特許第6794937号(P6794937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794937
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20201119BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   H01L21/302 101G
   H05H1/46 L
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-122491(P2017-122491)
(22)【出願日】2017年6月22日
(65)【公開番号】特開2019-9233(P2019-9233A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】特許業務法人弥生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162008
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 宣明
(72)【発明者】
【氏名】南 雅人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 芳彦
【審査官】 加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−44145(JP,A)
【文献】 特表2008−506993(JP,A)
【文献】 特表2017−506817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
C23C 16/505
H01L 21/31
C23C 14/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上部の側面が全周に亘って絶縁部材からなるリング部により囲まれた下部電極の上に四角形の基板を載置し、プラズマにより基板を処理するプラズマ処理装置において、
前記下部電極は、複数枚の基板が間隔をおいて横並びに載置されかつ各基板がリング部毎に載置されるように構成され、
互に隣接する前記リング部の一方は、基板の四辺に沿って時計回りに周回する周回路で見たときに、前記周回する方向を前方と定義すると、前方側の帯状部材の後端面に後方側の帯状部材の前端部の側面が接触する関係になるように四辺を形成する帯状部材により構成され、
互に隣接する前記リング部の他方は、基板の四辺に沿って反時計回りに周回する周回路で見たときに、前記周回する方向を前方と定義すると、前方側の帯状部材の後端面に後方側の帯状部材の前端部の側面が接触する関係になるように四辺を形成する帯状部材により構成され、
前記リング部を構成する各帯状部材は、長さ方向の移動が規制される被規制部がその後部側に設けられ、
互に隣接する基板に対応する下部電極同士の間である境界領域が伸びる方向を縦方向と定義し、前記境界領域に設けられる帯状部材を縦部材と定義し、横方向に伸びる帯状部材を横部材と定義すると、
前記境界領域に設けられる縦部材は、前記互に隣接するリング部の周回路の各々に対して共通化され、
前記縦部材の後端面にその前端部の側面が各々接触している、前記リング部の一方に属する横部材と前記リング部の他方に属する横部材との間には、横部材の熱による伸びを吸収するための隙間が形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
少なくとも上部の側面が全周に亘って絶縁部材からなるリング部により囲まれた下部電極の上に四角形の基板を載置し、プラズマにより基板を処理するプラズマ処理装置において、
前記下部電極は、複数枚の基板が間隔をおいて横並びに載置されかつ各基板がリング部毎に載置されるように構成され、
互に隣接する前記リング部は、いずれも基板の四辺に沿って時計回りに周回する周回路及び反時計回りに周回する周回路の一方で見たときに、前記周回する方向を前方と定義すると、前方側の帯状部材の後端面に後方側の帯状部材の前端部の側面が接触する関係になるように四辺を形成する帯状部材により構成され、
前記リング部を構成する各帯状部材は、長さ方向の移動が規制される被規制部がその後部側に設けられ、
互に隣接する基板に対応する下部電極同士の間である境界領域が伸びる方向を縦方向と定義し、前記境界領域に設けられる帯状部材を縦部材と定義し、横方向に伸びる帯状部材を横部材と定義すると、
前記境界領域に設けられる縦部材は、前記互に隣接するリング部の一方の周回路及び他方の周回路に夫々属する一方の縦部材及び他方の縦部材により構成され、
前記一方の縦部材の前端部の側面と、当該側面と対向し、前記他方のリング部の周回路に属する横部材の前端面と、の間には、横部材の熱による伸びを吸収するための隙間が形成され、
前記他方の縦部材の前端部の側面と、当該側面と対向し、前記一方のリング部の周回路に属する横部材の前端面と、の間には、前記隙間が形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記帯状部材における被規制部よりも前方側には、当該帯状部材が長さ方向にガイドされるための被ガイド部が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも上部の側面が全周に亘って絶縁部材からなるリング部により囲まれた下部電極の上に四角形の基板を載置し、プラズマにより基板を処理するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造においては、被処理基板であるガラス基板にプラズマ化された処理ガスを供給して、エッチング処理や成膜処理などのプラズマ処理を行う工程がある。例えばプラズマ処理は、真空雰囲気が形成される処理容器内に設けられた載置台上に基板を載置した状態で実施される。載置台は例えば角筒形状に形成され、その外周部には、基板上にプラズマを均一性高く分布させるためのフォーカスリング等と呼ばれている絶縁性のリング部材が設けられる。このリング部材は、角型の環状体であり、例えば角型の一辺を形成する部材を複数個組み合わせて形成される。これら部材は熱膨張する性質を備えているため、熱膨張により部材同士が押圧し合い、リング部材の変形や破損を招くおそれがある。また、部材同士の間に隙間が形成されると、この隙間にプラズマが進入し、異常放電や載置台表面に形成された溶射膜が浸食されるエロージョンの原因となる。
