特許第6795452号(P6795452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795452
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】分布スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/687 20060101AFI20201119BHJP
   H03H 11/28 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   H03K17/687 G
   H03H11/28
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-98770(P2017-98770)
(22)【出願日】2017年5月18日
(65)【公開番号】特開2018-196003(P2018-196003A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2019年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】濱田 裕史
(72)【発明者】
【氏名】徐 照男
(72)【発明者】
【氏名】矢板 信
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−73632(JP,A)
【文献】 特開2005−236839(JP,A)
【文献】 特開2013−179387(JP,A)
【文献】 特開2001−160723(JP,A)
【文献】 特開平2−65402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H7/075
H03H7/21
H03H11/28
H03K17/687−17/695
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が入力端子に接続され、他端が出力端子に接続された第1の伝送線路と、
一端が制御端子に接続された第2の伝送線路と、
この第2の伝送線路の他端を終端する終端回路と、
前記第1、第2の伝送線路に沿って並ぶように前記第1の伝送線路と接地との間に挿入され、各々の制御信号入力端子が前記第2の伝送線路に接続された複数の単位スイッチと、
各単位スイッチの制御信号入力端子に接続され、所望の周波数においてインピーダンスが0近傍となる複数のインピーダンス回路とを備えることを特徴とする分布スイッチ。
【請求項2】
請求項1記載の分布スイッチにおいて、
前記単位スイッチは、前記制御信号入力端子となるゲート端子が前記第2の伝送線路に接続され、ドレイン端子が前記第1の伝送線路に接続され、ソース端子が接地されたソース接地電界効果トランジスタからなることを特徴とする分布スイッチ。
【請求項3】
請求項1記載の分布スイッチにおいて、
前記単位スイッチは、前記制御信号入力端子となるベース端子が前記第2の伝送線路に接続され、コレクタ端子が前記第1の伝送線路に接続され、エミッタ端子が接地されたエミッタ接地バイポーラトランジスタからなることを特徴とする分布スイッチ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の分布スイッチにおいて、
前記インピーダンス回路は、前記制御信号入力端子と接地との間に設けられた、インダクタと容量とを直列に接続したLC直列共振器からなることを特徴とする分布スイッチ。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の分布スイッチにおいて、
前記インピーダンス回路は、一端が前記制御信号入力端子に接続され、他端が開放されたオープンスタブからなることを特徴とする分布スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電気信号を扱う回路技術、特に分布スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波回路において、広帯域にわたって平坦なスイッチ動作が可能な回路構成として、分布スイッチが知られている(非特許文献1)。図10は、一般的な分布スイッチの概念を説明する回路図である。分布スイッチは、一端が入力端子INに接続され、他端が出力端子OUTに接続された伝送線路である信号線路T1と、一端が制御端子CTLに接続され、他端が抵抗R1によって終端された伝送線路である制御線路T2と、信号線路T1および制御線路T2に沿って配置され、第1の端子aが信号線路T1に接続され、第2の端子bが接地され、制御信号入力端子cが制御線路T2に接続された複数の単位スイッチSW1とから構成される。
