(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に対し、近年、省エネルギー化、高速化についての市場要求が強くなってきている。
画像形成装置では、電子写真記録、静電記録、磁気記録等の画像形成プロセスにより、未定着トナー画像を、画像転写方式若しくは直接方式により記録用紙、印刷紙、感光紙、静電記録紙等の記録材に形成する。未定着トナー画像を定着させるための定着装置としては、熱ローラ方式、フィルム加熱方式、電磁誘導加熱方式等の接触加熱方式の定着装置が広く採用されている。
【0003】
このような定着装置における近年の課題としては以下のようなものがある。
・電源投入時等に常温状態から印刷可能な所定の温度(リロード温度)に達するまでに要する時間であるウォームアップ時間や、印刷要求を受けた後に印刷準備を経て印字動作を行い排紙が完了するまでの時間であるファーストプリント時間の更なる短縮化(課題1)。
・画像形成装置の高速化に伴い、単位時間当たりの通紙枚数が増え、必要熱量が増大しているため、特に連続印刷の始めに熱量が不足する、所謂温度落ち込みの問題(課題2)。
【0004】
以上のような課題を解決するために、低熱容量でフィルム状に薄い無端ベルトを、支持体を兼ねる金属熱伝導体を介することなく、直接加熱する構成とし、高生産の画像形成装置に搭載されても、良好な定着性を得ることができる定着装置が提案された(例えば特許文献1)。この定着装置では、無端状の定着ベルトの外周側に配置された加圧ローラと定着ベルトの内部(ループ内)に固定配置されたニップ形成部材とが定着ベルトを介して圧接することによって定着ニップを形成している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略図である。
この画像形成装置1は、カラーレーザープリンタであり、そのプリンタ本体の中央には、中間転写ベルト30の展張方向に沿って4つの作像部4Y、4C、4M、4Kが並置して設けられている。各作像部4Y、4C、4M、4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容する以外は、同じ構成となっている。
【0013】
具体的に、それぞれ画像ステーションを構成する各作像部4Y、4C、4M、4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6と、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8等を備えている。なお、
図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに色用符号を付し、その他の作像部4Y、4C、4Mにおいては符号を省略している。
【0014】
作像部4Y、4C、4M、4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配設されている。露光装置9は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体5の表面へレーザー光を照射するようになっている。
【0015】
作像部4Y、4C、4M、4Kの上方には、転写装置3が配設されている。転写装置3は、転写体としての中間転写ベルト30と、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ31と、二次転写手段としての二次転写ローラ36とを備える。更に、転写装置3は二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33、テンションローラ34、及びベルトクリーニング装置35を備えている。
【0016】
中間転写ベルト30は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33及びテンションローラ34によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ32が回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
【0017】
4つの一次転写ローラ31は、それぞれ、各感光体5との間で中間転写ベルト30を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ31には、プリンタ本体の電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ31に印加されるようになっている。
【0018】
二次転写ローラ36は、二次転写バックアップローラ32との間で中間転写ベルト30を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、一次転写ローラ31と同様に、二次転写ローラ36にもプリンタ本体の電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ36に印加されるようになっている。
【0019】
ベルトクリーニング装置35は、中間転写ベルト30に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードを有する。
プリンタ本体の上部には、ボトル収容部2が設けられており、ボトル収容部2には補給用のトナーを収容した4つのトナーボトル2Y、2C、2M、2Kが着脱可能に装着されている。各トナーボトル2Y、2C、2M、2Kと各現像装置7との間には、周知のように補給路が設けられ、この補給路を介して各トナーボトル2Y、2C、2M、2Kから各現像装置7へトナーが補給されるようになっている。
【0020】
