(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本明細書について詳細に説明する。
【0019】
本明細書は、炭素担体と、前記炭素担体の表面に設けられ、アミン基および下記化学式12で表される水素イオン交換基を有する高分子層と、前記高分子層上に設けられ、八面体構造を有する金属ナノ粒子を含む担体‐ナノ粒子複合体とを含む燃料電池用触媒を提供する。
[化学式12]
‐SO
3−X
前記化学式12中、前記Xは、1価のカチオン基である。
【0020】
前記炭素担体は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、グラファイト(Graphite)、グラフェン(Graphene)、活性炭、メソポーラスカーボン(Mesoporous Carbon)、カーボン繊維(Carbon fiber)およびカーボンナノワイヤ(Carbon nano wire)からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0021】
前記炭素担体の表面の一部または全部には高分子層が設けられてもよい。前記炭素担体の表面の50%以上100%以下は高分子層が設けられてもよく、具体的には、75%以上100%以下は高分子層が設けられてもよい。
【0022】
前記高分子層の表面の全体の元素を基準として、アミン基の窒素元素の含有量は0.01重量%以上5重量%以下であり、前記化学式12で表される水素イオン交換基の硫黄元素の含有量は0.01重量%以上1重量%以下であってもよい。硫黄元素の含有量が1重量%を超えると、却って担体の表面が親水化しすぎてcellからの水排出があり逆効果になり得る。
【0023】
前記高分子層は、アミン基を有するポリアルキレンイミンおよび前記水素イオン交換基を有する水素イオン交換高分子を含むか、アミン基を有するポリアルキレンイミンと前記水素イオン交換基を有する水素イオン交換高分子由来の高分子を含んでもよい。
【0024】
前記ポリアルキレンイミン(PEI)と前記水素イオン交換高分子(Ionomer)の重量比(PEI/Ionomer)は、15以上100以下であってもよい。
【0025】
前記ポリアルキレンイミンは、脂肪族炭化水素主鎖を有し、主鎖および側鎖に少なくとも10個以上のアミン基を含む高分子であってもよい。ここで、アミン基は、第1級アミン基、第2級アミン基、第3級アミン基および第4級アミン基を含み、前記ポリアルキレンイミンの主鎖および側鎖に含まれたアミン基は、第1級アミン基、第2級アミン基、第3級アミン基および第4級アミン基のうち少なくとも一つが10個以上であってもよい。
【0026】
前記ポリアルキレンイミンの重量平均分子量は、500以上1,000,000以下であってもよい。
【0027】
前記ポリアルキレンイミンは、下記化学式1で表される繰り返し単位および下記化学式2で表される繰り返し単位のうち少なくとも一つを含んでもよい。
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
【0028】
前記化学式1および2中、E1およびE2は、それぞれ独立して、炭素数2〜10のアルキレン基であり、Rは、下記化学式3〜5のいずれか一つで表される置換基であり、oおよびpは、それぞれ1〜1000の整数であり、
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
[化学式5]
【化5】
前記化学式3〜5中、A1〜A3は、それぞれ独立して、炭素数2〜10のアルキレン基であり、R1〜R3は、それぞれ独立して、下記化学式6〜8のいずれか一つで表される置換基であり、
[化学式6]
【化6】
[化学式7]
【化7】
[化学式8]
【化8】
前記化学式6〜8中、A4〜A6は、それぞれ独立して、炭素数2〜10のアルキレン基であり、R4〜R6は、それぞれ独立して、下記化学式9で表される置換基であり、
[化学式9]
【化9】
前記化学式9中、A7は、炭素数2〜10のアルキレン基である。
【0029】
前記ポリアルキレンイミンは、下記化学式10で表される化合物および下記化学式11で表される化合物のうち少なくとも一つを含んでもよい。
[化学式10]
【化10】
[化学式11]
【化11】
【0030】
前記化学式10および11中、X1、X2、Y1、Y2およびY3は、それぞれ独立して、炭素数2〜10のアルキレン基であり、Rは、下記化学式3〜5のいずれか一つで表される置換基であり、qは、1〜1000の整数であり、nおよびmは、それぞれ1〜5の整数であり、lは、1〜200の整数であり、
[化学式3]
【化12】
[化学式4]
【化13】
[化学式5]
【化14】
前記化学式3〜5中、A1〜A3は、それぞれ独立して、炭素数2〜10のアルキレン基であり、R1〜R3は、それぞれ独立して、下記化学式6〜8のいずれか一つで表される置換基であり、
[化学式6]
【化15】
[化学式7]
【化16】
[化学式8]
【化17】
前記化学式6〜8中、A4〜A6は、それぞれ独立して、炭素数2〜10のアルキレン基であり、R4〜R6は、それぞれ独立して、下記化学式9で表される置換基であり、
[化学式9]
【化18】
前記化学式9中、A7は、炭素数2〜10のアルキレン基である。
【0031】
本明細書において、
【化19】
は、置換基の置換位置を意味する。
【0032】
