(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術は、炭素イオンを注入することによってゲッタリング層を形成している。しかしながら、この技術では、ゲッタリング能力を高めるために注入するイオンのドーズ量を高めると、半導体ウェーハの表面に与えるダメージが増加し、エピタキシャル欠陥が生じるという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、ゲッタリング能力を有し、かつエピタキシャル欠陥が抑制されたエピタキシャルシリコンウェーハを得ることが可能なエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、ゲッタリング能力を有し、かつエピタキシャル欠陥が抑制されたエピタキシャルウェーハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、イオン注入とは異なる方法でゲッタリング層を形成する方法を検討したところ、陽極酸化により単結晶シリコン基板に多孔質シリコン層を形成し、当該多孔質シリコン層をゲッタリング層として利用することを想起し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)単結晶シリコン基板の表層部に、陽極酸化により複数の孔を有する多孔質シリコン層を形成する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記単結晶シリコン基板に酸化性ガス雰囲気下で熱処理を施すことで、前記多孔質シリコン層の表面を酸化膜とする第2工程と、
前記第2工程の後に、前記酸化膜を除去する第3工程と、
前記第3工程の後に、前記単結晶シリコン基板に非酸化性ガス雰囲気下で熱処理を施すことで、前記多孔質シリコン層の表層部のみをシリコンで充填されたバッファ層とする第4工程と、
前記第4工程の後に、前記バッファ層上にシリコンエピタキシャル層を成長させる第5工程と、
を有することを特徴とするエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
【0010】
(2)前記第4工程後の前記多孔質シリコン層の厚さを1μm以上5μm以下とする、上記(1)に記載のエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
【0011】
(3)前記第4工程後の前記多孔質シリコン層における孔のピッチを100nm以上とする、上記(1)または(2)に記載のエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
【0012】
(4)前記第2工程における熱処理を500℃以上1100℃以下とする、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
【0013】
(5)前記第4工程における熱処理を、水素およびアルゴンから選択される少なくとも一種の雰囲気下で行い、かつ1000℃以上1300℃以下とする、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
【0014】
(6)前記第3工程では、フッ酸により前記酸化膜を除去する、上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載のエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
【0015】
(7)前記第4工程の後であって、前記第5工程の前に、前記バッファ層の表面を研磨する、上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
【0016】
(8)単結晶シリコン基板と、
前記単結晶シリコン基板上に形成された多孔質シリコン層からなるゲッタリング層と、
前記ゲッタリング層上に形成されたバッファ層と、
前記バッファ層上に形成されたシリコンエピタキシャル層と、
を有することを特徴とするエピタキシャルシリコンウェーハ。
【0017】
(9)前記ゲッタリング層の厚さが1μm以上5μm以下である、上記(8)に記載のエピタキシャルシリコンウェーハ。
【0018】
(10)前記ゲッタリング層における孔のピッチが100nm以上である、上記(8)または(9)に記載のエピタキシャルシリコンウェーハ。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ゲッタリング能力を有し、かつエピタキシャル欠陥が抑制されたエピタキシャルシリコンウェーハを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態を詳細に説明する。なお、
