(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0017】
[第1の実施形態]
[通信システム]
以下、図面を参照して、実施形態に係る通信システムについて説明する。
図4は、実施形態に係るOLTの一例を示す部分ブロック図である。実施形態に係るOLTは、加入者線端局装置である。OLTは、光通信網を経由する光信号によって他の通信装置(例えば、ONU)との通信を実現する装置である。OLTが接続される光通信網は、例えばPON(Passive Optical Network)等の受動光通信網である。OLTは、例えば、光通信網に接続された局舎に設置される。
OLTは、一般的な偏波・位相ダイバーシティコヒーレント受信器101を備える。デジタルコヒーレント伝送では、光強度変調、光位相変調、光周波数変調などが用いられる。
【0018】
OLTは、偏波・位相ダイバーシティコヒーレント受信器101と、アナログデジタル変換器109aとアナログデジタル変換器109bとアナログデジタル変換器109cとアナログデジタル変換器109dとデジタル信号処理回路110とを備える。
偏波・位相ダイバーシティコヒーレント受信器101は、偏波スプリッタ(PBS: polarization beam splitter)102と、ビームスプリッタ(BS: Beam Splitter)103と、90度光ハイブリッド(Optical Hybrid)104aと、90度光ハイブリッド104bとを備える。また、偏波・位相ダイバーシティコヒーレント受信器101は、バランス受信器105aと、バランス受信器105bと、バランス受信器105cと、バランス受信器105dと、トランスインピーダンスアンプ(TIA: Transimpedance Amplifier)106aと、TIA106bと、TIA106cと、TIA106dと、可変利得増幅器(VGA: Variable-Gain Amplifier)107aと、VGA107bと、VGA107cと、VGA107dと、AC結合108とを備える。
【0019】
PBS102は、光信号PsigのX偏波およびY偏波を分離する。PBS102は、X偏波を90度光ハイブリッド104aへ出力し、Y偏波を90度光ハイブリッド104bへ出力する。
BS103は、局部発振光Ploを分岐し、90度光ハイブリッド104aと、90度光ハイブリッド104bへ出力する。
90度光ハイブリッド104aは、PBS102、およびBS103と接続される。90度光ハイブリッド104aは、PBS102が出力した光信号PsigのX偏波の位相を分離する。90度光ハイブリッド104aは、バランス受信器105aへ、X偏波のI軸成分を出力する。90度光ハイブリッド104aは、バランス受信器105bへ、X偏波のQ軸成分を出力する。
90度光ハイブリッド104bは、PBS102、およびBS103と接続される。90度光ハイブリッド104bは、バランス受信器105cへ、Y偏波のI軸成分を出力する。90度光ハイブリッド104bは、バランス受信器105dへ、Y偏波のQ軸成分を出力する。これにより、偏波・位相ダイバーシティコヒーレント受信器101の感度は光信号の偏波状態によらない。
【0020】
バランス受信器105aは、90度光ハイブリッド104aと接続される。バランス受信器105aは、局発光とのビート成分を検出する。
バランス受信器105bは、90度光ハイブリッド104aと接続される。バランス受信器105bは、局発光とのビート成分を検出する。
バランス受信器105cは、90度光ハイブリッド104bと接続される。バランス受信器105cは、局発光とのビート成分を検出する。
バランス受信器105dは、90度光ハイブリッド104bと接続される。バランス受信器105dは、局発光とのビート成分を検出する。
ここで、偏波・位相ダイバーシティコヒーレント受信器101に入力する信号光の入力パワーをPsとし、局発光のパワーをPLoとすると、各バランス受信器105a−バランス受信器105dで検出される受信電流は以下の式(1)−式(4)で表される。だたし、バランス受信器105aで検出される受信電流をiPD1とし、バランス受信器105bで検出される受信電流をiPD2とし、バランス受信器105cで検出される受信電流をiPD3とし、バランス受信器105dで検出される受信電流をiPD4とする。
【0022】
式(1)−式(4)で表される受信電流は、それぞれ、各X偏波、Y偏波のI成分、Q成分に対応する。式(1)−式(4)において、αはX偏波とY偏波との間のパワーの比率、δは偏波間の位相差、θs(t)は局発光と信号光のビート光の位相、θn(t)は位相雑音、ωIFtは局発光と信号光間の波長差の角速度を表す。
【0023】
TIA106aは、バランス受信器105aと接続される。TIA106aは、受信電流iPD1をインピーダンス変換し、インピーダンス変換することによって得られる電圧を、VGA107aへ出力する。
TIA106bは、バランス受信器105bと接続される。TIA106bは、受信電流iPD2をインピーダンス変換し、インピーダンス変換することによって得られる電圧を、VGA107bへ出力する。
TIA106cは、バランス受信器105cと接続される。TIA106cは、受信電流iPD3をインピーダンス変換し、インピーダンス変換することによって得られる電圧を、VGA107cへ出力する。
TIA106dは、バランス受信器105dと接続される。TIA106dは、受信電流iPD4をインピーダンス変換し、インピーダンス変換することによって得られる電圧を、VGA107dへ出力する。
【0024】
VGA107aは、TIA106aと接続される。VGA107aは、TIA106aが出力した電圧を増幅し、増幅した電圧を、AC結合108へ出力する。
VGA107bは、TIA106bと接続される。VGA107bは、TIA106bが出力した電圧を増幅し、増幅した電圧を、AC結合108へ出力する。
VGA107cは、TIA106cと接続される。VGA107cは、TIA106cが出力した電圧を増幅し、増幅した電圧を、AC結合108へ出力する。
VGA107dは、TIA106dと接続される。VGA107dは、TIA106dが出力した電圧を増幅し、増幅した電圧を、AC結合108へ出力する。
AC結合108は、VGA107a、VGA107b、VGA107c、およびVGA107dと接続される。さらに、AC結合108は、アナログデジタル変換器109a、アナログデジタル変換器109b、アナログデジタル変換器109c、およびアナログデジタル変換器109dと接続される。AC結合108は、VGA107aとアナログデジタル変換器109aとをAC結合し、VGA107bとアナログデジタル変換器109bとをAC結合し、VGA107cとアナログデジタル変換器109cとをAC結合し、VGA107dとアナログデジタル変換器109dとをAC結合する。
【0025】
アナログデジタル変換器109aは、VGA107aが出力した信号をデジタル信号へ変換し、そのデジタル信号をデジタル信号処理回路110へ出力する。
アナログデジタル変換器109bは、VGA107bが出力した信号をデジタル信号へ変換し、そのデジタル信号をデジタル信号処理回路110へ出力する。
アナログデジタル変換器109cは、VGA107cが出力した信号をデジタル信号へ変換し、そのデジタル信号をデジタル信号処理回路110へ出力する。
アナログデジタル変換器109dは、VGA107dが出力した信号をデジタル信号へ変換し、そのデジタル信号をデジタル信号処理回路110へ出力する。