【0003】
このように、分布スイッチは、単位スイッチSW1および線路T1,T2が信号伝搬方向に縦属接続された構成(進行波構成)をとっている。進行波構成では、単位スイッチSW1が有する容量と、線路T1,T2が有するインダクタンスとを適切な値に調節することで、入力端子IN、出力端子OUT、制御端子CTLから回路側を見込んだインピーダンスを、広い周波数帯域にわたって一定の値(通常は50Ω)にすることができる。そのため、分布スイッチは非常に広帯域なスイッチングが可能となっている。
【0004】
ここで、スイッチングは、単位スイッチSW1の、入出力端子IN,OUTから見た時の抵抗値を可変とすることで実現される。すなわち、単位スイッチSW1がオンになった時(導通時)には、入出力端子IN,OUTは接地電位に接続されるため、入力端子INに入力された高周波信号は出力端子OUTに到達する前に接地され、分布スイッチとしての動作は遮断動作となる。また、単位スイッチSW1がオフになった時(開放時)には、入出力端子IN,OUTは障害なく接続されるため、分布スイッチとしての動作は導通動作となる。
【0005】
スイッチの重要な性能指標として、オン時とオフ時の通過特性の比であるオンオフ比がある。しかしながら、分布スイッチには、信号線路を伝搬する信号の周波数が高くなると、十分なオンオフ比を確保できなくなるという課題があった。この課題が生じる原因について説明する。
【0006】
分布スイッチの上記の課題は、図11に示すように、信号線路T1と制御線路T2との間の寄生容量Cxの存在に由来する。図12に、寄生容量Cxを考慮した分布スイッチの等価回路を示す。Rsは単位スイッチSW1の可変抵抗、Csは単位スイッチSW1が有する容量を示している。
【0007】
分布スイッチは、制御端子CTLに入力される制御信号によって単位スイッチSW1がオン/オフし、それによって可変抵抗Rsの値が変化する。すなわち、Rsが大きい時には単位スイッチSW1は信号線路T1から見て開放に近いインピーダンスを有するため、分布スイッチの特性は導通となる。一方、Rsが小さい時には単位スイッチSW1は信号線路T1から見て短絡に近いインピーダンスを有するため、分布スイッチの特性は遮断となる。
【0008】
ここで、図12に示すように、本来ならば電気的に絶縁されるべき信号線路T1と制御線路T2とが、寄生容量Cxを介して電気的に結合することを考える。これにより、図13に示すような信号線路T1から制御線路T2への漏洩経路P2が生じる。この漏洩経路P2を通る信号は、可変抵抗Rsを通過しないため、制御信号によってオンオフさせることができない。したがって、従来の分布スイッチでは、入力端子INに入力された高周波信号のうち、寄生容量Cxによって漏洩しなかった一部の信号(図13に示した通常の信号経路P1を通る信号)のみしかオンオフさせることができない。以上が、分布スイッチのオンオフ比が低下する理由である。信号線路T1を通る信号の周波数が高くなると、寄生容量Cxのインピーダンスが低下するため、100GHzを超えるような高周波信号をオンオフさせる場合に本課題は顕著となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hiroshi Mizutani and Yoichiro Takayama,“A DC-60 GHz GaAs MMIC Switch Using Novel Distributed FET”,IEEE MTT-S International,June 1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、高周波領域で従来よりもオンオフ比が高い分布スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の分布スイッチは、一端が入力端子に接続され、他端が出力端子に接続された第1の伝送線路と、一端が制御端子に接続された第2の伝送線路と、この第2の伝送線路の他端を終端する終端回路と、前記第1、第2の伝送線路に沿って並ぶように前記第1の伝送線路と接地との間に挿入され、各々の制御信号入力端子が前記第2の伝送線路に接続された複数の単位スイッチと、各単位スイッチの制御信号入力端子に接続され、所望の周波数においてインピーダンスが0近傍となる複数のインピーダンス回路とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の分布スイッチの1構成例において、前記単位スイッチは、前記制御信号入力端子となるゲート端子が前記第2の伝送線路に接続され、ドレイン端子が前記第1の伝送線路に接続され、ソース端子が接地されたソース接地電界効果トランジスタからなることを特徴とするものである。
