(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルカリ土類金属塩は、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、または炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムとの複塩である、請求項1または2に記載の排ガス処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る排ガス処理装置、排ガス処理方法、ガラス物品の製造装置およびガラス物品の製造方法について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0014】
[排ガス処理装置]
図1は、本発明の一実施形態に係る排ガス処理装置の概略図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る冷却塔であって、(A)は冷却塔の要部を拡大した断面模式図であり、(B)は冷却塔の平面図である。
【0015】
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る排ガス処理装置1について説明する。
【0016】
本実施形態の排ガス処理装置1は、排ガスG1を発生するガラス溶解炉10と、冷却塔20と、バグフィルター30と、粉末供給装置35と、脱硝装置40と、スクラバー50と、メインファン60と、煙突70とを備える。
【0017】
ガラス溶解炉10は、バーナーの火炎をガラス原料に向かって放射することにより、ガラス原料を加熱溶解し、排ガスG1を生じる。バーナーは、天然ガスや重油などの燃料をガスと混合して燃焼することで火炎を形成する。バーナーには、ガスとして主に空気を用いる空気燃焼バーナー、またはガスとして主に酸素を用いる酸素燃焼バーナーが用いられる。
【0018】
排ガスG1は、重油を用いたバーナー燃焼により、重油に由来する硫黄成分を含む。また、排ガスG1は、清澄剤に由来する硫黄成分、フッ素成分、塩素成分などを含む。また、排ガスG1は、ホウケイ酸ガラスを製造する場合、溶融ガラスから揮発しやすいホウ素成分を含む。排ガスG1中の硫黄成分は主に硫黄酸化物(SO
X)、塩素成分は主に塩化水素(HCl)、フッ素成分は主にフッ化水素(HF)、ホウ素成分は主にホウ酸(H
3BO
3)である。
【0019】
次に、
図1、2を用いて、本発明の一実施形態に係る冷却塔20について説明する。
【0020】
冷却塔20は、入口部21と、拡径部23と、冷却塔本体25と、スプレーノズル26と、固形物回収手段27と、出口部と、を備える。
【0021】
図2に示したように、冷却塔本体25は、円筒状に直立して設けられる。拡径部23は、冷却塔本体25の上部に連結して設けられる。入口部21は、拡径部23の上部に連結して設けられる。入口部21は、冷却塔20に流入した排ガスG1の流れを水平方向から鉛直方向下向きに変更する。
【0022】
拡径部23の横断面の径は、入口部21から冷却塔本体25に向けて漸次拡大する。拡径部23の横断面は、典型的には円形状であるが、矩形状であってもよい。拡径部23は、入口部21を通過した排ガスG1の流速を低下させる。
【0023】
冷却塔本体25は、内部に反応空間を備え、拡径部23を通過した排ガスG1と冷却用水溶液L21、処理液L22との反応により反応物を生成する。
【0024】
スプレーノズル26は、拡径部23の側面に設けられ、排ガスG1の流れ方向に冷却用水溶液L21、処理液L22を噴霧して排ガスG1を冷却する。これにより、冷却後排ガスG2の温度を下げて、後述するバグフィルター30内の濾布が熱によって損傷されるのを防ぐことができる。また、排ガスG1と冷却用水溶液L21、処理液L22とを反応させ、排ガスG1中の硫黄成分または塩素成分を除去する。
【0025】
本実施形態の冷却用水溶液L21は、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液、処理液L22は、水酸化ナトリウムを主成分とする水溶液である。水酸化ナトリウムは、安価で取り扱いやすいことから一般的な酸性排液の中和剤として利用されている。
【0026】
図2(A)に示すように、スプレーノズル26は、ノズルの噴射口から放射状に冷却用水溶液L21、処理液L22を噴霧する。スプレーノズル26の噴射角αは、30〜70°が好ましく、40〜60°がより好ましい。噴射角αが30°以上だと、冷却用水溶液L21、処理液L22が冷却塔本体25の全体に行き渡り、排ガスG1中の硫黄成分または塩素成分を充分に除去することができる。また、噴射角αが70°以下だと、冷却用水溶液L21、処理液L22と排ガスG1との反応物が冷却塔本体25の壁面に大量に付着するのを防ぐことができる。反応物が壁面に大量に付着すると、冷却塔本体25が閉塞する原因となる。
