(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記乾燥用ガスの供給位置が、前記乾燥用液体の供給位置よりも、前記基板の径方向中央側寄りに位置するように、これら乾燥用液体及び乾燥用ガスの供給位置を移動させる、請求項2または3に記載の液処理方法。
前記制御部は、前記乾燥用液体ノズルを移動させるステップと、前記乾燥用ガスノズルを移動させるステップと、を並行して実施するように構成される、請求項5に記載の基板処理装置。
前記制御部は、前記乾燥用ガスノズルの位置が、前記乾燥用液体ノズルの位置よりも、前記処理対象の基板の径方向中央側寄りに位置するように、これら乾燥用液体ノズル及び乾燥用ガスノズルを移動させるように構成される、請求項6または7に記載の基板処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0011】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0012】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、本実施形態では半導体ウエハ(以下ウエハW)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0013】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウエハWの搬送を行う。
【0014】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0015】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウエハWの搬送を行う。
【0016】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウエハWに対して所定の基板処理を行う。
【0017】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0018】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0019】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウエハWを取り出し、取り出したウエハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウエハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0020】
処理ユニット16へ搬入されたウエハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウエハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0021】
図2に示すように、処理ユニット16は、チャンバ20と、基板保持機構30と、処理流体供給部40と、回収カップ50とを備える。
【0022】
チャンバ20は、基板保持機構30と処理流体供給部40と回収カップ50とを収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
【0023】
基板保持機構30は、保持部31と、支柱部32と、駆動部33とを備える。保持部31は、ウエハWを水平に保持する。支柱部32は、鉛直方向に延在する部材であり、基端部が駆動部33によって回転可能に支持され、先端部において保持部31を水平に支持する。駆動部33は、支柱部32を鉛直軸まわりに回転させる。かかる基板保持機構30は、駆動部33を用いて支柱部32を回転させることによって支柱部32に支持された保持部31を回転させ、これにより、保持部31に保持されたウエハWを回転させる。
【0024】
処理流体供給部40は、ウエハWに対して処理流体を供給する。処理流体供給部40は、処理流体供給源70に接続される。
【0025】
回収カップ50は、保持部31を取り囲むように配置され、保持部31の回転によってウエハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ50の底部には、排液口51が形成されており、回収カップ50によって捕集された処理液は、かかる排液口51から処理ユニット16の外部へ排出される。また、回収カップ50の底部には、FFU21から供給される気体を処理ユニット16の外部へ排出する排気口52が形成される。