また、本発明の分布スイッチの1構成例において、前記単位スイッチは、前記制御信号入力端子となるベース端子が前記第2の伝送線路に接続され、コレクタ端子が前記第1の伝送線路に接続され、エミッタ端子が接地されたエミッタ接地バイポーラトランジスタからなることを特徴とするものである。
また、本発明の分布スイッチの1構成例において、前記インピーダンス回路は、前記制御信号入力端子と接地との間に設けられた、インダクタと容量とを直列に接続したLC直列共振器からなることを特徴とするものである。
また、本発明の分布スイッチの1構成例において、前記インピーダンス回路は、一端が前記制御信号入力端子に接続され、他端が開放されたオープンスタブからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高周波領域で従来よりもオンオフ比が高い分布スイッチを実現することができる。また、本発明では、単位スイッチの段数を増加させることなくオンオフ比を向上させることができるので、分布スイッチの回路規模を縮小し、低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の分布スイッチの原理を説明する回路図である。
図2図2は、図1の等価回路図である。
図3図3は、ソース接地電界効果トランジスタを用いた従来の分布スイッチの構成を示す回路図である。
図4図4は、本発明の第1の実施例に係る分布スイッチの構成を示す回路図である。
図5図5は、従来および本発明の第1の実施例に係る分布スイッチの通過特性の計算結果を示す図である。
図6図6は、従来および本発明の第1の実施例に係る分布スイッチのオンオフ比を示す図である。
図7図7は、本発明の第2の実施例に係る分布スイッチの構成を示す回路図である。
図8図8は、本発明の第3の実施例に係る分布スイッチの構成を示す回路図である。
図9図9は、本発明の第4の実施例に係る分布スイッチの構成を示す回路図である。
図10図10は、従来の分布スイッチの構成を説明する回路図である。
図11図11は、従来の分布スイッチの課題を説明する回路図である。
図12図12は、寄生容量を考慮した分布スイッチの等価回路図である。
図13図13は、分布スイッチの寄生容量に起因する漏洩経路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[発明の原理]
本発明は、上記で述べた、信号線路と制御線路との間の寄生容量に起因する分布スイッチの特性劣化を解決する回路構成を提供するものである。
以下に本発明の原理を説明する。本発明では、図13に示した漏洩経路P2を遮断し、入力端子INに入力される高周波信号をすべて信号線路T1に留める(図13に示した通常の信号経路P1に留める)ことによって、従来の分布スイッチよりもオンオフ比を改善する。その手法は次のようなものである。
【0015】
従来と同様に、信号線路T1は、一端が入力端子INに接続され、他端が出力端子OUTに接続されている。制御線路T2は、一端が制御端子CTLに接続され、他端が終端抵抗R1(終端回路)によって終端されている。複数の単位スイッチSW1は、信号線路T1および制御線路T2に沿って並ぶように信号線路T1と接地との間に挿入され、各々の制御信号入力端子cが制御線路T2に接続されている(図1)。
【0016】
そして、本発明では、図1に示すように、各単位スイッチSW1の制御信号入力端子cにそれぞれインピーダンス回路Xを付加する。単位スイッチSW1の制御信号入力端子cから見たインピーダンス回路XのインピーダンスZx(制御信号入力端子cと接地との間のインピーダンス)は、所望の周波数において0(もしくは0近傍)になるように設定されている。ここで、所望の周波数とは、分布スイッチでオン/オフしたい信号の周波数のことを言う。
【0017】
図1の等価回路を図2に示す。入力端子INに入力された高周波信号のうち、寄生容量Cxを介して漏洩した信号は、すぐさまインピーダンス回路Xによって接地される。そのため、この信号は制御線路T2側に漏洩することができず、図13に示したような漏洩経路P2が形成されることはない。
【0018】
すなわち、信号の周波数帯域においてインピーダンス回路XのインピーダンスZxが0であり、かつ、単位スイッチSW1の制御信号入力端子cから見てインピーダンス回路Xは制御端子CTLと並列に接続されている。このため、制御端子CTL側にいかなるインピーダンスの回路があったとしても、この回路とインピーダンス回路Xの並列インピーダンスは0となるから、単位スイッチSW1の制御信号入力端子cから見たときに制御端子CTL側の回路が存在しない場合と等価の構成となる。
【0019】