【0027】
図2(B)に示すように、スプレーノズル26は複数設けられ、それぞれ拡径部23の中心と同心円上で周方向に間隔を空けて設置される。
【0028】
本実施形態では、スプレーノズル26の本数は9本だが、本発明はこれに限定されず、2〜20本が好ましく、2〜15本がより好ましい。スプレーノズル26の本数が2本以上だと、冷却用水溶液L21と処理液L22とを別々に噴霧することができる。また、スプレーノズル26の本数が20本以下だと、各スプレーノズル26は、周方向に間隔を空けて設置することができる。本数が多い場合は、拡径部23の中心と同心円上で径方向に2列以上設置してもよい。
【0029】
9本のスプレーノズル26は、例えば、6本は冷却用水溶液L21を噴霧し、3本は処理液L22を噴霧する。ここで、後述するように処理液L22は、四ホウ酸ナトリウム(Na
2B
4O
7)またはホウ酸マグネシウム(MgB
2O
4)を含むため、四ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸マグネシウムが析出しないように温度を管理する必要がある。そのため、冷却用水溶液L21と処理液L22は、混合させずに、別々に噴霧するのが好ましい。
【0030】
スプレーノズル26の合計流量は、排ガスG1の流量によって適宜調整が必要となるが、1000〜5000L/hが好ましく、2000〜4000L/hがより好ましい。
【0031】
なお、本実施形態では、冷却用水溶液L21、処理液L22を噴霧するのにスプレーノズル26を用いているが、本発明はこれに限定されず、排ガスG1に液体を噴霧または噴射することができる接触手段であればよい。
【0032】
冷却塔20の固形物回収手段27は、冷却塔本体25の底部に設けられる。固形物回収手段27は、冷却塔本体25で生成した反応物を固形物S2として回収する。固形物S2は、排ガスG1中の硫黄成分に由来する硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)と、排ガスG1中の塩素成分に由来する塩化ナトリウム(NaCl)と、を含む。
【0033】
冷却塔20の出口部は、冷却塔本体25の下部側面に連結して設けられる。出口部は、冷却後排ガスG2を排出する。
【0034】
入口部21における排ガスG1の温度T1は、700〜900℃が好ましい。温度T1が700℃以上だと、排ガスG1中の硫黄成分または塩素成分は、冷却用水溶液L21、処理液L22と充分に反応する。また、温度T1が900℃以下だと、冷却塔20内の損傷を防ぐことができる。
【0035】
本実施形態の冷却用水溶液L21は、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液であるが、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)水溶液であってもよい。この場合、処理液L22は、水酸化マグネシウムを主成分とする水溶液である。排ガスG1中の各成分は、冷却用水溶液L21、処理液L22と反応し、排ガスG1中の硫黄成分は、硫酸マグネシウム(MgSO
4)となり、排ガスG1中の塩素成分は、塩化マグネシウム(MgCl
2)となる。
【0036】
水酸化マグネシウムは、安価で取り扱いやすいことから一般的な酸性排液の中和剤として利用されているが、水への溶解度が低く、通常はスラリー状態であるため、液を循環させて再利用する場合には配管の詰まりを起こすことが懸念される。しかし、処理液L22は、ホウ素成分を含むため、水酸化マグネシウムがスラリー状態にはならず、詰まりの問題を起こさずに、スクラバー50から冷却塔20に送り出すことができる。
【0037】
冷却用水溶液L21の濃度C21は、0.3%以上が好ましく、0.5%以上がより好ましい。また、濃度C21は、2.0%以下が好ましく、1.0%以下がより好ましい。濃度C21が0.3%以上だと、排ガスG1中の硫黄成分または塩素成分を充分に除去することができる。また、濃度C21が2.0%以下だと、冷却用水溶液L21の乾固化によってスプレーノズル26が閉塞するのを防ぎ、かつ、固形物S2の排出量を低減することができる。
【0038】
図1におけるバグフィルター30は、3つのバグフィルター本体31と、粉体回収手段37とを備える。
【0039】
バグフィルター本体31は、内部に濾布を備え、隣り合うバグフィルター本体31と連結され、冷却後排ガスG2が通過する流路を形成する。
【0040】
