(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、ブロック共重合体組成物および粘着剤組成物に関するものである。
以下、本発明のブロック共重合体組成物および粘着剤組成物について詳細に説明する。
【0019】
A.ブロック共重合体組成物
本発明のブロック共重合体組成物は、下記一般式(I)で表わされるブロック共重合体Aと、下記一般式(II)で表されるブロック共重合体Bと、を含有するブロック共重合体組成物であって、ブロック共重合体Aの芳香族ビニル単量体単位含有量が、ブロック共重合体Bの芳香族ビニル単量体単位含有量より多く、ブロック共重合体Bの芳香族ビニル重合体ブロックAr3の重量平均分子量(Mw(Ar3))がブロック共重合体Aの芳香族ビニル重合体ブロックAr1の重量平均分子量(Mw(Ar1))と実質的に同一であり、ブロック共重合体組成物の破断強度が8MPa以下であり、かつ、破断伸びが2000%以下であることを特徴とするものである。
【0022】
(式(I)および(II)中、Ar1、Ar2およびAr3は、それぞれ芳香族ビニル重合体ブロックであり、D1およびD2は、それぞれ共役ジエン重合体ブロックである。)
【0023】
本発明のブロック共重合体組成物によれば、ブロック共重合体Aの芳香族ビニル単量体単位含有量が、ブロック共重合体Bの芳香族ビニル単量体単位含有量より多いことにより、透明性に優れた粘着剤組成物を得ることが可能になると推定される。
また、ブロック共重合体Bの芳香族ビニル重合体ブロックAr3の重量平均分子量(Mw(Ar3))がブロック共重合体Aの芳香族ビニル重合体ブロックAr1の重量平均分子量(Mw(Ar1))と実質的に同一であることにより、ブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B同士の相溶性に優れたものになると考えられる。その結果、本発明のブロック共重合体組成物によれば、粘着物性が向上し、マンドレル特性に優れた粘着剤組成物を得ることが可能となる。さらに、軟化剤との相溶性が向上し、本発明のブロック共重合体組成物によれば、軟化剤保持性に優れた粘着剤組成物を得ることが可能となる。
さらに、ブロック共重合体組成物の破断強度が8MPa以下であり、かつ、破断伸びが2000%以下であることにより、ブロック共重合体組成物は、ダイ切断性に優れた粘着剤組成物を得ることが可能となる。
【0024】
本発明のブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを少なくとも有するものである。
以下、本発明のブロック共重合体組成物の各構成について説明する。
【0025】
1.ブロック共重合体A
本発明におけるブロック共重合体Aは、下記一般式(I)で表わされる2つの芳香族ビニル重合体ブロックと1つの共役ジエン重合体ブロックとを有するトリブロック共重合体である。
【0027】
(式(I)中、Ar1およびAr2は、それぞれ芳香族ビニル重合体ブロックであり、D1は、共役ジエン重合体ブロックである。)
【0028】
(1)芳香族ビニル重合体ブロックAr1
ブロック共重合体Aの芳香族ビニル重合体ブロックAr1は、芳香族ビニル単量体単位を主たる構成単位とする重合体ブロックである。芳香族ビニル重合体ブロックAr1の芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等のアルキル置換スチレン類;4−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、3,5−ジフルオロスチレン等のハロゲン置換スチレン類;4−メトキシスチレン、3,5−ジメトキシスチレン等のアルコキシ置換スチレン類等が挙げられる。これらのなかでも、芳香族ビニル単量体としては、ブロック共重合体組成物を吸水性が低く透明性に優れたものとするとの観点から、ハロゲン不含芳香族ビニル単量体であることが好ましく、なかでも、得られる粘着剤組成物の粘着性やダイ切断性の向上および入手容易性の観点から、スチレン、アルキル置換スチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
これらの芳香族ビニル単量体は、芳香族ビニル重合体ブロックAr1において、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
芳香族ビニル重合体ブロックAr1は、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を含んでいても良い。芳香族ビニル重合体ブロックAr1に含まれ得る芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン,1,3−ペンタジエン等の共役ジエン単量体が例示される。
芳香族ビニル重合体ブロックAr1における芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、実質的に0質量%であることが特に好ましい。
【0030】
芳香族ビニル重合体ブロックAr1の重量平均分子量(Mw(Ar1))は、特に限定されないが、通常、5000〜100000の範囲内とすることができ、6000〜50000の範囲内であることが好ましく、7000〜30000の範囲内であることがより好ましい。Mw(Ar1)が小さすぎると、ブロック共重合体組成物は、これを用いて得られる粘着剤組成物が接着剤としての保持力が低いものとなるおそれがあり、大きすぎると、粘着剤組成物の溶融粘度が著しく高くなるおそれがあるからである。
また、重量平均分子量が上述の範囲内であることにより、ブロック共重合体組成物は、凝集力の高いものとなり、これを用いた粘着剤組成物が軟化剤保持性に優れたものとすることができるからである。
【0031】
なお、本発明において、重合体ブロックおよびブロック共重合体組成物等の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、高速液体クロマトグラフィの測定による、ポリスチレン換算の値として求めるものとする。
重量平均分子量および数平均分子量の測定は、より具体的には、流速0.35ml/分のテトラヒドロフランをキャリアとする高速液体クロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めることができる。装置は、東ソー社製HLC8220、カラムは昭和電工社製Shodex(登録商標)KF−404HQを3本連結したもの(カラム温度40℃)、検出器は示差屈折計および紫外検出器を用い、分子量の較正はポリマーラボラトリー社製の標準ポリスチレン(500から300万)の12点で実施することができる。
【0032】
芳香族ビニル重合体ブロックAr1の重量平均分子量(Mw(Ar1)および数平均分子量(Mn(Ar1))の比である分子量分布(Mw(Ar1)/Mn(Ar1))は、1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。この比が小さいと、ブロック共重合体組成物は、高温での保持力により優れる粘着剤組成物が得られるからである。
【0033】
(2)共役ジエン重合体ブロックD1
ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロックD1は、共役ジエン単量体単位を主たる構成単位とする重合体ブロックである。共役ジエン重合体ブロックD1の共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエン単量体としては、共役ジエン化合物であれば特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらの中でも、共役ジエン単量体としては、ブロック共重合体組成物を吸水性が低く透明性に優れたものとするとの観点から、ハロゲン不含共役ジエン単量体であることが好ましく、なかでも、1,3−ブタジエンおよび/またはイソプレンを用いることが好ましく、イソプレンを用いることが特に好ましい。共役ジエン重合体ブロックD1をイソプレン単位で構成することにより、ブロック共重合体組成物は、接着性と柔軟性に優れた粘着剤組成物を得ることができるからである。
これらの共役ジエン単量体は、共役ジエン重合体ブロックD1において、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、共役ジエン重合体ブロックD1の不飽和結合の一部に対し、水素添加反応を行ってもよい。
【0034】