本明細書において、前記アルキレン基は、直鎖または分岐鎖であってもよく、炭素数は、特に限定されないが、2〜10が好ましい。具体例としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、t‐ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基などがあるが、これに限定されるものではない。
【0033】
前記水素イオン交換高分子は、下記化学式12で表される水素イオン交換基を含む。
[化学式12]
‐SO
3−X
前記化学式12中、前記Xは、1価のカチオン基である。
【0034】
前記高分子層上にアミン基と結合している金属ナノ粒子に、水素イオン交換基によりプロトン(proton)を伝達することが容易で、金属ナノ粒子の利用率を増加させることができる。
【0035】
図4に図示されているように、高分子層の表面のアミン基と八面体構造の金属ナノ粒子が結合しており、活性金属サイトである金属ナノ粒子に炭素担体の表面に存在する高分子層の水素イオン交換基によりH
+を伝達することで、金属ナノ粒子の利用が容易である。
【0036】
前記水素イオン交換高分子は、前記化学式12で表される水素イオン交換基を含んでいれば特に限定されず、当技術分野において一般的に使用しているものを用いてもよい。
【0037】
前記水素イオン交換高分子は、炭化水素系高分子、部分フッ素系高分子またはフッ素系高分子であってもよい。前記炭化水素系高分子は、フルオロ基が存在しない炭化水素系スルホン化高分子であってもよく、逆にフッ素系高分子は、フルオロ基に飽和したスルホン化高分子であってもよく、前記部分フッ素系高分子は、フルオロ基に飽和していないスルホン化高分子であってもよい。
【0038】
前記水素イオン交換高分子は、パーフルオロスルホン酸系高分子、炭化水素系高分子、芳香族スルホン系高分子、芳香族ケトン系高分子、ポリベンゾイミダゾール系高分子、ポリスチレン系高分子、ポリエステル系高分子、ポリイミド系高分子、ポリビニリデンフルオリド系高分子、ポリエーテルスルホン系高分子、ポリフェニレンスルフィド系高分子、ポリフェニレンオキシド系高分子、ポリホスファゲン系高分子、ポリエチレンナフタレート系高分子、ポリエステル系高分子、ドープされたポリベンゾイミダゾール系高分子、ポリエーテルケトン系高分子、ポリフェニルキノキサリン系高分子、ポリスルホン系高分子、ポリピロール系高分子およびポリアニリン系高分子からなる群から選択される一つまたは二つ以上の高分子であってもよい。前記高分子は、単一共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、マルチブロック共重合体またはグラフト共重合体であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0039】
前記水素イオン交換高分子の例としては、ナフィオン(Nafion)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(sPEEK、Polyetheretherketone)、スルホン化ポリエーテルケトン(sPEK、sulfonated(polyetherketone))、ポリビニリデンフルオリド‐グラフト‐ポリスチレンスルホン酸(poly(vinylidene fluoride)‐graft‐poly(styrene sulfonic acid)、PVDF‐g‐PSSA)およびスルホン化ポリフルオレニルエーテルケトン(Sulfonated poly(fluorenyl ether ketone))のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0040】
前記ポリアルキレンイミンのアミン基と前記水素イオン交換高分子の水素イオン交換基は、隣接した場合、結合し化学反応によりスルホンアミド結合構造(Sulfonamide、‐SO
2‐NH‐)を有することができる。
【0041】
前記高分子層は、前記ポリアルキレンイミンのアミン基と前記水素イオン交換高分子の水素イオン交換基にそれぞれ反応できる架橋剤により互いに架橋結合した高分子を含んでもよい。
【0042】
前記架橋剤は、ポリアルキレンイミンのアミン基と前記水素イオン交換高分子の水素イオン交換基を架橋結合させることができれば特に限定されないが、例えば、POCl
3などを使用してもよい。
【0043】
下記反応式1のように、前記高分子層は、架橋剤のPOCl
3により、水素イオン交換高分子の水素イオン交換基(P1‐SO
3H)と前記ポリアルキレンイミンのアミン基(P2‐NH
2)が互いに架橋結合してスルホンアミド結合構造(Sulfonamide、‐SO
2‐NH‐)が形成された高分子を含んでもよい。
[反応式1]
【化20】
前記反応式中、P1は、水素イオン交換基の‐SO
3H以外の水素イオン交換高分子であり、P2は、アミン基のうち‐NH
2以外のポリアルキレンイミンである。
【0044】
前記金属ナノ粒子は、前記高分子層のアミン基と結合してもよく、具体的には、前記ポリアルキレンイミンのアミン基と結合してもよい。
【0045】
前記金属ナノ粒子は、第1の金属と第2の金属とを含み、前記第1の金属および第2の金属は互いに異なっており、前記第1の金属と第2の金属のモル比は、0.8:0.2〜0.9:0.1であってもよい。
【0046】
前記第1の金属は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)およびルテニウム(Ru)のうち少なくとも一つを含んでもよく、白金からなることが好ましい。