濾布は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の粉末を担持し、冷却後排ガスG2を粉末に接触させて接触後排ガスG3とする。冷却後排ガスG2は粉末と反応し、冷却後排ガスG2中の硫黄成分、フッ素成分または塩素成分は除去される。また、冷却後排ガスG2中の煤塵は、濾布で捕集して除去される。
【0041】
濾布の材質は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂を用いるのが好ましい。ポリテトラフルオロエチレンは、化学的に安定で、耐熱性、耐薬品性の点で優れている。
【0042】
バグフィルター本体31は、濾布の上方にガスノズルを備える。バグフィルター本体31は、ガスノズルを用いて濾布に圧縮空気を吹き付け、濾布が担持する粉末、および冷却後排ガスG2と粉末との反応物を払い落とす。ガスノズルは、圧縮空気の代わりに、酸素や窒素などのガスを用いてもよい。
【0043】
粉体回収手段37は、粉末および反応物を粉体S3として回収する。粉体回収手段37は、3つのバグフィルター本体31の底部から回収された粉体S3をコンベヤー等で運搬し、一箇所に集約する。
【0044】
バグフィルター30は、冷却後排ガスG2中のフッ素成分を除去できるので、接触後排ガスG3,G4によりスクラバー50にフッ素成分が混入するのを防止することができる。これにより、スクラバー50で、フッ素成分が水酸化マグネシウムと反応してスラリー化することを防止できる。具体的には、水に難溶のフッ化マグネシウム(MgF
2)が生成するのを防ぐことができる。
【0045】
図1のバグフィルター30は、バグフィルター本体31を3つ備えているが、本発明はこれに限定されない。バグフィルター本体31の個数は、2〜15が好ましく、2〜10がより好ましい。バグフィルター本体31の個数が2以上だと、冷却後排ガスG2が通過する流路の距離を長くすることができ、冷却後排ガスG2中の硫黄成分、フッ素成分または塩素成分を高効率で除去することができる。また、バグフィルター本体31の個数が15以下だと、設備の投資費用、運転費用を抑制することができる。バグフィルター本体31の個数は、1つであってもよい。
【0046】
粉末供給装置35は、3つの粉末供給装置本体36を備える。
【0047】
粉
末供給装置本体36は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の粉末を、配管を経由してバグフィルター30に供給する。
【0048】
粉末供給装置本体36の個数は、バグフィルター本体31と同じ個数にすることが好ましい。これにより、バグフィルター本体31への粉末供給量を独立に調整することができる。
【0049】
粉末供給装置35は、1Nm
3の冷却後排ガスG2に対し、1.0〜5.0gの粉末を供給することが好ましく、2.0〜3.0gの粉末を供給することがより好ましい。
【0050】
バグフィルター本体31内の濾布は、粉末供給装置本体36から供給される粉末の付着量が徐々に増えていくので、バグフィルター30の入口と出口との圧力差が増大する。圧力差は、30〜150mmH
2Oが好ましい。圧力差が30mmH
2O以上だと、粉末が濾布に充分に付着しており、冷却後排ガスG2中の硫黄成分、フッ素成分または塩素成分を充分に除去することができる。また、圧力差が150mmH
2O以下だと、冷却後排ガスG2が流れやすくなる。
【0051】
バグフィルター30の圧力差は、各バグフィルター本体31の圧力差と共に調整するのが好ましい。
【0052】
アルカリ金属塩は、炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)または炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)であることが好ましい。また、アルカリ土類金属塩は、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、または炭酸カルシウムと炭酸マグネシウム(MgCO
3)との複塩であることが好ましい。複塩は、例えばドロマイトである。
【0053】
冷却後排ガスG2中の各成分は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の粉末と反応する。冷却後排ガスG2中の硫黄成分は硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)または硫酸カルシウム(CaSO
4)となり、フッ素成分はフッ化ナトリウム(NaF)またはフッ化カルシウム(CaF
2)となり、塩素成分は塩化ナトリウム(NaCl)または塩化カルシウム(CaCl
2)となる。アルカリ土類金属塩の粉末としてドロマイト等の複塩を用いた場合、硫黄成分は硫酸マグネシウム(MgSO