デジタル信号処理回路110は、アナログデジタル変換器109a、アナログデジタル変換器109b、アナログデジタル変換器109c、およびアナログデジタル変換器109dと接続される。デジタル信号処理回路110は、アナログデジタル変換器109aが出力したデジタル信号、アナログデジタル変換器109bが出力したデジタル信号、アナログデジタル変換器109cが出力したデジタル信号、およびアナログデジタル変換器109dが出力したデジタル信号を処理する。デジタル信号処理回路110が実行する処理については、後述する。
【0026】
単一偏波変調信号を受信した場合、例えば強度変調成分と、位相変調成分、又は周波数変調成分はそれぞれ式中のPs(t)、θs(t)に相当する。受信電流iPD1−iPD4は、局発光と信号光との間の波長差によって位相が変動する。前述の通り、一般的なコヒーレントレシーバは、歩留まりを上げるためAC結合されている。したがって、PONの上り通信のようなバースト信号を入力すると、変調方式によっては受信信号の平均パワーが変動し、AC結合時に過渡応答が生じることで波形歪が生じる。
【0027】
図5は、受信信号の波形(その1)の一例を示す図である。
図5において、(A)は信号光の波長と局発光の波長とが一致している場合のI成分を示し、(B)は信号光の波長と局発光の波長とが一致している場合のQ成分を示す。また、
図5において、(C)は信号光の波長と局発光の波長とが一致していない場合のI成分を示し、(D)は信号光の波長と局発光の波長とが一致していない場合のQ成分を示す。なお、
図5において、a、b、c、およびdは、受信信号の平均パワーである。
図5に示される例では、受信信号は位相変調信号であり、IQ変調器によってQPSK変調された信号光の偏光状態が、受信器の入力偏波軸に対して一致している場合を示す。
図5に示されるように、QPSK変調の場合、常に位相が±90度、180度遷移する。そのため、受信信号波形はI成分、Q成分ともに常に正負対称となる。したがって、波長オフセットによって生じる位相回転量ωIFtの値によらずI成分、およびQ成分の受信信号の平均パワーの変動は少なく、バースト信号を受信する場合において過渡応答が生じることは無い。
一方で、局発光や信号光の波長差(波長オフセット量)がデジタル信号処理回路の補償できる範囲を超えた場合、正しく信号を復号できない。また、適応等化フィルタ回路のフィルタ係数の最適化に時間がかかる。
【0028】
図6は、受信信号の波形(その2)の一例を示す図である。
図6において、(A)は信号光の波長と局発光の波長とが一致している場合のI成分を示し、(B)は信号光の波長と局発光の波長とが一致している場合のQ成分を示す。また、
図6において、(C)は信号光の波長と局発光の波長とが一致していない場合のI成分を示し、(D)は信号光の波長と局発光の波長とが一致していない場合のQ成分を示す。なお、
図6において、a、b、c、およびdは、受信信号の平均パワーである。
図6に示される例では、受信信号は強度変調信号である。
図6の(A)と(B)とによれば、受信電流は、I軸又はQ軸に対して非対象な信号となる。しかし、受信信号の平均パワーの変動は少ない。
図6の(C)と(D)とによれば、強度変調成分は、デジタル信号処理回路の構成は簡易になるが、ωIFtの値によって、I成分、およびQ成分の受信信号パワーが変動する。また、信号光と局発光の波長が一致している場合、I成分、又はQ成分のDCバランスが崩れるため、バースト信号をAC結合で受信すると波形歪が生じる恐れがある。
【0029】
(送信器)
図7は、実施形態に係る送信器の一例を示す図である。実施形態に係る送信器200は、位相変調と強度変調とを同時に実行する。
送信器200は、光源201と、強度・位相変調器202と、信号生成回路203と、デジタルアナログ変換器204とを備える。
信号生成回路203は、送信データを生成する。この送信データは、デジタルデータである。信号生成回路203は、デジタルアナログ変換器204へ、送信データを出力する。
デジタルアナログ変換器204は、信号生成回路203と接続される。デジタルアナログ変換器204は、デュアルレートに対応し、信号生成回路203が出力した送信データを、第1レートでアナログデータへ変換するとともに、第2レートでアナログデータへ変換する。以下、送信データを第1のレートでアナログデータへ変換することによって得られるアナログ信号を第1信号といい、送信データを第2のレートでアナログデータへ変換することによって得られるアナログ信号を第2信号という。デジタルアナログ変換器204は、強度・位相変調器202へ、第1信号と第2信号とを出力する。
【0030】
光源201は、レーザダイオードなどによって実現され、強度・位相変調器202へ、光信号を出力する。
強度・位相変調器202は、光源201、およびデジタルアナログ変換器204と接続される。強度・位相変調器202は、IQ変調器などによって実現される。強度・位相変調器202は、デジタルアナログ変換器204が出力した第1信号によって光源201が出力する光信号を強度変調すると同時に、デジタルアナログ変換器204が出力した第2信号によって位相変調する。強度・位相変調器202は、強度変調と位相変調とを、それぞれ異なる独立のシンボルレートで行う。具体的には、強度・位相変調器202は、強度変調を、位相変調のシンボルレートより低いシンボルレートで行う。強度・位相変調器202は、光源201からの光信号を、第1信号で強度変調するとともに、第2信号で位相変調した信号である強度位相変調信号を送信する。
また、強度・位相変調器202は、デジタルアナログ変換器204が出力した第2信号によって光源201が出力する光信号を位相変調する。強度・位相変調器202は、光源201からの光信号を、第2信号で位相変調した信号である位相変調信号を送信する。
強度・位相変調器202が送信する信号のフレームフォーマットについては、後述する。
【0031】
図8は、受信信号の波形の一例を示す図である。
図8は、
図7を参照して説明した送信器200が送信する波形の一例であり、NRZ(Non Return to Zero)による光強度変調、およびQPSKの光位相変調を用いた信号光を送信した場合を示す。
図8において、(A)は周波数オフセットが存在しない場合のI成分であり、(B)は周波数オフセットが存在しない場合のQ成分である。また、
図8において、(C)は周波数オフセットが存在する場合のI成分であり、(D)は周波数オフセットが存在する場合のQ成分である。なお、
図8において、a、b、c、およびdは、受信信号の平均パワーである。
図8の(A)と(B)とによれば、位相変調成分により、受信信号の波形はI成分、およびQ成分ともに受信信号の平均パワーの変動が少なく、かつ正負対称な波形となる。したがって、AC結合、バースト信号を受信したときの過渡応答による波形劣化を防ぐことができる。この特性は、
図8の(C)と(D)の波長オフセットが生じている場合においても同様となる。
本実施形態に係る送信器200によれば、送信器200は、強度変調と位相変調とをそれぞれ異なる独立のシンボルレートで行う。このように構成することによって、送信器200が送信した光信号を受信する受信器は、強度変調信号のバースト信号をコヒーレント受信した場合においても平均パワーの変動による波形劣化を防ぐことができる。さらに、信号光の波長オフセット量に依らず強度変調のバースト信号を波形劣化せずに受信することができる。
【0032】
[第2の実施形態]
[通信システム]
