(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の露光装置(基板処理装置)の全体構成を示す図である。第1実施形態の基板処理装置は、基板Pに露光処理を施す露光装置EXであり、露光装置EXは、露光後の基板Pに各種処理を施してデバイスを製造するデバイス製造システム1に組み込まれている。先ず、デバイス製造システム1について説明する。
【0014】
<デバイス製造システム>
デバイス製造システム1は、デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレー、多層フレキシブル配線、フレキシブル・センサー等の電子デバイスを製造するライン(フレキシブル・電子デバイス製造ライン)である。以下の実施態様では、電子デバイスとしてフレキシブル・ディスプレーを例に説明する。フレキシブル・ディスプレーとしては、例えば有機ELディスプレー等がある。このデバイス製造システム1は、可撓性(フレキシブル)の長尺の基板Pをロール状に巻回した図示しない供給用ロールから、該基板Pが送り出され、送り出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、処理後の基板Pを可撓性のデバイスとして図示しない回収用ロールに巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式となっている。第1実施形態のデバイス製造システム1では、フィルム状のシートである基板Pが供給用ロールから送り出され、供給用ロールから送り出された基板Pが、順次、プロセス装置U1、露光装置EX、プロセス装置U2を経て、回収用ロールに巻き取られるまでの例を示している。ここで、デバイス製造システム1の処理対象となる基板Pについて説明する。
【0015】
基板Pは、例えば、樹脂フィルム、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂のうち1または2以上を含んでいる。
【0016】
基板Pは、例えば、基板Pに施される各種処理において受ける熱による変形量が実質的に無視できるように、熱膨張係数が顕著に大きくないものを選定することが望ましい。熱膨張係数は、例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって、プロセス温度等に応じた閾値よりも小さく設定されていてもよい。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素等でもよい。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。
【0017】
このように構成された基板Pは、ロール状に巻回されることで供給用ロールとなり、この供給用ロールが、デバイス製造システム1に装着される。供給用ロールが装着されたデバイス製造システム1は、デバイスを製造するための各種の処理を、供給用ロールから送り出される基板Pに対して繰り返し実行する。このため、処理後の基板Pには、複数のデバイス(例えば、テレビ用、パソコン用の表示パネル)が長尺方向に所定の間隔で連なった状態で形成される。つまり、供給用ロールから送り出される基板Pは、多面取り用の基板となっている。なお、基板Pは、予め所定の前処理によって、その表面を改質して活性化したもの、或いは、表面に精密パターニングの為の微細な隔壁構造(凹凸構造)を形成したものでもよい。
【0018】
処理後の基板Pは、ロール状に巻回されることで回収用ロールとして回収される。回収用ロールは、図示しないダイシング装置に装着される。回収用ロールが装着されたダイシング装置は、処理後の基板Pを、デバイスごとに分割(ダイシング)することで、複数個のデバイスにする。基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となる方向)の寸法が10cm〜2m程度であり、長さ方向(長尺となる方向)の寸法は、処理装置に装着可能な供給用ロールや回収用ロールの最大径にもよるが、数百m〜数千mになることがある。なお、基板Pの寸法(短尺/長尺の各寸法)は、上記した寸法に限定されない。また、必ずしも供給用ロールから供給されて、回収用ロールに回収される基板の搬送形態である必要はない。
【0019】
引き続き、
図1を参照し、デバイス製造システム1について説明する。デバイス製造システム1は、プロセス装置U1と、露光装置EXと、プロセス装置U2とを備える。なお、
図1では、X方向、Y方向及びZ方向が直交する直交座標系となっている。X方向は、水平面内において、プロセス装置U1から露光装置EXを経てプロセス装置U2へ向かう方向である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、基板Pの幅方向となっている。Z方向は、X方向とY方向とに直交する方向(鉛直方向)である。
【0020】
プロセス装置U1は、露光装置EXで露光処理される基板Pに対して前工程の処理(前処理)を行う。プロセス装置U1は、前処理を行った基板Pを露光装置EXへ向けて送る。このとき、露光装置EXへ送られる基板Pは、その表面に感光性機能層(光感応層)が形成された基板(感光基板)Pとなっている。
【0021】
ここで、感光性機能層は、溶液として基板P上に一様に、或いは選択的に塗布され、乾燥することによって層(膜)となる。感光性機能層の典型的なものはフォトレジストであるが、現像処理不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング材(SAM)、或いは紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元材等がある。感光性機能層として感光性シランカップリング材を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質される為、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインク)を選択塗布し、パターン層を形成する。感光性機能層として、感光性還元材を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分にメッキ還元基が露呈する為、露光後、基板Pを直ちにパラジウムイオン等を含む無電解メッキ液中に一定時間浸漬することで、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。
【0022】
露光装置EXは、プロセス装置U1から供給された基板Pに対して、ディスプレーパネル用の回路または配線等のパターンを描画している。詳細は後述するが、この露光装置EXは、複数の描画ビームLBの各々を所定の走査方向に走査することで得られる複数の描画ラインLL1〜LL5によって、基板P上に所定のパターンを露光する。露光装置EXで露光処理が行われた基板Pはプロセス装置U2に送られ、プロセス装置U2は、基板Pに対しての後工程の処理(後処理)を行う。これによって、基板Pの表面に電子デバイスの特定のパターン層が形成される。
【0023】
<露光装置(基板処理装置)>
続いて、
図1から
図9を参照して、露光装置EXについて説明する。
図2は、
図1の露光装置の主要部の配置を示す斜視図である。
図3は、基板上でのアライメント顕微鏡と描画ラインとの配置関係を示す図である。
図4は、
図1の露光装置の回転ドラム及び描画装置の構成を示す図である。
図5は、
図1の露光装置の主要部の配置を示す平面図である。
図6は、
図1の露光装置の分岐光学系の構成を示す斜視図である。
図7は、
図1の露光装置に設けられる複数の描画モジュール内の各走査器の配置関係を示す図である。
図8は、基板上でのアライメント顕微鏡と描画ラインとエンコーダヘッドとの配置関係を示す斜視図である。
図9は、
図1の露光装置の回転ドラムの表面構造を示す斜視図である。
【0024】
図1に示すように、露光装置EXは、マスクを用いない露光装置、いわゆるラスタースキャン式の描画露光装置(直描露光機)であり、基板Pを搬送方向に搬送しながら、描画ビームLBのスポット光を所定の走査方向に走査することで、基板Pの表面に描画を行って、所定のパターンを形成している。
【0025】
図1に示すように、露光装置EXは、描画装置11と、基板搬送機構12と、アライメント顕微鏡AM1,AM2と、制御装置16とを備えている。描画装置11は、基板搬送機構12によって搬送される基板Pの一部分に、複数の描画モジュールUW1〜UW5によって、所定のパターンを描画する。基板搬送機構12は、前工程のプロセス装置U1から搬送される基板Pを、後工程のプロセス装置U2に所定の速度で搬送している。アライメント顕微鏡AM1,AM2は、基板P上に描画される描画パターンと基板Pとを相対的に位置合せ(アライメント)する為に、基板Pに予め形成されたアライメントマーク等を検出する。制御装置16は、露光装置EXの各部を制御し、各部に処理を実行させる。制御装置16は、デバイス製造システム1を制御する上位の制御装置の一部または全部であってもよい。また、制御装置16は、上位の制御装置に制御される、上位の制御装置とは別の装置であってもよい。制御装置16は、例えば、コンピュータを含む。
【0026】
さらに、露光装置EXは、
図2に示すように描画装置11及び基板搬送機構12を支持する装置フレーム13と、装置フレーム13に支持されて、基板搬送機構12の一部でもある回転ドラムDRの回転位置(角度位置)を計測する回転位置検出機構(詳細は
図4及び
図8参照)14とを備えている。さらに、露光装置EX内には、描画ビームLBとしてのレーザ光(パルス光)を射出する光源装置CNTが設けられている。光源装置CNTから射出された紫外波長域の描画ビームLBは、描画装置11内で所定の光学状態に整えられると共に、光学的な走査機構によって一次元に走査されつつ、基板搬送機構12の回転ドラムDRの外周面で保持されて搬送される基板P上に所定の径のスポット光となって投射される。
【0027】
図1に示す露光装置EXは、温調チャンバーEVC内に格納されている。温調チャンバーEVCは、パッシブまたはアクティブな防振ユニットSU1,SU2を介して製造工場の設置面Eに設置される。防振ユニットSU1,SU2は、設置面E上に設けられており、設置面Eからの振動を低減する。温調チャンバーEVCは、内部を所定の温度に保つことで、内部において搬送される基板Pの温度による形状変化を抑制している。
【0028】
次に、
図1を参照して、露光装置EXの基板搬送機構12について説明する。基板搬送機構12は、基板Pの搬送方向の上流側から順に、エッジポジションコントローラEPC、駆動ローラDR4、テンション調整ローラRT1、回転ドラムDR、テンション調整ローラRT2、駆動ローラDR6、及び駆動ローラDR7を有している。
【0029】
エッジポジションコントローラEPCは、プロセス装置U1から搬送される基板Pの幅方向における位置を調整する。エッジポジションコントローラEPCは、プロセス装置U1から送られる基板Pの幅方向の端部(エッジ)における位置が、目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲に収まるように、基板Pを幅方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を修正する。なお、エッジポジションコントローラEPCによる基板Pの幅方向(Y方向)の位置決め精度は、露光位置(描画位置)の調整可能範囲、すなわち描画装置11がスポット光による走査位置を調整可能な範囲であることが望ましい。
【0030】
駆動ローラDR4は、エッジポジションコントローラEPCから搬送される基板Pの表裏両面を挟持しながら回転し、基板Pを搬送方向の下流側に送り出すことで、基板Pを回転ドラムDRへ向けて搬送する。回転ドラムDRは、基板P上でパターン露光される部分を円筒面状に支持しつつ、Y方向に延びる回転中心線AX2を中心として、回転中心線AX2の回りに回転することで、基板Pを搬送する。このような回転ドラムDRを回転中心線AX2の回りに回転させる為に、回転ドラムDRの両側には回転中心線AX2と同軸のシャフト部Sf2が設けられる。このシャフト部Sf2には、不図示の駆動源(モータや減速ギア機構等)からの回転トルクが与えられる。なお、回転中心線AX2を通り、Z方向に延びる面は、中心面p3となっている。2組のテンション調整ローラRT1,RT2は、回転ドラムDRに巻き付けられて支持される基板Pに、所定のテンションを与えている。2組の駆動ローラDR6,DR7は、基板Pの搬送方向に所定の間隔を空けて配置されており、露光後の基板Pに所定のたるみ(あそび)DLを与えている。駆動ローラDR6は、搬送される基板Pの上流側を挟持して回転し、駆動ローラDR7は、搬送される基板Pの下流側を挟持して回転することで、基板Pをプロセス装置U2へ向けて搬送する。このとき、基板Pは、たるみDLが与えられているため、駆動ローラDR6よりも搬送方向の下流側において生ずる基板Pの搬送速度の変動を吸収でき、搬送速度の変動による基板Pへの露光処理の影響を縁切りすることができる。
【0031】
従って、基板搬送機構12は、プロセス装置U1から搬送されてきた基板Pを、エッジポジションコントローラEPCによって幅方向における位置を調整する。基板搬送機構12は、幅方向の位置が調整された基板Pを、駆動ローラDR4によりテンション調整ローラRT1に搬送し、テンション調整ローラRT1を通過した基板Pを、回転ドラムDRに搬送する。これにより、基板Pは長尺方向に所定のテンションを与えられた状態で、回転ドラムDRの外周面に密着して支持される。基板搬送機構12は、回転ドラムDRを回転させることで、回転ドラムDRに支持される基板Pを、テンション調整ローラRT2へ向けて搬送する。基板搬送機構12は、テンション調整ローラRT2に搬送された基板Pを、駆動ローラDR6に搬送し、駆動ローラDR6に搬送されたた基板Pを、駆動ローラDR7に搬送する。そして、基板搬送機構12は、駆動ローラDR6及び駆動ローラDR7により、基板PにたるみDLを与えながら、基板Pをプロセス装置U2へ向けて搬送する。
【0032】
次に、
図2を参照して、露光装置EXの装置フレーム13について説明する。
図2は、
図1の露光装置の主要部の配置を示す斜視図である。
図2では、X方向、Y方向及びZ方向が直交する直交座標系となっており、
図1と同様の直交座標系となっている。露光装置EXは、
図1に示す描画装置11と、基板搬送機構12の回転ドラムDRとを支持する装置フレーム13を備えている。
【0033】
図2に示す装置フレーム13は、Z方向の下方側から順に、本体フレーム21と、三点座支持部22と、第1光学定盤23と、回転機構24と、第2光学定盤25とを有している。本体フレーム21は、