【0047】
前記第2の金属は、ニッケル(Ni)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、鉄(Fe)および銅(Cu)のうち少なくとも一つを含んでもよく、ニッケルを含むことが好ましい。
【0048】
前記金属ナノ粒子の平均粒径は、2nm以上20nm以下であってもよく、具体的には、3nm以上10nm以下であってもよい。この場合、炭素担体上に金属ナノ粒子が互いに凝集することなく十分に分散し、触媒効率が高いという利点がある。ここで、前記金属ナノ粒子の平均粒径は、金属ナノ粒子の表面の二つの点を繋ぐ線のうち最も長い線の長さの平均を意味する。
【0049】
前記金属ナノ粒子は、(111)面を有する八面体構造の粒子であり、(111)面を特徴とする八面体(octahedron)形状の粒子の場合、酸素還元反応に対する活性に優れている。具体的には、前記(111)面を有する八面体構造の粒子は、Pt
xNi
1−X 粒子であってもよい。
【0050】
前記担体‐ナノ粒子複合体の全重量に対して前記金属ナノ粒子の含有量は15重量%以上50重量%以下であってもよい。具体的には、前記担体‐ナノ粒子複合体の全重量に対する前記金属ナノ粒子の含有量は、20重量%以上40重量%以下であってもよい。
【0051】
本明細書は、前記触媒を含む電気化学電池を提供する。
【0052】
前記電気化学電池は、化学反応を利用した電池を意味し、高分子電解質膜が設けられれば、その種類は特に限定されないが、例えば、前記電気化学電池は、燃料電池、金属二次電池またはフロー電池であってもよい。
【0053】
本明細書は、電気化学電池を単位電池として含む電気化学電池モジュールを提供する。
【0054】
前記電気化学電池モジュールは、本出願における一つの実施形態に係るフロー電池の間にバイポーラ(bipolar)プレートを挿入し、スタッキング(stacking)することで形成されてもよい。
【0055】
前記電池モジュールは、具体的には、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車または電力貯蔵装置の電源として使用されてもよい。
【0056】
本明細書は、アノード触媒層と、カソード触媒層と、前記アノード触媒層とカソード触媒層との間に設けられた高分子電解質膜とを含み、前記カソード触媒層は、前記触媒を含む膜電極接合体を提供する。
【0057】
前記膜電極接合体は、前記アノード触媒層の高分子電解質膜が設けられた面の反対面に設けられたアノードガス拡散層と、前記カソード触媒層の高分子電解質膜が設けられた面の反対面に設けられたカソードガス拡散層とをさらに含んでもよい。
【0058】
本明細書は、前記膜電極接合体を含む燃料電池を提供する。
【0059】
図1は燃料電池の電気発生原理を概略的に図示した図であり、燃料電池において、電気を発生させる最も基本的な単位は膜電極接合体(MEA)であり、これは、電解質膜Mと、この電解質膜Mの両面に形成されるアノードAと、カソードCとで構成される。燃料電池の電気発生原理を示す
図1を参照すると、アノードAでは、水素またはメタノール、ブタンのような炭化水素などの燃料(F)の酸化反応が起こり水素イオン(H
+)および電子(e
−)が生じ、水素イオンは、電解質膜Mを介してカソードCに移動する。カソードCでは、電解質膜Mを介して伝達された水素イオンと、酸素のような酸化剤Oおよび電子が反応して水Wが生成される。かかる反応により、外部回路に電子の移動が生じる。
【0060】
図2は燃料電池用膜電極接合体の構造を概略的に図示した図であり、燃料電池用膜電極接合体は、電解質膜10と、この電解質膜10を挟んで互いに対向して位置するカソード50とアノード51とを備えてもよい。前記カソードには、電解質膜10から順にカソード触媒層20およびカソードガス拡散層40が設けられ、前記アノードには、電解質膜10から順にアノード触媒層21およびアノードガス拡散層41が設けられてもよい。
【0061】
本明細書に係る触媒は、膜電極接合体において、カソード触媒層およびアノード触媒層のうち少なくとも一つに含まれてもよい。
【0062】
図3は燃料電池の構造を概略的に図示した図であり、燃料電池は、スタック60と、酸化剤供給部70と、燃料供給部80とを含んでなる。
【0063】
スタック60は、上述の膜電極接合体を一つまたは二つ以上含み、膜電極接合体が二つ以上含まれる場合には、これらの間に介在されるセパレータを含む。セパレータは、膜電極接合体が電気的に連結されることを防ぎ、外部から供給された燃料および酸化剤を膜電極接合体に伝達する役割をする。
【0064】
酸化剤供給部70は、酸化剤をスタック60に供給する役割をする。酸化剤としては、酸素が代表的に使用され、酸素または空気を酸化剤供給部70に注入して使用することができる。
【0065】
燃料供給部80は、燃料をスタック60に供給する役割をし、燃料を貯蔵する燃料タンク81と、燃料タンク81に貯蔵された燃料をスタック60に供給するポンプ82とで構成されてもよい。燃料としては、ガス状または液体状の水素または炭化水素燃料が使用されてもよい。炭化水素燃料の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたは天然ガスが挙げられる。
【0066】
前記カソード触媒層は、本明細書に係る担体‐ナノ粒子複合体を触媒として含んでもよい。