【0003】
特許文献1には、角型のシールド部材を4本の構成部品により構成し、一の構成部品の一端側の端面が隣接する他の構成部品の側面に当接すると共に、他端側の側面に、隣接する前記他の構成部品とは異なる他の構成部品の一端側の端面が当接するように、構成部品を組み合わせる技術が提案されている。この例では、一の構成部品が熱膨張によって伸びたとしても、隣接する他の構成部品を押すことがなく、シールド部材と下部電極との間の隙間の発生が防止される。しかしながら、特許文献1は、載置台に1枚の基板を載置してプラズマ処理を行うものであり、載置台に複数枚の基板を並べて載置し、これら複数枚の基板に同時にプラズマ処理を行う場合については考慮されていない。
【0004】
また、特許文献2には、フラットパネルディスプレイなどの大面積基板の縁部を基板支持体に押し付けて基板の変形を抑制するシャドーフレームにおいて、基板の外縁をカバーするマスクパネルと、基板の中央をカバーするマスクパネルを備える構成が記載されている。さらに、特許文献3には、EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどの被蒸着部材の表面に真空蒸着によりEL材料を形成する際に、被蒸着部材に蒸着マスクを固定する蒸着用冶具において、蒸着用冶具にマスク伸縮緩衝用溝を形成することで、蒸着マスクの熱変形を吸収する技術が記載されている。しかしながら、これら特許文献2及び特許文献3は、リング部材を構成する部材同士の隙間の形成や、異常放電の抑制に関しては考慮されておらず、本発明の課題を解決することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5885939号公報
【特許文献2】特許第5064217号公報
【特許文献3】特許第4795842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、下部電極に複数枚の基板を並べて載置してプラズマ処理を行うにあたり、下部電極における異常放電の発生を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明は、少なくとも上部の側面が全周に亘って絶縁部材からなるリング部により囲まれた下部電極の上に四角形の基板を載置し、プラズマにより基板を処理するプラズマ処理装置において、
前記下部電極は、複数枚の基板が間隔をおいて横並びに載置されかつ各基板がリング部毎に載置されるように構成され、
互に隣接する前記リング部の一方は、基板の四辺に沿って時計回りに周回する周回路で見たときに、前記周回する方向を前方と定義すると、前方側の帯状部材の後端面に後方側の帯状部材の前端部の側面が接触する関係になるように四辺を形成する帯状部材により構成され、
互に隣接する前記リング部の他方は、基板の四辺に沿って反時計回りに周回する周回路で見たときに、前記周回する方向を前方と定義すると、前方側の帯状部材の後端面に後方側の帯状部材の前端部の側面が接触する関係になるように四辺を形成する帯状部材により構成され、
前記リング部を構成する各帯状部材は、長さ方向の移動が規制される被規制部がその後部側に設けられ、
互に隣接する基板に対応する下部電極同士の間である境界領域が伸びる方向を縦方向と定義し、前記境界領域に設けられる帯状部材を縦部材と定義し、横方向に伸びる帯状部材を横部材と定義すると、
前記境界領域に設けられる縦部材は、前記互に隣接するリング部の周回路の各々に対して共通化され、
前記縦部材の後端面にその前端部の側面が各々接触している、前記リング部の一方に属する横部材と前記リング部の他方に属する横部材との間には、横部材の熱による伸びを吸収するための隙間が形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の発明は、少なくとも上部の側面が全周に亘って絶縁部材からなるリング部により囲まれた下部電極の上に四角形の基板を載置し、プラズマにより基板を処理するプラズマ処理装置において、
前記下部電極は、複数枚の基板が間隔をおいて横並びに載置されかつ各基板がリング部毎に載置されるように構成され、
互に隣接する前記リング部は、いずれも基板の四辺に沿って時計回りに周回する周回路及び反時計回りに周回する周回路の一方で見たときに、前記周回する方向を前方と定義すると、前方側の帯状部材の後端面に後方側の帯状部材の前端部の側面が接触する関係になるように四辺を形成する帯状部材により構成され、
前記リング部を構成する各帯状部材は、長さ方向の移動が規制される被規制部がその後部側に設けられ、
互に隣接する基板に対応する下部電極同士の間である境界領域が伸びる方向を縦方向と定義し、前記境界領域に設けられる帯状部材を縦部材と定義し、横方向に伸びる帯状部材を横部材と定義すると、
前記境界領域に設けられる縦部材は、前記互に隣接するリング部の一方の周回路及び他方の周回路に夫々属する一方の縦部材及び他方の縦部材により構成され、
