特許第6795331号(P6795331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6795331シリカ膜の製造方法、シリカ膜および電子素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795331
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】シリカ膜の製造方法、シリカ膜および電子素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20201119BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20201119BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20201119BHJP
   C07C 15/02 20060101ALN20201119BHJP
【FI】
   H01L21/316 H
   C01B33/12 C
   H01L21/90 Q
   !C07C15/02
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-106587(P2016-106587)
(22)【出願日】2016年5月27日
(65)【公開番号】特開2017-63178(P2017-63178A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2019年4月22日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0137077
(32)【優先日】2015年9月25日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】李 知 虎
(72)【発明者】
【氏名】盧 健 培
(72)【発明者】
【氏名】尹 熙 燦
(72)【発明者】
【氏名】ベ 鎭 希
(72)【発明者】
【氏名】任 浣 熙
【審査官】 宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−108825(JP,A)
【文献】 特開2010−206161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
C01B 33/12
H01L 21/768
C07C 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に炭素化合物を含む液状物質を塗布する段階と、
前記液状物質が塗布された基板上にシリカ膜形成用組成物を塗布する段階と、
前記シリカ膜形成用組成物が塗布された基板を硬化する段階と、を含み、
前記炭素化合物は、置換もしくは非置換のトリメチルベンゼン、置換もしくは非置換のジメチルベンゼン、および置換もしくは非置換のジエチルベンゼンからなる群から選択される、シリカ膜の製造方法。
【請求項2】
前記炭素化合物は、その構造内に置換もしくは非置換のベンゼン環を1つ含み、全炭素数は6〜14である、請求項1に記載のシリカ膜の製造方法。
【請求項3】
前記炭素化合物の沸点は、98℃〜200℃である、請求項1または2に記載のシリカ膜の製造方法。
【請求項4】
さらに、前記液状物質が芳香族系炭素化合物以外の他の炭素化合物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリカ膜の製造方法。
【請求項5】
前記シリカ膜形成用組成物は、ケイ素含有重合体および溶媒を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリカ膜の製造方法。
【請求項6】
前記ケイ素含有重合体は、ポリシラザンおよびポリシロキサザンの少なくとも一方である、請求項5に記載のシリカ膜の製造方法。
【請求項7】
前記溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、デカヒドロナフタレン、ジペンテン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、酢酸ブチル、酢酸アミル、およびメチルイソブチルケトンからなる群より選択された少なくとも1つを含む、請求項5または6に記載のシリカ膜の製造方法。
【請求項8】
前記シリカ膜形成用組成物を塗布する段階は、スピンコート法によって行われる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリカ膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ膜の製造方法、これによって製造されたシリカ膜、該シリカ膜を含む電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