4)、フッ素成分はフッ化マグネシウム(MgF
2)、塩素成分は塩化マグネシウム(MgCl
2)をも生成する。粉体S3は、これらの反応物が混合したものである。
【0054】
アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の粉末の平均粒子径は、1〜100μmが好ましく、1〜50μmがより好ましく、1〜30μmがさらに好ましい。平均粒子径が1μm以上だと、粉砕操作によって粉末を安価に製造することができる。また、平均粒子径が100μm以下だと、冷却後排ガスG2中の硫黄成分、塩素成分またはフッ素成分は、粉末と充分に反応して除去される。
【0055】
ここで、平均粒子径とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装社製のマイクロトラックFRA9220)により粒径を測定し、全体積を100%として累積曲線を求めたとき、その累積体積が50%となる点の粒径である。
【0056】
なお、粉体S3は、カルシウム成分とマグネシウム成分とを含み、平均粒子径が30〜100μmであれば、無アルカリガラスのガラス原料として再利用するのに好適である。
【0057】
冷却後排ガスG2の温度T2は、バグフィルター30の入口において、180〜250℃が好ましい。温度T2が180℃以上だと、冷却後排ガスG2中の硫黄成分、塩素成分またはフッ素成分は、粉末と充分に反応して除去される。また、温度T2が250℃以下だと、バグフィルター本体31内の濾布が熱によって損傷されるのを防ぐことができる。
【0058】
接触後排ガスG3に含まれる硫黄成分の濃度は、二酸化硫黄(SO
2)換算で100mg/Nm
3以下が好ましく、50mg/Nm
3以下がより好ましい。また、接触後排ガスG3中のフッ素成分の濃度は、30mg/Nm
3以下が好ましく、10mg/Nm
3以下がより好ましく、5mg/Nm
3以下がさらに好ましい。また、接触後排ガスG3中の塩素成分の濃度は、100mg/Nm
3以下が好ましく、50mg/Nm
3以下がより好ましい。
【0059】
硫黄成分の濃度は、赤外線吸収方式等による自動分析、または化学分析から求められる。硫黄成分の濃度は、例えば、IC(イオンクロマトグラフ)によって求められる。フッ素成分の濃度は、排ガスを定量ポンプで採取し、吸収液に吸収させ、溶液中のフッ素成分の濃度をICPで測定し、排ガス1Nm
3あたりのフッ素成分量から求める。塩素成分の濃度は、フッ素成分の濃度と同様の方法で求める。
【0060】
次に、
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る脱硝装置40について説明する。
【0061】
脱硝装置40は、触媒層と、ガス注入ノズルと、を備える。脱硝装置40は、接触後排ガスG3が触媒層を通る前に、ガス注入ノズルを用いてアンモニア(NH
3)ガスを注入する。これにより、接触後排ガスG3に含まれる窒素酸化物(NO
X)が除去される。脱硝装置40を通過した接触後排ガスG4は、スクラバー50に流入する。
【0062】
触媒層は、五酸化バナジウム(V
2O
5)を活性成分とする触媒を用いるのが好ましく、例えば、酸化チタン(TiO
2)を担体とした(TiO
2−V
2O
5−WO
3)触媒を用いる。
【0063】
アンモニアガスの注入量は、5〜20Nm
3/hが好ましい。5Nm
3/h以上だと、窒素酸化物(NO
x)を充分に分解することができる。また、注入量が20Nm
3/h以下だと、接触後排ガスG3中の三酸化硫黄(SO
3)とアンモニア(NH
3)との反応を抑制し、硫酸水素アンモニウム(NH
4HSO
4)の生成を減らすことができる。硫酸水素アンモニウムは、触媒細孔を閉塞させるので、生成させないことが望ましい。そのためには、前述のとおり、接触後排ガスG3中に含まれる硫黄成分の濃度も、合わせて調整する必要がある。よって、接触後排ガスG3中の硫黄成分の濃度は、二酸化硫黄(SO
2)換算で100mg/Nm
3以下が好ましい。
【0064】
接触後排ガスG3の温度T3は、脱硝装置40の入口において、200〜300℃が好ましい。温度T3が200℃以上だと、接触後排ガスG3中の窒素酸化物(NO
X)は、アンモニア(NH
3)ガスと充分に反応する。また、温度T3が300℃以下だと、触媒活性が低下することを防止できる。バグフィルター30と脱硝装置40との間の流路に温度調整手段(例えばバーナー)を設けて加熱し、温度T3を調整するのが好ましい。バグフィルター30の出口における温度は、200℃以下まで下がるからである。バーナーの燃料には、例えば天然ガスを用いる。
【0065】
脱硝装置40を通過した接触後排ガスG4は、窒素酸化物(NO
X)の濃度が800mg/Nm
3以下が好ましく、より好ましくは500mg/Nm