前記一方の縦部材の前端部の側面と、当該側面と対向し、前記他方のリング部の周回路に属する横部材の前端面と、の間には、横部材の熱による伸びを吸収するための隙間が形成され、
前記他方の縦部材の前端部の側面と、当該側面と対向し、前記一方のリング部の周回路に属する横部材の前端面と、の間には、前記隙間が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数枚の基板が並べて載置される下部電極の少なくとも上部の側面を囲むようにリング部を設けるにあたり、リング部を構成する帯状部材は、帯状部材の伸び方向の一端側が開放されているか、または互に対向する帯状部材間に熱による伸びを吸収するための隙間を形成するように設けられている。このため、帯状部材がプラズマ処理時に熱膨張しても、帯状部材同士の押圧による帯状部材の破損や変形が防止される。また、これら帯状部材の熱による伸びを吸収するための隙間は、下部電極とは接触しない領域に形成されており、帯状部材同士の間の隙間から下部電極が露出しない構造となっているので、プラズマに下部電極の側面が直接暴露されることがなく、下部電極の表面に形成される溶射膜のエロージョンや異常放電の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】プラズマ処理装置の一実施の形態を示す縦断側面図である。
図2】プラズマ処理装置に設けられる下部電極とリング部の一実施形態を示す平面図である。
図3】リング部を構成する帯状部材の横部材を示す縦断側面図である。
図4】下部電極とリング部とを示す平面図である。
図5】リング部の他の例を示す平面図である。
図6】リング部の他の実施の形態を示す平面図である。
図7】リング部の他の実施の形態を示す平面図である。
図8】リング部の他の実施の形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。図1は、本発明のプラズマ処理装置1の一実施形態を示す縦断側面図である。このプラズマ処理装置1は、誘導結合プラズマを生成して、例えばG6ハーフ基板のような四角形の基板に対し、エッチング処理やアッシング処理等の誘導結合プラズマ処理を行うプラズマ処理装置として構成される。G6ハーフ基板とは、G6サイズ(1500mm×1850mm)の基板の長辺の長さを半分に分割したサイズの基板であり、例えば有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)を用いた有機ELディスプレイに適用されるものである。以下、G6ハーフ基板を基板Gとして説明する。
【0012】
このプラズマ処理装置1は、導電性材料、例えば内壁面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなり、電気的に接地された角筒形状の気密な処理容器10を備えている。処理容器10は、例えばアルミナ(Al)等のセラミックスや、石英等より構成された誘電体窓2によって、アンテナ室11及び処理室12に上下に区画されている。処理容器10におけるアンテナ室11の側壁111と処理室12の側壁121との間には内側に突出する支持部材13が設けられており、この支持部材13の上に誘電体窓2が載置される。処理容器10の側面には、プラズマ処理される基板Gを受け渡すための搬入出口14が設けられ、ゲートバルブ15により開閉自在に構成されている。
【0013】
誘電体窓2の下部側には、ガス供給部21が嵌め込まれている。このガス供給部21は、例えば導電性材料、例えばその内面または外面が陽極酸化処理されたアルミニウムにより構成され、電気的に接地されている。ガス供給部21の内部には水平に伸びるガス流路22が形成されており、このガス流路22には、下方に向かって延びる複数のガス吐出孔23が連通している。誘電体窓2には、このガス流路22に連通するようにガス供給管24が設けられており、このガス供給管24は、処理容器10の天井からその外側へ貫通し、処理ガス供給源及びバルブシステム等を含む処理ガス供給系25に接続されている。
【0014】
アンテナ室11内には、高周波(RF)アンテナ3が配設されている。高周波アンテナ3は、銅やアルミニウム等の良導電性の金属からなるアンテナ線31を環状や渦巻状等の任意の形状に配置して構成され、絶縁部材からなるスペーサ32により誘電体窓2から離間して設けられている。なお、高周波アンテナ3は、複数のアンテナ部を有する多重アンテナであってもよい。アンテナ線31の端子33にはアンテナ室11の上方へ延びる給電部材34が接続され、この給電部材34の他端側には、給電線35により整合器36を介して高周波電源37が接続されている。
【0015】
処理室12内の下方には、誘電体窓2を挟んで高周波アンテナ3と対向するように、複数例えば2枚のG6ハーフ基板Gを載置するための下部電極4が設けられている。下部電極4は、第1の電極体41と、この第1の電極体41の下方に設けられた第2の電極体42と、を備えている。これら第1の電極体41及び第2の電極体42は例えば表面がアルマイト処理されたアルミニウムやステンレス等からなる。
【0016】
第1の電極体41の表面は基板載置面をなし、例えば図2に示すように、2枚の基板Gが間隔をおいて並べて載置されるように、第1の基板載置面51及び第2の基板載置面52を備えている。これら第1の基板載置面51及び第2の基板載置面52は、基板Gの形状に合わせて平面視四角形状に構成されている。図1に示すように、例えば第1の電極体41の表面には、凹部43が形成されている。この凹部43は、互に隣接する基板Gに対応する下部電極4同士の間である境界領域44を形成するものであり、この凹部43により、第1の電極体41の表面が2つに区画されて2つの基板載置面51、52が夫々形成される。このため、凹部43は、第1及び第2の基板載置面51、52の長辺と平行に、例えば第1の電極体41の長辺の中央部に形成されている。
