(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、炭素系固体燃料が山積みされている場所の環境に拘わらず、炭素系固体燃料の山の任意の部位の温度の変化(上昇、下降)を把握することができる炭素系固体燃料の発熱判断装置及び炭素系固体燃料の発熱判断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の炭素系固体燃料の発熱判断装置は、炭素系固体燃料のにおいを検出するにおい検出手段と、前記におい検出手段の出力値を前記炭素系固体燃料の温度に相関させ、相関された前記炭素系固体燃料の温度に基づいて前記炭素系固体燃料の昇温状況を判断する制御手段とを備え
、前記におい検出手段は、においの質に対する出力値が異なるものが複数備えられ、前記制御手段は、複数の前記におい検出手段の複数の検出値に基づいて、においの強さと質を把握することで、温度を相関によって求め、前記炭素系固体燃料の昇温を判断することを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る本発明では、におい検出手段の出力値を炭素系固体燃料の温度に相関させ、においの変化により炭素系固体燃料の昇温状況を判断して発熱を判断する。このため、炭素系固体燃料が山積みされている場所が屋内であっても屋外であっても、においの変化を検出することで、炭素系固体燃料が山積みされている場所の環境に拘わらず、炭素系固体燃料の山の任意の部位の温度の変化(上昇、下降)を把握することができる。
そして、複数のにおい検出手段の複数の検出値により、においの強さと質の変化を把握し、においの強さと質に応じて炭素系固体燃料の昇温を判断する。強さだけでなく質を合わせてにおいを把握することで、例えば、簡易な屋根に覆われたり、壁に囲まれた貯炭場に炭素系固体燃料が山積みされていたり、屋外に炭素系固体燃料が山積みされていたりして、外部環境により、においの成分の濃度が変化して検出される強さが変化しても、においの質の変化を検出することで、炭素系固体燃料の昇温が判断される。
【0011】
におい検出手段としては、例えば、貴金属の担体に金属酸化物半導体が担持された金属酸化物半導体センサーが適用される。金属酸化物半導体(酸化錫、酸化タングステン、酸化インジウム等)の種類や、貴金属の種類を適宜選定することにより、異なる質のにおいの温度毎の出力値が相違したセンサーを得ることができる。これにより、炭素系固体燃料(例えば、石炭)のにおいを検出することに適したセンサーを適宜選定して適用することができる。
【0012】
また、
請求項2に係る本発明の炭素系固体燃料の発熱判断装置は、
請求項1に記載の炭素系固体燃料の発熱判断装置において、前記におい検出手段は少なくとも3個備えられ、前記制御手段は、少なくとも3個の前記におい検出手段の出力値を放射状に表現し、複数の出力値を結んだ環状形状に基づいて、においの強さと質を把握することを特徴とする。
【0013】
請求項求2に係る本発明では、におい検出手段の出力値を放射状に表現して複数の出力値を結んで環状形状とし、環状形状の変化の状況に基づいて、においの強さと質を把握することができる。例えば、複数の出力値を結んだ環状形状が相似形状で大きくなった場合、強さが強くなって温度が高くなったことが把握される。複数の出力値を結んだ環状形状の形が変化した場合、においの質が変化したことが把握され、質の異なったにおいの強さにより温度が高くなったことが把握される。
【0014】
また、
請求項3に係る本発明の炭素系固体燃料の発熱判断装置は、
請求項1に記載の炭素系固体燃料の発熱判断装置において、前記におい検出手段は2個備えられ、前記制御手段は、2個の前記におい検出手段の出力値を2つのベクトルとして表現し、それぞれのベクトルの長さ及び2つのベクトルの合成ベクトルの長さ及び傾きに基づいて、においの強さと質を把握することを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る本発明では、におい検出手段の出力値を2つのベクトルとして表現し、それぞれのベクトルの長さ及び2つのベクトルの合成ベクトルに基づいて、においの強さと質を把握することができる。例えば、それぞれのベクトルの長さが長くなった場合、強さが強くなって温度が高くなったことが把握される。2つのベクトルの合成ベクトルの角度が変化した場合、それぞれのベクトルの長さの変化(温度の変化)が異なった状態になって、においの質が変化したことが把握される。合成ベクトルの長さからにおいの質の強さが把握され、質の異なったにおいが強くなることにより、温度が高くなったことが把握される。