3以下である。窒素酸化物の濃度は、化学発光方式等による自動計測から求める。なお、脱硝装置40は、接触後排ガスG3の窒素酸化物(NO
X)の濃度が800mg/Nm
3以下であれば、設けなくてもよい。この場合、接触後排ガスG3がスクラバー50に流入することになる。
【0066】
図3は、本発明の一実施形態に係るスクラバーの概略図である。
図1、3を用いて、本発明の一実施形態に係るスクラバー50について説明する。
【0067】
スクラバー50は、プレスクラバー510と、プレスクラバー510に連結して設けられたスクラバー本体520と、スクラバー本体520の底部に設けられた排液タンク530と、を備える。
【0068】
スクラバー50は、接触後排ガスG4,G41と、冷却用液体L51,L52、処理液L22と、を反応させて清浄ガスG5および排液L55を得る。冷却用液体L51,L52は、水または水酸化ナトリウム水溶液が用いられる。
【0069】
また、スクラバー50は、排液L55のpHおよび温度を調整して処理液L22とする調整手段539と、排液タンク530と冷却塔20とを連結する戻し配管550と、排液タンク530とスクラバー本体520とを連結する戻し配管551と、を備える。
【0070】
プレスクラバー510は、接触後排ガスG4が上部から流入し、下部へ排出される構造であり、上部にノズル511が設けられる。ノズル511は、冷却用液体L51を接触後排ガスG4の流れ方向に向けて噴霧する。冷却用液体L51の流量調整により、接触後排ガスG41の温度を適切に調整できる。接触後排ガスG4と接触した後の冷却用液体L51は、排液タンク530で排液L55として回収される。
【0071】
図3では、ノズル511は1本であるが、複数設けてもよい。また、ノズルは、プレスクラバー510の下部に設けられ、接触後排ガスG4の流れに反する方向に冷却用液体L51を噴霧してもよい。
【0072】
また、
図3には示されていないが、プレスクラバー510は、さらにノズルを設けて処理液L22を噴霧してもよい。
【0073】
また、プレスクラバー510は、底部に排液タンクが設けられてもよい。この場合、該排液タンクは、接触後排ガスG4と接触した後の冷却用液体L51を排液として回収する。
【0074】
スクラバー本体520は、プ
レスクラバー510から排出された接触後排ガスG41を下部から流入し、上部へと排出する。スクラバー本体520は、内部に充填層521を備え、充填層521の上方にノズル523,525を備える。ノズル523は、充填層521とノズル525との間に設けられる。
【0075】
ノズル523は、戻し配管551に連結され、処理液L22を接触後排ガスG41の流れに反する方向に噴霧する。ノズル525は、冷却用液体L52を接触後排ガスG41の流れに反する方向に噴霧する。
【0076】
スクラバー本体520は、接触後排ガスG41に冷却用液体L52、処理液L22を接触させることにより、接触後排ガスG41中のホウ素成分を、冷却用液体L52、処理液L22に溶解させる。このとき、接触後排ガスG41中のホウ素成分以外の成分が、冷却用液体L52、処理液L22に溶解してもよい。例えば、接触後排ガスG41中の硫黄成分または塩素成分が溶解する。冷却用液体L52、処理液L22の流量調整により、接触後排ガスG41の温度を適切に調整できる。接触後排ガスG41と接触した後の冷却用液体L52は、排液タンク530で排液L55として回収される。
【0077】
充填層521は、スクラバー本体520の上部と下部とで圧力差を生じさせる。これにより、接触後排ガスG41がスクラバー本体520内で乱流状態となり、接触後排ガスG41と冷却用液体L52、処理液L22とが充分に接触し、接触後排ガスG41中の成分の冷却用液体L52、処理液L22への溶解を促進させることができる。スクラバー50の入口と出口との圧力差は、50〜200mmH
2Oが好ましい。
【0078】
充填層521は、充填物であるプラスチック製の球を浮遊させ、球表面の水膜によって反応を促進する。充填層521の充填物としては、表面積が大きい、水膜が形成しやすい、ガス流に対し抵抗が少ない、越流や偏流が少ない、または軽くて丈夫なものが望ましい。充填層521の充填物の材質は、ポリプロピレンが好ましい。ポリプロピレンは、軽量で安価な点で優れている。また、充填物を構成する粒子の径は、40〜100mmが好ましい。
【0079】
なお、プレスクラバー510、スクラバー本体520内は、耐腐食性に優れる繊維強化プラスチック(FRP)を用いるのが好ましい。
【0080】
冷却塔20で用いられる冷却用水溶液L21が水酸化マグネシウム水溶液の場合、冷却用液体L51,L52は、水または水酸化マグネシウム水溶液が用いられる。この場合、後述のpH調整用水溶液L54は、水酸化マグネシウム水溶液が用いられる。