図1に示したように、防振ユニットSU1,SU2を介して設置面E上に設置されている。本体フレーム21は、回転ドラムDR及びテンション調整ローラRT1(不図示),RT2を回転可能に支持している。第1光学定盤23は、回転ドラムDRの鉛直方向の上方側に設けられ、三点座支持部22を介して本体フレーム21に設置されている。三点座支持部22は、第1光学定盤23を3つの支持点(鋼球とV溝による)でキネマチックに支持しており、各支持点におけるZ方向を調整可能となっている。このため、三点座支持部22は、第1光学定盤23の盤面のZ方向の高さや水平面に対する傾きを調整できる。なお、装置フレーム13の組み立て時において、本体フレーム21と三点座支持部22との間は、XY面内において、X方向及びY方向における位置を調整可能となっている。一方で、装置フレーム13の組み立て後において、本体フレーム21と三点座支持部22との間は固定された状態(リジットな状態)となる。但し、メンテナンス時のキャリブレーション等の際には、必要に応じて、三点座支持部22を本体フレーム21上でXY方向に微動できる構造としておくのが良い。
【0034】
第2光学定盤25は、第1光学定盤23の鉛直方向(Z方向)の上方側に設けられ、回転機構24を介して第1光学定盤23に設置されている。第2光学定盤25は、その盤面が第1光学定盤23の盤面と平行になっている。第2光学定盤25には、描画装置11の複数(本実施形態では5つ)の描画モジュールUW1〜UW5が設置される。回転機構24は、第1光学定盤23及び第2光学定盤25のそれぞれの盤面を平行に保った状態で、Z方向に延びる所定の回転軸I(回転中心線とも呼ぶ)を中心に、第1光学定盤23に対して第2光学定盤25を精密に微少回転させる構造を有する。この回転軸Iは、
図1中の中心面p3内においてZ方向に延在するとともに、回転ドラムDRに巻き付けられた基板Pの表面(円周面に倣って湾曲した描画面)内の所定点を通っている(
図3参照)。そして、回転機構24は、第1光学定盤23に対して第2光学定盤25を回転させることで、回転ドラムDR、又は回転ドラムDRに巻き付けられた基板Pに対する複数の描画モジュールUW1〜UW5全体のXY面内での角度位置を精密に調整することができる。
【0035】
回転機構24は、描画モジュールUW1〜UW5の最も回転ドラムDR側の部分を取り囲むような内径で、第1光学定盤23の上面側と第2光学定盤25の下面側の各々に対向配置されるリング状台座と、このリング状台座の間に転動可能に設けられるベアリングボール(コロ)等で構成される。
【0036】
続いて、
図1、
図4、
図5に示す光源装置CNTについて説明する。光源装置CNTは、装置フレーム13の本体フレーム21上に設置されている。光源装置CNTから射出される描画ビームLB用のレーザ光は、基板P上の感光性機能層の露光に適した所定の波長域の光であって、光活性作用の強い紫外域に設定される。光源としては、例えば、YAGの第三高調波レーザ光(波長355nm)で、連続発振または50〜100MHz程度の周波数でパルス発振するレーザ光等のレーザ光源が利用できる。
【0037】
紫外域の高出力レーザ光源として、代表的には、KrF、ArF、XeCL等の気体をレーザ媒体とするエキシマレーザが知られている。その他、波長450nm以下の紫外域に発振ピークを有するレーザーダイオード、発光ダイオード(LED)等の固体光源を用いることも可能である。本実施形態では、一例として、国際公開番号WO1999/046835、或いは国際公開番号WO2001/020733に開示されたように、ファイバー増幅器と非線形光学素子を用いて、長波長光を射出する固体光源からの光(赤外域のパルス光)を、波長355nmの紫外線パルス光(発光時間が数ピコ秒程度)に変換するレーザ光源を使うものとする。
【0038】
そのような光源装置CNTから射出された描画ビームLBは、
図4、
図5に示されるように、多数の偏光ビームスプリッタやミラー等を含むビーム分配系を介して、5つの描画モジュールUW1〜UW5の各々に導かれる。描画ビームLBは、偏光ビームスプリッタにおける描画ビームLBの透過や反射により生じるエネルギーロスを抑制すべく、偏光ビームスプリッタにおいてほぼ全て反射、またはほぼすべて透過するような偏光状態にすることが好ましい。
【0039】
次に、露光装置EXの描画装置11について説明する。描画装置11は、複数の描画モジュール(描画ヘッドとも呼ぶ)UW1〜UW5を用いた、いわゆるマルチビーム型(マルチヘッド型とも呼ぶ)の描画装置11となっている。この描画装置11は、光源装置CNTから射出された描画ビームLBを複数に分岐させ、分岐させた複数の描画ビームLBによるスポット光を、基板P上の複数(第1実施形態では例えば5つ)の描画ラインLL1〜LL5に沿ってそれぞれ走査させている。そして、描画装置11は、複数の描画ラインLL1〜LL5の各々によって基板P上に描画されるパターン同士を、基板Pの幅方向に継ぎ合わせている。先ず、
図3を参照して、描画装置11により複数の描画ビームLBを走査することで基板P上に形成される複数の描画ラインLL1〜LL5について説明する。
【0040】
図3に示すように、複数の描画ラインLL1〜LL5は、中心面p3を挟んで回転ドラムDRの周方向に2列に配置される。回転ドラムDRの回転方向の上流側の基板P上には、奇数番の第1描画ラインLL1、第3描画ラインLL3及び第5描画ラインLL5が配置される。回転ドラムDRの回転方向の下流側の基板P上には、偶数番の第2描画ラインLL2及び第4描画ラインLL4が配置される。
【0041】
各描画ラインLL1〜LL5は、基板Pの幅方向(Y方向)、つまり回転ドラムDRの回転中心線AX2に沿って形成されており、幅方向における基板Pの長さよりも短くなっている。より厳密には、各描画ラインLL1〜LL5は、基板搬送機構12により基準速度で基板Pを搬送したときに、複数の描画ラインLL1〜LL5により得られるパターンの継ぎ誤差が最小となるように、回転ドラムDRの回転中心線AX2に対し、所定の角度分だけ傾けられる。
【0042】
奇数番の第1描画ラインLL1、第3描画ラインLL3及び第5描画ラインLL5は、回転ドラムDRの軸方向に、所定の間隔を空けて配置されている。また、偶数番の第2描画ラインLL2及び第4描画ラインLL4は、回転ドラムDRの軸方向に、所定の間隔を空けて配置されている。このとき、第2描画ラインLL2は、軸方向において、第1描画ラインLL1と第3描画ラインLL3との間に配置される。同様に、第3描画ラインLL3は、軸方向において、第2描画ラインLL2と第4描画ラインLL4との間に配置される。第4描画ラインLL4は、軸方向において、第3描画ラインLL3と第5描画ラインLL5との間に配置される。そして、第1〜第5描画ラインLL1〜LL5は、基板P上に描画される露光領域A7のY方向の全幅をカバーするように、配置されている。
【0043】
奇数番の第1描画ラインLL1、第3描画ラインLL3及び第5描画ラインLL5に沿って走査される描画ビームLBの走査方向(主走査方向)は、一次元の方向となっており、同じ方向となっている。また、偶数番の第2描画ラインLL2及び第4描画ラインLL4に沿って走査される描画ビームLBの走査方向は、一次元の方向となっており、同じ方向となっている。このとき、奇数番の描画ラインLL1,LL3,LL5に沿って走査される描画ビームLBの走査方向と、偶数番の描画ラインLL2,LL4に沿って走査される描画ビームLBの走査方向とは、同じ方向となっている。このため、基板Pの搬送方向から見て、奇数番の描画ラインLL3,LL5の描画開始位置(スポット光の走査開始点)と、偶数番の描画ラインLL2,LL4の描画終了位置(スポット光の走査終了点)とは隣接(Y方向に関して一致、或いは一部重複)し、同様に、奇数番の描画ラインLL1,LL3の描画終了位置と、偶数番の描画ラインLL2,LL4の描画開始位置とは隣接(Y方向に関して一致、或いは一部重複)する。
【0044】
次に、
図4から
図7を参照して、描画装置11について説明する。描画装置11は、上記した複数の描画モジュールUW1〜UW5と、光源装置CNTからの描画ビームLBを分岐する分岐光学系(又はビーム分配系とも呼ぶ)SLと、キャリブレーションを行う為のキャリブレーション検出系31とを有する。
【0045】
分岐光学系SLは、光源装置CNTから射出された描画ビームLBを複数に分岐し、分岐した複数の描画ビームLBを複数の描画モジュールUW1〜UW5へ向けて導いている。分岐光学系SLは、光源装置CNTから射出された描画ビームLBを2つに分岐する第1光学系41と、第1光学系41により分岐された一方の描画ビームLBが照射される第2光学系42と、第1光学系41により分岐された他方の描画ビームLBが照射される第3光学系43とを有する。また、分岐光学系SLは、第1光学系41内の分岐前のビームLBをビーム軸と垂直な面内で2次元的にシフトさせるXY全体ハービング調整機構44と、第3光学系43内でのビームLBをビーム軸と垂直な面内で2次元的にシフトさせるXY片側ハービング調整機構45とを含んでいる。分岐光学系SLは、光源装置CNT側の一部が本体フレーム21に設置される一方で、描画モジュールUW1〜UW5側の他の一部が第2光学定盤25に設置されている。
【0046】
第1光学系41は、1/2波長板51と、偏光ビームスプリッタ52と、ビームディフューザ53と、第1反射ミラー54と、第1リレーレンズ55と、第2リレーレンズ56と、第2反射ミラー57と、第3反射ミラー58と、第4反射ミラー59と、第1ビームスプリッタ60とを有する。
【0047】
光源装置CNTから+X方向に射出された描画ビームLBは、1/2波長板51に照射される。1/2波長板51は、描画ビームLBの照射面内において回転可能となっている。1/2波長板51に照射された描画ビームLBは、その偏光方向が、1/2波長板51の回転量に応じた所定の偏光方向となる。1/2波長板51を通過した描画ビームLBは、偏光ビームスプリッタ52に照射される。偏光ビームスプリッタ52は、所定の偏光方向となる描画ビームLBを透過する一方で、所定の偏光方向以外の描画ビームLBを+Y方向に反射する。このため、偏光ビームスプリッタ52で反射される描画ビームLBは、1/2波長板51を通過していることから、1/2波長板51及び偏光ビームスプリッタ52の協働によって、描画ビームLBのビーム強度が調整される。つまり、1/2波長板51を回転させ、描画ビームLBの偏光方向を変化させることで、偏光ビームスプリッタ52で反射される描画ビームLBのビーム強度を調整することができる。
【0048】
偏光ビームスプリッタ52を透過した描画ビームLBは、ビームディフューザ53によって吸収され、ビームディフューザ53に照射される描画ビームLBの外部への漏れを抑制している。偏光ビームスプリッタ52で+Y方向に反射された描画ビームLBは、第1反射ミラー54に照射される。第1反射ミラー54に照射された描画ビームLBは、第1反射ミラー54により+X方向に反射され、第1リレーレンズ55及び第2リレーレンズ56を介して、第2反射ミラー57に照射される。第2反射ミラー57に照射された描画ビームLBは、第2反射ミラー57により−Y方向に反射されて、第3反射ミラー58に照射される。第3反射ミラー58に照射された描画ビームLBは、第3反射ミラー58により−Z方向に反射されて、第4反射ミラー59に照射される。第4反射ミラー59に照射された描画ビームLBは、第4反射ミラー59により+Y方向に反射されて、第1ビームスプリッタ60に照射される。第1ビームスプリッタ60に照射された描画ビームLBは、その一部が−X方向に反射されて第2光学系42に照射される一方で、その他の一部が透過して第3光学系43に照射される。
【0049】
第3反射ミラー58と第4反射ミラー59とは、回転機構24の回転軸I上において所定の間隔を空けて設けられている。また、第3反射ミラー58を含む光源装置CNTまでの構成(
図4のZ方向の上方側において二点鎖線で囲んだ部分)は、本体フレーム21側に設置され、第4反射ミラー59を含む複数の描画モジュールUW1〜UW5までの構成(
図4のZ方向の下方側において二点鎖線で囲んだ部分)は、第2光学定盤25側に設置される。このため、回転機構24により第1光学定盤23に対して第2光学定盤25が回転しても、回転軸I上に第3反射ミラー58と第4反射ミラー59とが設けられているため、描画ビームLBの光路が変更されることがない。よって、回転機構24により第1光学定盤23に対して第2光学定盤25が回転しても、本体フレーム21側に設置された光源装置CNTから射出される描画ビームLBは、第2光学定盤25側に設置された複数の描画モジュールUW1〜UW5の各々へ好適に案内される。
【0050】
第2光学系42は、第1光学系41で分岐された一方の描画ビームLBを、後述する奇数番の描画モジュールUW1,UW3,UW5へ向けて分岐して導いている。第2光学系42は、第5反射ミラー61と、第2ビームスプリッタ62と、第3ビームスプリッタ63と、第6反射ミラー64とを有する。
【0051】
第1光学系41の第1ビームスプリッタ60で−X方向に反射された描画ビームLBは、第5反射ミラー61に照射される。第5反射ミラー61に照射された描画ビームLBは、第5反射ミラー61により−Y方向に反射されて、第2ビームスプリッタ62に照射される。第2ビームスプリッタ62に照射された描画ビームLBは、その一部が反射されて、奇数番の1つの描画モジュールUW5に照射される(
図5、
図6参照)。第2ビームスプリッタ62に照射された描画ビームLBは、その他の一部が透過して、第3ビームスプリッタ63に照射される。第3ビームスプリッタ63に照射された描画ビームLBは、その一部が反射されて、奇数番の1つの描画モジュールUW3に照射される(
図5、
図6参照)。第3ビームスプリッタ63に照射された描画ビームLBは、その他の一部が透過して、第6反射ミラー64に照射される。第6反射ミラー64に照射された描画ビームLBは、第6反射ミラー64により反射されて、奇数番の1つの描画モジュールUW1に照射される(
図5、
図6参照)。なお、第2光学系42において、奇数番の描画モジュールUW1,UW3,UW5に照射される描画ビームLBは、−Z方向に対して僅かに斜めとなっている。
【0052】
第3光学系43は、第1光学系41で分岐された他方の描画ビームLBを、後述する偶数番の描画モジュールUW2,UW4へ向けて分岐して導いている。第3光学系43は、第7反射ミラー71と、第8反射ミラー72と、第4ビームスプリッタ73と、第9反射ミラー74とを有する。
【0053】