図1〜3では説明の便宜上、実際の厚さの割合とは異なり、単結晶シリコン基板10の厚さに対して、多孔質シリコン層12、酸化膜14、バッファ層16、及びシリコンエピタキシャル層18の厚さを誇張して示す。
【0022】
(エピタキシャルシリコンウェーハの製造方法)
図1を参照して、本発明の一実施形態によるエピタキシャルシリコンウェーハ100の製造方法を説明する。第1工程では、単結晶シリコン基板10の表層部に、陽極酸化により複数の孔を有する多孔質シリコン層12を形成する(
図1(A),(B))。第2工程では、単結晶シリコン基板10に酸化性ガス雰囲気下で熱処理を施すことで、多孔質シリコン層12の表面を酸化膜14とする(
図1(B),(C))。第3工程では、酸化膜14を除去する(
図1(C),(D))。第4工程では、単結晶シリコン基板10に非酸化性ガス雰囲気下で熱処理を施すことで、多孔質シリコン層12の表層部のみをシリコンで充填されたバッファ層16とする(
図1(D),(E))。第5工程では、バッファ層16上にシリコンエピタキシャル層18を成長させる(
図1(E),(F))。これにより、エピタキシャルシリコンウェーハ100が得られる。以下では、本実施形態における各工程を詳細に説明する。
【0023】
[第1工程]
図1(A),(B)を参照して、第1工程では、単結晶シリコン基板10の表層部に、陽極酸化により複数の孔を有する多孔質シリコン層12を形成する。具体的には、単結晶シリコン基板10の両面のうち多孔質シリコン層12を形成する側の面に負の電極を取り付け、その反対側の面に正の電極を取り付けた状態で、単結晶シリコン基板10を酸溶液(例えば、体積比でHF:H
2O:C
2H
5OH=1:1:1の溶液)に浸漬して、電極間に電流を流す。すると、単結晶シリコン基板10の表面に注入された電荷によってシリコンがエッチングされて、単結晶シリコン基板10の表層部に多孔質シリコン層12が形成される。なお、多孔質シリコン層12は、複数の柱状の孔が単結晶シリコン基板10の厚さ方向に沿って延在する単結晶シリコン層である。
【0024】
図2(A)も参照して、第1工程で形成する多孔質シリコン層12の厚さd’は、第2〜第4工程を経ると酸化膜14とバッファ層16の厚さの分だけ減厚することを考慮して、
図2(B)に示す第4工程後の多孔質シリコン層12の所望の厚さdよりも厚く形成しておくことが好ましい。ここで、多孔質シリコン層12の厚さは、電流の印加時間を適宜調整することによって調整することができる。なお、本明細書における「多孔子層の厚さ」とは、単結晶シリコン基板の任意の断面を透過型電子顕微鏡で倍率100万倍にて観察したときに視野中に表示される全ての孔の深さの平均値とする。
【0025】
図2(A)を参照して、多孔質シリコン層12における孔のピッチは、100nm以上500nm以下とすることが好ましい。100nm以上であれば、エピタキシャルシリコンウェーハ100をデバイス形成工程における熱処理に供しても、ウェーハに欠けや剥がれが生じるおそれがなく、500nm以下であれば、十分なゲッタリング能力を確保できるからである。このようなピッチは、電流を1mA/cm
2以上25mA/cm
2以下とすることで実現することができる。ここで、孔のピッチは、後述する第2〜5工程を経ても変化しない。なお、本明細書における「孔のピッチ」とは、多孔質シリコン層12の表面を走査型電子顕微鏡で倍率100万倍にて観察したときに視野中に表示される全ての孔を対象に、隣接する孔の中心間の距離を求め、その平均を算出することによって求める。
図2(A),(B)中の「p」は、ある特定の2つ孔の中心間の距離を指す。
【0026】
単結晶シリコン基板10は、チョクラルスキー法(CZ法)や浮遊帯域溶融法(FZ法)により育成された単結晶シリコンインゴットをワイヤーソー等でスライスすることによって得ることができる。また、単結晶シリコン基板10は、任意の不純物を添加することによってn型基板またはp型基板としてもよい。また、エピタキシャル成長時の高温長時間の熱処理により、単結晶シリコン基板10中の酸素がシリコンエピタキシャル層18に拡散するのを抑制する観点から、単結晶シリコン基板10として低酸素(9×10
17atoms/cm
3以下)のシリコンウェーハを使用することが好ましい。また、単結晶シリコン基板10の厚さは、基板の反りを防ぐ観点から、280μm〜775μmとすることが好ましい。
【0027】
[第2工程]