共役ジエン重合体ブロックD1は、共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を含んでいても良い。共役ジエン重合体ブロックD1に含まれ得る共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、α,β−不飽和ニトリル単量体、不飽和カルボン酸または酸無水物単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体が例示される。共役ジエン重合体ブロックD1における共役ジエン単量体単位以外の単量体単位の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、実質的に0質量%であることが特に好ましい。
【0035】
共役ジエン重合体ブロックD1中の単量体単位の中で、ビニル結合を有する単量体単位の含有量は、特に限定されないが、通常、50質量%以下であり、20質量%以下であることが好ましく、なかでも5質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。ビニル結合を有する単量体単位の含有量がこの範囲にあると、ブロック共重合体組成物は、低温時の初期接着力により優れた粘着剤組成物が得られるからである。
【0036】
共役ジエン重合体ブロックD1の重量平均分子量(Mw(D1))は、特に限定されないが、通常、70000〜190000の範囲内とすることができ、80000〜160000の範囲内であることが好ましく、なかでも85000〜140000の範囲内であることが好ましい。Mw(D1)が小さすぎると、ブロック共重合体組成物は、得られる粘着剤組成物の高温での保持力が劣る場合があり、大きすぎるとその溶融粘度が高くなり取り扱いし難くなる傾向があるからである。
【0037】
共役ジエン重合体ブロックD1の重量平均分子量(Mw(D1)および数平均分子量(Mn(D1))の比である分子量分布(Mw(D1)/Mn(D1))は、1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。分子量分布が小さいと、ブロック共重合体組成物は、高温での保持力により優れる粘着剤組成物が得ることができるからである。
【0038】
(3)芳香族ビニル重合体ブロックAr2
ブロック共重合体Aの芳香族ビニル重合体ブロックAr2は、芳香族ビニル単量体単位を主たる構成単位とする重合体ブロックである。
また、ブロック共重合体Aの芳香族ビニル重合体ブロックAr2は、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を含んでいても良いものである。
このような芳香族ビニル重合体ブロックAr2の芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体、芳香族ビニル単量体以外の単量体単位を構成する単量体および芳香族ビニル単量体以外の単量体単位の含有量としては、上記「(1)芳香族ビニル重合体ブロックAr1」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明を省略する。
【0039】
芳香族ビニル重合体ブロックAr2の重量平均分子量(Mw(Ar2))は、ブロック共重合体Aに含まれる芳香族ビニル重合体ブロックAr1の重量平均分子量(Mw(Ar1))より大きくてもよく、Mw(Ar1)と同程度であってもよい。
本発明においては、芳香族ビニル重合体ブロックAr2の重量平均分子量(Mw(Ar2))の芳香族ビニル重合体ブロックAr1の重量平均分子量(Mw(Ar1))に対する比(Mw(Ar2)/Mw(Ar1)))が、1〜5の範囲内であることが好ましく、なかでも1.2〜4の範囲内であることが好ましく、特に、1.5〜3の範囲内であることが好ましい。上記重量平均分子量の比が上述の範囲内であることにより、ブロック共重合体組成物は、透明性に優れた粘着剤組成物を得ることができるからである。
また、重量平均分子量の比が上述の範囲内であり、芳香族ビニル重合体ブロックAr2の重量平均分子量を大きなものとすることにより、ブロック共重合体組成物は、凝集力の高いものとなり、これを用いた粘着剤組成物が軟化剤保持性に優れたものとすることができるからである。
【0040】
芳香族ビニル重合体ブロックAr2の重量平均分子量(Mw(Ar2))は、特に限定されないが、通常、5000〜100000の範囲内とすることができ、9000〜70000の範囲内であることが好ましく、10000〜50000の範囲内であることがより好ましい。Mw(Ar2)が小さすぎると、ブロック共重合体組成物は、得られる粘着剤組成物が、比較的に低温での溶融粘度が高いものとなるおそれがあり、Mw(Ar2)が大きすぎるとブロック共重合体Aは、製造が困難である場合があるからである。
また、重量平均分子量が上述の範囲内であることにより、ブロック共重合体組成物は、凝集力の高いものとなり、これを用いた粘着剤組成物が軟化剤保持性に優れたものとすることができるからである。
【0041】
芳香族ビニル重合体ブロックAr2の重量平均分子量(Mw(Ar2)および数平均分子量(Mn(Ar2))の比である分子量分布(Mw(Ar2)/Mn(Ar2))は、1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。この比が小さいと、ブロック共重合体組成物は、高温での保持力により優れる粘着剤組成物が得られるからである。
【0042】
(4)ブロック共重合体A
ブロック共重合体Aの重量平均分子量(MwA)は、通常、80000〜400000の範囲内とすることができ、90000〜300000の範囲内であることが好ましく、なかでも100000〜250000の範囲内であることが好ましく、特に110000〜220000の範囲内であることが好ましい。この重量平均分子量が小さすぎると、ブロック共重合体組成物は、これを用いて得られる粘着剤組成物の高温での保持力に劣る場合があり、大きすぎるとその溶融粘度が高くなり取り扱いし難くなる傾向がある。
【0043】
ブロック共重合体Aの分子量分布(Mw/Mn)は、1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。この比が小さいと、ブロック共重合体組成物は、高温での保持力により優れる粘着剤組成物が得られるからである。
【0044】
ブロック共重合体Aの芳香族ビニル単量体単位含有量(ブロック共重合体Aを構成する全単量体単位に対して芳香族ビニル単量体単位が占める割合)は、通常、15質量%〜75質量%の範囲内とすることができ、17質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも20質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量がこのような範囲にあると、ブロック共重合体組成物は、優れた粘着性能とダイ切断性能を有する粘着剤組成物が効率よく得られるからである。
【0045】
ブロック共重合体Aの芳香族ビニル単量体単位含有量は、ブロック共重合体Bの芳香族ビニル単量体単位含有量より多いものである。
本発明において、ブロック共重合体Aの芳香族ビニル単量体単位含有量の、ブロック共重合体Bの芳香族ビニル単量体単位含有量に対する比(ブロック共重合体Aの芳香族ビニル単量体単位含有量/ブロック共重合体Bの芳香族ビニル単量体単位含有量)としては、1.1〜5の範囲内であることが好ましく、なかでも1.5〜4の範囲内であることが好ましく、特に、1.75〜3.5の範囲内であることが好ましい。上記比が上述の範囲内であることで、ブロック共重合体組成物は、透明性に優れた粘着組成物を得ることができるからである。
【0046】
ブロック共重合体Aのブロック共重合体組成物中の含有量は、通常、10質量%〜90質量%の範囲内とすることができ、15質量%〜60量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、20質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が少なすぎると、ブロック共重合体組成物は、これを用いて得られる粘着剤組成物の高温での保持力が劣り、逆に多すぎると粘着剤組成物の初期接着力やダイ切断性能が劣る。
【0047】
なお、本発明のブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Aは、実質的に単一の構成を有する1種のブロック共重合体Aのみからなるものであってもよいし、実質的に相異なる構成を有する2種以上のブロック共重合体Aによって構成されたものであってもよい。
【0048】
2.ブロック共重合体B
本発明におけるブロック共重合体Bは、下記一般式(II)で表わされる、1つの芳香族ビニル重合体ブロックと1つの共役ジエン重合体ブロックとを有するジブロック共重合体である。
【0050】
(式(II)中、Ar3は芳香族ビニル重合体ブロックであり、D2は共役ジエン重合体ブロックである。)
【0051】
(1)芳香族ビニル重合体ブロックAr3