【0026】
上述の基板処理システムに設けられている処理ユニット16は、本発明の実施の形態に係る基板処理装置に相当する。処理ユニット16は、薬液やリンス液による処理が行われた後の回転するウエハWに対し、乾燥液(乾燥用液体)であるIPAを供給した後、ウエハWを乾燥させる構成を備えている。薬液やリンス液、乾燥液は、本実施の形態の処理液に相当する。
以下、
図3を参照しながら、当該構成について説明する。
【0027】
本例の処理ユニット16において既述の処理流体供給部40は、基板保持機構30に保持されたウエハWに対して、薬液の供給を行う薬液ノズル413と、リンス液であるDIW(Deionized Water)の供給を行うDIWノズル412と、IPAの供給を行うIPAノズル411とを備えている。
【0028】
本例において上述の各ノズル411〜413は共通の第1ノズルアーム41の先端部に設けられている。第1ノズルアーム41の基端部側は、保持部(基板保持部)31に保持されたウエハWの中央部の上方側の位置と、当該ウエハWの上方位置から側方へと退避した位置との間でこれらのノズル411〜413を移動させるためのガイドレール42に接続されている。ガイドレール42には、第1ノズルアーム41を移動させるための駆動部421が設けられている。ここで、
図3中、側方へと退避した第1ノズルアーム41を実線で示し、ウエハWの中央部の上方側へ進入した第1ノズルアーム41を破線で示してある。
【0029】
薬液ノズル413は、開閉バルブV3を介して薬液供給源73に接続されている。薬液供給源73からは、ウエハWの処理の目的に応じて1種または複数種の薬液が供給される。本実施形態においては、1種類の薬液で記載している。薬液ノズル413からは、開閉バルブV3を介して薬液が供給される。
【0030】
DIWノズル412は、開閉バルブV2を介してDIW供給源72に接続されている。DIWノズル412からは、開閉バルブV2を介してDIWが供給される。
DIWノズル412、開閉バルブV2やDIW供給源72は、本例のリンス液供給部に相当する。
【0031】
IPAノズル411は、開閉バルブV1を介してIPA供給源71に接続されている。IPAノズル411からは、IPA供給の直前にウエハWに対して供給されている処理液、例えばDIWよりも揮発性が高い乾燥液であるIPAが、バルブV1を介して供給される。
IPAノズル411、開閉バルブV1やIPA供給源71は、本例の乾燥用液体供給部に相当する。
【0032】
さらに
図3に示すように処理ユニット16は、乾燥液が供給された後のウエハWの表面に、乾燥用ガスとして不活性ガスである窒素(N
2)ガスを供給するためのN
2ノズル431を備えている。
本例のN
2ノズル431は、IPAノズル411などが設けられた既述の第1ノズルアーム41とは異なる第2ノズルアーム43の先端部に設けられている。第2ノズルアーム43の基端部側は、保持部31に保持されたウエハWの中央部の上方側の位置と、当該ウエハWの上方位置から側方へと退避した位置との間でN
2ノズル431を移動させるためのガイドレール44に接続されている。ガイドレール44には、第2ノズルアーム43を移動させるための駆動部441が設けられている。
図3中、側方へと退避した第2ノズルアーム43を実線で示し、ウエハWの中央部の上方側へ進入した第2ノズルアーム43を破線(既述の第1ノズルアーム41と共通の破線)で示してある。
N
2ノズル431は、開閉バルブV4を介してN
2供給源74に接続されている。
【0033】
さらに本実施の形態に係る処理ユニット16は、処理容器であるチャンバ20内に、FFU21から取り込んだ清浄空気(大気)と、この清浄空気よりも湿度が低い低湿度ガスであるCDA(Clean Dry Air)とを切り替えて供給することができる。
以下、
図4を参照しながら、チャンバ20に対する給気、排気系統について説明する。なお、図示の便宜上、
図4において各ノズル411〜414が設けられたノズルアーム41、43やその駆動機構(ガイドレール42、44、駆動部421、441)の記載は省略してある。
【0034】
本例の処理ユニット16において
図2に示したFFU21は、より詳細には
図1に示す基板処理システム1の天井部などに配置され、当該FFU21にて取り込んだ清浄空気を、基板処理システム1内の複数の処理ユニット16に分配して供給する構成となっている(
図4)。
【0035】