第1光学系41の第1ビームスプリッタ60でY方向に透過した描画ビームLBは、第7反射ミラー71に照射される。第7反射ミラー71に照射された描画ビームLBは、第7反射ミラー71によりX方向に反射されて、第8反射ミラー72に照射される。第8反射ミラー72に照射された描画ビームLBは、第8反射ミラー72により−Y方向に反射されて、第4ビームスプリッタ73に照射される。第4ビームスプリッタ73に照射された描画ビームLBは、その一部が反射されて、偶数番の1つの描画モジュールUW4に照射される(
図5、
図6参照)。第4ビームスプリッタ73に照射された描画ビームLBは、その他の一部が透過して、第9反射ミラー74に照射される。第9反射ミラー74に照射された描画ビームLBは、第9反射ミラー74により反射されて、偶数番の1つの描画モジュールUW2に照射される。なお、第3光学系43においても、偶数番の描画モジュールUW2,UW4に照射される描画ビームLBは、−Z方向に対して僅かに斜めとなっている。
【0054】
このように、分岐光学系SLでは、複数の描画モジュールUW1〜UW5へ向けて、光源装置CNTからの描画ビームLBを複数に分岐させている。このとき、第1ビームスプリッタ60、第2ビームスプリッタ62、第3ビームスプリッタ63及び第4ビームスプリッタ73は、複数の描画モジュールUW1〜UW5に照射される描画ビームLBのビーム強度が同じ強度となるように、その反射率(透過率)を、描画ビームLBの分岐数に応じて適切な反射率としている。
【0055】
XY全体ハービング調整機構44は、
図6のように、第2リレーレンズ56と第2反射ミラー57との間に配置されている。XY全体ハービング調整機構44は、第1ビームスプリッタ60に入射するビームLBをビーム軸と垂直な面内で2次元に微小シフトさせて、特に第2光学系42を通るビームの位置を調整する。XY全体ハービング調整機構44は、
図6のXZ面内で傾斜可能な透明な平行平板ガラスと、
図6のYZ面内で傾斜可能な透明な平行平板ガラスとで構成される。その2枚の平行平板ガラスの各傾斜量を調整することで、第1ビームスプリッタ60に入射するビームLBを
図6中のX方向やZ方向に微少シフトさせることができる。
【0056】
XY片側ハービング調整機構45は、第7反射ミラー71と第8反射ミラー72との間に配置されている。XY片側ハービング調整機構45は、第1ビームスプリッタ60を透過してきたビームLBをビーム軸と垂直な面内で2次元に微小シフトさせて、特に第3光学系43を通るビームの位置を調整する。XY片側ハービング調整機構45は、XY全体ハービング調整機構44と同様に、
図6のXZ面内で傾斜可能な透明な平行平板ガラスと、
図6のYZ面内で傾斜可能な透明な平行平板ガラスとで構成される。その2枚の平行平板ガラスの各傾斜量を調整することで、偶数番の描画モジュールUW2、UW4に入射する描画ビームLBの位置を微少シフトさせることができる。なお、
図6の構成から明らかなように、XY全体ハービング調整機構44によるビームLBの位置シフトは、第1ビームスプリッタ60を透過して第3光学系43に入射するビームの位置もシフトさせる為、偶数番の描画モジュールUW2、UW4に入射するビームの位置調整は、XY全体ハービング調整機構44とXY片側ハービング調整機構45の両方で行われることになる。
【0057】
続いて、
図4、
図5及び
図7を参照して、複数の描画モジュールUW1〜UW5について説明する。複数の描画モジュールUW1〜UW5は、複数の描画ラインLL1〜LL5に応じて設けられている。複数の描画モジュールUW1〜UW5には、分岐光学系SLにより分岐された複数の描画ビームLBがそれぞれ入射される。各描画モジュールUW1〜UW5は、複数の描画ビームLBを、各描画ラインLL1〜LL5上でスポット光に集光し、そのスポット光を走査する。つまり、第1描画モジュールUW1は、描画ビームLBを第1描画ラインLL1に導き、同様に、第2〜第5描画モジュールUW2〜UW5は、描画ビームLBを第2〜第5描画ラインLL2〜LL5に導く。
【0058】
図4(及び
図1)に示すように、複数の描画モジュールUW1〜UW5は、中心面p3を挟んで回転ドラムDRの周方向に2列に配置される。複数の描画モジュールUW1〜UW5は、中心面p3を挟んで、第1、第3、第5描画ラインLL1,LL3,LL5が配置される側(
図5の−X方向側)に、第1描画モジュールUW1、第3描画モジュールUW3及び第5描画モジュールUW5が配置される。第1描画モジュールUW1、第3描画モジュールUW3及び第5描画モジュールUW5は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。また、複数の描画モジュールUW1〜UW5は、中心面p3を挟んで、第2、第4描画ラインLL2,LL4が配置される側(
図5の+X方向側)に、第2描画モジュールUW2及び第4描画モジュールUW4が配置される。第2描画モジュールUW2及び第4描画モジュールUW4は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。このとき、第2描画モジュールUW2は、Y方向において、第1描画モジュールUW1と第3描画モジュールUW3との間に位置している。同様に、第3描画モジュールUW3は、Y方向において、第2描画モジュールUW2と第4描画モジュールUW4との間に位置している。第4描画モジュールUW4は、Y方向において、第3描画モジュールUW3と第5描画モジュールUW5との間に位置している。また、
図4に示すように、第1描画モジュールUW1、第3描画モジュールUW3及び第5描画モジュールUW5と、第2描画モジュールUW2及び第4描画モジュールUW4とは、Y方向からみて中心面p3を中心に対称に配置されている。
【0059】
次に、
図4を参照して、各描画モジュールUW1〜UW5について説明する。なお、各描画モジュールUW1〜UW5は、同様の構成となっているため、第1描画モジュールUW1(以下、単に描画モジュールUW1という)を例に説明する。
【0060】
図4に示す描画モジュールUW1は、描画ラインLL1(第1描画ラインLL1)に沿って描画ビームLBを走査すべく、光偏向器81と、偏光ビームスプリッタPBSと、1/4波長板82と、走査器83と、折り曲げミラー84と、f−θレンズ系85と、Y倍率補正用光学部材86とを備える。また、偏向ビームスプリッタPBSに隣接して、キャリブレーション検出系31が設けられている。
【0061】
光偏向器81は、例えば、音響光学変調素子(AOM)で構成され、入射したビームの回折光の発生/非発生を高速にスイッチングすることで、描画ビームLBの基板Pへの投射/非投射を高速に切り替える。これによって、基板Pに照射されるスポット光の強度が、変調器(AOM)81に印加されるパターン描画情報(シリアルなビット列信号)に基づいて変調される。具体的に、分岐光学系SLからの描画ビームLBは、リレーレンズ91を介して、−Z方向に対して僅かに傾斜して光偏向器81に入射される。光偏向器81がOFF状態のとき、描画ビームLBは傾斜した状態で直進し、光偏向器81を通過した先に設けられる遮光板92により遮光される。光偏向器81がON状態のとき、回折された描画ビームLBは−Z方向に偏向されて、光偏向器81を通過し、光偏向器81のZ方向上に設けられる偏光ビームスプリッタPBSに入射する。このため、光偏向器81がONの間は、描画ビームLBのスポット光が基板Pに投射され続け、光偏向器81がOFFの間は、描画ビームLBのスポット光の基板Pへの投射が中断される。
【0062】
偏向ビームスプリッタPBSは、光偏向器81からリレーレンズ93を介して照射された描画ビームLBを反射する。一方で、偏向ビームスプリッタPBSは、偏向ビームスプリッタPBSと走査器83との間に設けられる1/4波長板82と協働して、基板P又は回転ドラムDRの表面で反射された描画ビームLBを透過している。つまり、光偏向器81から偏光ビームスプリッタPBSに向かう描画ビームLBは、S偏光の直線偏光となるレーザ光であり、偏光ビームスプリッタPBSにより反射される。また、偏光ビームスプリッタPBSにより反射された描画ビームLBは、1/4波長板82を通過して円偏光となって基板Pに達する。基板P又は回転ドラムDRの表面で反射して、f−θレンズ系85や走査器83を介して戻ってくる描画ビームLBの一部の反射光は、1/4波長板82を再び通過することで、P偏光の直線偏光となる。このため、基板Pから偏光ビームスプリッタPBSに照射される描画ビームLBの反射光は、偏光ビームスプリッタPBSを透過する。なお、偏光ビームスプリッタPBSを透過した描画ビームLBの反射光は、リレーレンズ94を介してキャリブレーション検出系31に照射される。リレーレンズ系93を介して偏向ビームスプリッタPBSで反射された描画ビームLBは、1/4波長板82を通過して走査器83に入射する。
【0063】
図4及び
図7に示すように、走査器83は、反射ミラー96と、回転ポリゴンミラー(回転多面鏡)97と、原点検出器98とを有する。1/4波長板82を通過した描画ビームLBは、リレーレンズ95を介して反射ミラー96に照射される。反射ミラー96で反射された描画ビームLBは、回転ポリゴンミラー97に照射される。回転ポリゴンミラー97は、Z方向に延びる回転軸97aと、回転軸97a周りに形成される複数のポリゴン面(反射平面)97bとを含んで構成されている。回転ポリゴンミラー97は、回転軸97aを中心に所定の回転方向に回転させることで、ポリゴン面97bに照射される描画ビームLBの反射角を連続的に変化させ、これにより、反射した描画ビームLBを基板P上の描画ラインLL1に沿って走査させている。回転ポリゴンミラー97で反射された描画ビームLBは、折り曲げミラー84に照射される。原点検出器98は、基板Pの描画ラインLL1に沿って走査する描画ビームLBの原点(所定の走査開始点)を検出している。原点検出器98は、各ポリゴン面97bで反射する描画ビームLBを挟んで、反射ミラー96の反対側に配置されている。このため、原点検出器98は、f−θレンズ系85に照射される前の描画ビームLBを検出している。つまり、原点検出器98は、基板P上の描画ラインLL1の描画開始位置にスポット光が照射される直前のポリゴン面97bの角度位置を検出している。
【0064】
走査器83から折り曲げミラー84に照射された描画ビームLBは、折り曲げミラー84により反射され、f−θレンズ系85に照射される。f−θレンズ系85は、テレセントリックf−θレンズを含んでおり、折り曲げミラー84を介して回転ポリゴンミラー97から反射された描画ビームLBを、基板Pの描画面に対し垂直に投射する。
【0065】
図7に示すように、複数の描画モジュールUW1〜UW5における複数の走査器83は、中心面p3を挟んで、左右対称な構成となっている。複数の走査器83は、描画モジュールUW1,UW3,UW5に対応する3つの走査器83が、回転ドラムDRの回転方向の上流側(
図7の−X方向側)に配置され、描画モジュールUW2,UW4に対応する2つの走査器83が、回転ドラムDRの回転方向の下流側(
図7の+X方向側)に配置されている。そして、上流側の3つの走査器83と、下流側の2つの走査器83とは、中心面p3を挟んで、対向して配置されている。このとき、上流側に配置した各走査器83と、下流側に配置した各走査器83とは、中心面p3を挟んで、左右対称となっている。さらに、上流側の3つの回転ポリゴンミラー97はXY面内で左回り(反時計回り)に回転しつつ描画ビームLBを走査し、これによって奇数番の描画ラインLL1、LL3、LL5上に投射される各スポット光は、描画開始位置から描画終了位置へ向けて所定の走査方向(例えば
図7の+Y方向)に走査される。一方、下流側の2つの回転ポリゴンミラー97はXY面内で右回り(時計まわり)に回転しつつ描画ビームLBを走査し、これによって偶数番の描画ラインLL2、LL4上に投射される各スポット光は、描画開始位置から描画終了位置へ向けて、上流側の3つの描画ラインLL1、LL3、LL5と同じ走査方向(+Y方向)に走査される。
【0066】
ここで、
図4のXZ面内でみたとき、奇数番の描画モジュールUW1,UW3,UW5から基板Pに達する描画ビームLBの軸線は、設置方位線Le1と一致した方向になっている。つまり、設置方位線Le1は、XZ面内において、奇数番の描画ラインLL1,LL3,LL5と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。同様に、
図4のXZ面内でみたとき、偶数番の描画モジュールUW2,UW4から基板Pに達する描画ビームLBの軸線は、設置方位線Le2と一致した方向になっている。つまり、設置方位線Le2は、XZ面内において、偶数番の描画ラインLL2,LL4と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。
【0067】
Y倍率補正用光学部材86は、Y方向に正の屈折力を有するシリンドリカルレンズと、Y方向に負の屈折力を有するシリンドリカルレンズとを組み合わせたもので、f−θレンズ系85と基板Pとの間に配置されている。Y倍率補正用光学部材86を構成する複数のシリンドリカルレンズの少なくとも1つをf−θレンズ系85の光軸(描画ビームLBの軸)方向に微動させることで、各描画モジュールUW1〜UW5によって形成される描画ラインLL1〜LL5を、Y方向において、等方的に微少量だけ拡大または縮小することができる。
【0068】
このように構成された描画装置11は、制御装置16により各部が制御されることで、基板P上に所定のパターンが描画される。つまり、制御装置16は、基板Pに投射される描画ビームLBが走査方向へ走査している期間中、基板Pに描画すべきパターンの情報であるCAD(Computer Aided Design)情報に基づいて、光偏向器81をOn/Off変調することによって描画ビームLBを偏向し、基板Pの光感応層上にパターンを描画していく。また、制御装置16は、描画ラインLL1に沿って走査する描画ビームLBのスポット光の走査方向(走査開始タイミング)と、回転ドラムDRの回転による基板Pの搬送方向の移動とを同期させることで、露光領域A7中の描画ラインLL1に対応した部分に所定のパターンを描画する。
【0069】
このとき、各描画モジュールUW1〜UW5から投射される描画ビームLBの基板P上におけるスポット光の実効的なサイズ(スポット径)をD(μm)、描画ラインLL1〜LL5に沿ったスポット光の走査速度をVp(μm/秒)とした場合、光源装置CNTは、パルス光を射出するレーザ光源の発光繰り返し周期T(秒)を、T<D/Vpの関係としている。なお、スポット光の実効的なサイズ(径)とは、スポット光の主走査方向の強度分布上のピーク値に対して半値となる幅(半値全幅)、又はピーク値に対して1/e
2の強度となる幅とする。
【0070】
次に、
図3及び