本実施形態に係る通信システムは、第1の実施形態に係る通信システムを適用できる。ただし、送信器200の代わりに、送信器300を備える。
(送信器)
図9は、実施形態に係る送信器の一例を示す図である。実施形態に係る送信器300は、周波数変調と強度変調とを同時に実行する。
送信器300は、光源301と、強度変調器302と、信号生成回路303と、デジタルアナログ変換器304とを備える。
信号生成回路303は、送信データを生成する。この送信データは、デジタルデータである。信号生成回路303は、デジタルアナログ変換器304へ、送信データを出力する。
デジタルアナログ変換器304は、信号生成回路303と接続される。デジタルアナログ変換器304は、デュアルレートに対応し、信号生成回路303が出力した送信データを、第1レートで第1信号へ変換し、第2レートで第2信号へ変換する。デジタルアナログ変換器304は、強度変調器302へ第1信号を出力し、光源301へ第2信号を出力する。
【0033】
光源301は、デジタルアナログ変換器304と接続される。光源301は、直接変調レーザ(DML: direct modulated laser)などによって実現される。光源301は、デジタルアナログ変換器304が出力する第2信号によって、半導体レーザへ注入する電流を直接変調することで、光信号を周波数変調する。光源301は、周波数変調した光信号を、強度変調器302へ出力する。以下、光源301が出力する周波数変調した光信号を、周波数変調信号という。
強度変調器302は、光源301とデジタルアナログ変換器304と接続される。強度変調器302は、デジタルアナログ変換器304が出力した第1信号によって、光源301が出力する周波数変調信号を強度変調する。強度変調器302は、強度変調を、光源301が行う周波数変調とは異なるシンボルレートで行う。具体的には、強度変調器302は、強度変調を、周波数変調のシンボルレートより低いシンボルレートで行う。強度変調器302は、第1信号で光源301が出力した周波数変調信号を強度変調した信号を送信する。
【0034】
強度変調器302が送信する信号のフレームフォーマットについては、後述する。
受信信号の波形の一例は、
図8を適用できる。受信信号の波形はI成分、およびQ成分ともに平均パワーの変動が少なく、かつ正負対称な波形となる。したがって、AC結合、バースト信号を受信したときの過渡応答による波形劣化を防ぐことができる。この特性は、波長オフセットが生じている場合においても同様となる。
本実施形態に係る送信器300によれば、送信器300は、周波数変調と強度変調とをそれぞれ異なる独立のシンボルレートで行う。このように構成することによって、送信器300が送信した光信号を受信する受信器は、強度変調信号のバースト信号をコヒーレント受信した場合においても平均パワーの変動による波形劣化を防ぐことができる。さらに、信号光の波長オフセット量に依らず強度変調のバースト信号を波形劣化せず受信することができる。
【0035】
[第3の実施形態]
[通信システム]
図10は、実施形態に係る通信システムの一例を示す図である。
実施形態に係る通信システムは、PONシステムであり、ONU400Aと、ONU400Bと、ONU400Cと、OLT500とを備える。ここで、ONU400A、ONU400B、およびONU400Cのうち、任意のONUを、ONU400と記載する。ここで、ONU400は、加入者線終端装置であり、通信網を経由する光信号によって他の通信装置との通信を実現する装置である。ONU400が接続される通信網は、例えばPON等の光ファイバ網である。ONU400は、複数の機器を用いて構成されてもよい。ONU400は、例えば通信サービスの提供を受けるユーザの宅内に設置される。
ONU400は、光ファイバFBと、光スプリッタSPとを含む光伝送路を介して、OLT500と接続される。OLT500は、通信局舎などに設置される。
ONU400は、前述した第一の実施形態に係る送信器200を備え、送信器200は、強度変調および位相変調された信号を、OLT500へ送信する。
【0036】
OLT500は、位相変調信号を主信号として用い、主信号を受信できない場合には強度変調信号を用いて通信を行う。OLT500は、強度変調信号を復号するためのデジタル信号処理回路と、位相変調信号を復号するデジタル信号処理回路とを並列に備える。
OLT500は、局発光源501と、受信器502と、アナログデジタル変換器503と、デジタル信号処理回路504と、MAC部505とを備える。
光スプリッタSPにて多重されたONU400A、ONU400B、およびONU400Cの各々が送信した信号光は、それぞれ強度、偏波、周波数特性の異なるバースト信号となる。
受信器502は、前述した偏波・位相ダイバーシティコヒーレント受信器101を適用できる。
アナログデジタル変換器503は、受信器502が出力した電圧を、デジタル信号へ変換する。アナログデジタル変換器503は、デジタル信号を、デジタル信号処理回路504へ出力する。
デジタル信号処理回路504は、アナログデジタル変換器503が出力したデジタル信号を処理する。デジタル信号処理回路504の処理の詳細については後述する。デジタル信号処理回路504は、デジタル信号処理後の信号を、MAC部505へ出力する。
MAC部505は、デジタル信号処理回路504と接続される。MAC部505は、デジタル信号処理回路504が出力した信号に基づいて、MAC層の終端処理、波長制御、帯域制御信号の生成等の処理を行う。
【0037】
(デジタル信号処理回路)
図11は、実施形態に係るデジタル信号処理回路の一例を示す図である。デジタル信号処理回路504は、偏波補償回路511と、バーストフレーム検出回路512と、サンプリング位相補償回路513と、適応等化器514と、波長オフセット補償回路515と、位相補償回路516と、位相変調信号復号回路517と、低域透過フィルタ(LPF: Low pass filter)518と、ダウンサンプリング位相補償回路519と、強度変調信号復号回路520とを備える。
サンプリング位相補償回路513と、適応等化器514と、波長オフセット補償回路515と、位相補償回路516と、位相変調信号復号回路517とは、位相変調信号受信回路550を構成する。
LPF518と、ダウンサンプリング位相補償回路519と、強度変調信号復号回路520とは、強度変調信号受信回路560を構成する。
偏波補償回路511は、アナログデジタル変換器503と接続される。偏波補償回路511は、偏波変動を吸収する。偏波補償回路511は、偏波変動を吸収した後の信号を、バーストフレーム検出回路512へ出力する。
バーストフレーム検出回路512は、偏波補償回路511と接続される。バーストフレーム検出回路512は、位相変調信号受信回路又は強度変調信号受信回路の動作のトリガーとするバーストフレームの到着を検出する。バーストフレーム検出回路512は、バーストフレームの到着を検出した場合、検出したバーストフレームを、サンプリング位相補償回路513と、LPF518へ出力する。
【0038】
サンプリング位相補償回路513は、バーストフレーム検出回路512と接続される。サンプリング位相補償回路513は、バーストフレーム検出回路512が出力したバーストフレームの位相の変動を小さくするサンプリング位相補償を行う。サンプリング位相補償回路513は、サンプリング位相補償を行った後の信号を、適応等化器514へ出力する。
適応等化器514は、サンプリング位相補償回路513と接続される。適応等化器514は、サンプリング位相補償回路513が出力した信号に基づいて、適応等化処理を行う。適応等化器514は、適応等化処理によって得られた信号を、波長オフセット補償回路515へ出力する。