図1(B),(C)を参照して、第2工程では、単結晶シリコン基板10に酸化性ガス雰囲気下で熱処理を施すことで、多孔質シリコン層12の表面を酸化膜14とする。このとき、多孔質シリコン層12の孔の内壁面上にも極薄い酸化膜が形成される。詳細は後述するが、本工程は、単結晶シリコン基板10の表層部における格子間シリコンの濃度を増加させておくための熱処理として重要であり、本工程を行わないとエピタキシャル欠陥が多発する。熱処理の温度は、500℃以上1100℃以下とすることが好ましい。また、熱処理の時間は、酸化膜14の厚さが1μm以上10μm以下となるように、10分〜2時間とすることが好ましい。酸化膜14の厚さが1μm以上であれば、格子間シリコンを十分に生成させることができ、10μm以下であれば、基板の反りを抑制することができるからである。また、酸化性ガスに含まれる酸素の濃度は90vol%以上とすることが好ましく、酸素以外のガスとして窒素やアルゴンを含むことが好ましい。
【0028】
[第3工程]
図1(C),(D)を参照して、第3工程では、酸化膜14を除去する。多孔質シリコン層12の表面が酸化膜14で覆われていると、第4工程にてバッファ層16を形成するのが困難になるからである。酸化膜14を除去する方法としては、1〜5質量%のフッ酸により酸化膜14をエッチングして除去する方法が挙げられる。
【0029】
第3工程では、少なくとも第4工程でバッファ層16を形成する、多孔質シリコン層12の表層部に位置する孔の内壁面上の酸化膜を除去する必要がある。ただし、最終的に孔の内壁面上に酸化膜が残存しているとゲッタリング能力が落ちるので、より高いゲッタリング能力を得る観点では、孔の内壁面上の酸化膜を全て除去することが好ましい。なお、このように孔の内壁面上の酸化膜を全て除去しても、格子間シリコンの濃度は、多孔質シリコン層12の表面側のほうが孔の底面側よりも高いので、第4工程では多孔質シリコン層12の表層部のみをバッファ層16とすることができる。
【0030】
[第4工程]
図1(D),(E)を参照して、第4工程では、単結晶シリコン基板10に非酸性ガス雰囲気下で熱処理を施すことで、多孔質シリコン層12の表層部のみをシリコンで充填されたバッファ層16とする。本発明では、第2工程で、多孔質シリコン層12の表面に予め酸化膜14を形成し、さらに第3工程でこの酸化膜14を除去した後に、第4工程を行うことが重要である。以下では、その技術的意義を説明する。
【0031】
第2工程で酸化膜14を形成すると、単結晶シリコン基板10の表層部における格子間シリコンの濃度が増加する。そして、このように高濃度の格子間シリコンは、多孔質シリコン層12に形成された孔のうち、その表層部のみを充填するためのシリコンの供給源となり、第4工程の熱処理を施すと、シリコンの充填率が高いバッファ層16が得られる。このバッファ層16が、第5工程にて形成するシリコンエピタキシャル層18に対する多孔質シリコン層12の孔の影響を緩衝するための層として機能することで、エピタキシャル欠陥が抑制されるのである。ここで、バッファ層とは、多孔質シリコンを格子間シリコンで充填し、多孔質シリコンが単結晶シリコン構造に回復した層のことをいう。バッファ層16の結晶状態は単結晶であり、その厚さは、熱処理時間を適宜調整することによって10nm〜100nmとすることが好ましい。これに対して、
図3に示すように、酸化膜の形成を行わずに非酸性ガス雰囲気下の熱処理を行うと、格子間シリコンが存在しないので、多孔質シリコン層12上にはバッファ層が形成されず、これに起因して、シリコンエピタキシャル層18のうち多孔質シリコン層12の孔上の領域ではスタッキングフォルトが多発し、エピタキシャル欠陥が誘発される。
【0032】
第4工程における熱処理は、水素およびアルゴンから選択される少なくとも一種の雰囲気下で行うことが好ましい。熱処理の温度は、1000℃以上1300℃以下とすることが好ましい。
図2(B)も参照して、熱処理の時間は、熱処理後の多孔質シリコン層12の厚さdが1μm以上5μm以下となるように、10分〜70分とすることが好ましい。多孔質シリコン層12の厚さが1μm以上であれば、高いゲッタリング能力が得られ、多孔質シリコン層12の厚さが5μm以下であれば、エピタキシャル欠陥を抑制することができるからである。
【0033】
[第5工程]
図1(E),(F)を参照して、第5工程では、バッファ層16上にCVD法により一般的な条件でシリコンエピタキシャル層18を成長させる。具体的には、キャリアガスとして水素を、ソースガスとしてジクロロシランやトリクロロシランなどを用いることができ、基板温度を1000℃〜1200℃の範囲とすることができる。シリコンエピタキシャル層18の厚さは、1〜15μmの範囲内とすることが好ましい。
【0034】
以上、本実施形態を例にして本発明のエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲内において適宜変更を加えることができる。