【0081】
ここで、冷却用液体L51,L52に中和剤としてCa成分が含まれていると、排液タンク530内に硫酸カルシウム(CaSO
4)やホウ酸カルシウム(CaB
4O
7)等の沈殿物が生成される。このような沈殿物は、戻し配管550,551を閉塞させる可能性がある。そのため、冷却用液体L51,L52には、中和剤としてCa成分が含まれないことが望ましい。
【0082】
排液タンク530は、排液L55を収容する。排液L55には、接触後排ガスG4,G41中のホウ素成分が溶解している。排液タンク530内は、耐腐食性に優れる繊維強化プラスチック(FRP)を用いるのが好ましい。
【0083】
また、排液タンク530は、pH測定計533、温度計、冷却ノズル、およびヒーターを備える。冷却ノズルは、排液タンク530内に、冷却水L53を注入する。
【0084】
調整手段539は、注入タンク540と、循環ポンプ541と、注入ノズルと、を備える。注入タンク540は、pH調整用水溶液L54を貯留する。注入ノズルは、排液タンク530内に、注入タンク540から循環ポンプ541を介してpH調整用水溶液L54を注入する。pH調整用水溶液L54は、水酸化ナトリウム水溶液が用いられる。
【0085】
pH調整用水溶液L54の濃度C54は、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。濃度C54が20%以上だと、排液L55のpHを調節するのに適している。
【0086】
また、調整手段539は、排液L55を、pH5〜9、温度40℃以上に調整する。これにより、ホウ素成分と、ナトリウム成分またはマグネシウム成分と、を含む処理液L22が作製される。処理液L22が作製される過程で、排液L55中のホウ素成分は、水酸化ナトリウムまたは水酸化マグネシウムと反応し、四ホウ酸ナトリウム(Na
2B
4O
7)またはホウ酸マグネシウム(MgB
2O
4)が生成する。なお、処理液L22は、未反応のホウ素成分、水酸化ナトリウムまたは水酸化マグネシウムを含む場合がある。また、処理液L22は、塩素、フッ素、カルシウムなどを微量に含む場合がある。
【0087】
戻し配管550は、循環ポンプ531を介して、排液タンク530から冷却塔20のスプレーノズル26に処理液L22を送り出す。
【0088】
戻し配管551は、循環ポンプ531を介して、排液タンク530からスクラバー本体520のノズル523に処理液L22を送り出す。
【0089】
戻し配管550,551には、処理液L22の温度を調整するためのヒーターが設けられることが好ましい。
【0090】
水酸化ナトリウムまたは水酸化マグネシウムの排液タンク530への注入量は、排液L55中のホウ素成分、硫黄成分または塩素成分をナトリウム塩またはマグネシウム塩に転化させるのに充分な量であることが好ましい。しかし、水酸化ナトリウムの供給量が多すぎると、四ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸マグネシウムが飽和析出する。四ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸マグネシウムが析出すると、戻し配管550,551が閉塞するため、冷却塔20のスプレーノズル26またはスクラバー本体520のノズル523に処理液L22を送り出すことが困難になる。
【0091】
そこで、pH測定計533で排液タンク530内の処理液L22のpHを測定し、pHを5〜9の範囲内に保持する。このとき、pHおよび温度の調整は、冷却水L53、pH調整用水溶液L54の供給量を調整して行う。
【0092】
処理液L22のpHは、好ましくは6〜8、より好ましくは6.5〜7.5である。処理液L22のpHが5以上だと、処理液L22中のホウ素成分等を良好にナトリウム塩またはマ
グネシウム塩に転化させることができ、処理液L22中に残る未反応のホウ素成分等を少なくすることができる。また、処理液L22のpHが9以下だと、処理液L22中で四ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸マグネシウムが析出するのを防止することができる。
【0093】
処理液L22の温度T22は、40℃以上に保持されるように調整される。温度T22は、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。また、温度T22は、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。温度T22を40℃以上にすることで、処理液L22中で四ホウ酸ナトリウムまたは四ホウ酸マグネシウムが析出するのを防止することができる。また、温度が90℃以下だと、排液タンク530内の熱による損傷を防ぐことができる。