波長オフセット補償回路515は、適応等化器514と接続される。波長オフセット補償回路515は、適応等化器514が出力した信号の波長オフセットを補償する。波長オフセット補償回路515は、波長オフセットを補償した後の信号を、位相補償回路516へ出力する。
位相補償回路516は、波長オフセット補償回路515と接続される。位相補償回路516は、波長オフセット補償回路515が出力した信号に対して、位相補償を行う。位相補償回路516は、位相補償を行った後の信号を位相変調信号復号回路517へ出力する。
【0039】
位相変調信号復号回路517は、位相補償回路516と接続される。位相変調信号復号回路517は、位相補償回路516が出力した信号(位相変調信号)を復号する。位相変調信号復号回路517は、位相変調信号の復号結果を、MAC部505へ出力する。
LPF518は、バーストフレーム検出回路512と接続される。LPF518は、遮断帯域が固定の低域透過フィルタであり、バーストフレーム検出回路512が出力したバーストフレームの波形等化のため、低域の信号を、ダウンサンプリング位相補償回路519へ、透過させる。
ダウンサンプリング位相補償回路519は、LPF518と接続される。ダウンサンプリング位相補償回路519は、LPF518が出力した信号のダウンサンプリングを行うとともに、バーストフレームの位相の変動を小さくするサンプリング位相補償を行う。ダウンサンプリング位相補償回路519は、サンプリング位相補償を行った後の信号を、強度変調信号復号回路520へ出力する。
強度変調信号復号回路520は、ダウンサンプリング位相補償回路519と接続される。強度変調信号復号回路520は、ダウンサンプリング位相補償回路519が出力した信号(強度変調信号)を復号する。強度変調信号復号回路520は、強度変調信号の復号結果を、MAC部505へ出力する。
【0040】
前述した実施形態では、デジタル信号処理回路504に、強度変調信号の復号、および位相変調信号の復号に共通な機能として、偏波補償回路511とバーストフレーム検出回路512を備える場合について説明したが、この例に限られない。例えば、位相変調信号受信回路、および強度変調信号受信回路が、別々に偏波補償回路511とバーストフレーム検出回路512とを備えていてもよい。
前述した実施形態において、適応等化器514に、事前に計測した適応等化フィルタの係数を示す適応等化フィルタ係数情報を、各ONUのバースト信号の到着タイミングに合わせて入力する機能を有していてもよい。
前述した実施形態において、各ONUの送信波長制御のため、波長オフセット補償回路515は、波長オフセット量情報を出力するようにしてもよい。
前述した実施形態に係るデジタル信号処理回路504は、位相と強度の双方に情報を重畳する多値変調信号を受信する場合にも適用できる。
実施形態に係る通信システムによれば、ONU400が備える送信器200が送信した強度変調と位相変調とがそれぞれ異なる独立のシンボルレートで行われた信号を、OLT500は受信することができる。OLT500は、強度変調信号のバースト信号をコヒーレント受信した場合においても平均パワーの変動による波形劣化を防ぐことができる。さらに、信号光の波長オフセット量に依らず強度変調のバースト信号を波形劣化せず受信することができる。
【0041】
[第4の実施形態]
[通信システム]
図12は、実施形態に係る通信システムの一例を示す図である。
実施形態に係る通信システムは、PONシステムであり、ONU600Aと、ONU600Bと、ONU600Cと、OLT700とを備える。ここで、ONU600A、ONU600B、およびONU600Cのうち、任意のONUを、ONU600と記載する。
ONU600は、光ファイバFBと、光スプリッタSPとを含む光伝送路を介して、OLT700と接続される。OLT700は、通信局舎などに設置される。
ONU600は、前述した第二の実施形態に係る送信器300を備え、送信器300は、強度変調および周波数変調された信号を、OLT700へ送信する。
【0042】
OLT700は、周波数変調信号を主信号として用い、主信号を受信できない場合には強度変調信号を用いて通信を行う。OLT700は、強度変調信号を復号するためのデジタル信号処理回路と、周波数変調信号を復号するデジタル信号処理回路とを並列に備える。
OLT700は、局発光源701と、受信器702と、アナログデジタル変換器703と、デジタル信号処理回路704と、MAC部705とを備える。
光スプリッタSPにて多重されたONU600A、ONU600B、およびONU600Cの各々が送信した信号光は、それぞれ強度、偏波、周波数特性の異なるバースト信号となる。
受信器702は、前述した偏波・位相ダイバーシティコヒーレント受信器101を適用できる。
アナログデジタル変換器703、およびMAC部705は、前述したアナログデジタル変換器503、およびMAC部505を適用できる。
【0043】
(デジタル信号処理回路)
図13は、実施形態に係るデジタル信号処理回路の一例を示す図である。
デジタル信号処理回路704は、偏波補償回路711と、バーストフレーム検出回路712と、光分波器713と、検波器714と、選択器715と、LPF718と、ダウンサンプリング位相補償回路719と、強度変調信号復号回路720とを備える。
光分波器713と、検波器714と、選択器715とは、周波数変調信号受信回路750を構成する。
LPF718と、ダウンサンプリング位相補償回路719と、強度変調信号復号回路720とは、強度変調信号受信回路760を構成する。
偏波補償回路711、バーストフレーム検出回路712、LPF718、ダウンサンプリング位相補償回路719、および強度変調信号復号回路720は、前述した偏波補償回路511、バーストフレーム検出回路512、LPF518、ダウンサンプリング位相補償回路519、および強度変調信号復号回路520を適用できる。ただし、バーストフレーム検出回路712は、バーストフレームの到着を検出した場合、検出したバーストフレームを、光分波器713と、LPF718へ出力する。
光分波器713は、バーストフレーム検出回路712と接続される。光分波器713は、バーストフレーム検出回路712が出力したバーストフレームを光周波数に応じて分岐する。光分波器713は、分岐した各周波数の信号光を、検波器714へ出力する。
検波器714は、光分波器713と接続される。検波器714は、光分波器713が出力した各周波数の光信号を検出して電気信号へ変換する。検波器714は、各周波数の光信号を変換した電気信号を、選択器715へ出力する。
選択器715は、検波器714と接続される。選択器715は、検波器714が出力した各周波数の光信号を変換した電気信号から、1個の信号を選択する。
【0044】
前述した実施形態では、デジタル信号処理回路704に、強度変調信号の復号、および周波数変調信号の復号に共通な機能として、偏波補償回路711とバーストフレーム検出回路712を備える場合について説明したが、この例に限られない。例えば、周波数変調信号受信回路、および強度変調信号受信回路が、別々に偏波補償回路711とバーストフレーム検出回路712とを備えていてもよい。
前述した実施形態に係るデジタル信号処理回路704は、周波数と強度の双方に情報を重畳する多値変調信号を受信する場合にも適用できる。