【0035】
例えば、第4工程の後であって、第5工程の前に、バッファ層16の表面を公知の化学機械研磨法(CMP:chemical mechanical polishing)により研磨してもよい。研磨後のバッファ層16の表面粗さRaは1nm以下とすることが好ましい。なお、本明細書における「表面粗さRa」とは、JIS B 0601(2001)に規定の算術平均粗さを意味する。
【0036】
(エピタキシャルシリコンウェーハ)
図1(F)を参照して、上記製造方法によって得られるエピタキシャルシリコンウェーハ100について説明する。エピタキシャルシリコンウェーハ100は、単結晶シリコン基板10と、単結晶シリコン基板10上に形成された多孔質シリコン層からなるゲッタリング層12と、ゲッタリング層12上に形成されたバッファ層16と、バッファ層16上に形成されたシリコンエピタキシャル層18と、を有する。エピタキシャルシリコンウェーハ100によれば、以下の作用効果が得られる。すなわち、エピタキシャルシリコンウェーハ100は、多孔質シリコン層からなるゲッタリング層12を有するので、ゲッタリング能力を有する。また、エピタキシャルシリコンウェーハ100は、シリコンエピタキシャル層18とゲッタリング層12との間にバッファ層16を有するので、エピタキシャル欠陥を抑制することができる。具体的には、シリコンエピタキシャル層18の表面では、0.2μm以上のサイズのLPDが40個/ウェーハ以下となる。
【0037】
ゲッタリング層12の厚さは1μm以上5μm以下であり、ゲッタリング層12における孔のピッチは100nm以上500nm以下であることが好ましい。これらの理由については、既述の説明を援用する。
【0038】
単結晶シリコン基板10は、低酸素(9×10
17atoms/cm
3以下)のシリコンウェーハであることが好ましく、単結晶シリコン基板10の厚さは280μm〜775μmであることが好ましい。また、単結晶シリコン基板10は、任意の不純物を添加したn型基板またはp型基板であってもよい。これらの理由については、既述の説明を援用する。
【0039】
以上、本実施形態を例にして本発明のエピタキシャルシリコンウェーハを説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲内において適宜変更を加えることができる。
【実施例】
【0040】
(実験1)
実験1では、以下に説明する方法に従って、発明例および比較例のエピタキシャルシリコンウェーハを作成し、エピタキシャル欠陥とゲッタリング能力を評価した。
【0041】
(発明例)
CZ法により育成したシリコン単結晶インゴットから切り出した、直径:200mm、厚さ:725μm、抵抗率:50Ω・cm(リン濃度:8.6×10
13atoms/cm
3)、酸素濃度(ASTM F121-1979):9×10
17atoms/cm
3の単結晶シリコン基板を用意した(
図1(A))。
【0042】
次に、既述の陽極酸化により、単結晶シリコン基板の表層部に複数の孔を有する多孔質シリコン層を形成した(
図1(A),(B))。ここで、電極間の電流値は15mA/cm
2とし、電流の印加時間は70分とした。なお、既述の方法で多孔質シリコン層のピッチを測定すると130nmであった。
【0043】
次に、単結晶シリコン基板に対して、酸素を95vol%含み、残部が窒素である酸化性ガス雰囲気下で1000℃、30分の熱処理を施すことで、多孔質シリコン層の表面に厚さ1μmの酸化膜を形成した(
図1(B),(C))。
【0044】
次に、5質量%のフッ酸により酸化膜14をエッチングして除去した(
図1(C),(D))。
【0045】
次に、単結晶シリコン基板に水素ガス雰囲気下で1100℃、23分間の熱処理を施すことで、多孔質シリコン層の表層部のみをシリコンで充填されたバッファ層とした(
図1(D),(E))。なお、既述の方法で多孔質シリコン層の厚さdを測定すると2μmであった。
【0046】
次に、CMP法によりバッファ層の表面をRa1nmに研磨した。
【0047】
次に、水素をキャリアガス、トリクロロシランをソースガスとして1150℃でCVD法により、バッファ層上にシリコンエピタキシャル層(厚さ:10μm、ドーパント:リン、抵抗率:10Ω・cm)を形成し、エピタキシャルシリコンウェーハを得た(
図1(E),(F))。
【0048】
(比較例)
発明例と同様のシリコン単結晶基板を用意した(
図3(A))。
【0049】
次に、発明例と同様の方法で、単結晶シリコン基板の表面に厚さ2μmの多孔質シリコン層を形成した(
図3(A),(B))。
【0050】
次に、単結晶シリコン基板に水素ガス雰囲気下で1100℃、3分間の熱処理を施した(