【0094】
本実施形態の排液タンク530は、スクラバー本体520の底部に設けられるが、配管を介してスクラバー本体520とは別の場所に設けられてもよい。この形態は、プ
レスクラバー510の底部で排液を回収する場合、プ
レスクラバー510とスクラバー本体520の排液を一箇所に集約して処理できる点で優れている。
【0095】
接触後排ガスG4の温度T4は、スクラバー50の入口において、200〜300℃が好ましい。温度T4が200℃以上だと、接触後排ガスG4,G41中のホウ素成分を充分に除去することができる。また、温度T4が300℃以下だと、充填層521の熱による損傷を防ぐことができる。
【0096】
接触後排ガスG41の温度は60〜90℃が好ましく、70〜80℃がより好ましい。接触後排ガスG41の温度が60℃以上だと、冷却用液体L51,L52の使用量を削減できる。また、接触後排ガスG41の温度が90℃以下だと、接触後排ガスG41中のホウ素成分を冷却用液体L52、処理液L22に溶解させて、分離することができる。
【0097】
清浄ガスG5中のホウ素成分の濃度は、酸化ホウ素(B
2O
3)換算で20mg/Nm
3以下が好ましく、10mg/Nm
3以下がより好ましい。
【0098】
次に、本発明の一実施形態に係るメインファン60、煙突70について説明する。
【0099】
清浄ガスG5は、排ガスの流量を調整するメインファン60によって吸引され、メインファン60を通過した清浄ガスG6は、煙突70を通って清浄ガスG7として大気へ放出される。
【0100】
清浄ガスG5の温度は、スクラバー50を通過した直後において、60〜90℃である。このまま温度調整をせずに、清浄ガスG5をメインファン60で吸引してもよいが、温度が低いと煙突70での煙突効果が小さくなる。そのため、スクラバー50とメインファン60との間の流路にバーナーを設けて加熱することが好ましく、メインファン60に流入する前の清浄ガスG5の温度T5は、100〜130℃が好ましい。
【0101】
本実施形態の排ガス処理装置1によれば、清浄ガスG7は、硫黄成分の濃度が二酸化硫黄(SO
2)換算で100mg/Nm
3以下、窒素酸化物(NO
X)の濃度が800mg/Nm
3以下、フッ素成分の濃度が30mg/Nm
3以下、塩素成分の濃度が100mg/Nm
3以下、ホウ素成分の濃度が酸化ホウ素(B
2O
3)換算で20mg/Nm
3以下を達成できる。排ガス処理装置1は、清浄ガスG7の流量が5,000〜40,000Nm
3/hである排ガス処理に適している。
【0102】
[排ガス処理方法]
図4は、本発明の一実施形態に係る排ガス処理方法を示すフローチャートである。
図4を用いて、本発明の一実施形態に係る排ガス処理方法について説明する。
【0103】
本実施形態の排ガス処理方法は、ガラス原料を溶解するガラス溶解工程ST1と、ガラス溶解工程ST1で発生した排ガスに冷却用水溶液を接触させて冷却後排ガスを得る冷却工程ST2と、冷却後排ガスにアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の粉末を接触させて接触後排ガスを得ながら、冷却後排ガスと粉末との反応物を粉体として回収する粉体回収工程ST3と、を備える。さらに、排ガス処理方法は、接触後排ガスに含まれる窒素酸化物を除去する脱硝工程ST4と、接触後排ガスに冷却用液体を接触させて清浄ガスを得ながら、接触後排ガスと冷却用液体との反応液を排液として回収する排液処理工程ST5と、を備える。
【0104】
排液処理工程ST5は、排液をpH5〜9、温度40℃以上に調整することにより処理液を作製し、冷却工程に処理液を送り戻す。冷却工程ST2は、排ガスに処理液を接触させる。
【0105】
冷却工程ST2において、冷却用水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化マグネシウム水溶液であることが好ましい。また、冷却工程ST2は、排ガスと冷却用水溶液との反応により反応物が生成され、反応物を固形物として回収することが好ましい。
【0106】
粉体回収工程ST3において、アルカリ金属塩は、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸ナトリウムであることが好ましい。また、アルカリ土類金属塩は、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、または炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムとの複塩であることが好ましい。
【0107】
脱硝工程ST4は、接触後排ガスが触媒層を通る前に、アンモニアガスを注入することが好ましい。