図4に示すように各処理ユニット16には、FFU21から分配供給される清浄空気を受け入れるためのガス供給ライン211と、ガス供給ライン211から受け入れた清浄空気を、チャンバ20内に供給して清浄空気のダウンフローを形成するためのガス拡散部213と、が設けられている。
ガス供給ライン211は、FFU21と、各処理ユニット16との間に設けられる。
【0036】
ガス拡散部213は処理ユニット16を構成するチャンバ20の天井面を覆うように設けられ、当該天井面の上方側に、ガス供給ライン211から供給された清浄空気を拡散させる空間を形成する。ガス拡散部213によって覆われたチャンバ20の天井面の全面には、多数のガス供給孔214が設けられ、これらガス供給孔214を介してチャンバ20内に清浄空気が供給される。
【0037】
さらに上述のガス供給ライン211、ガス拡散部213に対しては、FFU21から供給される清浄空気と切り替えて、清浄空気よりも湿度が低いCDAを供給することができる。
即ち
図4に示すように、各処理ユニット16のガス供給ライン211上には、切替弁215が介設され、この切替弁215に対して、CDAの供給を行うためのCDA供給ライン222が接続されている。CDA供給ライン222には開閉弁V5が介設され、その上流側はCDA供給源221に接続されている。
【0038】
CDAは、エアフィルターなどを用いてパーティクルや不純物を取り除いて得られた清浄空気に対し、さらに吸着処理や冷却処理などを行って水分を除去したものが用いられる。
【0039】
例えば、CDAを供給している期間中のチャンバ20内の湿度目標値を飽和水蒸気量の1質量%(0℃、1気圧の標準状態換算値。以下、同じ)としたとき、CDA供給源221からは1%よりも低湿度のCDAが供給される。
CDA供給ライン222やCDA供給源221、またCDAを受け入れている期間中の切替弁215の下流側のガス供給ライン211やガス拡散部213は、本例の低湿度ガス供給部に相当する。
【0040】
ガス拡散部213よりチャンバ20内に供給された清浄空気やCDAは、ダウンフローとなってチャンバ20内を流下し、その一部は回収カップ50内に流れ込み、当該回収カップ50の底部に設けられた既述の排気口52を介して外部の排気部23へ向けて排気される。
また、回収カップ50内に流れ込まなかった清浄空気やCDAは、例えばチャンバ20の底部に設けられたチャンバ排気口201を介して外部の排気部23へ向けて排気される。
【0041】
上述の構成を備える処理ユニット16には、さらにチャンバ20内の湿度を測定するための湿度測定部である湿度計24が設けられている。例えば湿度計24は、湿度測定を実行するセンサ部241と、センサ部241にて測定されたチャンバ20内の湿度を電気信号に変換し、制御部18へ向けて出力する本体部242とを備えている。湿度計24は、チャンバ20内の湿度測定を行うことができれば、具体的な湿度測定方式に関する特段の限定はなく、例えば抵抗変化型や静電容量型のものを採用することができる。
【0042】
図4に示すようにセンサ部241は、例えば側壁部を介してチャンバ20内に挿入されている。チャンバ20内においてセンサ部241は、ウエハWの表面と接するチャンバ20内のガスが、当該ウエハWの全面において湿度目標値以下となっていることを検出できる位置に配置することが望ましい。この観点において、センサ部241は、回収カップ50の上部側の高さ位置であって、保持部31に保持された基板の径方向外側の位置である、回収カップ50の外方側に配置されている。
【0043】
回収カップ50の外方側の位置は、チャンバ20内のガスの滞留が発生しやすく、基板保持機構30に保持されたウエハWの上面側よりも湿度が多くなる傾向がある。従って、回収カップ50の外方側にて測定した湿度測定値が、湿度目標値以下となっている場合には、ウエハWの上面側も湿度目標値以下のガス雰囲気が確立されているといえる。そこで本例のセンサ部241は、基板搬送装置17と基板保持機構30との間でのウエハWの受け渡し動作と干渉せず、且つ、ウエハWの上面側が湿度目標値以下となっていることを確認できる位置に配置されている。
【0044】
以上に説明した処理ユニット16において、
図3に示す各ノズル411〜413、431のウエハWの上方側の位置や当該上方側の位置から退避した位置への移動、各供給源71〜74からの流体の供給/停止や流量の制御、
図4に示すFFU21やCDA供給源221からチャンバ20へ供給される清浄空気/CDAの切り替えは、既述の制御部18によって実行される。
【0045】