【0016】
上記目的を達成するための
請求項4に係る本発明の炭素系固体燃料の発熱判断方法は、炭素系固体燃料のにおいを検出し、前記においの検出状況から温度を相関によって求め、前記においの検出状況に基づいて前記炭素系固体燃料の温度の変化を判断
し、前記においを複数の検出手段により検出し、前記複数の検出手段の出力値に基づいて、前記においの強さと質を把握することにより温度の上昇と相関させ、前記炭素系固体燃料の温度の変化を判断することを特徴とする。
【0017】
請求項4に係る本発明では、においの検出状況から温度を相関によって求めることで、においの検出状況に基づいて炭素系固体燃料の昇温を判断することができる。このため、炭素系固体燃料が山積みされている場所が屋内であっても屋外であっても、においの検出状況を把握することで、炭素系固体燃料が山積みされている場所の環境に拘わらず、炭素系固体燃料の山の任意の部位の温度の変化を把握することができる。
そして、複数の検出手段の出力値に基づいて、においの強さと質を把握し、においの強さと質に基づいて炭素系固体燃料の昇温を判断することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の炭素系固体燃料の発熱判断装置及び炭素系固体燃料の発熱判断方法は、炭素系固体燃料が山積みされている場所の環境に拘わらず、炭素系固体燃料の山の任意の部位の温度の変化(上昇、低下)を把握することが可能になる。
【0021】
特に、石炭が山積みされている貯炭場が屋内であっても、屋外であっても、石炭の山の表面から中央部までの任意の部位の温度の変化(上昇、低下)を、においの変化により把握することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1から
図5に基づいて本発明の一実施例に係る炭素系固体燃料の発熱判断方法及び発熱判断装置を説明する。
【0024】
図1には、本発明の一実施例に係る炭素系固体燃料の発熱判断方法を実施する発熱判断装置をサイロに貯蔵された石炭の発熱把握に適用した場合の全体の状況を説明するための概略構成、
図2(a)から
図2(f)には、においを検出するための6個のセンサーの出力特性の例を説明するグラフを示してある。
【0025】
また、
図3(a)から
図3(c)、
図4(a)から
図4(c)、
図5(a)から
図5(c)には、6個のセンサーの出力値を環状形状に表現した状況を示してあり、
図3は、においの強度が同じ割合で大きくなっている状況、
図4は、においの強度が異なる割合で総強度が増加する(面積が増加する)ように変化している状況、
図5は、においの強度が異なる割合で総強度が同じ(面積が同じ)になるように変化している状況である。
【0026】
図1に示すように、例えば、燃料として炭素系固体燃料である石炭を用いる発電所等のサイロ1には、石炭2が貯蔵されている。石炭2は、貯炭時に酸化発熱して昇温するのが現状である。酸化発熱の時間は、石炭の種類(主に炭素の含有量により分類される、例えば、褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭等)や、貯蔵されている環境により異なるため、石炭の発熱を抑制して自然発火を防止するために、温度を把握することが必要である。
【0027】
本実施例では、石炭2のにおいを検出するにおい検出手段としてのセンサー5を備え、センサー5の出力値を石炭2の温度と相関させ、相関させた石炭2の温度に基づいて石炭2の昇温状況を判断する制御手段6を備えている。
【0028】