実施形態に係る通信システムによれば、ONU600が備える送信器300が送信した強度変調と周波数変調とがそれぞれ異なる独立のシンボルレートで行われた信号を、OLT700は受信することができる。OLT700は、強度変調信号のバースト信号をコヒーレント受信した場合においても平均パワーの変動による波形劣化を防ぐことができる。さらに、信号光の波長オフセット量に依らず強度変調のバースト信号を波形劣化せず受信することができる。
【0045】
[第5の実施形態]
実施形態に係る通信システムは、第3の実施形態を適用できる。
図14は、強度変調信号と位相変調信号との関係を示す図である。
図14の左図は受信信号強度[dBm]とBERとの関係を示し、
図14の右図はシンボル長を示す。
図14の左図において、破線は、誤り訂正処理により、エラーフリーとなるBERである。
図14の左図によれば、強度変調信号は位相変調信号に対して、信号点間距離の半分になるため、SNRが3dB劣化する。したがって、同一のシンボルレートの強度変調と位相変調信号の双方を受信する場合、最小受信感度は強度変調信号の最小受信感度によって律速される。
そこで、本実施形態に係る通信システムでは、ONU400の送信器200は、強度変調信号を、位相変調信号のシンボルレートBよりも低いシンボルレートで送信する。
図14の右図に示される例では、強度変調信号のシンボル長が10/Bであるのに対し、位相変調信号のシンボル長は1/Bである。
実施形態に係る通信システムによれば、送信器200は、強度変調信号を、位相変調信号のシンボルレートBよりも低いシンボルレートで送信する。このように構成することによって、波長分散による波形劣化の影響を防ぐことができる。
また、実施形態に係る通信システムによれば、強度変調信号の変調帯域以上の位相変調信号成分、ショット雑音、熱雑音等は、例えば、デジタル信号処理回路504のLPF518で除去する。このように構成することにより、強度変調信号の最小受信感度が向上するため、最小受信感度の律速を防ぐことができる。
【0046】
[第6の実施形態]
ONUに搭載されている光源は、波長安定化機能を搭載しない場合、長期運用中に発信波長が変動する場合がある。デジタルコヒーレント受信方式では、局発光と信号光のビート成分とを受信し、局発光と信号光との波長差をデジタル信号処理によって補償して信号を受信する。しかし、デジタルコヒーレント受信方式では、波長オフセット補償回路にて補償可能な範囲を超えた波長差が生じてしまった場合、通信断してしまう。
そこで、本実施形態に係る通信システムでは、ONUの送信データの波長制御を行う。ONUの送信波長制御は、主に(1)、および(2)を目的として行われる。
(1)位相変調信号の安定受信
(2)送信波長が位相変調信号を受信可能な波長範囲を超えた場合のリカバリ
直接変調−直接検波方式を用いるPONシステムでは、OLTで波長情報を検出し、下り信号に波長制御情報を重畳し、ONUの送信波長を制御する方式が用いられる場合もある。しかし、上り信号の波長の検出用に追加の光フィルタや光受信器などの機器を要する。
本実施形態では、OLTの波長オフセット補償回路で検出した波長制御情報を下り信号に重畳するとともに、ONUの送信波長制御が終了するまで強度変調信号にて通信を継続する。
【0047】
図15は、実施形態に係る通信システムを示す図である。
実施形態に係る通信システムは、ONU800とOLT900とを備える。
ONU800は、光ファイバFBと、光スプリッタSPとを含む光伝送路を介して、OLT900と接続される。
ONU800は、光源801と、強度・位相変調器802と、信号生成回路803と、デジタルアナログ変換器804と、光分波器805と、下り信号受信装置806とを備える。
光源801、強度・位相変調器802、信号生成回路803、およびデジタルアナログ変換器804は、前述した光源201、強度・位相変調器202、信号生成回路203、およびデジタルアナログ変換器204を適用できる。
光分波器805は、強度・位相変調器802、および光スプリッタSPと接続される。光分波器805は、OLT900が送信した下り信号を、下り信号受信装置806へ出力するとともに、強度・位相変調器802が出力した上り信号をOLT900へ送信する。
下り信号受信装置806は、光分波器805、光源801、および信号生成回路803と接続される。下り信号受信装置806は、光分波器805が出力した下り信号を光電変換する。下り信号受信装置806は、下り信号に含まれる波長制御情報に基づいて、光源801の発振波長を変更する。具体的には、下り信号受信装置806は、温度調整器などによって、光源801の温度を制御することによって、光源801の発振波長を制御する。また、下り信号受信装置806は、下り信号に含まれる強度変調信号へ切り替えることを指示する命令(以下、「強度変調切替命令」という)を、信号生成回路803へ出力する。信号生成回路803は、下り信号受信装置806が出力する強度変調切替命令にしたがって、送信データを生成する。
【0048】
OLT900は、受信器902と、アナログデジタル変換器903と、デジタル信号処理回路904と、MAC部905と、光分波器906と、下り信号送信装置907とを備える。
受信器902、アナログデジタル変換器903、デジタル信号処理回路904、およびMAC部905は、前述した受信器502、アナログデジタル変換器503、デジタル信号処理回路504、およびMAC部505を適用できる。
光分波器906は、光スプリッタSP、および受信器902と接続される。光分波器906は、ONU800が送信した上り信号を、受信器902へ出力するとともに、下り信号送信装置907が出力した下り信号をONU800へ送信する。
デジタル信号処理回路904は、検出した波長オフセット量を、MAC部905に出力する。
【0049】
MAC部905は、ONU800が送信した上り信号の受信信号品質を求め、求めた受信品質が閾値以上であるか否かを判定する。ここで、閾値は、位相変調信号の固定パターンが正しく受信できるか否かに基づいて、設定される。MAC部905は、受信信号品質が閾値以上である場合には、受信信号品質がよいと判定する。この場合、MAC部905は、デジタル信号処理回路904が出力した波長オフセット量を、波長制御を実施するONU800を宛先とする下り信号に重畳する。MAC部905は、下り信号を、下り信号送信装置907へ出力する。
一方、MAC部905は、受信信号品質が閾値未満である場合には、受信信号品質が悪いと判定する。この場合、MAC部905は、強度変調された信号を受信すると判定する。MAC部905は、デジタル信号処理回路904が出力した波長オフセット量と、強度変調へ切り替える指示とを、波長制御を実施するONU800を宛先とする下り信号に重畳する。MAC部905は、下り信号を、下り信号送信装置907へ出力する。
下り信号送信装置907は、MAC部905が出力した下り信号を、ONU800へ送信する。
【0050】
(通信システムの動作)
図16は、実施形態に係る通信システムの動作の一例を示すフローチャートである。
(ステップS101) OLT900のMAC部905は、デジタル信号処理回路904が出力した波長オフセット量が規定内で、且つ位相変調信号の固定パターンが正しく受信できる受信信号品質であるか否かを判定する。
波長オフセット量が規定内で、且つ位相変調信号の固定パターンが正しく受信できる受信品質である場合にはステップS102へ移行する。一方、波長オフセット量が規定内でない場合、又は位相変調信号の固定パターンが正しく受信できない受信品質である場合にはステップS104へ移行する。
【0051】
図17は、ONUが送信する上り信号のフレームフォーマットの一例を示す図である。