ブロック共重合体Bを構成する芳香族ビニル重合体ブロックAr3の重量平均分子量(Mw(Ar3))は、ブロック共重合体Aの芳香族ビニル重合体ブロックAr1の重量平均分子量(Mw(Ar1))と実質的に同一である。
ここで、重量平均分子量が実質的に同一であるとは、両者の重量平均分子量の比(Mw(Ar3)/Mw(Ar1))が、0.95〜1.05の範囲内とすることができ、なかでも、0.98〜1.02の範囲内であることが好ましく、特に、1.00であることが好ましい。上記重量平均分子量の比であることにより、ブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B同士の相溶性により優れたものとなるからである。
【0052】
芳香族ビニル重合体ブロックAr3を構成する単量体単位を構成するために用いられる単量体については、上記「1.ブロック共重合体A」の「(1)芳香族ビニル重合体ブロックAr1」の項に記載の内容と同様とすることができる。
本発明においては、芳香族ビニル重合体ブロックAr3を構成する単量体単位を構成するために用いられる単量体の種類が、芳香族ビニル重合体ブロックAr1を構成する単量体単位を構成するために用いられる単量体の種類と同じであることが好ましく、なかでも、芳香族ビニル重合体ブロックAr3を構成するために用いられる各単量体単位の含有割合が、それぞれ、芳香族ビニル重合体ブロックAr1を構成するために用いられる各単量体単位の含有割合と実質的に同一であることが好ましい。芳香族ビニル重合体ブロックAr3の構成材料がブロック共重合体Aの芳香族ビニル重合体ブロックAr1と実質的に同一であることにより、ブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B同士の相溶性により優れたものとなるからである。
ここで、含有割合が実質的に同一である場合、それぞれの単量体単位について、互いの含有割合の比については、重量平均分子量が実質的に同一である場合の重量平均分子量の比と同様とすることができる。
【0053】
芳香族ビニル重合体ブロックAr3の重量平均分子量(Mw(Ar3)および数平均分子量(Mn(Ar3))の比である分子量分布(Mw(Ar3)/Mn(Ar3))についても、上記「1.ブロック共重合体A」の「(1)芳香族ビニル重合体ブロックAr1」の項に記載の分子量分布(Mw(Ar1)/Mn(Ar1))と同様とすることができる。
本発明においては、芳香族ビニル重合体ブロックAr3の分子量分布が、芳香族ビニル重合体ブロックAr1の分子量分布と実質的に同一であることが好ましい。芳香族ビニル重合体ブロックAr3の分子量分布がブロック共重合体Aの芳香族ビニル重合体ブロックAr1と実質的に同一であることにより、ブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B同士の相溶性により優れたものとなるからである。
ここで、分子量分布が実質的に同一である場合、両者の分子量分布の比については、重重量平均分子量が実質的に同一である場合の重量平均分子量の比と同様とすることができる。
【0054】
(2)共役ジエン重合体ブロックD2
ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体D2については、上記「1.ブロック共重合体A」の「(2)共役ジエン重合体ブロックD1」の項に記載の内容と同様とすることができる。
本発明においては、共役ジエン重合体ブロックD2を構成する単量体単位を構成するために用いられる単量体の種類が、共役ジエン重合体ブロックD1を構成する単量体単位を構成するために用いられる単量体の種類と同じであることが好ましく、なかでも、共役ジエン重合体ブロックD2を構成するために用いられる各単量体単位の含有割合が、それぞれ、共役ジエン重合体ブロックD1を構成するために用いられる各単量体単位の含有割合と実質的に同一であることが好ましい。共役ジエン重合体ブロックD2の構成材料がブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロックD1と実質的に同一であることにより、ブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B同士の相溶性により優れたものとなるからである。
【0055】
本発明においては、共役ジエン重合体ブロックD2の重量平均分子量(Mw(D2))が、共役ジエン重合体ブロックD1の重量平均分子量(Mw(D1)と実質的に同一であることが好ましい。
また、共役ジエン重合体ブロックD2の分子量分布(Mw(D2)/Mn(D2))が、共役ジエン重合体ブロックD1の分子量分布(Mw(D1)/Mn(D1))と実質的に同一であることが好ましい。
共役ジエン重合体ブロックD2の重量平均分子量および分子量分布が、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロックD1と実質的に同一であることにより、ブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B同士の相溶性により優れたものとなるからである。
【0056】
なお、含有割合、重量平均分子量および分子量分布が実質的に同一である場合の、それぞれの含有割合の比、重量平均分子量の比および分子量分布の比については、上記「(1)芳香族ビニル重合体ブロックAr3」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0057】
(3)ブロック共重合体B
ブロック共重合体Bの重量平均分子量(MwB)は、通常、80000〜300000の範囲内とすることができ、85000〜250000の範囲内であることが好ましく、なかでも、90000〜230000の範囲内であることが好ましく、特に95000〜200000の範囲内であることが好ましい。この重量平均分子量が小さすぎると、ブロック共重合体組成物は、これを用いて得られる粘着剤組成物の高温での保持力に劣る場合があり、大きすぎるとその溶融粘度が高くなり取り扱いし難くなる傾向があるからである。
【0058】
ブロック共重合体Bの分子量分布(Mw/Mn)は、1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。この比が小さいと、ブロック共重合体組成物は、高温での保持力により優れる粘着剤組成物が得られるからである。
【0059】
ブロック共重合体Bの芳香族ビニル単量体単位含有量(ブロック共重合体Bを構成する全単量体単位に対して芳香族ビニル単量体単位が占める割合)は、通常、8質量%〜50質量%の範囲内とすることができ、10質量%〜40質量%の範囲内であることが好ましく、12質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量がこのような範囲にあると、ブロック共重合体組成物は、優れた粘着性能とダイ切断性能を有する粘着剤組成物が効率よく得られるからである。
【0060】
ブロック共重合体Bのブロック共重合体組成物中の含有量は、通常、10質量%〜90質量%の範囲内とすることができ、20質量%〜85質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、30質量%〜80質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が少なすぎると、ブロック共重合体組成物は、これを用いて得られる粘着剤組成物の高温での保持力が劣り、逆に多すぎると粘着剤組成物の初期接着力やダイ切断性能が劣る可能性があるからである。
【0061】
なお、本発明のブロック共重合体組成物を構成するブロック共重合体Bは、実質的に単一の構成を有する1種のブロック共重合体Bのみからなるものであってもよいし、実質的に相異なる構成を有する2種以上のブロック共重合体Bによって構成されたものであってもよい。
【0062】
本発明において、ブロック共重合体Bは、ブロック共重合体Aと同時に調製されたものであることが好ましい。
ここで、ブロック共重合体Aと同時に調製されたものであるとは、具体的には、後述する「4.ブロック共重合体組成物の製造方法」の項に記載するように、まず、ブロック共重合体Bを得た後、一部のブロック共重合体Bの末端に芳香族ビニル重合体ブロックAr2を結合することでブロック共重合体Aを得る方法により得られたものであり、ブロック共重合体Aの芳香族ビニル重合体ブロックAr1および共役ジエン重合体ブロックD1と、ブロック共重合体Bの芳香族ビニル重層体ブロックAr3および共役ジエン重合体ブロックD2とが、原料として共通の単量体単位を重合して得られたものであることをいうものである。
【0063】
3.ブロック共重合体組成物
ブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bのみからなるものであってもよいが、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B以外のブロック共重合体を含んでいてもよい。そのようなブロック共重合体の例としては、ブロック共重合体Aと異なる構成を有する芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルトリブロック共重合体や放射状芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ブロック共重合体成分において、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B以外のブロック共重合体が占める量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0064】
ブロック共重合体A、ブロック共重合体B、および場合によって含有されうるブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B以外のブロック共重合体からなるブロック共重合体成分において、当該ブロック共重合体成分全体に対して芳香族ビニル単量体単位が占める割合(以下の記載において、「全体の芳香族ビニル単量体単位含有量」という場合がある)は、10質量%〜50質量%の範囲内とすることができ、13質量%〜40質量%の範囲内であることが好ましく、15質量%〜37質量%の範囲内であることが好ましく、17質量%〜35質量%の範囲内であることがより好ましい。全体の芳香族ビニル単量体単位含有量が小さすぎると、ブロック共重合体組成物は、得られる粘着剤組成物が接着剤としての保持力に劣るものとなるおそれがあり、大きすぎると、得られる粘着剤組成物が硬質すぎるものとなり、接着力に劣るものとなるおそれがあるからである。
この全体の芳香族ビニル単量体単位含有量は、ブロック共重合体組成物を構成する各ブロック共重合体の芳香族ビニル単量体単位含有量を勘案し、各ブロック共重合体の配合量を調節することにより、容易に調節することが可能である。なお、ブロック共重合体組成物を構成する全ての重合体成分が、芳香族ビニル単量体単位および共役ジエン単量体単位のみにより構成されている場合であれば、Rubber Chem. Technol.,45,1295(1972)に記載された方法に従って、ブロック共重合体をオゾン分解し、次いで水素化リチウムアルミニウムにより還元すれば、共役ジエン単量体単位部分が分解され、芳香族ビニル単量体単位部分のみを取り出せるので、容易に全体の芳香族ビニル単量体単位含有量を測定することができる。
【0065】
ブロック共重合体全体組成物の重量平均分子量(Mw)、すなわち、ブロック共重合体A、ブロック共重合体B、および場合によって含有されうるブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B以外のブロック共重合体からなるブロック共重合体成分全体の重量平均分子量は、80000〜400000の範囲内であることが必要であり、85000〜280000の範囲内であることが好ましく、90000〜250000の範囲内であることが好ましい。上記重量平均分子量が上述の範囲内であることにより、ブロック共重合体組成物は、ホットメルト性および耐熱安定性に優れた粘着剤組成物を形成可能だからである。
また、このブロック共重合体組成物全体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、特に限定されないが、通常1.01〜10の範囲内であり、1.02〜5の範囲内であることが好ましく、1.03〜3の範囲内であることがより好ましい。
【0066】
ブロック共重合体組成物は、実質的にハロゲンを含有しないことが好ましい。
ここで、実質的にハロゲンを含有しないとは、ブロック共重合体組成物中のハロゲン含有量が、0.5質量%以下であるものとすることができ、0.1質量%以下であることが好ましく、0質量%であることが好ましい。ハロゲンを実質的に含有しないことにより、ブロック共重合体組成物は吸水性が低く透明性に優れたものとなるからである。
なお、ブロック共重合体組成物中のハロゲン含有量を低下する方法としては、ブロック共重合体組成物中の各ブロック共重合体を構成する単量体単位を構成するために用いられる単量体としてハロゲンを含む単量体の使用量を低減する方法、各ブロック共重合体をカップリング剤を用いて得る場合にはハロゲンを含むカップリング剤の使用量を低減する方法を挙げることができる。
【0067】
ブロック共重合体組成物の破断強度および破断伸びは、8MPa以下であり、かつ、破断伸びが2000%以下である。
本発明において、ブロック共重合体組成物の破断強度としては、8MPa以下であればよいが、好ましくは7.8MPa以下、より好ましくは7.6MPa以下、更に好ましくは7.5MPa以下である。
また、ブロック共重合体組成物の破断伸びとしては、2000%以下であればよいが、1800%未満、好ましくは1500%未満、より好ましくは1400%未満、更に好ましくは1300%未満である。
ブロック共重合体組成物の破断強度および破断伸びが上述の範囲内であることで、ブロック共重合体組成物は、ダイ切断性に優れた粘着剤組成物を得ることができるからである。
なお、破断強度および破断伸びは、それぞれ、170℃でプレス成型したブロック共重合体組成物の0.7mm厚のシートを用い、JIS K 6251に準じて、引張速度100m/minにおける切断時引張強さおよび切断時伸びを測定することで得ることができる。
【0068】
4.ブロック共重合体組成物の製造方法
本発明のブロック共重合体組成物の製造方法としては、特に限定されない。例えば、従来の重合法に従って、それぞれのブロック共重合体を別個に製造し、それらを混練や溶液混合などの常法に従って混合することにより、製造することができる。
本発明においては、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B同士の相溶性に優れたブロック共重合体組成物を得る観点から、上記製造方法が、次に述べるような、ブロック共重合体Bを得た後、一部のブロック共重合体Bの末端に芳香族ビニル重合体ブロックAr2を結合することでブロック共重合体Aを得る方法であること、すなわち、ブロック共重合体Bがブロック共重合体Aと同時に調製される方法であることが好ましい。
【0069】
すなわち、本発明で用いるブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bからなるブロック共重合体成分は、下記の(1)〜(5)の工程からなる製造方法を用いて製造することが好ましい。
【0070】
(1):溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合する工程
(2):上記(1)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に、共役ジエン単量体を添加する工程
(3):上記(2)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、重合停止剤を、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の活性末端に対して1モル当量未満となるように添加し、ブロック共重合体Bを形成する工程
(4):上記(3)の工程で得られる溶液に、芳香族ビニル単量体を添加し、ブロック共重合体Aを形成する工程
(5):上記(4)の工程で得られる溶液から、重合体成分を回収する工程
【0071】
上記の製造方法では、まず、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合する(工程(1))。用いられる重合開始剤としては、一般的に芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とに対し、アニオン重合活性があることが知られている有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、有機ランタノイド系列希土類金属化合物などを用いることができる。有機アルカリ金属化合物としては、分子中に1個以上のリチウム原子を有する有機リチウム化合物が特に好適に用いられ、その具体例としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ジアルキルアミノリチウム、ジフェニルアミノリチウム、ジトリメチルシリルアミノリチウムなどの有機モノリチウム化合物や、メチレンジリチウム、テトラメチレンジリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、イソプレニルジリチウム、1,4−ジリチオ−エチルシクロヘキサンなどの有機ジリチウム化合物、さらには、1,3,5−トリリチオベンゼンなどの有機トリリチウム化合物などが挙げられる。これらのなかでも、有機モノリチウム化合物が特に好適に用いられる。