センサー5の出力値から石炭2の温度と相関させ、においの変化により固体燃料である石炭2の昇温状況を判断して発熱を判断する。石炭2が貯蔵されているサイロ1の中で、センサー5により、においの変化を検出することで、貯蔵された石炭2の山の表面や中心部分の温度の変化を把握する。
【0029】
具体的には、サイロ1の上部には、6個のセンサー5a、5b、5c、5d、5e、5fが備えられている。センサー5a、5b、5c、5d、5e、5fは、においの質に対する出力値が異なるものとなっており、センサー5a、5b、5c、5d、5e、5fの出力値が制御手段6に入力される。制御手段6では、センサー5a、5b、5c、5d、5e、5fの出力値に基づいて、においの強さと質を把握することで、温度の上昇を相関によって求め、石炭2の昇温を判断する。
【0030】
尚、6個のセンサー5a、5b、5c、5d、5e、5fを設ける場所は、サイロ1の上部の石炭の投入口の近傍や、サイロ1の下部の石炭の排出口の近傍等、任意の場所に適用することができる。また、センサー5の数は6個に限らず、任意の数のセンサー5を設けることができる。また、6種類のセンサー5a、5b、5c、5d、5e、5fを設けたが、同じ種類のセンサー5を6個設けたり、2種類のセンサー5を3組設けたり、3種類のセンサー5を2組設けたりすることができ、センサー5の種類、個数、組み合わせは任意に選択することができる。
【0031】
センサー5としては、例えば、貴金属の担体に金属酸化物半導体が担持された金属酸化物半導体センサーが適用される。金属酸化物半導体(酸化錫、酸化タングステン、酸化インジウム等)の種類や、貴金属の種類を適宜選定することにより、異なる質のにおいの温度毎の出力値が相違したセンサーを得ることができる。これにより、石炭2(例えば、褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭)のにおいを検出することに適したセンサー5を適宜選定して適用することができる。
【0032】
図2には、褐炭のにおいの出力値を実線で示し、亜瀝青炭のにおいの出力値を点線で示し、瀝青炭のにおいの出力値を一点鎖線で示してある。
【0033】
図2(a)に示すように、センサー5aは、温度の上昇に伴って出力値の強さが大きくなる特性を有し、
図2(b)に示すように、センサー5bは、温度が上昇しても出力値の大きさはほとんど大きくならない特性を有している。また、
図2(c)に示すように、センサー5cは、温度が少し上昇すると出力値が急激に大きくなり、温度がある程度以上になると温度が上昇しても出力値はなだらかに大きくなる特性を有している。
【0034】
また、
図2(d)に示すように、センサー5dは、低い温度から出力値が大きくなり、温度が上昇しても出力値はなだらかに大きくなる特性を有し、
図2(e)に示すように、センサー5eは、石炭2の種類により温度の上昇と出力値の大きさの変化の割合が異なる特性を有している。また、
図2(f)に示すように、センサー5fは、温度の上昇に対し出力値の大きさの変化が一義的にならない特性を有している。
【0035】
制御手段6では、センサー5a、5b、5c、5d、5e、5fの出力値が放射状に表現され、6個の出力値が結ばれて環状に表現されるようになっている。
【0036】
具体的には、例えば、
図3(a)、
図4(a)、
図5(a)に示すように、センサー5a、5b、5c、5d、5e、5fの出力値が放射状に表現されて正六角形の環状形状が表現される。この場合、基準の温度(例えば、室温)に相当する出力値が放射方向で同じ位置になるように補正され、単位温度に対して、強さの目盛りが調整され、出力値(絶対値)が異なっていても、温度の上昇に応じた軸方向における増加の割合は、出力値の放射方向の位置が同じ位置関係を保って変位するように補正されている。
【0037】
図3(a)に示すように、基準の温度で、正六角形の環状形状が表現され、
図3(b)に示すように、センサー5a、5b、5c、5d、5e、5fの出力値の環状形状が、正六角形のまま(相似形状で)大きい形状に表現され、更に、
図3(c)に示すように、センサー5a、5b、5c、5d、5e、5fの出力値の環状形状が、正六角形のまま(相似形状で)、更に、大きい形状に表現された場合、においの質はそのままで、においの強度が大きくなって、貯蔵された石炭2の温度が高くなったことが把握される。