図17の上図は強度変調信号のフレームフォーマットの一例であり、
図17の下図は位相変調信号のフレームフォーマットの一例である。
強度変調信号のフレームフォーマットの一例によれば、プリアンブルには強度変調と位相変調とが行われた信号と、位相変調が行われた信号とが含まれる。ペイロードには強度変調と位相変調とが行われた信号が含まれる。ここで、波長オフセット取得用の信号系列は、位相変調される。そして、プリアンブルに含まれる信号のうち、位相変調が行われた信号に基づいて、OLT900は、波長オフセット情報と受信信号品質とを取得する。
位相変調信号のフレームフォーマットの一例によれば、プリアンブルには位相変調が行われた信号が含まれる。ペイロードには位相変調が行われた信号が含まれる。ここで、波長オフセット取得用の信号系列は、位相変調される。プリアンブルに含まれる位相変調が行われた信号に基づいて、OLT900は、波長オフセット情報と受信信号品質を取得する。
図16に戻り、説明を続ける。
【0052】
(ステップS102) MAC部905は、波長オフセット量を減少させるために、送信波長を局発光波長と一致させる波長オフセット量を示す情報を含む下り信号を作成し、作成した下り信号を、下り信号送信装置907へ出力する。下り信号送信装置907は、MAC部905が出力した下り信号を、ONU800へ送信する。
(ステップS103) ONU800の下り信号受信装置806は、OLT900が送信した下り信号を受信する。下り信号受信装置806は、下り信号に含まれる波長オフセット量に基づいて波長制御信号を作成し、作成した波長制御信号を、光源801へ出力する。このように構成することによって、光源801は、下り信号受信装置806が出力する波長制御信号によって、送信波長を局発光波長と一致するように微調整できる。
(ステップS104) MAC部905は、強度変調切替命令と直前の動的帯域割当(DBA: dynamic bandwidth allocation)スロットにおける波長オフセット量の情報とを含む下り信号を作成し、作成した下り信号を、下り信号送信装置907へ出力する。下り信号送信装置907は、MAC部905が出力した下り信号を、ONU800へ送信する。
(ステップS105) ONU800の下り信号受信装置806は、OLT900が送信した下り信号を受信する。下り信号受信装置806は、下り信号に含まれる強度変調切替命令を、信号生成回路803へ出力する。信号生成回路803は、下り信号受信装置806が出力した強度変調切替命令に応じて、送信データを、デジタルアナログ変換器804へ出力する。また、下り信号受信装置806は、下り信号に含まれる波長オフセット量に基づいて、波長制御信号を作成し、作成した波長制御信号を、光源801へ出力する。このように構成することによって、光源801は、下り信号受信装置806が出力する波長制御信号によって、送信波長を局発光波長と一致するように微調整できる。
【0053】
(ステップS106) OLT900のMAC部905は、デジタル信号処理回路904が出力した上り信号の波長オフセット量が規定内で、且つ位相変調信号の固定パターンが正しく受信できる受信信号品質であるか否かを判定する。波長オフセット量が規定内で、且つ位相変調信号の固定パターンが正しく受信できる受信信号品質である場合にはステップS107へ移行する。一方、波長オフセット量が規定内でない場合、又は位相変調信号の固定パターンが正しく受信できない受信品質である場合にはステップS108へ移行する。
(ステップS107) MAC部905は、位相変調信号へ切り替えることを指示する命令(以下、「位相変調切替命令」という)を含む下り信号を作成し、作成した下り信号を、下り信号送信装置907へ出力する。下り信号送信装置907は、MAC部905が出力した下り信号を、ONU800へ送信する。
(ステップS108) OLT900とONU800との間で、波長オフセット量が規定内で、且つ位相変調信号の固定パターンが正しく受信できる受信信号品質となるまで強度変調での通信が継続される。ONU800での波長制御が終了した後に、MAC部905は、位相変調切替命令を含む下り信号を作成し、作成した下り信号を、下り信号送信装置907へ出力する。下り信号送信装置907は、MAC部905が出力した下り信号を、ONU800へ送信する。
【0054】
図18は、波長制御処理を説明するための図である。
図18において、T1は受信信号品質が閾値以下となったバースト信号の受信タイミングを示し、T0は該バースト信号の直前のバースト信号の受信タイミングを示す。
OLT900のMAC部905は、ONU800の直前のバースト信号の受信タイミングT0における波長オフセット量に基づいて、局発光波長に対して、短波長側であるか長波長側であるかを判定する。MAC部905は、波長オフセット量を低減する波長方向に送信波長を制御する。
実施形態に係る通信システムによれば、OLT900は、波長オフセット補償回路515で検出した波長制御情報を含む下り信号を送信する。OLT900が送信した下り信号を受信したONU800は、OLT900が送信した下り信号に含まれる波長制御情報に基づいて、光源801の発振波長を制御する。このように構成することによって、送信波長を局発光波長と一致するように微調整できる。
また、実施形態に係る通信システムによれば、OLT900は、上り信号の受信信号品質が閾値未満である場合には、波長オフセット量と強度変調へ切り替える指示とを含む下り信号を送信する。OLT900が送信した下り信号を受信したONU800は、OLT900が送信した下り信号に含まれる波長制御情報と、強度変調へ切り替える指示とに基づいて、光源801の発振波長を制御するとともに、強度変調信号の送信へ切り替える。このように構成することによって、送信波長を局発光波長と一致するように微調整できるとともに、送信波長が位相変調信号を受信可能な波長範囲を超えた場合にリカバリできる。
【0055】
[第7の実施形態]
第7の実施形態に係る通信システムは、第6の実施形態にかかる通信システムに位相変調の代わりに、周波数変調を適用したものである。
ONUに搭載されている光源は、波長安定化機能を搭載しない場合、長期運用中に発信波長が変動する場合がある。デジタルコヒーレント受信方式では、局発光と信号光のビート成分とを受信し、局発光と信号光との波長差をデジタル信号処理によって補償して信号受信する。しかし、デジタルコヒーレント受信方式では、波長オフセット補償回路にて補償可能な範囲を超えた波長差が生じてしまった場合、通信断してしまう。
そこで、本実施形態に係る通信システムでは、ONUの送信データの波長制御を行う。ONUの送信波長制御は、主に(1)、および(2)を目的として行われる。
(1)周波数変調信号の安定受信
(2)送信波長が周波数変調信号を受信可能な波長範囲を超えた場合のリカバリ
直接変調−直接検波方式を用いるPONシステムでは、OLTで波長情報を検出し、下り信号に波長制御情報を重畳し、ONUの送信波長を制御する方式が用いられる場合もある。しかし、上り信号波長の検出用に追加の光フィルタや光受信器などの機器を要する。
本実施形態では、OLTの波長オフセット補償回路で検出した波長制御情報を下り信号に重畳するとともに、ONUの送信波長制御が終了するまで強度変調信号にて通信を継続する。
【0056】
図19は、実施形態に係る通信システムを示す図である。
実施形態に係る通信システムは、ONU1000とOLT1100とを備える。
ONU1000は、光ファイバFBと、光スプリッタSPとを含む光伝送路を介して、OLT1100と接続される。