【0072】
重合開始剤として用いる有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、n−ブチルマグネシウムブロミド、n−ヘキシルマグネシウムブロミド、エトキシカルシウム、ステアリン酸カルシウム、t−ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウム、t−ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ステアリン酸バリウム、エチルバリウムなどが挙げられる。また、他の重合開始剤の具体例としては、ネオジム、サマリニウム、ガドリニウムなどを含むランタノイド系列希土類金属化合物/アルキルアルミニウム/アルキルアルミニウムハライド/アルキルアルミニウムハイドライドからなる複合触媒や、チタン、バナジウム、サマリニウム、ガドリニウムなどを含むメタロセン型触媒などの有機溶媒中で均一系となり、リビング重合性を有するものなどが挙げられる。なお、これらの重合開始剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0073】
重合開始剤の使用量は、目的とする各ブロック共重合体の分子量に応じて決定すればよく、特に限定されないが、使用する全単量体100gあたり、通常、0.01ミリモル〜20ミリモル、好ましくは、0.05ミリモル〜15ミリモル、より好ましくは、0.1ミリモル〜10ミリモルである。
【0074】
重合に用いる溶媒は、重合開始剤に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、鎖状炭化水素溶媒、環式炭化水素溶媒またはこれらの混合溶媒が使用される。鎖状炭化水素溶媒としてはn−ブタン、イソブタン、1−ブテン、イソブチレン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、トランス−2−ペンテン、シス−2−ペンテン、n−ペンタン、イソペンタン、neo−ペンタン、n−ヘキサンなどの、炭素数4〜6の鎖状アルカンおよびアルケンを例示することができる。また、環式炭化水素溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物;を挙げることができる。これらの溶媒は、1種類を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0075】
重合に用いる溶媒の量は、特に限定されないが、重合反応後の溶液における全ブロック共重合体の濃度が、通常、5質量%〜60質量%、好ましくは10質量%〜55質量%、より好ましくは20質量%〜50質量%になるように設定する。
【0076】
各ブロック共重合体の各重合体ブロックの構造を制御するために、重合に用いる反応器にルイス塩基化合物を添加してもよい。このルイス塩基化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジンなどの第三級アミン類;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類などが挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられ、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
【0077】
また、重合反応時にルイス塩基化合物を添加する時期は特に限定されず、目的とする各ブロック共重合体の構造に応じて適宜決定すればよい。例えば、重合を開始する前に予め添加してもよいし、一部の重合体ブロックを重合してから添加してもよく、さらには、重合を開始する前に予め添加した上で一部の重合体ブロックを重合した後さらに添加してもよい。
【0078】
重合反応温度は、通常10℃〜150℃、好ましくは30℃〜130℃、より好ましくは40℃〜90℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常、48時間以内、好ましくは0.5時間〜10時間である。重合圧力は、上記重合温度範囲で単量体および溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されない。
【0079】
以上のような条件で、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合することにより、活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液を得ることができる。この活性末端を有する芳香族ビニル重合体は、ブロック共重合体Aの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)およびブロック共重合体Bの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar3)を構成することとなるものである。したがって、この際用いる芳香族ビニル単量体の量は、これらの重合体ブロックの目的とする重量平均分子量に応じて決定される。
【0080】
次の工程は、以上のようにして得られる活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に、共役ジエン単量体を添加する工程である(工程(2))。この共役ジエン単量体の添加により、活性末端から共役ジエン重合体鎖が形成され、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液が得られる。この際用いる共役ジエン単量体の量は、得られる共役ジエン重合体鎖が、目的とするブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D1)およびブロック共重合体Bの共役ジエン重合体ブロック(D2)の重量平均分子量を有するように決定される。
【0081】
次の工程では、以上のようにして得られる活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、重合停止剤を、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の活性末端に対して1モル当量未満となるように添加する(工程(3))。活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に重合停止剤と添加すると、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の活性末端が失活し、その結果、芳香族ビニル−共役ジエンジブロック共重合体であるブロック共重合体Bが形成される。
【0082】
この工程で添加される重合停止剤は、特に限定されず、従来公知の重合停止剤を特に制限無く用いることができる。特に好適に用いられる重合停止剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノールなどのアルコールが挙げられる。
【0083】
この工程で添加される重合停止剤の量は、活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の活性末端に対して、1モル当量未満となる量とする必要がある。次の工程であるブロック共重合体Aを形成する工程を行なうために、溶液中に活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体が残存させる必要があるからである。重合停止剤の量は、重合体の活性末端に対して0.10モル当量〜0.90モル当量であることが好ましく、0.15モル当量〜0.70モル当量であることがより好ましい。なお、この工程で添加される重合停止剤の量は、ブロック共重合体Bの量を決定するものであるので、重合停止剤の量は、目的とするブロック共重合体成分の組成に応じて決定すればよい。
【0084】
重合停止反応の反応条件は特に限定されず、通常は前述の重合反応条件と同様の範囲で設定すればよい。
【0085】