【0038】
図4(a)に示すように、基準の温度では、正六角形の環状形状が表現され、
図4(b)に示すように、センサー5a、5b、5c、5d、5e、5fの出力値の環状形状が、面積が大きくなった状態で異なる形状で表現され、更に、
図4(c)に示すように、センサー5a、5b、5c、5d、5e、5fの出力値の環状形状が、更に面積が大きくなった状態で異なる形状に表現された場合、においの質が変化し、環状形状が大きくなることで(面積が広くなることで)、質が変化した状態で、同時に強度が高くなる変化により、例えば、貯蔵された石炭2のガス濃度が変化したことが把握されると共に、温度が高くなったことが把握される。例えば、サイロ1の中のガスの濃度(種類)が変化したこと等が把握されると共に、石炭2の温度が高くなったことが把握される。
【0039】
図5(a)に示すように、基準の温度では、正六角形の環状形状が表現され、
図5(b)に示すように、センサー5a、5b、5c、5d、5e、5fの出力値の環状形状が、面積が変化しない状態で異なる形状で表現され、更に、
図5(c)に示すように、センサー5a、5b、5c、5d、5e、5fの出力値の環状形状が、面積が変化しない状態で異なる形状に表現された場合、においの質が変化した状態で、強度が維持されていることになり、例えば、貯蔵された石炭2のガス濃度が変化したことが把握される。においの質の変化により、相関によって求められる温度によっては、温度が高くなったことが把握される。例えば、サイロ1の中のガスの濃度(種類)が変化したこと等が把握される。また、石炭2の温度が高くなったことを把握することができる。
【0040】
上述したように、センサー5の出力値を放射状に表現して複数の出力値を結んで環状形状とし、環状形状の変化の状況に基づいて、においの強さと質を把握することができる。
【0041】
図3に示したように、正六角形の環状形状の大きさを把握することで、においの強度が大きくなって貯蔵された石炭2の温度が高くなったことが把握される。このため、においの強度に応じて、サイロ1に貯蔵された石炭2の温度が上昇したことを判断することができ、サイロ1の中の石炭2発熱を判断することが可能になる。つまり、サイロ1に石炭2が貯蔵されている状況で、貯蔵された石炭2の山の表面や内部の温度の変化を把握して、サイロ1内での石炭2の発熱を判断することが可能になる。
【0042】
そして、
図4、
図5に示したように、環状形状の形の変化を把握することで、においの質が変化して、例えば、石炭2の山から生じるガスの濃度が変化したことが把握される。このため、においの質に応じて、サイロ1に貯蔵された石炭2の温度が上昇したことを判断することができ、サイロ1内での石炭2の発熱を判断することが可能になる。
【0043】
上述した実施例では、6個のセンサー5を用いて、出力値を正六角形の環状形状に表現し、貯蔵された石炭2の発熱を判断するようにしたが、少なくとも3個のセンサーの出力値を環状形状に表現して貯蔵された石炭2の発熱を判断することが可能である。また、6個のセンサー5の出力値の値を直接用いて(センサー同士の出力値の割合の補正は行っている)、においの強さと質を判断しているが、センサーの出力値に対して、においの強さや質に対して人が感じる基準指標を加味することも可能である。
【0044】
図6、
図7に基づいて本発明の他の適用例を説明する。
図6には本発明の一実施例に係る炭素系固体燃料の発熱判断方法を実施する発熱判断装置を屋根付きの貯炭場に山積みされた石炭の発熱把握に適用した場合の一例を表す全体の状況を説明するための概略構成、
図7には本発明の一実施例に係る炭素系固体燃料の発熱判断方法を実施する発熱判断装置を屋外に山積みされた石炭の発熱把握に適用した場合を表す全体の状況を説明するための概略構成を示してある。尚、
図1に示した部材と同一部材には同一符号を付してある。
【0045】
図6に基づいて屋根が備えられた貯炭場に山積みされた石炭(石炭パイル)の発熱把握に適用した発熱判断装置の実施例を説明する。
【0046】