平板表示装置には、スイッチング素子として、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、および半導体を含む薄膜トランジスタ(thin film transistor、TFT)が用られており、この薄膜トランジスタを制御するための走査信号を伝達するゲート線(gate line)と、画素電極に印加される信号を伝達するデータ線(data line)と、が平板表示装置に備えられる。また、半導体と複数の電極との間には、これらを区分するための絶縁膜が形成されている。絶縁膜として、ケイ素成分を含むシリカ膜が用いられる。シリカ膜は、基板上にシリカ膜形成用組成物を塗布する工程を経て作製することができる。特許文献1では、絶縁膜に用いられるシリカ系膜形成用組成物について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−308090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにシリカ膜は、基板上にシリカ膜形成用組成物を塗布する工程を経て作製することができる。この時、液体状のシリカ膜形成用組成物と固体状の基板との間の濡れ(wetting)がよくないと、塗膜の均一性が悪化することがある。これに伴い、コーティングされる組成物が多量に費やされて、工程の効率性が低下することがある。また、形成されるシリカ膜に欠陥が発生する場合がある。
【0005】
本発明の一目的は、シリカ膜形成用組成物を基材上に塗布しても、均一な膜を形成することのできるシリカ膜の製造方法を提供することである。本発明の他の目的は、シリカ膜形成用組成物の塗布量が少なくとも、均一な塗膜を形成することができるシリカ膜の製造方法を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、前記方法によって製造されたシリカ膜を提供することである。
【0007】
さらに他の目的は、前記シリカ膜を含む電子素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、基板上に炭素化合物を含む液状物質を塗布する段階と、液状物質が塗布された基板上にシリカ膜形成用組成物を塗布する段階と、前記シリカ膜形成用組成物が塗布された基板を硬化する段階とを含むシリカ膜の製造方法を提供する。
【0009】
前記炭素化合物は、その構造内に置換もしくは非置換のベンゼン環を1つ含み、全炭素数は6〜14であってよい。
【0010】
前記炭素化合物の沸点は、98℃〜200℃であってもよい。
【0011】
前記炭素化合物は、置換もしくは非置換のトリメチルベンゼン、置換もしくは非置換のジメチルベンゼン、および置換もしくは非置換のジエチルベンゼンからなる群から選択されてもよい。
【0012】
前記シリカ膜形成用組成物は、ケイ素含有重合体および溶媒を含んでもよい。
【0013】
前記ケイ素含有重合体は、ポリシラザン、およびポリシロキサザンの少なくとも一方であってもよい。
【0014】
前記溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、デカヒドロナフタレン、ジペンテン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、酢酸ブチル、酢酸アミル、およびメチルイソブチルケトンからなる群より選択された少なくとも1つを含んでもよい。
【0015】
前記シリカ膜形成用組成物を塗布する段階は、スピンコート法によって行われるとよい。
【0016】
前記硬化は、150℃以上の不活性気体を含む雰囲気下で行われるとよい。
【0017】
他の実施形態によれば、前記シリカ膜の製造方法によって形成されたシリカ膜を提供する。
【0018】
さらに他の実施形態によれば、前記シリカ膜を含む電子素子を提供する。
【発明の効果】
【0019】
シリカ膜形成用組成物の塗布段階の前に、基板に所定の前処理を加えて前記シリカ膜形成用組成物および基板の間の濡れ(wetting、ウェッティング)を向上させることによって、少量の塗布液でも基板全体を効率的にコーティングして均一な膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】シリカ膜の厚さ均一性の評価方法を説明するための参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は、種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0022】
また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で行う。
【0023】
図面において、様々な層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。明細書全体にわたって類似の部分については同一の図面符号を付した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるとする時、これは、他の部分の「直上」にある場合のみならず、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の「直上」にあるとする時には、中間に別の部分がないことを意味する。
【0024】
本明細書において、別途の定義がない限り、「置換の」とは、化合物中の水素原子が、ハロゲン原子(F、Br、Cl、またはI)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸またはその塩、アルキル基(好適にはC6〜C30)、C2〜C16のアルケニル基、C2〜C16のアルキニル基、アリール基、C7〜C13のアリールアルキル基、C1〜C4のオキシアルキル基、C1〜C20のヘテロアルキル基、C3〜C20のヘテロアリールアルキル基、シクロアルキル基(好適にはC3〜C30)、C3〜C15のシクロアルケニル基、C6〜C15のシクロアルキニル基、ヘテロシクロアルキル基(好適にはC2〜C30)、およびこれらの組み合わせから選択された置換基で置換されていることを意味する。