図8を参照して、パターン検出部としてのアライメント顕微鏡AM1,AM2について説明する。アライメント顕微鏡AM1,AM2は、基板P上に予め形成されたアライメントマーク、または回転ドラムDR上に形成された基準マークや基準パターン等を所定の観察領域内で検出する。以下、基板Pのアライメントマーク及び回転ドラムDRの基準マークや基準パターンを、単にマークと称することもある。アライメント顕微鏡AM1,AM2は、基板Pと基板P上に描画される所定のパターンとを位置合せ(アライメント)したり、回転ドラムDRと描画装置11とをキャリブレーションしたりするために用いられる。
【0071】
アライメント顕微鏡AM1、AM2は、描画装置11で形成される描画ラインLL1〜LL5よりも、回転ドラムDRの回転方向の上流側に設けられている。また、アライメント顕微鏡AM1は、アライメント顕微鏡AM2に比して回転ドラムDRの回転方向の上流側に配置されている。
【0072】
アライメント顕微鏡AM1、AM2は、照明光を基板P又は回転ドラムDRに投射すると共に、マークで発生した光を入射する検出プローブとしての対物レンズ系GA、対物レンズ系GAを介して受光したマークの像(明視野像、暗視野像、蛍光像等)を2次元CCD、CMOS等で撮像する撮像系GD等で構成される。なお、アライメント用の照明光は、基板P上の光感応層に対してほとんど感度を持たない波長域の光、例えば波長500〜800nm程度の光である。
【0073】
アライメント顕微鏡AM1は、Y方向(基板Pの幅方向)に一列に並んで複数(例えば3つ)設けられる。同様に、アライメント顕微鏡AM2は、Y方向(基板Pの幅方向)に一列に並んで複数(例えば3つ)設けられる。つまり、アライメント顕微鏡AM1,AM2は、計6つ設けられている。
【0074】
図3では、判り易くするため、6つのアライメント顕微鏡AM1,AM2の各対物レンズ系GAのうち、3つのアライメント顕微鏡AM1の各対物レンズ系GA1〜GA3の配置を示す。3つのアライメント顕微鏡AM1の各対物レンズ系GA1〜GA3による基板P(又は回転ドラムDRの外周面)上の観察領域(検出位置)Vw1〜Vw3は、
図3に示すように、回転中心線AX2と平行なY方向に、所定の間隔で配置される。
図8に示すように、各観察領域Vw1〜Vw3の中心を通る各対物レンズ系GA1〜GA3の光軸La1〜La3は、何れもXZ面と平行となっている。同様に、3つのアライメント顕微鏡AM2の各対物レンズ系GAによる基板P(又は回転ドラムDRの外周面)上の観察領域Vw4〜Vw6は、
図3に示すように、回転中心線AX2と平行なY方向に、所定の間隔で配置される。
図8に示すように、各観察領域Vw4〜Vw6の中心を通る各対物レンズ系GAの光軸La4〜La6も、何れもXZ面と平行となっている。そして、観察領域Vw1〜Vw3と、観察領域Vw4〜Vw6とは、回転ドラムDRの回転方向に、所定の間隔で配置される。
【0075】
このアライメント顕微鏡AM1,AM2によるマークの観察領域Vw1〜Vw6は、基板Pや回転ドラムDR上で、例えば、200μm角程度の範囲に設定される。ここで、アライメント顕微鏡AM1の光軸La1〜La3、即ち、対物レンズ系GAの光軸La1〜La3は、回転中心線AX2から回転ドラムDRの径方向に延びる設置方位線Le3と同じ方向に設定される。つまり、設置方位線Le3は、
図4のXZ面内でみたとき、アライメント顕微鏡AM1の観察領域Vw1〜Vw3と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。同様に、アライメント顕微鏡AM2の光軸La4〜La6、即ち、対物レンズ系GAの光軸La4〜La6は、回転中心線AX2から回転ドラムDRの径方向に延びる設置方位線Le4と同じ方向に設定される。つまり、設置方位線Le4は、
図4のXZ面内でみたとき、アライメント顕微鏡AM2の観察領域Vw4〜Vw6と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。このとき、アライメント顕微鏡AM1は、アライメント顕微鏡AM2に比して回転ドラムDRの回転方向の上流側に配置されていることから、中心面p3と設置方位線Le3とがなす角度は、中心面p3と設置方位線Le4とがなす角度に比して大きくなっている。
【0076】
基板P上には、
図3に示すように、5つの描画ラインLL1〜LL5の各々によって描画される露光領域A7が、X方向に所定の間隔を空けて配置される。基板P上の露光領域A7の周囲には、位置合せの為の複数のアライメントマークKs1〜Ks3(以下、マークと略称する)が、例えば十字状に形成されている。各描画モジュールは、アライメント顕微鏡AM1、AM2によるアライメントマークKs1〜Ks2の検出結果に基づいて、パターン描画すべき基板P上の位置を特定してスポット光による主走査位置を合わせる(補正する)が、位置合わせはこれに限定されない。例えば、アライメント顕微鏡AM1、AM2によって、基板Pに形成された回路パターン等の一部の形状を検出して、位置合わせを行ってもよい。
【0077】
図3において、マークKs1は、露光領域A7の−Y側の周辺領域に、X方向に一定の間隔で設けられ、マークKs3は、露光領域A7の+Y側の周辺領域に、X方向に一定の間隔で設けられる。さらに、マークKs2は、X方向に隣り合う2つの露光領域A7の間の余白領域において、Y方向の中央に設けられる。
【0078】
そして、マークKs1は、アライメント顕微鏡AM1の対物レンズ系GA1の観察領域Vw1内、及びアライメント顕微鏡AM2の対物レンズ系GAの観察領域Vw4内で、基板Pが送られている間、順次捕捉されるように形成される。また、マークKs3は、アライメント顕微鏡AM1の対物レンズ系GA3の観察領域Vw3内、及びアライメント顕微鏡AM2の対物レンズ系GAの観察領域Vw6内で、基板Pが送られている間、順次捕捉されるように形成される。さらに、マークKs2は、それぞれ、アライメント顕微鏡AM1の対物レンズ系GA2の観察領域Vw2内、及びアライメント顕微鏡AM2の対物レンズ系GAの観察領域Vw5内で、基板Pが送られている間、順次捕捉されるように形成される。
【0079】
このため、3つのアライメント顕微鏡AM1,AM2のうち、回転ドラムDRのY方向の両側のアライメント顕微鏡AM1,AM2は、基板Pの幅方向の両側に形成されたマークKs1,Ks3を常時観察または検出することができる。また、3つのアライメント顕微鏡AM1,AM2のうち、回転ドラムDRのY方向の中央のアライメント顕微鏡AM1,AM2は、基板P上に描画される露光領域A7同士の間の長尺方向の余白部等に形成されるマークKs2を常時観察または検出することができる。
【0080】
ここで、露光装置EXは、いわゆるマルチビーム型の描画装置11を適用している為、複数の描画モジュールUW1〜UW5の各描画ラインLL1〜LL5によって、基板P上に描画される複数のパターン同士を、Y方向に好適に継ぎ合わせるべく、複数の描画モジュールUW1〜UW5による継ぎ精度を許容範囲内に抑える為のキャリブレーションが必要となる。また、複数の描画モジュールUW1〜UW5の各描画ラインLL1〜LL5に対するアライメント顕微鏡AM1,AM2の観察領域Vw1〜Vw6の相対的な位置関係は、ベースライン管理によって精密に求められている必要がある。そのベースライン管理の為にも、キャリブレーションが必要となる。
【0081】
複数の描画モジュールUW1〜UW5による継ぎ精度を確認する為のキャリブレーション、アライメント顕微鏡AM1,AM2のベースライン管理の為のキャリブレーションでは、基板Pを支持する回転ドラムDRの外周面の少なくとも一部に、基準マークや基準パターンを設ける必要がある。そこで、
図9に示すように、露光装置EXでは、外周面に基準マークや基準パターンを設けた回転ドラムDRを用いている。
【0082】
回転ドラムDRは、その外周面の両端側に、後述する回転位置検出機構14の一部を構成するスケール部GPa、GPbが形成されている。また、回転ドラムDRは、スケール部GPa、GPbの内側に、凹状の溝、若しくは凸状のリムによる狭い幅の規制帯CLa、CLbが全周に渡って刻設されている。基板PのY方向の幅は、その2本の規制帯CLa、CLbのY方向の間隔よりも小さく設定され、基板Pは回転ドラムDRの外周面のうち、規制帯CLa、CLbで挟まれた内側の領域に密着して支持される。
【0083】
回転ドラムDRは、規制帯CLa、CLbで挟まれた外周面に、回転中心線AX2に対して+45度で傾いた複数の線パターンRL1と、回転中心線AX2に対して−45度で傾いた複数の線パターンRL2とを、一定のピッチ(周期)Pf1,Pf2で繰り返し刻設したメッシュ状の基準パターン(基準マークとしても利用可能)RMPが設けられる。一例として、線パターンRL1と線パターンRL2の線幅LWは数μm〜20μm程度、ピッチ(周期)Pf1、Pf2は数十μm〜数百μm程度に設定される。
【0084】
基準パターンRMPは、基板Pと回転ドラムDRの外周面とが接触する部分において、摩擦力や基板Pの張力等の変化が生じないように、全面均一な、斜めパターン(斜格子状パターン)としている。なお、線パターンRL1、RL2は、必ずしも斜め45度である必要はなく、線パターンRL1をY軸と平行にし、線パターンRL2をX軸と平行にした縦横のメッシュ状パターンとしても良い。さらに、線パターンRL1、RL2を90度で交差させる必要はなく、隣接する2本の線パターンRL1と、隣接する2本の線パターンRL2とで囲まれた矩形領域が、正方形(又は長方形)以外の菱形になるような角度で、線パターンRL1、RL2を交差させても良い。
【0085】
次に、
図3、
図4及び
図8を参照して、回転位置検出機構14について説明する。
図8に示すように、回転位置検出機構14は、回転ドラムDRの回転位置を光学的に検出するものであり、例えばロータリーエンコーダ等を用いたエンコーダシステムが適用されている。回転位置検出機構14は、回転ドラムDRの両端部に設けられるスケール部GPa,GPbと、スケール部GPa,GPbの各々と対向する複数のエンコーダヘッドEN1,EN2,EN3,EN4とを有する。
図4及び
図8では、スケール部GPaに対向した4つのエンコーダヘッドEN1,EN2,EN3,EN4だけが示されているが、スケール部GPbにも同様のエンコーダヘッドEN1,EN2,EN3,EN4が対向して配置される。
【0086】
スケール部GPa、GPbは、回転ドラムDRの外周面の周方向の全体に亘って環状にそれぞれ形成されている。スケール部GPa、GPbは、回転ドラムDRの外周面の周方向に一定のピッチ(例えば20μm)で凹状又は凸状の格子線を刻設した回折格子であり、インクリメンタル型スケールとして構成される。本実施形態の場合、スケール部GPa、GPbの格子線(目盛)と、
図9に示した基準パターンRMPとは、回転ドラムDRの表面を加工する装置(パターン刻設機等)によって同時に形成される為、ミクロンオーダーで一義的な位置関係にすることができる。なお、スケール部GPa,GPbの周方向の1ヶ所には、原点マークが併設されており、エンコーダヘッドEN1、EN2、EN3、EN4の各々は、その原点マークを検出して原点信号を出力する機能を備える。従って、その原点マークに対しても、基準パターンRMP、周方向に関して一義的な位置関係(既知の角度位置関係)になっている。
【0087】
基板Pは、回転ドラムDRの両端のスケール部GPa、GPbを避けた内側、つまり、規制帯CLa、CLbの内側に巻き付けられるように構成される。厳密な配置関係を必要とする場合、スケール部GPa、GPbの外周面と、回転ドラムDRに巻き付いた基板Pの部分の外周面とが同一面(回転中心線AX2から同一半径)になるように設定する。その為には、スケール部GPa、GPbの外周面を、回転ドラムDRの基板巻付け用の外周面に対して、径方向に基板Pの厚み分だけ高くしておけば良い。このため、回転ドラムDRに形成されるスケール部GPa、GPbの外周面を、基板Pの外周面とほぼ同一の半径に設定することができる。そのため、エンコーダヘッドEN1,EN2,EN3,EN4は、回転ドラムDRに巻き付いた基板P上の描画面と同じ径方向位置でスケール部GPa、GPbを検出することができ、計測位置と処理位置とが回転系の径方向に異なることで生ずるアッベ誤差を小さくすることができる。なお、スケール部GPa、GPbを回転ドラムDRの両端部に直接形成できない場合は、回転ドラムDRの直径とほぼ同じ直径の円盤状部材の外周面にスケール部GPa(GPb)を刻設したスケール円盤を、回転ドラムDRのシャフト部Sf2に同軸に取り付けても良い。
【0088】
エンコーダヘッドEN1,EN2,EN3,EN4は、回転中心線AX2からみてスケール部GPa、GPbの周囲にそれぞれ配置されており、回転ドラムDRの周方向において異なる位置となっている。このエンコーダヘッドEN1,EN2,EN3,EN4は、制御装置16に接続されている。エンコーダヘッドEN1,EN2,EN3,EN4は、スケール部GPa、GPbに向けて計測用の光ビームを投射し、その反射光束(回折光)を光電検出することにより、スケール部GPa、GPbの周方向の位置変化に応じた検出信号(例えば、90度の位相差を持った2相信号)を制御装置16に出力する。制御装置16は、その検出信号を不図示のカウンタ回路で内挿補間してデジタル処理することにより、回転ドラムDRの角度変化、即ち、その外周面の周方向の位置変化をサブミクロンの分解能で計測することができる。このとき、制御装置16は、回転ドラムDRの角度変化から、回転ドラムDRにおける基板Pの搬送速度も計測することができる。
【0089】
また、
図4及び
図8に示すように、エンコーダヘッドEN1は、設置方位線Le1上に配置される。設置方位線Le1は、XZ面内において、エンコーダヘッドEN1による計測用光ビームのスケール部GPa(GPb)上への投射領域(読取位置)と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。また、上記したように、設置方位線Le1は、XZ面内において、描画ラインLL1,LL3,LL5と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。以上から、エンコーダヘッドEN1の読取位置と回転中心線AX2とを結ぶ線と、描画ラインLL1,LL3,LL5と回転中心線AX2とを結ぶ線とは、同じ方位線(中心軸AX2から見て同じ方位)となっている。
【0090】
同様に、
図4及び
図8に示すように、エンコーダヘッドEN2は、設置方位線Le2上に配置される。設置方位線Le2は、XZ面内において、エンコーダヘッドEN2による計測用光ビームのスケール部GPa(GPb)上への投射領域(読取位置)と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。また、上記したように、設置方位線Le2は、XZ面内において、描画ラインLL2,LL4と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。以上から、エンコーダヘッドEN2の読取位置と回転中心線AX2とを結ぶ線と、描画ラインLL2,LL4と回転中心線AX2とを結ぶ線とは、同じ方位線(中心軸AX2から見て同じ方位)となっている。