さらに本例の処理ユニット16は、湿度計24にてチャンバ20内の湿度を測定した結果に基づいて、ウエハWに対して実行される処理の進行を調節する機能を備えている。
以下、
図5〜
図8を参照し、処理ユニット16にて実行される動作の詳細について説明する。
【0046】
初めに、
図5(a)〜(e)を参照して、ウエハWに対して実施される処理の概要を説明する。
基板搬送機構17により処理ユニット16内に搬入されたウエハWが、保持部31に設けられた保持ピン311によって保持されると、側方へ退避していた第1ノズルアーム41をウエハWの上方側へ進入させ、薬液ノズル413、DIWノズル412をウエハWの中心部の上方位置に配置する。しかる後、ウエハWを所定の回転速度で回転させて薬液ノズル413より薬液を供給し、薬液処理を行う(
図5(a))。
【0047】
所定の薬液による処理を終えたら、薬液処理後のウエハWを回転させたまま、薬液ノズル413からの薬液の供給を停止すると共に、DIWノズル412からDIWを供給し、リンス処理を実行する(
図5(b))。所定時間、リンス処理を実行したら、ウエハWを回転させたままDIWノズル412からのDIWの供給を停止すると共に、IPAノズル411からIPAを供給してDIWとの置換を行う(
図5(c))。
【0048】
このとき、IPAノズル411からは、ウエハWの中心部に向かってIPAを供給する。供給されたIPAは、遠心力の作用によりウエハWの表面を広がり、ウエハWの表面全体にIPAの液膜が形成される。このようにIPAの液膜を形成することにより、リンス処理の際にウエハWの表面に供給されたDIWをIPAと混合、置換することができる。
【0049】
ウエハWの表面のDIWがIPAに置換されたら、ウエハWの中心部にIPAが供給される位置よりも側方(例えばウエハWの中心部から半径方向に数十mm程度移動した位置)までIPAノズル411を移動させる。この結果、IPAノズル411から供給されたIPAが到達しないウエハWの中心部からは、遠心力の作用によりIPAが流出し、液膜の存在しない領域(以下、「コア」ともいう)が形成される(
図5(d)、第1乾燥処理)。
【0050】
上述のIPAノズル411の移動動作に合わせて、側方へと退避していた第2ノズルアーム43をウエハWの上方側へ進入させ、ウエハWの中心部の上方位置にN
2ノズル431を配置する。そして、前述のコアが形成されたら、当該コアに向けてN
2ガスを供給し、ウエハWの表面の乾燥を促進させる。
【0051】
その後、ウエハWの回転、IPAノズル411からのIPAの供給、N
2ノズル431からのN
2ガスの供給を継続しつつ、これらのノズル411、431をウエハWの中心部側から周縁部側へと、例えば反対方向に移動させる。このときのスキャン動作において、N
2ノズル431からのN
2ガスの供給位置は、IPAノズル411からのIPAの供給位置よりもウエハWの径方向、中央部側に位置するように、各ノズルアーム41、43の移動動作が制御されている。
【0052】
IPAの供給位置のスキャン動作に伴って、IPAの液膜がウエハWの周縁部側へ押し流されて除去され、液膜の形成されていない領域が広がる。またN
2ガスの供給位置のスキャン動作に伴って、IPAの液膜が押し流された後のウエハWの表面にN
2ガスが吹き付けられ、当該領域の乾燥が完了する(
図5(e)、第2乾燥処理)。
【0053】
IPAの供給位置がウエハWの周縁に到達したら、IPAノズル411からのIPAの供給を停止する。続いてN
2ガスの供給位置がウエハWの周縁に到達したら、N
2ノズル431からのN
2ガスの供給を停止する。
図5(a)〜(e)に示したウエハWの処理において、
図5(a)〜(c)までが本例の処理液供給工程に相当し、ウエハWの表面のIPAの液膜の一部を除去してコアを形成する動作(ウエハWの中心部に供給する乾燥液を停止する動作)以降の第1、第2乾燥処理は乾燥工程に相当する(
図5(d)、(e))。
【0054】
上述の動作により、ウエハWの全面からDIWがIPAによって置換、除去され、乾燥したウエハWを得ることができる。
ウエハWの乾燥終了後、各ノズルアーム41、43を側方側へ退避させ、ウエハWの回転を停止した後(搬出前動作)、基板搬送装置17により、処理が完了したウエハWを処理ユニット16から取り出す。こうして、処理ユニット16におけるウエハWに対する一連の処理が終了する。
【0055】
ここで、本例の処理ユニット16においては、
図5(a)〜(e)を用いて説明した処理の内容に応じて、チャンバ20に供給される気体が、清浄空気と、低湿度ガスであるCDAとの間で切り替えられる。さらには、チャンバ20内の湿度が予め設定した湿度目標値以下とならなければ、乾燥処理が開始されない。