【0025】
また、本明細書において、別途の定義がない限り、「ヘテロ」とは、N、O、S、およびPから選択されたヘテロ原子を1〜3個含有することを意味する。
【0026】
また、本明細書において、「*」は、同一または異なる原子、または化学式に連結される部分を意味する。
【0027】
以下、本発明の一実施形態に係るシリカ膜の製造方法に関して説明する。
【0028】
本発明の一実施形態に係るシリカ膜の製造方法は、基板上に炭素化合物を含む液状物質を塗布する段階と、液状物質が塗布された基板上にシリカ膜形成用組成物を塗布する段階と、前記シリカ膜形成用組成物が塗布された基板を硬化する段階とを含む。
【0029】
液状物質はプリウェットの目的で用いられるので、プリウェット用液状物質ともいえる。
【0030】
ここで、「液状」とは、室温(25℃)において液状であることを意味する。具体的には、25℃において、E型粘度計で測定される粘度が1000Pa・s以下であることを意味する。
【0031】
前記プリウェット(pre−wetting、プリウェッティング)とは、湿式塗布(wetting)段階の前に行われる事前処理工程を意味し、RRC(Reduced resist consumption)工程ともいう。
【0032】
一実施形態に係るシリカ膜の製造方法は、基板上にシリカ膜形成用組成物をコーティングする前に、炭素化合物を含むプリウェット(pre−wetting)用液状物質を塗布する段階を含む。これによって、前記シリカ膜形成用組成物の塗布特性、つまり、固体の基板と液体のシリカ膜形成用組成物との間のウェッティング特性を向上させることができ、均一な塗膜を形成することができる。
【0033】
前記炭素化合物は、芳香族系炭素化合物であることが好ましく、さらに、その構造内に置換もしくは非置換のベンゼン環を1つ含み、総炭素数が6〜14であることが好ましく、特に、構造内に置換もしくは非置換のベンゼン環を1つ含み、総炭素数が6〜14である炭化水素化合物であることが好ましい。より好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基で置換されたベンゼンであり、この際、置換数は1〜3であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。前記炭素化合物を含むプリウェット用液状物質を使用する場合、後続のシリカ膜形成用組成物のコーティング工程でより均一な薄膜を形成することができるだけでなく、薄膜表面のホールディフェクト(hole defect)の発生を低減することができる。
【0034】
例えば、前記炭素化合物の沸点は、特に制限されるものではないが、乾燥の際に与える基板への影響が少なく、また、基板への濡れ性を考慮すると、98℃〜200℃であることが好ましく、100℃〜180℃であることがより好ましい。
【0035】
例えば、前記芳香族系炭素化合物としては、置換もしくは非置換のトリメチルベンゼン、置換もしくは非置換のジメチルベンゼン、または置換もしくは非置換のジエチルベンゼンなどが挙げられ、好ましくは、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼンなどのトリメチルベンゼン、1,2−ジメチルベンゼン、1,3−ジメチルベンゼン、1,4−トリメチルベンゼンなどのジメチルベンゼン、1,2−ジエチルベンゼン、1,4−エチルベンゼンなどのジエチルベンゼンである。これらは、液状物質において単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0036】
また、炭素化合物が芳香族系炭素化合物である場合、芳香族系炭素化合物以外の他の炭素化合物と混合して用いてもよい。他の炭素化合物としては、芳香族系炭素化合物と相溶性の高いものであれば特に制限はなく、具体的には、シクロヘキサン、シクロヘキセン、デカヒドロナフタレン、ジペンテン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、酢酸ブチル、酢酸アミル、メチルイソブチルケトンなどが挙げられ、中でもジプロピルエーテル、ジブチルエーテルが好ましく、ジブチルエーテルがより好ましい。
【0037】
芳香族系炭素化合物と、他の炭素化合物との混合質量比は、本発明の効果が奏されるように適宜設定されるが、炭素化合物:他の有機溶媒=1:10〜100:1であることが好ましく、5:5〜100:1であることがより好ましい。
【0038】
前記液状物質は、前記炭素化合物自体、または2種以上の炭素化合物の混合物であってもよく、あるいは前記炭素化合物以外の他の成分が混合された溶液であってもよい。
【0039】
前記プリウェット用液状物質は、例えば、スピンコート、スリットコーティング、インクジェット印刷などのような方法で塗布すればよく、塗布方式に特別な制限があるわけではない。
【0040】
塗布膜厚は、用いられる用途により適宜設定される。
【0041】
前記プリウェット用液状物質の塗布が完了すると、基板上にシリカ膜形成用組成物を塗布する段階を経る。
【0042】
前記シリカ膜形成用組成物は、ケイ素含有重合体および溶媒を含んでもよい。ケイ素含有重合体は、その構造中にSiを含む重合体である。