【0017】
第1の電極体41の上面及び側面には、凹部43の内側面及び底面も含めて、例えばアルミナよりなる絶縁性の溶射膜45が形成されている。また、例えば第1及び第2の基板載置面51、52に設けられた溶射膜45の内部には、図示しないチャック用の電極が配設され、静電吸着力により基板Gが保持されるように構成されている。
【0018】
下部電極4の底部は絶縁部材46を介して、中空の支柱47に支持されている。この支柱47は処理容器10の底部を気密状態を維持しつつ貫通し、処理容器10外に配設された昇降機構(図示せず)に接続されている。例えば処理室12の底部には、第1の基板載置面51及び第2の基板載置面52に夫々対応する位置に、図示しない複数の受け渡しピン等の基板受け渡し機構が夫々設けられている。そして、下部電極4が昇降することにより、受け渡しピンが下部電極4の表面から突没し、こうして、基板Gの搬入出時には下部電極4が昇降機構により昇降駆動される。絶縁部材46と処理容器10の底部との間には、支柱47を気密に包囲するベローズ48が配設されている。これら第1の電極体41及び第2の電極体42よりなる下部電極4には、中空の支柱47内に設けられた給電線53により、整合器54を介して高周波電源55が接続されている。この高周波電源55は、プラズマ処理中に、バイアス用の高周波電力を下部電極4に印加するものである。
【0019】
第1の電極体41の内部には、例えば周方向に延びる環状のチラー流路411が設けられている。このチラー流路411には、チラーユニット(図示せず)より所定温度の熱伝導媒体、例えばガルデン(登録商標)が循環供給され、熱伝導媒体の温度によって下部電極4上の基板Gの処理温度が制御されるようになっている。また、第1の電極体41の上面には、第1の電極体41内部に設けられたガス供給路412の上端が開口し、熱伝達用ガス例えばヘリウム(He)ガスを下部電極4の表面と基板Gの裏面との間に供給するように構成されている。
【0020】
第2の電極体42は、第1の電極体41のガス供給路412の下端に連通する流路421を備え、この流路421には熱伝達用ガスの配管が接続されている。また、処理容器10の底面の排気口16には排気路17を介して真空排気機構18が接続されている。この真空排気機構18には図示しない圧力調整部が接続されており、これにより処理容器10内が所望の真空度に維持されるように構成されている。
【0021】
下部電極4には、第1及び第2の基板載置面51、52の周囲を全周に亘って夫々囲むように、絶縁部材例えばアルミナ等の絶縁性セラミックスからなるリング部6が配置されている。このリング部6は、プラズマ発生空間に臨むように配置されているので、このリング部6を介してプラズマが下部電極4上の2枚の基板Gに夫々集束する。例えばリング部6が載置されたときのリング部6の上面は、第1及び第2の基板載置面51、52と揃うように構成され、下部電極4の上部の側面は全周に亘ってリング部6により囲まれることになる。リング部6は、図2に示すように、例えば長尺体である帯状部材61〜67を組み合わせて形成されている。
【0022】
図2は下部電極4の平面図であり、第1及び第2の基板載置面51、52とリング部6を示している。基板(第1の基板載置面51、第2の基板載置面52)Gの四辺に沿って時計回りまたは反時計回りに周回する周回路で見たときに、周回する方向を前方と定義して説明する。第1の基板載置面51の周囲には、反時計回りに周回する第1の周回路71が形成され、この第1の周回路71に沿って、帯状部材61〜64が、前方側の帯状部材の後端面に後方側の帯状部材の前端部の側面が接触する関係になるように配置される。また、第2の基板載置面52の周囲には、時計回りに周回する第2の周回路72が形成され、この第2の周回路72に沿って、帯状部材64〜67が、前方側の帯状部材の後端面に後方側の帯状部材の前端部の側面が接触する関係になるように配置される。
【0023】
帯状部材64は、下部電極4の境界領域44を形成する凹部43内に配置されている。凹部43と帯状部材64とは、凹部43内に帯状部材64を配置したときに、凹部43と帯状部材64との隙間からプラズマが進入せず、帯状部材64の表面の高さ位置が第1及び第2の基板載置面51、52と互いに揃うように、互いの形状を合わせて形成される。
【0024】
これら帯状部材61〜67は熱により熱膨張し、長さ方向に伸びるので、各々長さ方向の移動が規制される被規制部がその後部側に設けられている。帯状部材61〜67の両端部のうち、伸び方向の前方側を一端側とし、被規制部が設けられる後部側を他端側とする。そして、前記他端側を規制端611、621、631、641、651、661、671、前記一端側を自由端612、622、632、642、652、662、672とする。また、境界領域44に設けられた帯状部材64を縦部材64、縦部材64が伸びる方向を縦方向とし、縦部材64の規制端641において、側面が隣接する帯状部材63、67を横部材63、67とし、横部材63、67が伸びる方向を横方向とする。
【0025】
こうして、第1の周回路71を形成する帯状部材61〜64は、帯状部材61〜64の規制端611〜641の夫々の端面が、隣接する他の帯状部材61〜64の自由端612〜642の側面に当接する状態で 、互いに隣接する帯状部材が直交するように配置される。また、第2の周回路72を形成する帯状部材64〜67は、帯状部材64〜67の規制端641〜671の夫々の端面が、隣接する他の帯状部材64〜67の自由端642〜672の側面に当接する状態で 、互いに隣接する帯状部材が直交するように配置される。この構成のリング部6のように互に隣接するリング部6の境界領域44に共通の縦部材64を備えた構成では、互に隣接するリング部の周回する方向は、互に逆向きとなる。