【0056】
以下、
図6〜
図8を参照しながら、チャンバ20に供給される気体の切り替えと、湿度計24を用いて測定したチャンバ20内の湿度測定値に基づいて、ウエハWに実施する処理の進行を調節する動作との詳細について説明する。
ここで
図6は、ウエハWに対する処理の進行を調節する動作の流れを示すフロー図である。また
図7、
図8は、ウエハWの処理期間中のタイムチャートである。2つのタイムチャートのうち、
図7は予め設定した切替タイミングが経過した時点で、チャンバ20内が湿度目標値に到達している場合を示し、
図8は前記切替タイミングの経過後にチャンバ20内が湿度目標値に到達した場合を示している。切替タイミングは、ウエハWの中心部へのIPAの供給を止めて乾燥処理に切り替える切替動作を行う時点である(但し、
図5(d)に示すように、コアの外側位置へのIPAの供給は継続している)。なお
図7、
図8(a)は、既述の
図5(a)〜(e)に対応する処理の内容を示し、
図7、
図8(b)はチャンバ20に供給される気体の種類を示している。また、
図7、
図8(c)はチャンバ20内の湿度測定値の経時変化を示している。
【0057】
図7(a)、(b)のタイムチャートによると、薬液処理(
図5(a))の期間中、チャンバ20に対してはFFU21からの清浄空気が供給される。次いで、ウエハWに対する処理がリンス処理(
図5(b))に切り替えられた後、気体変更動作が行われるが、予め設定された気体変更タイミング(1)が経過するまでは、チャンバ20への清浄空気の供給を継続する。次いで、前記気体変更タイミング(1)が経過したら、上記リンス処理の期間中に、チャンバ20へ供給する気体をCDAに変更する気体変更動作を行う(低湿度ガス供給工程)。気体の切り替えに伴い、湿度計24による湿度測定値は次第に低下していく(
図7(c))。
【0058】
ここで、気体変更動作を実行するタイミングは、
図7(c)に示した例のようにリンス処理の実行期間中に設定する場合に限定されるものではない。例えば予備実験などにより、CDAの供給を開始してから、チャンバ20内の湿度が湿度目標値以下となるまでの時間(湿度が湿度目標値以下となると予測される予測時間)を求め、この予測時間を元に気体変更動作を行うことが好ましい。具体例としては、前記切替タイミングから、予測時間を逆算して気体変更動作の変更タイミングの設定を行うことができる。このように、気体変更動作を開始して乾燥処理が開始されるまでに、前記湿度が湿度目標値以下となるのであれば、IPA供給を開始した後に気体変更動作を開始してもよい。なお、上述の例よりも早いタイミングにて気体変更動作を実行してもよいが、CDAの消費量が増えるおそれがある。また、気体変更動作の開始をさらに前倒しして、薬液処理実行中に気体変更動作を開始することも考えられるが、例えば薬液がエッチング液などである場合は、エッチングの面内均一性を悪化させてしまうおそれがあり好ましくない。
【0059】
そして、所定時間、リンス処理を実行したら、ウエハWに供給する処理液をIPAに切り替え、ウエハWの表面にIPAの液膜を形成する(
図5(c)、
図7(a)のIPA供給)。
以降の動作について、
図6のフロー図も参照しながら説明する(
図6のスタート)。IPA供給を開始し、ウエハWの表面にIPAの液膜を形成する(
図6のステップS101)。
【0060】
しかる後、ウエハWの中心部へIPAの供給を止めて(IPAノズル411を移動させ、ウエハWの中心部にコアを形成して)、乾燥処理に切り替える動作を行う予定の切替タイミングが経過したら、湿度計24によりチャンバ20内の湿度を測定して得られた湿度測定値が、予め設定された湿度目標値(例えば1質量%)以下となっているか否かを確認する(ステップS102)。
【0061】
図7(c)に示すように、切替タイミングの前にチャンバ20内の湿度測定値が湿度目標値に到達している場合には(
図6のステップS102;YES)、IPAノズル411を移動させて既述のコアの形成する乾燥処理を開始する(ステップS103)。そして、
図5(d)、(e)を用いて説明した手法にて乾燥処理を実行した後、処理後のウエハWを搬出する動作に移る(
図6のエンド)。
なお、例えばウエハWの乾燥処理が完了した後の所定の気体変更タイミング(2)にて、チャンバ20に供給される気体は、FFU21からの清浄空気に切り替えられる(
図7(a))。
【0062】
一方、