【0091】
また、
図4及び
図8に示すように、エンコーダヘッドEN3は、設置方位線Le3上に配置される。設置方位線Le3は、XZ面内において、エンコーダヘッドEN3による計測用光ビームのスケール部GPa(GPb)上への投射領域(読取位置)と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。また、上記したように、設置方位線Le3は、XZ面内において、アライメント顕微鏡AM1による基板Pの観察領域Vw1〜Vw3と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。以上から、エンコーダヘッドEN3の読取位置と回転中心線AX2とを結ぶ線と、アライメント顕微鏡AM1の観察領域Vw1〜Vw3と回転中心線AX2とを結ぶ線とは、同じ方位線(中心軸AX2から見て同じ方位)となっている。このような構成により、回転中心軸AX2が延びる方向から見た場合、スケール部GPa、GPb上におけるエンコーダヘッドEN3の計測領域とアライメント顕微鏡AM1の検出領域Vw1〜Vw3とが、回転ドラムDRの周方向に関して同じ位置となっている。
【0092】
同様に、
図4及び
図8に示すように、エンコーダヘッドEN4は、設置方位線Le4上に配置される。設置方位線Le4は、XZ面内において、エンコーダヘッドEN4による計測用光ビームのスケール部GPa(GPb)上への投射領域(読取位置)と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。また、上記したように、設置方位線Le4は、XZ面内において、アライメント顕微鏡AM2による基板Pの観察領域Vw4〜Vw6と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。以上から、エンコーダヘッドEN4の読取位置と回転中心線AX2とを結ぶ線と、アライメント顕微鏡AM2の観察領域Vw4〜Vw6と回転中心線AX2とを結ぶ線とは、同じ方位線(中心軸AX2から見て同じ方位)となっている。このような構成によって、回転中心軸AX2が延びる方向から見た場合、スケール部GPa、GPb上におけるエンコーダヘッドEN4の計測領域とアライメント顕微鏡AM2の検出領域Vw4〜Vw6とが、回転ドラムDRの周方向に関して同じ位置となっている。
【0093】
エンコーダヘッドEN1,EN2,EN3,EN4の設置方位(回転中心線AX2を中心としたXZ面内での角度方向)を設置方位線Le1,Le2,Le3,Le4で表す場合、
図4に示すように、設置方位線Le1,Le2が、中心面p3に対して角度±θ°になるように、複数の描画モジュールUW1〜UW5及びエンコーダヘッドEN1,EN2が配置される。
【0094】
ここで、制御装置16は、エンコーダヘッドEN1、EN2とカウンタ回路によって検出されるスケール部(回転ドラムDR)GPa,GPbの回転角度位置、すなわち回転ドラムDRの外周面の周方向の移動位置や移動量に基づいて、奇数番及び偶数番の描画モジュールUW1〜UW5による描画開始位置を制御する。つまり、制御装置16は、基板Pに投射される描画ビームLBが走査方向へ走査している期間中、基板Pに描画すべきパターンのCAD情報に基づいて、光偏向器81をOn/Off変調するが、光偏向器81による1走査分のCAD情報のOn/Off変調の開始タイミングを、検出した回転角度位置に基づいて行うことで、基板Pの光感応層上にパターンを精度良く描画することができる。
【0095】
また、制御装置16は、アライメント顕微鏡AM1,AM2により基板P上のアライメントマークKs1〜Ks3が検出されたときの、エンコーダヘッドEN3,EN4によって検出されるスケール部(回転ドラムDR)GPa,GPbの回転角度位置を記憶することにより、基板P上のアライメントマークKs1〜Ks3の位置と回転ドラムDRの回転角度位置との対応関係を求めることができる。同様に、制御装置16は、アライメント顕微鏡AM1,AM2により回転ドラムDR上の基準パターンRMPが検出されたときの、エンコーダヘッドEN3,EN4によって検出されるスケール部(回転ドラムDR)GPa,GPbの回転角度位置を記憶することにより、回転ドラムDR上の基準パターンRMPの位置と回転ドラムDRの回転角度位置との対応関係を求めることができる。このように、アライメント顕微鏡AM1,AM2は、観察領域Vw1〜Vw6内で、基準パターンやマークをサンプリングした瞬間の回転ドラムDRの回転角度位置(又は周方向位置)を精密に計測することができる。そして、露光装置EXでは、この計測結果に基づいて、基板Pと基板P上に描画される所定のパターンとを位置合せ(アライメント)したり、回転ドラムDRと描画装置11の各描画モジュールUW1〜UW5による描画ラインLL1〜LL5との位置関係とをキャリブレーションしたりする。
【0096】
ところで、マルチビーム型の露光装置EXでは、基板Pが搬送方向に搬送されながら、基板P上の複数の描画ラインLL1〜LL5に沿って、描画ビームLBのスポット光が走査される。ここで、各描画ラインLL1〜LL5に沿って走査する描画ビームLBの走査方向が同じ方向であり、また、各描画ラインLL1〜LL5の各々が、中心面p3(中心軸AX2)と精密に平行に設定されている場合、複数の描画ラインLL1〜LL5により基板P上にそれぞれ形成されるパターンPT1〜PT5は、
図10に示すようなパターンとなる。
【0097】
図10は、第1実施形態の露光装置により基板上に描画されたパターンと描画ラインとの配置関係の一例を誇張して示す図である。なお、
図10では、基板Pの搬送方向(Xs方向)に展開した図となっているため、Xs方向、Y方向及びZ方向が直交する直交座標系となっている。また、
図10では、描画ラインLL1〜LL5とパターンPT1〜PT5との関係が判り易いように、描画ラインLL1〜LL5及びパターンPT1〜PT5とを、基板Pの搬送方向に太くしている。
【0098】
図10に示すように、複数の描画モジュールUW1〜UW5の各々から基板Pに投射される描画ビームLBのスポット光は、描画ラインLL1〜LL5に沿って描画開始位置PO1から描画終了位置PO2へ向けて+Y方向に走査される。このとき、描画ビームLBのスポット光は、描画ラインLL1〜LL5に沿って走査される走査方向が全て同じ方向となっている。このため、基板Pの搬送方向Xsから見たとき、描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置PO1において形成されたパターンPT1〜PT5の端部PTaと、描画ラインLL1〜LL5の描画終了位置PO2において形成されたパターンPT1〜PT5の端部PTbとは、基板Pの幅方向に隣り合うパターンPT1〜PT5同士において隣接する。
【0099】
ここで、描画ビームLBのスポット光が基板Pに対して1回走査されたときの、基板Pに形成されるパターンPT1〜PT5は、基板Pが搬送方向に等速搬送されていることから、わずかに斜めに形成される。その傾き量は、
図10では誇張して示してあるが、基板Pの搬送速度Vxsと描画ビームLBのスポット光の走査速度Vpとの比Vxs/Vpで表される。走査速度Vpは走査器83としての回転ポリゴンミラー97の回転速度Rv(rps)に比例し、例えば、回転ポリゴンミラー97の反射面が8面で、反射面毎の実質的な走査期間が40%、描画ライン(LL1〜LL5)の長さをYL(mm)とすると、スポット光の走査速度Vp(mm/S)は、次式によって求まる。
Vp=(8・Rv・YL)/0.4=20・Rv・YL〔mm/S〕
【0100】
回転ポリゴンミラー97が毎分6000回転(回転速度Rv=100rps)し、長さYLを50mmとすると、走査速度Vpは10万mm/Sとなる。基板Pの搬送速度Vxsを50mm/Sとすると、基板P上での描画ラインの傾き量Vxs/Vpは1/2000となる。この傾き量は、描画ラインのY方向の両端(描画開始点PO1と描画終了点PO2)が、基板P上ではXs方向に25μmだけずれることを意味する。もちろん、回転ポリゴンミラー97の回転速度Rvを上げて、基板Pの搬送速度Vxsを低下させれば、描画ラインの傾き量Vxs/Vpは小さくできるが、描画ラインのY方向の両端(描画開始点PO1と描画終了点PO2)のXs方向のずれ量を、描画すべきパターンの最小線幅の数分の一程度にするには、回転ポリゴンミラー97の回転速度Rvを数倍以上にしつつ、基板Pの搬送速度Vxsを大幅に低下させることになる。つまり、描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置PO1において形成されたパターンPT1〜PT5の端部PTaは、描画ラインLL1〜LL5の描画終了位置PO2において形成されたパターンPT1〜PT5の端部PTbと比べて、搬送方向の下流側に形成される。このため、パターンPT1〜PT5の端部PTaと端部PTbとは、搬送方向において異なる位置となってしまう。この場合、基板Pの幅方向に継ぎ合わされるパターンPT1〜PT5は、隣接するパターンPT1〜PT5同士の間に、搬送方向における継ぎ誤差が発生する。
【0101】
このように、パターンPT1〜PT5の継ぎ誤差は、描画ビームLBのスポット光の主走査方向における走査速度Vpが一定である場合、基板Pの幅方向に対する描画ラインLL1〜LL5の傾きが、基板Pの搬送速度に応じた傾きとなっていない為に生じる。ここで、基板Pの幅方向に対する描画ラインLL1〜LL5の傾きは、露光装置EXの描画前と、露光装置EXの描画時とにおいて、それぞれ調整される。
【0102】
具体的に、露光装置EXの描画前(例えば、アライメント時)に関して、露光装置EXは、予め設定された基準となる基準速度(Vxs)で基板Pを搬送する。このとき、基準速度は、使用する基板Pに応じて適宜変更される場合がある。例えば、基板Pに塗布された光感応層の感度が低い場合には、基準速度を低くしてスポット光による主走査を複数回重ねて露光量を増やすこともある。このため、基準速度で搬送される基板Pに対し、パターンPT1〜PT5が基板Pの幅方向に好適に継ぎ合わされるように、基板Pに対して設定される基準速度に応じて、描画ラインLL1〜LL5が中心面p3(中心軸AX2)に対して適宜傾くように調整される。
【0103】
また、露光装置EXによる描画動作中は、基板Pの搬送速度が基準速度となるように回転ドラムDRの回転駆動が制御されるが、このとき、回転ドラムDRの回転軸受部の構造(ベアリング特性)や回転駆動機構(モータのトルク特性、減速ギアの特性等)により、搬送される基板Pの搬送速度は、回転ドラムDRの回転周期に応じて基準速度から僅かに速度変動する場合がある。つまり、回転ドラムDRにより搬送される基板Pの搬送速度に、周期的に速度ムラが生じる場合がある。そこで、基準速度から僅かに速度変化する基板Pに対し、パターンPT1〜PT5が基板Pの幅方向に好適に継ぎ合わされるように、基板Pの搬送速度の変動に追従して描画ラインLL1〜LL5の各々を、動的に(アクティブに)傾けるような構成(制御系)を組み込むのが良い。
【0104】
次に、
図11を参照して、基板Pの幅方向に対する描画ラインLL1〜LL5の傾きの調整について説明する。
図11は、第1実施形態の露光装置により基板上に描画されたパターンと描画ラインとの配置関係の一例を示す図である。第1実施形態の露光装置EXでは、回転機構24により第1光学定盤23に対し第2光学定盤25を回転させることで、基板Pの幅方向に対し、描画ラインLL1〜LL5を全体的に傾けている。つまり、回転機構24が、描画ラインLL1〜LL5の傾きを調整する傾き調整機構として機能する。
【0105】
回転機構24は、第1光学定盤23に対し第2光学定盤25を回転させることで、回転軸Iを中心に、基板Pに対して描画装置11を回転させる。回転軸Iを中心に描画装置11が回転すると、描画ラインLL1〜LL5は、相互の位置関係を変化させることなく、基板Pの幅方向(つまり、回転ドラムDRの回転中心線AX2、又は中心面p3)に対して傾く。
【0106】
ここで、露光装置EXのアライメント時に関して、基準速度で搬送される基板Pに対し、パターンPT1〜PT5を基板Pの幅方向に継ぎ合わせる場合の、描画ラインLL1〜LL5の傾きの調整について説明する。
図11に示すように、制御装置16は、回転位置検出機構14によって検出される基板Pの基準速度に基づいて、回転機構24を回転させる。ここで、基板Pの基準速度は、回転機構24の回転量と対応付けられている。この回転量は、パターンPT1〜PT5の端部PTaと端部PTbとが搬送方向において同じ位置となるような回転量、つまり、パターンPT1〜PT5が基板Pの幅方向に沿って形成されるような回転量(傾き量)となっている。つまり、制御装置16は、検出される基板Pの基準速度に対応付けられる回転量に基づいて、回転機構24を回転させる。具体的に、制御装置16は、
図10に示すパターンPT1〜PT5が形成される場合、基板Pの基準速度に基づいて、回転機構24を回転させることで、描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置PO1が搬送方向の上流側に位置し、描画ラインLL1〜LL5の描画終了位置PO2が搬送方向の下流側に位置するように、基板Pに対して描画装置11を回転させる。
【0107】
図11に示すように、描画ラインLL1〜LL5の相互の位置関係を変化させずに、回転機構24が描画ラインLL1〜LL5を全体的に傾けると、回転軸Iから遠い側の描画ラインLL1及び描画ラインLL5は、搬送方向における移動量が大きくなる一方で、回転軸Iから近い側の描画ラインLL3は、搬送方向における移動量が小さくなる。つまり、描画ラインLL1は、搬送方向の上流側に大きく移動し、描画ラインLL2は、搬送方向の上流側に僅かに移動する。描画ラインLL3は、搬送方向における移動がほぼない。描画ラインLL4は、搬送方向の下流側に僅かに移動し、描画ラインLL5は、搬送方向の下流側に大きく移動する。このため、回転機構24による回転後(傾き補正後)の描画ラインLL1〜LL5によって基板P上に描画される各パターンPT1〜PT5は、
図11の点線で示すように、基板Pの幅方向とほぼ同じ方向に傾き無く形成される。
【0108】