【0026】
第1の周回路71に設けられた横部材63と、第2の周回路72に設けられた横部材67は、一直線上に配置されている。これら横部材63の端面(自由端)632と、横部材67の端面(自由端)672とは互いに対向し、これら端面の間には、これら横部材63、67の熱による伸びを吸収するための隙間60が、境界領域44の延長線上に形成されている。この例では、境界領域44に設けられる縦部材64は、第1の周回路71及び第2の周回路72の各々に対して共通化されており、隙間60を介して、横部材63の端面632及び横部材67の端面672同士が対向するように配置されている。隙間60が境界領域44の延長線上に形成されるとは、縦部材64の規制端641の幅の範囲内に隙間60が形成されるということである。隙間60の幅Aは、横部材63、67の熱による伸びを考慮して形成される。
【0027】
隙間60近傍における横部材63、67の縦断側面図を図3に示す。この図に示すように、横部材63、67の互いに対向する端面632、672には夫々段部が形成され、各々の段部が組み合うように構成されている。具体的には、横部材63の端面632は、上部633が横部材67側に突出するように構成されると共に、横部材67の端面672は、下部673が横部材63側に突出するように構成される。そして、横部材63の端面の上部633が横部材67の端面の下部673の上に位置するように互いに組み合わせられる。これら横部材63、67の端面632、672同士の対向部には夫々隙間60が形成される。従って、上方側から見ると、横部材63と横部材67との間の隙間60の下方側には、横部材67の端面の下部673があり、横部材63、67の下部側にある構造体の表面は露出しない状態となっている。
【0028】
第1の電極体41及び第2の電極体42の周囲には、リング部6の下方側において、これら第1の電極体41及び第2の電極体42の側面を覆うように側部絶縁部材73が配置されている。この側部絶縁部材73は例えばアルミナ等の絶縁性のセラミックスやポリテトラフルオロエチレン等の絶縁性の樹脂により、平面視四角形状のリング形状に形成されている。さらに、側部絶縁部材73の周囲には、側部絶縁部材73の側面を覆って下部電極4の側部の最も外側に位置する外側リング部74が配置されている。この外側リング部74は例えばリング部6と同じ材質により、平面視四角形状のリング形状に形成されており、この外側リング部74の表面にリング部6の裏面側周縁部が載置される。側部絶縁部材73の下面は絶縁部材46にて支持されている。図1中49は、シール部材をなすOリングである。
【0029】
続いて、リング部6の取り付け構造について、図2を参照して説明する。帯状部材61〜67は、夫々の規制端611〜671に設けられた規制用の孔部75と、規制用の孔部75の前方側に長さ方向に離間して設けられた支持用の孔部76を有する。支持用の孔部76は少なくとも1つ設けられるが、帯状部材61〜67の長さに応じて2つ又はそれ以上設けるようにしてもよい。規制用の孔部75は帯状部材61〜67の規制端611〜671の長さ方向の移動を規制するための被規制部として機能するものであり、例えば規制用の孔部75に垂直な断面において遊びが少なく、平面上における形状が真円状に形成される。
【0030】
支持用の孔部76は、帯状部材61〜67の自由端612〜672が長さ方向に変位自在にガイドされるための被ガイド部として機能するものであり、支持用の孔部76に垂直な断面において長さ方向に遊びがあり、平面上における形状が両端が半円となる矩形に形成される。支持用の孔部76における長径は、各帯状部材61〜67が熱膨張しても、支持用の孔部76に装着される後述する支持ピンが帯状部材61〜67の熱膨張を規制しない程度の長さを有するように形成される。
【0031】
各帯状部材61〜67の規制端611〜671は夫々規制用の孔部75に装着された規制ピン77によって、例えば側部絶縁部材73の上面又は第1の電極体41の上面に固定されている。さらに、帯状部材61〜67は、支持用の孔部76に嵌まる支持ピン78によって、夫々の帯状部材の自由端612〜672が、側部絶縁部材73の上面又は第1の電極体41の上面に対して変位自在に支持される。こうして、各帯状部材61〜67は規制端611〜671を起点にして長さ方向に沿って熱膨張又は熱収縮可能に支持されている。なお、これら規制用の孔部75及び支持用の孔部76の上部に、図示しない絶縁性のカバー部材を設け、規制ピン77、支持ピン78、孔部75、76がプラズマに曝されないように構成してもよい。また、規制用の孔部75及び支持用の孔部76を、各帯状部材61〜67の裏面側に座繰り穴として設けると共に、規制ピン77及び支持ピン78を側部絶縁部材73側又は第1の電極体41側に設けることにより、規制ピン77、支持ピン78、孔部75、76がプラズマに曝されないように構成してもよい。
【0032】
プラズマ処理装置1には例えばコンピュータからなる制御部100が設けられている。この制御部100はプログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部などを備えており、プログラムには制御部100からプラズマ処理装置1の各部に制御信号を送り、後述の各ステップを進行させることで基板Gに対してプラズマ処理を施すように命令が組み込まれている。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、MO(光磁気ディスク)などの図示しない記憶部に格納されて制御部100にインストールされる。