次の工程では、以上のようにして得られる溶液に、芳香族ビニル単量体を添加する(工程(4))。溶液に芳香族ビニル単量体を添加すると、重合停止剤と反応せずに残った活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体の末端から、芳香族ビニル重合体鎖が形成される。この芳香族ビニル重合体鎖は、ブロック共重合体Aの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)を構成することとなるものである。したがって、この際用いる芳香族ビニル単量体の量は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の目的とする重量平均分子量に応じて決定される。この芳香族ビニル単量体を添加する工程により、ブロック共重合体Aを構成することとなる、芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルトリブロック共重合体が形成され、その結果、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを含有する溶液が得られる。なお、この芳香族ビニル単量体を添加する工程の前に、重合停止剤と反応しなかった活性末端を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を含む溶液に、共役ジエン単量体を添加してもよい。このように共役ジエン単量体を添加すると、添加しない場合に比べて、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D1)の重量平均分子量を大きくすることができる。
【0086】
次の工程では、以上のようにして得られる溶液から、目的とする重合体成分を回収する(工程(5))。回収の方法は、常法に従えばよく、特に限定されない。例えば、反応終了後に、必要に応じて、水、メタノール、エタノール、プロパノール、塩酸、クエン酸などの重合停止剤を添加し、さらに必要に応じて、酸化防止剤などの添加剤を添加してから、溶液に直接乾燥法やスチームストリッピングなどの公知の方法を適用することにより、回収することができる。スチームストリッピングなどを適用して、重合体成分がスラリーとして回収される場合は、押出機型スクイザーなどの任意の脱水機を用いて脱水して、所定値以下の含水率を有するクラムとし、さらにそのクラムをバンドドライヤーあるいはエクスパンション押出乾燥機などの任意の乾燥機を用いて乾燥すればよい。以上のようにして得られるブロック共重合体成分は、常法に従い、ペレットなどに加工してから、ホットメルト粘着剤組成物などの製造に供してもよい。
【0087】
以上の製造方法によれば、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを同じ反応容器内で連続して得ることができるので、それぞれの重合体を個別に製造し混合する場合に比して、極めて優れた生産性で目的のブロック共重合体成分を得ることができる。
また、上記製造方法によれば、ブロック共重合体Aの芳香族ビニル重合体ブロックAr1およびブロック共重合体Bの芳香族ビニル重合体ブロックAr3の重量平均分子量を実質的に同一とすることができるので、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B同士の相溶性に優れたブロック共重合体組成物を得ることができる。
【0088】
B.粘着剤組成物
本発明の粘着剤組成物は、上述のブロック共重合体組成物と、軟化剤と、を含有することを特徴とするものである。
【0089】
本発明によれば、上述のブロック共重合体組成物を有することにより、粘着剤組成物は、ダイ切断性、軟化剤保持性、マンドレル特性および透明性に優れたものとなる。
【0090】
本発明の粘着剤組成物は、ブロック共重合体組成物および軟化剤を含有するものである。
以下、本発明の粘着剤組成物の各成分について説明する。
なお、ブロック共重合体組成物は、上記「A.ブロック共重合体組成物」の項に記載の同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0091】
1.軟化剤
軟化剤としては、例えば、芳香族系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル及びナフテン系プロセスオイル等の伸展油;ポリブテン及びポリイソブチレン等の液状重合体等が使用でき、これらの中でも、軟化剤としては、パラフィン系プロセスオイル及びナフテン系プロセスオイル等の伸展油が好ましい。
【0092】
軟化剤の配合量は、本発明のブロック共重合体組成物100質量部当たり好ましくは5質量部〜500質量部の範囲内、より好ましくは10質量部〜300質量部の範囲内、特に好ましくは10質量部〜150質量部の範囲内である。軟化剤が少なすぎると、粘着剤組成物は溶融粘度が高くなり取り扱いし難くなる傾向があり、逆に多すぎると、軟化剤がブリードし易くなる傾向にある。
【0093】
2.その他の成分
本発明の粘着剤組成物は、少なくともブロック共重合体組成物および軟化剤を含有するものであるが、必要に応じて、その他の成分を含有するものであってもよい。
このようなその他の成分としては、粘着付与樹脂、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B以外のエラストマー、酸化防止剤等の配合剤を含むことができる。
以下、このようなその他の配合剤について説明する。
【0094】
(1)粘着付与樹脂
本発明で使用する粘着付与樹脂としては、従来公知の天然樹脂系粘着付与樹脂、合成樹脂系粘着付与樹脂等が使用できる。
【0095】
天然樹脂系粘着付与樹脂としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等が挙げられる。
ロジン系樹脂としては、ガムロジン、トールロジン、ウッドロジン等のロジン類;水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等の変性ロジン類;変性ロジンのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等のロジンエステル類等が例示される。
テルペン系樹脂としては、α−ピネン系、β−ピネン系、ジペンテン(リモネン)系等のテルペン樹脂のほか、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が例示される。
【0096】
合成樹脂系粘着付与樹脂は、重合系粘着付与樹脂と縮合系粘着付与樹脂とに大別される。重合系粘着付与樹脂としては、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、共重合系(C5−C9系)石油樹脂、水素添加石油樹脂、脂環族系石油樹脂等の石油樹脂類;クマロン・インデン樹脂;スチレン系、置換スチレン系等のピュア・モノマー系石油樹脂が挙げられる。縮合系粘着付与剤としては、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等のフェノール系樹脂及びキシレン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、石油樹脂が好ましく、脂肪族系石油樹脂及び芳香族系単量体の共重合量が30質量%以下である共重合系石油樹脂がより好ましく、芳香族系単量体の共重合量が25質量%以下である共重合系石油樹脂が特に好ましい。
【0097】
粘着付与樹脂の配合量は、本発明のブロック共重合体組成物100質量部当たり、通常、10質量部〜500質量部の範囲内、好ましくは50質量部〜350質量部の範囲内、より好ましくは70質量部〜250質量部の範囲内である。
【0098】
(2)エラストマー
エラストマーとしては、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B以外のエラストマーであればよく、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン及び天然ゴム等が例示される。
エラストマーの配合量は、それぞれのエラストマーの特性、得ようとする粘着剤組成物に求められる特性に応じて適宜設定することができる。
【0099】
(3)酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール及びペンタエリスリチル・テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のヒンダードフェノール系化合物;ジラウリルチオジプロピオネート及びジステアリルチオジプロピオネート等のチオジカルボキシレートエステル類;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト及び4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト等の亜燐酸塩類等が挙げられる。
酸化防止剤の配合量は、それぞれの酸化防止剤の特性、得ようとする粘着剤組成物に求められる特性に応じて適宜設定することができる。
【0100】
3.粘着剤組成物
本発明の粘着剤組成物は、少なくともブロック共重合体組成物および軟化剤を含有し、必要に応じて、粘着付与樹脂、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体B以外のエラストマー、酸化防止剤等の配合剤を含むものであるが、さらに、ワックス、熱安定剤、紫外線吸収剤、充填剤など、その他の配合剤を添加することができる。