図6に示すように、例えば、燃料として炭素系固体燃料である石炭を用いる発電所等の敷地には、屋根12が備えられた貯炭場に、石炭2が山積みされて保管されている(石炭パイル)。石炭2は、貯炭時に酸化発熱して昇温するのが現状であり、発火を防止するために、温度を把握することが必要である。
【0047】
本実施例では、石炭2のにおいを検出するにおい検出手段としてのセンサー5を石炭パイル11の近傍に備えている。センサー5の出力値により石炭2の温度と相関させ、相関させた石炭2の温度に基づいて石炭2の昇温状況を判断する制御手段6を備えている。
【0048】
センサー5の出力値により石炭2の温度と相関させ、においの変化により固体燃料である石炭2の昇温状況を判断して発熱を判断する。石炭パイル11の近傍で、センサー5により、においの変化を検出することで、石炭パイル11の表面や中心部分の温度の変化(上昇)を把握する。
【0049】
具体的には、屋根12の内側における、石炭パイル11の近傍には、センサー5a、5b、5c、5d、5e、5fが備えられている。センサー5a、5b、5c、5d、5e、5fは、においの質に対する出力値が異なるものとなっており、センサー5a、5b、5c、5d、5e、5fの出力値が制御手段6に入力される。制御手段6では、センサー5a、5b、5c、5d、5e、5fの出力値により石炭2の温度と相関させ、においの強さと質を把握することで、石炭パイル11の石炭2の昇温を判断する。
【0050】
前述した、
図3から
図5に示したように、正六角形の環状形状の大きさ、形の変化を把握することで、においの強度が大きくなったり、においの質が変化したりして、屋外に山積みされた石炭パイル11の石炭2の温度が高くなったこと(ガスの濃度や種類が変化したこと)が把握される。屋根12が設けられた貯炭場に、石炭2が山積みされている場合、自然環境の影響を受けやすく、自然環境の変化等により、発生したガスが風で拡散したり、石炭パイル11が湿気で湿って石炭2の昇温状況が変化したりする。
【0051】
このため、ガスの濃度や種類が変化しても、においの強度、及び、質の変化に応じて、石炭パイル11の石炭2の温度が上昇したことを判断することで、石炭パイル11の石炭2の発熱を判断することが可能になる。つまり、屋根12が設けられた貯炭場に石炭2が山積みされている状況で、即ち、自然環境が変化して、においの強さの変化を細かく把握しにくい状況で、質の変化を把握することで、石炭パイル11の表面や内部の温度の変化を把握して、屋外に山積された石炭2の発熱を判断することが可能になる。
【0052】
尚、センサー5a、5b、5c、5d、5e、5fを配置する位置は、石炭パイル11の中心部位、底部等、石炭パイル11の上部の位置以外の任意の場所に配置することも可能である。
【0053】
また、前述同様に、センサー5の数は6個に限らず、任意の数のセンサー5を設けることができる。また、6種類のセンサー5a、5b、5c、5d、5e、5fを設けたが、同じ種類のセンサー5を6個設けたり、2種類のセンサー5を3組設けたり、3種類のセンサー5を2組設けたりすることができ、センサー5の種類、個数、組み合わせは任意に選択することができる。
【0054】
センサー5の種類、個数、組み合わせを任意に選択することで、石炭パイル11が複数存在する貯炭場で、ゾーン毎の環境に応じて石炭2の発熱を判断することができる。また、石炭2の種類が異なる石炭パイル11が複数存在する貯炭場で、ゾーン毎の石炭2の種類に応じて石炭2の発熱を判断することができる。
【0055】
図7に基づいて屋外に山積みされた石炭の発熱把握に適用した発熱判断装置の実施例を説明する。
【0056】
図7に示すように、石炭パイル11には、においを集めるためのパイプ材13が3本設けられ、パイプ材13の上端部には流通制御弁14がそれぞれ設けられている。流通制御弁14は流路を介して吸引ポンプ15に接続され、集められたにおい成分を含む流体は、吸引ポンプ15の駆動により、におい検出手段としてのセンサー装置50に導かれる。
【0057】
センサー装置50の出力値により石炭2の温度と相関させ、相関させた石炭2の温度に基づいて石炭2の昇温状況を判断する制御手段6を備えている。流通制御弁14の開閉は制御手段6により制御され、必要な部位のパイプ材13からのサンプリング情報がセンサー装置50に導かれる。