図8(c)に示すように、切替タイミングが経過してもチャンバ20内の湿度測定値が湿度目標値に到達していない場合には(
図6のステップS102;NO、S104;NO)、IPA供給を継続するIPA継続供給を行う(ステップS105)。当該動作により、チャンバ20内の湿度測定値が湿度目標値に到達するまでは、ウエハWの表面にIPAの液膜が形成された状態が維持される。
なお参考として、
図8(c)には、
図7(c)における湿度測定値の経時変化を一点鎖線で示してある。
【0063】
そしてチャンバ20内の湿度測定値が湿度目標値に到達した場合には(
図6のステップS102;YES)、既述の
図7と同様の手順により、乾燥処理以降の動作を実行する(
図6のステップS103→エンド、
図8)。
【0064】
これに対して、IPA供給継続が行われてから予め設定された継続時間を経過してもチャンバ20内の湿度測定値が湿度目標値に到達しない場合には(
図6のステップS102;NO→ステップS104;YES)、IPA継続供給を終了し、チャンバ20内の湿度が湿度目標値よりも高い雰囲気下で乾燥処理を実行する(ステップS106)。継続時間は、IPA供給継続の開始から、例えば1分〜数分程度に設定される。
【0065】
ここで湿度が高い雰囲気下で乾燥処理されたウエハWに対しては、ウエハW表面への結露に基づくウォーターマークの形成やパターン倒壊が発生しているおそれがある。
そこで、当該処理ユニット16について、所定の時間内(本例ではIPA供給を開始してから継続時間が経過するまでの時間)にチャンバ20内の湿度が湿度目標値に到達しなかった旨のアラームを発報する(ステップS107)。アラームは、基板処理システム1に設けられているスピーカー(不図示)からアラーム音を発報してもよいし、基板処理システム1の操作画面(不図示)にアラーム画面を表示してもよい。さらに、湿度が高い雰囲気下で乾燥処理が行われたウエハWに対しては、その旨の情報を付し、キャリアCに収容される製品ウエハWから隔離したり、ウォーターマークやパターン倒壊の発生の状況を確認する追加検査を行ったりする。
【0066】
以上に説明した本実施の形態に係る処理ユニット16によれば以下の効果がある。液処理が行われるチャンバ20の湿度を測定して得られた湿度測定値が、予め設定された湿度目標値を以下となった後にウエハWの乾燥処理を開始する。この結果、CDAによるチャンバ20内の置換が不十分な状態でウエハWの乾燥を行うことに起因するウエハWへの影響(ウォーターマークの形成やパターン倒壊の発生)を低減できる。
【0067】
ここで、湿度計24を用いてチャンバ20内の湿度を測定した結果に基づき乾燥処理を実行するタイミングを調節する手法は、
図6〜
図8を用いて説明した例に限定されない。
例えば
図9に示すように、チャンバ20内の湿度が湿度目標値以下となったら、切替タイミングの経過を待たずに乾燥処理の開始タイミングを前倒ししてもよい(
図9のステップS101→ステップS102;YES→ステップS103、
図10)。
【0068】
ここで既述の
図6においては、乾燥処理の開始タイミングを遅らせる例を説明したので、
図9には、乾燥処理の開始タイミングの前倒しのみを行う例を示してある。従って本例では、継続時間の設定を省略し、切替タイミングとなったらチャンバ20内の湿度が目標値に到達しているか否かに係らず乾燥処理を開始している(
図9のステップS104’;YES→ステップS106)。その後、
図6の継続時間以降の処理と同様にアラーム発報を行ってもよい(ステップS107)。
【0069】
また
図6〜
図8、
図9〜
図10を用いて説明した例の如く、予めIPA供給から乾燥処理への「切替タイミング、継続時間」を設定しておくタイミング管理を行うことも必須ではない。
例えば「チャンバ20内の湿度が湿度目標値以下のとなったか否か」という判断基準のみに基づいて、IPA供給から乾燥処理への処理の切り替えタイミングを適宜、変化させてもよい。
【0070】
これらに加え、処理ユニット16に設けられた湿度計24は、処理液を用いた処理液供給工程(
図5(a)〜(c))を実施した後の乾燥工程(
図5(d)、(e))の開始タイミングの判断以外にも利用することができる。
例えば、処理ユニット16にてウエハWの処理を行っていない待機期間中に、チャンバ20に供給する気体を清浄空気からCDAへと切り替え、湿度計24による湿度測定値が予定通り(例えば、切替タイミングに対応する時間の経過までに)湿度目標値以下となるか否かを確認する確認運転を行ってもよい。またこのとき、チャンバ20内がウエハWの処理時と同じ状態となるように、ウエハWを保持しない状態で基板保持機構30を回転させたり、ダミーウエハWを用いて