なお、本発明の粘着剤組成物は、溶剤を含まない、無溶剤の組成物であることが好ましい。
【0101】
本発明の粘着剤組成物は、ブロック共重合体組成物および軟化剤ならびに必要に応じて配合剤等を混合することにより製造することができる。
粘着剤組成物の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法が採用でき、例えば、各成分を、窒素雰囲気下、160℃〜180℃程度の高温で溶融混練して製造する方法が採用できる。
【0102】
本発明の粘着剤組成物の用途は、特に限定されず、各種の接着に用いることができるものであるが、なかでも、ラベルの粘着剤として特に好適に使用されるものである。例えば、本発明の粘着剤組成物は、加熱により溶融された後、ダイにより切断されて一定の大きさとされた上で、上質紙、アート紙、キャスト紙、サーマル紙、ホイル紙などの紙基材およびポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルム、セロファンフィルムなどのフィルム基材に塗工、または離型紙に塗工された後、基材に転写が行われることによりラベルが製造される。本発明の粘着剤組成物は、軟化剤保持性やダイ切断性が良好であることから、このようなラベルの製造における不良品率の削減および生産性の向上に寄与するものである。しかも、得られるラベルは、マンドレル特性および透明性に優れたものとなる。
得られるラベルの用途は、特に限定されないが、例えば、食品・飲料・酒類の容器包装への商品ラベルや可変情報ラベルとして用いることができる。また、物流、電気・精密機器、医薬・医療、化粧品・トイレタリー、文具・OA、自動車用のラベルとしても利用することができる。
【0103】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0104】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0105】
各種の測定については、以下の方法に従って行った。
【0106】
〔ブロック共重合体組成物およびブロック共重合体組成物中の各ブロック共重合体の重量平均分子量〕
流速0.35ml/分のテトラヒドロフランをキャリアとする高速液体クロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めた。装置は、東ソー社製HLC8220、カラムは昭和電工社製Shodex(登録商標)KF−404HQを3本連結したもの(カラム温度40℃)、検出器は示差屈折計および紫外検出器を用い、分子量の較正はポリマーラボラトリー社製の標準ポリスチレン(500から300万)の12点で実施した。
【0107】
〔ブロック共重合体組成物中の各ブロック共重合体の含有量〕
上記の高速液体クロマトグラフィにより得られたチャートの各ブロック共重合体に対応するピークの面積比から求めた。
【0108】
〔ブロック共重合体のスチレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
Rubber Chem. Technol.,45,1295(1972)に記載された方法に従い、ブロック共重合体をオゾンと反応させ、水素化リチウムアルミニウムで還元することにより、ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックを分解した。具体的には、以下の手順で行なった。すなわち、モレキュラーシーブで処理したジクロロメタン100mlを入れた反応容器に、試料を300mg溶解した。この反応容器を冷却槽に入れ−25℃としてから、反応容器に170ml/minの流量で酸素を流しながら、オゾン発生器により発生させたオゾンを導入した。反応開始から30分経過後、反応容器から流出する気体をヨウ化カリウム水溶液に導入することにより、反応が完了したことを確認した。次いで、窒素置換した別の反応容器に、ジエチルエーテル50mlと水素化リチウムアルミニウム470mgを仕込み、氷水で反応容器を冷却しながら、この反応容器にオゾンと反応させた溶液をゆっくり滴下した。そして、反応容器を水浴に入れ、徐々に昇温して、40℃で30分間還流させた。その後、溶液を撹拌しながら、反応容器に希塩酸を少量ずつ滴下し、水素の発生がほとんど認められなくなるまで滴下を続けた。この反応の後、溶液に生じた固形の生成物をろ別し、固形の生成物は、100mlのジエチルエーテルで10分間抽出した。この抽出液と、ろ別した際のろ液とをあわせ、溶媒を留去することにより、固形の試料を得た。このようにして得られた試料につき、上記の重量平均分子量の測定法に従い、重量平均分子量を測定し、その値をスチレン重合体ブロックの重量平均分子量とした。
【0109】
〔ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
それぞれ上記のようにして求められた、ブロック共重合体の重量平均分子量から、対応するスチレン重合体ブロックの重量平均分子量を引き、その計算値に基づいて、イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量を求めた。
【0110】
〔ブロック共重合体のスチレン単位含有量〕
上記の高速液体クロマトグラフィの測定における、示差屈折計と紫外検出器との検出強度比に基づいて求めた。なお、予め、異なるスチレン単位含有量を有する共重合体を用意し、それらを用いて、検量線を作成した。
【0111】
〔ブロック共重合体組成物(全体)のスチレン単位含有量〕
プロトンNMRの測定に基づき求めた。
【0112】
〔ブロック共重合体組成物の引張物性〕
170℃でプレス成型したブロック共重合体組成物の0.7mm厚シートを用い、JIS K 6251に準じて、引張速度100m/minにおける切断時破断強さ(破断強度)及び切断時伸び(破断伸び)を測定した。ダンベル形状はJIS−7113−2(1/2サイズ)を用いた。破断強度と破断伸びの値が共に小さいものほど、ラベルのダイ切断性に優れる。なお、測定には、テスター産業(株)製の「TE−701高速剥離試験機100mTYPE」を使用した。
【0113】
〔ラベル用粘接着剤組成物の透明性〕
試料としてラベル用粘接着剤組成物を脱水トルエンに溶解させることにより、25%溶液とした。この溶液について、(株)日立ハイテクノロジーズ製「日立分光光度計U−3010」を測定装置として用い、セルとして石英製10mmセルを用いて可視光透過率を測定した。この可視光透過率の値の大きいものほど透明性に優れる。
【0114】
〔ラベル用粘接着剤組成物の軟化剤保持性〕
試料として粘着テープを上質紙に貼り付けた後、50×50mmに切り抜いたものを、A4サイズの硝子板にはさみ、硝子板を複数枚重ねることによってその荷重が2kgとなるよう調整し、80℃の空気下で72時間エイジングした前後の明度(L)を測定し、L(エイジング前)/L(エイジング後)×100の値(%)を算出した。この値の大きいものほど、軟化剤保持性に優れる。なお、明度測定は、スガ試験機(株)製「S&M Colour Computer Model SM−7」を用いて、反射法で測定した。
【0115】
〔ラベル用粘着剤組成物の初期接着力〕
試料として幅25mmの粘着テープを用い、被着体として硬質ポリエチレン(HDPE)板を使用して、試験速度1000mm/min、接着部25×25mm、温度23℃にてループタック(N/25mm)を引張試験器にて評価した。値が大きいものほど、初期接着力に優れる。
【0116】
〔ラベル用粘着剤組成物の保持力〕
試料として幅10mmの粘着テープを用い、被着体として鏡面SUS板を使用して、PSTC−6(米国粘着テープ委員会による保持力試験法)に準じ、接着部10×25mm、負荷3.92×10
4Pa、温度50℃にて、剥がれるまでの時間(分)により、保持力を評価した。値が大きいものほど、保持力に優れており、マンドレル特性に優れると判断できる。
【0117】