【0058】
センサー装置50には複数のセンサー、例えば、センサー5a、5b、5c、5d、5e、5f(例えば、
図1参照)、及び、付帯機器(におい濃縮希釈装置、センサー洗浄用窒素ガス供給機器、自動メンテナンス機器、監視モニター機器等)が備えられている。
【0059】
流通制御弁14が開状態にされたパイプ材13からの流体が吸引ポンプ15によりセンサー装置50に導かれ、センサー装置50に備えられたセンサー5a、5b、5c、5d、5e、5f(例えば、
図1参照)の出力値により石炭2の温度と相関させ、においの変化により固体燃料である石炭2の昇温状況を判断して発熱を判断する。必要な箇所の石炭2のにおいの変化を検出することで、石炭パイル11の必要部位の温度の変化(上昇)を把握する。
【0060】
上述した実施例では、においをサンプリングする場所とセンサー装置50(センサー)の設置場所を別にすることができるため、センサー装置50を屋外の貯炭場等の厳しい環境から遠ざけて任意の場所に設置することが可能になる。センサーや付帯機器を備えたセンサー装置50を厳しい環境から離して設置できるので、精密機器で構成した付帯機器を適用したり、センサーとして高精度センサーを適用したりすることが容易になる。
【0061】
パイプ材13を用いてセンサー装置50にサンプリングガスを導く構成の発熱判断装置は、
図1に示したサイロ1や、
図6に示した屋根付きの貯炭場に用いることも可能である。
【0062】
図8から
図10に基づいて、2個のセンサーにより石炭2の発熱を把握する実施例を説明する。
【0063】
図8から
図10には2個のセンサーの出力値を2つの直交する方向のベクトルとして表現した状況を示してあり、
図8はセンサーの出力値(においの強度)が同じ割合で大きくなっている状況、
図9はセンサーの出力値(においの強度)が異なる割合で変化している状況、
図10は一つの合成ベクトルを基準としてにおいの質の変化している状況である。
【0064】
図8に示すように、2つのセンサー8a、8bの出力値を直交する方向のベクトルとして表現してある。センサー8a、8bは、例えば、褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭のにおいに対して出力値の変化が顕著となる2種類のセンサーが選択されている。
【0065】
例えば、
図8(a)に示すように、基準の温度では、2つのセンサー8a、8bの出力値のベクトルの合成ベクトルT1が、センサー8aの出力値のベクトルを基準の軸として、角度α1で表現され、
図8(b)に示すように、2つのセンサー8a、8bの出力値のベクトルの合成ベクトルT2(>T1)が、センサー8aの出力値のベクトルを基準の軸として、角度α2(=α1)で表現され、更に、
図8(c)に示すように、2つのセンサー8a、8bの出力値のベクトルの合成ベクトルT3(>T2)が、センサー8aの出力値のベクトルを基準の軸として、角度α3(=α2)で表現された場合、合成ベクトルTの角度αは変化せずに、2つのセンサー8a、8bの出力値のベクトルが同じ割合で大きくなっていることが表現されている。
【0066】
つまり、2つのセンサー8a、8bの出力値が同じ割合で高くなっていることが表現され、においの質はそのままで、においの強度が大きくなっていることが判り、屋内に貯蔵された石炭、もしくは、屋外に山積みされた石炭パイルの温度が高くなったことが把握される。
【0067】
一方、
図9(a)に示すように、基準の温度では、2つのセンサー8a、8bの出力値のベクトルの合成ベクトルT1が、センサー8aの出力値のベクトルを基準の軸として、角度β1で表現され、
図9(b)に示すように、2つのセンサー8a、8bの出力値のベクトルの合成ベクトルT2(>T1)が、センサー8aの出力値のベクトルを基準の軸として、角度β2(<β1)で表現され、更に、
図9(c)に示すように、2つのセンサー8a、8bの出力値のベクトルの合成ベクトルT3(>T2)が、センサー8aの出力値のベクトルを基準の軸として、角度β3(>β2)で表現された場合、即ち、合成ベクトルが大きくなっている一方で、センサー8aの出力値のベクトルを基準にした角度βが小さくなったり大きくなったりしている場合、2つのセンサー8a、8bの出力値のベクトルが異なる割合で大きくなっていることが表現されている。