一方、プリンタ本体の下部には、記録材としての用紙Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から用紙Pを搬出する給紙ローラ11等が設けられている。ここで、記録材には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、周知のように、手差し給紙機構が設けられていてもよい。
【0021】
プリンタ本体内には、用紙Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向上流側には、二次転写ニップへ用紙Pを搬送する搬送手段としての一対のレジストローラ12が配設されている。
【0022】
また、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置20が配設されている。更に、定着装置20よりも搬送路Rの用紙搬送方向下流側には、用紙を装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が設けられている。また、プリンタ本体の上面部には、装置外に排出された用紙をストックするための排紙トレイ14が設けられている。
【0023】
本実施形態に係るプリンタの基本的動作は次のようである。作像動作が開始されると、各作像部4Y、4C、4M、4Kにおける各感光体5が図の時計回りに回転駆動され、各感光体5の表面が帯電装置6によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体5の表面には、露光装置9からレーザー光がそれぞれ照射されて、各感光体5の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体5に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体5上に形成された静電潜像に、各現像装置7によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0024】
また、作像動作が開始されると、二次転写バックアップローラ32が図の反時計回りに回転駆動し、中間転写ベルト30を図の矢印で示す方向に周回走行させる。そして、各一次転写ローラ31に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、各一次転写ローラ31と各感光体5との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
【0025】
その後、各感光体5の回転に伴い、感光体5上の各色のトナー画像が一次転写ニップに達したときに、一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、各感光体5上のトナー画像が中間転写ベルト30上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト30の表面にフルカラーのトナー画像が担持される。また、中間転写ベルト30に転写しきれなかった各感光体5上のトナーは、クリーニング装置8によって除去される。各感光体5の表面は、その後、除電され、表面電位が初期化される。
【0026】
画像形成装置の下部では、給紙ローラ11が回転駆動を開始し、給紙トレイ10から用紙Pが搬送路Rに送り出される。搬送路Rに送り出された用紙Pは、レジストローラ12によってタイミングを計られ、二次転写ローラ36と二次転写バックアップローラ32との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ36には、中間転写ベルト30上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。
【0027】
その後、中間転写ベルト30の周回走行に伴って、中間転写ベルト30上のトナー画像が二次転写ニップに達したときに、そのニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト30上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。また、このとき用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト30上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置35によって除去され、除去されたトナーはプリンタ本体内に置かれた廃トナー収容器へと搬送され、回収される。
【0028】
その後、用紙Pは定着装置20へと搬送され、定着装置20によって用紙P上のトナー画像が当該用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、排紙ローラ13によって装置外へ排出され、排紙トレイ14上にストックされる。
【0029】
以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの作像部4Y、4C、4M、4Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0030】
図2は、定着装置20の一実施形態を示す概略的な断面構成図である。
定着装置20は、薄肉で可撓性を有する筒状の定着部材である無端状の定着ベルト21と、この定着ベルト21の外周側から当接する加圧部材である加圧ローラ22とを有している。定着ベルト21は、その内部(ループ内)に配された複数の熱源としてのヒータ23A、23Bの輻射熱によって加熱される。熱源としては、ハロゲンヒータが一般的であるが、誘導加熱装置であってもよいし、抵抗発熱体、カーボンヒータ等であってもよい。