【0067】
前記アノード触媒層およびカソード触媒層は、それぞれアイオノマーを含んでもよい。
【0068】
前記カソード触媒層が前記担体‐ナノ粒子複合体を含む場合、前記カソード触媒層のアイオノマー(Ionomer)と前記担体‐ナノ粒子複合体(Complex)との比率(Ionomer/Complex、I/C)は、0.3〜0.7である。
【0069】
一般的に、商用触媒において使用するI/C比率が0.8〜1である点(Book「PEM fuel cell Electrocatalyst and catalyst layer」、page 895に明示)を考慮すると、本明細書に係る担体‐ナノ粒子複合体を触媒として含む場合、触媒層に必要なアイオノマーの含有量を基準としてアイオノマーを20重量%以上減少させることができ、具体的には、30重量%以上減少させることができ、より具体的には、50重量%以上減少させることができる。換言すれば、高価のアイオノマーの含有量を減少させることができ、少ないアイオノマーの含有量でも所定以上の水素イオン伝導度を維持できるという利点がある。
【0070】
前記アイオノマーは、水素やメタノールのような燃料と触媒との反応によって生成されたイオンが電解質膜に移動するための通路を提供する役割をする。
【0071】
前記アイオノマーは、側鎖にスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基およびこれらの誘導体からなる群から選択されたカチオン交換基を有する高分子を使用してもよい。具体的には、前記アイオノマーは、フルオロ系高分子、ベンゾイミダゾール系高分子、ポリイミド系高分子、ポリエーテルイミド系高分子、ポリフェニレンスルフィド系高分子、ポリスルホン系高分子、ポリエテルスルホン系高分子、ポリエーテルケトン系高分子、ポリエーテル‐エーテルケトン系高分子、またはポリフェニルキノキサリン系高分子から選択された1種以上の水素イオン伝導性高分子を含んでもよい。具体的には、本明細書における一実施形態によると、前記高分子アイオノマーは、ナフィオンであってもよい。
【0072】
本明細書は、炭素担体にアミン基および下記化学式12で表される水素イオン交換基を有する高分子層を形成するステップと、前記高分子層が形成された炭素担体、第1の金属前駆体、第2の金属前駆体、およびカルボキシル基を有するキャッピング物質(capping agent)を溶媒に添加して反応組成物を製造し、前記反応組成物を用いて、前記炭素担体の高分子層上に金属ナノ粒子が形成された複合体を製造するステップと、前記複合体を酸処理するステップとを含む燃料電池用触媒の製造方法を提供する。
[化学式12]
‐SO
3−X
前記化学式12中、前記Xは、1価のカチオン基である。
【0073】
前記燃料電池用触媒の製造方法は、担体‐ナノ粒子複合体を含む触媒について上述のものを引用してもよい。
【0074】
前記燃料電池用触媒の製造方法は、炭素担体に、アミン基および下記化学式12で表される水素イオン交換基を有する高分子層を形成するステップを含む。
【0075】
前記高分子層を形成するステップは、炭素担体を、ポリアルキレンイミンおよび水素イオン交換高分子を含む溶液、またはアミン基を有するポリアルキレンイミンと前記水素イオン交換基を有する水素イオン交換高分子由来の高分子を含む溶液に入れて高分子層を形成するステップであってもよい。
【0076】
前記燃料電池用触媒の製造方法は、炭素担体、ポリアルキレンイミンおよび水素イオン交換高分子を溶媒に添加して第1の溶液を製造するステップと、前記第1の溶液を攪拌するステップとを含んでもよい。
【0077】
前記第1の溶液は、架橋剤をさらに含んでもよい。前記架橋剤は、前記ポリアルキレンイミンのアミン基と前記水素イオン交換高分子の水素イオン交換基にそれぞれ反応できる反応基を有してもよい。
【0078】
前記燃料電池用触媒の製造方法は、炭素担体、およびポリアルキレンイミンと水素イオン交換基を有する水素イオン交換高分子由来の高分子を溶媒に添加して溶液を製造するステップと、前記溶液を攪拌するステップとを含んでもよい。
【0079】
前記溶液の溶媒は、特に限定されないが、水、エタノール(Ethanol)、2‐プロパノール(2‐propanol)およびイソプロパノール(iso‐propanol)のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0080】
前記溶液の固形分重量を基準として、前記炭素担体の含有量は、14重量%以上30重量%以下であってもよい。
【0081】
前記溶液の固形分重量を基準として、前記ポリアルキレンイミンの含有量は、65重量%以上85重量%以下であってもよい。
【0082】
前記溶液の固形分重量を基準として、前記水素イオン交換高分子の含有量は、0.1重量%以上5重量%以下であってもよい。
【0083】
前記溶媒が、架橋剤をさらに含む場合、前記溶液の固形分重量を基準として、前記架橋剤の含有量は、0重量%超3重量%以下であってもよい。
【0084】
前記溶媒が、炭素担体と、ポリアルキレンイミンと水素イオン交換基を有する水素イオン交換高分子由来の高分子とを含む場合、前記溶液の固形分重量を基準として、前記炭素担体の含有量は、14重量%以上30重量%以下であり、前記ポリアルキレンイミンと水素イオン交換基を有する水素イオン交換高分子由来の高分子の含有量は、70重量%以上86重量%以下であってもよい。
【0085】