【0033】
上述のプラズマ処理装置1では、先ずゲートバルブ15を開いて処理室12内へ図示しない搬送機構により例えば2枚の基板Gを横並びに保持して搬入し、下部電極4を昇降させて、第1の基板載置面51及び第2の基板載置面52に対して、図示しない基板受け渡し機構を介して第1の基板載置面51及び第2の基板載置面52上に2枚の基板Gを同時に載置し、これら基板Gを下部電極4に静電吸着させる。尚、外部の搬送機構により、基板Gを1枚ずつ搬入し、第1の基板載置面51及び第2の基板載置面52に対して、1枚ずつ基板Gを載置するようにしてもよい。次いで、ゲートバルブ15を閉じ、処理ガス供給系25からガス供給部21のガス吐出孔23を介して処理ガスを処理室12内に供給すると共に、排気口16から排気路17を介して真空排気機構18により処理室12内を真空排気することにより、処理室12内を例えば0.66〜26.6Pa程度の圧力雰囲気に維持する。また、基板Gの裏面側には、基板Gの温度上昇や温度変化を回避するために、ガス供給路412を介してHeガスを供給する。
【0034】
続いて、高周波電源37から例えば13.56MHzの高周波を高周波アンテナ3に印加し、これにより誘電体窓2を介して処理室12内に均一な誘導電界を形成し、この誘導電界により、処理室12内で処理ガスをプラズマ化して高密度の誘導結合プラズマを生成させる。こうして、このプラズマにより、2枚の基板Gに対してプラズマ処理、例えば基板Gの所定の膜に対しプラズマエッチングが同時に行われる。このとき、高周波電源55からバイアス用の高周波電力として、例えば周波数が6MHzの高周波電力を下部電極4に印加することにより、処理室12内に生成されたプラズマ中のイオンが下部電極4側に引き寄せられ、垂直性の高いエッチング処理が進行していく。また、基板Gの周囲に設けられた絶縁部材よりなるリング部6によって、プラズマが基板G上に集中し、エッチング速度が向上する。
【0035】
リング部6は、プラズマに曝されて加熱され、図4に模式的に示すように、リング部6を構成する帯状部材61〜67が熱膨張し、長さ方向に伸びる。図4において、帯状部材61〜67は、規制端611〜671を規制する規制ピン77を起点として自由端612〜672方向に伸びており、自由端612〜672の先端位置は、熱膨張によって伸びた長さに相当する寸法だけ変位している。また、横部材63、67は互いに対向する端面632、672が互いに接近するように伸びるが、これらの伸び方向の間には隙間60が形成されているので、この隙間60により熱による伸びが吸収される。
【0036】
このように、リング部6を構成する帯状部材61〜67は、熱膨張時の伸び方向の一端側(自由端612〜672)が開放されているか、または互に対向する横部材63、67間に熱による伸びを吸収するための隙間60が形成されている。このため、帯状部材61〜67がプラズマ処理時に熱膨張しても、隣接する帯状部材61〜67同士が押圧し合って応力が発生し、リング部6が変形したり、破損したりするおそれがない。
【0037】
また、横部材63、67間の隙間60は境界領域44の延長上に設けられ、下部電極4とは接触しない領域に形成されている。従って、隙間60から見ると、下部電極4側には、縦部材64の後端面(規制端)641が存在し、下部電極4が露出しない構造となっているので、プラズマ処理の開始時に、隙間60にプラズマが進入したとしても、プラズマに下部電極4の側面が直接暴露されることが抑えられる。これにより、プラズマによって、下部電極4の上面と側面との角部において電界が集中し、下部電極4が異常放電を起こしたり、下部電極4表面の溶射膜45が浸食されるエロージョンが発生して、溶射膜45が絶縁性を保てなくなり、異常放電の発生リスクが高まるといったことを抑制できる。さらに、横部材63、67の互いに対向する端面632、672は、段部を組み合わせて形成しているので、隙間60の下方側には横部材の一方が存在し、隙間60にプラズマが進入しても、プラズマと下部側にある側部絶縁部材73との接触が抑えられる。
【0038】
ここで、図5のように、リング部68を構成する帯状部材681〜685を配置する例について説明する。下部電極4の上部の側面の全周を囲むように設けられた帯状部材681〜684は、反時計回りに周回する周回路で見たときに、前方側の帯状部材の後端面に後方側の帯状部材の前端部の側面が接触する関係になるように配置される。これら帯状部材681〜684の後部側(規制端側)には規制用の孔部(図示せず)と規制ピン691、規制ピン691から長さ方向に離隔した位置には、支持用の孔部692と支持ピン693が夫々設けられ、帯状部材681〜684が熱膨張したときには、自由端側が伸びるように構成されている。また、境界領域44に配置される帯状部材685の規制端は、帯状部材683の中央領域の側面に接触し、その自由端と帯状部材681の側面との間には、帯状部材685の熱による伸びを吸収するための隙間69が形成されている。
【0039】
このような構成では、隙間69から見ると、隙間69の側方に第1の基板載置面51をなす下部電極4と、第2の基板載置面52をなす下部電極4が存在する。このため、隙間69にプラズマが進入すると、プラズマが下部電極4と接触し、下部電極4の異常放電や、溶射膜45のエロージョンが発生するリスクが高まる。
【0040】
これに対して、上述の実施形態によれば、2枚の基板Gが載置される下部電極4の上部の側面を囲むようにリング部6を設けるにあたり、プラズマ処理時において、リング部6を構成する帯状部材61〜67が熱膨張しても、リング部6の変形や破損が抑制される。また、熱による伸びを吸収するために予め形成された隙間60は、下部電極4とは接触しない位置に下部電極4が露出しないように構成されているので、プラズマによる下部電極4の異常放電や、溶射膜45のエロージョンの発生を防止することができる。