したがって、寄生容量Cxにより漏洩した信号は、インピーダンス回路Xに存在する接地端によって全て反射され、信号線路T1側に戻り、通常の信号経路P1に合流することになる。通常の信号経路P1を通る信号は、制御信号に応じて適切にオンオフされる。
以上の理由により、寄生容量Cxの存在によって高周波領域で分布スイッチのオンオフ比が低下するという課題が解決される。
【0020】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。本発明の第1の実施例では、図3に示すように、単位スイッチとしてソース接地電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)を用いた分布スイッチに本発明を適用する例を説明する。FETは、ゲート端子に印加する電圧によってドレイン−ソース間の抵抗を変化させることができるため、可変抵抗として用いることができる。したがって、ソース接地のFETQ1を図3のように配置することで分布スイッチを構成することができる。FETQ1は、ゲート端子G(制御信号入力端子c)が制御線路T2に接続され、ドレイン端子D(第1の端子a)が信号線路T1に接続され、ソース端子S(第2の端子b)が接地されている。図3に示した構成では、FETQ1のドレイン−ゲート間容量Cdgが図11における寄生容量Cxに相当する。
【0021】
本実施例は、図4に示すように、FETQ1のゲート端子G(制御信号入力端子c)と接地との間に、インダクタL1と容量C1とを直列に接続したLC直列共振器からなるインピーダンス回路Xを付加したものである。LC直列共振器は、インダクタL1のインダクタンスをL、容量C1のキャパシタンスをCとすれば、1/(2π(LC)1/2)に相当する共振周波数でそのインピーダンスが0となる。したがって、このLC直列共振器によって、上記の発明の原理で述べたインピーダンス回路Xを構成することができる。
【0022】
本実施例の有効性を確認するために、回路シミュレータを用いて図3図4の構成のオンオフ比の比較を行った。計算では、FETQ1として、ゲート幅10μmのInP−HEMT(High Electron Mobility Transistor)を用いた。図3図4に共通する信号線路T1および制御線路T2としては、特性インピーダンス65Ω、290GHzにおける電気長30°のものを用いた。信号線路T1および制御線路T2の導電率は2×107S/mとした。また、LC直列共振器のインダクタL1として伝送線路を用い、290GHzでLC直列共振器のインピーダンスが0になるようにインダクタンスLおよびキャパシタンスCの値を調節した。また、計算では、図3図4のFETQ1の個数を6個(単位スイッチの段数が6段)とした。
【0023】
図3図4の分布スイッチのオン時およびオフ時の入力端子INから出力端子OUTへの通過特性を図5に示す。図5の50は図3に示した従来の分布スイッチのオン時の通過特性を示し、51は従来の分布スイッチのオフ時の通過特性(損失)を示し、52は図4に示した本実施例の分布スイッチのオン時の通過特性を示し、53は本実施例の分布スイッチのオフ時の通過特性(損失)を示している。
【0024】
図5によれば、オン時の通過特性が本実施例では改善されていることが判る。従来の分布スイッチでは、ドレイン−ゲート間容量Cdgを介して漏洩した信号の一部が、制御線路T2の終端抵抗R1や制御線路T2自体が持つ有限の抵抗によって消費される。これに対して、本実施例では、そもそも信号が制御線路T2に漏洩しないため、制御線路T2に由来する損失を回避することができ、オン時の通過特性を改善することができる。
【0025】
また、図5によれば、オフ時の損失も本実施例の方が大幅に大きいことが判る。上記の発明の原理で述べたように、従来の分布スイッチでは、ドレイン−ゲート間容量Cdgを介した漏洩経路を通って入力端子INから出力端子OUTに到達する信号が存在するため、この信号をオフ状態のFETQ1によって遮断することはできない。これに対して、本実施例では、ドレイン−ゲート間容量Cdgを介して漏洩した信号がLC直列共振器によって信号線路T1に戻されるため、この信号をオフ状態のFETQ1によって適切に遮断することができ、オフ時の損失を大きくすることができる。
【0026】
図6に、図5から計算されるオンオフ比を示す。図6の60は図3に示した従来の分布スイッチのオンオフ比を示し、61は図4に示した本実施例の分布スイッチのオンオフ比を示している。250GHz〜350GHzの広帯域にわたって、本実施例ではオンオフ比の改善がみられる。特に、LC直列共振器のインピーダンスが0になるように設計された290GHzでは、10dB以上のオンオフ比改善が得られることが判る。
【0027】