前記溶液の全重量を基準として、溶媒以外の前記溶液の固形分の全含有量は、0.3重量%以上20重量%以下であってもよく、前記溶液の全重量を基準として、前記溶媒の含有量は、80重量%以上99.7重量%以下であってもよい。
【0086】
前記溶液を攪拌する時間は、3時間以上72時間以下であってもよい。
【0087】
前記燃料電池用触媒の製造方法は、前記高分子層が形成された炭素担体、第1の金属前駆体、第2の金属前駆体およびカルボキシル基を有するキャッピング物質(capping agent)を溶媒に添加して反応組成物を製造し、前記反応組成物を用いて、前記炭素担体の高分子層上に金属ナノ粒子が形成された複合体を製造するステップを含む。
【0088】
前記炭素担体の高分子層上に金属ナノ粒子が形成された複合体を製造するステップは、前記高分子層が形成された炭素担体、第1の金属前駆体、第2の金属前駆体およびカルボキシル基を有するキャッピング物質(capping agent)を溶媒に添加して反応組成物を製造はステップと、前記反応組成物を用いて、前記炭素担体の高分子層上に金属ナノ粒子が形成された複合体を製造するステップとを含んでもよい。
【0089】
前記炭素担体の高分子層上に金属ナノ粒子が形成された複合体を製造するステップは、前記反応組成物を120℃以下の温度に昇温して第1の金属前駆体および第2の金属前駆体を溶解するステップと、200℃〜230℃の温度に昇温して反応させるステップと、常温に冷却するステップと、反応が完了した反応組成物を濾過し、前記炭素担体の高分子層上に金属ナノ粒子が形成された複合体を取得するステップとを含んでもよい。
【0090】
前記反応組成物を製造するステップは、前記高分子層が形成された炭素担体を溶媒に添加し、炭素担体を溶媒内に分散させるステップと、第1の金属前駆体、第2の金属前駆体およびカルボキシル基を有するキャッピング物質(capping agent)を追加して反応組成物を製造するステップとを含んでもよい。
【0091】
前記カルボキシル基を有するキャッピング物質は、クエン酸(citric acid)またはクエン酸とギ酸ナトリウム(sodium formate)との混合物を含んでもよい。
【0092】
前記カルボキシル基を有するキャッピング物質は、金属粒子のサイズの均一度を向上させ、八面体構造を形成することを容易にする。具体的には、クエン酸(citric acid)を添加したときに、反応組成物のpHが酸性条件に変化するにつれて金属前駆体の溶解を容易にし、粒子サイズの均一度および分散度を向上させることができる。
【0093】
前記反応組成物の全重量を基準として、前記カルボキシル基を有するキャッピング物質の含有量は、0.1重量%以上2重量%以下であってもよい。
【0094】
前記反応組成物の全重量を基準として、前記高分子層が形成された炭素担体の含有量は、0.1重量%以上3重量%以下であってもよい。
【0095】
前記金属前駆体は、金属ナノ粒子に還元される前の物質であり、金属イオンとリガンドとで構成されている。前記金属前駆体は、金属イオンとリガンドの種類に応じて区分される。
【0096】
前記第1の金属前駆体のリガンドは、アセチルアセトネート(acetylacetonate)およびアセテート(acetate)のうち少なくとも一つであってもよく、具体的には、アセチルアセトネート(acetylacetonate)であってもよい。
【0097】
前記第1の金属前駆体は、白金(II)アセチルアセトネート(Platinum(II)acetylacetonate(Pt(acac)
2))、パラジウムアセチルアセトネート(palladium acetylacetonate(Pd(acac)
2))、パラジウムアセテート(palladium acetate(Pd(OAc)
2))、ロジウムアセチルアセトネート(rhodium acetylacetonate(Rh(acac)
2))、イリジウムアセチルアセトネート(iridium acetylacetonate(Ir(acac)
2))およびルテニウムアセチルアセトネート(ruthenium acetylacetonate(Ru(acac)
2))のうち少なくとも一つを含んでもよい。前記第1の金属前駆体は、白金アセチルアセトネート(Platinum acetylacetonate)を含むことが好ましい。
【0098】
前記第2の金属前駆体のリガンドは、acetylacetonate、formate dihydrate、acetate tetrahydrate、formate hydrate、acetateおよびformateのうち少なくとも一つであってもよく、具体的には、acetylacetonateであってもよい。
【0099】
前記第2の金属前駆体は、ニッケル(II)アセチルアセトネート(nickel(II)acetylacetonate)、ギ酸ニッケル(II)二水和物(nickel(II)formate dihydrate)、酢酸ニッケル(II)四水和物(nickel(II)acetate tetrahydrate)、銅(II)アセチルアセトネート(copper(II)acetylacetonate)、ギ酸銅(II)水和物(copper(II)formate hydrate)、酢酸銅(II)(copper(II)acetate)、コバルト(II)アセチルアセトネート(cobalt(II)acetylacetonate)、酢酸コバルト(II)四水和物(cobalt(II)acetate tetrahydrate)、ギ酸コバルト(II)(cobalt(II)formate)、鉄(II)アセチルアセトネート(iron(II)acetylacetonate)および酢酸鉄(II)(iron(II)acetate)のうち一つを含んでもよい。前記第2の金属前駆体は、ニッケルアセチルアセトネート(nickel acetylacetonate)を含むことが好ましい。