【0043】
前記シリカ膜形成用組成物に含まれているケイ素含有重合体は、下記化学式1で示す部分(moiety)を含むポリシラザンであってもよい。
【0044】
【化1】
【0045】
前記化学式1において、R〜Rは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換もしくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基(好適にはC1〜C30)、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、またはこれらの組み合わせであり、
前記「*」は、連結地点を意味する。
【0046】
ケイ素含有重合体はR〜Rが水素であるパーヒドロポリシラザンであることがより好ましい。
【0047】
前記ケイ素含有重合体は、多様な方法によって製造可能であり、例えば、ハロシラン(例えば、ジクロロシラン)とアンモニアとを反応させて製造することができる。
【0048】
例えば、前記シリカ膜形成用組成物に含まれているケイ素含有重合体は、前記化学式1で示す部分(moiety)のほか、下記化学式2で示す部分(moiety)をさらに含むポリシラザン(ポリシロキサザン)であってもよい。
【0049】
【化2】
【0050】
前記化学式2のR〜Rは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換もしくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基(好適にはC1〜C30)、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、またはこれらの組み合わせであり、
前記「*」は、連結地点を意味する。ここで、R〜Rは、水素原子であることが好ましい。
【0051】
この場合、前記ケイ素含有重合体は、その構造内にケイ素−窒素(Si−N)結合部分のほか、ケイ素−酸素−ケイ素(Si−O−Si)結合部分を含み、このようなケイ素−酸素−ケイ素(Si−O−Si)結合部分が熱処理による硬化時に応力を緩和させて収縮を低減することができる。
【0052】
例えば、前記ケイ素含有重合体は、前記化学式1で示す部分、前記化学式2で示す部分を含み、さらに、下記化学式3で示す部分をさらに含んでもよい。
【0053】
【化3】
【0054】
前記化学式3で示す部分は、末端部が水素でキャッピングされている構造で、これは、前記ポリシラザンまたはポリシロキサザン構造中のSi−H結合の総含有量に対して、15〜35重量%含まれてもよい。前記化学式3の部分がポリシラザンまたはポリシロキサザン構造中に前記範囲に含まれる場合、熱処理時に酸化反応が十分に起こりながらも、熱処理時にSiH部分がSiHになって飛散するのを防止して収縮を防止し、これからクラックが発生するのを防止することができる。
【0055】
前記ケイ素含有重合体は、前記シリカ膜形成用組成物の総含有量に対して、0.1〜50重量%含まれてもよく、例えば、0.1〜30重量%含まれてもよい。前記範囲に含まれる場合、適切な粘度を維持することができ、膜形成時に間隙(void)なく平坦で均等に形成可能になる。
【0056】
前記シリカ膜形成用組成物に含まれる溶媒は、前記ケイ素含有重合体を溶かす溶媒であれば特に制限はなく、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、デカヒドロナフタレン、ジペンテン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、酢酸ブチル、酢酸アミル、メチルイソブチルケトン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された少なくとも1つを含んでもよい。
【0057】
前記シリカ膜形成用組成物は、熱酸発生剤(thermal acid generator、TAG)をさらに含んでもよい。
【0058】
熱酸発生剤は、前記シリカ膜形成用組成物の現像性を改善するための添加剤で、前記組成物に含まれている重合体が比較的低い温度で現像できるようにする。
【0059】
前記熱酸発生剤は、熱によって酸(H)を発生可能な化合物であれば特に限定はないが、90℃以上で活性化されて十分な酸を発生し、揮発性が低いものを選択すればよい。
【0060】
前記熱酸発生剤は、例えば、ニトロベンジルトシレート、ニトロベンジルベンゼンスルホネート、フェノールスルホネート、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0061】
前記熱酸発生剤は、シリカ膜形成用組成物の総含有量に対して、0.01〜25重量%の範囲で含まれることが好ましい。前記範囲で含まれる場合、比較的低い温度で前記重合体が現像できると共に、コーティング性を改善することができる。
【0062】
前記シリカ膜形成用組成物は、界面活性剤をさらに含んでもよい。
【0063】
界面活性剤は特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、エフトップEF301、EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製造)、メガファックF171、F173(大日本インキ(株)製造)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製造)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製造)などのフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製造)など、その他シリコン系界面活性剤が挙げられる。