一方で、回転後(傾き補正後)に露光された各パターンPT1〜PT5は、基板Pの搬送方向において、描画ラインLL1〜LL5の傾きに応じて、僅かに異なる位置に形成される。つまり、パターンPT5は、パターンPT4に対して搬送方向の下流側に形成され、パターンPT4は、パターンPT3に対して搬送方向の下流側に形成され、パターンPT3は、パターンPT2に対して搬送方向の下流側に形成され、パターンPT2は、パターンPT1に対して搬送方向の下流側に形成される。このように、回転軸Iを中心に、回転機構24により描画装置11を回転させる場合、回転後のパターンPT1〜PT5の搬送方向における位置が異なることで、回転後のパターンPT1〜PT5の搬送方向において、所定のズレ量が生じてしまう。このため、制御装置16は、回転位置検出機構14によって検出される基板Pの基準速度に基づいて、各描画モジュールUW1〜UW5の描画タイミングを制御することで、回転後のパターンPT1〜PT5の搬送方向における位置を補正している。つまり、基板Pの基準速度は、描画タイミングの補正量とも対応付けられている。ここで、制御装置16は、描画タイミングを補正するために、基板Pに描画するために使用されるCAD情報を搬送方向において補正している。
【0109】
図12は、第1実施形態の露光装置で使用されるCAD情報のイメージを示す図である。なお、
図12では、基板P上に描画すべきパターンのCAD情報として、
図11に示すパターンPT1〜PT5に対応するCADパターンCAD1〜CAD5が図示されている。また、
図12の点線で示すCADパターンCAD1〜CAD5は、描画タイミングの補正前のCADパターン(設計上の元データ)CAD1〜CAD5となっており、
図12の実線で示すCADパターンCAD1〜CAD5は、描画タイミングの補正後のCADパターンCAD1〜CAD5となっている。
【0110】
図12の点線で示すように、補正前のCADパターンCAD1〜CAD5の各々は、基板P上に描画すべきパターンPT1〜PT5と同様の配置で描画されるように、描画データ(ビットパターン)用のメモリ回路中に格納されており、基板Pの搬送方向において同じ位置となっている。このため、補正前のCADパターンCAD1〜CAD5は、基板Pの幅方向に沿って一列に配置されている。
【0111】
制御装置16は、この補正前のCADパターンCAD1〜CAD5を、
図11に示す回転後のパターンPT1〜PT5が搬送方向において同じ位置となるように、つまり、パターンPT1〜PT5の端部PTa,PTb同士が継ぎ合わされるように、CADパターンCAD5を基準にして、CADパターンCAD1〜CAD4を搬送方向に補正している。つまり、制御装置16は、
図12の実線で示すように、
図11に示す回転後のパターンPT1〜PT5の搬送方向における位置のズレ量に応じて、補正前のCADパターンCAD1〜CAD5の各々を、搬送方向に補正する。その補正は、例えば、補正前のCADパターンCAD1〜CAD5の各々の描画データ(ビットパターン)をメモリ回路から読み出す開始タイミングをずらしていくことで行われる。
【0112】
なお、
図11の点線で示すパターンPT1〜PT5の搬送方向におけるズレ量は、上記のように基板Pの搬送速度に対応付けられていることから、制御装置16は、基板Pの搬送速度に基づいて、CADパターンCAD1〜CAD5の搬送方向における補正(描画データの読み出し開始タイミングのずらし等)を行う。補正後のCAD情報は、CADパターンCAD5がCADパターンCAD4に対して搬送方向の上流側に位置し、CADパターンCAD4がCADパターンCAD3に対して搬送方向の上流側に位置し、CADパターンCAD3がCADパターンCAD2に対して搬送方向の上流側に位置し、CADパターンCAD2がCADパターンCAD1に対して搬送方向の上流側に位置する。なお、制御装置16は、CADパターンCAD5を基準として、他のCADパターンCAD1〜CAD4を補正したが、他のCADパターンCAD1〜4を基準として補正してもよい。
【0113】
このように、制御装置16は、露光装置EXのアライメント時において、回転位置検出機構14によって検出される基板Pの搬送速度に応じて、
図12の実線で示すCADパターンCAD1〜CAD5の搬送方向における位置を補正することにより、
図11の実線で示すパターンPT1〜PT5として基板P上に描画することができる。
【0114】
なお、露光装置EXのアライメント時における、描画ラインLL1〜LL5の傾きの調整は、回転機構24を手動により回転させてもよいし、制御装置16により回転機構24を駆動制御して回転させてもよい。
【0115】
次に、露光装置EXの描画時に関して、基準速度から速度ムラによって僅かに速度変化しながら搬送される基板Pに対し、パターンPT1〜PT5を基板Pの幅方向に継ぎ合わせる場合の、描画ラインLL1〜LL5の傾きの調整について説明する。
図11に示すように、回転機構24は、基準速度で搬送される基板Pに対し、基板Pの幅方向に対して描画ラインLL1〜LL5を所定の傾きとすることで、パターンPT1〜PT5を基板Pの幅方向に好適に継ぎ合わせている。
【0116】
図11に示す状態から、基板Pが基準速度よりも速い搬送速度で搬送されると、基板P上に形成されるパターンPT1〜PT5は、
図10に示すように、斜めに形成される。つまり、パターンPT1〜PT5の端部PTaは、パターンPT1〜PT5の端部PTbと比べて、搬送方向の下流側に形成される。一方で、基板Pが基準速度よりも遅い搬送速度で搬送されると、基板P上に形成されるパターンPT1〜PT5は、
図10に示すパターンPT1〜PT5とは逆向きに傾斜(
図10中で右下がりに傾斜)して形成される。つまり、パターンPT1〜PT5の端部PTaは、パターンPT1〜PT5の端部PTbと比べて、搬送方向の上流側に形成される。
【0117】
制御装置16は、回転位置検出機構14によって検出される基板Pの搬送速度が、基準速度よりも速くなると、描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置PO1が、基準速度における描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置PO1よりも搬送方向の上流側に位置し、描画ラインLL1〜LL5の描画終了位置PO2が、基準速度における描画ラインLL1〜LL5の描画終了位置PO2よりも搬送方向の下流側に位置するように、回転機構24を回転させ、
図11の状態から描画ラインLL1〜LL5の全体をさらに時計回りに回転する。また、回転機構24を回転させると、回転後のパターンPT1〜PT5は、パターンPT1〜PT4がパターンPT2〜PT5に比して搬送方向の上流側となるように、搬送方向において位置ズレしてしまう。このため、制御装置16は、基板Pに描画するためのCAD情報を、CADパターンCAD1〜CAD4がCADパターンCAD2〜CAD5に比して搬送方向の下流側となるように、搬送方向において描画タイミング(メモリ回路からの描画データの読み出し開始タイミング)を補正する。
【0118】
一方で、制御装置16は、回転位置検出機構14によって検出される基板Pの搬送速度が、基準速度よりも遅くなると、描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置PO1が、基準速度における描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置PO1よりも搬送方向の下流側に位置し、描画ラインLL1〜LL5の描画終了位置PO2が、基準速度における描画ラインLL1〜LL5の描画終了位置PO2よりも搬送方向の上流側に位置するように、回転機構24を回転させる。また、回転機構24を回転させると、回転後のパターンPT1〜PT5は、パターンPT1〜PT4がパターンPT2〜PT5に比して搬送方向の下流側となるように、搬送方向において位置ズレしてしまう。このため、制御装置16は、基板Pに描画するためのCAD情報を、CADパターンCAD1〜CAD4がCADパターンCAD2〜CAD5に比して搬送方向の上流側となるように、搬送方向において描画タイミング(メモリ回路からの描画データの読み出し開始タイミング)を補正する。
【0119】
このように、制御装置16は、露光装置EXの描画時において、基板Pが、速度ムラによって基準速度から僅かに速度変化しながら搬送されても、回転位置検出機構14によって検出される搬送速度と基準速度との差分に基づいて、描画ラインLL1〜LL5の全体的な傾きを調整することができる。また、制御装置16は、回転後のパターンPT1〜PT5の搬送方向におけるズレ量分を補正量として、CADパターンCAD1〜CAD5の搬送方向における位置を補正(描画開始タイミングを補正)することにより、基板Pの幅方向に直線的につなげた状態でパターンPT1〜PT5を基板P上に描画することができる。
【0120】
なお、回転機構24による回転量は、基板Pの基準速度、搬送速度に応じて予め求めることが好ましい。同様に、CAD情報の補正量も、基板Pの基準速度、搬送速度に応じて予め求めることが好ましい。さらに、基板Pの基準速度、基準速度からの変位、回転機構24の回転量、CAD情報の補正量を、相関付けた相関マップとして求めてもよい。また、CADパターンCAD1〜CAD5の搬送方向における位置を補正(描画開始タイミングを補正)する際は、
図4又は
図8に示した高分解能なエンコーダヘッドEN1、EN2(回転位置検出機構14)の各々によって検出される回転ドラムDRの角度位置(基板Pの搬送位置)に基づいて、各描画ラインLL1〜LL5による描画を開始(メモリ回路からの描画データのアクセスを開始)する。具体的には、回転機構24による回転補正後に生じ得るパターンPT1〜PT5の各々の描画開始位置PO1と描画終了位置PO2との搬送方向のずれ量が、制御装置16によって計算されると、エンコーダヘッドEN1、EN2の各々によって検出される回転ドラムDRの角度位置に、そのずれ量に応じた±ΔXsの補正を加えた補正位置情報を生成する。そして、その補正位置情報に基づいて各描画ラインLL1〜LL5による描画を開始(メモリ回路からの描画データのアクセスを開始)する。
【0121】
以上、第1実施形態は、回転位置検出機構14によって検出される基板Pの搬送速度に基づいて、回転機構24によって第2光学定盤25を回転させることにより、描画ラインLL1〜LL5の傾きを調整することができる。このため、描画ラインLL1〜LL5に沿って走査される描画ビームLBによって、基板P上に描画されるパターンPT1〜PT5を、基板Pの幅方向に沿って直線的に形成することができる。また、回転機構24による第2光学定盤25の回転後、CADパターンCAD1〜CAD5の描画タイミングを補正して、基板P上に描画されるパターンPT1〜PT5を、基板Pの搬送方向において同じ位置とすることができる。よって、基板P上に描画されるパターンPT1〜PT5を、基板Pの幅方向及び搬送方向(長尺方向)に好適に継ぎ合わせるように補正することができるため、速度ムラによる継ぎ誤差を抑制することができる。
【0122】
また、第1実施形態は、回転位置検出機構14によって検出される基板Pの搬送速度に応じて、制御装置16により回転機構24をリアルタイムに回転させることができる。このため、露光装置EXによる描画中においても、基板Pの幅方向に対する描画ラインLL1〜LL5の傾きを調整することができ、回転ドラムDRの周期的な速度ムラによって生じる継ぎ誤差も抑制することができる。
【0123】
また、第1実施形態は、基板Pの搬送速度が基準速度よりも速いとき、基板Pの幅方向に対する描画ラインLL1〜LL5を、基準速度における描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置PO1よりも上流側で、描画終了位置PO2よりも下流側となるように傾けることで、パターンPT1〜PT5を好適に補正することができる。また、基板Pの搬送速度が基準速度よりも遅いとき、基板Pの幅方向に対する描画ラインLL1〜LL5を、基準速度における描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置PO1よりも下流側で、描画終了位置PO2よりも上流側となるように傾けることで、パターンPT1〜PT5を好適に補正することができる。
【0124】
また、第1実施形態は、各描画モジュールUW1〜UW5を、光偏向器81と走査器83とを含んで構成することができるため、描画ラインLL1〜LL5に沿って一次元の方向に描画ビームLBを走査することができる。
【0125】
また、第1実施形態は、回転機構24により、第2光学定盤25に設置された描画装置11を回転することで、描画ラインLL1〜LL5の相互の位置関係を維持しつつ、描画ラインLL1〜LL5の全ての傾きを調整することができる。このため、制御装置16は、回転機構24の回転を制御すればよいため、制御に係る構成を簡易な構成とすることができる。
【0126】
また、第1実施形態は、各描画モジュールUW1〜UW5から投射される描画ビームLBの基板P上におけるサイズ(スポット径)をD(μm)、描画ビームLBの描画ラインLL1〜LL5に沿った走査速度をVp(μm/秒)としたとき、光源装置CNTは、パルス光を射出するレーザ光源の発光繰り返し周期T(秒)を、T<D/Vpの関係にすることができる。このため、描画ビームLBによるスポット光を基板P上で重複させながら、描画ビームLBを走査方向に走査することができるため、光偏向器81がON状態の間は、描画ビームLBによる描画ラインが走査方向に途切れることなく連続線として描画される。
【0127】
なお、第1実施形態では、回転機構24により第2光学定盤25を回転させ、基板Pに対し描画装置11を回転させることで、基板Pの幅方向に対し描画ラインLL1〜LL5の傾きを調整した。しかしながら、この構成に限定されず、基板Pの幅方向に対し描画ラインLL1〜LL5の傾きを相対的に調整すればよい。つまり、露光装置EXは、XY面内において、回転ドラムDRの回転中心線AX2を、回転軸Iを中心にXY面内で回転させる構成であってもよい。この場合は、基板Pの搬送経路中で、少なくとも回転ドラムDRの前後に配置されるローラRT1、RT2(
図1)も一体となって、回転軸Iを中心にXY面内で回転させる構成とするのが良い。
【0128】
[第2実施形態]
次に、
図13から
図16を参照して、第2実施形態の露光装置EXについて説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と重複する記載を避けるべく、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成要素については、第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略することもある。
図13は、第2実施形態の露光装置のf−θレンズ系の一部の構成を示す図である。
図14は、