【0100】
前記反応組成物の全重量を基準として、前記第1の金属前駆体の全含有量は、0.1重量%以上4重量%以下であってもよい。
【0101】
前記反応組成物の全重量を基準として、前記第2の金属前駆体の全含有量は、0.03重量%以上12重量%以下であってもよい。
【0102】
前記反応組成物の全重量を基準として、前記溶媒の含有量は、87重量%以上99重量%以下であってもよい。
【0103】
前記反応組成物のpHは、4以下であってもよく、具体的には、1以上4以下であってもよい。Pt(acac)
2は、極性溶媒に溶解しないが、希釈された酸性条件で溶解する性質を有していることから、前記反応組成物のpHが酸性の場合、前駆体の溶解を容易にし、粒子の形成において粒子サイズの均一度を高める利点がある。
【0104】
前記反応組成物の溶媒は、2以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールを含んでもよい。前記多価アルコールは、2以上のヒドロキシ基を有していれば特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコールのうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0105】
前記反応組成物は、界面活性剤を含んでいない。この場合、触媒合成の後、界面活性剤を除去するステップを必要とせず、界面活性剤による活性サイトの減少がないという利点がある。
【0106】
前記燃料電池用触媒の製造方法は、前記炭素担体の高分子層上に金属ナノ粒子が形成された複合体を酸処理するステップを含む。
【0107】
前記酸処理するステップにおける酸処理溶液の濃度は、2M以下であってもよく、具体的には、酸の濃度は、0.5M以上2M以下であってもよい。
【0108】
前記酸処理するステップにおける酸処理時間は、1時間以上5時間以下であってもよい。
【0109】
前記酸処理するステップにおける酸処理温度は、50℃以上90℃以下であってもよい。
【0110】
前記酸処理ステップにおいて使用される酸は、硫酸、硝酸、塩酸およびこれらの混合物のうち少なくとも一つであってもよく、前記酸処理ステップにおいて使用される酸としては硫酸を使用してもよい。
【0111】
前記酸処理ステップにより、炭素担体の高分子層上に金属ナノ粒子の表面に存在する一部の遷移金属を除去することができる。
【0112】
炭素担体の高分子層上にNi‐Pt粒子が形成された場合、前記酸処理ステップにより、Ni‐Pt粒子の表面に存在する一部のNiを除去することができる。
【0113】
前記燃料電池用触媒の製造方法は、炭素担体の高分子層上に金属ナノ粒子を形成した後、酸処理するステップの前に、前記炭素担体の高分子層上に金属ナノ粒子が形成された複合体を洗浄するステップと、溶媒を除去するステップとをさらに含んでもよい。
【0114】
前記溶媒を除去するステップにおいて、溶媒が除去され、炭素担体の高分子層上に設けられた金属ナノ粒子が焼結され得る。
【0115】
前記溶媒除去ステップは、水素またはアルゴン雰囲気で熱処理するステップであってもよい。この際、熱処理温度は、200℃以上300℃以下であってもよい。200℃未満の場合には、溶媒が完全に除去されないことがあり、300℃を超える場合には、八面体構造の形状が変形することがある。
【0116】
近年、非特許文献(Vojislav R.Stamenkovic1,Ben Fowler,Bongjin Simon Mun,Guofeng Wang,Philip N.Ross,Christopher A.Lucas,Nenad M.Markovic,Science 315 493‐497(2007))の報告によると、Pt
xNi
1−X粒子の(111)面は、酸素還元反応に対する活性に優れていると報告されている。
【0117】
これにより、界面活性剤を使用するか、DMF(dimethyl formamide)やCOガスを使用して、八面体構造のPtNi粒子を合成することができる(Chunhua Cui,Lin Gan,Hui‐Hui Li,Shu‐Hong Yu,Marc Heggen,Peter Strasser Nano Lett.12,58855889(2012)に明示)。しかし、界面活性剤の使用は、活性サイト(site)を妨げて、実際の単位電池において性能が低下する限界がある。また、DMFとCOガスは、毒性物質であり、触媒の商業化のための大容量合成の際に限界がある。
【0118】
本発明者らは、前記のような従来技術の問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、官能基が処理された特定の担体に特定の製造方法で触媒を合成する場合、特定の面を特徴とする白金‐ニッケル合金触媒を合成することができ、これは、特定の面への酸素還元反応に対する活性を極大化し、且つ担体が有する官能基の効果により粒子の高分散担持および膜電極接合体の水素伝達区間が向上し、既存の商用白金触媒に比べ1/2の白金使用量で同等以上の水準の性能を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0119】
