範囲で380〜760nm波長の光に対する透過度が80%以上であり、黄色度(YI)が約15以下、望ましくは、約10以下、より望ましくは、約8以下の値を有する無色透明ポリイミドフィルムであり得る。前記のように、優れた光透過度及び黄色度を有することにより、著しく改善された透明度及び光学特性を示すことができる。
【0111】
また、前記ポリイミド系フィルムは、面内位相差値(Rin)が約0〜100nmであり、厚さ方向の位相差値(Rth)が約1000nm以下、または0〜700nm、望ましくは、0〜600nm、より望ましくは、0〜500nmであり得る。前記厚さ方向の位相差の範囲でディスプレイに適した視感性を発現し、厚さ方向位相差が1000nm以上である場合、ポリイミドフィルムで位相差が発生して、光が歪曲されて見えることにより、視感性が著しく低下する。
【0112】
また、本発明によるポリイミドフィルムは、ガラス転移温度(Tg)が350℃以上であり、望ましくは、360℃以上、より望ましくは、370℃以上であり得る。
【0113】
また、本発明によるポリイミドフィルムは、温度変化による熱安定性に優れ、例えば、100〜400℃の温度範囲で加熱及び冷却工程をn+1回経た後の熱膨張係数が−10〜100ppm/℃の値を有し、望ましくは、−7〜90ppm/℃の値、より望ましくは、80ppm/℃以下であり得る。
【0114】
本発明のさらに他の一具現例では、前記ポリイミド共重合体を含む成形品(article)を提供する。
【0115】
前記成形品は、フィルム、繊維(fiber)、コーティング材、接着材などであり得るが、これに限定されるものではない。前記成形品は、前記共重合体と無機粒子の複合体組成物を使用して乾湿式法、乾式法、湿式法などで形成しうるが、これに限定されるものではない。具体的に、前述したように、前記成形品は、光学フィルムであり、この場合、前記ポリイミド共重合体を含む組成物は、基板上にスピンコーティングなどの方法で適用された後、それを乾燥及び硬化することにより、容易に製造可能である。
【0116】
本発明によるポリイミドは、剛直な構造による耐熱性、機械的強度などの特性をそのまま保持し、特に、高熱工程時に発生する熱収縮挙動に対して優れた耐熱性を示すだけではなく、優れた無色透明な特性を示して、素子用基板、ディスプレイ用カバー基板、光学フィルム(optical film)、ICパッケージ、粘着フィルム、多層FPC、テープ、タッチパネル、光ディスク用保護フィルムのような多様な分野に使われる。
【0117】
本発明のさらに他の一具現例によれば、前記成形品を含むディスプレイ装置を提供する。具体的には、前記ディスプレイ装置は、液晶表示装置(liquid crystal display device、LCD)、有機発光ダイオード(organic light emitting diode、OLED)などが挙げられ、特に、高温工程を必要とするLTPS工程を使用するOLEDデバイスに適するが、これに限定されるものではない。
【0118】
以下、当業者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は、さまざまな異なる形態として具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0119】
<実施例1>
【0120】
窒素気流が流れる攪拌機内にジメチルプロピオンアミド(DMPA)(分配係数0.504)96gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態で両末端アミン変性DMS−DPS(分子量5000g/mol、p=73.3、q=26.7)0.0017molとTFMB(2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)0.0304molとを前記と同じ温度で添加して溶解させた。前記DMS−DPS及びTFMBが添加された溶液にPMDA(ピロメリット酸二無水物)を0.0321molで前記と同じ温度で添加して、3時間撹拌した後、80℃で4時間撹拌した。
【0121】
<実施例2>
【0122】
窒素気流が流れる攪拌機内に溶媒としてジエチルプロピオンアミド(DEPA)(分配係数1.275)100gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態で両末端アミン変性DMS−DPS(分子量5000g/mol、p=73.3、q=26.7)0.0014molとTFMB(2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)0.0306molとを同じ温度で添加して溶解させた。前記DMS−DPS及びTFMBが添加された溶液にPMDA(ピロメリット酸二無水物)0.03211molを同じ温度で添加して、3時間撹拌した後、80℃で4時間撹拌した。