【0068】
つまり、2つのセンサー8a、8bの出力値が異なる割合で高くなっていることが表現され、においの質が変化し、においの強度が大きくなっていることが判り、屋内に貯蔵された石炭、もしくは、屋外に山積みされた石炭パイルの、ガスの濃度(種類)が変化したこと等が把握されると共に、石炭の温度が高くなったことが把握される。
【0069】
これにより、2つのセンサー8の出力値をそれぞれベクトルとして表現し、それぞれのベクトルの長さ及び2つのベクトルの合成ベクトルに基づいて、においの強さと質を把握することができる。
【0070】
例えば、
図9(a)で表現された状態から、
図9(b)、
図9(c)で表現された状態に合成ベクトルの長さと傾きが変化した場合、においの強さと質の変化により石炭の発熱が進んでいると評価することができる。また、例えば、
図9(a)で表現された状態が発熱しているにおいであると評価され、
図9(b)で表現された状態に合成ベクトルの傾きが変化した場合、発熱が抑制されたと評価できる可能性もある。
【0071】
尚、説明の便宜上、センサー8aの出力値のベクトルを基準にして、合成ベクトルの角度(傾き)を表現し、においの質を評価した例を挙げて説明したが、基準の軸は、センサー8bのベクトルを基準にすることも可能であり、また、任意の方向の軸を基準にすることも可能である。質を評価する軸を任意にすることで、センサーの数を増やした場合でも、手法を複雑にすることなく、現場ごとのにおいの質を評価することが可能になる。
【0072】
図10に示すように、センサー8aの出力値A1とセンサー8bの出力値B1の合成ベクトルX1(例えば、40℃の時の出力値の合成ベクトル)を基準の軸として、センサー8aの出力値A2とセンサー8bの出力値B2の合成ベクトルX2(例えば、70℃の時の出力値の合成ベクトル)が、角度γ1で表現され、センサー8aの出力値A3とセンサー8bの出力値B3の合成ベクトルX3(例えば、100℃の時の出力値の合成ベクトル)が、角度γ2で表現された場合、即ち、合成ベクトルが大きくなっている一方で、合成ベクトルXの傾きが、基準の軸とされた合成ベクトルX1に対して変化していることが表現されている。
【0073】
つまり、傾きを求めるための基準となる軸で、例えば、40℃の時の基準の軸である、2つのセンサー8a、8bの出力値A1、B1の合成ベクトルX1に対し、合成ベクトルX2、合成ベクトルX3の傾きが変化していることが表現され、においの質が変化することにより、屋内に貯蔵された石炭、もしくは、屋外に山積みされた石炭の山(石炭パイル)の、ガスの濃度(種類)が変化したこと等が把握されると共に、石炭の温度が高くなったこと(例えば、70℃、100℃に変化したこと)が把握される。
【0074】
質を評価する基準の軸を、2つのセンサー8a、8bの出力値A1、B1の合成ベクトルX1とすることで、現場(環境)ごとの独自のにおい、即ち、石炭のにおいと、石炭以外の周辺環境のにおいが混ざったにおいとを合わせたにおいに対し、においの質の変化を現場の環境に合わせて表現することができ、信頼性の高い評価が可能になる。
【0075】
2つのセンサー8a、8bを適用した上記実施例において、2つのセンサー8a、8bの出力値の値を直接用いて合成ベクトルを表現しているが、センサー8a、8bの出力値に対して、においの強さや質に対して人が感じる基準指標を加味することも可能である。
【0076】
上述した炭素系固体燃料の発熱判断方法を実施する発熱判断装置は、石炭が山積みされている(貯蔵されている)場所の環境に拘わらず、石炭パイルの任意の部位(表面、中央部位)の温度の変化を把握することが可能になり、石炭パイルの発熱を判断することができる。これにより、石炭の発熱を抑制して石炭の自然発火を防止することができる。
【0077】
上述した実施例では、炭素系固体燃料として石炭を例に挙げて説明したが、炭素系固体燃料として、バイオマス由来の炭素系固体燃料(炭化燃料等)を適用することも可能である。