〔実施例1〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAと称する)3.50ミリモルおよびスチレン1.75kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム116.7ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン7.0kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、停止剤としてメタノール82.3ミリモルを添加して0.5時間一部停止反応を行い、スチレン−イソプレンジブロック共重合体(B)を形成させた。この後、50〜60℃を保つように温度制御しながら、スチレン1.25kgを0.5時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(A)を形成させた。イソプレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール233.4ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。なお、反応に用いた各試剤の量は、表1にまとめた。以上のようにして得られた反応液100部(重合体成分を36部含有)に、酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.36部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得て、この析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、実施例1の組成物(ブロック共重合体組成物)を回収した。なお、得られた前記反応液の一部を取り出し、ブロック共重合体組成物(全体)の重量平均分子量、含有される各ブロック共重合体の重量平均分子量、ブロック共重合体組成物中の各ブロック共重合体の含有量、各ブロック共重合体のスチレン重合体ブロックの重量平均分子量、各ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックの重量平均分子量、各ブロック共重合体のスチレン単位含有量、ブロック共重合体組成物(全体)のスチレン単位含有量を求めた。また、得られたブロック共重合体組成物を170℃にてプレス成形することで0.7mm厚のシートを作製し、引張物性を評価した。結果を表2に示す。
【0118】
〔実施例2〜3〕
スチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、イソプレン、およびメタノールの量を、それぞれ表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2と3の組成物を回収した。実施例2と3の組成物については、実施例1と同様の測定を行った。結果を表2に示す。
【0119】
〔比較例1〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、TMEDA3.75ミリモルおよびスチレン1.7kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム125.0ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン8.4kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、カップリング剤としてジメチルジクロロシラン(2官能性カップリング剤)27.50ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行った後、反応器に重合停止剤としてメタノールを187.5ミリモル添加して1時間重合停止反応を行った。反応に用いた各試剤の量は、表1にまとめた。得られた反応液の一部を取り出し、実施例1と同様の測定を行なった。これらの値は、表2に示した。以上のようにして得られた反応液100部(重合体成分を30部含有)に、酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得て、この析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、比較例1の組成物を回収した。得られた組成物につき、実施例1と同様にして引張物性を評価した。結果を表2に示す。
【0120】
〔比較例2〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、TMEDA2.50ミリモルおよびスチレン0.9kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム83.33ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50〜60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン8.2kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、さらにスチレンを0.9kg添加して反応を行った後、反応器に重合停止剤としてメタノールを125.0ミリモル添加して1時間重合停止反応を行った。反応に用いた各試剤の量は、表1にまとめた。得られた反応液の一部を取り出し、実施例1と同様の測定を行なった。これらの値は、表2に示した。以上のようにして得られた反応液100部(重合体成分を30部含有)に、酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得て、この析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、比較例2の組成物を回収した。得られた組成物につき、実施例1と同様にして引張物性を評価した。結果を表2に示す。
【0121】
〔比較例3−1〕
スチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、イソプレン、ジメチルジクロロシランおよびメタノールの量を、それぞれ表1に示すように変更したこと以外は比較例1と同様にして、比較例3−1の組成物を回収した。比較例3−1の組成物については、比較例3−2の組成物と混合後、実施例1と同様の測定を行った。結果を表2に示す。
【0122】
〔比較例3−2〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kgおよびTMEDA12.50ミリモルを添加し、40℃で攪拌しているところに、n−ブチルリチウム416.67ミリモルを添加し、50℃〜60℃を保つようにイソプレン10.0kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合しポリイソプレンホモポリマーを形成させた。イソプレンの重合転化率は100%であった。この後、重合停止剤としてメタノール625.01ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。なお、反応に用いた各試剤の量は、表1にまとめた。以上のようにして得られた反応液100部(重合体成分を30部含有)に、酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を60℃で真空乾燥することにより、比較例3−2の組成物(ポリイソプレン)を回収した。比較例3−2の組成物については、比較例3−1の組成物と混合後、実施例1と同様の測定を行った。その結果を表2に示す。なお、表2においては、比較例3−1の組成物(70部)と比較例3−2の組成物(30部)とを混合して得られた組成物を用いて得られた結果を比較例3として示す。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
〔実施例4〕
実施例1で得られた組成物100部を攪拌翼型混練機に投入し、これに粘着付与樹脂(商品名「クイントン(登録商標)D100」、脂肪族芳香族共重合系炭化水素樹脂、日本ゼオン(株)製)150部、軟化剤(商品名「サンピュアN90」、ナフテン系プロセスオイル、日本興産(株)製)50部および酸化防止剤(商品名「イルガノックス(登録商標)1010」、BASF社製)3部を添加して系内を窒素ガスで置換したのち、160〜180℃で1時間混練することにより、実施例4のラベル用粘着剤組成物を調製した。当該ラベル用粘着剤組成物を試料として透明性を評価した。次いで、厚さ25μmのポリエステルフィルムに得られたラベル用粘着剤組成物を塗工し、これにより得られた試料(粘着テープ)について、軟化剤保持性、初期接着力及び保持力を評価した。結果を表3に示す。
【0126】
〔実施例5〜6,比較例4〜6〕
実施例2〜3の組成物および比較例1〜3の組成物をそれぞれ用いたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例5〜6および比較例4〜6のラベル用粘着剤組成物を調製した。得られたラベル用粘着剤組成物は、実施例4と同様に評価を行なった。結果を表3に示す。
【0127】
【表3】
【0128】
表2と表3から、以下のようなことが分かる。すなわち、本発明のラベル用粘着剤組成物は、低い破断強度および破断伸びを示す、本発明のブロック共重合体組成物を主成分としたものであり、透明性及び軟化剤保持性に優れ、また、初期接着力や保持力が良好で、粘着性能とダイ切断性能の両方に優れたものであることが分かる(実施例4〜6)。これに対して、本発明のブロック共重合体組成物を含有しないラベル用粘着剤組成物では、上記物性の性能バランスに劣る(比較例4〜6)。