図5(a)〜(e)に示した処理を実行したりしてもよい。
【0071】
上述の確認運転において、湿度目標値の経時変化が通常とは異なる場合には、低湿度ガス供給部であるCDAの供給系統(CDA供給ライン222やCDA供給源221、CDA受け入れ期間中の切替弁215の下流側のガス供給ライン211やガス拡散部213)やチャンバ20の排気系統(排気口52、チャンバ排気口201や排気部23)における設備トラブルなどを事前に把握できる場合がある。
【0072】
このほか、回収カップ50の外方側の位置とは別の位置にセンサ部241を設けてもよい。例えば基板保持機構30に保持されたウエハWの上方位置と、当該上方位置から退避した位置との間で湿度計24のセンサ部241を移動自在に構成してもよい。この場合は、基板保持機構30に対するウエハWの受け渡し時などにおいては、センサ部241を退避位置まで退避させ、乾燥工程の開始の判断時にセンサ部241をウエハWの上方側まで移動させて、ウエハWの表面近傍の雰囲気が湿度目標値以下となっていることを確認してから乾燥工程を開始することができる。
【0073】
次いで、
図11を参照しながらウエハWの裏面に加熱用の気体を供給する加熱機構について説明する。例えばIPAなどの揮発性の乾燥液を用いる乾燥処理においては、乾燥液から気化熱を奪われてウエハWの温度が低下し、結露を引き起こしてしまう場合がある。そこで従来の処理ユニット16においては、
図3、
図4や
図11に示すように保持部31の周縁部に設けられた複数の保持ピン311を用いて、保持部31との間に隙間が形成されるようにウエハWを保持し、当該隙間へ向けて例えば60〜80℃程度に加熱されたDIWなどを供給することにより、ウエハWの温度低下を防止していた。
しかしながら、乾燥処理時のウエハWの加熱にDIWを用いてしまうと、ウエハWから排出されたIPAとDIWの混合液は、排水として処理しなければならず、排液処理の負荷の増大につながる。
【0074】
そこで
図11に示す例においては、ウエハWの上面側に供給される乾燥液と同じ物質、本例ではIPAの加熱蒸気を用いてウエハWの加熱を行う構成となっている。即ち、支柱部32には加熱ガス流路321が形成され、この加熱ガス流路321は、気化部811、開閉弁V6を介して加熱用IPA供給源81に接続されている。加熱用IPA供給源81は、IPAノズル411に接続されたIPA供給源71と共通であってもよいし、別体として構成してもよい。気化部811は、例えば100℃に加熱されたIPA蒸気を得るための不図示の加熱部と、液体の状態で供給され、加熱されて気体となった後、100℃まで昇温されるIPAが流れる不図示の加熱空間とを備える。加熱ガス流路321、気化部811、開閉弁V6や加熱用IPA供給源81は、加熱気体供給部を構成している。
【0075】
上述の構成によれば、IPAの供給位置を移動させ、またIPAの除去後、N
2ガスが吹き付けられるウエハWの下面側に、加熱用のIPA蒸気を供給することにより、IPAが除去された領域のウエハWの温度を水分の露点温度よりも高い温度に加熱することができる。特に、IPA蒸気は、IPAの沸点である約82℃よりも高温に加熱することができるので、ウエハWの加熱効果が高い。さらに、加熱IPAがウエハWなどと接触して冷却され液化しても、ウエハWの上面側から排出される液体IPAと共に回収カップ50を介して回収され、比較的純度の高いIPAとして再利用することができる。これらに加え、加熱DIWを用いてウエハWの加熱を行う場合に比べて、チャンバ20内の湿度上昇を抑える効果も得られる。
【0076】
さらに他の例について挙げておくと、処理ユニット16において乾燥液を用いてウエハWの乾燥処理を行うことも必須ではない。例えば希フッ酸やシリル化剤を用いて疎水化処理を行ったウエハWに対しては、リンス処理の後、乾燥液との置換を行わずにリンス液の供給を停止して乾燥処理を実行する場合がある。このような乾燥処理においても、チャンバ20内にCDAなどの低湿度ガスを供給し、チャンバ20内の湿度が所定の湿度目標値以下となっていることを確認してから乾燥処理を行うことにより、ウエハW表面での結露の発生を抑制する効果が得られる。
【0077】
そして、低湿度ガスとして利用可能なガスは、既述のCDAに代えて、窒素ガスなどの不活性ガスであってもよい。一方で乾燥液として利用可能な液体についてもIPAに限定されるものではなく、アセトンやHFE(ハイドロフルオロエーテル)などを採用することができる。