【0031】
更に定着ベルト21の内部には、定着ベルト21を介して加圧ローラ22とで定着ニップNを形成するニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持するステー25(支持部材)とが配されている。定着ベルト21の幅方向に渡って配されたニップ形成部材24が、ステー25によって固定支持されることで、加圧ローラ22からの圧力によってニップ形成部材24に撓みが生じることを防止し、加圧ローラ22の軸方向(長手方向)に渡って均一なニップ幅が得られるようになっている。なお、ニップ形成部材24は、機械的強度が高く耐熱温度200℃以上の耐熱性部材、特に耐熱性樹脂、例えばポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、それらをガラス繊維で強化したもので構成されている。これにより、トナー定着温度域で、熱によるニップ形成部材24の変形を防止し、安定した定着ニップの状態を確保し、出力画質の安定化を図っている。また、ステー25やヒータ23A、23Bは、その長手方向両端を、定着装置20の側板あるいは別途設けられたホルダに固定保持されている。ニップ形成部材24の長手方向両端部には、主たる熱源(定着熱源)とは別の端部熱源としての端部ヒータ26が一体に取り付けられている。端部熱源としては、一般的に、セラミックセータのような接触伝熱型ヒータである。
【0032】
定着ベルトの長手方向における熱移動を容易にする均熱部材とも称される熱移動補助部材27が、ニップ形成部材24と端部ヒータ26それぞれの定着ベルト21の内周面に対向する各面を覆うように配されており、小サイズ紙通紙時や端部ヒータ26点灯時に定着ベルト21の端部領域に熱が留まることを防止して、積極的に定着ベルト21の幅方向、即ち、熱移動補助部材27の長手方向に熱を移動させて、長手方向の温度不均一を解消させる。そのため、熱移動補助部材27は短時間で熱移動が可能となる熱伝導率の高い材料で形成されており、銅やアルミニウムが想定される。
図2の描写では、熱移動補助部材27の定着ベルト21の内周面に対向する面が定着ベルト21に直接接触する面であり、ニップ形成面となっており、平坦状に形成されているが、凹形状やその他の形状であってもよい。凹形状のニップ形成面であると、用紙先端の排出方向が加圧ローラ寄りになり、分離性が向上してジャムの発生が抑制される。
【0033】
周知のように、定着ベルト21の外周側の適切な位置には、ベルト温度を検知する温度センサ29が設けられており、定着装置20の用紙搬送方向下流側には、定着ベルト21から用紙Pを分離する分離部材40が配されていて、加圧ローラ22を定着ベルト21へ加圧する解除可能な加圧手段も設けられている。
【0034】
低熱容量化を図るため、フィルムのように薄肉で小径化した無端状の定着ベルト21は、ニッケルやSUS等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料で形成された内周側の基材と、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等で形成された外周側の離型層によって構成されている。基材と離型層の間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、あるいはフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。この弾性層の厚さを100μm程度にすれば、未定着トナーを押し潰して定着させるときに弾性層の弾性変形により、ベルト表面の微小な凹凸を吸収でき、光沢ムラの発生を回避できる。低熱容量化の観点から、定着ベルト21は、全体として厚さ1mm以下に、直径20〜40mmに設定されている。そして、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さは、20〜50μm、100〜300μm、10〜50μmの範囲に設定されている。更に低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、更に望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよく、直径は30mm以下とするのが望ましい。
【0035】
断面T字状のステー25は定着ニップN側と反対側が起立した起立部25aを有しており、定着熱源としてのヒータ23A、23Bが起立部25aによって隔てられるように配置されている。ヒータ23A、23Bは、一方が小サイズ紙に対応した長手方向中央部に発熱領域を有するものであり、他方が大サイズ紙に対応して長手方向両端部に発熱領域を有するものである。ヒータ23A、23Bは、プリンタ本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、定着ベルト21の外周に設けられた温度センサによるベルト表面の温度検知結果に基づいて行われる。このようなヒータの出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定できるようになっている。
【0036】
また、ステー25とヒータ23A、23Bの間には反射部材28A、28Bが配され、ヒータ23A、23Bの定着ベルト21に対する加熱効率を上げると共に、ヒータ23A、23Bからの輻射熱によりステー25が加熱されることによる無駄なエネルギー消費を抑制している。反射部材28A、28Bを備える代わりに、ステー25表面に断熱若しくは鏡面処理を行っても同様の効果を得ることが可能となる。
【0037】