以上のように、本実施例によって、従来よりもオンオフ比が高い分布スイッチを提供することができる。したがって、従来は実現が難しかった、100GHz以上の周波数帯での広帯域な分布スイッチを実現することができる。また、従来の分布スイッチでは、オンオフ比を大きくするために、単位スイッチの段数を増やすことが行われてきた。しかしながら、図6で説明したように、本実施例によれば、単位スイッチの段数を増加させることなくオンオフ比を向上させることができる。したがって、本実施例では、分布スイッチの回路規模を縮小することができる。回路規模の縮小は分布スイッチを量産する際のフットプリント縮小につながり、分布スイッチを含む製品の量産効率向上、すなわち低コスト化に貢献する。
【0028】
なお、現実のLC直列共振器では、回路の抵抗成分のために、FETQ1のゲート端子Gから見たときのインピーダンスが完全な0とはならないが、0近傍のインピーダンスを実現することができるため、オンオフ比の十分な改善効果を得ることが可能である。
【0029】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。図7は本発明の第2の実施例に係る分布スイッチの構成を示す回路図であり、図4と同様の構成には同一の符号を付してある。本実施例は、第1の実施例と同様に単位スイッチとしてFETQ1を用いるものであり、一端がFETQ1のゲート端子G(制御信号入力端子c)に接続され、他端が開放された線路であるオープンスタブT3をインピーダンス回路Xとして付加したものである。
【0030】
オープンスタブT3は、その電気長を90°に選ぶことにより、所望の周波数においてインピーダンスを0(もしくは0近傍)にすることができる。そのため、本実施例によれば、第1の実施例と全く同等のオンオフ比改善効果を得ることができる。一般に、FETQ1のゲート端子Gから見てインピーダンスが0もしくは0近傍となる帯域は、オープンスタブの方がLC直列共振器よりも広い。そのため、本実施例では、第1の実施例よりも広帯域にオンオフ比の改善効果を得ることができる。
【0031】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。図8は本発明の第3の実施例に係る分布スイッチの構成を示す回路図であり、図4図7と同様の構成には同一の符号を付してある。本実施例では、単位スイッチとしてエミッタ接地バイポーラトランジスタ等の電流制御型のトランジスタを用いた分布スイッチに本発明を適用する例を説明する。
【0032】
バイポーラトランジスタは、エミッタ接地にすることでソース接地FETと同様に単位スイッチとして利用することができる。図8のバイポーラトランジスタQ2は、ベース端子B(制御信号入力端子c)が制御線路T2に接続され、コレクタ端子C(第1の端子a)が信号線路T1に接続され、エミッタ端子E(第2の端子b)が接地されている。図8に示した構成では、バイポーラトランジスタQ2のコレクタ−ベース間容量Cobが図11における寄生容量Cxに相当する。
【0033】
そして、本実施例では、バイポーラトランジスタQ2のベース端子B(制御信号入力端子c)と接地との間に、インダクタL1と容量C1とを直列に接続したLC直列共振器からなるインピーダンス回路Xを付加している。このような構成により、本実施例では、第1の実施例と同様に、分布スイッチのオンオフ比を改善することができる。
【0034】
[第4の実施例]
次に、本発明の第4の実施例について説明する。図9は本発明の第4の実施例に係る分布スイッチの構成を示す回路図であり、図4図7図8と同様の構成には同一の符号を付してある。本実施例は、第3の実施例と同様に単位スイッチとしてバイポーラトランジスタQ2を用いるものであり、一端がバイポーラトランジスタQ2のベース端子B(制御信号入力端子c)に接続され、他端が開放された線路であるオープンスタブT3をインピーダンス回路Xとして付加したものである。このような構成により、本実施例では、第2の実施例と同様に、分布スイッチのオンオフ比を改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、高周波電気信号を扱う回路技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
T1…信号経路、T2…制御線路、T3…オープンスタブ、SW1…単位スイッチ、X…インピーダンス回路、Q1…電界効果トランジスタ、Q2…バイポーラトランジスタ、R1…終端抵抗、L1…インダクタ、C1…容量、IN…入力端子、OUT…出力端子、CTL…制御端子。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13