一方、本明細書における方法は、界面活性剤、DMF(dimethyl formamide)やCOガスを使用することなく、(111)面を有する八面体構造の金属粒子を有する触媒を合成できるという利点がある。
【0120】
本発明の目的は、担体‐八面体構造の白金‐ニッケル合金ナノ粒子複合体の製造方法を提供することにある。
【0121】
本発明の他の目的は、前記担体‐八面体構造の白金‐ニッケル合金ナノ粒子複合体の製造方法により製造された担体‐八面体構造の白金‐ニッケル合金ナノ粒子複合体を提供することにある。
【0122】
本発明のさらに他の目的は、前記担体‐八面体構造の白金‐ニッケル合金ナノ粒子複合体を含む燃料電池カソード用触媒を提供することにある。
【実施例】
【0123】
以下、実施例により本明細書をさらに詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、本明細書を例示するためのものであって、本明細書を限定するためのものではない。
【0124】
[製造例1]
7.5g PEIと1.8g nafion(5wt% nafion solution)、また炭素1.8gを850mL IPA(isopropyl alcohol)と450mL3次水混合溶液に入れて十分に攪拌した後、濾過し、PEIとnafionがコーティングされた炭素を得た。
【0125】
[実施例1]
製造例1のPEIとnafionがコーティングされた炭素64.8mgを25mLエチレングリコール(ethylene glycol)に十分に分散させた後、66.9mg Pt(acac)
2(Platinum(II)acetylacetonate)、43.7mg Ni(acac)
2(Nickel(II)acetylacetonate)および96.9mgクエン酸(citric acid)を入れて十分に攪拌した。
【0126】
水分除去のために、真空雰囲気で120℃に昇温してから30分間加熱した後、窒素雰囲気で200℃に昇温して2時間30分間加熱した。この際、120℃から200℃に昇温して加熱する合成過程中に八面体構造の金属粒子が形成された。
【0127】
常温に冷却した後、エタノールと蒸留水を用いて濾過した。濾過した八面体構造のPtNi‐炭素複合体をオーブン(oven)で乾燥してから0.5Mの硫酸溶液に入れて80℃で2時間加熱した後、常温に冷却し、十分な蒸留水で濾過して触媒を製造した。
【0128】
[実施例2]
製造例1のPEIとnafionがコーティングされた炭素58.5mgを30mLエチレングリコール(ethylene glycol)に十分に分散させた後、78.7mg Pt(acac)
2(Platinum(II)acetylacetonate)、51.4mg Ni(acac)
2(Nickel(II)acetylacetonate)および115.3mgクエン酸(citric acid)を入れて十分に攪拌した。
【0129】
水分除去のために、真空雰囲気で120℃に昇温してから30分間加熱した後、窒素雰囲気で200℃に昇温して2時間30分間加熱した。この際、120℃から200℃に昇温して加熱する合成過程中に八面体構造の金属粒子が形成された。
【0130】
常温に冷却した後、エタノールと蒸留水を用いて濾過した。濾過した八面体構造のPtNi‐炭素複合体をオーブン(oven)で乾燥してから0.5Mの硫酸溶液に入れて80℃で2時間加熱した後、常温に冷却し、十分な蒸留水で濾過して触媒を製造した。
【0131】
[比較例1]
商用触媒のjohnson matthey社製の40wt%Pt/Cを触媒として使用した。
【0132】
[比較例2]
製造例1のPEIとnafionがコーティングされた炭素ではなく、PAH(Polyallylamine hydrochloride)のみがコーティングされた炭素を使用した以外は、実施例2と同様にして触媒を製造した。前記触媒は、PAHのみがコーティングされた炭素担体上に八面体構造を有するPtNi‐炭素複合体である。
【0133】
[比較例3]
酸処理工程を行っていない以外は、実施例1と同様にして触媒を製造した。
【0134】
製造された触媒は、八面体構造を有する金属粒子を有するが、金属粒子内の白金とニッケルの含有量が下記表1のICP‐OES分析結果のように相違している。
【表1】
【0135】
[比較例4]
高分子層がない炭素担体を使用した以外は、実施例1と同様にして触媒を製造した。前記触媒は、炭素担体上に八面体構造を有するPtNi‐炭素複合体である。
【0136】
[実験例1]
カルボキシル基を有するキャッピング物質有無の比較実験
【0137】
[実験例1‐1]
カルボキシル基を有するキャッピング物質を使用
炭素49.7mgを25mLエチレングリコール(ethylene glycol)に十分に分散させた後、66.9mg Pt(acac)
2(Platinum(II)acetylacetonate)、31.4mg Ni(HCO
2)
2・2H
2O(Nickel(II)formate dihydrate)および96.9mgクエン酸(citric acid)を入れて十分に攪拌した。
【0138】
水分除去のために、真空雰囲気で120℃に昇温してから30分間加熱した後、窒素雰囲気で220℃に昇温して2時間30分間加熱した。この際、120℃から200℃に昇温して加熱する合成過程中に八面体構造の金属粒子が形成された。