図13のf−θレンズ系のシリンドリカルレンズの構成を示す図である。
図15は、第2実施形態の露光装置により基板上に描画されたパターンと描画ラインとの配置関係の一例を示す図である。
図16は、第2実施形態の露光装置により基板上に描画されたパターンと描画ラインとの配置関係の一例を示す図である。第1実施形態の露光装置EXは、回転機構24により第2光学定盤25を回転させることで、描画ラインLL1〜LL5の傾きを全体で調整した。これに対し、第2実施形態の露光装置EXは、描画ラインLL1〜LL5の各々の傾きを個別に調整している。
【0129】
第2実施形態の露光装置EXにおいて、
図13に示すように、f−θレンズ系85は、テレセントリックf−θレンズ85aと、シリンドリカルレンズ85bとを含んで構成されている。なお、
図13では、f−θレンズ系85において、テレセントリックf−θレンズ85a及びシリンドリカルレンズ85b以外の他のレンズの図示を省略している。
【0130】
テレセントリックf−θレンズ85aは、照射される描画ビームLBをXZ面中では平行光とし、Y方向(走査方向)では収束光とする。XZ面中で平行光の描画ビームLBは、シリンドリカルレンズ85bへ向けて照射する。シリンドリカルレンズ85bは、テレセントリックf−θレンズ85aと基板Pとの間に設けられている。シリンドリカルレンズ85bは、描画ラインLL1(LL2〜LL5も同様)が延びる走査方向とほぼ平行な母線を有しており、母線と直交する方向に所定のパワー(屈折力)を有して描画ビームLBをスポット光に集光している。また、
図14に示すように、シリンドリカルレンズ85bは、基板Pの幅方向に対する描画ラインLL1〜LL5の各々の傾きを微調整するために、回転軸I1〜I5を中心に回転可能となっている。回転軸I1〜I5は、基板P上に形成される描画ラインLL1〜LL5を含む描画面内の所定点を中心とする回転軸である。回転軸I1〜I5は、例えば、描画ラインLL1〜LL5が延びる方向の中央を中心とする回転軸であり、描画ビームLBの軸線と同じ方向となっている。つまり、奇数番の描画ラインLL1,LL3,LL5の回転軸I1,I3,I5は、設置方位線Le1と同じ方向となっており、偶数の描画ラインLL2,LL4の回転軸I2,I4は、設置方位線Le2と同じ方向となっている。このシリンドリカルレンズ85bは、駆動部100によって回転軸I1〜I5を中心に回転し、駆動部100に接続される制御装置16によって、シリンドリカルレンズ85bの回転が制御される。シリンドリカルレンズ85bの回転軸I1〜I5を中心とした回転では、回転軸I1〜I5付近を通って基板P上に投射される描画ビームの主光線に対して、シリンドリカルレンズ85bの母線方向(Y方向)の両端側を通って基板P上に投射される描画ビームの主光線が、シリンドリカルレンズ85bの母線と回転軸I1〜I5といずれとも直交する方向に関して僅かに傾くため、基板P上の描画ラインLL1〜LL5を僅かに傾けることができる。
【0131】
次に、
図15を参照して、基板Pの幅方向に対する描画ラインLL1〜LL5の傾きの調整について説明する。第2実施形態の露光装置EXでは、駆動部100によりシリンドリカルレンズ85bを回転させることで、基板Pの幅方向に対し、描画ラインLL1〜LL5を傾けている。つまり、シリンドリカルレンズ85bが、描画ラインLL1〜LL5の各々の傾きを調整する描画ライン回転機構として機能する。
【0132】
駆動部100は、回転軸I1〜I5を中心に、シリンドリカルレンズ85bをそれぞれ回転させることで、各描画モジュールUW1〜UW5の描画ラインLL1〜LL5を、基板Pの幅方向に対して傾ける。
【0133】
ここで、露光装置EXの描画前(例えば、アライメント時)に関して、基準速度で搬送される基板Pに対し、パターンPT1〜PT5を基板Pの幅方向に継ぎ合わせる場合の、描画ラインLL1〜LL5の傾きの調整について説明する。なお、上記の場合の第2実施形態における描画ラインLL1〜LL5の傾きの調整は、第1実施形態における描画ラインLL1〜LL5の傾きの調整とほぼ同様となっているため、重複する部分については一部説明を省略する。
図15に示すように、制御装置16は、回転位置検出機構14によって検出された基板Pの基準速度に基づいて、駆動部100を制御して、シリンドリカルレンズ85bを回転させる。この場合も、基板Pの基準速度は、シリンドリカルレンズ85bの回転量と対応付けられている。具体的に、制御装置16は、基板Pの基準速度に基づいて、シリンドリカルレンズ85bを回転させることで、描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置PO1が搬送方向の上流側に位置し、描画ラインLL1〜LL5の描画終了位置PO2が搬送方向の下流側に位置するように、基板Pに対してシリンドリカルレンズ85bを回転させる。
【0134】
図15に示すように、回転軸I1〜I5を中心に、描画ラインLL1〜LL5をそれぞれ傾けると、各描画ラインLL1〜LL5の搬送方向における位置はほぼ変化しない。このため、回転後の描画ラインLL1〜LL5によって基板P上に描画される各パターンPT1〜PT5は、
図15の実線で示すように、基板Pの幅方向とほぼ同じ方向に直線的に形成され、また、基板Pの搬送方向においても同じ位置となる。このように、パターンPT1〜PT5は、基板Pの幅方向に沿って一列に継ぎ合わされて形成される。
【0135】
次に、露光装置EXの描画時に関して、基準速度から速度ムラによって僅かに速度変化しながら搬送される基板Pに対し、パターンPT1〜PT5を基板Pの幅方向に継ぎ合わせる場合の、描画ラインLL1〜LL5の傾きの調整について説明する。なお、上記の場合の第2実施形態における描画ラインLL1〜LL5の傾きの調整は、第1実施形態における描画ラインLL1〜LL5の傾きの調整とほぼ同様となっているため、重複する部分については一部説明を省略する。
図15に示すように、駆動部100は、基準速度で搬送される基板Pに対し、基板Pの幅方向に対して描画ラインLL1〜LL5を所定の傾きとすることで、パターンPT1〜PT5を基板Pの幅方向に好適に継ぎ合わせている。
【0136】
図15に示す状態から、基板Pが基準速度よりも速い搬送速度で搬送されると、基板P上に形成されるパターンPT1〜PT5は、端部PTaが端部PTbと比べて搬送方向の下流側となるように、斜めに形成される。一方で、基板Pが基準速度よりも遅い搬送速度で搬送されると、基板P上に形成されるパターンPT1〜PT5は、端部PTaが端部PTbと比べて搬送方向の上流側となるように、斜めに形成される。
【0137】
制御装置16は、回転位置検出機構14によって検出される基板Pの搬送速度が、基準速度よりも速くなると、第1実施形態と同様に、描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置PO1が、基準速度における描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置PO1よりも搬送方向の上流側に位置し、描画ラインLL1〜LL5の描画終了位置PO2が、基準速度における描画ラインLL1〜LL5の描画終了位置PO2よりも搬送方向の下流側に位置するように、各シリンドリカルレンズ85bの駆動部100制御して、描画ラインLL1〜LL5を傾ける。一方で、制御装置16は、回転位置検出機構14によって検出される基板Pの搬送速度が、基準速度よりも遅くなると、描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置PO1が、基準速度における描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置PO1よりも搬送方向の下流側に位置し、描画ラインLL1〜LL5の描画終了位置PO2が、基準速度における描画ラインLL1〜LL5の描画終了位置PO2よりも搬送方向の上流側に位置するように、各シリンドリカルレンズ85bの駆動部100制御して、描画ラインを傾ける。
【0138】
ここで、第2実施形態の露光装置EXは、描画ラインLL1〜LL5の傾きを個別に調整している。このため、中心面p3を挟んで、上流側の(奇数番の)描画モジュールUW1,UW3,UW5の描画ラインLL1,LL3,LL5と、下流側の(偶数番の)描画モジュールUW2,UW4の描画ラインLL2,LL4とに分けてそれぞれ傾きを調整することが可能となっている。
【0139】
露光装置EXの描画時において発生する速度ムラは、回転ドラムDRの周方向における回転位置において異なる場合がある。具体的に、設置方位線Le1における基板Pの搬送速度と、設置方位線Le2における基板Pの搬送速度が異なる場合がある。この場合、奇数番の描画ラインLL1,LL3,LL5と、偶数番の描画ラインLL2,LL4とを、基板Pに対して同じ傾きにする。すると、例えば、
図16に示すように、奇数番の描画ラインLL1,LL3,LL5により形成されるパターンPT1,PT3,PT5は、基板Pの幅方向に沿って形成される一方で、偶数番の描画ラインLL2,LL4により形成されるパターンPT2,PT4は、
図16の点線で示すように、基板Pの幅方向に対して斜めに形成される場合がある。これは、奇数番の描画ラインLL1,LL3,LL5と偶数番の描画ラインLL2,LL4とがXs方向に離れて設置されている為、基板P上のXs方向の同一領域に描画されるべきパターンの描画に基板Pの搬送速度に応じた時間差があるからである。
【0140】
制御装置16は、回転位置検出機構14のエンコーダヘッドEN1によって検出される設置方位線Le1における基板Pの搬送速度を検出し、また、回転位置検出機構14のエンコーダヘッドEN2によって検出される設置方位線Le2における基板Pの搬送速度を検出する。そして、制御装置16は、検出した設置方位線Le1における基板Pの搬送速度と、検出した設置方位線Le2における基板Pの搬送速度との速度差を検出する。このように、制御装置16は、設置方位線Le1における基板Pの搬送速度と、設置方位線Le2における基板Pの搬送速度との速度差を検出する速度差検出機構としての機能を含む構成となっている。そして、制御装置16は、検出された速度差に基づいて、偶数番の描画ラインLL2,LL4の傾きを、偶数番の描画モジュールUW2,UW4の各々に設けられたシリンドリカルレンズ85bの駆動部100制御して調整する。シリンドリカルレンズ85bの回転調整後に基板P上に露光されるパターンPT2,PT4は、パターンPT1,PT3,PT5と同様に、基板Pの幅方向に沿って直線的に形成される。
【0141】
以上、第2実施形態は、回転位置検出機構14によって検出される基板Pの搬送速度に基づいて、駆動部100によってシリンドリカルレンズ85bを回転させることにより、描画ラインLL1〜LL5の傾きをそれぞれ調整することができる。このため、描画ラインLL1〜LL5に沿って走査される描画ビームLBによって、基板P上に描画されるパターンPT1〜PT5を、基板Pの幅方向に沿って直線的に形成することができ、また、基板Pの搬送方向においても同じ位置とすることができる。よって、基板P上に描画されるパターンPT1〜PT5を、基板Pの幅方向及び搬送方向(長尺方向)に好適に継ぎ合わせるように補正することができると共に、基板Pの搬送速度のムラによる継ぎ誤差を、さらに抑制することができる。
【0142】
また、第2実施形態では、描画ラインLL1〜LL5の傾きを調整する機構(描画ライン回転機構)を、駆動部100とシリンドリカルレンズ85bによる簡易な構成とすることができる。
【0143】
また、第2実施形態は、上流側の(奇数番の)描画モジュールUW1,UW3,UW5の描画ラインLL1,LL3,LL5における搬送速度と、下流側の(偶数番の)描画モジュールUW2,UW4の描画ラインLL2,LL4における搬送速度との速度差を検出し、検出された速度差に応じて、描画ラインLL1〜LL5の傾きを調整することができる。このため、奇数番の描画モジュールUW1,UW3,UW5の描画ラインLL1,LL3,LL5による描画時における基板Pの搬送速度と、偶数番の描画モジュールUW2,UW4の描画ラインLL2,LL4による描画時における基板Pの搬送速度とが異なる場合であっても、基板P上に描画されるパターンPT1〜PT5を、基板Pの幅方向及び搬送方向に好適に継ぎ合わせるように補正して露光することができるため、速度ムラによる継ぎ誤差を抑制することができる。
【0144】
なお、第2実施形態では、描画ラインLL1〜LL5を、回転軸I1〜I5を中心に回転させたが、回転中心は、特に限定されない。例えば、回転軸I1〜I5を、描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置PO1または描画終了位置PO2としてもよい。
【0145】
[第3実施形態]
次に、
図17を参照して、第3実施形態の露光装置EXについて説明する。なお、第3実施形態でも、第1及び第2実施形態と重複する記載を避けるべく、第1及び第2実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1及び第2実施形態と同様の構成要素については、第1及び第2実施形態と同じ符号を付して説明を省略することもある。
図17は、第3実施形態の露光装置により基板上に描画されたパターンと描画ラインとの配置関係の一例を示す図である。第1実施形態の露光装置EXは、回転機構24により第2光学定盤25を回転させることで、描画ラインLL1〜LL5の傾きを全体で調整した。これに対し、第3実施形態の露光装置EXは、描画ラインLL1〜LL5の傾きを変えることなく、描画タイミングを調整している。
【0146】
第3実施形態の露光装置EXにおいて、
図17に示すように、制御装置16は、回転位置検出機構14によって検出される基板Pの搬送速度、又は搬送位置に応じて、描画タイミングを補正する。なお、描画タイミングの補正は、第1実施形態と同様であり、
図12に示すように、基板Pに描画するために使用されるCAD情報を搬送方向において補正している。つまり、制御装置16は、基板P上に形成されるパターンPT1〜PT5に対応するCADパターンCAD1〜CAD5を、パターンPT1〜PT5の端部PTa,PTb同士が継ぎ合わされるように、CADパターンCAD1〜CAD5を、搬送方向に補正する。
【0147】
このように、制御装置16は、露光装置EXのアライメント時または描画時において、回転位置検出機構14によって検出される基板Pの搬送速度、又は搬送位置に応じて、
図12の実線で示すCADパターンCAD1〜CAD5の搬送方向における位置を補正することにより、
図17に示すパターンPT1〜PT5として基板P上に描画することができる。
【0148】