ONU1000は、光源1001と、強度変調器1002と、信号生成回路1003と、デジタルアナログ変換器1004と、光分波器1005と、下り信号受信装置1006とを備える。
光源1001、強度変調器1002、信号生成回路1003、およびデジタルアナログ変換器1004は、前述した光源301、強度変調器302、信号生成回路303、およびデジタルアナログ変換器304を適用できる。
光分波器1005は、強度変調器1002、および光スプリッタSPと接続される。光分波器1005は、OLT1100が送信した下り信号を、下り信号受信装置1006へ出力するとともに、強度変調器1002が出力した上り信号をOLT1100へ送信する。
下り信号受信装置1006は、光分波器1005、光源1001、および信号生成回路1003と接続される。下り信号受信装置1006は、光分波器1005が出力した下り信号を光電変換する。下り信号受信装置1006は、下り信号に含まれる波長制御情報に基づいて、光源1001の発振波長を変更する。また、下り信号受信装置1006は、下り信号に含まれる強度変調切替命令を、信号生成回路1003へ出力する。信号生成回路1003は、下り信号受信装置1006が出力する強度変調切替命令にしたがって、送信データを生成する。
【0057】
OLT1100は、受信器1102と、アナログデジタル変換器1103と、デジタル信号処理回路1104と、MAC部1105と、光分波器1106と、下り信号送信装置1107とを備える。
受信器1102、アナログデジタル変換器1103、デジタル信号処理回路1104、およびMAC部1105は、前述した受信器702、アナログデジタル変換器703、デジタル信号処理回路704、およびMAC部705を適用できる。
光分波器1106は、光スプリッタSP、および受信器1102と接続される。光分波器1106は、ONU1000が送信した上り信号を、受信器1102へ出力するとともに、下り信号送信装置1107が出力した下り信号をONU1000へ送信する。
デジタル信号処理回路1104は、検出した波長オフセット量を、MAC部1105に出力する。
MAC部1105は、ONU1000が送信した上り信号の受信信号品質を求め、求めた受信品質が閾値以上であるか否かを判定する。ここで、閾値は、周波数変調信号の固定パターンが正しく受信できるか否かに基づいて、設定される。MAC部1105は、受信信号品質が閾値以上である場合には、受信信号品質がよいと判定する。この場合、MAC部1105は、デジタル信号処理回路1104が出力した波長オフセット量を、波長制御を実施するONU1000を宛先とする下り信号に重畳する。MAC部1105は、下り信号を、下り信号送信装置1107へ出力する。
一方、MAC部1105は、受信信号品質が閾値未満である場合には、受信信号品質が悪いと判定する。この場合、MAC部1105は、強度変調された信号を受信すると判定する。MAC部1105は、デジタル信号処理回路1104が出力した波長オフセット量と、強度変調へ切り替える指示とを、波長制御を実施するONU1000を宛先とする下り信号に重畳する。MAC部1105は、下り信号を、下り信号送信装置1107へ出力する。
下り信号送信装置1107は、MAC部1105が出力した下り信号を、ONU1000へ送信する。
【0058】
(通信システムの動作)
図20は、実施形態に係る通信システムの動作の一例を示すフローチャートである。
(ステップS201) OLT1100のMAC部1105は、デジタル信号処理回路1104が出力した波長オフセット量が規定内で、且つ周波数変調信号の固定パターンが正しく受信できる受信信号品質であるか否かを判定する。
波長オフセット量が規定内で、且つ周波数変調信号の固定パターンが正しく受信できる受信品質である場合にはステップS202へ移行する。一方、波長オフセット量が規定内でない場合、又は周波数変調信号の固定パターンが正しく受信できない受信品質である場合にはステップS204へ移行する。
【0059】
図21は、OLTが送信する上り信号のフレームフォーマットの一例を示す図である。
図21の上図は強度変調信号のフレームフォーマットの一例であり、
図21の下図は周波数変調信号のフレームフォーマットの一例である。
強度変調信号のフレームフォーマットの一例によれば、プリアンブルには強度変調と周波数変調とが行われた信号と、周波数変調が行われた信号とが含まれる。ペイロードには強度変調と周波数変調とが行われた信号が含まれる。波長オフセット情報取得用の信号系列は、周波数変調される。そして、プリアンブルに含まれる信号のうち、周波数変調が行われた信号に基づいて、ONU1000は、波長オフセット情報と受信信号品質とを取得する。
周波数変調信号のフレームフォーマットの一例によれば、プリアンブルには周波数変調が行われた信号が含まれる。ペイロードには周波数変調が行われた信号が含まれる。波長オフセット情報取得用の信号系列は、周波数変調される。そして、プリアンブルに含まれる周波数変調が行われた信号に基づいて、ONU1000は、波長オフセット情報と受信信号品質を取得する。
図20に戻り、説明を続ける。
【0060】
(ステップS202) MAC部1105は、波長オフセット量を減少させるために、送信波長を局発光波長と一致させる波長オフセット量を示す情報を含む下り信号を作成し、作成した下り信号を、下り信号送信装置1107へ出力する。下り信号送信装置1107は、MAC部1105が出力した下り信号を、ONU1000へ送信する。
(ステップS203) ONU1000の下り信号受信装置1006は、OLT1100が送信した下り信号を受信する。下り信号受信装置1006は、下り信号に含まれる波長オフセット量に基づいて波長制御信号を作成し、作成した波長制御信号を、光源1001へ出力する。このように構成することによって、光源1001は、下り信号受信装置1006が出力する波長制御信号によって、送信波長を局発光波長と一致するように微調整できる。
【0061】
(ステップS204) MAC部1105は、強度変調切替命令と直前のDBAスロットにおける波長オフセット量の情報とを含む下り信号を作成し、作成した下り信号を、下り信号送信装置1107へ出力する。下り信号送信装置1107は、MAC部1105が出力した下り信号を、ONU1000へ送信する。
(ステップS205) ONU1000の下り信号受信装置1006は、OLT1100が送信した下り信号を受信する。下り信号受信装置1006は、下り信号に含まれる強度変調切替命令を、信号生成回路1003へ出力する。信号生成回路1003は、下り信号受信装置1006が出力した強度変調切替命令に応じて、強度変調に切り替える。
また、下り信号受信装置1006は、下り信号に含まれる波長オフセット量に基づいて、波長制御信号を作成し、作成した波長制御信号を、光源1001へ出力する。このように構成することによって、光源1001は、下り信号受信装置1006が出力する波長制御信号によって、送信波長を局発光波長と一致するように微調整できる。
(ステップS206) OLT1100のMAC部1105は、デジタル信号処理回路1104が出力した上り信号の波長オフセット量が規定内で、且つ周波数変調信号の固定パターンが正しく受信できる受信信号品質であるか否かを判定する。波長オフセット量が規定内で、且つ周波数変調信号の固定パターンが正しく受信できる受信信号品質である場合にはステップS207へ移行する。一方、波長オフセット量が規定内でない場合、又は周波数変調信号の固定パターンが正しく受信できない受信品質である場合にはステップS208へ移行する。
【0062】