【0123】
<比較例1>
【0124】
窒素気流が流れる攪拌機内にNMP(N−メチルピロリドン)(分配係数−0.28)96gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態で両末端アミン変性DMS−DPS(Diphenylsiloxane−dimethylsiloxane co−oligomer、分子量4400g/mol、p=95.2、q=4.8)0.0017molとTFMB(2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)0.0304molとを同じ温度で添加して溶解させた。前記DMS−DPS及びTFMBが添加された溶液にPMDA(ピロメリット酸二無水物)0.0321molを同じ温度で添加して、3時間撹拌した後、80℃で4時間撹拌した。
【0125】
<比較例2>
【0126】
窒素気流が流れる攪拌機内にNMP(分配係数−0.28)137gを満たした後、反応器の温度を25℃に保持した状態で両末端アミン変性反応器の温度を25℃に保持した状態で両末端アミン変性DMS−DPS(分子量5000g/mol、p=50.8、q=49.2)0.0014molとTFMB(2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)0.0306molとを同じ温度で添加して溶解させた。前記DMS−DPS及びTFMBが添加された溶液にPMDA(ピロメリット酸二無水物)0.03211molを同じ温度で添加して、3時間撹拌した後、80℃で4時間撹拌した。
【0127】
<製造例>
【0128】
前記実施例1から実施例2及び比較例1から比較例2から製造されたポリイミド共重合体を9.5〜11μmの厚さにガラス基板にスピンコーティングした。ポリイミド共重合体が塗布されたガラス基板をオーブンに入れ、2℃/minの速度で加熱し、80℃で15分、150℃で30分、220℃で30分、400℃で1時間を保持して、硬化工程を進行した。硬化工程完了後に、ガラス基板を水に浸してガラス基板上に形成されたフィルムを取り外して、オーブンで100℃に乾燥して、ポリイミドのフィルムを製造した。
【0129】
<試験例1−断面成分分析>
【0130】
実施例1及び比較例1のポリイミド共重合体で製造されたポリイミドフィルムをエポキシ成形(Epoxy molding)して、TEM薄片を製作した。前記薄片をSTEM HAADF技法で染色なしに構造を観察した。
【0131】
TEM(FE−STEM、TITIAN G2 80−200 ChemiSTEM)で測定され、分析条件は、下記のようにして測定された。
−加速電圧:80〜200kV
−分解能:point of resolution(240pm)
−Energy spread:0.8Ev
【0132】
観察結果及び断面のEDS分析結果を図2から図7に示した。
【0133】
図2は、実施例2によるポリイミドフィルム断面のTEMイメージである。
【0134】
図3は、図2のTEMイメージで明るい領域と暗い領域とに対してSTEM HAADF分析及びEDSマッピングによって成分分析を行って、Siの分布を示したものである。
【0135】
図4は、比較例1によるポリイミドフィルム断面のTEMイメージである。
【0136】
図5は、図4のTEMイメージで明るい領域と暗い領域とに対してSTEM HAADF分析及びEDSマッピングによって成分分析を行って、Siの分布を示したものである。
【0137】
図6及び図7は、それぞれ実施例2及び比較例1の共重合体で製造したフィルムのEDS成分分析の結果を示したものである。
【0138】
図2には、相対的に明るく見える領域(white)と相対的に暗く見える部分(black)とが均一に分布されていることが分かり、この際、相対的に明るく見える領域がSiを含む部分であることをHAADF技法を通じるSi分析とEDSマッピングを通じるpoint分析とで確認することができる(図3)。図2及び図3を参照すれば、Siを含むDMS−DPSドメインが、約10〜30nmのサイズに連続して(co−continuous)連結されている。
【0139】
TEMイメージ上の明るい部分がポリイミド上に均一に分布されていることは、ポリイミド試料上にSiを含むポリイミドが微細な相で分布されたことを意味し、これは、DMS−DPS構造を含む部分が、ポリイミドマトリックス内に連続して(連続相に)連結されていることを意味する。
【0140】
一方、図4及び図5の場合には、DMS−PDSドメインが凝縮されて、1〜5μのサイズを有しながら、不均一に分布することが分かる。
【0141】