【0064】
界面活性剤は、シリカ膜形成用組成物の総含有量に対して、0.001〜10重量%の範囲で含まれることが好ましい。前記範囲で含まれる場合、溶液の分散性を改善すると共に、膜形成時の膜厚さの均一性を高めることができる。
【0065】
前記シリカ膜形成用組成物は、前記ケイ素含有重合体および前記成分(任意成分である熱酸発生剤や前記界面活性剤など)が溶媒に溶解した溶液の形態であることが好ましい。
【0066】
前記シリカ膜形成用組成物は、溶液工程で塗布すればよく、例えば、スピンコート、スリットコーティング、インクジェット印刷などのような方法で塗布すればよい。中でも、簡便で均一に塗布可能であることから、シリカ膜形成用組成物を塗布する段階は、スピンコート法による行われることが好ましい。
【0067】
前記基板は、例えば、半導体、液晶などのデバイス基板であってもよいが、これに限定されるものではない。基板としては特に限定されるものではないが、シリコンウエハ;液晶;ガラス基板;ポリオキシメチレン、ポリビニルナフタレン、ポリエーテルケトン、フルオロ重合体、ポリ−αメチルスチレン、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフタルアミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂基板;金属基板;などが挙げられる。中でも、本発明の効果が顕著に得られることから、半導体、液晶などのデバイス基板であることが好ましい。
【0068】
シリカ膜形成用組成物の塗布膜厚は、用いられる用途により適宜設定される。
【0069】
前記シリカ膜形成用組成物の塗布が完了すると、次に、基板を乾燥し、シリカ膜形成用組成物の塗膜を硬化する段階を経る。
【0070】
シリカ膜形成用組成物が塗布された基板を乾燥する段階における乾燥は、溶媒が除去できる温度であれば特に限定されないが、好ましくは100〜500℃、より好ましくは100〜400℃で乾燥する。また、乾燥時間としては、1〜5分、より好ましは2〜3分であることが好ましい。
【0071】
前記硬化は、例えば、熱、紫外線、マイクロウェーブ、音波、または超音波などのエネルギーを加えて行われるとよい。より具体的には、硬化は、効率的に硬化が行われることから、例えば、150℃以上の不活性気体を含む雰囲気下で行われる。ケイ素含有重合体がSi−N結合を含む場合、酸素および水(水蒸気)を含む雰囲気中で加熱するとSi−N結合がSi−O結合に置換されることが知られている。この際の加熱条件としては、硬化を考慮して、150℃以上であることが好ましく、300℃以上であることが好ましい。加熱温度の上限としては、形成されるシリカ膜の平坦度が低下しないよう、通常1000℃以下とする。加熱時間としては特に限定されるものではないが、硬化性などを考慮して、10〜180分とすることが好ましく、30〜120分とすることがより好ましい。硬化段階での雰囲気としては、例えば、酸素雰囲気、水蒸気雰囲気、酸素と水蒸気の混合雰囲気または不活性気体を含む雰囲気で行うことが好ましく、特に不活性雰囲気であることがより好ましい。不活性気体としては、窒素、ヘリウム、ネオン、またはアルゴンなどが挙げられる。これらの不活性気体は1種単独であっても2種以上併用してもよい。
【0072】
前記シリカ膜の製造方法は、基板上にシリカ膜形成用組成物を塗布する前に、上述した炭素化合物を含むプリウェット用液状物質を塗布することによって、後続のスピンコート法によるシリカ膜形成用組成物の塗布過程でより少量の組成物で均一にコーティングできるようにする。
【0073】
上述した炭素化合物を含むプリウェット用液状物質を塗布する段階を経ることによって、前記シリカ膜形成用組成物に含まれている成分、例えば、ポリシラザン成分が大気または大気中の水分と接触して生じるガスの発生をより抑制させることができ、基板上にシリカ膜形成用組成物の塗布時にシリカ膜形成用組成物の物理的挙動を容易にして、大気の侵入が最小化された密なシリカ膜を形成することができる。
【0074】
これによって、最終的に製造されたシリカ膜の表面に発生するホールディフェクト(Hole defect)を低減することができる。
【0075】
本発明の他の実施形態によれば、上述した方法によって製造されたシリカ膜を提供する。前記シリカ膜は、例えば、絶縁膜、分離膜、ハードコートのような保護膜などであってもよいが、これらに限定されるものではない。絶縁膜は、例えば、トランジスタ素子とビット線との間、トランジスタ素子とキャパシタとの間などに使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
本発明のさらに他の実施形態によれば、上述した方法によって製造されたシリカ膜を含む電子素子を提供する。前記電子素子は、例えば、LCDやLEDなどのようなディスプレイ素子、または半導体素子であってもよい。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を通して、上述した本発明の実施形態をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は単に説明の目的のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0078】