図3(B),(C))。
【0051】
次に、発明例と同様の条件で、多孔質シリコン層上にシリコンエピタキシャル層(厚さ:10μm、ドーパント:リン、抵抗率:10Ω・cm)を形成し、エピタキシャルシリコンウェーハを得た(
図3(C),(D))。
【0052】
(評価方法)
各発明例および比較例について、以下に説明するエピタキシャル欠陥の評価とゲッタリング能力の評価を行った。
【0053】
<エピタキシャル欠陥の評価>
各発明例および比較例のシリコンエピタキシャル層におけるLPD(輝点欠陥:Light point defect)の個数を以下の方法で調べることで、エピタキシャル欠陥を評価した。すなわち、表面欠陥検査装置(KLA-Tencor社製:Surfscan SP-1)を用いてDWOモード(Dark Field Wide Obliqueモード:暗視野・ワイド・斜め入射モード)でシリコンエピタキシャル層の表面を観察し、サイズ(直径)が0.2μm以上のLPDの発生状況を調べた。観察結果を表1に示す。
【0054】
<ゲッタリング能力の評価>
各発明例および比較例のシリコンエピタキシャル層の表面をNi汚染液(1.0×10
13atoms/cm
2)でスピンコート汚染法により故意に汚染した後に、窒素雰囲気下で900℃、3分の熱処理を行った。その後、この表面をライトエッチにより除去した後、表面の微小な浅い凹所であるシャローピットの有無を光学顕微鏡により観察した。ここで、Niは、多孔質シリコン層にゲッタリングされなかった場合は、シリコンと結合することによりNiシリサイドを形成する。このNiシリサイドは、ライトエッチにより溶解して、表面にシャローピットを形成する。したがって、シャローピットが観察された場合は、Niに対してゲッタリング能力を有しないと判断することができる。観察結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
(評価結果の説明)
表1に示すように、比較例は、ゲッタリング能力を有するものの、LPDが多発していた。これは、比較例では酸化膜を形成しなかったので、単結晶シリコン基板の表層部に格子間シリコンが発生しておらず、そのため水素ガス雰囲気での熱処理を行っても多孔質シリコン層上にはバッファ層が形成されず、これに起因してシリコンエピタキシャル層18のうち多孔質シリコン層12の孔上の領域でスタッキングフォルトが多発したことに起因する。これに対して、発明例は、ゲッタリング能力を有し、かつLPDを顕著に抑制することができた。
【0057】
(実験2)
実験2では、以下に説明する方法に従って、発明例1〜4のエピタキシャルシリコンウェーハをそれぞれ3枚ずつ作成して、その熱的強度を評価した。
【0058】
発明例1として、陽極酸化における電極間の電流値は18mA/cm
2とし、電流の印加時間は80分として、多孔質シリコン層のピッチを100nmとした以外は、実験1における発明例と同様の方法でエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0059】
発明例2として、陽極酸化における電極間の電流値は8mA/cm
2とし、電流の印加時間は50分として、多孔質シリコン層のピッチを230nmとした以外は、実験1における発明例と同様の方法でエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0060】
発明例3として、陽極酸化における電極間の電流値は70mA/cm
2とし、電流の印加時間は110分として、多孔質シリコン層のピッチを10nmとした以外は、実験1における発明例と同様の方法でエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0061】
発明例4として、陽極酸化における電極間の電流値は30mA/cm
2とし、電流の印加時間は95分として、多孔質シリコン層のピッチを30nmとした以外は、実験1における発明例と同様の方法でエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0062】
(評価方法)
各発明例のエピタキシャルシリコンウェーハに対して、デバイス形成工程を模擬した熱処理として、窒素雰囲気下で1100℃、2時間の熱処理を施した。評価結果を表2に示す。表2では、ウェーハ端部を目視観察してサイズ1mm×1mm以上の欠けや剥がれがウェーハあたり1個以上発生した場合を「△」、1個も発生しなかった場合を「○」とする。
【0063】
【表2】
【0064】
(評価結果の説明)
発明例1,2では、孔のピッチを100nm以上としたので、発明例3,4に比べて熱的強度が高いエピタキシャルシリコンウェーハが得られていた。