加圧ローラ22は、芯金と、芯金の表面に設けられた発泡性シリコーンゴムやフッ素ゴム等から成る弾性層と、弾性層の表面に設けられたPFAやPTFE等から成る離型層によって構成されている。加圧手段のバネにより加圧ローラ22が定着ベルト21に押し付けられ定着ベルト21と圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層が押し潰されることで、所定幅の定着ニップNが形成されている。加圧ローラ22は、プリンタ本体に設けられたモータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力が定着ニップNで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転するようになっている。定着ベルト21は定着ニップNで挟み込まれて回転し、定着ニップN以外では両端部に配された側板フランジにガイドされ、走行する。
【0038】
本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータ等の熱源を配設してもよい。弾性層はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラの内部に熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。
【0039】
ニップ形成部材24、ステー25、熱移動補助部材27、端部ヒータ26によって構成されるニップ形成ユニットでは、その基本構成を示す
図3から分かるように、ニップ形成部材24の、定着ニップN側と反対側の面が、ステー25の定着ニップN側の平面と一体化される。この際、それぞれの面にボスとピンのような凹凸形状を形成させて、これらを形状拘束的に嵌め合わせるようにしてもよい。ニップ形成部材24の定着ニップ側に配された熱移動補助部材27は略直方体状のニップ形成部材24の、定着ベルト21の内周面に対向する面を覆うように嵌め合わされて一体化される。熱移動補助部材27とニップ形成部材24の一体構成は爪等を設けて噛み合わせればよいが、接着等を用いてもよい。ニップ形成部材24の長手方向の両端部には、段差部としての凹部24a、24bが形成され、これらの箇所には端部ヒータ26a、26bが収容され、固定されている。熱移動補助部材27の定着ベルト21の内周面に対向する面はベルト摺接面27aとして構成されるが、機械的強度上、実質的にニップ形成面となるのはニップ形成部材24の加圧ローラ22に対向する面24cである。
【0040】
既述のように、熱移動補助部材27は、その長手方向に熱を移動させて、長手方向の温度不均一を解消させる目的を有し、銅やアルミニウム等、熱伝導率の高い材料で形成されている。しかしながら、定着ベルト21の熱が熱移動補助部材27に伝わることで、そこから更にニップ形成部材24へ伝わる熱量も増加する。熱移動補助部材27からニップ形成部材24へ移動する熱はトナーの定着には寄与しないので、無駄な熱エネルギーとなる。つまり、定着に用いられる消費電力量を増加させてしまうこととなる。そこで、そのような定着に寄与しない熱量を抑制することが定着装置の、ひいては画像形成装置の省エネルギー化となる。
【0041】
そのための構成の一例を
図4に示す。
図4に示すニップ形成部材24は、その樹脂材内部に中空フィラー24dを混在させている。中空フィラー24dは内部が空気であり、熱伝導率が非常に低いため、ニップ形成部材24全体の熱伝導率は、中空フィラーが混在していないニップ形成部材に比べ格段に低くなる。そのため、熱移動補助部材27へ伝わった熱のニップ形成部材へ伝わる熱量を減らすことができ、消費電力量を減らすことができる。中空フィラー24dの混在程度は、ニップ形成部材24の強度や加熱の程度、即ち、耐熱条件に合わせて設定される。
【0042】
なお、熱移動補助部材27の立ち上がり部27dは基部27cからステー25側に延びている。中空フィラー24dを混在するニップ形成部材24は、熱移動補助部材の立ち上がり部27dに面する部分24fと、熱移動補助部材27に対向する面を形成する熱移動補助部材側部分24gと、ステー25に対向する面を形成し、熱移動補助部材27の基部27cとほぼ平行なステー側部分24hと、ステー25に対向するステー側部分24hからステー25に向かって延び、先端がステー25と接している突出部24iとを有している。ニップ形成部材24のステー側部分24hは、ニップ形成部材24の一方の端部に位置する立ち上がり部24fのステー側先端付近から他方の端部に位置する立ち上がり部24fの先端付近まで延びている。立ち上がり部24fとステー側部分24hは、図では同じ高さになっているが、どちらかが高くなっていてもよい。突出部24iの先端とステー25の間に別部材を介在させて接触するようになっていてもよい。突出部24iのステーと接する箇所は、熱移動補助部材の立ち上がり部24dの先端よりも押圧方向にステー側に高くなるように突出している。言い換えると、熱移動補助部材の基部27cと立ち上がり部27dとで形成される凹形状の中に、ステー25は入り込んでいない。
【0043】