また、図6及び図7は、実施例1及び比較例1の組成物をガラス基板にコーティングし、硬化したフィルムの状態とEDX成分分析の結果とを示す。図6の場合、DMS−DPS部分が、高分子内のナノ構造で連続した相を有することが分かるが、一方、図7は、DMS−DPS部分が凝集されていることを示し、凝集された部分には、Si成分が多量検出されたことが分かる。また、これにより、基板にコーティングされたフィルムに白濁の発生を確認することができた。
【0142】
したがって、本発明は、高分子量を有するDMS−DPSオリゴマーであるにも拘らず、ポリイミドマトリックス内で相分離なしに均一に分布されて、ヘイズ特性が低下して、より透明な特性を有するポリイミドが得られる。それだけではなく、DMS−DPS構造が連続相として存在することにより、ポリイミドの機械的強度及びストレス緩和効果をより効率的に向上させる。このような特性から、本発明による組成物は、熱的特性及び光学的特性だけではなく、基板にコーティング−硬化後、基板が反る現象が減少して、平らにポリイミドフィルムがコーティングされた基材を提供することができる。また、基材から物理的または化学的にコーティングされたポリイミドフィルムを剥離した後のフィルムのディウェッティングも少なくて、工程性を向上させうる。
【0143】
本発明は、分子量が高いSi構造を含むジアミンを用いて分配係数(LogP)が正数であるアミド系有機溶媒でポリイミドを重合して製造することにより、より無色透明でありながらも、熱的残留応力を最小化して、工程上、基板の反りが発生しない耐熱性に優れたポリイミドフィルムがコーティングされた基材及びそれを剥離して得られたポリイミドフィルムを提供することができる。
【0144】
前記製造されたポリイミドフィルムの黄色度(YI)、ヘイズ、厚さ方向位相差、CTE、ガラス転移温度(Tg)及びガラスストレス(Bow)を測定して、表1に示した。
【0145】
<黄色度(YI)>
【0146】
黄色度(YI)は、Color Eye 7000Aで測定した。
【0147】
<ヘイズ>
【0148】
Haze Meter HM−150を使用して、ASTM D1003による方法でヘイズを測定した。
【0149】
<厚さ方向位相差>
【0150】
厚さ方向位相差(Rth)は、Axoscanを用いて測定した。フィルムを一定のサイズに切って、厚さを測定した後、Axoscanで位相差を測定して、位相差値を補償するために、C−plate方向に補正しながら測定した厚さを入力した。
【0151】
<熱膨張係数(CTE)及びガラス転移温度(Tg)>
【0152】
前記フィルムを5x20mmのサイズに準備した後、アクセサリーを用いて試料をローディングする。実際に測定されるフィルムの長さは、16mmに同様にした。フィルムを引っ張る力を0.02Nに設定し、100〜400℃の温度範囲で5℃/minの昇温速度で1次昇温工程を進行した後、400〜100℃の温度範囲で4℃/minの冷却速度で冷却(cooling)した後、再び100〜450℃の温度範囲で5℃/minの昇温速度で2次昇温工程を進行して、熱膨張変化態様をTMA(TA社のQ400)で測定した。
【0153】
この際、2次昇温工程で昇温区間で見られる変曲点をTgとした。
【0154】
<ガラスストレス>
【0155】
ガラスストレスは、ボウ(Bow)値で示し、測定方法は、次の通りである。
【0156】
10cmx10cmのガラスをストレス測定器(TENCOR社のFLX2320)に設置し、レーザで中央をスキャンした後、両側1cmを除いた総8cmのセンター部分で左右両側4cm間の距離でガラスが曲がった程度(高さ)の偏差を測定した。
【表1】
【0157】
表1から分かるように、実施例1から実施例2のポリイミド共重合体は、分子量が4400g/mol以上であるDMS−DPSを使用することにより、ヘイズ特性だけではなく、ガラス転移温度及びCTE特性のような熱的特性が向上して表われる。一方、比較例1は、類似した分子量のDMS−DPSを使用したにも拘らず、分配係数負数である溶媒を使用して、DMS−DPSがポリイミド高分子内に均一な連続相を有さず、部分的な凝集現象を表わして、実施例2と比較した時、光学的特性と耐熱性とが低下することが分かる。
【0158】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者において、このような具体的な記述は、単に望ましい実施態様であり、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、下記の特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
図1(a)】
図1(b)】
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5
図6
図7