【0139】
常温に冷却した後、エタノールと蒸留水を用いて濾過した。濾過した八面体構造のPtNi‐炭素複合体をオーブン(oven)で乾燥し、触媒を製造した。
【0140】
前記触媒は、高分子層のない炭素担体上に八面体構造を有する白金粒子を有する触媒である。
【0141】
[実験例1‐2]
カルボキシル基を有するキャッピング物質を使用せず
クエン酸を添加しない以外は、実験例1‐1と同様にして触媒を製造した。
【0142】
前記
図9は実験例1‐1(左側)の触媒と、実験例1‐2(右側)の触媒に対する透過型電子顕微鏡(TEM)画像を図示している。この際、製造された触媒内の金属粒子が八面体構造を有していないことを
図9のTEM画像により確認することができる。
【0143】
前記TEM写真に示されているように、クエン酸(citric acid)を添加したときに、添加する前に比べて粒子サイズの均一度が向上し、八面体構造の形成を容易にすることを確認することができる。また、クエン酸(citric acid)を添加したときに、反応組成物のpHが酸性条件に変化するにつれて前駆体であるPt(acac)
2の溶解を容易にし、粒子サイズの均一度および分散度を向上させることが予測される。
【0144】
[実験例2]
金属前駆体のリガンドの種類による影響
【0145】
[実験例2‐1]
白金前駆体の変更
白金前駆体の種類による粒子の形状への影響を見るために、白金前駆体の種類を
図10のように適用した以外は、実験例1‐1と同様にして触媒を製造した。
【0146】
図10により、Pt(acac)
2を使用したときに、八面体構造の合金ナノ粒子が形成されることを確認することができた。
【0147】
[実験例2‐2]
ニッケル前駆体の変更
ニッケル前駆体としてNi(acac)
2を使用した以外は、実験例1‐1と同様にして触媒を製造した場合、
図11における実験例1‐1(左側写真)により製造されたナノ粒子よりも八面体構造のedge部分がはっきりとなることを確認することができる(右側写真)。
【0148】
これにより、前駆体のリガンドが、八面体構造の形状の制御を容易にすることを確認することができる。
【0149】
[実験例3]
実施例1で製造された触媒を高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)で撮影した画像(左側)と、高角散乱環状暗視野‐走査型透過電子顕微鏡(HADDF‐STEM)画像(右側)を
図5に図示した。
【0150】
図5により、前記触媒が八面体構造の形状を有する粒子を有する触媒であることが分かる。
【0151】
[実験例4]
比較例4における触媒(左側図)と実施例1における触媒(右側図)に対する透過型電子顕微鏡(TEM)画像を
図6に図示した。
【0152】
これにより、実施例1における触媒が、PEIとnafionがコーティングされた炭素上に金属粒子が担持され、金属粒子の分散度が良好であることが分かる。
【0153】
[実験例5]
PEMFC single cellの評価
実施例1〜2および比較例1〜3の触媒をそれぞれ適用したPEMFC single cellの性能を評価した結果を
図7および
図8に図示した。
【0154】
比較例1における触媒30mgを1.8mL IPAに入れて十分に攪拌した後、257mg nafionを添加して超音波を用いて還元電極用インクを製造した。また、実施例1〜2および比較例2〜3における触媒30mgを0.84mL IPA(isopropyl alcohol)、0.66mL3次水混合溶液に入れて十分に攪拌した後、257mg nafionを添加して超音波を用いて還元電極インクを製造した。
【0155】
この際、還元電極のローディング量は、下記のとおりである。
‐比較例1:0.4mg
Pt/cm
2
‐比較例2:0.23mg
Pt/cm
2
‐比較例3:0.22mg
Pt/cm
2
‐実施例1:0.20mg
Pt/cm
2
‐実施例2:0.25mg
Pt/cm
2
【0156】
白金触媒30mgを1.8mL IPAに入れて十分に攪拌した後、257mg nafionを添加し、超音波を用いて酸化電極用インクを製造した。
【0157】
前記製造されたインクを用いてMEAを作製し、single cellに適用して、80℃、100%RH、H
2(anode)/Air(cathode)=150/500sccmの条件で性能評価を行った。
【0158】
図7により、比較例3と実施例1を比較すると、酸処理過程により粒子の表面のニッケルが除去されることで、触媒のOCV(Opencircuit voltage)、抵抗損(Ohmic loss)およびmass transport区間の性能が向上したことが分かる。
【0159】
また、
図7の右側図により、商用触媒(比較例1)に比べ1/2白金が電極にローディングされたときに、金属粒子が八面体構造を有することで、低電流区間および0.6Vにおいて比較例1よりも高い性能を有する。これにより、実施例1における触媒は、白金低減および高活性の触媒であることを確認することができる。
【0160】
図8により、カチオン性高分子であるpolyallylamine hydrochloride(PAH)のみが処理された比較例2の触媒に比べ、PEIとnafionがいずれも処理された実施例2の触媒の方が、nafionの添加により水素伝達区間の性能が向上し、物質伝達区間の性能も向上することを確認することができる。