以上、第3実施形態は、回転位置検出機構14によって検出される基板Pの搬送速度、又は搬送位置に基づいて、描画モジュールUW1〜UW5による描画タイミングを補正することができる。このため、基板P上に描画されるパターンPT1〜PT5を、基板Pの幅方向に対して斜めとなるものの、基板Pの幅方向に継ぎ合わせるように補正することができるため、速度ムラによる継ぎ誤差を抑制することができる。
【0149】
[第4実施形態]
次に、
図18を参照して、第4実施形態の露光装置EXについて説明する。なお、第4実施形態でも、第1〜第3実施形態と重複する記載を避けるべく、第1〜第3実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1〜第3実施形態と同様の構成要素については、第1〜第3実施形態と同じ符号を付して説明を省略する場合がある。
図18は、第4実施形態の露光装置により基板上に描画されたパターンと描画ラインとの配置関係の一例を示す図である。第1〜第3実施形態の露光装置EXは、描画ラインLL1〜LL5に沿って走査される描画ビームLBの走査方向が全て同じ方向であった。これに対し、第4実施形態の露光装置EXは、描画ラインLL1〜LL5のうち、奇数番の描画モジュールUW1,UW3,UW5の描画ラインLL1,LL3,LL5に沿って走査される描画ビームLBの走査方向と、偶数番の描画モジュールUW2,UW4の描画ラインLL2,LL4に沿って走査される描画ビームLBの走査方向とが逆方向となっている。
【0150】
第4実施形態の露光装置EXにおいて、
図18に示すように、複数の描画モジュールUW1〜UW5の各々から基板Pに投射される描画ビームLBのスポット光は、直線的な描画ラインLL1〜LL5に沿って描画開始位置PO1から描画終了位置PO2へ向けてY方向に走査される。このとき、描画ラインLL1,LL3,LL5に沿って走査される描画ビームLBのスポット光の走査方向と、描画ラインLL2,LL4に沿って走査される描画ビームLBのスポット光の走査方向とが逆方向となっている。これは、
図7で示した各描画モジュールの回転ポリゴンミラー97を、全て同一方向(例えば、全て反時計回り)に回転させることで実現される。
【0151】
このため、中心面p3と平行な直線上に設定された描画ラインLL1,LL3,LL5に沿って走査される描画ビームLBによって基板P上に形成されるパターンPT1,PT3,PT5は、基板Pの搬送速度の影響を受けて、例えば、
図18の紙面内で右上がりに傾いて形成される。つまり、パターンPT1,PT3,PT5の右側の端部PTaは、パターンPT1,PT3,PT5の左側の端部PTbと比べて、搬送方向の下流側に形成される。一方で、中心面p3と平行な直線上に設定された描画ラインLL2,LL4に沿って走査される描画ビームLBによって基板P上に形成されるパターンPT2,PT4は、基板Pの搬送速度の影響を受けて、パターンPT1,PT3,PT5とは逆方向、即ち、
図18の紙面内で左上がりに傾いて形成される。つまり、パターンPT2,PT4の右側の端部PTbは、パターンPT2,PT4の左側の端部PTaと比べて、搬送方向の上流側に形成される。
【0152】
さらに、奇数番の描画ラインLL1,LL3,LL5と偶数番の描画ラインLL2,LL4とのXs方向の間隔が一定で、基板Pの搬送速度にムラが無く、各描画モジュールの回転ポリゴンミラー97の回転速度が一致しているものとすると、描画ラインLL1によって描画されるパターンPT1の左側の端部PTbと、描画ラインLL2によって描画されるパターンPT2の右側の端部PTbとは、基板Pの幅方向(Y方向)と搬送方向(Xs方向)に関して継ぎ合わされる。同様に、描画ラインLL2によって描画されるパターンPT2の左側の端部PTaと、描画ラインLL3によって描画されるパターンPT3の右側の端部PTaもY方向とXs方向に関して継ぎ合わされ、描画ラインLL3によって描画されるパターンPT3の左側の端部PTbと、描画ラインLL4によって描画されるパターンPT4の右側の端部PTbもY方向とXs方向に関して継ぎ合わされ、描画ラインLL4によって描画されるパターンPT4の左側の端部PTaと、描画ラインLL5によって描画されるパターンPT5の右側の端部PTaもY方向とXs方向に関して継ぎ合わされる。
【0153】
この第4実施形態のように、描画ラインLL1,LL3,LL5に沿って走査される描画ビームLBのスポット光の走査方向と、描画ラインLL2,LL4に沿って走査される描画ビームLBのスポット光の走査方向とを、逆方向にすると、基板Pの搬送速度にムラが無ければ、基板P上に描画されるパターンPT1〜PT5は、基板Pの幅方向(Y軸)に対して僅かに斜めとなるものの、基板Pの幅方向に継ぎ合わせることができる。
【0154】
図19は、
図18のように、基板P上に描画されるパターンPT1〜PT5の各々が僅かに傾くのを補正する様子を示し、ここでは、先の第2実施形態(
図14)と同様に、駆動部100によりf−θレンズ系85のシリンドリカルレンズ85bを、回転軸I1〜I5を中心に微小回転させることで、描画ラインLL1〜LL5の傾きを個別に調整する。
【0155】
図19に示すように、描画ラインLL1,LL3,LL5の描画開始位置PO1が搬送方向の上流側(−Xs方向)に位置し、描画ラインLL1,LL3,LL5の描画終了位置PO2が搬送方向の下流側(+Xs方向)に位置するように、基板Pに対して各描画モジュールUW1、UW3、UW5内のシリンドリカルレンズ85bを駆動部100によって回転させる。一方で描画ラインLL2,LL4の描画開始位置PO1が搬送方向の上流側(−Xs方向)に位置し、描画ラインLL2,LL4の描画終了位置PO2が搬送方向の下流側(+Xs方向)に位置するように、基板Pに対してシリンドリカルレンズ85bを駆動部100によって回転させる。
【0156】
図19に示すように、回転軸I1〜I5を中心に、描画ラインLL1〜LL5をそれぞれ傾けると、回転後の描画ラインLL1〜LL5によって基板P上に描画される各パターンPT1〜PT5は、
図19の実線で示すように、基板Pの幅方向とほぼ同じ方向に直線的に並んで形成され、また、基板Pの搬送方向(Xs方向)において同じ位置となる。このように、基板Pの搬送速度が精密に一定で、速度ムラが無ければ、描画されたパターンPT1〜PT5は、基板Pの幅方向に沿って直線的に一列に継いで形成される。なお、先の第2実施形態でも同様であるが、奇数番のf−θレンズ系85のシリンドリカルレンズ85bの回転軸I1、I3、I5がY−Xs面と交わる点は、Y軸と平行な線上に位置するものとする。
【0157】
露光装置EXの描画時において、設置方位線Le1における基板Pの搬送速度と、設置方位線Le2における基板Pの搬送速度が異なる場合、第2実施形態と同様に、例えば、
図20の実線で示すように、奇数番の描画ラインLL1,LL3,LL5により形成されるパターンPT1,PT3,PT5は、基板Pの幅方向に沿って形成される一方で、
図20の点線で示すように、偶数番の描画ラインLL2,LL4により形成されるパターンPT2,PT4は、基板Pの幅方向に対して斜めに形成される。
【0158】
このため、制御装置16は、回転位置検出機構14のエンコーダヘッドEN1によって検出される設置方位線Le1における基板Pの搬送速度と、回転位置検出機構14のエンコーダヘッドEN2によって検出される設置方位線Le2における基板Pの搬送速度との速度差を検出する。そして、制御装置16は、検出された速度差に基づいて、偶数番の描画ラインLL2,LL4の傾きを調整する。回転後のパターンPT2,PT4は、パターンPT1,PT3,PT5と同様に、基板Pの幅方向に沿って形成される。
【0159】
以上、第4実施形態は、回転位置検出機構14によって検出される基板Pの搬送速度に基づいて、駆動部100によってシリンドリカルレンズ85bを回転させることにより、描画ラインLL1〜LL5の傾きをそれぞれ調整することができる。このため、描画ラインLL1〜LL5に沿って走査される描画ビームLBによって、基板P上に描画されるパターンPT1〜PT5を、基板Pの幅方向に沿って傾くことなく精密に継いで形成することができ、また、基板Pの搬送方向においても同じ位置で継ぐことができる。よって、基板P上に描画されるパターンPT1〜PT5を、基板Pの幅方向に好適に継ぎ合わせるように補正することができるため、第1実施形態のように描画タイミングを補正しなくても、速度ムラによる継ぎ誤差を抑制することができる。
【0160】
なお、第4実施形態も、第2実施形態と同様に、描画ラインLL1〜LL5を、回転軸I1〜I5を中心に回転させたが、回転中心は、特に限定されない。例えば、回転軸I1〜I5を、描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置PO1または描画終了位置PO2としてもよい。
【0161】
また、第1〜第4実施形態では、回転ドラムDRの外周面に形成されたスケール部GPa,GPbを用いて、回転ドラムDRの回転位置(基板Pの移動位置)や搬送速度を検出したが、この構成に限定されない。例えば、回転ドラムDRに高真円度のスケール円盤を取り付けてもよい。このスケール円盤は、外周面にスケール部GPa,GPbが刻設され、回転ドラムDRの端部に回転中心線AX2と直交するように固定されている。このため、スケール円盤は、回転中心線AX2回りに回転ドラムDRと共に一体に回転する。また、スケール円盤は、低熱膨張の金属、ガラス、セラミックス等を母材とし、計測分解能を高めるために、なるべく大きな直径(例えば直径20cm以上)になるように作られる。スケール円盤は、回転ドラムDRに巻き付けられる基板Pの外周面の直径と、スケール円盤のスケール部GPa,GPbの直径とを揃える(ほぼ一致させる)ことで、所謂、計測アッベ誤差をさらに小さくすることができる。
【0162】
さらに、第1〜第4実施形態の各構成を適宜、組み合わせても良い。例えば、第1実施形態のように、複数の描画モジュールUW1〜UW5の全体を回転機構24によって微小回転可能にしつつ、第2実施形態(又は第4実施形態)のように、各描画モジュールUW1〜UW5のf−θレンズ系85のシリンドリカルレンズ85bを個別に微小回転可能にしても良い。さらに、
図3に示すように、基板P上に形成された複数のアライメントマークKs1、Ks2、Ksの各々の位置を、対応するアライメント顕微鏡AM1で検出することで、基板P上の露光領域A7の2次元的な伸縮変形や非線形な歪変形等の傾向を継続的に計測することができる。
【0163】
その為、アライメント顕微鏡AM1で計測される露光領域A7の2次元的な伸縮変形や非線形な歪変形等に合わるように、描画ラインLL1〜LL5の各々、又は全体を基板Pの表面上でリアルタイムに微小に傾けるように補正することによって、基板P上の露光領域A7内に既に形成されたパターン層と、その上に重ね合せ露光すべき描画パターンとの重ね合せ精度を、露光領域A7内の各所で許容範囲内に抑えることが可能となる。
【0164】
また、第1〜第4実施形態では、いずれも基板Pを回転ドラムDRの外周面で支持し、回転ドラムDRを回転させることで、基板Pを長尺方向に搬送しつつ、基板Pの回転ドラムDRで支持された部分にパターンを描画する構成となっているが、それには限定されない。例えば、基板Pを平面的に支持するステージの表面に吸着支持した状態で、ステージと基板Pとを共に長尺方向に搬送しつつ、パターンを描画する構成、或いは、支持台の平坦な表面の上に基板Pを載せた状態で、支持台の表面と基板Pの裏面との間にエアベアリング層を形成して、非接触又は低摩擦状態で基板Pを平面状に支持して搬送しつつ、パターン描画する構成であっても良い。
【0165】
さらに、第1〜第4実施形態の各々において、描画ラインLL1〜LL5の全体のXY面内での傾きを調整する場合は、
図2に示した回転機構24と、第2光学定盤25とを微少回転させるようにしたが、回転ドラムDRのシャフト部Sf2の両端を軸支するベアリング等の位置をX方向に僅かにずらして、回転ドラムDRの全体をXY面内で傾けるようにしても良い。また、回転ドラムDR上に支持される基板Pの長尺方向の搬送速度を基準速度から変更する場合、或いは搬送速度に速度ムラが生じた場合、その変更される速度、或いは速度ムラに応じて、描画ユニットUW1〜UW5の各々の回転ポリゴンミラー97の回転速度を動的に変更するようにしても良い。すなわち、描画ラインLL1〜LL5の各々に沿って走査されるスポット光の走査速度(主走査速度)Vpと、基板Pの長尺方向の搬送速度(副走査速度)Vxsとの比率を、基板Pの搬送速度が変化した場合も、ほぼ一定となるように、回転ポリゴンミラー97の回転速度を制御するようにしても良い。
【0166】
<デバイス製造方法>
次に、
図21を参照して、デバイス製造方法について説明する。
図21は、各実施形態のデバイス製造方法を示すフローチャートである。
【0167】
図21に示すデバイス製造方法では、まず、例えば有機EL等の自発光素子による表示パネルの機能・性能設計を行い、必要な回路パターンや配線パターンをCAD等で設計する(ステップS201)。また、表示パネルの基材となる可撓性の基板P(樹脂フィルム、金属箔膜、プラスチック等)が巻かれた供給用ロールを準備しておく(ステップS202)。なお、このステップS202にて用意しておくロール状の基板Pは、必要に応じてその表面を改質したもの、下地層(例えばインプリント方式による微小凹凸)を事前形成したもの、光感応性の機能膜や透明膜(絶縁材料)を予めラミネートしたもの、でも良い。
【0168】
次いで、基板P上に表示パネルデバイスを構成する電極や配線、絶縁膜、TFT(薄膜半導体)等によって構成されるバックプレーン層を形成すると共に、そのバックプレーンに積層されるように、有機EL等の自発光素子による発光層(表示画素部)が形成される(ステップS203)。このステップS203には、先の各実施形態で説明した露光装置EXを用いて、フォトレジスト層を露光する従来のフォトリソグラフィ工程も含まれるが、フォトレジストの代わりに感光性シランカップリング材を塗布した基板Pをパターン露光して表面に親撥水性によるパターンを形成する露光工程、光感応性の触媒層をパターン露光し無電解メッキ法によって金属膜のパターン(配線、電極等)を形成する湿式工程、或いは、銀ナノ粒子を含有した導電性インク等によってパターンを描画する印刷工程、等による処理も含まれる。
【0169】
次いで、ロール方式で長尺の基板P上に連続的に製造される表示パネルデバイス毎に、基板Pをダイシングしたり、各表示パネルデバイスの表面に、保護フィルム(耐環境バリア層)やカラーフィルターシート等を貼り合せたりして、デバイスを組み立てる(ステップS204)。次いで、表示パネルデバイスが正常に機能するか、所望の性能や特性を満たしているかの検査工程が行なわれる(ステップS205)。以上のようにして、表示パネル(フレキシブル・ディスプレー)を製造することができる。