ここで、中空フィラーの意義について詳述する。加圧パッドとしての機能を果たす樹脂製のニップ形成部材と定着ベルトとの間に熱移動補助部材を介在させ、熱移動補助部材をベルトに直接摺擦させる構成においては、樹脂製のニップ形成部材と定着ベルトを摺擦させる従来構成や熱移動補助部材と定着ベルトの間に摺動シートを介在させた従来構成に比べて、長手方向の均熱性能を大幅に向上させる反面、均熱板である熱移動補助部材の厚み方向への吸熱性も増大しているため、ウォームアップタイムの増加や省エネルギー性能の低下といった課題も生じ、長手方向の均熱性と厚み方向の急熱性がトレードオフになってしまう。そのため、熱移動補助部材の裏面に存在するニップ形成部材の断熱性能を向上させることが、熱移動補助部材による均熱性能を維持したまま、吸熱性の増加を抑えウォームアップタイムの増加や省エネルギー性能の低下を最小限に抑えることにとって絶大な効果を発揮できる。従来のように、熱移動補助部材が無い、若しくは熱伝導性の悪い摺動シートが熱移動補助部材と定着ベルト間に介在している場合は、そもそもの吸熱性能が著しく少ないため、ニップ形成部材の断熱性能の向上によるウォームアップタイムや省エネルギー性能の改善効果は殆ど得られない。特に、ウォームアップタイムに関しては短時間での吸熱性能が大きく影響するため、摺動シートを介在した時点で熱移動補助部材に充分な熱が伝わり始める前に定着ベルトが所定の温度まで達し全く意味を成さない。ゆえに、熱移動補助部材との組み合わせにおいて、ニップ形成部材の断熱化が大きな効果を発揮できる。ここで、ニップ形成部材の断熱化方法として、中空フィラーを樹脂材料に混合させることで、単に熱伝導率を下げるだけでなく、ニップ形成部材の熱容量も下げ、より一層の断熱効果を得ることができる。
【0044】
またニップ形成部材の樹脂材に中空フィラーを混ぜて熱容量を下げることは、ニップ形成部材の剛性を低下させ、本来の機能である加圧力を低下させてしまう。しかし、熱移動補助部材を嵌合させる構成においては、熱移動補助部材が金属材であることから熱移動補助部材自体の剛性が高く、ニップ形成部材と熱移動補助部材を複合させた剛性が加圧力の機能を充分に果たすことができる。つまり、熱移動補助部材に均熱性能と加圧力の両方の機能を持たせ、ニップ形成部材は足りない強度を補いつつ、最大限まで中空フィラーを混入して断熱化すればよい。このように、熱移動補助部材と中空フィラーを混入したニップ形成部材との組み合わせを活用すれば、均熱性能と断熱性能、加圧力を最適化することが可能である。
【0045】
この中空フィラー24dは、ガラス材でできたガラスバルーンあるいはガラスビーズと称されるガラス製微小中空体を使用することが望ましい。それは、ガラスバルーンが高硬度であり、かつ耐熱性にも優れているからである。ガラスバルーンは、ガラスの膜厚、粒径のコントロールにより、高強度と低熱伝導率を両立できるが、例えば35μm〜135μm程度のサイズのものが、ニップ形成部材24の内部に混在される。ニップ形成部材24は、荷重たわみ温度が300℃以上、また曲げ強度は一例として90Mpa(23℃)以上程度となる。
【0046】
図5に、ニップ形成部材の別の構成例を示す。このニップ形成部材24’は、中空フィラー24’dを混在した樹脂材を用いることに加え、熱移動補助部材27と接する側の表面、即ち、定着ニップ側の表面に、長手方向に延在する複数の大きめの溝24’eを形成している。溝24’eは、ニップ形成部材24が熱移動補助部材27と対向する長手方向の範囲に設けられている。溝24’eはニップ形成部材24’の長手方向に平行に形成されるが、その長手方向に対し斜めに形成されていてもよい。このように溝24’eを形成して、熱移動補助部材27とニップ形成部材24’の接触面を減らしながら、空気層を設けることにより、ニップ形成部材へ伝わる熱量を更に減少することができる。熱移動補助部材27は、銅やアルミニウム等、金属材であるため、樹脂に比べて剛性が高く、ニップ形成部材と非接触の領域、つまりニップ形成部材に支えられていない領域に荷重がかかっても、自身の強度でニップ形成を維持できるように構成されている。この熱移動補助部材27の非接触領域の数や面積は、熱移動補助部材27に接触しない領域に荷重がかかることで生じるたわみ量の許容値から判断すればよい。なお、熱移動補助部材27、ニップ形成部材24’の基本形状は、溝24’eを除いて同じであり、
図4における添え字符号と同じ添え字符号を付すことで、それらの説明は省略する。
【0047】
図6に、ニップ形成部材の更に別の構成例を示す。この図は、端部ヒータを支持するニップ形成部材の端部位置での断面を示している。
図6において、端部ヒータ26は、長手方向の両端部位置にニップ形成部材24”に嵌め込まれた状態でヒータ裏面を支持され、ヒータ表面が熱移動補助部材27の裏面と接触している。端部ヒータ26の発熱領域26cはヒータ裏面に存在し、発熱領域26cの熱がヒータの表面、熱移動補助部材27へと伝わっていく。一方、発熱領域26cの熱はヒータを支持するニップ形成部材24”へも伝わるが、このニップ形成部材24”が中空フィラー入りの樹脂材で構成されていることで、熱伝導率が低くなっているため、端部ヒータ26による定着ベルトの加熱効率を高めることができる。なお、熱移動補助部材27、ニップ形成部材24”の基本形状は、端部ヒータ26の箇所を除いて同じであり、
図4における添え字符号と同じ添え字符号を付すことで、それらの説明は省略する。また、
図6の端部ヒータ26の在る箇所以外は、ニップ形成部材24“の長手方向の一部を
図4の構成とし、一部に
図5のように溝を設けることも可能である。
【0048】
なお、上記した各形態に係る熱移動補助部材及びニップ形成部材は、ニップ形成部材に端部ヒータを備えた定着装置に適用され得るだけでなく、当然ながら、端部ヒータを備えない公知の定着装置にも適用され得るものである。
図7に、端部ヒータを備えない定着装置80を概略断面で示す。この定着装置は、
図2に示したニップ形成部材24に端部ヒータ26を備えた定着装置20と基本的に端部ヒータの有無、定着熱源の数が異なるだけであるので、各部材に参照符号をふすことで、その説明は省略する。この構成の場合、ニップ形成部材端部に上述した
図6の構成はなく、端部まで
図4の構成にすることが可能である。また
図5のような溝を設ける場合も端部ヒータ26が無い分、溝の長さ形状を更に自由に設定可能である。ニップ形成部材断面の一部を
図4、別の一部を
図5のように溝を設ける構成とすることも可能である。