【0108】
以上のとおり、本実施形態の排ガス処理方法および排ガス処理装置1によれば、複雑な湿式設備を用いずに、排ガス中の硫黄成分、ホウ素成分などを充分に除去できる。そのため、湿式設備(スクラバー50)の投資費用を抑制することができる。また、本実施形態の排ガス処理装置1によれば、スクラバー50で得られた処理液L22を冷却塔20で再利用するので、冷却塔20の冷却用水溶液L21の使用量を削減し、運転費用を抑制することができる。
【0109】
[ガラス物品の製造装置および製造方法]
次に、本実施形態の排ガス処理装置を用いたガラス物品の製造装置および製造方法について説明する。
【0110】
ガラス原料をガラス溶解炉内に供給し、バーナーの火炎をガラス原料に向かって放射することにより、ガラス原料を加熱して溶解する。バーナーの火炎によって加熱すると共に、複数の通電電極に電圧を印加することによって通電し、ガラス原料を加熱してもよい。
【0111】
ガラス原料を溶解して得られた溶融ガラスは、ガラス溶解炉より下流側に設けられた成形炉で成形される。成形されたガラスは、成形炉より下流側に設けられた徐冷炉で徐冷され、ガラス物品となる。
【0112】
ガラス物品としてガラス板を得るには、例えばフロート法が用いられる。フロート法は、フロートバス内に収容される溶融金属(例えば、溶融スズ)上に導入された溶融ガラスを帯板状のガラスリボンとする方法である。ガラスリボンは、溶融金属から引き上げられ、徐冷炉内で搬送されながら徐冷され、板ガラスとなる。板ガラスは、徐冷炉から搬出された後、切断機によって所定の寸法形状に切断され製品であるガラス板となる。
【0113】
また、ガラス板を得るのに別の成形方法として、フュージョン法を用いてもよい。フュージョン法は、樋状部材の左右両側の上縁から溢れ出した溶融ガラスを、樋状部材の左右両側面に沿って流下させ、左右両側面が交わる下縁で合わせることにより、帯板状のガラスリボンとする方法である。溶融ガラスリボンは、鉛直方向下方に移動しながら徐冷され、板ガラスとなる。板ガラスは、切断機によって所定の寸法形状に切断され、製品であるガラス板となる。
【0114】
本実施形態のガラス物品の製造方法は、ガラス原料の組成には特に制約はないが、ホウ素を含有するホウケイ酸ガラスの製造方法に用いるのが好適である。また、本実施形態のガラス物品の製造方法は、清澄剤としてフッ素成分、塩素成分を含むガラス原料の組成、特に無アルカリ組成のアルミノホウケイ酸ガラスの製造に好適である。無アルカリ組成のアルミノホウケイ酸ガラスは、液晶ディスプレイ(LCD)や有機発光ダイオード(OLED)用途に好適である。
【0115】
本実施形態のガラス物品は、無アルカリガラス組成で、歪点および溶解性を高くする観点から好ましい例として、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:58〜66%、Al
2O
3:15〜22%、B
2O
3:5〜12%、MgO:0.5〜8%、CaO:0.5〜9%、SrO:3〜12.5%、BaO:0〜2%、Cl:0.01〜0.35%、F:0.01〜0.15%、およびSO
3:0.0001〜0.0025%を含み、MgO+CaO+SrO+BaO:9〜18%、MgO/(MgO+CaO):0.35〜0.55である。
【0116】
特に溶解性を高くする観点から好ましい例として、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:50〜61.5%、Al
2O
3:10.5〜18%、B
2O
3:7〜10%、MgO:2〜5%、CaO:0.5〜14.5%、SrO:0〜24%、BaO:0〜13.5%、Cl:0.01〜0.35%、F:0.01〜0.15%、およびSO
3:0.0001〜0.0025%を含み、MgO+CaO+SrO+BaO:16〜29.5%、MgO/(MgO+CaO):0.3〜0.5である。
【0117】
特に歪点を高くする観点から好ましい例として、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO
2:54〜73%、Al
2O
3:10.5〜22.5%、B
2O
3:0.1〜12%、好ましくは0.3〜12%、より好ましくは0.5〜5.5%、MgO:0.5〜10%、CaO:0.5〜9%、SrO:0〜16%、BaO:0〜2.5%、Cl:0.01〜0.35%、F:0.01〜0.15%、およびSO
3:0.0001〜0.0025%を含み、MgO+CaO+SrO+BaO:8〜26%、MgO/(MgO+CaO):0.3〜0.8である。
【0118】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。