(ステップS207) MAC部1105は、周波数変調切替命令を含む下り信号を作成し、作成した下り信号を、下り信号送信装置1107へ出力する。下り信号送信装置1107は、MAC部1105が出力した下り信号を、ONU1000へ送信する。
(ステップS208) OLT1100とONU1000との間で、波長オフセット量が規定内で、且つ周波数変調信号の固定パターンが正しく受信できる受信信号品質となるまで強度変調での通信が継続される。ONU1000での波長制御が終了した後に、MAC部1105は、周波数変調切替命令を含む下り信号を作成し、作成した下り信号を、下り信号送信装置1107へ出力する。下り信号送信装置1107は、MAC部1105が出力した下り信号を、ONU1000へ送信する。
波長制御処理について、
図18を参照して説明する。
OLT1100のMAC部1105は、ONU1000の直前のバースト信号の受信タイミングT0における波長オフセット量に基づいて、局発光波長に対して、短波長側であるか長波長側であるかを判定する。MAC部1105は、波長オフセット量を低減する波長方向に送信波長を制御する。
実施形態に係る通信システムによれば、OLT1100は、波長制御情報を含む下り信号を送信する。OLT1100が送信した下り信号を受信したONU1000は、OLT1100が送信した下り信号に含まれる波長制御情報に基づいて、光源1001の発振波長を制御する。このように構成することによって、送信波長を局発光波長と一致するように微調整できる。
また、実施形態に係る通信システムによれば、OLT1100は、上り信号の受信信号品質が閾値未満である場合には、波長オフセット量と強度変調へ切り替える指示とを含む下り信号を送信する。OLT1100が送信した下り信号を受信したONU1000は、OLT1100が送信した下り信号に含まれる波長制御情報と、強度変調へ切り替える指示とに基づいて、光源1001の発振波長を制御するとともに、強度変調信号の送信へ切り替える。このように構成することによって、送信波長を局発光波長と一致するように微調整できるとともに、送信波長が周波数変調信号を受信可能な波長範囲を超えた場合にリカバリできる。
【0063】
[第8の実施形態]
第8の実施形態に係る通信システムは、主にIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)の標準規格に基づきOLTとONUとの初期通信と認証フェーズに、前述した実施形態に係る通信システムを適用したものである。
TDM−PONでは、OLTのMAC部の有するDBAアルゴリズムなどに代表される各ユーザの通信時間を割り当てるスケジューリング機能によってOLTと各ONUとの間で、信号の送受信タイミングを決定する。
図22は、OLTとONUとの間の通信プロセスの一例を示す図である。
図22に示される例では、OLTが新規に接続されたONUの認証を行うプロセスであるディスカバリプロセスと、OLTとONUとの間で通信を行うプロセスとを示す。具体的には、OLTとONUとの間では、DBAアルゴリズムに従って、各ONUの通信時間を割り当てる。以下、DBAアルゴリズムにしたがって、OLTとONUとが行う通信プロセスを、DBAプロセスという。
ディスカバリプロセスは、一定周期で行われる。ディスカバリプロセスでは、ONUの認証が行われる。
まず、OLTは下り信号としてディスカバリーゲート(Discovery gate)と呼ばれる認証用の上り送信許可メッセージを全てのONUに向けて送信する。
OLTから未認証のONUは、ディスカバリーゲートの受信後、一定のランダム時間の後、レジスタリクエスト(Register request)と呼ばれるOLTへの登録要求メッセージを送付する。
【0064】
初期認証フェーズでは、正確に通信スケジューリングを行うため、各ONUを認証し、LLID(Logical link ID)の付与だけでなく、OLTと各ONU間のラウンドトリップタイム(RTT: Round-Trip Time)を計測するレンジングも同時に行う。前述の通り、デジタルコヒーレント受信技術を用いたPONシステムでは、適応等化アルゴリズムによる等化フィルタ係数の最適化に時間がかかる。特に、光ファイバ上を伝送されることによって生じる波長分散量は、ONUとOLTとの間の距離によって変わるため、ONU毎に最適化されなければならない。
ONUとOLTとの間の距離から波長分散量を計算し、適応等化アルゴリズムを動作させる際の初期値として用いることで、計算時間の大幅な短縮が可能である。ディスカバリ時のレンジング以外の手法で距離情報を取得し、OLTのデジタル信号処理部に入力するのは現実的ではない。そのため、初期通信の際に、適応等化フィルタの最適化に十分な長さを有するオーバーヘッド部分をプリアンブルに設けなければならず、伝送効率の低下や、登録要求メッセージの衝突による初期認証時間の増加が課題となる。
【0065】
そこで、本実施形態では、初期認証を、強度変調された光バースト信号を用い、LLIDの付与、およびレンジングを行う。このように構成することで初期通信時のプリアンブル長を削減することができる。OLTは、各ONUに割り当てたLLID、および上り送信時刻を記載したRegister信号、およびGate信号を当該ONUに向けて送信する。
Register信号、およびGate信号を受信したONUは、割り当てられた上り送信時刻にしたがって、位相変調、又は周波数変調でRegister ACK信号を送付する。
OLTは事前にスケジューリングした各ONUの上り信号の受信タイミングにしたがって、MAC部に記憶されたユーザ情報に含まれる各ONUに対応する距離情報と、適応等化係数の初期値のテーブルを参照し、適応等化フィルタ部を初期化し、受信信号処理を行う。OLTが、Register ACK信号を受信した場合に、一連のディスカバリプロセスは終了する。以降、ONUはOLTの通信スケジューラの定める任意の上り送信時刻において、OLTに上り通信量を通知するreport信号と、上りデータであるMACフレームを送信するDBAプロセスに移る。DBAプロセスにおいてもRegister ACK信号受信時と同様に、位相変調信号と、レンジング情報から参照した適応等化フィルタの初期値を用いる。
本実施形態において、各バースト信号受信時に更新した適応等化フィルタの係数をMAC部に保持し、以降の通信に初期値として用いてもよい。
前述した実施形態では、IEEEの標準規格にOLTとONUとの通信を適用した場合について説明したが、この例に限られない。例えば、ITU−T等の規格にOLTとONUとの通信を適用してもよい。
実施形態に係る通信システムによれば、初期認証を、強度変調信号を用い、LLIDの付与、およびレンジングを行う。このように構成することで初期通信が行われる場合に、プリアンブル長を削減することができる。
【0066】
前述した実施形態において、送信器200、送信器300は光送信器の一例であり、光源201、光源301は光源の一例であり、強度・位相変調器202、強度変調器302は変調部の一例であり、信号生成回路203、信号生成回路303は信号生成部の一例であり、デジタルアナログ変換器204、デジタルアナログ変換器304はデジタルアナログ変換部の一例であり、下り信号送信装置907および下り信号送信装置1107は送信部の一例であり、下り信号受信装置806および下り信号受信装置1006は受信部の一例であり、通信システムは光通信システムの一例である。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。