【0041】
続いて、他の実施形態のリング部8について、図6を参照して説明する。このリング部8は、第1の基板載置領域501の四辺に沿って設けられた帯状部材81〜84と、第2の基板載置領域502の四辺に沿って設けられた帯状部材85〜88と、を組み合わせて構成されている。帯状部材81〜84は、反時計回りに周回する周回路711で見たときに、前方側の帯状部材の後端面に後方側の帯状部材の前端部の側面が接触する関係になるように配置されている。また、帯状部材85〜88は、反時計回りに周回する周回路712で見たときに、前方側の帯状部材の後端面に後方側の帯状部材の前端部の側面が接触する関係になるように配置されている。
【0042】
そして、第1及び第2の基板載置領域501、502の境界領域に設けられる帯状部材(縦部材)は、互に隣接する周回路711、712の各々に属する第1の縦部材84及び第2の縦部材86により構成されている。また、周回路711、712の各々に属しかつ一直線上に配置された帯状部材(横部材)81、85の間には、第1の縦部材84が介在している。そして、横部材85の端面(自由端)と第1の縦部材84の前端部の側面との間には、横部材85の熱による伸びを吸収するための第1の隙間891が形成されている。
【0043】
さらに、周回路711、712の各々に属しかつ一直線上に配置された帯状部材(横部材)83、87の間には、第2の縦部材86が介在している。そして、横部材83の端面(自由端)と第2の縦部材86の前端部の側面との間には、横部材83の熱による伸びを吸収するための第2の隙間892が形成されている。これら第1及び第2の隙間891、892は、境界領域の延長線上に形成され、第1及び第2の隙間891、892から側方を見たときに、下部電極4が露出しないように構成されている。
【0044】
各帯状部材81〜88の後部側には、各々被規制部をなす規制用孔部(図示せず)及び規制ピン801が設けられており、この規制ピン801よりも前方側には、被ガイド部をなす支持用孔部802及び支持ピン803が夫々設けられている。規制用孔部、規制ピン801、支持用孔部802、支持ピン803については、上述の実施の形態と同様に構成されている。各帯状部材81〜88は規制ピン801により長さ方向の移動が規制された状態で、熱により自由端側が伸びるように構成されている。この構成のリング部のように、互に隣接するリング部8の境界領域にリング部毎に縦部材を備えた構成では、互に隣接するリング部の周回する方向は、互に同じ向きとなる。
【0045】
このような構成においても、2枚の基板Gが載置される下部電極4の上部の側面を囲むようにリング部8を設けるにあたり、プラズマ処理時において、リング部8を構成する帯状部材81〜88が熱膨張しても、リング部8の変形や破損が抑制される。また、熱による伸びを吸収するために予め形成された隙間891、892は、下部電極4と接触しない位置に、下部電極4が露出しないように構成されているので、プラズマによる下部電極4の異常放電やエロージョンの発生を防止することができる。また、この例において、第1及び第2の縦部材84、86を一体として形成すると、一体として形成された部材の第1の基板載置領域501側と第2の基板載置領域502側で伸び方向が相反するため、規制ピン801と接触する部分で縦部材が割れるおそれがある。
【0046】
以上において、本発明は、下部電極4に3枚以上の基板を互いに間隔をおいて載置する場合にも適用できる。図7に示す例は、下部電極4の表面に第1〜第3の基板載置領域511、512、513を形成し、夫々の基板載置領域の間に設けられた境界領域に夫々共通の縦部材を配置する例である。第1の基板載置領域511の周囲には反時計回りの周回路が形成され、この周回路に沿って、帯状部材910〜913が、前方側の帯状部材の後端面に後方側の帯状部材の前端部の側面が接触する関係になるように配置されている。第2の基板載置領域512の周囲には時計回りの周回路が形成され、この周回路に沿って、帯状部材913〜916が、前方側の帯状部材の後端面に後方側の帯状部材の前端部の側面が接触する関係になるように配置されている。第3の基板載置領域513の周囲には反時計回りの周回路が形成され、この周回路に沿って、帯状部材915、917〜919が、前方側の帯状部材の後端面に後方側の帯状部材の前端部の側面が接触する関係になるように配置されている。
【0047】
そして、縦部材913、915は、夫々互に隣接する周回路の各々に対して共通化されている。この構成のリング部のように互に隣接するリング部の境界領域に共通の縦部材を備えた構成では、互に隣接するリング部の周回する方向は、互に逆向きとなる。また、一直線上に配置された横部材912及び横部材916の間と、一直線上に配置された横部材914及び横部材919の間には、夫々横部材の熱による伸びを吸収するための第1の隙間921及び第2の隙間922が夫々形成されている。これら第1及び第2の隙間921、922は、夫々境界領域の延長線上に形成され、第1及び第2の隙間921、922から下部電極4が露出しないように構成されている。各帯状部材910〜919の後部側には、各々被規制部をなす規制用孔部(図示せず)及び規制ピン923が設けられている。また、この規制ピン923よりも前方側には、各々被ガイド部をなす支持用孔部924及び支持ピン925が設けられており、各帯状部材910〜919は規制ピン923により長さ方向の移動が規制された状態で、熱により自由端側が伸びるように構成されている。
【0048】