製造例:シリカ膜形成用組成物の製造
容量2Lの撹拌、温度制御装置付き反応器の内部を乾燥窒素に置換した。そして、乾燥ピリジン1,500gを注入して十分に混合した後に反応器に入れて、これを20℃に保温した。次に、ジクロロシラン100gを1時間かけて徐々に注入した。そして、撹拌しながら、これにアンモニア70gを3時間かけて徐々に注入した。次に、乾燥窒素を30分間注入し、反応器内に残存するアンモニアを除去した。得られた白色スラリー状の生成物を乾燥窒素雰囲気中にて1μmのテフロン(登録商標)製ろ過器を用いてろ過したところ、ろ液1,000gを得た。これに乾燥キシレン1,000gを添加した後、ロータリーエバポレーターを用いて、溶媒をピリジンからキシレンに置換する操作を計3回繰り返しながら固形分濃度を20重量%に調整し、最後に、ポアサイズ0.03μmのテフロン(登録商標)製ろ過器でろ過した。得られたポリシラザンの酸素含有量は3.8%、SiH/SiH(total)は0.22、重量平均分子量は4,000であった。重量平均分子量は、GPC;HPLC Pump1515、RI Detector2414(Waters社製造)およびColumn:LF804(Shodex社製造)を用いて測定した。
【0079】
前記得られたポリシラザン(パーヒドロポリシラザン)をジブチルエーテル(dibutylether、DBE)と混合して、固形分含有量15±0.1重量%のシリカ膜形成用組成物を準備した。
【0080】
実施例1
プリウェット用液状物質として1,3,5−トリメチルベンゼン(trimethylbenzene、TMB、沸点164.7℃)3.0mlを取って、優先的に直径12インチのシリコンウエハの中央部分にスピンコーター(MIKASA社製、MS−A200)によって2000rpmで20秒間スピン塗布後、前記製造例で得られたシリカ膜形成用組成物を3.0ml取って、前記と同じ条件で再びスピン塗布した。その後、150℃で3分間、ホットプレートで加熱して薄膜を形成した。
【0081】
実施例2
プリウェット用液状物質として1,3,5−トリメチルベンゼン(trimethylbenzene、TMB、沸点164.7℃)とジブチルエーテル(dibutylether、DBE)とを7:3の比率(質量比)で混合した混合溶液3.0mlを用いたことを除いては、実施例1と同様にして薄膜を形成した。
【0082】
実施例3
プリウェット用液状物質として1,4−ジエチルベンゼン(diethylbenzene、DEB、沸点138℃)を用いたことを除いては、実施例1と同様にして薄膜を形成した。
【0083】
比較例1
プリウェット用液状物質の塗布過程を経ていないことを除いては、実施例1と同様にして薄膜を形成した。
【0084】
評価1:膜厚さ均一性の確認
前記実施例1〜3、および比較例1から製造された薄膜が形成されているウエハ上に、K−MAC社製反射分光型膜厚計(ST−5000)を用いて、図1に示されているように、9個のポイントを十字状(+)に指定して、各地点において、平均厚さ、厚さ範囲(最高厚さ−最小厚さ)、および厚さ均一性を確認した。
【0085】
膜厚さ均一性は下記式1に基づいて評価する。
【0086】
【数1】
【0087】
その結果は下記表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1を参照すれば、所定のプリウェッティング工程を経た実施例1〜3の場合、プリウェッティング工程を経ていない比較例1と比較して、シリカ膜の厚さ均一性が小さい値を有することが分かる。
【0090】
実施例4〜6、および比較例2
前記膜厚さ均一性を評価した実施例1〜3、および比較例1から形成された薄膜を、それぞれ、800℃で高温酸化反応を進行させて酸化膜に転換した後、エッチング過程を経てシリカ膜を形成した。実施例1〜3で得られた薄膜から形成されたシリカ膜を実施例4〜6と、比較例1で得られた薄膜から形成されたシリカ膜を比較例2とする。
【0091】
評価2:シリカ膜のホールディフェクト(hole defect)発生の有無の確認
前記実施例4〜6、および比較例2から形成されたシリカ膜のディフェクトを、AIT XP(KLA−Tencor社製、AIT XP Fusion)および電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S5500)を用いて観測した。全体のディフェクト中において、パターンの上径150nm以上の球状のものをカウントして、これをホールディフェクトと見なした。
【0092】
その結果は下記表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
表2を参照すれば、所定のプリウェッティング工程を経てシリカ膜を製造した実施例4〜6の場合、プリウェッティング工程を経ていない比較例2と比較して、全体のディフェクト数も相対的に少ないだけでなく、特にシリカ膜のホールディフェクト(hole defect)の発生が非常に少ないことが分かる。
【0095】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、以下の請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
図1