この例の第1の隙間921及び第2の隙間922においても、上述の実施形態の隙間60と同様に、夫々横部材912、916と、横部材914、919の互いの対向する端面同士は、各々の段部が組み合うように構成されている。こうして、第1の隙間921及び第2の隙間922を上方側から見ても、横部材912、916、横部材914、919の下部側にある構造体の表面は露出しない構造となっている。
【0049】
また、図8に示す例は、下部電極4の表面に第1〜第3の基板載置領域511、512、513を形成し、夫々の基板載置領域の間に境界領域を設ける場合に、各々の境界領域に第1の縦部材及び第2の縦部材を配置する例である。第1〜第3の基板載置領域511〜513の周囲には夫々反時計回りの周回路が形成され、この周回路に沿って、帯状部材931〜934、帯状部材941〜944、帯状部材951〜954が、夫々前方側の帯状部材の後端面に後方側の帯状部材の前端部の側面が接触する関係になるように配置されている。
【0050】
そして、第1及び第2の基板載置領域511、512の境界領域には、第1の縦部材934及び第2の縦部材942が設けられており、一直線上に配置された横部材931及び横部材941の間には、第1の縦部材934が介在している。そして、横部材941の端面(自由端)と第1の縦部材934との間には隙間961が形成されている。同様に、一直線上に配置された横部材933及び横部材943の間には、第2の縦部材942が介在している。そして、横部材933の端面(自由端)と第2の縦部材942との間には隙間962が形成されている。これら隙間961、962は、横部材の熱による伸びを吸収するためのものであり、境界領域の延長線上に設けられている。
【0051】
また、第2及び第3の基板載置領域512、513の境界領域には、第1の縦部材944及び第2の縦部材952が設けられている。また、一直線上に配置された横部材941及び横部材951の間には、第1の縦部材944が介在している。そして、横部材951の端面(自由端)と第1の縦部材944との間には隙間963が形成されている。同様に、一直線上に配置された横部材943及び横部材953の間には、第2の縦部材952が介在している。そして、横部材943の端面(自由端)と第2の縦部材952との間には隙間964が形成されている。これら隙間963、964は、横部材の熱による伸びを吸収するためのものであり、境界領域の延長線上に設けられている。
【0052】
この構成のリング部のように、互に隣接するリング部8の境界領域にリング部毎に縦部材を備えた構成では、互に隣接するリング部の周回する方向は、互に同じ向きとなる。各帯状部材の後部側には、各々被規制部をなす規制用孔部(図示せず)及び規制ピン971が設けられている。また、この規制ピン971よりも前方側には、被ガイド部をなす支持用孔部972及び支持ピン973が設けられており、各帯状部材は規制ピン971により長さ方向の移動が規制された状態で、熱により自由端側が伸びるように構成されている。
【0053】
図7及び図8に示す構成においても、プラズマ処理時において、熱膨張によるリング部を構成する帯状部材同士の接触が抑制され、予め横部材の熱による伸びを吸収するために形成された隙間961〜964は、下部電極4から露出しない領域に設けられていることから、下部電極4の異常放電やエロージョンの発生を抑制することができる。
【0054】
本実施の形態において、リング部は、絶縁性のセラミックス、例えばアルミナ、イットリア、窒化シリコン、石英などで構成される。また、ピンとしては、ステンレスピン、セラミックスピン、アルミピン等が用いられる。また、帯状部材の長さ方向の移動の規制はピンを用いたが、ピンの他、帯状部材の後端部の固定については、例えば、ねじ止めやクランプ等による圧接、帯状部材と側部絶縁部材との嵌め込み構造による固定などを用いることができる。さらに、自由端側の変位自在部分については帯状部材と側部絶縁部材との嵌め込み式のレール等により一方向に変位を制限することにできるガイド部材などを用いてもよい。
【0055】
ここで、処理室12の底部に下部電極4を配置する手法は、図1に示す、昇降自在な支柱47によって支持された絶縁部材46を介して設ける場合に限定されない。例えば金属製の処理容器10により構成される処理室12の底面に、絶縁部材からなる支持台を固定配置し、この上に下部電極4を設けてもよい。この場合、外部の搬送機構との間での基板Gの受け渡しは、第1及び第2の基板載置面51、52に対して突没可能に受け渡しピンを昇降させる駆動機構を備えた基板受け渡し機構を用いて行われる。
【0056】
なお、処理容器10にて形成されるプラズマは、誘導結合プラズマを形成する高周波アンテナ3、誘電体窓2を備える場合に限定されるものではない。誘電体窓2ではなく非磁性の金属、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成された金属壁(金属窓)を介して高周波アンテナ3が設けられた場合についても適用できる。この場合、処理ガスは、ガス供給部21からではなく金属壁にガスシャワー機構を設けて供給してもよい。さらに、下部電極4と金属製のガス供給部との間に容量結合プラズマを形成する構成を採用してもよい。
【0057】
本発明のプラズマ処理装置を用いて実施されるプラズマ処理の種類は、既述のエッチング処理やアッシング処理に限定されるものではなく、基板Gに対する成膜処理であってもよい。また、基板Gの種類についても既述のG6ハーフ基板の例に限定されず、他のサイズの矩形基板であってもよい。さらにまた、FPD用の矩形基板に限らず、太陽電池等の他の用途の矩形基板を処理する場合にも適用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8